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特許7194630モデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】モデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20221215BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N1/00 E
G01N1/00 102D
G01N27/26 391B
G01N27/416 331
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019069234
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165931
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】関谷 高幸
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 靖昌
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-201048(JP,A)
【文献】特許第4944972(JP,B2)
【文献】米国特許第05614655(US,A)
【文献】特開2017-181213(JP,A)
【文献】実開昭60-090630(JP,U)
【文献】特開2013-228283(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132049(WO,A1)
【文献】特開昭55-033628(JP,A)
【文献】特開2017-181214(JP,A)
【文献】特開昭61-138316(JP,A)
【文献】特開2020-165970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 27/26
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象が装着されたチャンバに、モデルガス生成装置から所定のモデルガスを供給して前記検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査装置であって、
前記モデルガス生成装置は、
複数のガス供給源と、
各前記ガス供給源に対応して接続された複数の開閉器と、
各前記ガス供給源に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルと、
複数の前記流量固定ノズルからの複数種のガスを混合する混合器と、を有し、
複数の前記ガス供給源のうちの第1ガス供給源に対して、それぞれ流量が異なる複数の前記流量固定ノズルが備えられており、
前記第1ガス供給源に対して備えられた複数の前記流量固定ノズルの各々に対して前記開閉器がそれぞれ備えられており、
複数の前記ガス供給源のうちの第2ガス供給源に対して、それぞれ流量が異なる複数の前記流量固定ノズルが備えられており、
前記第2ガス供給源に対して備えられた複数の前記流量固定ノズルの各々に対して前記開閉器がそれぞれ備えられている、モデルガス応答特性検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のモデルガス応答特性検査装置において、
複数の前記ガス供給源のうちの第3ガス供給源に対して、それぞれ流量が異なる複数の前記流量固定ノズルが備えられており、
前記第3ガス供給源に対して備えられた複数の前記流量固定ノズルの各々に対して前記開閉器がそれぞれ備えられている、モデルガス応答特性検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモデルガス応答特性検査装置において、
各前記ガス供給源に対応して、前記複数の開閉器の後段に前記複数の流量固定ノズルが接続されている、モデルガス応答特性検査装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のモデルガス応答特性検査装置において、
前記混合器と前記チャンバとの間に接続された流量固定ノズルを有する、モデルガス応答特性検査装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のモデルガス応答特性検査装置において、
前記流量固定ノズルが臨界ノズルである、モデルガス応答特性検査装置。
【請求項6】
検査対象が装着されたチャンバに、所定のモデルガスを供給して前記検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査方法において、
