(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びそれらの集中制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20221215BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221215BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221215BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221215BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H01M8/04858
H01M8/12 101
H01M8/04 Z
H02J13/00 311R
H02J3/46
(21)【出願番号】P 2019054153
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】依田 将和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/213987(WO,A1)
【文献】特開2015-126675(JP,A)
【文献】特開2002-198079(JP,A)
【文献】特開2014-027736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池反応により発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を制御するための電池制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記電池制御手段は、
通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力より低い低発電出力でもって運転する上げ調整発電モードに切り換えるための上げ調整信号
と、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が生じるのを防止するために前記燃料電池の発電出力を上昇させる
ための発電上昇信号
とに基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が予測されると、前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから
前記上げ調整発電モードに切り替え、前記上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が
前記低発電出力となるように
制御し、また
前記上げ調整発電モードの運転中
に前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足のおそれが生じると、前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力よりも高くなるように制御
し、これにより、前記燃料電池の発電出力の一部が前記外部系統に供給されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電上昇信号は、定格発電上昇信号及び高発電上昇信号を含んでおり、前記上げ調整発電モードの運転中に前記定格発電上昇信号が生成されると、前記定格発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力となるように制御され、また前記上げ調整発電モードの運転中に前記高発電上昇信号が生成されると、前記高発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力よりも高く且つ前記定格発電出力よりも低い高発電出力となるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記上げ調整信号は、第1上げ調整信号及び第2上げ調整信号を含んでおり、前記第1上げ調整信号が生成されると、前記電池制御手段は、前記第1上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから第1上げ調整発電モードに切り替え、前記第1上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力よりも低い第1低発電出力となるように制御され、また前記第2上げ調整信号が生成されると、前記電池制御手段は、前記第2上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから第2上げ調整発電モードに切り替え、前記第2上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力よりも低く且つ前記第1低発電出力よりも高い第2低発電出力となるように制御され、前記第1上げ調整発電モード及び前記第2上げ調整発電モードの運転において前記発電上昇信号が生成されると、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力となるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
燃料電池反応により発電を行う燃料電池及び前記燃料電池を制御するための電池制御手段を備えた燃料電池システムが多数集合した燃料電池システムの集中制御システムであって、
通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する上げ調整発電モードに切り換えるための上げ調整信号を生成する上げ調整信号生成手段と、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が生じるのを防止するために前記燃料電池の発電出力を上昇させるための発電上昇信号を生成する発電上昇信号生成手段とを更に含み、
多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、
前記上げ調整信号及び
前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が予測されると、前記上げ調整信号生成手段は前記上げ調整信号を生成し、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから
前記上げ調整発電モードに切り替え、前記上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力
が前記低発電出力となるように制御
し、また前記上げ調整発電モードの運転中
に前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足のおそれが生じると、前記発電上昇信号生成手段は前記発電上昇信号を生成し、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力よりも高くなるように制御
し、これにより、前記燃料電池の発電出力の一部が前記外部系統に供給されることを特徴とする燃料電池システムの集中制御システム。
【請求項5】
前記多数の燃料電池システムは、前記燃料電池の発電出力を瞬時に上昇させる制御に対応した第1燃料電池グループの第1燃料電池システムと、前記燃料電池の発電出力を瞬時に上昇させる制御に対応しない第2燃料電池グループの第2燃料電池システムとを含んでおり、前記上げ調整発電モードの運転中に前記発電上昇信号が生成されると、前記第1燃料電池グループの前記第1燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が瞬時に前記定格発電出力となるように制御し、また前記第2燃料電池グループの前記第2燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が除々に
前記定格発電出力となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システムの集中制御システム。
【請求項6】
前記第2燃料電池グループの前記第2燃料電池システムは、前記燃料電池の発電出力が比較的短い時間でもって
前記定格発電出力に上昇する短時間上昇サブグループの前記第2燃料電池システムと、前記燃料電池の発電出力が比較的長い時間でもって
前記定格発電出力に上昇する長時間上昇サブグループの前記第2燃料電池システムを含んでおり、前記上げ調整発電モードの運転中に前記発電上昇信号が生成されると、前記短時間上昇サブグループの前記第2燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が比較的短時間で
前記定格発電出力となるように制御し、また前記長時間上昇サブグループの前記第2燃料電池システムの前記
電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が比較的長時間で
前記定格発電出力となるように制御することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システムの集中制御システム。
【請求項7】
前記多数の燃料電池システムは、前記燃料電池の発電出力を
前記定格発電出力の第1割合値まで下げる制御に対応した第1燃料電池グループの第1燃料電池システムと、前記燃料電池の発電出力を前記第1割合値よりも大きい第2割合値まで下げる制御に対応した第2燃料電池グループの第2燃料電池システムとを含んでおり、前記上げ調整信号が生成されると、前記第1燃料電池グループの前記第1燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力の前記第1割合値となるように制御し、また前記第2燃料電池グループの前記第2燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力の前記第2割合値となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システムの集中制御システム。
【請求項8】
燃料電池反応により発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を制御するための電池制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記電池制御手段は、
