(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】インシュレータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20221215BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K3/34 B
(21)【出願番号】P 2019060116
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聡史
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅彦
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103712(JP,A)
【文献】特開平03-106756(JP,A)
【文献】特開平10-304605(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1197321(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモータ用ステータのコアのティースを覆うと共に巻線が巻き付けられる巻付け部を有している、インシュレータにおいて、
前記巻付け部は、
前記巻線の巻き付け方向について互いに隣接している第1の巻付け面から第4の巻付け面と、これらの
4つの巻付け面に断続的に設けられ前記巻線の巻き付けを案内することが可能な複数の案内部と、を有し、
各々の前記案内部は、
隣接する前記巻付け面同士の境界に設けられ、かつ、
前記巻線の巻き付け方向に延びている複数の案内溝が、前記モータ用ステータの径方向に配列されることにより、構成されており、
前記境界のなかの任意の境界に設けられた前記案内溝は、
前記巻き付け方向とは反対側に隣接している境界に設けられた前記案内溝に対して、前記モータ用ステータの径方向に直交する直交方向を基準として、前記径方向にオフセットしており、
各々の前記案内溝のオフセットの向き及びオフセットの量は、同一であ
り、
前記第1の巻付け面及び前記第3の巻付け面は、前記モータ用ステータの中心線に沿う方向を向いており、前記第2の巻付け面及び前記第4の巻付け面は、前記モータ用ステータの周方向を向いており、
前記巻線の巻き付け方向を基準として、前記第2の巻付け面の幅は、前記第1の巻付け面の幅よりも狭いことにより、
前記直交方向を基準として、前記巻付け部に前記巻線が巻き付けられた際に、前記第2の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度は、前記第1の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度よりも大きくなることが可能であり、
前記巻線の巻き付け方向を基準として、前記第4の巻付け面の幅は、前記第3の巻付け面の幅よりも狭いことにより、
前記直交方向を基準として、前記巻付け部に前記巻線が巻き付けられた際に、前記第4の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度は、前記第3の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度よりも大きくなることが可能である、ことを特徴とするインシュレータ。
【請求項2】
各々の前記案内溝を、前記端面に設けられた第1の溝と、前記側面に設けられた第2の溝と、に区画すると、
前記境界から前記第1の溝の先端までの寸法は、前記境界から前記第2の溝の先端までの寸法よりも長いことを特徴とする
請求項1に記載のインシュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線の巻き付けを案内することが可能な案内溝を有するインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ用ステータは、電磁鋼板等が積層されて構成されたコアと、このコアに対して取り付けられるインシュレータと、を有している。このインシュレータに関する従来技術として、特許文献1の技術がある。
【0003】
特許文献1に示されたモータは、環状のヨークから外径方向に延びている複数のティースを有している。各々のティースには、筒状のインシュレータが差し込まれることにより取り付けられている。
【0004】
インシュレータのなかの、巻線を巻き付け可能な巻き付け部は、断面が矩形状であり、その表面は、第1の巻付け面~第4の巻付け面から構成されている。第1の巻付け面~第3の巻付け面には、巻線の巻き付けを案内可能な複数の案内溝が3つの面に亘り連続的に形成されている。各々の案内溝は、互いに平行に延びており、ティースに対するインシュレータの差し込み方向と直交している。第4の巻付け面には、案内溝は形成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
このようなインシュレータの巻き付け部に対して、巻線機により、巻線を巻きつける場合、巻線機のノズルから引き出される巻線は、第1~第3の巻付け面上では、案内溝に沿って直線状に巻かれる。
