(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 651B
H01L21/304 647Z
(21)【出願番号】P 2019103277
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 勤
(72)【発明者】
【氏名】吉原 直彦
(72)【発明者】
【氏名】金松 泰範
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】天久 賢治
(72)【発明者】
【氏名】林 昌之
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183375(JP,A)
【文献】特開2015-153947(JP,A)
【文献】特開2016-219471(JP,A)
【文献】特開2018-182150(JP,A)
【文献】特開平10-137665(JP,A)
【文献】特開2018-129439(JP,A)
【文献】特開2018-46063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたパターン形成面を上方に向けた状態で、基板を基板保持ユニットに保持させる基板保持工程と、
前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う薬液の液膜を保持し、前記薬液の液膜に含まれる薬液を用いて前記パターン形成面を処理する薬液処理工程と、
前記薬液処理工程の後、前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う中間処理液の液膜を保持し、前記中間処理液の液膜に含まれる中間処理液を用いて前記パターン形成面を処理する中間処理工程と、
前記中間処理工程の後、前記パターン間を充填するための液体の充填剤を前記パターン形成面に向けて吐出する充填剤吐出工程と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板を鉛直な回転軸線回りに回転させることにより、前記パターン形成面に供給された充填剤を前記基板の外周に向けて拡げる充填剤拡大工程と、
前記パターン形成面に供給された充填剤を固化させることにより、前記パターン形成面に充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程と、
前記薬液処理工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板に対し上方から対向する基板対向面を有する円板部と、前記円板部の外周部から下方に延びる円筒部と、を有する遮断部材を、前記パターン形成面の上方の空間を、当該空間の外側の空間の雰囲気から遮断する下位置に配置し、その後、前記遮断部材を前記下位置に維持する下位置配置工程と、
前記充填剤拡大工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を、前記下位置よりも上方に位置する上位置に向けて上昇を開始させる遮断部材上昇工程と、を含み、
前記薬液処理工程が、前記パターン形成面の中央部に対向する中央部吐出口を有し、前記円板部に結合された中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて薬液を吐出する工程を含み、
前記充填剤拡大工程が、前記遮断部材が前記上位置に位置している状態で、前記パターン形成面における充填剤の拡大を開始する工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記遮断部材の前記上位置において、前記円筒部の下端が、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む処理カップの上端よりも上方に位置する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記遮断部材上昇工程が、充填剤吐出工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を前記上位置に向けて上昇を開始させる工程を含み、
前記充填剤吐出工程が、前記遮断部材が前記上位置に配置している状態で、前記パターン形成面への充填剤の吐出を開始する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記充填剤吐出工程が、前記中央ノズルから充填剤を吐出せずに、前記中央ノズルとは別に設けられた、前記パターン形成面に沿って移動可能なノズルであって、前記基板保持ユニットに保持されている基板と前記上位置に位置している前記遮断部材との間に収容された充填剤ノズルから、前記パターン形成面に向けて充填剤を吐出する工程を含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記充填剤吐出工程における前記充填剤ノズルの吐出口と前記パターン形成面との間の鉛直方向の距離が、前記遮断部材が前記下位置に位置している状態の前記中央部吐出口と前記パターン形成面との間の鉛直方向の距離と同じか、当該距離よりも短い、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記薬液処理工程が、前記パターン形成面に薬液を供給する薬液供給工程を含み、
前記中間処理工程が、前記パターン形成面に中間処理液を供給する中間処理液供給工程を含み、
前記充填剤吐出工程における前記充填剤ノズルからの充填剤の吐出流量が、前記薬液供給工程における前記パターン形成面への薬液の供給流量、および前記中間処理液供給工程における前記パターン形成面への中間処理液の供給流量よりも少ない、請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記充填剤拡大工程が、前記薬液処理工程時および前記中間処理工程時よりも速い速度で前記基板を回転させる高速回転工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記充填剤拡大工程の後に、前記パターン形成面の全域に広がっている充填剤を沈下させる充填剤沈下工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記中間処理工程が、前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う溶剤の液膜を保持し、前記溶剤の液膜に含まれる溶剤を用いて前記パターン形成面を処理する溶剤処理工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記溶剤処理工程が、前記中央ノズル、および/または、前記中央ノズルとは別に設けられた、前記パターン形成面に沿って移動可能な溶剤ノズルの少なくとも一方から、前記パターン形成面に向けて溶剤を吐出する工程を含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記溶剤処理工程が、前記中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて溶剤を吐出する中央吐出工程を含み、