外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が生じるのを回避するために、通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する下げ調整発電モードに切り換え且つ前記燃料電池の発電出力を前記低発電出力に下げるための下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が発生するおそれが生じると、前記電池制御手段は、前記下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから
前記下げ調整発電モードに切り替え、前記下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力
が前記低発電出力となるように制御
し、これにより、前記外部系統の電力の一部が燃料電池システムの低下した発電電力をまかなうことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
前記下げ調整信号は、第1下げ調整信号及び第2下げ調整信号を含んでおり、前記第1下げ調整信号が生成されると、前記電池制御手段は、前記第1下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから第1下げ調整発電モードに切り替え、前記第1下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力
よりも低い第1低発電出力となるように制御され、また前記第2下げ調整信号が生成されると、前記電池制御手段は、前記第2下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから第2下げ調整発電モードに切り替え、前記第2下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が
前記定格発電出力
よりも低く且つ前記第1低発電出力よりも高い第2低発電出力となるように制御されることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
燃料電池反応により発電を行う燃料電池及び前記燃料電池を制御するための電池制御手段を備えた燃料電池システムが多数集合した燃料電池システムの集中制御システムであって、
多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、
外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が生じるのを回避するために、通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する下げ調整発電モードに切り換え且つ前記燃料電池の発電出力を前記低発電出力に下げるための下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が発生するおそれが生じると、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を
前記通常発電モードから
前記下げ調整発電モードに切り替え、前記下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力
が前記低発電出力となるように制御
し、これにより、前記外部系統の電力の一部が前記多数の燃料電池システムの低下した発電出力をまかなうことを特徴とする燃料電池システムの集中制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池反応により発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システム及びこれらの集中制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池反応により発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが実用に供されている。このような燃料電池システムでは、一般的に、外部系統への逆潮流が生じないように、定格発電出力の範囲内において電力需要に追従して発電を行い、定格発電出力を超える電力需要があれば外部系統から電力を買電する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムにおいては、電力需要が定格発電出力内であるときには発電出力でまかなうことができ、従って、外部系統から電力を買電することがなく、システム利用の利益を享受することができる。
【0003】
このような燃料電池システムでは、外部系統への逆潮流が可能であれば余剰の発電出力を外部系統に送給することができ、電力市場に供給することが可能となる。このようなことから、この燃料電池システムの発電電力の一部を電力の需給バランスの調整に用いようとする考えがある。近年、再生可能エネルギーとして太陽光発電の利用が増えており、このような太陽光発電では昼間と夜間の発電電力が大きく変動し、また昼間でも太陽が出ているときと雲に隠れている(又は雨が降っている)ときとで発電電力が大きく変動する。このような太陽光発電の発電電力の大きな変動を抑えるために燃料電池システムを利用しようとする考えがある。
【0004】
このような太陽光発電による発電電力の変動に限定されないが、夏場の天候に起因する急激な電力需要の変動、また大きなイベントなどによる電力需要の一時的な変動、災害などによる電力送給の一時的な変動などにも燃料電池システムの発電電力を利用しようとする考えがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、燃料電池システムから外部系統への逆潮流が生じないようにしていたために、燃料電池システムの発電電力の一部を電力の需給バランスの調整に用いようとする発想はなく、その利用は限られていた。
【0007】
本発明の第1の目的は、発電電力の一部を電力の需給バランスにおける電力不足の調整に用いることができる燃料電池システムを提供することである。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、電力の需給バランスの調整のための電力調整市場に発電電力の一部を提供することができる燃料電池システムの集中制御システムを提供することである。
【0009】
また、本発明の第3の目的は、電力の需給バランスにおける電力余剰の調整に利用することができる燃料電池システムを提供することである。
【0010】
更に、本発明の第4の目的は、電力の需給バランスの調整のための電力調整市場における電力余剰を解消することができる燃料電池システムの集中制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の燃料電池システムは、上述した第1の目的に対応して、燃料電池反応により発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を制御するための電池制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記電池制御手段は、通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力より低い低発電出力でもって運転する上げ調整発電モードに切り換えるための上げ調整信号と、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が生じるのを防止するために前記燃料電池の発電出力を上昇させるための発電上昇信号とに基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が予測されると、前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を前記通常発電モードから前記上げ調整発電モードに切り替え、前記上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力となるように制御し、また前記上げ調整発電モードの運転中に前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足のおそれが生じると、前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力よりも高くなるように制御し、これにより、前記燃料電池の発電出力の一部が前記外部系統に供給されることを特徴とする。
【0012】
このような燃料電池システムでは、発電上昇信号は、定格発電上昇信号及び高発電上昇信号を含み、上げ調整発電モードの運転中に定格発電上昇信号が生成されると、この定格発電上昇信号に基づいて燃料電池の発電出力が定格発電出力となるように制御し、また上げ調整発電モードの運転中に高発電上昇信号が生成されると、この高発電上昇信号に基づいて燃料電池の発電出力が低発電出力よりも高く且つ定格発電出力よりも低い高発電出力となるように制御するのが好ましい。また、上げ調整信号は、第1上げ調整信号及び第2上げ調整信号を含み、第1上げ調整信号が生成されると、電池制御手段は、この第1上げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから第1上げ調整発電モードに切り替え、また第2上げ調整信号が生成されると、電池制御手段は、第2上げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから第2上げ調整発電モードに切り替えるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムの集中制御システムは、上述した第2の目的に対応して、燃料電池反応により発電を行う燃料電池及び前記燃料電池を制御するための電池制御手段を備えた燃料電池システムが多数集合した燃料電池システムの集中制御システムであって、
通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する上げ調整発電モードに切り換えるための上げ調整信号を生成する上げ調整信号生成手段と、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が生じるのを防止するために前記燃料電池の発電出力を上昇させるための発電上昇信号を生成する発電上昇信号生成手段とを更に含み、
