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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】酸素分析装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N27/26 381B
G01N27/409 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019077217
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020176844
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 育彦
(72)【発明者】
【氏名】竹 康宏
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛文
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172726(JP,A)
【文献】特表2018-532118(JP,A)
【文献】特開2013-083650(JP,A)
【文献】特開2007-263933(JP,A)
【文献】特開2005-106494(JP,A)
【文献】特開平08-201334(JP,A)
【文献】特開2016-080573(JP,A)
【文献】特開2018-197715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性の固体電解質層に一対の電極を設けて、その一方の電極は保護層を介した測定ガスに接触する測定電極であって、他方の電極は基準ガスが接触する基準電極であって、前記測定電極と前記基準電極との酸素分圧に応じて発生する両電極間の起電力を検出して酸素濃度に応じた電気信号を出力する酸素センサであって、測定ガス管路に接続される前記酸素センサと、
前記酸素センサと前記測定ガス管路との接続路に設けられる接続口に取り付けられて前記接続路の圧力を検出する圧力検出器と、を備え、
前記接続路に校正ガスの流入口を設け、前記接続路に校正ガスが供給される酸素分析装置の校正方法であって、
前記校正ガスを供給して第1圧力状態で校正を行う第1校正処理と、前記校正ガスを供給して前記第1圧力よりも高い第2圧力状態で校正を行う第2校正処理と、を備え、
前記第1校正処理及び前記第2校正処理は、前記圧力検出器が検出した圧力と前記酸素センサが検出した酸素濃度とを利用して校正する
酸素分析装置の校正方法。
【請求項2】
前記第1圧力状態を大気圧状態とする
請求項1に記載の酸素分析装置の校正方法。
【請求項3】
前記第1校正処理で測定した酸素濃度及び圧力と、前記第2校正処理で測定した酸素濃度及び圧力とを式(1)の校正ガスの酸素濃度[CalO2]及び測定した圧力[P]にそれぞれ適用して校正する
O2=CalO2×((P0+P)/P0)…(1)
O2:校正した酸素濃度
CalO2:校正ガスの酸素濃度
P0:大気圧
P:測定した圧力
請求項1又は2に記載の酸素分析装置の校正方法。
【請求項4】
前記第1校正処理のみを第1期間毎に行い、
前記第1期間よりも長い第2期間毎に、前記第1校正処理及び前記第2校正処理の2点校正を行う
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸素分析装置の校正方法。
【請求項5】
酸素分析装置は、前記接続路にフィルタが設置され、前記測定ガスが前記フィルタを通過して、前記酸素センサ及び前記圧力検出器の接続口に導かれる
請求項1~4のいずれか一項に記載の酸素分析装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素分析装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素分析装置は、酸素イオン伝導性の固体電解質体と少なくとも一対の電極とからなる電気化学的セルの少なくとも一つを有するセンサ素子が燃焼排ガス管路に接続されて、該燃焼排ガス中の酸素濃度に応じた電気信号を出力するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の酸素分析装置は、センサ素子と燃焼排ガス管路との接続通路に圧力計の接続口を設け、該接続通路上の圧力を測定することで、燃焼排ガス管路上における圧力が直接測定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3068363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような酸素分析装置では、圧力検出器の経時変化等によって測定値がずれるおそれがある。