前記中央吐出工程の途中に、前記遮断部材を、前記下位置から、前記下位置と前記上位置との間に設けられ、前記円筒部の下端が、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む処理カップの上端と同じ高さであるような中間位置に配置する中間位置配置工程を、さらに含む、請求項9または10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記薬液処理工程の開始前から、前記遮断部材の前記基板対向面で開口する不活性ガス吐出口から不活性ガスを下方に向けて吐出する不活性ガス供給工程を、さらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記薬液処理工程において前記薬液の液膜に含まれる薬液が、溶存酸素量の低減された薬液である、請求項1~12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記薬液処理工程において前記薬液の液膜に含まれる薬液が、フッ酸を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板保持ユニットに保持されている基板を加熱して、前記パターン形成面に形成されている前記充填剤の液膜に含まれている充填剤を固化させることにより、前記パターン形成面に前記充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程を、さらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記基板保持ユニットに保持されている基板を加熱して、前記パターン形成面に形成されている前記充填剤の固化膜に含まれている充填剤を昇華させることにより、前記パターン形成面から充填剤を除去する充填剤除去工程を、さらに含む、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
パターンが形成されたパターン形成面を上方に向けた状態で、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板を鉛直な回転軸線回りに回転させるための基板回転ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に中間処理液を供給するための中間処理液供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に向けて、前記パターンを充填するための液体の充填剤を吐出するための充填剤ノズルと、
前記充填剤ノズルに、充填剤を供給するための充填剤供給ユニットと、
前記パターン形成面に供給された充填剤を固化させるための充填剤固化ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板に対し上方から対向する基板対向面を有する円板部と、前記円板部の外周部から下方に延びる円筒部と、を有する遮断部材と、
前記遮断部材を、前記パターン形成面の上方の空間を、当該空間の外側の空間の雰囲気から遮断する下位置と、前記下位置よりも上方に位置する上位置との間で昇降させる遮断部材昇降ユニットと、
前記薬液供給ユニット、中間処理液供給ユニット、前記充填剤供給ユニットおよび前記遮断部材昇降ユニットを制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置が、前記パターン形成面に、前記薬液供給ユニットによって形成された、前記パターン形成面を覆う薬液の液膜を保持し、前記薬液の液膜に含まれる薬液を用いて前記パターン形成面を処理する薬液処理工程と、前記薬液処理工程の後、前記パターン形成面に、前記中間処理液供給ユニットによって形成された、前記パターン形成面を覆う中間処理液の液膜を保持し、前記中間処理液の液膜に含まれる中間処理液を用いて前記パターン形成面を処理する中間処理工程と、前記中間処理工程の後、前記パターン間を充填するための液体の充填剤を前記パターン形成面に向けて吐出する充填剤吐出工程と、前記基板保持ユニットに保持されている基板を前記基板回転ユニットによって前記回転軸線回りに回転させることにより、前記パターン形成面に供給された充填剤を前記基板の外周に向けて拡げる充填剤拡大工程と、前記パターン形成面に供給された充填剤を充填剤固化ユニットによって固化させることにより、前記パターン形成面に充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程と、前記薬液処理工程の開始に先立って、前記遮断部材昇降ユニットによって、前記遮断部材を、前記下位置に配置し、その後、前記遮断部材を前記下位置に維持する下位置配置工程と、前記充填剤拡大工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を、前記下位置から前記上位置に向けて上昇を開始させる遮断部材上昇工程と、を実行し、
前記薬液処理工程が、前記パターン形成面の中央部に対向する中央部吐出口を有し、前記円板部に結合された中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて薬液を吐出する工程を含み、
前記充填剤拡大工程が、前記遮断部材が前記上位置に位置している状態で、前記パターン形成面における充填剤の拡大を開始させる工程を含む、基板処理装置。
【請求項18】
前記薬液供給ユニットが、薬液中の溶存酸素量を低減させるための溶存酸素低減ユニットを含む、請求項17に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記基板保持ユニットに保持されている基板を、前記パターン形成面と反対側から加熱するためのヒータをさらに含む、請求項17または18に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む包囲部材をさらに含み、
前記下位置に位置している前記遮断部材と前記包囲部材とによって区画される内部空間が、当該内部空間の外側の空間から密閉される、請求項17~19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、液処理後の基板のパターン形成面を、充填剤(ポリマー)の固化膜で覆い、アッシング装置等を用いて充填剤の固化膜を除去(昇華等)することにより、パターン形成面を乾燥させる乾燥手法が記載されている。具体的には、処理液(薬液、リンス液)を用いて基板のパターン形成面を処理した後に、パターン形成面に液体の充填剤を供給して、パターン形成面を充填剤の液膜で覆う。これにより、パターン形成面に形成された複数のパターンの間に、充填剤が充填される。
【0003】
そして、充填剤の液膜を、基板の加熱等により固化させることにより、パターン形成面を覆う充填剤の固化膜(コーティング膜)が形成される。その後、アッシング装置等を用いて充填剤の固化膜を除去することにより、基板のパターン形成面から充填剤が除去される。パターン形成面に形成されたパターン間に液体の界面が出現することなくパターン形成面を乾燥できるので、パターン倒壊が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パターン形成面の酸化に伴って、パターン形成面に形成されているパターンが脆弱化することがある。その結果、パターン倒壊が生じるおそれもある。そのため、パターン形成面の酸化を抑制または防止する必要がある。
特許文献1の手法では、充填剤の固化膜によってパターン形成面に覆われた後は、パターン形成面が、当該パターン形成面の酸化を防止できるが、充填剤の固化膜がパターン形成面に形成される前には、雰囲気中の酸素濃度が高くなってしまう。すなわち、固化膜形成前において、パターン形成面の酸化を抑制または防止できないおそれがある。
【0006】
また、良好な固化膜を形成するために、基板のパターン形成面に充填剤を円滑に供給することが望ましい。
以上により、固化膜形成の前においてパターン形成面の酸化を抑制または防止でき、かつ、基板のパターン形成面に充填剤を円滑に供給することが求められている。
