(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20221215BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2019056217
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】塙 洋祐
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-088262(JP,A)
【文献】特開2010-129590(JP,A)
【文献】特開2018-182212(JP,A)
【文献】特開2016-184701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部により基板を保持する基板保持工程と、
前記基板を、前記基板の中央部を通る回転軸線まわりに回転させ、前記基板の第1主面の全面が正に帯電する第1混合濃度で、純水と添加ガスとを混合した第1混合液を、前記基板に供給して前記基板を帯電させる帯電工程と、
前記帯電工程の後またはこれと並行し、前記基板を前記回転軸線まわりに回転させ、前記基板の前記第1主面にエッチング液を供給するエッチング液供給工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1混合濃度は、前記基板上の帯電分布に基づき決定された値である、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記帯電工程においては、前記基板の前記第1主面とは反対の第2主面に前記第1混合液を供給し、
前記基板処理方法は、
前記エッチング液供給工程の後、前記第1混合濃度よりも添加ガスの濃度が高い第2混合液を前記基板の前記第2主面に供給して、前記基板を除電する除電工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記エッチング液供給工程の後、純水、または、前記第1混合濃度と異なる第3混合濃度で純水と添加ガスが混合されて得られる第3混合液を、前記基板の前記第1主面に供給するリンス液供給工程をさらに備える、基板処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理方法であって、
前記第3混合濃度における前記添加ガスの濃度は、前記第1混合濃度における前記添加ガスの濃度よりも大きい、基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記添加ガスが二酸化炭素である、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記帯電工程において、第1回転速度で前記基板を回転させ、
前記エッチング液供給工程において、前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で前記基板を回転させる、基板処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理方法であって、
前記エッチング液供給工程において、前記第2回転速度で前記基板を回転させた後に、前記第2回転速度よりも低い第3回転速度で前記基板を回転させる、基板処理方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記帯電工程を終了した後に前記エッチング液供給工程を実行する、基板処理方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記帯電工程においては、前記基板の前記第1主面とは反対の第2主面に前記第1混合液を供給し、
前記帯電工程および前記エッチング液供給工程を並行して実行する、基板処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理方法であって、
前記エッチング液供給工程を開始する前に前記帯電工程を開始する、基板処理方法。
【請求項12】
請求項10に記載の基板処理方法であって、
前記エッチング液供給工程を開始した後に前記帯電工程を開始する、基板処理方法。
【請求項13】
基板を保持し、前記基板の中央部を通る回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の第1主面の全面が正に帯電する第1混合濃度で、純水と添加ガスとを混合した第1混合液を、前記基板に供給して前記基板を帯電させる混合液供給部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の前記第1主面にエッチング液を供給するエッチング液供給部と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン基板の表面に対して酸性またはアルカリ性のエッチング液を供給して、当該表面に対してエッチングを行う基板処理装置が提案されている。この基板の表面には、例えば、エッチング対象(シリコン等の半導体層またはシリコン酸化物等の絶縁層など)と、レジストパターンとが形成され、エッチング装置は、エッチング対象に対してエッチングを行う。
【0003】
この基板の表面に酸性またはアルカリ性のエッチング液が供給されると、電気二重層により基板の表面は負に荷電される。よって、パターン側壁も負に荷電される。このパターン側壁の電荷は、パターン側壁近傍において、エッチング液中のマイナスイオンと反発する。パターン間の隙間が狭いほど、パターン側壁の電荷が当該隙間全体に影響するので、エッチング液が当該隙間に入り込みにくくなる。これにより、エッチング不良が発生するという問題がある。
【0004】
そこで、基板に電圧を印加して基板の表面を逆極性に帯電させることにより、エッチング不良を抑制する技術が提案されている。このようなエッチング装置として、例えば特許文献1に記載された基板処理装置の構成を採用することができる。この基板処理装置は、基板保持手段、エッチング液供給手段、および複数の電極を制御する制御装置を含む。制御装置は、回転軸線まわりに基板を回転させながら、基板にエッチング液を供給するエッチング工程と、第1電極および第2電極の順番で印加電圧の絶対値が増加するように、複数の電極に電圧を印加することにより、エッチング工程と並行して基板を帯電させるエッチング帯電工程とを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理装置では、基板に電圧を印加するための種々の機構(例えば第1電極および第2電極)が必要となり、基板処理装置が複雑化する。