多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記上げ調整信号及び前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足が予測されると、前記上げ調整信号生成手段は前記上げ調整信号を生成し、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記上げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を前記通常発電モードから前記上げ調整発電モードに切り替え、前記上げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力となるように制御し、また前記上げ調整発電モードの運転中に前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力不足のおそれが生じると、前記発電上昇信号生成手段は前記発電上昇信号を生成し、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記発電上昇信号に基づいて前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力よりも高くなるように制御し、これにより、前記燃料電池の発電出力の一部が前記外部系統に供給されることを特徴とする。
【0014】
このような燃料電池システムの集中制御システムでは、多数の燃料電池システムは、燃料電池の発電出力を瞬時に上昇させる制御に対応した第1燃料電池グループの第1燃料電池システムと、燃料電池の発電出力を瞬時に上昇させる制御に対応しない第2燃料電池グループの第2燃料電池システムとを含み、上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、第1燃料電池システムの燃料電池の発電出力を瞬時に定格発電出力となるように制御し、第2燃料電池システムの燃料電池の発電出力を除々に定格発電出力となるように制御するのが好ましい。
【0015】
また、第2燃料電池グループの第2燃料電池システムは、燃料電池の発電出力が比較的短い時間でもって定格発電出力に上昇する短時間上昇サブグループの第2燃料電池システムと、燃料電池の発電出力が比較的長い時間でもって定格発電出力に上昇する長時間上昇サブグループの第2燃料電池システムを含み、上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、短時間上昇サブグループの第2燃料電池システムの燃料電池の発電出力を比較的短時間で定格発電出力となるように制御し、また長時間上昇サブグループの第2燃料電池システムの燃料電池の発電出力を比較的長時間で定格発電出力となるように制御するのが好ましい。
【0016】
更に、多数の燃料電池システムは、燃料電池の発電出力を定格発電出力の第1割合値まで下げる制御に対応した第1燃料電池グループの第1燃料電池システムと、燃料電池の発電出力を第1割合値よりも大きい第2割合値まで下げる制御に対応した第2燃料電池グループの第2燃料電池システムとを含み、上げ調整信号が生成されると、第1燃料電池グループの第1燃料電池システムの燃料電池の発電出力を定格発電出力の第1割合値となるように制御し、また第2燃料電池グループの第2燃料電池システムの燃料電池の発電出力を定格発電出力の第2割合値となるように制御するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の燃料電池システムは、上述した第3目的に対応して、燃料電池反応により発電を行う燃料電池と、前記燃料電池を制御するための電池制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記電池制御手段は、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が生じるのを回避するために、通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する下げ調整発電モードに切り換え且つ前記燃料電池の発電出力を前記低発電出力に下げるための下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が発生するおそれが生じると、前記電池制御手段は、前記下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を前記通常発電モードから前記下げ調整発電モードに切り替え、前記下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力となるように制御し、これにより、前記外部系統の電力の一部が燃料電池システムの低下した発電電力をまかなうことを特徴とする。
【0018】
この燃料電池システムでは、下げ調整信号は、第1下げ調整信号及び第2下げ調整信号を含み、第1下げ調整信号が生成されると、電池制御手段は、第1下げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから第1下げ調整発電モードに切り替え、また第2下げ調整信号が生成されると、電池制御手段は、第2下げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから第2下げ調整発電モードに切り替えるのが好ましい。
【0019】
更に、本発明の他の燃料電池システムの集中制御システムは、上述した第4の目的に対応して、燃料電池反応により発電を行う燃料電池及び前記燃料電池を制御するための電池制御手段を備えた燃料電池システムが多数集合した燃料電池システムの集中制御システムであって、
多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が生じるのを回避するために、通常の発電状態で運転する通常発電モードから前記燃料電池の発電出力を定格発電出力よりも低い低発電出力でもって運転する下げ調整発電モードに切り換え且つ前記燃料電池の発電出力を前記低発電出力に下げるための下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の発電出力を制御するように構成されており、
前記外部系統の電力需給バランスが崩れて電力余剰が発生するおそれが生じると、前記多数の燃料電池システムの前記電池制御手段は、前記下げ調整信号に基づいて前記燃料電池の運転を前記通常発電モードから前記下げ調整発電モードに切り替え、前記下げ調整発電モードの運転では前記燃料電池の発電出力が前記低発電出力となるように制御し、これにより、前記外部系統の電力の一部が前記多数の燃料電池システムの低下した発電出力をまかなうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃料電池システムによれば、上げ調整信号が生成されると、燃料電池システムの電池制御手段は、この上げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから上げ調整発電モードに切り替え、上げ調整発電モードの運転では燃料電池の発電出力が定格発電出力よりも低い低発電出力となるように制御されるので、燃料電池は低発電出力で稼働され、この上げ調整発電モードの運転からの燃料電池の発電出力の上昇が許容される。そして、この上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、燃料電池の発電出力が低発電出力よりも大きくなるように制御されるので、燃料電池システムからの発電出力が増大し、この増大した発電出力が外部系統に相対的に流出するようになり、その結果、燃料電池システムを利用して電力の需給バランスにおける電力不足を回避することができる。
【0021】
また、本発明の燃料電池システムの集中制御システムによれば、上げ調整信号が生成されると、多数の燃料電池のシステムの電池制御手段は、この上げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから上げ調整発電モードに切り替え、上げ調整発電モードの運転では燃料電池の発電出力が定格発電出力よりも低い低発電出力となるように制御されるので、多数の燃料電池システムの燃料電池は低発電出力で稼働され、この上げ調整発電モードの運転からの燃料電池の発電出力の上昇が許容される。そして、この上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、多数の燃料電池システムの燃料電池の発電出力が定格発電出力となるように制御されるので、多数の燃料電池システムからの発電出力が増大し、この増大した発電出力が外部系統に相対的に流出するようになり、その結果、多数の燃料電池システムの発電出力を外部系統としての電力調整市場に提供することができ、多数の燃料電池システムを利用して電力の需給バランスにおける電力不足を回避することができる。
【0022】
また、本発明の他の燃料電池システムによれば、下げ調整信号が生成されると、燃料電池システムの電池制御手段は、この下げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから下げ調整発電モードに切り替え、下げ調整発電モードの運転では燃料電池の発電出力が定格発電出力よりも低い低発電出力となるように制御されるので、燃料電池システムからの発電出力が低下し、この低下した発電出力をまかなうように、外部系統からの電力が相対的に流入するようになり、その結果、燃料電池システムを利用して電力の需給バランスにおける電力余剰を回避することができる。
【0023】
更に、本発明の他の燃料電池システムの集中制御システムによれば、下げ調整信号が生成されると、多数の燃料電池のシステムの電池制御手段は、この下げ調整信号に基づいて燃料電池の運転を通常発電モードから下げ調整発電モードに切り替え、多数の燃料電池システムの燃料電池の発電出力が定格発電出力よりも低い低発電出力となるように制御されるので、多数の燃料電池システムの発電出力が低下し、この低下した発電出力をまかなうように外部系統からの電力が相対的に流入するようになり、その結果、外部系統としての電力調整市場から電力を受電し、多数の燃料電池システムを利用して電力の需給バランスにおける電力余剰を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に従う燃料電池システムの集中制御システムの第1の実施形態を簡略的に示す簡略図。