複数のガス供給源からそれぞれ出力された複数のガスを、各前記ガス供給源に対応して接続された複数の開閉器に送るステップと、
前記複数の開閉器からの複数のガスを、各前記ガス供給源に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルに送るステップと、
前記複数の流量固定ノズルからの複数のガスを混合器で混合するステップと、
前記混合器からの混合ガスを前記チャンバに供給するステップと、を有し、
複数の前記ガス供給源のうちの第1ガス供給源に対して、それぞれ流量が異なる複数の前記流量固定ノズルが備えられており、
前記第1ガス供給源に対して備えられた複数の前記流量固定ノズルの各々に対して前記開閉器がそれぞれ備えられており、
複数の前記ガス供給源のうちの第2ガス供給源に対して、それぞれ流量が異なる複数の前記流量固定ノズルが備えられており、
前記第2ガス供給源に対して備えられた複数の前記流量固定ノズルの各々に対して前記開閉器がそれぞれ備えられている、モデルガス応答特性検査方法。
【請求項7】
請求項記載のモデルガス応答特性検査方法において、
前記混合器からの混合ガスを1つの流量固定ノズルに送るステップと、
前記1つの流量固定ノズルからの混合ガスを前記チャンバに送るステップと、を有する、モデルガス応答特性検査方法。
【請求項8】
請求項又は記載のモデルガス応答特性検査方法において、
前記流量固定ノズルが臨界ノズルである、モデルガス応答特性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載のセンサ素子の検査方法は、検査効率が優れると共に、信頼性の高い検査を行える検査方法を提供することを課題としている。
【0003】
当該課題を解決するため、特許文献1記載の検査方法は、素子挿脱部と、テーパー部と、ガス導入部とを備えるチャンバを準備する。素子挿脱部は、一方端側が外部に開口した開口部であると共に、他方端側が有底端部である略筒状体であり、開口部から続く略筒状の空間である。テーパー部は、素子挿脱部と連接し、かつ、内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間である。ガス導入部は、テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間である。
【0004】
そして、センサ素子を、チャンバとの間に隙間を設けつつ先端がテーパー部に達するようにチャンバ内へ挿入した状態で、所定のガス供給手段からガス導入部に設けた供給口を通じてチャンバに対し検査用ガスを供給し、検査用ガスを隙間から流出させつつ、センサ素子の電気的測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4944972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、NOxセンサ等のガスセンサの動特性評価には、応答測定が必要である。応答測定は排気ガス中のNOx濃度の変化とセンサの出力の追随性を評価する測定である。
【0007】
NOx濃度を動的に変化させる例として、エンジン試験ベンチを使って、エンジンの運転条件を変更して排気ガスの成分を変化させたり、バーナーを使って燃焼条件を変更することで排気ガスの成分を変化させたりする。しかし、これらの方法は、NOx濃度変化だけでなく、環境(温度、流量、圧力、水分量等)の変化や、その他のガス成分の濃度変化も伴うため、NOx濃度変化に対する動特性の評価に適さない。
【0008】
また、マスフローコントローラによるモデルガス生成装置を使うと、上記のような環境変化を起こさずに、NOx濃度変化を起こすことは可能だが、マスフローコントローラによるNOx濃度調整に時間がかかってしまい、より早いガスセンサの応答性を評価するには、適さない。
【0009】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、環境変化による影響や目的のガス濃度の変化の影響なしに、目的のガス濃度の変化を短時間に起こすことができ、ガスセンサ等の動特性を検査する上で好適なモデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、検査対象が装着されたチャンバに、モデルガス生成装置から所定のモデルガスを供給して前記検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査装置であって、前記モデルガス生成装置は、複数のガス供給源と、各前記ガス供給源に対応して接続された複数の開閉器と、各前記ガス供給源に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルと、複数の前記ガス供給源からの複数種のガスを混合する混合器と、を有する。
