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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】駅ホームの補強構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20221215BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D29/02 301
E02D29/02 304
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019063740
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165094
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 秀明
(72)【発明者】
【氏名】野本 将太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慶太
(72)【発明者】
【氏名】金田 淳
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】石橋 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 愛
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-103142(JP,A)
【文献】特開2012-026250(JP,A)
【文献】特開2008-144442(JP,A)
【文献】特開昭62-288205(JP,A)
【文献】特開2014-062407(JP,A)
【文献】特開2004-036105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の既存の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記石積壁における最上段の石積ブロックの上には、その石積ブロックの上面に一端側の下面を接触させ、他端側が前記盛土における主働すべり面を越えて配置されている上板部材が配設されており、
前記上板部材の前記他端側には、下方に向けて突き出しており、前記盛土に没入される突出部が設けられており、
前記石積壁の延設方向に亘って複数の前記上板部材が並設されて、前記盛土に没入されている前記突出部が前記駅ホームの延在方向に連続して配置されており、
前記上板部材の前記他端側の下面および前記突出部が前記石積壁との間の前記盛土を抱えるようにして、前記上板部材と前記石積壁の上部と前記盛土の一部とが一体化した態様に構成されていることを特徴とする駅ホームの補強構造。
【請求項2】
前記上板部材の一端は、前記最上段の石積ブロックの上面に、締結部材を用いて固定されていることを特徴とする請求項1に記載の駅ホームの補強構造。
【請求項3】
石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の既存の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記石積壁における最上段の石積ブロックの上には、その石積ブロックの上に所定の空間を設けるための空間形成部材が固定され、前記空間形成部材の上にはその空間形成部材の上面に一端側の下面を接触させ、他端側が前記盛土における主働すべり面を越えて配置されている上板部材が固定されており、
前記上板部材の前記他端側には、下方に向けて突き出しており、前記盛土に没入される突出部が設けられており、
前記石積壁の延設方向に亘って複数の前記上板部材が並設されて、前記盛土に没入されている前記突出部が前記駅ホームの延在方向に連続して配置されており、
前記上板部材の前記他端側の下面および前記突出部が前記石積壁との間の前記盛土を抱えるようにして、前記上板部材と前記空間形成部材と前記石積壁の上部と前記盛土の一部とが一体化した態様に構成されていることを特徴とする駅ホームの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土式の駅ホームの補強構造に係り、石積ブロックを積み重ねた石積壁で盛土を支えた構造の駅ホームを補強する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石積ブロックを積み重ねた組積式の石積壁で盛土を支えている盛土式の駅ホームが供用されている。既存の駅ホームのなかには供用後長期間経過しているものがあり、近時の耐震基準を満たさなくなったものがある。
そのような盛土式の駅ホームの石積壁は、大規模地震時の外力によって、積み石崩落やすべり崩壊などを起こして崩れてしまうことが懸念されている。
こうした組積式の石積壁を補強するのに、石積壁の前面に伸縮性を有する補強ネットを固定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-221371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、石積壁が崩れてしまった場合に石積ブロックが拡散しないようにするためのものであるので、崩れた石積ブロックが駅ホームから軌道側に拡がらないようにすることはできるが、石積壁が崩れて駅ホーム自体が損壊することを防ぐことはできないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、駅ホームが損壊するのを防ぐことができる駅ホームの補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の既存の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記石積壁における最上段の石積ブロックの上には、その石積ブロックの上面に一端側の下面を接触させ、他端側が前記盛土における主働すべり面を越えて配置されている上板部材が配設されており、