【
図2】
図1の集中制御システムの制御系を簡略的に示すブロック図。
【
図3】
図1の集中制御システムを構成する燃料電池システムの一例を簡略的に示すブロック図。
【
図4】
図2の集中制御システムの制御系による制御の一例を示すフローチャート。
【
図5】
図4のフローチャートに沿って制御したときの燃料電池システムの発電出力の変動を示す図であって、
図5(a)は、第1燃料電池システムの発電出力の変動を示す図、
図5(b)は、第2燃料電池システムの発電電力の変動を示す図。
【
図6】
図2の集中制御システムの制御系の他の例における燃料電池システムの発電出力の変動を示す図であって、
図6(a)は、第1燃料電池システムの発電出力の変動を示す図、
図6(b)は、第2燃料電池システムの発電電力の変動を示す図。
【
図7】本発明に従う燃料電池システムの集中制御システムの第2の実施形態における制御系による制御の流れを示すフローチャート。
【
図8】
図7のフローチャートに沿って制御したときの燃料電池システムの発電出力の変動を示す図。
【
図9】本発明に従う燃料電池システムの集中制御システムの第3の実施形態における制御系を簡略的に示すブロック図。
【
図10】
図9の集中制御システムの制御系による制御の流れを示すフローチャート。
【
図11】
図10のフローチャートに沿って制御したときの燃料電池システムの発電出力の変動を示す図であって、
図11(a)は、第1燃料電池システムの発電出力の変動を示す図、
図11(b)は、第2燃料電池システムの発電電力の変動を示す図。
【
図12】本発明に従う燃料電池システムの集中制御システムの第4の実施形態における制御系による制御の流れを示すフローチャート。
【
図13】
図12のフローチャートに沿って制御したときの燃料電池システムの発電出力の変動を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システム(及びこれらの集中制御システム)の種々の実施形態について説明する。尚、以下の説明においては燃料電池システムの集中制御システムを中心に説明するが、その説明の中に燃料電池システム単独の発明が含まれていることは明らかである。
【0026】
〈燃料電池システムの集中制御システムの第1の実施形態〉
まず、
図1~
図5を参照して、燃料電池システムの集中制御システムの第1の実施形態について説明する。
図1において、システムの管理者(例えば、電力会社、ガス会社)側には、例えば燃料電池管理センター2が設けられ、この燃料電池管理センター2に例えば燃料電池管理システム4及び顧客情報管理システム6が設置される(
図2参照)。この実施形態では、燃料電池管理システム4と顧客情報管理システム6とが同じ燃料電池管理センター2に設置されているが、これらを別々の場所に設置するようにしてもよく、或いはこれらを一つの管理システムとして構成するようにしてもよい。
【0027】
また、電力の消費者(例えば、電力会社、ガス会社の顧客)側には、例えば一戸建て家屋8、マンションなどが設けられ、
図1では一戸建て家屋8に燃料電池システム10が設置されており、この第1の実施形態では、燃料電池管理システム4、顧客情報管理システム6及び多数の燃料電池システム10により燃料電池システムの集中制御システムが構築される。
【0028】
図2をも参照して、この実施形態では、多数の燃料電池システム10は、その制御特性によって二つのグループ、即ち第1燃料電池グループ12及び第2燃料電池グループ14のいずれかに含まれるよいうに構成される。更に説明すると、第1燃料電池グループ12の複数の第1燃料電池システム10Aは、燃料電池16の発電出力を瞬時(例えば、10秒以内)に定格発電出力に上昇させる制御に対応するものであり、また第2燃料電池グループ14の複数の第2燃料電池システム10Bは、燃料電池16の発電出力を瞬時に定格発電出力に上昇させる制御に対応していないものであり、例えば5~60分以内に定格発電出力に上昇させる制御に対応するものである。
【0029】
また、この第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10Bは、更に、比較的短い時間(例えば、3~10分以内)で定格発電出力に上昇する短時間上昇サブグループの第2燃料電池システム10BAと、比較的長い時間(例えば、15~60分以内)で定格発電出力に上昇する長時間上昇サブグループの燃料電池システム10BBとに分かれ、多数の燃料電池システム10は、第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10Aと第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10B(即ち、短時間上昇サブグループの第2燃料電池システム10BA及び長時間上昇サブグループの第2燃料電池システム10BB)から構成される。
【0030】
次に、
図3を参照して、燃料電池システム10(10A,10B)の基本的構成の一例について説明する。図示の燃料電池システム10(10A,10B)は、発電を行う燃料電池16と、この燃料電池16を制御する電池制御手段18とから構成されている。燃料電池16は、例えば固体酸化物形燃料電池から構成され、セルスタック20、改質器22、気化器24及び燃焼器26を備えている。セルスタック20は、燃料電池反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形のセルを積層状態に配列して構成され、このセルスタック20のセルは、酸素イオンを伝導する固体電解質28と、固体電解質28の片側に設けられた燃料極30と、固体電解質28の他側に設けられた酸素極32とを備えており、固体電解質28として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0031】
セルスタック20の燃料極30の導入側は、改質燃料ガス送給流路34を介して改質器22に接続され、この改質器22は、水蒸気混合ガス送給流路36を介して気化器24に接続され、この気化器24は、燃料ガス供給流路38を介して燃料ガス供給源(図示せず)(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続される。この燃料ガス供給流路38には、燃料ガスを供給するための燃料ガスポンプ40及び燃料ガス中の硫黄成分を除去するための脱硫器42が配設される。また、この気化器24には、水供給流路44介して水供給源(図示せず)(例えば、水タンクなど)に接続され、この水供給流路44には水ポンプ46が配設される。更に、セルスタック20の酸素極32の導入側は、空気供給流路48を介して大気に連通され、この空気供給流路48に空気ブロア50が配設される。
【0032】
セルスタック20の燃料極30の排出側は、燃料オフガス送給流路52を介して燃焼器26に接続され、またその空気極32の排出側は、空気オフガス送給流路54を介して燃焼器26に接続され、この燃焼器26は、燃焼ガス排出流路56を介して大気に開放されている。
【0033】
この燃料電池システム10(10A,10B)においては、燃料ガス供給源(図示せず)からの燃料ガスが燃料ガスポンプ40によって燃料ガス供給流路38を通して気化器24に供給され、かく供給される燃料ガス中の硫黄成分が脱硫器42にて除去される。また水供給源(図示せず)からの改質用水は水ポンプ46によって水供給流路44を通して気化器24に供給される。
【0034】
気化器24では、改質用水が気化されて水蒸気となり、燃料ガス供給流路38からの燃料ガスにこの水蒸気が混合され、水蒸気混合燃料ガスが水蒸気混合ガス送給流路36を通して改質器22に送給される。改質器22では、燃料ガスの水蒸気改質が行われ、水蒸気改質された改質燃料ガスが改質燃料ガス送給流路34を通してセルスタック20の燃料極30側に送給される。
【0035】
このセルスタック20の空気極32側には空気ブロア50によって空気供給流路48を通して空気が供給され、セルスタック20において、燃料極30側に送給された燃料ガス(改質燃料ガス)と空気極32側に送給された空気(酸素)との燃料電池反応によって発電出力が得られ、得られた発電出力が逆潮流することなく電力負荷で消費されたり、余剰の発電出力については外部系統に逆潮流されて外部系統にて消費される。
【0036】
また、セルスタック20の燃料極30からの燃料オフガスは燃料オフガス送給流路52を通して燃焼器26に送給され、その空気極32からの空気オフガスは空気オフガス送給流路54を通して燃焼器26に送給される。そして、この燃焼器26にて燃料オフガスが空気オフガスにより燃焼され、この排気ガスが燃焼ガス排出流路56を通して大気に排出される。
【0037】
この燃料電池システム10(10A,10B)の燃料電池16(燃料ガスポンプ40、水ポンプ46及び空気ブロア50を含む)は、電池制御手段18により後述する如く作動制御される。電池制御手段18は、例えば、マイクロプロセッサなどから構成され、作動制御手段58、運転モード切替手段60、上げ調整処理手段62、発電上昇処理手段64、発電低下処理手段65及び上げ調整解除処理手段66を含んでいる。作動制御手段58は、燃料電池16の燃料ガスブロア40、水ポンプ46及び空気ブロア50を後述する如く作動制御し、運転モード切替手段60は、燃料電池16の運転を通常の運転状態で発電を行う通常発電モードと上げ調整の運転を行うことができる上げ調整発電モードとの切り替えを行い、発電上昇処理手段64は、後述する発電上昇信号に基づいて燃料電池16の発電出力の上昇処理を行い、発電低下処理手段65は、後述する発電低下信号に基づいて燃料電池16の発電出力の低下処理を行い、また上げ調整解除処理手段66は、上げ調整処理の解除を後述する如く行う。
【0038】
燃料電池システム10(10A,10B)の基本的構成は上述した通りであるが、第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10Aについては、その燃料電池16の発電出力が瞬時(例えば、10秒以内)に定格発電出力まで上昇するように制御されるので、この瞬時の上昇によっても燃料電池16(セルスタック20)に悪影響が生じないように次のような公知の改良を採用するようにしてもよい。
【0039】
例えば、燃料電池16の発電出力を瞬時に上昇させようとすると、燃料の供給遅れ、改質用水の気化遅れなどが生じるが、燃料の供給遅れに対しては、例えば特開2009-104886号公報などに開示された技術を採用することができ、また改質用水の気化遅れに対しては、特開2018-106954号公報、特開2018-106951号公報及び特開2018-77990号公報などに開示された技術を採用することができる。