このため、圧力検出器の経時変化等による測定値のずれを補正することのできる酸素分析装置の校正方法が求められている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力検出器の経時変化等による測定値のずれを補正することのできる酸素分析装置の校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する酸素分析装置の校正方法は、酸素イオン伝導性の固体電解質層に一対の電極を設けて、その一方の電極は保護層を介した測定ガスに接触する測定電極であって、他方の電極は基準ガスが接触する基準電極であって、前記測定電極と前記基準電極との酸素分圧に応じて発生する両電極間の起電力を検出して酸素濃度に応じた電気信号を出力する酸素センサであって、測定ガス管路に接続される前記酸素センサと、前記酸素センサと前記測定ガス管路との接続路に設けられる接続口に取り付けられて前記接続路の圧力を検出する圧力検出器と、を備え、前記接続路に校正ガスの流入口を設け、前記接続路に校正ガスが供給される酸素分析装置の校正方法であって、前記校正ガスを供給して第1圧力状態で校正を行う第1校正処理と、前記校正ガスを供給して前記第1圧力よりも高い第2圧力状態で校正を行う第2校正処理と、を備え、前記第1校正処理及び前記第2校正処理は、前記圧力検出器が検出した圧力と前記酸素センサが検出した酸素濃度とを利用して校正する。
【0008】
上記構成によれば、第1圧力状態で行う第1校正処理と第2圧力状態で行う第2校正処理との2点で校正を行うことで、圧力検出器の特性も含めて校正を行うことができ、圧力検出器の経時変化等による測定値のずれを補正することができる。
【0009】
上記酸素分析装置の校正方法について、前記第1圧力状態を大気圧状態とすることが好ましい。
上記構成によれば、大気圧状態において校正することで、大気圧における測定値の精度が高くなる。
【0010】
上記酸素分析装置の校正方法について、前記第1校正処理で測定した酸素濃度及び圧力と、前記第2校正処理で測定した酸素濃度及び圧力とを式(1)の校正ガスの酸素濃度[CalO2]及び測定した圧力[P]にそれぞれ適用して校正することが好ましい。
【0011】
O2=CalO2×((P0+P)/P0)…(1)
O2:校正した酸素濃度
CalO2:校正ガスの酸素濃度
P0:大気圧
P:測定した圧力
【0012】
上記構成によれば、酸素濃度と圧力との積から求められる酸素分圧によって校正することで、圧力検出器の特性も含めて校正を行うことができる。
上記酸素分析装置の校正方法について、前記第1校正処理のみを第1期間毎に行い、前記第1期間よりも長い第2期間毎に、前記第1校正処理及び前記第2校正処理の2点校正を行うことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1期間毎に圧力に対する測定値のずれに影響の大きい1点校正を行い、その上で第1期間よりも長い第2期間毎に2点校正を行うことで、校正処理を簡略化しつつ、測定値のずれを補正することができる。
【0014】
上記酸素分析装置の校正方法について、酸素分析装置は、前記接続路にフィルタが設置され、前記測定ガスが前記フィルタを通過して、前記酸素センサ及び前記圧力検出器の接続口に導かれることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、測定ガス管路の測定ガスに含まれる粉塵等から酸素センサや圧力検出器を保護することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧力検出器の経時変化等による測定値のずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】酸素分析装置の一実施形態の概略構成を示す側面図。
図2】同実施形態の酸素分析装置の概略構成を示す上面図。
図3】同実施形態の酸素センサの概略構成を示す図。
図4】同実施形態の酸素センサの概略構成を示す図2の3-3断面図。
図5】同実施形態の酸素分析装置における測定ガスの圧力と起電力との関係を示す図。
図6】同実施形態の酸素分析装置における測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図7】同実施形態の酸素分析装置における測定ガスの圧力と酸素濃度との関係の経時変化を示す図。
図8】同実施形態の酸素分析装置において圧力検出器がずれた状態における測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図9】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図10】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図11】同実施形態の酸素分析装置において測定ガスの圧力と圧力検出器の出力との関係の経時変化を示す図。