前記上板部材の前記他端側には、下方に向けて突き出しており、前記盛土に没入される突出部が設けられており、
前記石積壁の延設方向に亘って複数の前記上板部材が並設されて、前記盛土に没入されている前記突出部が前記駅ホームの延在方向に連続して配置されており、
前記上板部材の前記他端側の下面および前記突出部が前記石積壁との間の前記盛土を抱えるようにして、前記上板部材と前記石積壁の上部と前記盛土の一部とが一体化した態様に構成されているようにした。
なお、ここでの石積ブロックは、石材からなるブロックと、コンクリート製のブロックのいずれであってもよい。
【0007】
かかる構成の駅ホームの補強構造であれば、石積壁における最上段の石積ブロックに固定されている上板部材の突出部が、石積壁の内側の盛土に没入されているので、盛土の主働すべり面ですべり破壊が生じるようなことがあっても、上板部材が石積壁を盛土側に拘束するように支えることができる。
特に、上板部材の一端側が石積壁の最上段の石積ブロックに固定され、上板部材の他端側が主働すべり面を越えて配置されているので、盛土の主働すべり面でのすべり破壊に対して好適に抗することができる。
このような駅ホームの補強構造を既存の駅ホームに構築すれば、例えば大規模地震が発生した場合でも、石積壁が崩壊することはなく、駅ホームが損壊してしまうことはない。
また、盛土に没入されている突出部が、駅ホームの延在方向に連続して設けられていれば、石積壁の延設方向に亘って上板部材が石積壁を盛土側に拘束するように支えることができるので、盛土の主働すべり面でのすべり破壊に対して、より好適に抗することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記上板部材の一端は、前記最上段の石積ブロックの上面に、締結部材を用いて固定されているようにする。
【0009】
上板部材と最上段の石積ブロックが締結部材を用いて固定されていれば、上板部材が石積壁を盛土側に拘束するように支え易くなるので、盛土の主働すべり面でのすべり破壊に対して、より好適に抗することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、この発明は、
石積ブロックが積み重ねられた石積壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その石積壁が内側の既存の盛土を支えている構造の駅ホームを補強する駅ホームの補強構造であって、
前記石積壁における最上段の石積ブロックの上には、その石積ブロックの上に所定の空間を設けるための空間形成部材が固定され、前記空間形成部材の上にはその空間形成部材の上面に一端側の下面を接触させ、他端側が前記盛土における主働すべり面を越えて配置されている上板部材が固定されており、
前記上板部材の前記他端側には、下方に向けて突き出しており、前記盛土に没入される突出部が設けられており、
前記石積壁の延設方向に亘って複数の前記上板部材が並設されて、前記盛土に没入されている前記突出部が前記駅ホームの延在方向に連続して配置されており、
前記上板部材の前記他端側の下面および前記突出部が前記石積壁との間の前記盛土を抱えるようにして、前記上板部材と前記空間形成部材と前記石積壁の上部と前記盛土の一部とが一体化した態様に構成されているようにした。
なお、ここでの石積ブロックは、石材からなるブロックと、コンクリート製のブロックのいずれであってもよい。
【0013】
かかる構成の駅ホームの補強構造であれば、石積壁における最上段の石積ブロックに空間形成部材を介して固定されている上板部材の突出部が、石積壁の内側の盛土に没入されているので、盛土の主働すべり面ですべり破壊が生じるようなことがあっても、上板部材が石積壁を盛土側に拘束するように支えることができる。
具体的には、上板部材の一端側が空間形成部材を介して石積壁の最上段の石積ブロックに固定され、上板部材の他端側が主働すべり面を越えて配置されているので、盛土の主働すべり面でのすべり破壊に対して好適に抗することができる。
このような駅ホームの補強構造を既存の駅ホームに構築すれば、例えば大規模地震が発生した場合でも、石積壁が崩壊することはなく、駅ホームが損壊してしまうことはない。
特に、空間形成部材によって石積ブロックと上板部材の間に所定の空間を設けることができるので、例えば、駅ホームの上板部材の上にホームドア設備を設置した場合に、その空間にホームドア設備のケーブルなどを通すことが可能になる。
また、盛土に没入されている突出部が、駅ホームの延在方向に連続して設けられていれば、石積壁の延設方向に亘って上板部材が石積壁を盛土側に拘束するように支えることができるので、盛土の主働すべり面でのすべり破壊に対して、より好適に抗することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駅ホームが損壊するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1の駅ホームの補強構造を示す断面図(a)と、正面図(b)である。