【0040】
再び、
図1及び
図2に戻って燃料電池管理センター2側の構成について説明すると、燃料電池管理センター2の燃料電池管理システム4は、例えば、システムコンピュータなどから構成される。図示の燃料電池管理システム4は、種々の情報を入力するための入力手段72と、この入力手段72により入力された入力信号を処理するための入力信号処理手段74と、上げ調整信号を生成する上げ調整信号生成手段76と、発電上昇信号を生成する発電上昇信号生成手段78と、発電低下信号を生成する発電低下信号生成手段80と、上げ調整解除信号を生成する上げ調整解除信号生成手段82とを備えている。
【0041】
このような燃料電池システムの集中管理システムを採用する場合、システムの管理者(例えば、電力会社、ガス会社)と電力の消費者(例えば、電力会社、ガス会社の顧客)との間で、例えば次のような取り決めを決めてこの集中管理システムを運用することになる。電力の需給バランスは一定ではなく、季節、時間帯、天候などにより、またイベントなどにより変動し、このような変動に対応しなければ大規模停電などが起こるおそれがある。このようなときに、消費者側に設置されている燃料電池システム10(10A,10B)を有効活用することにより、大型の発電所の発電出力を調整することなく電力の需給バランスの変動に対応することができ、社会的に大きな利益を享受することができる。一方、消費者側にとっては、自宅に設置した燃料電池システム10の発電出力の一部を外部系統としての電力調整市場に提供し、そのために上げ調整発電モードの運転においては、本来の発電出力(即ち、定格発電出力)よりも低い発電出力でもって運転し、電力不足が発生しそうなときに燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力を上昇させて定格発電出力で運転し、この増大した発電出力を電力調整市場に提供し、これにより、電力の需給バランスにおける電力不足を解消することができる。
【0042】
このような観点から、システムの管理者と電力の消費者、即ち燃料電池システム10の設置者との利益の調整を図るために、これら両者間で例えば次の条件の契約を締結することになる。第1に、上げ調整信号に基づき上げ調整発電モードの運転をする運転時間に対して、例えば1時間当たり○○円を設置者に支払う。第2に、発電上昇信号に基づき燃料電池システム10の発電電力を上昇させて電力調整市場に発電電力の一部を提供する運転時間に対して、例えば1時間当たり△△円を設置者に支払う。第3に、第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10Aを設置した設置者に対しては、電力の需給バランスの電力不足に対し瞬時の発電出力の上昇でもって対応してもらうため、第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10Bの設置者よりも例えば20%アップした金額、例えば上げ調整発電モードの運転1時間当たり(○○×1.2)円を支払い、燃料電池システム10の発電出力を上昇させた運転1時間当たり(△△×1.2)円を支払う。
【0043】
例えば、上述したように取決めを管理者側と消費者側(設置者側)との間で行って運用することになる。この取決め内容については、ビジネスモデルに沿った内容となり、種々の内容のものが考えられ、このようなビジネスモデルを実行するために、例えば、更に次の通りに構成される。
【0044】
この実施形態では、燃料電池管理システム4は、上述した構成に加えて、更に、第1積算タイマ84、第2積算タイマ86、計時手段88及び通信手段90を含んでいる。第1積算タイマ84は、上げ調整発電モードの運転をした運転時間を積算し、また、第2積算タイマ86は、上げ調整モードの運転中において燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力を上昇させて運転をした運転時間を積算する。また、計時手段88は、各種時間、例えば上げ調整信号を生成するまで時間、上げ調整解除信号を生成するまでの時間などを計時する。更に通信手段90は、多数の燃料電池システム10(10A,10B)の各々に設けられた通信手段92との間で各種信号の通信を行う。これら通信手段90、92は、例えば、両者間で各種信号のやりとりを行う双方向性のものを用いることができ、例えば無線通信を利用するでもよく、或いはインターネット通信を利用するものでもよい。尚、通信手段90,92として燃料電池管理システム4から多数の燃料電池システム10(10A,10B)に各種信号を送る単方向性ものを用いるようにしてもよい。
【0045】
この燃料電池管理システム4に関連して設けられる顧客情報管理システム6は、例えばシステムコンピュータなどから構成され、この実施形態では、データ処理手段91、料金演算手段94、顧客情報データベース96及び顧客料金情報データベース98を備えている。データ処理手段91は、例えば燃料電池管理システム4から送られてくる各種データ信号(例えば、第1積算タイマ84の積算時間情報、第2積算タイマ86の積算時間情報など)を所要の通りに処理し、また料金演算手段94は、第1及び第2タイマ84,86の積算時間情報に基づいて設置者に支払う金額を演算し、この料金演算手段94による演算は、例えば一ヶ月毎に行われ、この料金演算を行った後は、第1及び2積算タイマ84,86の積算時間はリセットされる。
【0046】
また、顧客情報データベース96には、顧客に関する種々の情報、例えば顧客管理番号、住所、電話番号、契約形態(設置した燃料電池システム10が第1燃料電池グループ12に属する形態のものか第2燃料電池グループ14に属する形態のものか)などが登録される。更に、顧客料金情報データベース98には、各顧客の料金情報、即ち第1及び第2積算タイマ84,86の積算時間に基づいて演算された料金情報が顧客情報と関連付けて登録される。
【0047】
次に、
図2~
図5を参照して、燃料電池システムの集中制御システムについて説明する。主として、
図2及び
図4を参照して、多数の燃料電池システム10(10A,10B)は、通常発電モードで運転され(ステップS1)、この運転状態においては、各燃料電池システム10(10A,10B)は、発電効率の良い運転状態、例えば定格発電状態で運転される。
【0048】
この通常発電モードの運転中に電力需要の大きな変動が予測されるときには、燃料電池管理センター2側において、燃料電池管理システム4の入力手段72により上げ調整の入力操作を行う。このように入力操作すると、ステップS2からステップS3に進み、入力信号処理手段74が入力手段72からの入力信号を所要の通りに処理し、この入力信号に基づいて上げ調整信号生成手段76が上げ調整信号を生成する。尚、この上げ調整信号は、例えば、計時手段88と組み合わせて設定時刻になると生成されるようにしてもよい。
【0049】
かくすると、この上げ調整信号が、燃料電池管理システム4から通信手段90,92を介して多数の燃料電池システム10(第1燃料電池グループ12の燃料電池システム10A及び第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10B)に送給され、多数の燃料電池システム10(10A,10B)は、通常発電モードから上げ調整発電モードの運転に切り替えられる。
【0050】
この実施形態では、上げ調整信号が送給されると、各燃料電池システム10(10A,10B)において、この上げ調整信号に基づいて運転モード切替手段60が通常発電モードから上げ調整発電モードに切り替え、上げ調整処理手段62は、各燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力が低発電出力(定格発電出力の例えば50%程度)に低下するように設定し、これにより、作動制御手段58は、発電出力が定格発電出力の例えば50%の低発電出力となるように燃料ガスポンプ40、水ポンプ46及び空気ブロア50を制御する(ステップS4)。
【0051】
例えば、時刻T11において、燃料電池管理システム4にて上げ調整信号が生成されると、第1燃料電池グループ12の複数の第1燃料電池システム10Aの発電出力は、例えば
図5(a)で示すように低発電出力(定格発電出力の50%程度)まで徐徐に低下し、また第2燃料電池グループ14の複数の燃料電池システム10Bの発電出力も、例えば
図5(b)で示すように低発電出力(定格発電出力の50%程度)まで徐徐に低下する。
【0052】
そして、このような上げ調整発電モードの運転中に、電力の需給バランスが崩れて電力不足が生じるおそれがあるときには、燃料電池管理センター2側において、燃料電池管理システム4の入力手段72により発電上昇の入力操作を行う。このように発電上昇の入力操作すると、ステップS5からステップS6に進み、入力信号処理手段74が入力手段72からの入力信号を所要の通りに処理し、この入力信号に基づいて発電上昇信号生成手段78が発電上昇信号を生成する。尚、この発電上昇信号についても、例えば、計時手段88と組み合わせて設定時刻になると生成されるようにしてもよい。
【0053】
このようにして発電上昇信号が生成されると、この発電上昇信号が、燃料電池管理システム4から通信手段90,92を介して多数の燃料電池システム10(第1燃料電池グループ12の燃料電池システム10A及び第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10B)に送給される。かくすると、各燃料電池システム10(10A,10B)において、この発電上昇信号に基づいて発電上昇処理手段62は、各燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力が定格発電出力(100%の発電出力)となるように設定し、これにより、作動制御手段58は、発電出力が定格発電出力となるように燃料ガスポンプ40、水ポンプ46及び空気ブロア50を制御する(ステップS6)。
【0054】
例えば、時刻T12において、燃料電池管理システム4にて発電上昇信号が生成されると、第1燃料電池グループ12の複数の第1燃料電池システム10Aの発電出力は、例えば
図5(a)で示すように定格発電出力まで瞬時(例えば、10秒以内)に上昇し、また第2燃料電池グループ14の複数の燃料電池システム10Bの発電出力は、例えば