そこで、この発明の目的は、固化膜形成の前においてパターン形成面の酸化を抑制または防止でき、かつ、パターン形成面に充填剤を円滑に供給できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、パターンが形成されたパターン形成面を上方に向けた状態で、基板を基板保持ユニットに保持させる基板保持工程と、前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う薬液の液膜を保持し、前記薬液の液膜に含まれる薬液を用いて前記パターン形成面を処理する薬液処理工程と、前記薬液処理工程の後、前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う中間処理液の液膜を保持し、前記中間処理液の液膜に含まれる中間処理液を用いて前記パターン形成面を処理する中間処理工程と、前記中間処理工程の後、前記パターン間を充填するための液体の充填剤を前記パターン形成面に向けて吐出する充填剤吐出工程と、前記基板保持ユニットに保持されている基板を鉛直な回転軸線回りに回転させることにより、前記パターン形成面に供給された充填剤を前記基板の外周に向けて拡げる充填剤拡大工程と、前記パターン形成面に供給された充填剤を固化させることにより、前記パターン形成面に充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程と、前記薬液処理工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板に対し上方から対向する基板対向面を有する円板部と、前記円板部の外周部から下方に延びる円筒部と、を有する遮断部材を、前記パターン形成面の上方の空間を、当該空間の外側の空間の雰囲気から遮断する下位置に配置し、その後、前記遮断部材を前記下位置に維持する下位置配置工程と、前記充填剤拡大工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を、前記下位置よりも上方に位置する上位置に向けて上昇を開始させる遮断部材上昇工程と、を含み、前記薬液処理工程が、前記パターン形成面の中央部に対向する中央部吐出口を有し、前記円板部に結合された中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて薬液を吐出する工程を含み、前記充填剤拡大工程が、前記遮断部材が前記上位置に位置している状態で、前記パターン形成面における充填剤の拡大を開始する工程を含む、基板処理方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、遮断部材に円筒部が設けられているため、遮断部材が下位置に位置している状態において、パターン形成面の上方の空間(以下、「内部空間」という)の雰囲気と、内部空間の外側の空間の雰囲気と、を実質的に遮断可能である。この場合、基板と下位置に位置している遮断部材との間を、酸素濃度の低い状態に保つことが可能である。
【0009】
そして、遮断部材を下位置に位置させながら、薬液を用いた薬液処理が行われる。内部空間の酸素濃度を十分に低下させた後に、薬液を用いた薬液処理を開始させることにより、酸素濃度の低い雰囲気下において、薬液を用いた薬液処理をパターン形成面に施すことができる。これにより、薬液処理におけるパターン形成面の酸化を抑制または防止できる。
【0010】
また、パターン形成面に向けて充填剤が吐出されることにより、パターン形成面に充填剤が供給され、パターン形成面に充填剤の液膜が形成される。その後、充填剤の液膜が固化されることにより、充填剤の固化膜が形成される。
仮に、遮断部材が下位置に位置している状態で、パターン形成面における充填剤の拡大を開始させると、基板の回転による遠心力を受けて基板の周縁部から飛散する充填剤が遮断部材の円筒部に当たり(衝突し)、パターン形成面に再供給されるおそれがある。パターン形成面に充填剤が再供給されると、パターン形成面に存在している充填剤に乱れが生じるおそれがある。この場合、固化膜除去後の基板に不具合が生じるおそれがある。
【0011】
これに対し、この実施形態では、遮断部材が上位置に位置している状態でパターン形成面における充填剤の拡大を開始する。遮断部材が上位置に位置しているので、基板の周縁部から飛散する充填剤が遮断部材の円筒部に当たってパターン形成面に再供給されることを抑制または防止できる。そのため、パターン形成面に存在している充填剤に乱れが生じることを抑制または防止できる。これにより、固化膜除去後の基板に不具合が生じることを抑制できる。
【0012】
また、この方法では、パターン形成面が前処理液の液膜で覆われている状態で遮断部材の上昇を開始する。すなわち、前処理液の液膜によってパターン形成面を保護しながら内部空間の遮断状態を解除する。遮断状態の解除後も、パターン形成面は、液膜によって保護される。そのため、内部空間の遮断状態を解除に伴う、パターン形成面の酸化を、確実に抑制または防止できる。
【0013】
以上により、固化膜の形成の前においてパターン形成面の酸化を抑制または防止でき、かつ、パターン形成面に充填剤を円滑に供給できる。
この発明の一実施形態では、前記遮断部材の前記上位置において、前記円筒部の下端が、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む処理カップの上端よりも上方に位置する。
この方法によれば、遮断部材の上位置において、円筒部の下端が、処理カップの上端よりも上方に位置している。
【0014】
通例、処理カップの上端の高さ位置は、基板から飛散する液体を、処理カップによって捕獲することが可能な位置に設けられている。そのため、遮断部材の上位置を、円筒部の下端が処理カップの上端よりも上方になるように設けることにより、基板の周縁部から排出される処理液が円筒部に当たってパターン形成面に再供給されるのを、より効果的に抑制できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記遮断部材上昇工程が、充填剤吐出工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を前記上位置に向けて上昇を開始させる工程を含む。そして、前記充填剤吐出工程が、前記遮断部材が前記上位置に位置している状態で、前記パターン形成面への充填剤の吐出を開始する工程を含む。
【0016】
この方法によれば、遮断部材が上位置に位置しているので、パターン形成面に供給された充填剤が遮断部材の円筒部に当たることを、より効果的に抑制できる。これにより、パターン形成面に存在している充填剤に乱れが生じることを、より効果的に抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記充填剤吐出工程が、前記中央ノズルから充填剤を吐出せずに、前記中央ノズルとは別に設けられた、前記パターン形成面に沿って移動可能なノズルであって、前記基板保持ユニットに保持されている基板と前記上位置に位置している前記遮断部材との間に収容された充填剤ノズルから、前記パターン形成面に向けて充填剤を吐出する工程を含む。
【0017】
この方法によれば、充填剤吐出工程において、充填剤ノズルが、基板と上位置に位置している遮断部材との間に配置される。そして、中央ノズルからではなく充填剤ノズルから、パターン形成面に向けて充填剤が吐出される。このとき、充填剤ノズルの吐出口との間の鉛直方向の距離が、薬液処理工程における中央ノズルの中央部吐出口とパターン形成面との間の鉛直方向の距離よりも短い。
【0018】
吐出口とパターン形成面との間の鉛直方向の距離が長くのに従って、吐出口から吐出された充填剤がパターン形成面に達するまでの時間が長くなる。そのため、吐出口とパターン形成面との間の鉛直方向の距離が長いと、吐出された充填剤の液流が、外乱の影響を受け易い。したがって、充填剤吐出工程において、仮に、上位置に位置している遮断部材の中央部吐出口からパターン形成面に向けて充填剤を吐出すると、パターン形成面の所期の着液位置に、所期の着液流量で充填剤を着液させることが困難なことがある。この場合、パターン形成面に充填剤を良好に供給(塗布)できないおそれがある。