図2】実施形態1の駅ホームの補強構造の変形例を示す断面図である。
図3】実施形態2の駅ホームの補強構造を示す断面図(a)と、正面図(b)である。
図4】駅ホームの補強構造と主働すべり面との相関に関する説明図である。
図5】駅ホームの補強構造と主働すべり面との相関に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る駅ホームの補強構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
本実施形態では、複数の石積ブロック1が積み重ねられてなる既設の石積壁2が内側の盛土3を支えている構造の盛土式の駅ホームであって、駅ホームの延在方向に沿って石積壁2が延設されている駅ホームを補強するための補強構造について説明する。
この駅ホームの石積壁2はその外面の大部分が鉛直面を成すように複数の石積ブロック1が積まれて形成されている。
なお、本実施形態でいう石積ブロック1は、石材からなるブロックと、コンクリート製のブロックのいずれであってもよい。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態の駅ホームの補強構造100は、例えば、図1(a)(b)に示すように、石積壁2における最上段の石積ブロック1の上に配設された上板部材40等を備えている。
本実施形態の石積壁2は、石積ブロック1が6段積みされてなり、下から2段目の途中まで地中に埋没している。
【0021】
なお、この駅ホームを補強する前、石積壁2における最上段の石積ブロック1の上には「笠石」が積み重ねられていたが、駅ホームの補強構造100を構築するにあたり、その笠石を外して最上段の石積ブロック1の上に上板部材40を固定した。
また、笠石を外して最上段の石積ブロック1の上に上板部材40を固定した後、上板部材40で覆われていない盛土3の上に、アスファルト舗装面4を形成した。
【0022】
上板部材40は、例えば、コンクリート製の板状部材であり、長ネジなどの締結部材Bを用いて最上段の石積ブロック1に固定されている。
具体的には、上板部材40の一端が、最上段の石積ブロック1の上面に、締結部材Bを用いて固定されている。
なお、締結部材Bは、上板部材40や石積ブロック1に直接ねじ込む(打ち込む)ようにしても、予め上板部材40や石積ブロック1にドリルであけた穴に螺入するようにしてもよい。
【0023】
具体的には、上板部材40は、最上段の石積ブロック1の上面に一端側の下面を接触させ、他端側が盛土3における主働すべり面Qを越える配置に配設されている。
その上板部材40の他端側には、下方に向けて突き出しており、盛土3に没入される突出部41が設けられている。上板部材40の突出部41は、上板部材40の一端側の厚み程度、盛土3に没入されるサイズであることが好ましい。
特に、石積壁2の延設方向に亘って、複数の上板部材40が並設されており、盛土3に没入されている突出部41が駅ホームの延在方向に連続して配置されている。
なお、盛土3における主働すべり面Qは、盛土3を構成する土や砂礫などの組成に応じて異なるものであり、図中に示した主働すべり面Qは、本実施形態を説明するための一例である。
【0024】
この上板部材40の一端側が、石積壁2における最上段の石積ブロック1に固定され、上板部材40の他端側の突出部41が、石積壁2が支えている盛土3に没入されていることで、上板部材40の突出部41が石積壁2との間の盛土3を抱えるようにして、上板部材40と石積壁2の上部(例えば上側2段)と盛土3の一部が一体化した態様になっている。
また、盛土3に没入されている突出部41は、上板部材40に水平抵抗力を付与する機能も有している。
【0025】
このような駅ホームの補強構造100であれば、石積壁2における最上段の石積ブロック1に固定されている上板部材40の突出部41が、石積壁2の内側の盛土3に没入されているので、盛土3の主働すべり面Qですべり破壊が生じるようなことがあっても、上板部材40が石積壁2を盛土3側に拘束するように支えることができる。
特に、上板部材40の一端側が石積壁2の最上段の石積ブロック1に固定され、上板部材40の他端側が主働すべり面Qを越えて配置されているので、盛土3の主働すべり面Qでのすべり破壊に対し、好適に抗することができる。
つまり、本実施形態の駅ホームの補強構造100を既存の駅ホームに構築すれば、例えば大規模地震が発生した場合でも、石積壁2が崩壊することはなく、駅ホームが損壊してしまうことはない。
このように、本実施形態の駅ホームの補強構造100であれば、駅ホームが損壊するのを防ぐことができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図2に示すように、上板部材40と最上段の石積ブロック1を固定するための締結部材Bが配設されていなくてもよい。
例えば、駅ホームの基礎である盛土3の安定性が高い場合には、上板部材40が石積壁2の裏側の盛土3を圧密して、上板部材40と石積壁2の上部と盛土3の一部が一体化していることで、盛土3の主働すべり面Qでのすべり破壊に対して抗することができるので、締結部材Bが設けられていなくても上板部材40が石積壁2を盛土3側に拘束することができる。
このような駅ホームの補強構造100であっても、駅ホームが損壊するのを防ぐことができる。
【0027】
(実施形態2)
次に、本発明に係る駅ホームの補強構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