図5(b)で示すように徐徐に定格発電出力まで上昇する。この第2燃料電池グループ14の短時間上昇サブグループの第2燃料電池システム10BAは、例えば3~10分以内(例えば、5分以内)に定格発電出力に上昇し、長時間上昇サブグループの第2燃料電池システム10BBは、例えば5~60分以内(例えば、30分以内)に定格発電出力に上昇する。
【0055】
このように発電上昇信号による定格発電出力状態の運転中に電力余剰となるおそれが生じると、燃料電池管理センター2側において、燃料電池管理システム4の入力手段72により発電低下の入力操作を行う。このように発電低下の入力操作すると、ステップS7からステップS8に進み、入力信号処理手段74が入力手段72からの入力信号を所要の通りに処理し、この入力信号に基づいて発電低下信号生成手段80が発電低下信号を生成する。尚、この発電低下信号についても、例えば、計時手段88と組み合わせて設定時刻になると生成されるようにしてもよい。
【0056】
このようにして発電低下信号が生成されると、この発電低下信号が、燃料電池管理システム4から通信手段90,92を介して多数の燃料電池システム10(10A,10B)に送給され、各燃料電池システム10(10A,10B)において、この発電低下信号に基づいて発電低下処理手段65は、各燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力が低発電出力(定格発電出力の50%程度)となるように設定し、これにより、作動制御手段58は、発電出力が低発電出力となるように燃料ガスポンプ40、水ポンプ46及び空気ブロア50を制御する(ステップS8)。
【0057】
例えば、時刻T14において、燃料電池管理システム4にて発電低下信号が生成されると、第1及び第2燃料電池グループ12,14の第1及び第2燃料電池システム10A,10B(10BA,10BB)の発電出力は、例えば
図5(a)及び(b)で示すように低発電出力(定格発電出力の50%程度)まで除除に低下する。
【0058】
その後、この上げ調整発電モードの運転を解除するときには、燃料電池管理センター2側において、燃料電池管理システム4の入力手段72により上げ調整解除の入力操作を行う。このように上げ上昇解除の入力操作すると、ステップS9からステップS10に進み、入力信号処理手段74が入力手段72からの入力信号を所要の通りに処理し、この入力信号に基づいて上げ調整解除信号生成手段82が上げ調整解除信号を生成し、上げ調整発電モードの運転が終了する。尚、この上げ調整解除信号についても、例えば、計時手段88と組み合わせて設定時刻になると生成されるようにしてもよい。
【0059】
このようにして上げ調整解除信号が生成されると、この上げ調整解除信号が、燃料電池管理システム4から通信手段90,92を介して多数の燃料電池システム10(10A,10B)に送給される。かくすると、各燃料電池システム10(10A,10B)において、この上げ調整解除信号に基づいて上げ調整解除処理手段65は、各燃料電池システム10(10A,10B)の発電出力が定格発電出力となるように設定し、これにより、作動制御手段58は、発電出力が定格発電出力となるように燃料ガスポンプ40、水ポンプ46及び空気ブロア50を制御し、燃料電池システム10(10A,10B)は通常発電モードの運転に戻り、ステップS11からステップS2に戻る。
【0060】
例えば、時刻T15において、燃料電池管理システム4にて上げ調整解除信号が生成されると、第1燃料電池グループ12の複数の第1燃料電池システム10Aの発電出力は、例えば
図5(a)で示すように定格発電出力まで除除に上昇し、また第2燃料電池グループ14の複数の燃料電池システム10Bの発電出力も、例えば
図5(b)で示すように定格発電出力まで除除に上昇する。尚、第1燃料電池グループの12の第1燃料電池システム10Aについては、定格発電出力まで瞬時に上昇するようにしてもよいが、瞬時に上昇する必要がないときには、燃料電池16(セルスタック20)の寿命などを考慮し、実施形態のように除除に上昇するようにするのが望ましい。
【0061】
尚、上げ調整発電モードの運転中に再び上げ調整信号が生成されると、ステップS9からステップS2に戻り、上述したステップS2~ステップS9が繰り返し実行される。
【0062】
この第1の実施形態の燃料電池システムの集中制御システムでは、多数の燃料電池システム10が第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10A(瞬時に定格発電出力に上昇する形態のもの)と第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10B(瞬時に定格発電出力に上昇しない形態のもの)から構成されているが、このような構成に代えて、これら燃料電池システム10を例えば第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10Aのみから構成するようにしてもよく、或いは例えば第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10Bのみから構成するようにしてもよい。
【0063】
また、多数の燃料電池システム10を次の形態のグループのものから構成するようにしてもよい。即ち、図示していないが、第1燃料電池グループとして上げ調整発電モードの運転において第1低発電出力として定格発電電力の第1割合値(例えば、40%程度)に低下する形態のものから構成し、第2発電電池グループとして上げ調整発電モードの運転において第2低発電出力として定格発電電力の第2割合値(第1割合値より大きい値であって、例えば70%程度)に低下する形態のものから構成するようにしてもよい。
【0064】
この場合、第1燃料電池グループの第1燃料電池システムの発電出力は、例えば
図6(a)で示すように変動し、また第2燃料電池グループの第2燃料電池システムの発電出力は、例えば
図6(b)に示すように変動する。例えば、時刻T21において、燃料電池管理システム4(
図1及び
図2参照)にて上げ調整信号が生成されると、第1燃料電池グループの複数の第1燃料電池システムの発電出力は、
図5(a)で示すように第1低発電出力(定格発電出力の40%程度)まで徐徐に低下し、また第2燃料電池グループの複数の燃料電池システムの発電出力は、
図6(b)で示すように第2低発電出力(定格発電出力の70%程度)まで徐徐に低下する。
【0065】
そして、このような上げ調整発電モードの運転中に、例えば時刻T22において燃料電池管理システム4にて発電上昇信号が生成されると、第1燃料電池グループの複数の第1燃料電池システムの発電出力は、
図6(a)で示すように定格発電出力まで瞬時に上昇し、また第2燃料電池グループの複数の燃料電池システムの発電出力も、
図6(b)で示すように瞬時に定格発電出力まで上昇する。
【0066】
また、この発電上昇信号による定格発電出力状態の運転中に、例えば時刻T23において燃料電池管理システム4にて発電低下信号が生成されると、第1燃料電池グループの第1燃料電池システムの発電出力は、
図6(a)で示すように第1低発電出力(定格発電出力の第1割合値)まで除除に低下し、また第2燃料電池グループの第2燃料電池システムの発電出力は、
図6(b)で示すように第2低発電出力(定格発電出力の第2割合値)まで除除に低下する。
【0067】
その後、例えば時刻T24において、燃料電池管理システム4にて上げ調整解除信号が生成されると、第1燃料電池グループの第1燃料電池システムの発電出力は、
図6(a)で示すように除除に定格発電出力に復帰し、また第2燃料電池グループの第2燃料電池システムの発電出力も、
図6(b)で示すように除除に定格発電出力に復帰する。
【0068】
尚、この形態では、第1燃料電池グループとして瞬時に定格発電出力に上昇する形態の燃料電池システムのみから構成しているが、このような構成に代えて、瞬時に定格発電出力に上昇しない形態の燃料電池システムのみから構成するようにしてもよく、或いは上述した実施形態と同様に、瞬時に定格発電出力に上昇するものと瞬時に定格発電出力に上昇しないものから構成するようにしてもよい。
【0069】
〈燃料電池システムの集中制御システムの第2の実施形態〉
この第2の実施形態では、多数の燃料電池システムは第1の実施形態における第1燃料電池グループ12の第1燃料電池システム10A(
図2参照)から構成されるが、第2燃料電池グループ14の第2燃料電池システム10B(
図2参照)から構成するようにしてもよい。また、この形態では、第1燃料電池システムの発電出力は、定格発電出力とこの定格発電出力よりも小さい高発電出力に上昇するように構成される。そして、このことに関連して、図示していないが、燃料電池管理システムの発電上昇信号生成手段は、定格発電出力に上昇させる定格発電上昇信号と、定格発電出力の例えば70%程度の高発電出力に上昇させる高発電出力上昇信号を生成するように構成される。この第2の実施形態におけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と同様である。尚、第2の実施形態の集中制御システムの制御系の構成は、第1の実施形態のものとほぼ同様であるので、
図2を参照して説明する。
【0070】
このような第2の実施形態の集中制御システムでは、多数の燃料電池システム10Aは、例えば
図7及び
図8で示すように制御される。
図7及び
図8において、通常発電モードの運転中(ステップS21)に、例えば時刻T31において燃料電池管理システム4の上げ調整信号生成手段76が上げ調整信号を生成すると、ステップS22からステップS23に進み、燃料電池システム10(10A)の運転が通常発電モードから上げ調整発電モードに切り替えられ、各燃料電池システム10の発電出力が低発電出力(例えば、定格発電出力の40%程度)に除除に低下する(ステップS24)。
【0071】
そして、このような上げ調整発電モードの運転中に、例えば時刻T32において燃料電池管理システム4の発電上昇信号生成手段78が定格発電上昇信号を生成すると、ステップS25からステップS26を経てステップS27に進み、各燃料電池システム10(10A)の発電出力は、定格発電出力まで瞬時に上昇する。
【0072】
このように定格発電上昇信号による定格発電出力状態の運転中に、例えば時刻T33において発電低下信号生成手段80が発電低下信号を生成すると、ステップS28からステップS29に進み、各燃料電池システム10(10A)の発電出力は、定格発電出力の40%まで除除に低下する。
【0073】