【0011】
本発明の第2の態様は、検査対象が装着されたチャンバに、所定のモデルガスを供給して前記検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査方法において、複数のガス供給源からそれぞれ出力された複数のガスを、各前記ガス供給源に対応して接続された複数の開閉器に送るステップと、前記複数の開閉器からの複数のガスを、各前記ガス供給源に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルに送るステップと、前記複数の流量固定ノズルからの複数のガスを混合器で混合するステップと、前記混合器からの混合ガスを前記チャンバに供給するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るモデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法によれば、目的のガス濃度以外の環境変化なしに、当該目的のガス濃度の変化を短時間に起こすことができ、ガスセンサ等の動特性を検査する上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るモデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法に供されるセンサ素子の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るモデルガス応答特性検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】比較例に係るモデルガス応答特性検査装置を示すブロック図である。
図4】流量調整器(マスフローコントローラ)の流量による精度の違いを示すグラフである。
図5】比較例に係るモデルガス応答特性検査装置を使用した場合の設定濃度に対する各ガスの濃度精度誤差、混合ガスの精度誤差を示す表1である。
図6】実施例に係るモデルガス応答特性検査装置を使用した場合の設定濃度に対する各ガスの濃度精度誤差、混合ガスの精度誤差を示す表2である。
図7】実施例、比較例1及び2によるガスセンサの応答性能検査の評価結果を示す表3である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るモデルガス応答特性検査装置及びモデルガス応答特性検査方法を、ガスセンサの応答性能検査に適用した実施の形態例を図1図7を参照しながら説明する。
【0015】
先ず、本実施形態に係るモデルガス応答特性検査装置(以下、検査装置10と記す)が適用されるガスセンサ12のセンサ素子14は、図1に示すように、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニアを主成分とするセラミックスを構造材料として構成されたNOxセンサである。
【0016】
センサ素子14は、第1内部空室16が第1拡散律速部18、第2拡散律速部20を通じて外部空間に開放されたガス導入口22と連通し、第2内部空室24が第3拡散律速部26を通じて第1内部空室16と連通する構成を備える、いわゆる直列二室構造型のNOxセンサ素子である。このセンサ素子14を用い、以下のようなプロセスが実行されることで、被測定ガス中のNOxガス濃度が算出される。
【0017】
先ず、第1内部空室16に導入された被測定ガスは、センサ素子14の外面に設けられた外側ポンプ電極30と、第1内部空室16に設けられた内側ポンプ電極32と、これら両電極間のセラミックス層34とによって構成される電気化学的ポンプセルである主ポンプセルのポンピング作用(酸素の汲み入れ、あるいは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整された上で、第2内部空室24に導入される。第2内部空室24においては、同じく電気化学的ポンプセルである、外側ポンプ電極30と、第2内部空室24に設けられた補助ポンプ電極36と、両電極の間のセラミックス層38とによって構成される補助ポンプセルのポンピング作用により、被測定ガス中の酸素が汲み出されて、被測定ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。
【0018】
低酸素分圧状態の被測定ガス中のNOxは、第2内部空室24に保護層40に被覆される態様にて設けられた測定電極42において還元ないし分解される。そして、この還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定電極42と、基準ガス導入口44に通じる多孔質アルミナ層46内に設けられた基準電極48と、両者の間のセラミックス層50とによって構成される電気化学的ポンプセルである測定ポンプセルによって汲み出される。そして、その際に生じる電流(NOx電流)の電流値と、NOx濃度との間に線形関係があることに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度が求められる。