図12】同実施形態の酸素分析装置において圧力検出器がずれた状態における測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図13】酸素分析装置による校正の比較例であって、測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図14】酸素分析装置による校正の比較例であって、測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図15】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図16】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図17】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
図18】同実施形態の酸素分析装置による校正後の測定ガスの圧力と酸素濃度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図18を参照して、酸素分析装置の一実施形態について説明する。酸素分析装置は、例えば船舶等のエンジンの掃気ガスの酸素濃度を測定する。
図1に示すように、測定ガス管路2に測定用の貫通孔である測定孔2Aが設けられている。測定ガス管路2は、測定ガスが流れる管路である。酸素分析装置1は、測定ガス管路2の測定孔2Aに取り付けられている。
【0019】
酸素分析装置1は、酸素センサ20を備えている。測定孔2Aには、測定ガス管路2と酸素センサ20とを接続する接続路10が取り付けられる。酸素センサ20は、接続路10に設けられる接続口13に取り付けられている。酸素分析装置1は、酸素センサ20と測定ガス管路2との接続路10の圧力を検出する圧力検出器30を備えている。
【0020】
接続路10は、測定孔2Aに取り付けられる段付きの円筒状の第1取付部材11と、第1取付部材11に嵌合して酸素センサ20が取り付けられる円筒状の第2取付部材12とを備えている。圧力検出器30は、第2取付部材12の側面に取り付けられる。
【0021】
接続路10には、フィルタ15が設置されている。すなわち、フィルタ15は、第1取付部材11と第2取付部材12との間に設置されている。フィルタ15は、焼結金属フィルタである。測定ガスは、フィルタ15を通過して、酸素センサ20に導かれる。第1取付部材11には、校正時に測定ガスの流入を遮断する遮断弁16が設けられている。
【0022】
接続路10の第2取付部材12には、校正ガスの流入口14が設けられている。流入口14は、ハーフユニオン等の継手41によって校正ガスを供給する校正ガス接続管40と接続されている。校正ガス接続管40には、校正ガスの流入を止めるボールバルブ42が設けられている。よって、接続路10には、校正ガスの供給と停止とが可能である。
【0023】
図2に示すように、接続路10の第2取付部材12には、さらに校正ガスの流出口が接続されている。流出口は、ハーフユニオン等の接手61によって校正ガス排出管60と接続されている。校正ガス排出管60には、校正ガス流入時の酸素センサ20に掛かる圧力を調整するニードル弁62が設けられている。
【0024】
図1に示すように、酸素分析装置1は、酸素分析装置1を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU及びメモリ等からなる。制御装置50には、酸素センサ20と圧力検出器30とが電気的に接続されている。制御装置50には、酸素センサ20から酸素濃度に応じた電気信号が入力される。制御装置50には、圧力検出器30から検出した圧力に応じた電気信号が入力される。制御装置50は、測定ガスの酸素濃度を測定する測定部51を備えている。測定部51は、酸素センサ20及び圧力検出器30から入力された電気信号に基づいて測定ガスの酸素濃度を測定する。制御装置50は、校正を行う校正部52を備えている。
【0025】
図3及び図4に示すように、酸素センサ20は、濃淡電池セル型である。酸素センサ20は、ジルコニア等の酸素イオン伝導性のセラミックにて形成された固体電解質層21に濃淡電池セル22とヒータ26とを備えた1セル方式で構成されている。
【0026】
固体電解質層21は、縦断面コ字状に形成されている(図3参照)。このコ字状の内側には、基準ガスとして大気が導かれる。固体電解質層21の外面には、保護層23が設けられている。測定ガスは、保護層23を通じて測定電極24に接する。固体電解質層21の上部21Aが濃淡電池セル22として機能する。
【0027】
固体電解質層21の上部21Aには、測定ガスに露呈する白金等からなる測定電極24と、基準ガスに露呈する白金等からなる基準電極25とが対向して設置されている。濃淡電池セル22は、固体電解質層21の上部21Aと、測定電極24と、基準電極25とによって構成されている。
【0028】