このような運転状態中に、例えば時刻T34において燃料電池管理システム4の発電上昇信号生成手段78が高発電上昇信号を生成すると、ステップS30からステップS25に戻り、更にステップ26及びステップS31を経てステップS32に進み、各燃料電池システム10(10A)の発電出力は、定格発電出力の70%まで瞬時に上昇する。
【0074】
その後、再び例えば時刻T35において発電低下信号生成手段80が発電低下信号を生成すると、ステップS28からステップS29に進み、各燃料電池システム10(10A)の発電出力は、定格発電出力の40%まで除除に低下する。
【0075】
しかる後、例えば時刻T38において燃料電池管理システム4の上げ調整解除信号生成手段82が上げ調整解除信号を生成すると、ステップS30からステップS33に進み、この上げ調整解除信号に基づいて燃料電池システム10(10A)の上げ調整発電モードの運転が終了した後、通常発電モードの運転が再開され(ステップS34)、ステップS22に戻る。
【0076】
この第2の実施形態では、燃料電池管理システム4の発電上昇信号生成手段78は定格発電上昇信号及び高発電上昇信号を生成するので、電力の需給バランスにおいて大きな電力不足が生じるおそれがあるときには、発電上昇信号生成手段78が定格発電上昇信号を生成するようにすることにより、各燃料電池システム10(10A)が定格発電出力に上昇し、これにより、多くの発電電力を外部系統に供給することができ、また電力の需給バランスにおいてある程度大きな電力不足が生じるおそれがあるときには、発電上昇信号生成手段78が高発電上昇信号を生成するようにすることにより、各燃料電池システム10(10A)が高発電出力(定格発電出力の例えば70%程度)に上昇し、ある程度多くの発電電力を外部系統に供給することができ、かくして、多数の燃料電池システム10(10A)の発電出力を燃料電池管理システム4側の発電上昇信号(定格発電上昇信号、高発電上昇信号)でもって調整することにより、電力の需給バランスにおける電力不足を回避することができる。
【0077】
この第2の実施形態では、発電上昇信号生成手段78が定格発電上昇信号及び高発電上昇信号の2種類の発電上昇信号を生成しているが、このような構成に代えて、上げ調整信号生成手段76が2種類の上げ調整信号(定格発電出力の例えば40%程度まで低下させる上げ調整信号)及び第2上げ調整信号(定格発電出力の例えば70%まで低下させる上げ調整信号)を生成するように構成しても上述したと同様の作用効果を達成することができる。
【0078】
この場合、上げ調整信号生成手段76が第1上げ調整信号を生成すると、この第1上げ調整信号に基づいて燃料電池システム10が通常発電モードから第1上げ調整発電モードの運転に切り替えられ、その発電出力が第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%の発電出力)でもって運転され、この第1上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、燃料電池システム10の発電出力が定格発電出力となり、多くの発電電力を外部系統に供給することができる。
【0079】
また、上げ調整信号生成手段76が第2上げ調整信号を生成すると、この第2上げ調整信号に基づいて燃料電池システム10が通常発電モードから第2上げ調整発電モードの運転に切り替えられ、その発電出力が第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%の発電出力であって、定格発電出力よりも低く且つ第1低発電出力よりも高い発電出力)でもって運転され、この第2上げ調整発電モードの運転中に発電上昇信号が生成されると、燃料電池システム10の発電出力が定格発電出力となり、ある程度多くの発電電力を外部系統に供給することができる。
【0080】
このように、多数の燃料電池システム10の発電出力を燃料電池管理システム4側の上げ調整信号(第1上げ調整信号、第2上げ調整信号信号)でもって調整することによっても、燃料電池システム10から外部系統に供給する電力を2段階に調整することができ、電力の需給バランスにおける電力不足を上述したと同様にして回避することができる。
【0081】
例えば、第1及び第2の実施形態では、上げ調整発電モードの運転を終了させるのに上げ調整解除の操作を行って上げ調整解除信号を生成させているが、このような構成に代えて、例えば上げ調整発電モードの運転開始から設定時間経過後に、又は所定時間経過後に自動的に上げ調整解除信号を生成させ、この上げ調整解除信号に基づいて燃料電池システム10の運転を上げ調整発電モードから通常発電モードに切り替えるようにしてもよい。
【0082】
〈燃料電池システムの集中制御システムの第3の実施形態〉
上述した第1及び第2実施形態では、電力の需要バランスにおける電力不足を多数の燃料電池システム10を利用して解消しているが、例えば、次のように構成して電力需要バランスにおける電力余剰を多数の燃料電池システム10を利用して解消することもでき、以下の実施形態において、第1の実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0083】
図9~
図11を参照して、この第3の実施形態では、第1の実施形態における上げ調整信号生成手段に代えて下げ調整信号生成手段102が設けられ、また第1の実施形態における上げ調整解除信号生成手段に代えて下げ調整解除信号生成手段104が設けられ、更に第1の実施形態における発電上昇信号生成手段及び発電低下信号生成手段が省略され、加えて第1の実施形態における第1及び第2積算タイマのいずれか一方が省略される。
【0084】
下げ調整信号生成手段102は、燃料電池システム10(10C,10D)を通常発電モードから下げ調整発電モードの運転に切り替えるための下げ調整信号を生成し、また下げ調整解除信号生成手段108は、燃料電池システム10を下げ調整発電モードから通常発電モードの運転に戻す下げ調整解除信号を生成する。更に、積算タイマ106(第1又は第2積算タイマ)は、下げ調整発電モードの運転時間を積算する。
【0085】
また、この第3の実施形態における多数の燃料電池システム10は、第1燃料電池グループ12C及び第2燃料電池グループ14Cに含まれるように構成される。更に説明すると、第1燃料電池グループ12Cの複数の第1燃料電池システム10Cは、下げ調整発電モードの運転中に発電出力が定格発電出力から第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度)に低下するものであり、第2燃料電池グループ12Dの複数の第2燃料電池システム10Dは、下げ調整発電モードの運転中に発電出力が定格発電出力から第2低発電出力(定格発電出力よりも低く且つ第1低発電出力よりも高い発電出力であって、定格発電出力の例えば70%程度)に低下するものである。この第3の実施形態におけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0086】
次に、第3の実施形態の燃料電池システムの集中制御システムの制御について説明すると、これらの燃料電池システム10(10C,10D)は、通常発電モードで運転され(ステップS41)、この運転状態においては、燃料電池システム10(10C,10D)は、発電効率の良い運転状態、例えば定格発電状態で運転される。
【0087】
この通常発電モードの運転中に電力の需給バランスが崩れて電力余剰になるおそれがあるときには、燃料電池管理センター2C側において、燃料電池管理システム4Cの入力手段72により下げ調整の入力操作を行う。このように入力操作すると、ステップS42からステップS43に進み、下げ調整信号生成手段102が下げ調整信号を生成し、この下げ調整信号が、燃料電池管理システム4Cから通信手段90,92を介して燃料電池システム10(第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10C及び第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10D)に送給され、多数の燃料電池システム10(10C,10D)は、通常発電モードから下げ調整発電モードの運転に切り替えられる。
【0088】
この実施形態では、この下げ調整信号が送給されると、各燃料電池システム10(10C,10D)の運転状態が、この下げ調整信号に基づいて通常発電モードから下げ調整発電モードに切り替えられ、第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cにおいては、その発電出力が第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度)に低下するように制御され、第2燃料電池グループ12Dの第2燃料電池システム10Dにおいては、その発電出力が第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%程度)に低下するように制御される。
【0089】
例えば、時刻T41において、燃料電池管理システム4Cにて下げ調整信号が生成されると、第1燃料電池グループ12Cの複数の第1燃料電池システム10Cの発電出力は、例えば
図11(a)で示すように第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度)まで徐徐に低下し、また第2燃料電池グループ14Cの複数の燃料電池システム10Dの発電出力も、例えば
図11(b)で示すように第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%程度)まで瞬時に低下する(ステップS44)。
【0090】
尚、この実施形態では、第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cの発電出力を除除に第1低発電出力に低下させているが、第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10Dと同様に、瞬時に第1低発電出力に低下させるようにしてもよい。また、第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10Dの発電出力を第2低発電出力に瞬時に低下させているが、第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cと同様に、除除に第2低発電出力に低下させるようにしてもよい。
【0091】