【0007】
そこで、本願は、簡易な構成でエッチング不良の発生率を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板処理方法の第1の態様は、基板保持部により基板を保持する基板保持工程と、前記基板を、前記基板の中央部を通る回転軸線まわりに回転させ、前記基板の第1主面の全面が正に帯電する第1混合濃度で、純水と添加ガスとを混合した第1混合液を、前記基板に供給して前記基板を帯電させる帯電工程と、前記帯電工程の後またはこれと並行し、前記基板を前記回転軸線まわりに回転させ、前記基板の前記第1主面にエッチング液を供給するエッチング液供給工程とを備える。
【0009】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記第1混合濃度は、前記基板上の帯電分布に基づき決定された値である。
【0010】
基板処理方法の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記帯電工程においては、前記基板の前記第1主面とは反対の第2主面に前記第1混合液を供給し、前記基板処理方法は、前記エッチング液供給工程の後、前記第1混合濃度よりも添加ガスの濃度が高い第2混合液を前記基板の前記第2主面に供給して、前記基板を除電する除電工程をさらに備える。
【0011】
基板処理方法の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記エッチング液供給工程の後、純水、または、前記第1混合濃度と異なる第3混合濃度で純水と添加ガスが混合されて得られる第3混合液を、前記基板の前記第1主面に供給するリンス液供給工程をさらに備える。
【0012】
基板処理方法の第5の態様は、第4の態様にかかる基板処理方法であって、前記第3混合濃度における前記添加ガスの濃度は、前記第1混合濃度における前記添加ガスの濃度よりも大きい。
【0013】
基板処理方法の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つ態様にかかる基板処理方法であって、前記添加ガスが二酸化炭素である。
【0014】
基板処理方法の第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記帯電工程において、第1回転速度で前記基板を回転させ、前記エッチング液供給工程において、前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で前記基板を回転させる。
【0015】
基板処理方法の第8の態様は、第7の態様にかかる基板処理方法であって、前記エッチング液供給工程において、前記第2回転速度で前記基板を回転させた後に、前記第2回転速度よりも低い第3回転速度で前記基板を回転させる。
【0016】
基板処理方法の第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記帯電工程を終了した後に前記エッチング液供給工程を実行する。
【0017】
基板処理方法の第10の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記帯電工程においては、前記基板の前記第1主面とは反対の第2主面に前記第1混合液を供給し、前記帯電工程および前記エッチング液供給工程を並行して実行する。
【0018】
基板処理方法の第11の態様は、第10の態様にかかる基板処理方法であって、前記エッチング液供給工程を開始する前に前記帯電工程を開始する。
【0019】
基板処理方法の第12の態様は、第10の態様にかかる基板処理方法であって、前記エッチング液供給工程を開始した後に前記帯電工程を開始する。
【0020】
基板処理装置の態様は、基板を保持し、前記基板の中央部を通る回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板の第1主面の全面が正に帯電する第1混合濃度で、純水と添加ガスとを混合した第1混合液を、前記基板に供給して前記基板を帯電させる混合液供給部と、前記基板保持部に保持された前記基板の前記第1主面にエッチング液を供給するエッチング液供給部とを備える。
【発明の効果】
【0021】
基板処理方法の第1の態様、第6の態様および基板処理装置の態様によれば、基板の第1主面が正に帯電するので、第1主面に形成されたパターン間の隙間(トレンチ)、あるいは、孔が小さくても、エッチング液は当該隙間または当該孔に入り込みやすい。よって、エッチング不良の発生率を低減できる。しかも、基板を帯電させる電極等は不要であるので、装置を簡易に構成できる。
【0022】
基板処理方法の第2の態様によれば、第1混合濃度を適切に決定できる。
【0023】
基板処理方法の第3の態様によれば、添加ガスの濃度が高いので、速やかに基板を除電できる。
【0024】
基板処理方法の第4の態様によれば、リンス液供給工程により、エッチング液を洗い流すことができる。
【0025】
基板処理方法の第5の態様によれば、リンス液供給工程で用いられる第3混合液における添加ガスの濃度が帯電工程で用いられる第1混合液よりも大きいので、リンス液供給工程において、基板への帯電を抑制しつつ、エッチング液を洗い流すことができる。逆にいえば、帯電工程における第1混合液の添加ガスの濃度は第3混合液よりも小さいので、帯電工程における基板の帯電量を大きくできる。
【0026】
基板処理方法の第7の態様によれば、帯電工程における第1回転速度が高いので、第1混合液と基板の第1主面との摩擦によって生じる基板の帯電量を増大させる、あるいは、帯電速度を向上させることができる。
【0027】
基板処理方法の第8の態様によれば、エッチング液供給工程の初期の第2回転速度がその後の第3回転速度よりも高いので、初期において、エッチング液を速やかに基板の第1主面の全面に広げることができる。また第3回転速度が低いので、エッチング液が基板の全面に広がった後にはエッチング液の流動性は低くなり、基板に対するエッチングが適切に行われる。
【0028】
基板処理方法の第9の態様によれば、第1混合液の消費量を低減できる。
【0029】
基板処理方法の第10の態様によれば、エッチング液供給工程においても、第1混合液が吐出される。よって、基板の第2主面を帯電させ続けることができる。ひいては、基板の第1主面の帯電をより維持しやすい。
【0030】
また、エッチング液は基板の第1主面の周縁から飛散し、第1混合液は基板の第2主面の周縁から飛散する。よって、エッチング液が、第1主面と第2主面とを連結する端面を介して、第2主面へと回り込むことが抑制される。
【0031】