【0019】
これに対し、本方法では、パターン形成面との間の鉛直方向の距離が近い、充填剤ノズルの吐出口から、パターン形成面に向けて充填剤が吐出される。そのため、パターン形成面の所期の着液位置に、所期の着液流量で充填剤を着液させることができる。これにより、パターン形成面に充填剤を良好に供給(塗布)できる。ゆえに、パターン形成面に良好な固化膜を形成できる。
【0020】
この場合、前記充填剤吐出工程における前記充填剤ノズルの吐出口と前記パターン形成面との間の鉛直方向の距離が、前記遮断部材が前記下位置に位置している状態の前記中央部吐出口と前記パターン形成面との間の鉛直方向の距離と同じか、当該距離よりも短いことが好ましい。
この方法によれば、充填剤吐出工程における充填剤ノズルの吐出口の高さ位置が、遮断部材が前記下位置に位置している状態の中央部吐出口の高さ位置と同じが、当該高さ位置よりも低い。
【0021】
通例、遮断部材が前記下位置に位置している状態の中央部吐出口の高さ位置は、当該中央部吐出口から吐出される液体が外乱の影響を受けずに、パターン形成面の所期の着液位置に液体を良好に着液させることができるような高さ位置に設けられている。そのため、充填剤吐出工程における充填剤ノズルの吐出口の高さ位置を、下位置に位置している状態の中央部吐出口と同じか下方になるように設けることにより、充填剤ノズルの吐出口から吐出される充填剤が外乱の影響を受けるのを効果的に抑制できる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記薬液処理工程が、前記パターン形成面に薬液を供給する薬液供給工程を含む。また、前記中間処理工程が、前記パターン形成面に中間処理液を供給する中間処理液供給工程を含む。そして、前記充填剤吐出工程における前記充填剤ノズルからの充填剤の吐出流量が、前記薬液供給工程における前記パターン形成面への薬液の供給流量、および前記中間処理液供給工程における前記パターン形成面への中間処理液の供給流量よりも少ない。
【0023】
この方法によれば、充填剤吐出工程における充填剤ノズルからの充填剤の吐出流量が少ない。そのため、仮に、充填剤ノズルからではなく中央部吐出口から充填剤を吐出すると、パターン形成面に供給される充填剤が連続流でなく間欠状を呈したり、所期の着液位置からずれた位置に充填剤が着液したりするおそれがある。
これに対し、この方法では、充填剤ノズルの吐出口とパターン形成面との間の鉛直方向の距離が短いので、充填剤ノズルからの充填剤の吐出流量が少ない場合であっても、パターン形成面に供給される充填剤を連続流に維持でき、かつパターン形成面の所期の着液位置に充填剤を精度良く着液させることができる。これにより、パターン形成面に充填剤を、より一層良好に供給できる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記充填剤拡大工程が、前記薬液処理工程時および前記中間処理工程時よりも速い速度で前記基板を回転させる高速回転工程を含む。
この方法によれば、基板の高速回転によって、基板と遮断部材との間に、強い気流が発生するおそれがある。充填剤ノズルの吐出口とパターン形成面との間の鉛直方向の距離が短いので、内部空間に強い気流が発生する場合であっても、充填剤ノズルから吐出される充填剤が、気流の影響を最小限に抑制できる。そのため、パターン形成面の所期の着液位置に充填剤を精度良く着液させることができる。これにより、パターン形成面に充填剤を、より一層良好に供給できる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記充填剤拡大工程の後に、前記パターン形成面の全域に広がっている充填剤を沈下させる充填剤沈下工程をさらに含む。
この方法によれば、パターン形成面の全域において、パターン間に充填剤を充填させることができる。
この発明の一実施形態では、前記中間処理工程が、前記パターン形成面に、前記パターン形成面を覆う溶剤の液膜を保持し、前記溶剤の液膜に含まれる溶剤を用いて前記パターン形成面を処理する溶剤処理工程を含む。
【0026】
充填剤の種類によっては、薬液処理工程の後にパターン形成面に供給されるリンス液との間で可溶性(混和性)を有さないことがある。この場合、中間処理工程として、パターン形成面を覆うリンス液等の液膜を、充填剤との間で可溶性(混和性)を有するような溶剤に置換することにより、充填剤吐出工程以降の工程を円滑に実行できる。
そして、本方法では、パターン形成面が溶剤の液膜によって覆われている状態で、内部空間の遮断状態が解除される。溶剤の液膜によってパターン形成面を保護しながら内部空間の遮断状態を解除するので、パターン形成面の酸化を確実に抑制または防止しながら、パターン形成面に充填剤を吐出できる。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記溶剤処理工程が、前記中央ノズル、および/または、前記中央ノズルとは別に設けられた、前記パターン形成面に沿って移動可能な溶剤ノズルの少なくとも一方から、前記パターン形成面に向けて溶剤を吐出する工程を含む。
この方法によれば、中央ノズルおよび充填剤ノズルの少なくとも一方から、パターン形成面に向けて溶剤が吐出される。これにより、パターン形成面を覆う溶剤の液膜を良好に供給できる。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記溶剤処理工程が、前記中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて溶剤を吐出する中央吐出工程を含み、前記基板処理方法が、前記中央吐出工程の途中に、前記遮断部材を、前記下位置から、前記下位置と前記上位置との間に設けられ、前記円筒部の下端が、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む処理カップの上端と同じ高さであるような中間位置に配置する中間位置配置工程を、さらに含む。
【0029】
この方法によれば、遮断部材が下位置に位置している状態で中間処理液を供給することにより、円筒部に中間処理液が付着することがある。中間位置に位置している遮断部材を高速で回転させることにより、円筒部に付着している中間処理液を円筒部から除去して円筒部を乾燥させることができる。
また、処理カップの上端が、中間位置に位置している遮断部材の円筒部の下端と同じ高さに設けられている。そのため、遮断部材の回転によって円筒部から振り切られた中間処理液を、処理カップによって良好に捕獲することができる。
【0030】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記薬液処理工程の開始前から、前記遮断部材の前記基板対向面で開口する不活性ガス吐出口から不活性ガスを下方に向けて吐出する不活性ガス供給工程を、さらに含む。
この方法によれば、不活性ガスが、遮断部材の基板対向面で開口する不活性ガス吐出口から下方に吐出される。不活性ガス吐出口から吐出された不活性ガスは、基板のパターン形成面と遮断部材の基板対向面との間の内部空間を広がる。これにより、内部空間が不活性ガスで満たされることにより、内部空間の雰囲気中の酸素濃度を、より一層低減できる。そして、酸素濃度が十分に低下した後の内部空間において、パターン形成面に薬液処理を施すことにより、固化膜形成の前において、固化膜形成の前におけるパターン形成面の酸化を、より効果的に抑制または防止できる。
【0031】
この発明の一実施形態では、前記薬液処理工程において前記薬液の液膜に含まれる薬液が、溶存酸素量の低減された(溶存酸素濃度の低い)薬液である。
この方法によれば、溶存酸素量の低減された薬液を用いてパターン形成面を処理できる。これにより、薬液に溶存している酸素によってパターン形成面が酸化されるのを抑制または防止できる。これにより、固化膜形成の前におけるパターン形成面の酸化を、より効果的に抑制または防止できる。
