(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】使用済み紙おむつ処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20221215BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20221215BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20221215BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20221215BHJP
【FI】
B09B3/70
B09B3/38
B09B5/00 Z
B09B101:67
(21)【出願番号】P 2019098434
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 秀直
(72)【発明者】
【氏名】日野 直文
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-190928(JP,A)
【文献】特開2003-019169(JP,A)
【文献】特開2018-167153(JP,A)
【文献】特開2001-104929(JP,A)
【文献】特開2019-136662(JP,A)
【文献】特許第5676844(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00-5/00
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを処理する処理槽と、
前記処理槽に処理液を供給する液供給部と、
前記処理槽から前記処理液を排出する液排出部と、
前記処理槽で処理した紙おむつを前記処理槽の下方で取り出す取出部とを備える使用済み紙おむつ処理装置であって、
前記処理槽は、前記使用済み紙おむつを収納可能でかつ側面または底面の少なくとも一方に前記紙おむつより小さい複数の貫通穴を有する円筒形状の内槽と、前記内槽の側面と底面とを囲う外槽とを有し、
前記内槽
の内側側面の内槽回転軸方向の上部で前記内槽と上端部が連結されており、かつ前記内槽回転軸方向の下部で下端部が自由端となるように取り付けられ、収納された前記使用済み紙おむつを前記内槽の内面から離すように位置規制する貼付防止部材を有し、
前記内槽を前記内槽の
回転軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記処理槽で処理しかつ前記貼付防止部材で位置規制された前記紙おむつを前記処理槽の底部から前記取出部に排出する開閉部とを備える、使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項2】
前記貼付防止部材は、前記内槽
の前記内側側面の前記内槽回転軸方向の前記上部で前記内槽と前記上端部が連結されており、下方に向かうに従って前記内槽から内槽中心側に離れ、かつ前記内槽回転軸方向の前記下部で前記下端部が自由端となるように取り付けられ、収納された前記使用済み紙おむつを前記内槽の内面から離すように位置規制する複数個の板で構成されて
、脱水動作時には遠心力で、前記貼付防止部材が前記内槽の内面に接触する一方、脱水動作停止時に遠心力が無くなると、前記貼付防止部材自体の剛性により、下方に向かうに従って前記内槽から内槽中心側に離れた状態に復帰する、請求項1に記載の使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項3】
前記板が、ヒンジ部で屈曲可能に連結されている少なくとも2つの板で構成されている、請求項2に記載の使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項4】
前記貼付防止部材は、前記隣接する板と板との間に網が張られて構成される、請求項2または3に記載の使用済み紙おむつ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつに含まれる高吸水性ポリマーから水分を離水させることで、減量する使用済み紙おむつ処理装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、排泄物に含まれる水分を吸収した高吸水性ポリマーと2価の金属イオンなどを含む薬品とを混合することで、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させて水分を離水させ、使用済み紙おむつが含む水分量を低下させた後に、脱水することで重量を減量する使用済み紙おむつ処理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
使用済み紙おむつは、大量の水分を含むために、介護施設など、多量の使用済み紙おむつを扱う場合に、その重量が課題になることがある。紙おむつには、高吸水性ポリマーが含まれており、大量の水分を保持することが可能になっている。また、一度、高吸水性ポリマーに吸水された水分は、そのままでは離水することが難しいものになっている。