基板処理方法の第11の態様によれば、基板を帯電させた状態でエッチング液の供給を開始できる。
【0032】
基板処理方法の第12の態様によれば、第1混合液の消費量を低減することができる。
【0033】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】基板の上面側の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図3】基板の帯電分布の一例を概略的に示す図である。
【
図4】基板の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図5】基板処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】回転速度の変化の一例を概略的に示す図である。
【
図7】帯電工程とエッチング液処理工程のタイミングの一例を示す図である。
【
図8】帯電工程とエッチング液処理工程のタイミングの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置な相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0036】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0037】
<基板処理装置の概要>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置100は、基板W1の表面にエッチング液を供給し、基板W1の表面に対してエッチングを行う。基板W1は例えば半導体基板であり、より具体的な一例としてシリコン半導体基板を採用することができる。基板W1は略円板形状を有している。
【0038】
基板処理装置100は、例えば、基板W1に対する洗浄工程として、基板W1の表面の金属膜または酸化膜をエッチングにより除去してもよい。この基板W1の表面には、パターンとしての深穴またはトレンチが形成されており、そのような深穴またはトレンチのサイズが10[nm]未満(例えば2~3[nm])である場合には、電気二重層による基板W1の表面の帯電により、エッチング液が入り込みにくくなる。
【0039】
あるいは、基板処理装置100は、洗浄工程ではなく、パターン形成工程として、基板W1の表面に対してエッチングを行ってもよい。この基板W1の表面には、種々の層が形成されている。より具体的には、レジスト層、絶縁層(例えば酸化物層または窒化物層)、半導体層(例えば多結晶シリコン層または酸化物半導体層)、および、金属層の少なくともいずれか1つが形成されている。これらの層はパターンを形成する。
【0040】
例えば基板W1の最上層にレジスト層としてのレジストパターンが形成され、その下層にエッチング対象が形成される。エッチング対象は、金属層、絶縁層および半導体層の少なくともいずれか1つである。基板処理装置100は基板W1の表面にエッチング液を供給して、下層のエッチング対象に対してエッチングを行ってもよい。
【0041】
本実施の形態では、基板W1の表面に形成されるレジストパターン間の隙間は例えば10[nm]未満であり、例えば2~3[nm]程度である。このような狭間隔のパターンの隙間にも、エッチング液が入り込みにくい。
【0042】
あるいは、基板処理装置100は、次に説明する基板W1に対してエッチングを行ってもよい。
図2は、基板W1の上面のパターンの一例を概略的に示す図である。
図2の例では、基板W1の表面には、3次元フラッシュメモリ(例えば3次元NANDメモリ)を製造するためのパターンが形成されている。基板W1の上面には、半導体層1A(例えば多結晶シリコン層)と絶縁層1Bとが交互に積層された積層体が形成されている。基板処理装置100は基板W1の表面にエッチング液を供給して、当該積層体の側面において、各絶縁層1Bを水平方向にエッチングしてもよい。この場合、エッチング対象は絶縁層1Bであり、半導体層1Aに挟まれる領域がパターン間の隙間に相当する。エッチング液はパターン間の隙間に入り込んで絶縁層1Bに対してエッチングを行う。
【0043】
図2の例では、エッチング液は積層体の相互間に入り込みつつ、半導体層1A間に入り込む必要がある。積層体どうしの間隔p1が狭くても、あるいは、半導体層1A間の間隔p2(つまり絶縁層1Bの厚み)が狭くても、エッチング液はこれらの隙間に入り込みにくい。
【0044】
本実施の形態では、エッチング液が狭いパターンの隙間(もしくは、孔またはトレンチ)に入り込むことができる基板処理装置100を提案している。
【0045】
<基板保持装置の構成>
図1を参照して、基板処理装置100は、基板保持部2と、混合液供給部3と、エッチング液供給部4と、制御部5とを含んでいる。
【0046】
基板保持部2は基板W1を略水平に保持する。具体的には、基板保持部2は、基板W1の厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で、基板W1を保持する。ここでは、基板W1の上面(第1主面)がエッチング対象面である。また、基板保持部2は、基板W1の中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板W1を回転させる。
図1の例では、基板保持部2は、スピンチャック21と、回転機構22とを含む。
【0047】
スピンチャック21は、基板W1を保持する部材であり、スピンベース211と、複数のチャックピン212と、チャック開閉機構213とを含む。スピンベース211は略円板形状を有しており、その上面は基板W1の下面と間隔を空けて対向する。複数のチャックピン212はスピンベース211の上面に突設されている。複数のチャックピン212は、基板W1の周縁に沿って略等間隔となる位置に設けられ、基板W1の周縁を保持する。チャック開閉機構213はチャックピン212を開閉させることができる。具体的には、チャック開閉機構213は、チャックピン212が基板W1の周縁を保持する閉状態と、チャックピン212が基板W1の周縁から離れる開状態とを切り替えることができる。チャック開閉機構213は制御部5によって制御される。
【0048】
回転機構22は、スピンチャック21を回転軸線A1まわりに回転させる機構であり、スピンシャフト221と、スピンモータ222とを含んでいる。スピンシャフト221はスピンベース211の中央部から鉛直下方に沿って延在している。スピンモータ222はスピンシャフト221を回転軸線A1まわりに回転させることにより、回転力をスピンチャック21に伝達させ、スピンチャック21を回転軸線A1まわりに回転させる。これにより、スピンチャック21に保持された基板W1も回転軸線A1まわりに回転する。スピンモータ222は制御部5によって制御される。