【0019】
なお、センサ素子14には、図示しないヒータ部が設けられており、上述の動作は、ヒータ部に通電することでセンサ素子14を600℃~800℃程度の温度に加熱しつつ行われる。そのため、検査装置10における検査も、上述した温度までセンサ素子14を加熱した上で行われる。
【0020】
そして、検査装置10は、図2に示すように、少なくとも1つのセンサ素子14が装着されるチャンバ100と、チャンバ100に所定の検査用ガスを供給するモデルガス生成装置102と、を有する。
【0021】
モデルガス生成装置102は、複数のガス供給源、すなわち、NO(1%)の第1ガス供給源104A、O(100%)の第2ガス供給源104B及びN(100%)の第3ガス供給源104Cを有する。モデルガス生成装置102は、第1ガス供給源104Aに対応して接続された4つの第1開閉器106a~106dと、第2ガス供給源104Bに対応して接続された4つの第2開閉器108a~108dと、第3ガス供給源104Cに対応して接続された4つの第3開閉器110a~110dとを有する。
【0022】
また、モデルガス生成装置102は、4つの第1開閉器106a~106dに対応して接続され、それぞれ流量が異なる第1流量固定ノズル112a~112dと、4つの第2開閉器108b~108dに対応して接続され、それぞれ流量が異なる第2流量固定ノズル114a~114dと、4つの第3開閉器110b~110dに対応して接続され、それぞれ流量が異なる第3流量固定ノズル116a~116dとを有する。
【0023】
第1流量固定ノズル112a~112dは、それぞれ個別の流量(ガス濃度)となるように、管内の絞り部分が加工された臨界ノズルで構成されていることが好ましい。高い流量精度を得ることができる。第2流量固定ノズル114a~114d、第3流量固定ノズル116a~116dについても同様である。
【0024】
モデルガス生成装置102は、4つの第1流量固定ノズル112a~112d、4つの第2流量固定ノズル114a~114d及び4つの第3流量固定ノズル116a~116dからの複数種のガスを混合する1つの混合器120を有する。
【0025】
第1開閉器106a~106d、第2開閉器108a~108d及び第3開閉器110a~110dとしては、例えばコック式の開閉バルブ等を使用することができる。
【0026】
さらに、モデルガス生成装置102は、混合器120とチャンバ100との間に接続された1つの流量固定ノズル122を有する。この流量固定ノズル122についても臨界ノズルにて構成することが好ましい。
【0027】
ここで、モデルガス生成装置102の作用を説明する。先ず、第1ガス供給源104Aから出力されたガスは、第1開閉器106a~106dのうち、閉(ON)とされた開閉器を通じて流量固定ノズルに流通する。図2の例では、第1開閉器106aのみが閉(ON)となっているため、第1ガス供給源104Aから出力されたガスは、第1開閉器106aを通じて、対応する第1流量固定ノズル112aに流通する。第1流量固定ノズル112aで流量(濃度)を調整されたガスは、後段の混合器120に供給される。
【0028】
第2ガス供給源104Bから出力されたガスは、第2開閉器108a~108dのうち、閉(ON)とされた開閉器を通じて、対応する流量固定ノズルに流通する。図2の例では、第2開閉器108aのみが閉(ON)となっているため、第2ガス供給源104Bから出力されたガスは、第2開閉器108aを通じて、対応する第2流量固定ノズル114aに流通する。第2流量固定ノズル114aで流量(濃度)を調整されたガスは、後段の混合器120に供給される。
【0029】
同様に、第3ガス供給源104Cから出力されたガスは、第3開閉器110a~110dのうち、閉(ON)とされた開閉器(図2の例では第3開閉器110a)を通じて、対応する流量固定ノズル(図2の例では第3流量固定ノズル116a)に流通する。この場合も、第3流量固定ノズル116aで流量(濃度)を調整されたガスは、後段の混合器120に供給される。
【0030】
すなわち、混合器120において、第1流量固定ノズル112aからのガスと、第2流量固定ノズル114aからのガスと、第3流量固定ノズル116aからのガスとが混合されて、混合ガスとして出力される。
【0031】
混合器120からの混合ガスは、流量固定ノズル122によって流量が固定された後、後段のチャンバ100に供給され、複数のセンサ素子14の検査用ガスとして供される。
【0032】