固体電解質層21の下部21Bの内部には、固体電解質層21を加熱するヒータ26が設けられている。ヒータ26と固体電解質層21との間には、アルミナ等の絶縁材27が充填されている。ヒータ26には、ヒータ回路26Aが接続されている。
【0029】
測定電極24と基準電極25とは、リード線を介して電子回路28に接続されている。電子回路28は、測定ガスと基準ガスとの酸素濃度の違いによる酸素分圧によって測定電極24と基準電極25との間に発生する起電力を検出して、検出値に応じた電気信号を制御装置50に出力する。
【0030】
次に、図5及び図6を参照して、測定ガスの圧力が変化したときの測定ガスと基準ガス(大気)との酸素分圧によって測定電極24と基準電極25との間に発生する起電力との関係を説明する。
【0031】
図5及び図6に示すように、検出する起電力は、測定ガスの酸素分圧に依存し、図5に示すように、測定ガスの酸素濃度が一定であって、測定ガスの圧力[P]に対して起電力が変化する。すなわち、図6に示すように、測定ガスの圧力[P]に対して起電力から算出した測定ガスの酸素濃度[O2’]が定まる。
【0032】
よって、酸素分析装置1は、下式(1)に従って酸素センサ20が測定した酸素濃度[O2’]から測定ガスの酸素濃度[O2]を算出する。
O2=O2’×(P0/(P0+P))・・・(1)
O2:測定ガスの酸素濃度
O2’:酸素センサから出力される起電力から算出した酸素濃度
P0:大気圧
P:測定した圧力
【0033】
次に、図7図14を参照して、酸素分析装置1による校正について説明する。酸素分析装置1は、使用を継続すると、圧力検出器30や酸素センサ20が経時変化するため、定期又は不定期に校正を行う。
【0034】
図7では、実線で示した経時変化による測定圧力に対する酸素濃度は、破線で示した初期の測定圧力に対する酸素濃度よりも低下している。酸素分析装置1は、初期の状態に近づくように校正する。
【0035】
酸素分析装置1は、校正ガスを供給して第1圧力として大気圧(0kPaG)状態で校正を行う第1校正処理と、校正ガスを供給して大気圧(0kPaG)よりも高い第2圧力(400kPaG)状態で校正を行う第2校正処理とを行う。すなわち、制御装置50の校正部52は、圧力検出器30が検出した圧力と酸素センサ20が検出した酸素濃度とを利用して第1校正処理及び第2校正処理を行う。すなわち、校正部52は、第1校正処理で測定した酸素濃度及び圧力と、第2校正処理で測定した酸素濃度及び圧力とを下式(2)の校正ガスの酸素濃度[CalO2]及び測定した圧力[P]にそれぞれ適用して校正する。
【0036】
O2=CalO2×((P0+P)/P0)・・・(2)
O2:校正した酸素濃度
CalO2:校正ガスの酸素濃度
P0:大気圧
P:測定した圧力
【0037】
校正処理は、以下のように行う。
まず、第1取付部材11の遮断弁16を閉じ、校正ガス接続管40のボールバルブ42及び校正ガス排出管60のニードル弁62を全開とする。ニードル弁62は、制御装置50により自動で開閉可能である。
【0038】
続いて、校正ガスを供給して第1圧力として大気圧(0kPaG)状態で校正を行う第1校正処理を行う。
続いて、制御装置50の圧力指示値を確認しながらニードル弁62を閉じる。
【0039】
続いて、第2圧力(400kPaG)状態となったところで第2校正処理を行う。
続いて、第2校正処理後、校正ガス接続管40のボールバルブ42及び校正ガス排出管60のニードル弁62を全閉し、第1取付部材11の遮断弁16を全開して校正を終了する。
【0040】
図8では、酸素濃度15%の測定ガスを各圧力で測定したときに、圧力検出器30の測定値が0~0.5%FSまでずれた状態における測定ガスの圧力に対する測定酸素濃度(指示値)を示している。圧力のずれが大きいほど指示値は15%O2から離れる。また圧力が低いほど指示値のずれが大きくなっている。
【0041】
そこで、酸素分析装置1は、測定値にずれが含まれているものを0kPaG及び400kPaGの2点において校正する。すると、図9及び図10に示すように、測定酸素濃度のずれが小さくなり、誤差±0.1%O2に収まるようになる。特に圧力が0kPaGと400kPaGとにおいて校正しているので、圧力が0kPaGと400kPaGとにおける指示値のずれがほぼない。なお、図10は、図9の酸素濃度の表示幅を大きくした図である。
【0042】
一方、図11図14を参照して、圧力が0kPaGと400kPaGで予め校正した状態から経時変化等に対して1点校正を行った場合について説明する。
図11に示すように、圧力検出器30の経時変化は測定範囲で全体的にシフトする傾向にある。図12は、圧力検出器30の測定値が0~±0.5%FSまでずれた状態における測定ガスの圧力に対する測定酸素濃度(指示値)を示している。圧力のずれが大きいほど指示値は15%O2から離れる。また圧力が低いほど指示値のずれが大きくなっている。
【0043】