【0049】
例えばスピンチャック21の少なくとも一部は絶縁体(例えばセラミック)によって形成されており、基板W1はスピンチャック21を介して絶縁されている。
【0050】
混合液供給部3は、基板保持部2によって保持された基板W1に第1混合液を供給して、基板W1を帯電させる。第1混合液は、純水(DIW:DeIonized Water)および二酸化炭素を第1混合濃度で混合して得られる混合液である。
図1の例では、混合液供給部3は第1混合液を基板W1の下面(第2主面)に供給する。具体的には、混合液供給部3は、ノズル31と、混合液供給管32と、混合部33と、純水供給管34と、純水供給源35と、二酸化炭素供給管36と、二酸化炭素供給源37と、供給バルブ38と、供給バルブ39とを含んでいる。
【0051】
ノズル31は基板W1よりも下方に設けられている。より具体的には、ノズル31は、その吐出口が基板W1の下面の中央部に対して間隔を空けて対向する位置に設けられている。ノズル31は混合液供給管32を介して混合部33に接続されている。
図1の例では、スピンシャフト221は中空シャフトであり、混合液供給管32はこのスピンシャフト221を貫通する。混合部33は純水供給管34を介して純水供給源35に接続されるとともに、二酸化炭素供給管36を介して二酸化炭素供給源37に接続される。純水供給源35は純水供給管34を介して混合部33に純水を供給し、二酸化炭素供給源37は二酸化炭素供給管36を介して混合部33に二酸化炭素を供給する。混合部は純水および二酸化炭素を第1混合濃度で混合して第1混合液を生成し、その第1混合液を、混合液供給管32を介してノズル31に供給する。ノズル31はその吐出口から第1混合液を基板W1の下面の中央部に吐出する。
【0052】
純水供給管34の途中には、供給バルブ38が設けられている。供給バルブ38は純水供給管34内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ38は、純水供給管34内の流路を流れる純水の流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ38は制御部5によって制御される。
【0053】
二酸化炭素供給管36の途中には、供給バルブ39が設けられている。供給バルブ39は二酸化炭素供給管36内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ39は、二酸化炭素供給管36内の流路を流れる二酸化炭素の流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ39は制御部5によって制御される。
【0054】
供給バルブ38および供給バルブ39がそれぞれ純水の流量および二酸化炭素の流量を適切に調整することで、混合部33は所定の第1混合濃度で純水と二酸化炭素とを混合することができる。
【0055】
この第1混合液が基板W1の回転中に基板W1の下面に供給されると、基板W1の下面の中央部に着液した第1混合液は遠心力により基板W1の下面の全面に広がって、基板W1の周縁から外部に飛散する。このとき、第1混合液と基板W1との摩擦によって、基板W1の下面が帯電する。
【0056】
図3は、基板W1の上面の帯電分布の一例を示す図である。
図3は、基板W1の表面上の複数の測定位置における帯電量(実験値)を示している。測定位置の一つは基板W1の中心であり、他の測定位置は、基板W1の直径に沿って略等間隔で並ぶ位置である。
【0057】
図4は、実験で用いた基板W1の構成の一例を概略的に示す図である。基板W1は、シリコン層1aと、シリコン層1aの上面に形成されたシリコン酸化膜1bと、シリコン層1aの下面に形成されたシリコン酸化膜1cとを含んでいる。
【0058】
図3は、
図4に示す基板W1の下面に対して純水を供給したときの帯電分布を、実線のグラフで表している。また
図3は、
図4に示す基板W1の下面に対して、次に説明する第2混合液を供給したときの電位分布を破線のグラフで表している。第2混合液は、第1混合濃度よりも二酸化炭素の濃度が高い第2混合濃度で、純水および二酸化炭素を混合して得られる混合液である。また
図3では、参考のために、処理液を基板W1の下面に供給していないときの電位分布を一点鎖線のグラフで示している。処理液を供給していない場合には、基板W1の上面の帯電量は略零である。
【0059】
図3の実線のグラフで示すように、純水を基板W1の下面に供給したときには、基板W1の下面と純水との摩擦により、基板W1の下面が正に帯電する。基板W1の下面が正に帯電すると、基板W1の内部の誘導分極により、基板W1の上面側には正の電荷が集まることになる。よって、基板W1の上面の帯電量の極性は正となる(
図4も参照)。言い換えれば、基板W1の上面は正に帯電する。
【0060】
純水の比抵抗値は例えば10[MΩ・cm]以上と大きいので、基板W1の下面の帯電量は大きく、その結果、基板W1の上面側の帯電量も大きくなる。しかしながら、基板W1の上面側の帯電量が大きくなり過ぎると、基板W1の上面にパターンが形成されている場合には、そのパターンに悪影響を及ぼす可能性がある。また、
図3から分かるように、純水を用いた場合の基板W1の上面側の帯電分布のばらつきは大きくなる。
【0061】
これに対して、第2混合液を供給したときには、基板W1の上面はわずかにしか帯電しない(
図3参照)。具体的には、基板W1の上面の中央部はわずかに負に帯電し、中央部よりも周縁の周縁部はわずかに正に帯電する。基板W1があまり帯電しないのは、次の理由による。即ち、第2混合液における二酸化炭素の濃度は純水に比べて非常に高いので、第2混合液の比抵抗値は純水に比べて非常に小さく、基板W1の下面が帯電しにくいからである。よって、基板W1の上面側の帯電量は小さい。一方で、
図3から分かるように、比抵抗値の小さい第2混合液を用いれば、基板W1の帯電分布のばらつきは小さくなる。
【0062】
以上のように、純水を用いると帯電量が高くなりすぎる場合があり、また、帯電分布のばらつきも大きくなる。一方で、第2混合液を用いると、基板W1をほとんど帯電できないものの、その帯電分布のばらつきは小さい。
【0063】
そこで、混合液供給部3は基板W1の下面に第1混合液を供給する。この第1混合液の第1混合濃度は、第2混合液の第2混合濃度よりも二酸化炭素の濃度が小さくなるように設定される。つまり、第1混合液の比抵抗値は純水よりも小さく、第2混合濃度よりも大きい。これにより、適切な範囲の帯電量、かつ、より小さいばらつきで、基板W1の上面の全面を帯電させることができる。