【0007】
一方、第4の巻付け面上では、巻線は斜めに巻かれる。これにより、巻線は、既に巻かれた巻線に隣接する列に移動して巻かれていく。同様に、巻線は、第1~第3の巻付け面上では、直線状に巻かれ、第4の巻付け面上では、斜めに延ばされ、さらに隣接する列に移動する。
【0008】
ノズルにより引き出される巻線は、第3の巻付け面と第4の巻付け面の境界、及び、第4の巻付け面と第1の巻付け面の境界上で曲げられる。そのため、これらの境界上で、巻線に負荷が加わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インシュレータに対して巻線を巻く際に、巻線に加わる負荷を軽減できる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1による発明によれば、少なくともモータ用ステータのコアのティースを覆うと共に巻線が巻き付けられる巻付け部を有している、インシュレータにおいて、
前記巻付け部は、前記巻線の巻き付け方向について互いに隣接している第1の巻付け面から第4の巻付け面と、これらの4つの巻付け面に断続的に設けられ前記巻線の巻き付けを案内することが可能な複数の案内部と、を有し、
各々の前記案内部は、
隣接する前記巻付け面同士の境界に設けられ、かつ、
前記巻線の巻き付け方向に延びている複数の案内溝が、前記モータ用ステータの径方向に配列されることにより、構成されており、
前記境界のなかの任意の境界に設けられた前記案内溝は、
前記巻き付け方向とは反対側に隣接している境界に設けられた前記案内溝に対して、前記モータ用ステータの径方向に直交する直交方向を基準として、前記径方向にオフセットしており、
各々の前記案内溝のオフセットの向き及びオフセットの量は、同一であり、
前記第1の巻付け面及び前記第3の巻付け面は、前記モータ用ステータの中心線に沿う方向を向いており、前記第2の巻付け面及び前記第4の巻付け面は、前記モータ用ステータの周方向を向いており、
前記巻線の巻き付け方向を基準として、前記第2の巻付け面の幅は、前記第1の巻付け面の幅よりも狭いことにより、
前記直交方向を基準として、前記巻付け部に前記巻線が巻き付けられた際に、前記第2の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度は、前記第1の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度よりも大きくなることが可能であり、
前記巻線の巻き付け方向を基準として、前記第4の巻付け面の幅は、前記第3の巻付け面の幅よりも狭いことにより、
前記直交方向を基準として、前記巻付け部に前記巻線が巻き付けられた際に、前記第4の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度は、前記第3の巻付け面に巻き付けられた前記巻線がなす角度よりも大きくなることが可能である、ことを特徴とするインシュレータが提供される。
【0012】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、各々の前記案内溝を、前記端面に設けられた第1の溝と、前記側面に設けられた第2の溝と、に区画すると、
前記境界から前記第1の溝の先端までの寸法は、前記境界から前記第2の溝の先端までの寸法よりも長い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1では、インシュレータの巻付け部は、複数の巻付け面と、これらの複数の巻付け面に断続的に設けられ巻線の巻き付けを案内することが可能な複数の案内部と、を有している。各々の案内部は、隣接する巻付け面同士の境界に設けられている。さらに、各々の案内部は、巻線の巻き付け方向に延びている複数の案内溝が、モータ用ステータの径方向に配列されることにより、構成されている。即ち、各々の巻付け面の両脇に案内溝が設けられているため、各々の巻付け面において、巻線を、一端の案内溝から他端の案内溝へ向かうように案内することが可能である。
【0014】
複数の境界のなかの任意の境界に設けられた案内溝と、巻き付け方向とは反対側に隣接している境界に設けられた案内溝とを比較する。任意の案内溝は、巻き付けの終点側の案内溝(以下、終点溝とする。)である。隣接している案内溝は、巻き付けの始点側の案内溝(以下、始点溝とする。)である。終点側の案内溝は、モータ用ステータの径方向に直交する直交方向を基準として、始点側の案内溝に対してオフセットしている。そのため、始点溝から終点溝へ向かう巻線は、直交方向に対して斜めに延びる。他の巻付け面において互いに隣接する案内溝も同様の構成である。
【0015】
各々の巻付け面において、始点溝に対して、終点溝のオフセットの向き及びオフセットの量は同一である。即ち、各々の巻付け面において、始点溝から、終点溝へ巻線を巻きつける毎に、巻線は、徐々に外径方向又は内径方向のいずれか一方に曲げられる。
【0016】
複数の巻付け面のなかの一面のみにおいて、巻線を曲げる場合と比較すると、巻線を徐々に曲げていくため、巻線に加わる負担を軽減できる。
【0017】