上述の例では、3種類のガス供給源を示したが、使用するガスの種類に応じて1つ、2つ、4つあるいは5つ以上のガス供給源を用いてもよい。また、開閉器として、各ガス供給源に対応して、それぞれ4つの開閉器、4つの流量固定ノズルを用いたが、使用する濃度に応じて1つ、2つ、3つあるいは5つ以上の開閉器、流量固定ノズルを用いてもよい。
【0033】
混合器120とチャンバ100との間に流量固定ノズル122を接続した例を示したが、混合器120から一定の流量が出力されるのであれば、必ずしも流量固定ノズル122を接続しなくてもよい。
【0034】
次に、検査装置10の利点について、比較例に係るモデルガス応答特性検査装置200(以下、比較例200と記す)と比較しながら説明する。
【0035】
[比較例200]
先ず、比較例200のモデルガス生成装置210は、図3に示すように、NO(1%)のガス供給源202Aに第1開閉器204aを介して接続された1つの第1流量調整器206a(High Range)と、NO(3000ppm)のガス供給源202Bに第2開閉器204bを介して接続された1つの第2流量調整器206b(Low Range)と、O(1%)のガス供給源202Cに直接接続された1つの第3流量調整器206cと、N(100%)のガス供給源202Dに直接接続された1つの第4流量調整器206dとを有する。
【0036】
さらに、比較例200は、第1流量調整器206a~第4流量調整器206dからの複数種のガスを混合する1つの混合器208を有する。混合器208の後段には、チャンバ100が接続されている。
【0037】
一般に、NOxセンサ等のガスセンサの特性評価には、モデルガス生成装置が必要である。モデルガス生成装置は、複数のガスを、それぞれの配管に繋いだ流量調整器(例えばマスフローコントローラ)のバランスを調整して任意の濃度の混合ガスを作ることができる。ガス濃度のばらつきは、流量調整器の精度に依存する。流量調整器は流量を可変するため、制御誤差が生じる。混ぜるガス種が多い場合は、複数の流量調整装置を使うので、より誤差が大きくなり、そのガス濃度精度は原理的に良くならない。
【0038】
また、流量調整器としてのマスフローコントローラは、通常、図4に示すように、高流量と低流量で精度が異なるものが多い。フルスケールに対して30%以上の場合は、セットポイントに対して1%の精度誤差を持つが、30%未満の場合はフルスケールの1%の精度誤差である。つまり、流量がフルスケールの30%未満ではセットポイントの1%以上の精度誤差になってしまう。
【0039】
上述の事項を確認するため、流量調整器としてのマスフローコントローラを使用した上述の比較例200について、NO:1%、O:20%、N:100%の元ガスを使って、NO濃度が0ppm~3000ppm、O濃度が0~20%の混合ガスを作る場合の最大精度誤差及び二乗平方根を確認し、図5の表1に示した。
【0040】
図5の表1からわかるように、設定濃度として、NO濃度が500ppm以上の場合、精度誤差は6.0以下であり、1000ppm以上の場合、3.0以下であった。また、O濃度が1%の場合、精度誤差は6.0、5%の場合、精度誤差は1.2、20%の場合、0.3であった。なお、N濃度はいずれも100%付近であったため、精度誤差は1.0であった。
【0041】
この結果、混合器208(図3参照)から出力される混合ガスの最大精度誤差は、1桁台のほか、31.0%や13.0%があり、ばらつきがあった。二乗平方根については、設定濃度として、NOが100ppm、O濃度が0%、N濃度が99.99の例が30.0と突出しており、大きくばらつきがあった。
【0042】
[第1実施例]
本実施形態に係るモデルガス生成装置102について、上述した比較例と同様の条件で、最大精度誤差及び二乗平方根を確認し、図6の表2に示した。
【0043】
図6の表2からわかるように、比較例200の流量調整器に代えて、臨界ノズルを使用したため、各ガスの濃度精度誤差の欄に示すように、臨界ノズルを通過する際の精度誤差はいずれも0.4であり、精度上のばらつきはなかった。
【0044】
その結果、混合器120から出力される混合ガスの最大精度誤差は、0.4、0.8、1.2であり、また、二乗平方根も0.4、0.6、0.7であり、高い濃度精度であることがわかる。
【0045】
[第2実施例]
実施例、比較例1及び比較例2を使用して、ガスセンサの応答性能検査を行い、所定の判断基準に基づいて、実施例、比較例1及び比較例2の性能を比較した。
【0046】
先ず、ガスセンサの動特性は、ガス濃度が変化したときの応答性の指標として検査した。この第2実施例では、NOガスの濃度を0ppmから500ppmに変化させた。
【0047】
[実施例]
モデルガス応答特性検査装置として、図2に示すモデルガス応答特性検査装置10を使用した。すなわち、任意に調整された流量調整バルブ(臨界ノズル)を切り替えてガス濃度を変化させた。
【0048】
[比較例1]