【0064】
第1混合液の第1混合濃度は、
図3に示す基板W1上の帯電分布に基づいて予め決定することができる。第1混合濃度を変更して実験を行い、より多くの第1混合濃度に対する帯電分布を取得するとよい。これにより、より好ましい第1混合濃度を決定することが可能である。
【0065】
図1を参照して、エッチング液供給部4は、基板保持部2によって保持された基板W1の上面にエッチング液を供給する。エッチング液としては、基板W1の上面のエッチング対象に応じたエッチング液が採用される。エッチング液としては、酸性のエッチング液を採用することもでき、アルカリ性のエッチング液を採用することもできる。具体的な例として、フッ酸(HF)、バッファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム(NH
4F)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、リン酸(H
3PO
4)、過酸化水素水(H
2O
2)、または、これらの少なくとも2つの混合液を採用することできる。
【0066】
エッチング液供給部4は、ノズル41と、エッチング液供給管42と、供給バルブ43と、エッチング液供給源44とを含んでいる。ノズル41は、基板W1よりも上方に設けられている。具体的には、ノズル41は、その吐出口が基板W1の上面の中央部と間隔を空けて対向する位置に設けられている。ノズル41はエッチング液供給管42を介してエッチング液供給源44に接続される。エッチング液供給源44からのエッチング液はエッチング液供給管42を介してノズル41に供給される。ノズル41はその吐出口から基板W1の上面にエッチング液を吐出する。
【0067】
供給バルブ43はエッチング液供給管42の途中に設けられており、エッチング液供給管42内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ43は、エッチング液供給管42内の流路を流れるエッチング液の流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ43は制御部5によって制御される。
【0068】
エッチング液が基板W1の回転中に基板W1の上面に吐出されることにより、その中央部に着液したエッチング液は遠心力を受けて基板W1の上面の全面に広がり、基板W1の周縁から飛散する。エッチング液は基板W1の上面の全面に作用して、基板W1の上面のエッチング対象をエッチングする。
【0069】
図1の例では、遮断板7が設けられている。遮断板7は基板保持部2よりも上方に設けられており、基板W1の上面と間隔を空けて対向する。遮断板7の下面は、基板W1の直径よりも長い直径を有する略円形状を有しており、基板W1の上面の全域と対向する。遮断板7は昇降機構71に連結されている。昇降機構71は例えばボールねじ機構を有しており、遮断板7を、基板W1に近い処理位置と、基板W1から遠い待機位置との間で昇降させる。基板処理装置100には、遮断板7を回転軸線A1まわりで回転させる回転機構が設けられてもよい。昇降機構71および当該回転機構は制御部5によって制御される。
【0070】
図1の例では、遮断板7の中央部には、鉛直方向に沿って遮断板7を貫通する貫通孔が形成されており、ノズル41はこの貫通孔内のうち基板W1側に設けられている。遮断板7が昇降することにより、ノズル41も遮断板7と一体に昇降する。
【0071】
図1の例では、基板処理装置100には、リンス液供給部6が設けられている。リンス液供給部6は、基板保持部2によって保持された基板W1の表面にリンス液を供給し、基板W1の上面のエッチング液を洗い流す。
【0072】
ここでは、リンス液供給部6は第1リンス液および第2リンス液を供給する。第1リンス液は、例えば、純水、または、純水と二酸化炭素との第3混合液である。第1リンス液が第3混合液である場合、第1リンス液における二酸化炭素の濃度は、混合液供給部3が供給する第1混合液における二酸化炭素の濃度よりも大きい。つまり、混合液供給部3は基板W1を帯電させるために第1混合液を供給するのに対して、リンス液供給部6は基板W1のエッチング液を洗い流すために第1リンス液を供給するので、第1リンス液における二酸化炭素の濃度を、第1混合液よりも大きく設定するのである。これにより、基板W1の帯電を抑制しつつ、エッチング液を洗い流すことができる。
【0073】
第2リンス液は、第1リンス液よりも揮発性の高いリンス液であって、例えばIPA(イソプロピルアルコール)である。第1リンス液の供給後に第2リンス液を供給することにより、基板W1を乾燥させやすくすることができる。
【0074】
図1の例では、リンス液供給部6は、ノズル61と、共通管62と、第1リンス液供給管63と、第2リンス液供給管64と、供給バルブ65と、供給バルブ66と、第1リンス液供給源67と、第2リンス液供給源68とを含んでいる。ノズル61は基板W1よりも上方に設けられている。具体的には、ノズル61は、その吐出口が基板W1の上面の中央部と間隔を空けて対向する位置に設けられている。
図1の例では、ノズル61も、遮断板7の貫通孔内のうち基板W1側に設けられている。遮断板7が昇降することにより、ノズル61も一体で昇降する。
【0075】
ノズル61は共通管62の一端に接続されている。共通管62の他端は第1リンス液供給管63を介して第1リンス液供給源67に接続されるとともに、第2リンス液供給管64を介して第2リンス液供給源68に接続されている。第1リンス液供給源67からの第1リンス液は第1リンス液供給管63および共通管62を介してノズル61に供給される。ノズル61はその吐出口から第1リンス液を基板W1の上面に吐出する。第2リンス液供給源68からの第2リンス液は第2リンス液供給管64および共通管62を介してノズル61に供給される。ノズル61はその吐出口から第2リンス液を基板W1の上面に吐出する。
【0076】
供給バルブ65は第1リンス液供給管63の途中に設けられており、第1リンス液供給管63内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ65は第1リンス液供給管63内の流路を流れる第1リンス液の流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ65は制御部5によって制御される。
【0077】