【0004】
そこで、水に浸漬した使用済み紙おむつを、水溶物と不溶物とに分離解体し、分離解体された水溶物を汚水とともに下水処理施設側へ排出することで、紙おむつを減量化及び減容化する使用済み紙おむつ処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図10に、特許文献1に記載されている従来の使用済み紙おむつ処理装置101の例を示しており、
図10の(a)は、従来の使用済み紙おむつ処理装置101の正面図であり、
図10の(b)は、側面図を示す。
図10において、102は開閉蓋、106は外胴、107は回転ドラム、111は貫通孔、112は攪拌突起、116はモータ、133は水供給管、135、137は排出管、136は開閉弁である。
【0006】
次に、従来の使用済み紙おむつ処理装置101の動作を説明する。
【0007】
使用済み紙おむつは、開閉蓋102から回転ドラム107に投入される。
【0008】
次に、水供給管133から外胴106内に所定量(すなわち回転ドラム107の下部が浸る量)の水が給水された後、モータ116を始動して回転ドラム107を回転させて、回転ドラム107内に水流を発生させる。これにより、回転ドラム107内の紙おむつを水に浸漬した状態で分離解体することが可能となる。このとき、攪拌突起112があることで、紙おむつの攪拌処理が促され、分離解体処理が促進されるようになっている。分離解体された紙おむつは、貫通孔111を介して排出管135、137を通り、下水処理施設に連通された下水管に排水される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の使用済み紙おむつ処理装置101では、その処理工程において紙おむつを分離解体し、解体された紙おむつの繊維成分を下水処理施設に対して、直接、排出するため、下水処理施設での排水処理において解体された紙おむつの繊維成分を処理するための負荷が増大してしまう課題が発生する。そのため、下水管に排出する際には、解体された紙おむつの繊維成分をフィルタ除去するなどの装置を導入する必要がある。
【0010】
そこで、別の処理方式として、2価の金属イオンなどを含む薬品と反応させることで、高吸水性ポリマーから水分を離水させて、紙おむつを減量する使用済み紙おむつ処理装置も提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
図11に特許文献2に記載されている従来の使用済み紙おむつ処理装置201の例を示す。
図11において、202は石灰、203は次亜塩素、204は処理槽、205は使用済み紙おむつ、206は水、207は液体、208は排水である。
【0012】
続いて、従来の使用済み紙おむつ処理装置201の動作を説明する。
【0013】
まず、
図11の(a)に示すように、処理槽204に、石灰202、次亜塩素203及び使用済み紙おむつ205を投入する。
【0014】
次に、
図11の(b)及び(c)に示すように、処理槽204内で攪拌可能になるように水206を投入した後、所定の時間攪拌する。この状態で攪拌を続けると、石灰の中に含まれるCaイオンが紙おむつの高吸水性ポリマーと反応し、高吸水性ポリマーが含有していた水分が離水される。
【0015】
最後に、
図11の(d)に示すように、処理槽204内の液体207を処理槽204の外に排出させるとともに脱水し、排水208を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2001-104929号公報
【文献】特開2010-84031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献2に記載の使用済み紙おむつ処理装置201では、処理槽204の中で高吸水性ポリマーが含む水を離水させた後に、脱水処理を行い、紙おむつ部分のみが処理槽204の中に残るようになっている。残った使用済み紙おむつを取り出すには、作業者が上方から取り出し作業を行う必要があり、取り出した使用済み紙おむつを別途、ビニール袋などの廃棄用袋に詰め替える作業が必要になることから、作業者への作業負担及び衛生上の負担を強いることになってしまう課題が発生する。
【0018】
本発明は、このような点に鑑み、使用済み紙おむつを2価の金属イオンなどを含む薬品と一緒に攪拌して、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させることで水分を離水させた後に、脱水処理を行うことで使用済み紙おむつが含む水分量を低下させて重量を減量する使用済み紙おむつ処理装置において、紙おむつを分離解体することなく減量処理し、処理後の使用済み紙おむつの取り出し動作までの一連の動作を処理装置内で実現することで、下水処理場の排水処理の負担を増大させることなく、介護施設などでの作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減した使用済み紙おむつ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる使用済み紙おむつ処理装置は、使用済み紙おむつを処理する処理槽と、