加えて、複数の巻付け面は、モータ用ステータの中心線に沿う方向を向いている端面と、この端面に隣接していると共にモータ用ステータの周方向を向いている側面と、を有している。モータ用ステータの径方向に直交する直交方向を基準として、端面の幅は、側面の幅よりも狭い。そのため、端面に巻き付けられた巻線と、側面に巻き付けられた巻線を比較すると、側面に巻き付けられた巻線の方が、直交方向に対する角度は小さい。
【0018】
端面に巻かれた巻線と、側面に巻かれた巻線を比較すると、側面に巻かれた1段目の巻線と2段目の巻線とが交差する角度も小さくなる。通常、交差する角度が小さい巻線が積み重なると、上段の巻線は、下段の巻線同士の間に配置されやすくなる。段が増えるにしたがい、側面に巻かれた巻線の高さは、端面に巻かれた巻線の高さよりも低くなる。結果として、占積率が高まり、周方向のコイルの厚さ寸法を短くすることができる。モータ用ステータを小型化することができる。
【0019】
請求項2において、各々の案内溝を、端面に設けられた第1の溝と、側面に設けられた第2の溝と、に区画する。境界から第1の溝の先端までの寸法は、境界から第2の溝の先端までの寸法よりも、長い。そのため、直交方向に対して斜めに延びる端面側の巻線を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例によるモータ用ステータの斜視図である。
【
図2】
図1に示されたモータ用ステータ分解斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1の3a-3a線断面図である。
図3(b)は、3b線矢視図である。
【
図4】
図3(a)に示された巻付け部のなかの、第1の巻付け面及び第2の巻付け面の展開図である。
【
図6】第1の巻付け面~第4の巻付け面に対して巻き付けられた巻線を説明する図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例による、第1~第4の巻付け面に対して巻き付けられた巻線を説明する図である。
図7(b)は、比較例による、第1~第4の巻付け面に対して巻き付けられた巻線を説明する図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、第1の巻付け面に巻かれた1段目と2段目の巻線を説明する図である。
図8(c)及び
図8(d)は、第2の巻付け面に巻かれた1段目と2段目の巻線を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、内径方向、外径方向、周方向、及び、軸方向(上下方向)は、モータ用ステータの中心線Cが基準となる。同一形状の部位に付される符号は、一部省略する。
【0022】
図1及び
図2を参照する。
図1には、実施例によるモータ用ステータ10が示されている。このモータ用ステータ10は、積層された多数の電磁鋼板からなるコア11と、このコア11の上側を覆っている第1のインシュレータ20と、コア11の下側を覆っている第2のインシュレータ30と、第1のインシュレータ20及び第2のインシュレータ30に設けられた第1のコイルU1、V1、W1、第2のコイルU2、V2、W2、第3のコイルU3、V3、W3と、第1のインシュレータ20に取り付けられている第1のターミナル15~第3のターミナル17と、を有している。
【0023】
図2を参照する。コア11は、環状のヨーク12と、ヨーク12から内径方向に延びている9つのティース13と、有している。各々のティース13の先端部13aは、内径方向に向かうに連れて幅が広がっている。
【0024】
第1のインシュレータ20は、ヨーク12の上側を覆うことが可能な第1の環状部21と、各々のティース13の上半分を覆うことが可能な9個の第1の巻付け部22と、第1の環状部21から軸方向に沿って上方に延出し周方向に断続的に設けられた9個の第1の長壁部23(延出部)と、隣接する第1の長壁部23同士の間に設けられ第1の長壁部23よりも周方向の寸法が短い9個の第1の短壁部24と、を有している。
【0025】
第2のインシュレータ30は、ヨーク12の下側を覆うことが可能な第2の環状部31と、各々のティース13の下側を覆うことが可能な9個の第2の巻付け部32と、第2の環状部31から軸方向に沿って下方に延出している9個の第2の壁部33と、を有している。
【0026】
以下、第1のインシュレータ20及び第2のインシュレータ30のなかの、コイルV3を構成している巻線40(
図1参照)が巻き付けられている部位の構成について説明する。この説明は、他のコイルが巻き付けられている部位の説明ともいえる。巻線40の結線についての説明は省略する。
【0027】
図3(a)を参照する。第1の巻付け部22及び第2の巻付け部32は、巻線40(
図1参照)が巻き付けられている巻付け部50を構成している。第1の巻付け部22と、第2の巻付け部32とは、それぞれ、U字の断面形状を呈している。第1の巻付け部22の開口側の先端22aと、第2の巻付け部32の開口側の先端32aは、互い対向していると共に、わずかに離れている。
【0028】
なお、実施例では、2つの巻付け部22、32を組み合わせているが、例えば、コア11(
図2参照)の形状によっては、ティース13に差し込み可能な単体の巻付け部を構成しても良い。
【0029】