そこで、酸素分析装置1は、この状態から第1校正処理(0kPaG付近)のみの1点校正を行う。図13及び図14に示すように、測定酸素濃度のずれが小さくなり、誤差±0.1%O2に収まるようになる。つまり、第2校正処理を行う間隔は第1校正処理よりも長くても精度が保てることになる。よって、酸素分析装置1は、2点校正の頻度を減らす上でも、第1校正処理を行う第1期間よりも長い第2期間毎に2点校正を行うのが好ましい。例えば、1点校正を行う第1期間を1週間毎とし、2点校正を行う第2期間を1月毎にしてもよい。また、例えば、1点校正を行う第1期間を1月毎とし、2点校正を行う第2期間を1年毎にしてもよい。
【0044】
なお、図15図18は、2点校正時の高圧状態における圧力が異なる図であって、酸素濃度15%の測定ガスにおいて2点校正後の圧力に対する指示値を示す図である。
図15は、0kPaGと300kPaGとにおいて2点校正を行った場合の図である。校正された酸素濃度の測定値は、圧力が0kPaGと圧力が300kPaGとを変曲点とするグラフとなり、誤差±0.1%O2に収まっている。
【0045】
図16は、圧力が0kPaGと圧力が350kPaGとにおいて2点校正を行った場合の図である。校正された酸素濃度の測定値は、圧力が0kPaGと圧力が350kPaGとを変曲点とするグラフとなり、誤差±0.1%O2に収まっている。
【0046】
図17は、圧力が0kPaGと圧力が400kPaGとにおいて2点校正を行った場合の図である。校正された酸素濃度の測定値は、圧力が0kPaGと圧力が400kPaGとを変曲点とするグラフとなり、誤差±0.1%O2に収まっている。
【0047】
図18は、圧力が0kPaGと圧力が450kPaGとにおいて2点校正を行った場合の図である。校正された酸素濃度の測定値は、圧力が0kPaGと圧力が450kPaGとを変曲点とするグラフとなり、誤差±0.1%O2に収まっている。
【0048】
よって、2点校正時の高圧側の圧力が300~450kPaGであれば、0.5%FSのずれを補正することができる。2点校正時における高圧状態の圧力は、400kPaGに限らず、使用する圧力に近いものを選択することで精度を向上させることができる。このことは、校正時における高圧側の圧力を例えば400kPaGと毎回一定の圧力にする必要がなく、校正経路の校正ガス圧力精度を緩和することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)第1圧力状態で行う第1校正処理と第2圧力状態で行う第2校正処理との2点で校正を行うことで、圧力検出器30の特性も含めて校正を行うことができ、経時変化による測定値のずれを補正することができる。
【0050】
(2)大気圧状態において校正することで、大気圧における測定値の精度が高くなる。
(3)酸素濃度と圧力との積から求められる酸素分圧によって校正することで、圧力検出器30の特性も含めて校正を行うことができる。
【0051】
(4)第1期間毎に1点校正を行い、その上で第1期間よりも長い第2期間毎に2点校正を行うことで、校正処理を簡略化しつつ、測定値のずれを補正することができる。
(5)測定ガス管路2の測定ガスに含まれる粉塵等から酸素センサ20や圧力検出器30を保護することができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1校正処理において大気圧における校正を行ったが、大気圧に限らず、第2圧力よりも低い圧力において校正を行ってもよい。例えば、圧力が200kPaGと400kPaGとの間で使用するときには、大気圧ではなく、200kPaGで行えば、より精度の高い校正を行うことができる。
【0053】
・上記実施形態において、第1校正処理と第2圧力状態で行う第2校正処理との2点で校正を行うようにしたが、例えば、第1校正処理、第2圧力状態と第3圧力状態とで行う第3校正処理との3点の校正を行うようにしてもよい。また、3点以上の複数点の校正を行うようにしてもよい。このようにすれば、より精度の高い校正を行うことができる。
【0054】
・上記実施形態において、接続路10のフィルタ15を省略してもよい。
・上記実施形態において、接続路10の構造は上記に限らず、測定ガス管路2の測定孔2Aに取り付けられるとともに、酸素センサ20及び圧力検出器30及び校正ガス接続管40が取り付けられる構造であればよい。
【符号の説明】
【0055】
1…酸素分析装置、2…測定ガス管路、2A…測定孔、10…接続路、11…第1取付部材、12…第2取付部材、13…接続口、14…流入口、15…フィルタ、16…遮断弁、20…酸素センサ、21…固体電解質層、21A…上部、21B…下部、22…濃淡電池セル、23…保護層、24…測定電極、25…基準電極、26…ヒータ、26A…ヒータ回路、27…絶縁材、28…電子回路、30…圧力検出器、40…校正ガス接続管、41…継手、42…ボールバルブ、50…制御装置、51…測定部、52…校正部、60…校正ガス排出管、61…接手、62…ニードル弁。
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