【0032】
この発明の一実施形態では、前記薬液処理工程において前記薬液の液膜に含まれる薬液が、フッ酸を含む。
パターン形成面が酸化されると、パターン形成面に酸化膜が形成される。薬液処理工程に用いられる薬液にフッ酸が含まれていると、薬液処理工程においてパターン形成面から酸化膜が除去される。その結果、薬液処理工程において、パターン形成面が退縮するおそれがある。
【0033】
しかしながら、この方法では、円筒部を有する遮断部材を下位置に位置させながら、薬液を用いた薬液処理が行われる。内部空間の酸素濃度を十分に低下させた後に、薬液を用いた薬液処理を開始させることにより、酸素濃度の低い雰囲気下において、薬液を用いた薬液処理をパターン形成面に施すことができる。これにより、薬液処理におけるパターン形成面の酸化を抑制または防止できる。
【0034】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板保持ユニットに保持されている基板を加熱して、前記パターン形成面に形成されている前記充填剤の液膜に含まれている充填剤を固化させることにより、前記パターン形成面に前記充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程を、さらに含む。
この方法によれば、基板保持ユニットに保持されている基板を加熱することにより、充填剤の液膜に含まれている充填剤が固化される。これにより、パターン形成面に充填剤の固化膜が形成される。すなわち、パターン形成面への充填剤の液膜の形成と、充填剤の液膜の固化とを、共通の基板保持ユニットに基板を保持させながら行う。そのため、複数のチャンバー間で基板を搬送する必要がないので、処理のスループットの向上を図ることができる。
【0035】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板保持ユニットに保持されている基板を加熱して、前記パターン形成面に形成されている前記充填剤の固化膜に含まれている充填剤を昇華させることにより、前記パターン形成面から充填剤を除去する充填剤除去工程を、さらに含む。
この方法によれば、基板保持ユニットに保持されている基板を加熱することにより、充填剤の固化膜に含まれる液膜に含まれている充填剤が昇華される。これにより、パターン形成面から充填剤が除去される。すなわち、パターン形成面への充填剤の液膜の形成と、充填剤の固化膜の昇華とを、共通の基板保持ユニットに基板を保持させながら行う。そのため、一つの装置で、パターン形成面への充填剤の液膜の形成、充填剤の液膜の固化、およびパターン形成面からの充填剤の除去を行うことができる。これにより、処理のスループットの向上を、より一層図ることができる。
【0036】
また、この発明は、パターンが形成されたパターン形成面を上方に向けた状態で、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板を鉛直な回転軸線回りに回転させるための基板回転ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に中間処理液を供給するための中間処理液供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面に向けて、前記パターンを充填するための液体の充填剤を吐出するための充填剤ノズルと、前記充填剤ノズルに、充填剤を供給するための充填剤供給ユニットと、前記パターン形成面に供給された充填剤を固化させるための充填剤固化ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板に対し上方から対向する基板対向面を有する円板部と、前記円板部の外周部から下方に延びる円筒部と、を有する遮断部材と、前記遮断部材を、前記パターン形成面の上方の空間を、当該空間の外側の空間の雰囲気から遮断する下位置と、前記下位置よりも上方に位置する上位置との間で昇降させる遮断部材昇降ユニットと、前記薬液供給ユニット、中間処理液供給ユニット、前記充填剤供給ユニットおよび前記遮断部材昇降ユニットを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置が、前記パターン形成面に、前記薬液供給ユニットによって形成された、前記パターン形成面を覆う薬液の液膜を保持し、前記薬液の液膜に含まれる薬液を用いて前記パターン形成面を処理する薬液処理工程と、前記薬液処理工程の後、前記パターン形成面に、前記中間処理液供給ユニットによって形成された、前記パターン形成面を覆う中間処理液の液膜を保持し、前記中間処理液の液膜に含まれる中間処理液を用いて前記パターン形成面を処理する中間処理工程と、前記中間処理工程の後、前記パターン間を充填するための液体の充填剤を前記パターン形成面に向けて吐出する充填剤吐出工程と、前記基板保持ユニットに保持されている基板を前記基板回転ユニットによって前記回転軸線回りに回転させることにより、前記パターン形成面に供給された充填剤を前記基板の外周に向けて拡げる充填剤拡大工程と、前記パターン形成面に供給された充填剤を充填剤固化ユニットによって固化させることにより、前記パターン形成面に充填剤の固化膜を形成する固化膜形成工程と、前記薬液処理工程の開始に先立って、前記遮断部材昇降ユニットによって、前記遮断部材を、前記下位置に配置し、その後、前記遮断部材を前記下位置に維持する下位置配置工程と、前記充填剤拡大工程の開始に先立って、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記パターン形成面が前記中間処理液の液膜で覆われている状態で、前記遮断部材を、前記下位置から前記上位置に向けて上昇を開始させる遮断部材上昇工程と、を実行し、前記薬液処理工程が、前記パターン形成面の中央部に対向する中央部吐出口を有し、前記円板部に結合された中央ノズルから、前記パターン形成面に向けて薬液を吐出する工程を含み、前記充填剤拡大工程が、前記遮断部材が前記上位置に位置している状態で、前記パターン形成面における充填剤の拡大を開始させる工程を含む、基板処理装置を提供する。
【0037】
この構成によれば、遮断部材に円筒部が設けられているため、遮断部材が下位置に位置している状態において、パターン形成面の上方の空間(以下、「内部空間」という)の雰囲気と、内部空間の外側の空間の雰囲気と、を実質的に遮断可能である。この場合、基板と下位置に位置している遮断部材との間を、酸素濃度の低い状態に保つことが可能である。
【0038】
そして、遮断部材を下位置に位置させながら、薬液を用いた薬液処理が行われる。内部空間の酸素濃度を十分に低下させた後に、薬液を用いた薬液処理を開始させることにより、酸素濃度の低い雰囲気下において、薬液を用いた薬液処理をパターン形成面に施すことができる。これにより、薬液処理におけるパターン形成面の酸化を抑制または防止できる。
【0039】
また、パターン形成面に向けて充填剤が吐出されることにより、パターン形成面に充填剤が供給され、パターン形成面に充填剤の液膜が形成される。その後、充填剤の液膜が固化されることにより、充填剤の固化膜が形成される。
仮に、遮断部材が下位置に位置している状態で、パターン形成面における充填剤の拡大を開始させると、基板の回転による遠心力を受けて基板の周縁部から飛散する充填剤が遮断部材の円筒部に当たり(衝突し)、パターン形成面に再供給されるおそれがある。パターン形成面に充填剤が再供給されると、パターン形成面に存在している充填剤に乱れが生じるおそれがある。この場合、固化膜除去後の基板に不具合が生じるおそれがある。
【0040】