前記処理槽に処理液を供給する液供給部と、
前記処理槽から前記処理液を排出する液排出部と、
前記処理槽で処理した紙おむつを前記処理槽の下方で取り出す取出部とを備える使用済み紙おむつ処理装置であって、
前記処理槽は、前記使用済み紙おむつを収納可能でかつ側面または底面の少なくとも一方に前記紙おむつより小さい複数の貫通穴を有する円筒形状の内槽と、前記内槽の側面と底面とを囲う外槽とを有し、
前記内槽の内側側面の内槽回転軸方向の上部で前記内槽と上端部が連結されており、かつ前記内槽回転軸方向の下部で下端部が自由端となるように取り付けられ、収納された前記使用済み紙おむつを前記内槽の内面から離すように位置規制する貼付防止部材を有し、
前記内槽を前記内槽の回転軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記処理槽で処理しかつ前記貼付防止部材で位置規制された前記紙おむつを前記処理槽の底部から前記取出部に排出する開閉部とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理装置によれば、外槽の底部と内槽の底部とが開閉することができ、内槽内面に配置された貼付防止部材で脱水後のおむつを内槽内面から離すように引き剥がして、処理後のおむつを内槽から落下させ、内槽の下方から取り出すことができ、作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図1B】本発明の実施形態1の変形例にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図2】本発明の実施形態1において、処理槽内に使用済み紙おむつが配置され、攪拌動作を行っている状態を示す側面断面図
【
図3】本発明の実施形態1において、内槽を高速回転させて、脱水動作を行っている状態を示す側面断面図
【
図4】本発明の実施形態1において内槽に設置する板の間隔の違いによる脱水処理状況を説明する
図3のIV-IV線での切断断面図(a)と、比較例として内槽に設置する板の間隔が広すぎる場合の
図3のIV-IV線での切断断面図(b)とを含む説明図
【
図5】本発明の実施形態1において、処理槽底部を開き、処理後の使用済み紙おむつの取り出し動作を行っている状態を示す側面断面図
【
図6】本発明の実施形態2にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図7】本発明の実施形態1において、内槽と板の間に使用済み紙おむつが押し込まれている様子を示す水平断面図
【
図8】本発明の実施形態2において、内槽を高速回転させて、脱水動作を行っている状態を示す処理槽の部分拡大側面断面図
【
図9】本発明の実施形態3にかかる使用済み紙おむつ処理装置の構成を示す側面断面図
【
図10】従来の使用済み紙おむつ処理装置液体処理装置の断面図
【
図11】従来の使用済み紙おむつ処理装置液体処理装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る使用済み紙おむつ処理装置1を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0023】
[全体構成]
まず、使用済み紙おむつ処理装置1の全体構成について説明する。
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる使用済み紙おむつ処理装置1の構成を示す側面断面図である。
【0024】
使用済み紙おむつ処理装置1は、少なくとも、処理槽20と、液供給部10と、液排出部9と、取出部6とを備えている。より詳しくは、使用済み紙おむつ処理装置1は、さらに、投入扉2と、装置本体3と、格納容器7と、廃棄用袋8と、制御装置11と、回転駆動部70とを備えている。
【0025】
使用済み紙おむつを処理する処理槽20は、装置本体3内の上部に配置され、例えば円形の筒状の外槽4及び例えば円形の筒状の内槽5で構成されている。内槽5は外槽4内に配置されている。
【0026】
内槽5の上部は、使用済み紙おむつ18を入れやすくするため広い口部として構成する上側の円錐部5bとし、中間部は、上側の円錐部5bに続く円筒部5cとし、下部は、円筒部5cより底面に向かうに従い先すぼまりの円錐状のテーパー部5dとするように構成されている。
【0027】
外槽4の上部から中間部は、円筒部4cとし、下部は、円錐状のテーパー部5dと同様に、円筒部4cより底面に向かうに従い先すぼまりの円錐状のテーパー部4dとするように構成されている。
【0028】