実施形態2の駅ホームの補強構造100は、既存の駅ホームにホームドアを設置するのにあわせて駅ホームを補強するための補強構造である。
【0028】
実施形態2の駅ホームの補強構造100は、例えば、図3(a)(b)に示すように、石積壁2における最上段の石積ブロック1の上に固定されている空間形成部材としてのH形鋼60と、H形鋼60の上に固定されている上板部材40と、H形鋼60と同じ高さ位置でH形鋼60よりも盛土3側に設けられているL形鋼61等を備えている。
なお、実施形態2での石積壁2は、石積ブロック1が5段積みされてなり、下から2段目の途中まで地中に埋没している。
【0029】
H形鋼60は、石積ブロック1(石積壁2)の上に所定の空間62を設けるために、長ネジなどの締結部材Bを用いて最上段の石積ブロック1に固定されている。
L形鋼61は、石積ブロック1の上の空間62をより広くするための機能と、盛土3が空間62に侵入しないようする土留めの機能を有している。特に、このL形鋼61は、石積壁2の裏側の盛土3を押圧して圧密した状態で配設されている。
本実施形態では、H形鋼60とL形鋼61によって、駅ホームに設置するホームドア設備Dのケーブルなどを通すための空間62を形成している。
なお、L形鋼61は空間形成部材の一部としても機能している。
【0030】
また、H形鋼60は、剛性を有する鋼材であるので、上板部材40上であって、H形鋼60の上方に設置されるホームドア設備Dを好適に支えることができる強度を有している。
【0031】
上板部材40は、例えば、コンクリート製の板状部材であり、長ネジなどの締結部材Bを用いてH形鋼60に固定されている。
具体的には、上板部材40は、H形鋼60の上面に一端側の下面を接触させ、他端側が盛土3における主働すべり面Qを越える配置に配設されている。この上板部材40の突出部41も盛土3に没入されている。
そして、この上板部材40の上にホームドア設備Dの本体が設置される。
【0032】
このような駅ホームの補強構造100であっても、上板部材40の一端側がH形鋼60を介して石積壁2の最上段の石積ブロック1に固定され、上板部材40の他端側が主働すべり面Qを越えて配置されているので、盛土3の主働すべり面Qですべり破壊が生じるようなことがあっても、上板部材40が石積壁2を盛土3側に拘束するように支えることができ、そのすべり破壊に対して好適に抗することができる。
つまり、ホームドアを設置する既存の駅ホームに、この駅ホームの補強構造100を構築すれば、例えば大規模地震が発生した場合でも、石積壁2が崩壊することはなく、駅ホームが損壊してしまうことはない。
この駅ホームの補強構造100であれば、ホームドアを設置した駅ホームが損壊するのを防ぐことができる。
【0033】
なお、以上の実施の形態においては、断面視L字形状を呈するL形鋼61をH形鋼60と併用して、石積ブロック1の上に空間62を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、断面視「コ」字形状を呈する鋼材(61)をH形鋼60と併用して、石積ブロック1の上に空間62を形成してもよい。
また、H形鋼60のみで石積ブロック1の上に空間62を形成してもよい。
【0034】
次に、本発明に係る駅ホームの補強構造100と主働すべり面Qとの相関について説明する。
【0035】
例えば、図4に示すように、幅がbである石積ブロックと、幅がbである石積ブロックとの境界に交差する主働すべり面Qがある場合、幅がbである石積ブロックと上板部材(PC板)の一端側を締結部材によって一体化し、その上板部材の他端側が主働すべり面Qを越えて配置された駅ホームの補強構造100を構築し、滑り線(主働すべり面Q)の発生深さH[m]と、上板部材の必要幅L[m]と、上板部材の突出部の根入れ深さh[m]が、図中の相関を満たすようにすれば、駅ホーム(石積壁)が損壊するのを防ぐことができる。
【0036】
なお、図4において、幅がbである石積ブロックと、幅がbである石積ブロックとの境界に交差する主働すべり面Qがある場合、幅がbである石積ブロックまでを上板部材(PC板)と一体化し、その上板部材の一部が主働すべり面Qを越えて配置された駅ホームの補強構造100を構築するようにすれば、上記と同様に、駅ホーム(石積壁)が損壊するのを防ぐことができる。
【0037】
また、石積ブロックと上板部材(PC板)を締結部材で一体化しない場合において、例えば、図5に示すように、幅がbである石積ブロックと、幅がbである石積ブロックとの境界に交差する主働すべり面Qがある場合、上板部材の一部が主働すべり面Qを越えて配置された駅ホームの補強構造100を構築し、滑り線(主働すべり面Q)の発生深さH[m]と、上板部材の必要幅L,L[m]と、上板部材の突出部の根入れ深さh[m]が、図中の相関を満たすようにすれば、駅ホーム(石積壁)が損壊するのを防ぐことができる。
【0038】
なお、本発明に係る駅ホームの補強構造100は、石積壁2のあるホーム両側に列車が発着する島式の駅ホームを補強する場合にも、ホームの片側に列車が発着する相対式ホームであって石積壁2があるホーム片面を補強する場合にも適用することができる。
【0039】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 石積ブロック
2 石積壁
3 盛土
4 アスファルト舗装面
40 上板部材
41 突出部
60 H形鋼(空間形成部材)
61 L形鋼
62 空間
100 駅ホームの補強構造
Q 主働すべり面
B 締結部材
D ホームドア設備
図1
図2
図3
図4
図5