第1の巻付け部22の上面26と、この上面26の両端から下方に延びている一対の第1の右面27、第1の左面28とは、巻線40が接触する面である。同様に、第2の巻付け部32の下面36と、この下面36の両端から上方に延びている一対の第2の右面37、第2の左面38とは、巻線40が接触する面である。
【0030】
以下、説明の便宜上、第1の右面27及び第2の右面37を含む面を、第1の巻付け面51(側面)とする。同様に、下面36を、第2の巻付け面52(端面)とし、第1の左面28及び第2の左面38を含む面を、第3の巻付け面53(側面)とし、上面26を、第4の巻付け面54(端面)とする。第1の巻付け面51と、第3の巻付け面53は、互いに反対に周方向を向いている。第2の巻付け面52は、下方を向いている。第4の巻付け面54は、上方を向いている。巻線40は、時計回り、即ち、第1の巻付け面51~第4の巻付け面54の順に巻き付けられる。
【0031】
径方向に直交する直交方向を基準として、第2の巻付け面52の幅Wd1(左右方向の寸法)は、第3の巻付け面53の高さWd2(上下方向の寸法)よりも短い。
【0032】
巻付け部50は、巻線40の巻き付けを案内することが可能な第1の案内部60~第4の案内部90を有している。
【0033】
図3(b)を参照する。第1の案内部60は、隣接する第4の巻付け面54及び第1の巻付け面51との第1の境界61を含む双方の面に設けられている。
【0034】
第2の案内部~第4の案内部90も同様の構成である。第2の案内部70は、隣接する第1の巻付け面51及び第2の巻付け面52との第2の境界71を含む双方の面に設けられている。第3の案内部80は、隣接する第2の巻付け面52及び第3の巻付け面53との第3の境界81を含む双方の面に設けられている。第4の案内部90は、隣接する第3の巻付け面53及び第4の巻付け面54との第4の境界91を含む双方の面に設けられている。
【0035】
図4には、展開された第4の巻付け面54及び第1の巻付け面51が示されている。第1の案内部60は、巻線40の巻き付け方向(矢印Wi参照)に延びている複数の第1の案内溝62が、径方向に等間隔に配列されることにより、構成されている。
【0036】
図3(b)及び
図4を参照する。第1の案内溝62を第4の巻付け面54(端面)の端部54aに設けられた第1の溝63と、第1の巻付け面51(側面)の端部51aに設けられた第2の溝64と、に区画する。第1の境界61から第1の溝63の先端63aまでの寸法L1は、第1の境界61から第2の溝64の先端64aまでの寸法L2よりも、長い。
【0037】
図3(a)及び
図4を参照する。第2の案内部70~第4の案内部90も、第1の案内溝62と同一形状の案内溝によって構成されている。各々の面において、互いに対向する案内溝の巻き付け方向の長さは同一である。例えば、第4の案内溝92のうち、第4の巻付け面54に設けられた第1の溝93の寸法はL1である。第2の案内溝72のうち、第1の巻付け面51に設けられた第2の溝94の寸法は、L2である。他の案内溝の寸法の説明は省略する。
【0038】
図5には、軸方向に沿って見下ろした第4の巻付け面54の一部が示されている。第1の案内溝62は、巻付け方向(矢印Wi参照)とは反対側に位置している第4の案内溝92に対して、内径方向(矢印In参照)の直交方向を基準(基準線B参照)として、内径方向にオフセットしている。オフセット量Voは、巻線40の線径Dの四分の一である。即ち、巻き付け方向の終点となる第1の案内溝62は、始点となる第2の案内溝72に対して内径方向にオフセットしている。第1の巻付け面51~第3の巻付け面53における案内溝も同様の構成である。以下、説明する。
【0039】
図6には、第1の巻付け面51~第4の巻付け面54の模式的な展開図が示されている。第1の案内部60~第4の案内部90は、巻付け方向(矢印Wi参照)に断続的に設けられているともいえる。巻線40のうち、第1の巻付け面51に巻き付けられている部位を第1の巻線41とする。同様に、第2の巻線42~第4の巻線44を定義する。
【0040】
第2の案内溝72は、巻付け方向とは反対側に位置している第1の案内溝62に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Voは、巻線40の線径D(
図5参照)の四分の一である。第3の案内溝82は、巻付け方向とは反対側に位置している第2の案内溝72に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Voは、巻線40の線径の四分の一である。第4の案内溝92は、巻付け方向とは反対側に位置している第3の案内溝82に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Voは、巻線40の線径の四分の一である。
【0041】
以上より、第1の案内溝62~第4の案内溝92のオフセットの向きは、いずれも内径方向である。さらに、第1の案内溝62~第4の案内溝92のオフセット量Voは、互いに同一であると共に、線径Dの四分の一に等しい。
【0042】
次に、実施例の効果について説明する。
【0043】
図5及び