これに対し、この実施形態では、遮断部材が上位置に位置している状態でパターン形成面における充填剤の拡大を開始する。遮断部材が上位置に位置している状態では、円筒部の下端がパターン形成面よりも上方に位置している。そのため、基板の周縁部から飛散する充填剤が遮断部材の円筒部に当たってパターン形成面に再供給されることを抑制または防止できる。そのため、パターン形成面に存在している充填剤に乱れが生じることを抑制または防止できる。これにより、固化膜除去後の基板に不具合が生じることを抑制できる。
【0041】
また、この方法では、パターン形成面が前処理液の液膜で覆われている状態で遮断部材の上昇を開始する。すなわち、前処理液の液膜によってパターン形成面を保護しながら内部空間の遮断状態を解除する。遮断状態の解除後も、パターン形成面は、液膜によって保護される。そのため、内部空間の遮断状態を解除に伴う、パターン形成面の酸化を、確実に抑制または防止できる。
【0042】
以上により、固化膜の形成の前においてパターン形成面の酸化を抑制または防止でき、かつ、パターン形成面に充填剤を円滑に供給できる。
この発明の一実施形態では、前記薬液供給ユニットが、薬液中の溶存酸素量を低減させるための溶存酸素低減ユニットを含む。
この構成によれば、溶存酸素量の低減された薬液を用いてパターン形成面を処理できる。これにより、薬液に溶存している酸素によってパターン形成面が酸化されるのを抑制または防止できる。これにより、固化膜形成の前におけるパターン形成面の酸化を、より効果的に抑制または防止できる。
【0043】
この発明の一実施形態では、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、前記パターン形成面と反対側から加熱するためのヒータをさらに含む。
この構成によれば、基板保持ユニットに保持されている基板がヒータによって加熱される。これにより、充填剤の液膜に含まれている充填剤を固化させることができる。その結果、パターン形成面に充填剤の固化膜を形成することが可能である。この場合、パターン形成面への充填剤の液膜の形成と、充填剤の液膜の固化とを、共通の基板保持ユニットに基板を保持させながら行う。そのため、複数のチャンバー間で基板を搬送する必要がないので、処理のスループットの向上を図ることができる。
【0044】
この発明の一実施形態では、前記下位置に位置している前記遮断部材と、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む包囲部材と、によって、前記包囲部材の内部空間が、当該内部空間の外側の空間から密閉される。
この構成によれば、遮断部材が下位置に位置している状態で、包囲部材の内部空間が、当該内部空間の外側の空間から密閉されている。この場合、酸素を多く含む外側の空間の雰囲気が、包囲部材の内部空間に入ることが抑制される。これにより、遮断部材と基板との間の空間を、低酸素雰囲気に容易に保つことができる。ゆえに、パターン形成面の酸化を、より効果的に抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる液処理ユニットの構成例を説明するための図解的な図である。
【
図3】
図3は、前記液処理ユニットに備えられる遮断部材の底面図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置に備えられるベークユニットの構成例を説明するための図解的な図である。
【
図5】
図5は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置による処理対象の基板のパターン形成面を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、前記液処理ユニットにおいて実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
【
図8A】
図8Aは、前記基板処理例を説明するための図解的な図である。
【
図9】
図9は、前記ベークユニットにおいて実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る液処理ユニットの構成例を説明するための図解的な図である。
【
図12】
図12は、本発明の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、クリーンルーム内に配置された装置本体2と、装置本体2に結合されたインデクサユニット3と、処理液供給装置と、基板処理装置1を制御する制御装置4と、を含む。
【0047】
インデクサユニット3は、基板Wを収容する複数の基板収容器Cをそれぞれ保持する複数のロードポートLPと、各基板収容器Cに対して基板Wを搬送するためのインデクサロボットIRとを含む。
装置本体2は、搬送室5と、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する処理ユニットと、を含む。複数の処理ユニット6は、水平に離れた複数(たとえば4つ)の位置にそれぞれ配置された複数(たとえば4つ)の塔を形成している。各塔は、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット6を含む。6つの塔は、搬送室5の両側に3つずつ配置されている。
【0048】
基板処理装置1は、搬送ロボットとして、インデクサロボットIRの他に、第1の搬送ロボットCR1と、第2の搬送ロボットCR2と、を含む。第1の搬送ロボットCR1および第2の搬送ロボットCR2は、搬送室5内に配置されている。インデクサロボットIRは、ロードポートLPと第1の搬送ロボットCR1との間で基板Wを搬送する。インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドを含む。第1の搬送ロボットCR1は、インデクサロボットIRと、ロードポートLP側の2つの塔に含まれる処理ユニット6との間で基板Wを搬送すると共に、インデクサロボットIRと第2の搬送ロボットCR2との間で基板Wを搬送する。第2の搬送ロボットCR2は、インデクサロボットIRと、ロードポートLP側とは反対側の4つの塔に含まれる処理ユニット6との間で基板Wを搬送する。第1の搬送ロボットCR1および第2の搬送ロボットCR2は、基板Wを支持するハンドを含む。
【0049】
複数の処理ユニット6は、基板Wのパターン形成面(表面)Waに処理液を供給して、基板Wを処理液で処理する液処理ユニット6Aと、基板Wを加熱して、基板Wに加熱処理を施すベークユニット(充填剤固化ユニット)6Bとを含む。
図1の例では、ロードポートLP側の2つの塔に含まれる処理ユニット6が、液処理ユニット6Aである。
図1の例では、ロードポートLP側とは反対側の4つの塔に含まれる処理ユニット6が、ベークユニット6Bである。
【0050】
図2は、液処理ユニット6Aの構成例を説明するための図解的な図である。
図3は、遮断部材9の底面図である。
処理ユニット6は、箱形のチャンバー7と、チャンバー7内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)8と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面(パターン形成面Wa(
図6参照))の上方の空間を、当該空間の外側の空間の雰囲気から遮断する遮断部材9と、遮断部材9の内部を上下に挿通し、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面の中央部に向けて処理液を吐出するための中央ノズル10と、薬液の一例としてのフッ酸を中央ノズル10に供給する薬液供給ユニット11と、リンス液を中央ノズル10に供給するリンス液供給ユニット12と、中間処理液としての溶剤を中央ノズル10に供給する溶媒供給ユニット13と、不活性ガスを中央ノズル10に供給する不活性ガス供給ユニット14と、スピンチャック8に保持されている基板Wのパターン形成面Waの中央部に、中間処理液の一例としての溶剤を供給する溶剤供給ユニット(中間処理液供給ユニット)15と、スピンチャック8に保持されている基板Wのパターン形成面Waの中央部に液体の充填剤を供給する充填剤供給ユニット16と、スピンチャック8の側方を取り囲む筒状の処理カップ17と、を含む。