内槽5の内側側面には、貼付防止部材の一例として、矩形の板73が内槽5の内面に内槽中心周りに複数個、取り付けられている。板73は、上端部が内槽5の上部円筒部5cの内側側面の上端部で内槽5と連結されており、下方に向かうに従って内槽5から内槽中心側に離れ、下端部は自由端となるように取り付けられている。よって、後述する脱水動作時には遠心力で、板73は内槽5の円筒部5c及びテーパー部5dの内面に接触する一方、脱水動作停止時に遠心力が無くなると、板73自体の剛性により、元の位置、すなわち、下方に向かうに従って内槽5から内槽中心側に離れた状態に復帰するように構成している。言い換えれば、板73は、内槽5に支持されて、収納された使用済み紙おむつ18を内槽5の内面から離すように位置規制するように構成している。
【0029】
投入扉2は、装置本体3の上部に開閉可能に取り付けられている。使用済み紙おむつ18は、投入扉2を開けて、内槽5内に投入される。
【0030】
外槽4は、水を溜めることができる容器になっており、液供給部10から水を外槽4内に導入することで貯水することが可能であるとともに、薬剤も液供給部10から外槽4内に導入することができる。この結果、液供給部10から外槽4内に処理液19を供給することができる。なお、詳しくは後述するが、水と薬剤とを混合した処理液19を液供給部10から外槽4内に供給することもできる。
【0031】
また、液排出部9を用いて、外槽4内の液体を外部に排出する。外槽4の内部には、少なくとも側面または底面のどちらかに複数の貫通穴5aを持つ円筒形状の内槽5が配置されている。
【0032】
また、内槽5は、回転駆動部70に回転可能に接続されている。回転駆動部70は、制御装置11の制御の下に駆動される。回転駆動部70は、一例として、内槽5の回転軸沿いに内槽5に固定されたシャフト13と、シャフト13と係合してシャフト13を回転させるベルト14と、ベルト14が係合したギヤが固定された回転軸を有するモータ12とで構成されており、制御装置11の制御の下にモータ12の駆動で内槽5を外槽4に対して回転することが可能である。内槽5の回転軸は、一例として、鉛直方向沿いに配置することができる。
【0033】
外槽底部15と内槽底部17とは、外槽4と内槽5とに対して、それぞれ、開閉部の一例としてのヒンジ部71,72により、回動軸周りに開閉することが可能になっている。外槽底部15と内槽底部17との下方の装置本体3内の下部には、取出部6が配置されている。
【0034】
処理後の紙おむつは、取出部6から取り出すことが可能になっている。取出部6の内部には、廃棄用袋8が取り付けられた格納容器7が配置されている。廃棄用袋8は内槽底部17の直下に配置されている。格納容器7の開口を内槽5の底部の開口よりも大きくすることにより、処理後の紙おむつが格納容器7の廃棄用袋8内に円滑に落下させることができる。
【0035】
外槽4及び内槽5の下部には、
図1Bに示すように、テーパー部4d,5dを付けなくても良い。テーパー部4d,5dを付けることで、外槽底部15と内槽底部17の直径を小さくすることが可能であり、ヒンジ部71,72により、回動軸周りに開閉する際に必要になる空間を小さくすることが出来る。結果として、格納容器7に蓄えられる処理後のおむつを多くすることが出来る。
【0036】
[動作]
次に、使用済み紙おむつ処理装置1の処理動作について説明する。以下では、説明の便宜上、内槽5内に使用済み紙おむつ18を投入して配置されたのち、攪拌動作を行っている状態(
図2)と、内槽5を高速回転させて脱水処理を行っている状態(
図3)と、外槽底部15及び内槽底部17を開き、処理後の使用済み紙おむつ18の取出部6への取り出し動作を行っている状態(
図5)とを分けて説明する。
【0037】
図2において、液供給部10から水が外槽4に投入され、一定量の水が外槽4内に蓄えられる。
【0038】
次に、高吸水性ポリマーの吸水機能を低下させる薬剤を液供給部10から外槽4に投入して、外槽4内に既に投入された水と混合し、外槽4内に処理液19を貯水する。高吸水性ポリマーの吸水機能を低下させる薬剤としては、金属イオンを含むものが好ましく、特に2価の金属を含む、塩化カルシウム、又は、石灰などを用いることが可能である。
【0039】
次に、使用済み紙おむつ18が、投入扉2から内槽5内に投入され、制御装置11の制御の下にモータ12が回転制御されて攪拌動作を実行する。具体的には、モータ12が回転することで、ベルト14を介してシャフト13が回転し、内槽5が外槽4に対して回転する。これにより、処理液19と使用済み紙おむつ18とが攪拌される。しばらく(5分~30分程度が好ましい)攪拌動作を続けると、使用済み紙おむつ18の高吸水性ポリマーと薬剤中の例えば2価の金属イオンとが反応することで、高吸水性ポリマーに含有されていた水分が、使用済み紙おむつ18から離水し、離水した水が処理液19と混合される。ここでの攪拌動作は、処理液19と使用済み紙おむつ18の高吸水性ポリマーとが反応すればよく、攪拌動作によって、使用済み紙おむつ18が分離解体しない様に、制御装置11の制御の下に緩やかに攪拌することが重要である。具体的には、例えば40~160rpmで緩やかに攪拌することが好ましい。
【0040】