供給バルブ66は第2リンス液供給管64の途中に設けられており、第2リンス液供給管64内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ66は第2リンス液供給管64内の流路を流れる第2リンス液の流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ66は制御部5によって制御される。
【0078】
なお
図1の例では、ノズル61は第1リンス液および第2リンス液によって兼用されているものの、必ずしもこれに限らない。第1リンス液用のノズルおよび第2リンス液用のノズルが個別に設けられても構わない。
【0079】
図1の例では、基板処理装置100には、ガス供給部8が設けられている。ガス供給部8は不活性ガスを基板保持部2と遮断板7との間の空間に供給する。不活性ガスとしては、例えば窒素またはアルゴンを採用できる。ガス供給部8は、ノズル81と、ガス供給管82と、供給バルブ83と、ガス供給源84とを含んでいる。ノズル81は基板W1よりも上方に設けられている。具体的には、ノズル81は、その吐出口が基板W1の上面の中央部と間隔を空けて対向する位置に設けられている。ノズル81は、遮断板7に設けられた貫通孔である。ノズル81はガス供給管82を介してガス供給源84に接続されている。ガス供給源84からの不活性ガスはガス供給管82を介してノズル81に供給される。ノズル81はその吐出口から不活性ガスを吐出する。
【0080】
供給バルブ83はガス供給管82の途中に設けられており、ガス供給管82内の流路の開閉を切り替える。供給バルブ83はガス供給管82内の流路を流れるガスの流量を調整可能なバルブであってもよい。供給バルブ83は制御部5によって制御される。
【0081】
制御部5は、基板処理装置100の全体を統括的に制御する。制御部5のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部5は、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(Read Only Memory)、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部5のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって基板処理装置100の動作が進行する。なお、制御部5の機能の一部または全部は専用のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0082】
<基板処理装置100の動作>
図5は、基板処理装置100の動作の一例を示すフローチャートである。初期的には遮断板7は待機位置に位置している。まず、基板W1を基板保持部2に保持させる(ステップS1:基板保持工程)。具体的には、不図示の基板搬送ロボットが基板W1を基板保持部2に渡し、基板保持部2が基板W1を保持する。次に、制御部5は昇降機構71を制御して、遮断板7を処理位置に移動させる(ステップS2)。次に、制御部5は回転機構22を制御して、基板W1の回転を開始させる(ステップS3)。具体的には、制御部5はスピンモータ222を回転させ始める。これにより、スピンチャック21に保持された基板W1が回転し始める。
【0083】
次に、制御部5は混合液供給部3を制御して、第1混合液を基板W1の下面に供給させる(ステップS4:帯電工程)。具体的には、制御部5は供給バルブ38および供給バルブ39を開く。これにより、混合液供給部3のノズル31から基板W1の下面の中央部に向かって第1混合液が吐出される。第1混合液の第1混合濃度(純水:二酸化炭素)は、基板W1の上面の全面が正に帯電するように設定される。例えば、第1混合濃度は1[ppm]以下に設定される。帯電工程における基板W1の回転速度は例えば10~1000[rpm]程度に設定される。
【0084】
基板W1の下面の中央部に着液した第1混合液は、基板W1の下面の全面に広がって基板W1の周縁から外側に飛散する。このとき、第1混合液と基板W1と間の摩擦により、基板W1の下面が帯電する。そして、この基板W1の下面の帯電により基板W1の内部において誘導分極が生じ、基板W1の上面が正に帯電する。
【0085】
第1混合液の供給開始から例えば第1所定時間が経過したときに、制御部5は混合液供給部3に第1混合液の供給を停止させる。具体的には、制御部5は供給バルブ38および供給バルブ39を閉じる。第1所定時間は、基板W1の上面の帯電量が所定の帯電量となるのに必要な時間であり、例えば予め設定される。
【0086】
次に、制御部5はエッチング液供給部4を制御して、エッチング液を基板W1の上面に供給させる(ステップS5:エッチング液供給工程)。具体的には、制御部5は供給バルブ43を開く。これにより、エッチング液供給部4のノズル41から基板W1の上面の中央部に向かってエッチング液が吐出される。このエッチング液は基板W1の上面において遠心力を受けて全面に広がり、基板W1の周縁から外側に飛散する。エッチング液は、基板W1の上面のうちエッチング対象をエッチングする。基板W1の上面は正に帯電しているので、エッチング液はパターン間の隙間に入り込みやすい。
【0087】
比較のために、基板W1の上面が正に帯電していない場合について説明する。この場合には、酸性またはアルカリ性のエッチング液の供給により、基板W1の上面は負に帯電する。よって、パターン側壁も負に帯電する。パターン側壁の電荷はエッチング液内のマイナスイオン(例えば二フッ化水素イオン)が反発し、エッチング液が当該隙間に入り込みにくくなる。これにより、エッチング不良が発生する。
【0088】
これに対して、本実施の形態のように基板W1の上面が正に帯電していれば、たとえパターン間の隙間が狭くても、エッチング液がパターン間に入り込みやすく、エッチングを適切に行うことができる。
【0089】
しかも、上述の例では、混合液供給部3は第1混合液を基板W1の下面に供給して、基板W1の下面を帯電させている。よって、この基板W1の下面の帯電を除去しない限り、誘導分極により、基板W1の上面の電荷の極性は正に維持される。つまり、エッチング液供給工程においては、エッチング液の供給により基板W1の上面の正の電荷の一部が中和し得るものの、基板W1の下面の帯電が維持される限り、基板W1の上面の電荷の極性を正に維持できる。したがって、エッチング供給工程の全期間において、基板W1の上面における帯電の極性を正に維持することができ、この全期間において、エッチングを適切に行うことができる。
【0090】
エッチング液の供給開始から例えば第2所定時間が経過したときに、制御部5はエッチング液供給部4にエッチング液の供給を停止させる。具体的には、制御部5は供給バルブ43を閉じる。第2所定時間は、エッチングが十分に行われるのに要する時間であり、例えば予め設定される。