モデルガス応答特性検査装置として、図3に示す比較例に係るモデルガス応答特性検査装置200を使用した。すなわち、マスフローコントローラを使ってガス濃度を変化させた。
【0049】
[比較例2]
モデルガス応答特性検査装置として、エンジンベンチを使用した。すなわち、エンジンの運転条件を変えてガス濃度を変化させた。
【0050】
<評価基準>
(1)切り替え時間(所望のガス濃度になるまでの時間)
検査対象であるガスセンサでの切り替え時間よりも速ければ「A」評価とした。
(2)ガス濃度切り替え安定性
濃度切り替え後の濃度変動が濃度変化分の10%以内であれば「A」評価とした。
(3)ガス濃度精度
実施例、比較例1及び比較例2の相対評価とした。
(4)圧力変動
圧力変動がなければ「A」評価とした。
(5)温度変化
温度変化がなければ「A」評価とした。
(6)流量変化
流量変化がなければ「A」評価とした。
(7)干渉ガス
干渉ガスが発生していなければ「A」評価とした。
【0051】
[評価結果:図7の表3参照]
(1)切り替え時間
実施例は、検査対象であるガスセンサでの切り替え時間よりも速かったため、「A」評価とした。
比較例1は、マスフローの流量を制御しているため、速く切り替えができないため、「C」評価であった。
比較例2は、切り替え時間を速くも遅くもできるが、エンジンの運転条件に依存し、コントロールが困難である。そのため、「B」評価であった。
【0052】
(2)ガス濃度切り替え安定性
実施例は、濃度切り替え後の濃度変動が濃度変化分の10%以内であったため、「A」評価とした。
比較例1及び2は共に、濃度切り替え後の濃度変動が大きいため、「C」評価であった。
【0053】
(3)ガス濃度精度
実施例は、相対評価で、比較例1及び2よりも精度が高かったため、「A」評価とした。
比較例1は、実施例と比べて精度が低かったため、「B」評価であった。
比較例2は、エンジンの排ガスのため、濃度再現性も低いため、「C」評価であった。
【0054】
(4)圧力変動
実施例及び比較例1は共に、圧力変動がなかったため、「A」評価であった。
比較例2は、エンジンの運転条件を変えるため、圧力変動が起こりやすい。そのため、「C」評価であった。
【0055】
(5)温度変化
実施例及び比較例1は共に、温度変化がなかったため、「A」評価であった。
比較例2は、エンジンの運転条件を変えるため、ガス温度が変化する。そのため、「C」評価であった。
【0056】
(6)流量変化
実施例は、流量変化がなかったため、「A」評価であった。
比較例1は、濃度切り替え時に流量変動が起こるため、「B」評価であった。
比較例2は、エンジンの運転条件を変えるため、流量が変化する。そのため、「C」評価であった。
【0057】
(7)干渉ガス
実施例及び比較例1は共に、干渉ガスが発生しなかったため、「A」評価であった。
比較例2は、エンジンの排ガスを使うため、HC類、CO、CO、H等、様々な干渉ガスが混在する。そのため、「C」評価であった。
【0058】
(8)運用コスト
実施例は、流量調整バルブ(臨界ノズル)を切り替えてガス濃度を変化させるため、運用コストを安価にすることができ、「A」評価であった。
比較例1は、マスフローコントローラを使ってガス濃度を変化させるため、実施例と同様に、運用コストを安価にすることができ、「A」評価であった。
比較例2は、エンジンを運転する必要から、燃料費やメンテンナンス費用がかかり、運用コストが高く、「C」評価であった。
【0059】
なお、上述の評価では、NOガスの濃度を0ppmから500ppmに変化させた場合を示したが、NOガスの濃度を500ppmから0ppmに変化させた場合も同様であった。
【0060】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0061】
[1] 本実施形態に係る検査対象が装着されたチャンバ100に、モデルガス生成装置102から所定のモデルガスを供給して検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査装置10であって、モデルガス生成装置102は、複数のガス供給源(104A、104B、104C)と、各ガス供給源(104A、104B、104C)に対応して接続された複数の開閉器(第1開閉器106a~106d、第2開閉器108a~108d、第3開閉器110a~110d)と、各ガス供給源(104A、104B、104C)に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズル(第1流量固定ノズル112a~112d、第2流量固定ノズル114a~114d、第3流量固定ノズル116a~116d)と、複数の流量固定ノズルからの複数種のガスを混合する混合器120と、を有する。
【0062】