【0051】
チャンバー7は、スピンチャック8やノズルを収容する箱状の隔壁18と、隔壁18の上部から隔壁18内に清浄空気(フィルタによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)19と、隔壁18の下部からチャンバー7内の気体を排出する排気ダクト20と、を含む。FFU19は、隔壁18の上方に配置されており、隔壁18の天井に取り付けられている。FFU19は、隔壁18の天井からチャンバー7内に下向きに清浄空気(すなわち、酸素を含む雰囲気)を送る。排気ダクト20は、処理カップ17の底部に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気処理設備に向けてチャンバー7内の気体を導出する。したがって、チャンバー7内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU19および排気ダクト20によって形成される。基板Wの処理は、チャンバー7内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0052】
図2に示すように、スピンチャック8は、この実施形態では、真空吸着式のチャックである。スピンチャック8は、基板Wの下面の中央部を吸着支持している。スピンチャック8は、鉛直な方向に延びた下スピン軸21と、この下スピン軸21の上端に取り付けられて、基板Wを水平な姿勢でその下面を吸着して保持するスピンベース22と、下スピン軸21と同軸に結合された回転軸を有するスピンモータ(基板回転ユニット)23と、を備えている。スピンベース22は、基板Wの外径よりも小さな外径を有する水平な円形の上面22aを含む。基板Wの裏面がスピンベース22に吸着保持された状態では、基板Wの外周部が、スピンベース22の周端縁よりも外側にはみ出ている。スピンモータ23が駆動されることにより、下スピン軸21の中心軸線まわりに基板Wが回転される。
【0053】
また、スピンチャック8としては、真空吸着式のものに限らず、たとえば、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されてもよい。
遮断部材9は、遮断板26と、遮断板26に一体回転可能に設けられた上スピン軸27とを含む。遮断板26は、基板Wの径よりも大きい円板状である。遮断板26は、水平な姿勢で保持された円板部28と、円板部28の外周部から下方に延びる円筒部29と、を含む。円板部28は、円筒部29と同軸である。円板部28は、円筒部29の下端よりも上方に配置されている。円板部28の中央部には、遮断板26および上スピン軸27を上下に貫通する円筒状の貫通穴が形成されている。貫通穴の内周壁は、円筒面によって区画されている。貫通穴には、中央ノズル10が上下に挿通している。
【0054】
遮断板26は、下向きに凹んだカップ状の内面を含む。遮断板26の内面は、基板Wの上面の上方に対向する基板対向面26aと、遮断部材9が下位置にある状態で、スピンチャック8に保持されている基板Wの外周端と対向する内周面26bとを含む。円板部28の下面が、基板対向面26aに相当する。基板対向面26aは、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面と平行な平坦面である。
【0055】
円筒部29の内周面が内周面26bに相当する。内周面26bは、基板対向面26aから斜め下に外方に延びる環状の内傾斜部を含む。この内傾斜部は、回転軸線A1に対する傾斜角が連続的に変化する円弧状の断面を有している。この内傾斜部の断面は、下向きに開いている。内周面26bの内径は、内周面26bの下端に近づくに従って増加している。内周面26bの下端は、スピンチャック8に保持されている基板Wの外径よりも大きい内径を有している。
【0056】
中央ノズル10は、遮断板26および基板Wの中心を通る鉛直な軸線、すなわち、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。中央ノズル10は、スピンチャック8の上方に配置され、遮断板26および上スピン軸27の内部空間を挿通する。中央ノズル10は、遮断板26および上スピン軸27と共に昇降する。
上スピン軸27は、遮断板26の上方で水平に延びる支持アーム31に相対回転可能に支持されている。遮断板26および上スピン軸27には、電動モータ等を含む構成の遮断板回転ユニット32が結合されている。遮断板回転ユニット32は、遮断板26および上スピン軸27を、支持アーム31に対して回転軸線A1まわりに回転させる。
【0057】
また、支持アーム31には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の遮断部材昇降ユニット33が結合されている。遮断部材昇降ユニット33は、遮断部材9(遮断板26および上スピン軸27)および中央ノズル10を、支持アーム31と共に鉛直方向に昇降させる。
遮断部材昇降ユニット33は、遮断板26を、基板対向面26aがスピンチャック8に保持されている基板Wの上面に近接し、かつ円筒部29の下端の高さが基板W高さよりも下方に位置するような下位置(
図2に破線で示す位置)と、下位置よりも大きく上方に退避した上位置(
図2に実線で示す位置)と、の間で昇降させる。
【0058】
遮断部材9が下位置に位置する状態で、基板対向面26aおよび内周面26bと、基板Wの上面(パターン形成面Wa)と、によって区画される内部空間SP(以下、「内部空間SP」という。
図8C等参照)が、遮断空間を形成する。この遮断空間は、その周囲の空間から完全に隔離されているわけではないが、内部空間SPと、内部空間SPの外側の空間(チャンバー7の内側で、かつ内部空間SPの外側の空間)と、の間で流体の流通がほとんどない。すなわち、遮断部材9が下位置に位置する状態で、内部空間SPの雰囲気と、内部空間SPの外側の空間の雰囲気と、が実質的に遮断される。
【0059】
遮断部材9が上位置に位置している状態で、
図8I等に示すように、円筒部29の下端が、第1および第2のガード対向状態にある処理カップ17の上端17a(すなわち、上位置にある第2のガード84の上端)よりも上方に位置している。処理カップ17の上端17aの高さ位置は、基板Wから飛散する液体を、処理カップ17によって捕獲することが可能な位置に設けられている。
【0060】
遮断部材9の上位置を、円筒部29の下端が基板Wのパターン形成面Waよりも上方になるように設けることにより、遮断部材9が上位置に位置している状態で、基板Wの周縁部から飛散する液体が、上位置に位置している円筒部29に当たる(衝突する)ことを抑制または防止できる。加えて、遮断部材9の上位置を、円筒部29の下端が処理カップ17の上端17aよりも上方になるように設けることにより、遮断部材9が上位置に位置している状態で、基板Wの周縁部から飛散する液体が、上位置に位置している円筒部29に当たる(衝突する)ことを、より確実に防止できる。
【0061】
中央ノズル10は、貫通穴の内部を上下に延びる円柱状のケーシング40と、それぞれケーシング40の内部を上下に挿通する第1のノズル配管41、第2のノズル配管46、第3のノズル配管51および第4のノズル配管56と、を含む。第1~第4のノズル配管41,46,51,56は、それぞれインナーチューブである。
図3に示すように、第1のノズル配管41の下端は、ケーシング40の基板対向面40aに開口して、第1の吐出口(中央部吐出口)41aを形成している。第1のノズル配管41には、薬液供給ユニット11からの薬液が供給される。
【0062】