この下げ調整発電モードの運転を解除するには、燃料電池管理センター2C側において、燃料電池管理システム4Cの入力手段72により下げ調整解除の入力操作を行う。このように下げ調整解除の入力操作すると、ステップS45からステップS46に進み、下げ調整解除信号生成手段104が下げ調整解除信号を生成し、下げ調整発電モードの運転が終了する。この上げ調整解除信号が生成されると、この上げ調整解除信号が、燃料電池管理システム4Cから通信手段90,92を介して多数の燃料電池システム10(第1及び第2燃料電池システム10C,10D)に送給される。かくすると、各燃料電池システム10(10A,10B)において、この下げ調整解除信号に基づいて各燃料電池システム10(10C,10D)の発電出力が上昇して定格発電出力に戻り、通常発電モードの運転が再開され(ステップS47)、その後ステップS42に戻る。
【0092】
例えば、時刻T42において、燃料電池管理システム4Cにて下げ調整解除信号が生成されると、第1燃料電池グループ12Cの複数の第1燃料電池システム10Dの発電出力は、例えば
図11(a)で示すように定格発電出力まで除除に上昇し、また第2燃料電池グループ14Cの複数の燃料電池システム10Dの発電出力は、例えば
図11(b)で示すように定格発電出力まで除除に上昇する。
【0093】
この第3の実施形態では、電力の需給バランスにおいて電力余剰が生じるおそれがあるときには、燃料電池管理システム4Cが下げ調整信号を生成することにより、第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cの発電出力が第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度)に低下するととともに、第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム14Cの発電出力が第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%程度)に低下し、これにより、外部系統から多くの電力を受電するようになり、かくして、多数の燃料電池システム10(10C,10D)の発電出力を燃料電池管理システム4C側の下げ調整信号でもって調整することにより、電力の需給バランスにおける電力余剰を回避することができる。
【0094】
この第3の実施形態の多数の燃料電池システムの集中制御システムでは、多数の燃料電池システム10(10C,10D)が瞬時に定格発電出力に上昇しない形態のものから構成されているが、これら燃料電池システム10を例えば瞬時に定格発電出力に上昇する形態のものから構成するようにしてもよく、或いは第1及び第2燃料電池グループ12C,14Cの第1及び第2燃料電池システム10C,10Dを瞬時に定格発電出力に上昇する形態のもの及び瞬時に定格発電出力に上昇しない形態のものから構成するようにしてもよい。
【0095】
また、上述の第3の実施形態では、多数の燃料電池システム10として2種類のもの、即ち第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cと第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10Dとを採用しているが、このような構成に代えて、第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10Cのみを採用する、又は第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10Dのみを採用するようにしてもよい。
【0096】
〈燃料電池システムの集中制御システムの第4の実施形態〉
この第4の実施形態では、多数の燃料電池システムは第3の実施形態における第1燃料電池グループ12Cの第1燃料電池システム10C(
図9参照)(又は第2燃料電池グループ14Cの第2燃料電池システム10D(
図2参照))から構成される。また、この形態では、燃料電池システム10(第1燃料電池システム10C)の発電出力は、第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度は発電出力)と第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%程度であって、定格発電出力よりも低く且つ第1低発電出力よりも高い発電出力)に低下するように構成される。そして、このことに関連して、図示していないが、燃料電池管理システムの下げ調整信号生成手段は、燃料電池システム10(10C)の発電出力を第1低発電出力に下げる第1下げ調整信号と、この発電出力を第2低発電出力に下げる第2下げ調整信号を生成するように構成される。この第4の実施形態におけるその他の構成は、上述した第3の実施形態と同様である。尚、第4の実施形態の集中制御システムの制御系の構成は、第3の実施形態のものとほぼ同様であるので、
図9を参照して説明する。
【0097】
このような第4の実施形態の集中制御システムでは、多数の燃料電池システム10(10C)は、例えば
図12及び
図13で示すように制御される。
図12及び
図13において、通常発電モードの運転中(ステップS51)に、例えば時刻T51において燃料電池管理システム4Cの下げ調整信号生成手段102が例えば第1下げ調整信号を生成すると、ステップS52からステップS53を経てステップS54に進み、燃料電池システム10(10C)の運転が通常発電モードから下げ調整発電モード、この場合第1下げ調整発電モードに切り替えられ、各燃料電池システム10の発電出力が第1低発電出力(例えば、定格発電出力の40%程度)に瞬時に低下する(ステップS54)。
【0098】
そして、このような第1下げ調整発電モードの運転中に、例えば時刻T52において燃料電池管理システム4Cの下げ調整解除信号生成手段104が下げ調整解除信号を生成すると、ステップS55からステップS56に進み、この下げ調整解除信号に基づいて燃料電池システム10(10C)の第1下げ調整発電モードの運転が終了した後、通常発電モードの運転が再開され、燃料電池システム10(10C)は定格発電出力で運転され(ステップS57)、ステップS52に戻る。
【0099】
また、この通常発電モードの運転中に、例えば時刻T53において燃料電池管理システム4Cの下げ調整信号生成手段102が例えば第2下げ調整信号を生成すると、ステップS52からステップS53及びステップS58を経てステップS59に進み、燃料電池システム10(10C)の運転が通常発電モードから下げ調整発電モード、この場合第2下げ調整発電モードに切り替えられ、各燃料電池システム10の発電出力が第2低発電出力(例えば、定格発電出力の70%程度)に瞬時に低下する(ステップS54)。その後、例えば時刻T54において燃料電池管理システム4Cの下げ調整解除信号生成手段104が下げ調整解除信号を生成すると、上述したと同様に、ステップS55~ステップS57が遂行され、通常発電モードの運転に戻る。
【0100】
この第4の実施形態では、燃料電池管理システム4Cの下げ調整信号生成手段102が第1及び第2下げ調整信号を生成するので、電力の需給バランスにおいて大きな電力余剰が生じるおそれがあるときには、下げ調整信号生成手段102が第1下げ調整信号を生成するようにすることにより、各燃料電池システム10(10A)が第1低発電出力(定格発電出力の例えば40%程度)に下がり、これにより、燃料電池システム10(10C)を設置した各家庭では外部系統から多くの電力を受電するようになり、また電力の需給バランスにおいてある程度大きな電力余剰が生じるおそれがあるときには、下げ調整信号生成手段78が第2下げ調整信号を生成するようにすることにより、各燃料電池システム10(10C)が第2低発電出力(定格発電出力の例えば70%程度)に下がり、これにより、各家庭では外部系統からある程度多くの電力を受電するようになり、かくして、多数の燃料電池システム10(10C)の発電出力を燃料電池管理システム4C側の下げ調整信号(第1及び第2下げ調整信号)でもって調整することにより、電力の需給バランスにおける電力余剰を回避することができる。
【0101】
この第4の実施形態では、下げ調整信号生成手段102が第1及び第2下げ調整信号の2種類の下げ調整信号を生成しているが、第3の実施形態と同様に、下げ調整信号生成手段102が1種類の下げ調整信号を生成するようにしてもよい。また、この実施形態では、第1及び第2下げ調整発電モードに切り替えるときに燃料電池システム10(10C)の発電出力を瞬時に第1及び第2低発電出力に低下させているが、この第1及び第2低発電出力に除除に低下させるようにしてもよい。
【0102】
更に、例えば、上述した第3及び第4実施形態では、下げ調整発電モード(第1及び第2下げ調整発電モード)の運転を終了させるのに下げ調整解除の操作を行って下げ調整解除信号を生成させているが、このような構成に代えて、例えば下げ調整発電モードの運転開始から設定時間経過後に、又は所定時間経過後に自動的に下げ調整解除信号を生成させ、この下げ調整解除信号に基づいて燃料電池システム10の運転を下げ調整発電モードから通常発電モードに切り替えるようにしてもよい。
【0103】
以上、本発明に従う燃料電池システム及びそれらの集中制御システムの実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0104】
例えば、第1及び第2の実施形態では、通常発電モードの運転では燃料電池システムが定格発電出力で稼働され、この運転状態のときに上げ調整発電モードに切り替えているが、定格発電出力よりも低い発電出力状態のときに上げ調整発電モードに切り替えるようにしてもよい。また、第3及び第4の実施形態においても、通常発電モードの運転では燃料電池システムが定格発電出力で稼働され、この運転状態のときに下げ調整発電モードに切り替えているが、定格発電出力よりも低い発電出力状態のときに下げ調整発電モードに切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
2 燃料電池管理センター
4,4C 燃料電池管理システム
6 顧客情報管理システム
10,10A,10B,10C,10D 燃料電池システム
12,12C 第1燃料電池グループ
14,14C 第2燃料電池グループ
16 燃料電池
18 電池制御手段
76 上げ調整信号生成手段
78 発電上昇信号生成手段
80 発電低下信号生成手段
82 上げ調整解除信号生成手段
102 下げ調整信号生成手段
104 下げ調整解除信号生成手段