図6を参照する。第1の案内溝62は、巻付け方向とは反対側に位置している第4の案内溝92に対して、内径方向にオフセットしている。そのため、第4の案内溝92から第1の案内溝62へ向かう巻線40は、直交方向に対して内径方向側に斜めに延びる。
【0044】
同様に、第2の案内溝72は、巻付け方向とは反対側に位置している第1の案内溝62に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Vo2は、巻線40の線径の略四分の一である。第3の案内溝82は、巻付け方向とは反対側に位置している第2の案内溝72に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Vo3は、巻線40の線径の略四分の一である。第4の案内溝92は、巻付け方向とは反対側に位置している第3の案内溝82に対して、内径方向にオフセットしている。オフセット量Vo4は、巻線40の線径の略四分の一である。
【0045】
即ち、各々の巻付け面において、始点である案内溝から、終点である案内溝へ巻線40を巻きつける毎に、巻線40は、徐々に内径方向へ向かう。各々のオフセット量は、線径よりも小さい。
【0046】
図7(a)を参照する。比較例では、第1の巻付け面101~第3の巻付け面103では、巻線105は直線的に巻き付けている。第4の巻付け面104のみにおいて、終点となる案内溝106は、始点となる案内溝107に対してオフセットしている。オフセット量Voは、線径Dに等しい。
【0047】
図7(b)を参照する。実施例では、各々のオフセット量Voは、線径Dよりも小さい。即ち、巻線40は、各々の巻付け面において、徐々に内径方向に折り曲げられていくため、巻線40に加わる負荷を分散できる。
【0048】
加えて、上述の通り、案内溝は断続的に境界に設けられている。4つの巻付け面全体に亘り連続的に設けられている案内溝と比較すると、金型の製造コストを抑えることができ、インシュレータの成形性が高まる。
【0049】
図3(a)及び
図6を参照する。第2の巻付け面52の幅Wd1は、第1の巻付け面51の幅Wd2よりも狭い。さらに、案内溝のオフセットの量はいずれもVoである。そのため、基準線Bと平行な線を基準として、第2の巻線42がなす角度αは、第1の巻線41がなす角度βよりも大きい。
【0050】
図8(a)には、第1の巻付け面51に巻き付けられた第1の巻線41のうち、1段目の巻線41aと2段目の巻線41bが示されている。
図8bには、第2の巻付け面52に巻き付けられた第2の巻線42のうち、1段目の巻線42aと2段目の巻線42bが示されている。第1の巻線41a、41b同士が交差する角度γは、第2の巻線42a、42b同士が交差する角度δよりも小さい。
【0051】
通常、交差する角度が小さい巻線を積み重ねると、上段の巻線は、下段の巻線同士の間に若干食い込んで配置されやすくなる。即ち、上段の巻線が、下段の巻線同士の間に落ち込んで、下段の巻線に支持されるように配置されるため、第1の巻付け面51に巻かれた第1の巻線41の高さH1(
図8(c)参照)は、第2の巻付け面52に巻かれた巻線42の高さH2よりも低くなる(
図8(d)参照)。
【0052】
結果、占積率が高まり、コイルV3(
図1参照)の周方向の厚みは、軸方向の厚みよりも短くすることができるため、モータ用ステータ10を小型化することができる。
【0053】
図3(b)及び
図4を参照する。第1の境界61から第1の溝63の先端63aまでの寸法L1は、第1の境界61から第2の溝64の先端64aまでの寸法L2よりも、長い。
【0054】
図6を参照する。第2の巻線42の角度αは、第1の巻線41の角度βよりも大きい。そのため、より大きな角度で内径方向に案内されている巻線40を確実に保持することができる。
【0055】
なお、本実施例では、1つの案内溝に1つの巻線40が適合するような寸法としているが、例えば、溝の幅を広げることにより、1つの案内溝に複数の巻線40が適合するような寸法としてもよい。さらに、巻付け部が外径方向に延びているインシュレータに対しても、巻付け部50の構成を適用できる。即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10…モータ用ステータ
11…コア
20…第1のインシュレータ
22…第1の巻付け部、22a…先端
30…第2のインシュレータ
32…第2の巻付け部、32a…先端
40…巻線
41…第1の巻線
42…第2の巻線
43…第3の巻線
44…第4の巻線
50…巻付け部
51…第1の巻付け面、51a…端部
52…第2の巻付け面
53…第3の巻付け面
54…第4の巻付け面、54a…端部
60…第1の案内部
61…第1の境界
62…第1の案内溝
63…第1の溝
64…第2の溝
70…第2の案内部
71…第2の境界
72…第2の案内溝
73…第1の溝
74…第2の溝
80…第3の案内部
81…第3の境界
82…第3の案内溝
83…第1の溝
84…第2の溝
90…第4の案内部
91…第4の境界
92…第4の案内溝
93…第1の溝
94…第2の溝
B…基準線(直交方向)
C…モータ用ステータの中心線
D…巻線の線径
In…内径方向
Vo…オフセット量
Wd1…端面の幅
Wd2…側面の幅(高さ)
Wi…巻き付け方向
U1~W3…コイル