これにより、目的のガス濃度以外の環境変化なしに、当該目的のガス濃度の変化を短時間に起こすことができ、ガスセンサ等の動特性を検査する上で好適である。
【0063】
従来、モデルガス生成装置は、複数のガスを、それぞれの配管に繋いだ流量調整器(例えばマスフローコントローラ)のバランスを調整して任意の濃度の混合ガスを作るようにしていた。しかし、混合ガスのガス濃度のばらつきは、流量調整器の精度に依存し、流量調整器は流量を可変するため、制御誤差も乗るという問題があった。
【0064】
これに対して、モデルガス生成装置102は、流量制御の際に誤差が生じる流量調整器に代えて、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルを使用し、さらに、複数の流量固定ノズルに対して選択的にガスを供給する開閉器を接続するようにしている。その結果、流量固定ノズルを通過する際の精度誤差は小さく、精度上のばらつきはほとんどない。また、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズルを使用するため、適宜組み合わせることで、任意のガス濃度に混合することができる。
【0065】
[2] 本実施形態において、各ガス供給源(104A、104B、104C)に対応して、複数の開閉器(第1開閉器106a~106d、第2開閉器108a~108d、第3開閉器110a~110d)の後段に複数の流量固定ノズル(第1流量固定ノズル112a~112d、第2流量固定ノズル114a~114d、第3流量固定ノズル116a~116d)が接続されている。
【0066】
これにより、ガス供給源からのガスを必要な流量固定ノズルのみに供給することができるため、ガス供給の効率化を図ることができる。なお、例えば各流量固定ノズルの後段にそれぞれ開閉弁を設置した場合、すべての流量固定ノズルにガスが供給された後に、閉動作された開閉弁のみを通じて後段に流れるため、ガスを余分に流す必要があり、効率的ではない。
【0067】
[3] 本実施形態において、混合器120とチャンバ100との間に接続された流量固定ノズル122を有する。これにより、混合器120から出力されるガスの流量を、一旦、流量固定ノズル122にて固定することができるため、チャンバ100に供給される検査用ガスの濃度安定化を迅速にすることができる。
【0068】
[4] 本実施形態において、流量固定ノズルが臨界ノズルである。流量固定ノズルとして、臨界ノズルを使用することで、高い流量精度を得ることができる。
【0069】
[5] 本実施形態に係るモデルガス応答特性検査方法は、検査対象(センサ素子)が装着されるチャンバ100に所定のモデルガスを供給して前記検査対象の応答特性を検査するモデルガス応答特性検査方法において、複数のガス供給源(104A、104B、104C)からそれぞれ出力された複数のガスを、各ガス供給源(104A、104B、104C)に対応して接続された複数の開閉器(第1開閉器106a~106d、第2開閉器108a~108d、第3開閉器110a~110d)に送るステップと、複数の開閉器からの複数のガスを、各ガス供給源(104A、104B、104C)に対応して接続され、それぞれ流量が異なる複数の流量固定ノズル(第1流量固定ノズル112a~112d、第2流量固定ノズル114a~114d、第3流量固定ノズル116a~116d)に送るステップと、複数の流量固定ノズルからの複数のガスを混合器120で混合するステップと、混合器120からの混合ガスをチャンバ100に供給するステップとを有する。
【0070】
[6] 本実施形態において、混合器120からの混合ガスを1つの流量固定ノズル122に送るステップと、1つの流量固定ノズル122からの混合ガスをチャンバ100に送るステップとを有する。
【0071】
[7] 本実施形態において、上述した流量固定ノズルがそれぞれ臨界ノズルである。
【0072】
本発明についての好適な実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0073】
なお、本発明の実施に当たっては、本発明の思想を損なわない範囲で自動車用部品としての信頼性向上のための諸手段が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…検査装置
12…ガスセンサ
14…センサ素子
100…チャンバ
102…モデルガス生成装置
104A…第1ガス供給源
104B…第2ガス供給源
104C…第3ガス供給源
106a~106d…第1開閉器
108a~108d…第2開閉器
110a~110d…第3開閉器
112a~112d…第1流量固定ノズル
114a~114d…第2流量固定ノズル
116a~116d…第3流量固定ノズル
120…混合器
122…流量固定ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7