薬剤が混合された処理液19が外槽4に貯水した状態で、使用済み紙おむつ18を投入することで、使用済み紙おむつ18が内槽5内で膨張することを防止することが可能である。もし、薬剤を含む処理液19を貯水せずに、水だけを貯水した状態で使用済み紙おむつ18を投入すると、高吸水性ポリマーが水を吸収し、使用済み紙おむつ18が大きく膨張してしまう。この場合、内槽5内に一度に投入できる使用済み紙おむつ18の数が限定される課題、及び、内槽5を大きくしなければならない課題が発生する。これに対して、薬剤が混合された処理液19を外槽4に貯水すれば、これらの課題の発生を抑制することができる。
【0041】
次に、使用済み紙おむつ18の脱水動作について、
図3を用いて説明する。液排出部9から、外槽4に溜まっている処理液等の液体を排出した後、内槽5を外槽4に対して高速に回転させることで、使用済み紙おむつ18を脱水することができ、使用済み紙おむつ18を減量することができる。具体的には、800~1300rpm程度で脱水することが好ましい。このとき、使用済み紙おむつ18は、遠心力によって内槽5内で外側に向けて押し付けられる。紙おむつ18には、接着剤が用いられており、処理動作を連続して行っていると、溶け出した接着剤が内槽5の内側に付着し、脱水後に内槽5と使用済み紙おむつ18とが接着剤で貼り付いてしまうことがある。内槽5の下部にテーパー部5dを設けている場合には、テーパー部5dに特に貼り付きやすくなる傾向がある。しかし、内槽5の内部には、板73が取り付けられており、脱水時の遠心力により、板73も同時に側面に押し付けられて弾性的に湾曲する。脱水動作が完了すると、遠心力が無くなるために、湾曲していた板73は、元の位置に戻ろうとする。この力で、内槽5の側面に貼り付いていた使用済み紙おむつ18が剥がされる。
【0042】
板73同士の間隔は、例えば3~15cmが好ましい(
図4(a)参照)。この場合、使用済み紙おむつ18を内槽5から剥がすことが可能である。板73同士の設置間隔が3cm未満の場合は、脱水時の遠心力で使用済み紙おむつ18が板73の間に挟まってしまい、使用済み紙おむつ18が内槽5から落下しないことがある。一方で、板73同士の設置間隔が15cmよりも広すぎると、板73の間に、使用済み紙おむつ18が入り込んでしまい、剥がすことができない場合がある(
図4(b)参照)。
【0043】
板73の幅は、例えば1~5cmが好ましい。板73の幅が1cm未満の場合は、貼り付いた使用済み紙おむつ18を内槽5から剥がす力が板73で不足してしまう。板73の幅が5cmを超える場合は、板73自体に使用済み紙おむつ18が貼り付いてしまい、使用済み紙おむつ18が内槽5から落下しないことがある。
【0044】
また、板73の材料としては、弾性が強く折れにくい塩化ビニルなどが好ましい。この場合、板73の厚さは例えば1~3mmが好ましい。板73の厚さが1mm未満の場合は、板73で弾性力が不足してしまい、貼り付いた使用済み紙おむつ18を剥がす力が不足してしまう。板73の厚さが3mmを超える場合は、板73で弾性力が強すぎてしまい、湾曲しないために、貼り付いた使用済み紙おむつ18を内槽5から剥がせないことがある。
【0045】
次に、使用済み紙おむつ18の取り出し動作について、
図5を用いて説明する。脱水が終わった状態で、ヒンジ部71,72を介して外槽底部15及び内槽底部17を開口すると、使用済み紙おむつ18は、格納容器7に設置された廃棄用袋8内に落下する。使用済み紙おむつ18を排出する場合には、装置本体3に対して取出部6を横方向にスライドさせるなどして装置本体3から取り出し、格納容器7から廃棄用袋8を取り出すだけで排出が可能となる。
【0046】
以上、説明した本実施形態1によれば、金属イオンなどを含む薬剤で減量処理した紙おむつ18は、処理槽20内で分離解体されることなく繊維部分が残っている。また、処理後の紙おむつ18を内槽上方から作業者が直接取り出す必要がなく、作業者の手を煩わせることなく廃棄用袋8に格納することが可能であり、作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減することが出来る。
【0047】
なお、本実施形態1では、格納容器7に廃棄用の廃棄用袋8を設置しているが、廃棄用袋8を設置せず、直接、格納容器7に格納するようにしても良い。
【0048】
また、外槽4に水を貯水した後に、金属イオンなどを含む薬剤を投入して、処理液19を作成する代わりに、予め、水と薬剤とを混合した処理液19を別途作成しておき、作成した処理液19を、直接、外槽4に貯留する構成にしても良い。
【0049】
また、内槽5を回転させるのに、ベルト14を用いることなく、直接、モータ12で駆動することも可能である。
【0050】
[実施形態2]
図6は、本発明の実施形態2の装置構成を示している。
【0051】
本実施形態1では、板73は一枚の板で構成されている。そのため、遠心力で押し付けられた際に、テーパー部5dとの間に隙間90が出来ている。本実施形態1の脱水動作時を示す
図3のIV-IV線での切断断面図を