【0091】
次に、制御部5はリンス液供給部6を制御して第1リンス液を基板W1の上面に供給させる(ステップS6:洗浄工程)。具体的には、制御部5は供給バルブ65を開く。これにより、ノズル61から基板W1の上面の中央部に向かって第1リンス液が吐出される。第1リンス液は、純水または第3混合液である。第1リンス液は基板W1の上面に広がってエッチング液を洗い流す。言い換えれば、基板W1の上面のエッチング液が第1リンス液に置換される。
【0092】
第1リンス液の供給開始から例えば第3所定時間が経過したときに、制御部5はリンス液供給部6に第1リンス液の供給を停止させる。具体的には、制御部5は供給バルブ65を閉じる。第3所定時間は、エッチング液が十分に除去されるのに要する時間であり、例えば予め設定される。
【0093】
次に、制御部5はリンス液供給部6を制御して第2リンス液を基板W1の上面に供給させる(ステップS7)。具体的には、制御部5は供給バルブ66を開く。これにより、ノズル61から基板W1の上面の中央部に向かって第2リンス液が吐出される。第2リンス液は基板W1の上面に広がって第1リンス液を洗い流す。言い換えれば、基板W1の上面の第1リンス液が第2リンス液に置換される。
【0094】
次に、制御部5は混合液供給部3に第2混合液を基板W1の下面に供給させる(ステップS8:除電工程)。第2混合液は、純水および二酸化炭素を第2混合濃度で混合して得られる混合液である。第2混合濃度における二酸化炭素の濃度は、第1混合液の第1混合濃度よりも大きい。言い換えれば、第2混合液は、第1混合液よりも比抵抗値が小さい混合液である。制御部5は供給バルブ38および供給バルブ39を開く。制御部5は、二酸化炭素の流量が帯電工程(ステップS4)における二酸化炭素の流量よりも高くなるように供給バルブ39を制御してもよく、あるいは、純水の流量が帯電工程(ステップS4)における純水の流量よりも低くなるように、供給バルブ38を制御してもよい。
【0095】
第2混合液は基板W1の下面に広がって、基板W1の周縁から外側に飛散する。第2混合液の比抵抗値は低いので、基板W1の下面に帯電した電荷が第2混合液へと流れて、基板W1の下面が除電される。これにより、基板W1の上面も除電される。
【0096】
第2混合液の供給開始から例えば第4所定時間が経過したときに、制御部5は混合液供給部3に第2混合液の供給を停止させる。具体的には、制御部5は供給バルブ38および供給バルブ39を閉じる。第4所定時間は、基板W1の下面の電荷が除去されるのに要する時間であり、例えば予め設定される。
【0097】
次に、制御部5は基板W1を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS9:乾燥工程)。具体的な一例として、制御部5はガス供給部8に不活性ガスを供給させつつ、基板W1の回転速度を増大させることにより、基板W1を乾燥させる。次に、制御部5は回転機構22を制御して基板W1の回転を終了させる(ステップS10)。
【0098】
以上のように、基板処理装置100によれば、基板W1の上面が正に帯電した状態で、エッチング液が基板W1の上面に供給される(ステップS4およびステップS5)。したがって、基板W1の上面のパターン間の隙間が狭い場合でも、エッチング液はパターン間の隙間に入り込みやすく、適切にエッチングを行うことができる。これにより、エッチング不良の発生率を低減できる。
【0099】
しかも、基板処理装置100によれば、基板W1を帯電させるために、基板W1に電圧を印加する必要がない。よって、基板W1に電圧を印加するための印加構成(例えば電極等)を設ける必要がない。したがって、より簡易な構成で基板W1を帯電させることができる。
【0100】
なお、
図5の例では、制御部5は除電工程(ステップS8)を行っているものの、基板W1の帯電が問題とならない場合には、除電工程を省略してもよい。
【0101】
<回転速度>
基板保持部2は、基板W1の回転速度がエッチング液供給工程(ステップS5)よりも帯電工程(ステップS4)において高くなるように、基板W1を回転させてもよい。
図6は、基板W1の回転速度の一例を示す図である。
図6の例では、帯電工程(ステップS4)において、制御部5は回転機構22を制御して、比較的高い第1回転速度ω1で基板W1を回転させる。これにより、帯電工程において、第1混合液と基板W1の下面との間の摩擦力が増大し、基板W1の下面における帯電量が増大する。あるいは、基板W1が所定の電圧レベルまで帯電するまでの時間を短縮できる。これにより、基板処理装置100のスループットを向上できる。
【0102】
帯電工程に続くエッチング液供給工程(ステップS5)の初期において、制御部5は回転機構22を制御して、第1回転速度ω1よりも低い第2回転速度ω2で基板W1を回転させる。エッチング液供給工程の初期において第2回転速度ω2を維持した後、制御部5は回転機構22を制御して、第2回転速度ω2よりも低い第3回転速度ω3で基板W1を回転させる。
【0103】
以上のように、エッチング液供給工程の初期においては、やや高い第2回転速度で基板W1が回転する。よって、エッチング液供給工程の初期において、エッチング液を基板W1の上面で速やかに広げることができる。エッチング液が基板W1の全面に広がると、基板W1は第2回転速度ω2よりも低い第3回転速度ω3で回転する。これによれば、エッチング液の流動性を低下させることができるので、エッチング液を基板W1の上面に対してより適切に作用させることができる。よって、基板W1の上面に対してより適切にエッチングを行うことができる。
【0104】
<帯電工程のタイミング>
図5の例では、制御部5は帯電工程(ステップS4)が終了した後にエッチング液供給工程(ステップS5)を行っている。本方法により基板W1の下面に対して第1混合液を供給することにより基板W1に生じた基板W1上の帯電分布は、積極的に除電などを行わない限り、数分から数10分、場合によっては1時間以上という比較的長時間、分布を変えずに維持されるという傾向がある。このため、帯電工程において所望の帯電分布を得るのに必要な装置可動条件と、エッチング液供給工程における装置可動条件とを互いに切り分けることが可能となる。一方で、エッチング液供給工程におけるエッチング液の供給は基板W1の上面に向けてなされ、帯電工程における第1混合液の供給は基板W2の下面に向けてなされるので、制御部5は、両者の工程の一部またはすべてが並行するように処理を実行してもよい。
【0105】
図7は、帯電工程およびエッチング液供給工程のタイミングの一例を示す図である。