図7に示す。脱水動作時に使用済み紙おむつ18が遠心力で押し付けられると、内槽5と板73との間に出来た隙間90に、使用済み紙おむつ18が押し込まれて板73の裏側への回り込みが発生してしまい、脱水動作完了後も突っ張り力Fによって、使用済み紙おむつ18が内槽5内から落下しない場合がある。
【0052】
そこで、各板73の下端に、ヒンジ部74を介して、さらに下方に延びる短い板75が取り付けられている点が、実施形態1と相違する。
【0053】
このように、内槽5と各板73との間の隙間90が無くなるように、各板73の下端部に、ヒンジ部74で可動できる短い板75を取り付けることで、短い板75がテーパー部5dの内面に合わせるように板73に対して屈曲し、板73又は短い板75が、テーパー部5dに、より接近することができて、内槽5と板73との間の隙間をより狭くすることができる。その結果、内槽5と板73との間の隙間90に、使用済み紙おむつ18が入り込むことを効果的に防止できて、使用済み紙おむつ18を内槽5から、より確実に剥がすことが可能である。
【0054】
実施形態2の構成によれば、脱水動作時にヒンジ部74が折れ曲がることで、内槽5と板75との隙間が無くなり、使用済み紙おむつ18が押し込まれて板75の裏側への回り込むことがなくなり、使用済み紙おむつ18を確実に引き剥がすことが可能である(
図8参照)。
【0055】
以上、説明した本実施形態2によれば、脱水動作時の遠心力により、ヒンジ部74を介して板73と短い板75とが屈曲して内槽5の内面に沿うことにより、使用済み紙おむつ18を内槽5から、より確実に引き剥がすことが可能となる。
【0056】
[実施形態3]
図9は、本発明の実施形態3の装置構成を示している。
【0057】
本実施形態1及び2では、それぞれ、複数個の板73は互いに分離されているが、実施形態1の隣接する板73と板73との間に、網76が張られている点が、実施形態1及び2とは相違する。
【0058】
このように、隣接する板73と板73との間に網76を張って、使用済み紙おむつ18を内槽5の内面から離すように位置規制する。このような構成により、使用済み紙おむつ18が、隣接する板73と板73との間に位置したとしても、網76により、使用済み紙おむつ18を内槽5から、より確実に引き剥がすことが可能となる。
【0059】
このような構成を取ることで、脱水動作時に使用済み紙おむつ18が遠心力で押し付けられて、隣接する板73と板73との間の隙間に使用済み紙おむつ18が押し込まれて板73の裏側への回り込みが発生しようとする課題を回避することが可能である。
【0060】
以上、説明した本実施形態3によれば、脱水動作時に使用済み紙おむつ18が遠心力で押し付けられて、隣接する板73と板73との間の隙間に使用済み紙おむつ18が押し込まれても、隣接する板73と板73との間の網76により、押し込まれた、使用済み紙おむつ18を内槽5から、より確実に引き剥がすことが可能となる。
【0061】
前記したように、実施形態1~3にかかる使用済み紙おむつ処理装置によれば、外槽5の底部と内槽4の底部とが開閉することができ、内槽内面に配置された貼付防止部材の板73などで脱水後のおむつを内槽内面から離すように引き剥がして、処理後のおむつを内槽4から落下させ、内槽4の下方から取り出すことができ、作業者の作業負担及び衛生上の負担を軽減することが可能である。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
例えば、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理装置は、排泄物に含まれる水分を吸収した高吸水性ポリマーと2価の金属イオンなどを含む薬品を混合することで、高吸水性ポリマーが持つ吸水機能を低下させることで水分を離水させ、使用済み紙おむつが含む水分量を低下させることで重量を減量することが可能である。また、本発明の前記態様にかかる使用済み紙おむつ処理装置は、処理後の使用済み紙おむつを作業者が直接、内槽から取り出す必要がないため、作業者の作業負担及び衛生面での負担を低減することが可能であり、紙おむつを多量に使う高齢者施設、又は、保育施設での作業改善等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 使用済み紙おむつ処理装置
2 投入扉
3 装置本体
4 外槽
4c 円筒部
4d テーパー部
5 内槽
5a 貫通穴
5b 円錐部
5c 円筒部
5d テーパー部
6 取出部
7 格納容器
8 廃棄用袋
9 液排出部
10 液供給部
11 制御装置
12 モータ
13 シャフト
14 ベルト
15 外槽底部
17 内槽底部
18 使用済み紙おむつ
19 処理液
20 処理槽
70 回転駆動部
71,72,74 ヒンジ部
73 板
75 板
76 網
90 隙間
101 使用済み紙おむつ処理装置
102 開閉蓋
107 回転ドラム
111 貫通孔
112 攪拌突起
116 モータ
133 水供給管
135 排出管
136 開閉弁
137 排出管
201 使用済み紙おむつ処理装置
202 石灰
203 次亜塩素
204 処理槽
205 使用済み紙おむつ
206 水
207 液体
208 排水