図7の例では、制御部5は時刻t1において帯電工程を開始する。つまり、制御部5は時刻t1において混合液供給部3の供給バルブ38および供給バルブ39を開く。次に、制御部5は時刻t2においてエッチング液供給工程を開始する。つまり、制御部5は時刻t2においてエッチング液供給部4の供給バルブ43を開く。次に、制御部5は時刻t3において、帯電工程およびエッチング液供給工程を終了する。つまり、制御部5は時刻t3において供給バルブ38、供給バルブ39および供給バルブ43を閉じる。
【0106】
図7の例において、制御部5は帯電工程をエッチング液供給工程の開始よりも前に開始する。よって、エッチング液供給工程の開始時点において、基板W1の上面は正に帯電している。したがって、エッチング液供給工程の初期においても、エッチングはパターン間の隙間に入り込みやすい。
【0107】
しかも、
図7の例では、制御部5は帯電工程およびエッチング液供給工程を互いに並行して実行している。これによれば、エッチング液供給工程においても、基板W1の下面を帯電させ続けることができる。ひいては、基板の上面の帯電をより維持しやすい。
【0108】
また、エッチング液供給工程において、エッチング液は基板W1の上面の周縁から外側に飛散し、第1混合液は基板W1の下面の周縁から外側に飛散する。よって、エッチング液が基板W1の端面(上面の周縁と下面の周縁とを連結する端面)を介して、基板W1の下面に回り込むことを抑制できる。したがって、基板W1の下面に対してエッチングが行われることを抑制できる。
【0109】
図8は、帯電工程およびエッチング液供給工程のタイミングの他の一例を示す図である。
図8の例では、制御部5は、時刻t11においてエッチング液供給工程を開始し、時刻t12において帯電工程を開始し、時刻t13において帯電工程およびエッチング液供給工程を終了する。
【0110】
図8の例では、制御部5はエッチング液供給工程を開始した後に帯電工程を開始している。よって、エッチング液供給工程の開始から帯電工程が開始されるまでの初期期間においては、基板W1はほとんど帯電していない。しかしながら、エッチング液処理工程の初期では、エッチング処理によるエッチング量が未だ少ない。つまり、この初期期間においては未だエッチングがそれほど進んでいないので、パターン間の隙間は浅い。そこで、
図8の例では、エッチング液供給工程の初期期間では帯電工程を行わず、エッチング液供給工程の途中から帯電工程を開始している。エッチングがある程度進んだ時刻t12以降では帯電工程により基板W1が帯電するので、たとえパターン間の隙間が深くなっても、エッチング液はパターン間の隙間の奥に入り込みやすい。よって、エッチングを適切に行うことができる。
【0111】
しかも、
図8の例では、帯電工程の開始タイミングを遅らせているので、
図7の場合に比して、第1混合液の消費量を低減することができる。
【0112】
以上、基板処理方法および基板処理装置は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、基板処理方法および基板処理装置は、その開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。また上述の実施の形態は適宜に組み合わせることが可能である。
【0113】
例えば帯電用の第1混合液および除電用の第2混合液として、二酸化炭素以外の添加ガスと、純水とを混合して得られる混合液を採用してもよい。添加ガスとしては、例えば、塩化水素ガスまたはアンモニアガスを採用することができる。第1混合液における添加ガスの濃度は、第2混合液における添加ガスの濃度よりも小さい。比抵抗値でいえば、第1混合液の比抵抗値は第2混合液の比抵抗値よりも大きい。これによっても、基板W1の下面を帯電させることができる。
【0114】
あるいは、帯電用の第1混合液および除電用の第2混合液として、純水と薬液との混合液を採用してもよい。薬液しては、例えば、塩酸、アンモニウム水またはTMHA(3-メチル-2-ヘキセン酸)を採用することができる。この場合でも、第1混合液の比抵抗値は第2混合液の比抵抗値よりも大きい。これによっても、基板W1の下面を帯電させることができる。
【0115】
また、上述の例では、混合液供給部3は基板W1の下面に第1混合液を供給した。しかしながら、混合液供給部3は基板W1の上面に第1混合液を供給してもよい。この場合、ノズル31は基板W1よりも上方に設けられる。例えばノズル31は、基板W1の上面の中央部と対向する位置に設けられる。混合液供給部3が基板W1の上面に第1混合液を供給することにより、基板W1の上面は正に帯電する。その後、エッチング液供給部4は、正に帯電した基板W1の上面にエッチング液を供給する。したがって、エッチング液はパターン間の隙間に入り込みやすい。
【0116】
ただし、エッチング液の供給により、基板W1の上面に付着した正の電荷が中和されて除電され得る。よって、エッチング液供給工程において、基板W1の上面の帯電量は時間の経過とともに低下する。よって、エッチング液供給工程の全期間において、基板W1の上面が正に帯電し続けることは難しい。
【0117】
また、混合液供給部3が基板W1の上面に第1混合液を供給する場合には、帯電工程およびエッチング液供給工程の並行実施は困難となる。
【0118】
また、第1混合液が直接に供給される基板W1の上面の帯電分布のばらつきは大きくなる。なぜなら、基板W1の外周ほど回転速度が高く、基板W1の外周側の部分において、第1混合液と基板W1の表面との摩擦力が増大するからである。つまり、基板W1の上面における摩擦力のばらつきが大きいからである。よって、基板W1の中央部分の帯電量と外周部分の帯電量との差異が大きくなる。したがって、基板W1の上面に第1混合液を供給して基板W1の上面を帯電させると、基板W1の上面の帯電分布のばらつきは大きくなる。よって、エッチングの均一性が低下し得る。
【0119】
これに対して、基板W1の下面に第1混合液を供給すると、基板W1の下面の帯電分布はばらつくものの、基板W1の上面の帯電分布は下面に比してばらつきにくい。なぜなら、基板W1の厚み方向において誘導分極が生じることにより、基板W1の下面から遠ざかるにつれて、帯電分布のばらつきが緩やかになるからである。よって、基板W1の上面の帯電分布は
図3に示すように比較的により均一となる。
【符号の説明】
【0120】
2 基板保持部
3 混合液供給部
4 エッチング液供給部
5 制御部
A1 回転軸線
W1 基板
S1 基板保持工程(ステップ)
S4 帯電工程(ステップ)
S5 エッチング液供給工程(ステップ)
S6 リンス液供給工程(ステップ)
S8 除電工程(ステップ)