図2に示すように、薬液供給ユニット11は、第1のノズル配管41の上流端側に接続された薬液配管42と、薬液配管42の途中部に介装された薬液バルブ43と、薬液配管42の開度を調整する第1の流量調整バルブ44とを含む。薬液配管42には、薬液供給部(溶存酸素低減ユニット)150から溶存酸素量が低減された(溶存酸素濃度の低い)薬液が供給される。第1の流量調整バルブ44は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータと、を含む構成であってもよい。他の流量調整バルブも、同等の構成である。
【0063】
薬液バルブ43が開かれると、第1の吐出口41aから下方に向けて液体の溶剤が吐出される。薬液バルブ43が閉じられると、第1の吐出口41aからの薬液の吐出が停止される。第1の流量調整バルブ44によって、第1の吐出口41aからの薬液の吐出流量が調整される。薬液は、フッ酸(希フッ酸)、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、FOM(フッ酸オゾン)、FPM(フッ酸過酸化水素水混合液)、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)およびポリマ除去液などを例示できる。フッ酸を含む薬液(フッ酸、バファードフッ酸、FOM、FPM等)は、酸化膜(シリコン酸化膜)を除去するエッチング液として好適である。
【0064】
薬液配管42に供給されるフッ酸は、フッ酸中の酸素によってパターン形成面Waが酸化されることを防止するために、溶存酸素量が十分に低減されたものである。薬液供給部150による脱気によって溶存酸素量が低減された後の薬液が,薬液配管42に供給されている。
図3に示すように、第2のノズル配管46の下端は、ケーシング40の基板対向面40aに開口して、第2の吐出口(中央部吐出口)46aを形成している。第2のノズル配管46には、リンス液供給ユニット12からのリンス液が供給される。
【0065】
図2に示すように、リンス液供給ユニット12は、第2のノズル配管46の上流端側に接続されたリンス液配管47と、リンス液配管47の途中部に介装されたリンス液バルブ48と、リンス液配管47の開度を調整する第2の流量調整バルブ49とを含む。リンス液バルブ48が開かれると、第2の吐出口46aから下方に向けてリンス液が吐出される。リンス液バルブ48が閉じられると、第2の吐出口46aからのリンス液の吐出が停止される。第2の流量調整バルブ49によって、第2の吐出口46aからのリンス液の吐出流量が調整される。リンス液は、水である。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0066】
図3に示すように、第3のノズル配管51の下端は、ケーシング40の基板対向面40aに開口して、第3の吐出口(中央部吐出口)51aを形成している。第3のノズル配管51には、溶剤供給ユニット15からの溶剤が供給される。
図2に示すように、溶剤供給ユニット15は、第3のノズル配管51の上流端側に接続された溶剤配管52と、溶剤配管52の途中部に介装された溶剤バルブ53と、溶剤配管52の開度を調整する第3の流量調整バルブ54とを含む。溶剤バルブ53が開かれると、第3の吐出口51aから下方に向けて溶剤が吐出される。溶剤バルブ53が閉じられると、第3の吐出口51aからの溶剤の吐出が停止される。第3の流量調整バルブ54によって、第3の吐出口51aからの溶剤の吐出流量が調整される。溶剤配管52に供給される溶剤は、充填剤供給ユニット16によって供給される充填剤に対する可溶性(混和性)を有している。すなわち、溶剤は、充填剤に対する可溶性(混和性)を有している。溶剤は、パターン形成面Waへの充填剤の供給に先立ってパターン形成面Waに供給される中間処理液として用いられる。
【0067】
後述する基板処理例では、パターン形成面Waへのリンス液(水)の供給後、パターン形成面Waへの充填剤の供給に先立って、パターン形成面Waに溶剤が供給される。そのため、溶剤が、さらにリンス液に対しても、可溶性(混和性)を有していることが望ましい。
溶剤配管52に供給される溶剤の具体例は、たとえばIPA(isopropyl alcohol)に代表される有機溶剤である。このような有機溶剤として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノールを例示できる。また、有機溶剤としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、他の成分と混合した液体であってもよい。また、有機溶剤以外の溶剤を用いることもできる。
【0068】
図3に示すように、第4のノズル配管56の下端は、ケーシング40の基板対向面40aに開口して、第4の吐出口(不活性ガス吐出口)56aを形成している。第3のノズル配管51には、溶剤供給ユニット15からの溶剤が供給される。
図2に示すように、不活性ガス供給ユニット14は、第4のノズル配管56の上流端側に接続された不活性ガス配管57と、不活性ガス配管57の途中部に介装された不活性ガスバルブ58と、不活性ガス配管57の開度を調整する第4の流量調整バルブ59とを含む。不活性ガスバルブ58が開かれると、第4の吐出口56aから下方に向けて不活性ガスが吐出される(吹き出される)。不活性ガスバルブ58が閉じられると、第4の吐出口56aからの不活性ガスの吐出が停止される。第4の流量調整バルブ59によって、第4の吐出口56aからの不活性ガスの吐出流量が調整される。不活性ガスは、たとえば、窒素ガスやアルゴンガスを含む。
【0069】
図2に示すように、溶剤供給ユニット15は、溶剤ノズル61と、溶剤ノズル61が先端部に取り付けられたノズルアーム62と、ノズルアーム62を移動させることにより、溶剤ノズル61を移動させるノズル移動ユニット63と、を含む。ノズル移動ユニット63は、鉛直方向に沿って延びる揺動軸線まわりにノズルアーム62を水平移動させることにより、溶剤ノズル61を水平に移動させる。ノズル移動ユニット63は、モータ等を含む構成である。ノズル移動ユニット63は、溶剤ノズル61から吐出される溶剤がパターン形成面Waに着液する処理位置と、平面視で基板W外に設定された退避位置との間で、溶剤ノズル61を水平に移動させる。換言すると、処理位置は、溶剤ノズル61から吐出された溶剤がパターン形成面Waに供給される位置である。
【0070】
溶剤供給ユニット15は、溶剤ノズル61に溶剤を案内する溶剤配管64と、溶剤配管64を開閉する溶剤バルブ65とを含む。溶剤バルブ65が開かれると、溶剤供給源からの溶剤が、溶剤配管64から溶剤ノズル61に供給される。これにより、溶剤ノズル61から溶剤が吐出される。溶剤配管64に供給される溶剤は、溶剤配管52に供給される溶剤と同種である。
【0071】
図2に示すように、充填剤供給ユニット16は、吐出口66aを有する充填剤ノズル66と、吐出口66aが下方に向いた状態で充填剤ノズル66が先端部に取り付けられたノズルアーム67と、ノズルアーム67を移動させることにより、充填剤ノズル66を移動させるノズル移動ユニット68と、を含む。ノズル移動ユニット68は、鉛直方向に沿って延びる揺動軸線まわりにノズルアーム67を水平移動させることにより、充填剤ノズル66を水平に移動させる。すなわち、充填剤ノズル66を、スピンチャック8に保持されている基板Wのパターン形成面Waに沿って移動させることが可能である。ノズル移動ユニット68は、モータ等を含む構成である。ノズル移動ユニット68は、充填剤ノズル66から吐出される充填剤がパターン形成面Waに着液する処理位置(後述の基板処理例では、中央部)と、平面視で基板W外に設定された退避位置との間で、充填剤ノズル66を水平に移動させる。
【0072】
充填剤供給ユニット16は、溶剤ノズル61に充填剤を案内する充填剤配管(充填剤供給ユニット)69と、充填剤配管69を開閉する充填剤バルブ(充填剤供給ユニット)70とを含む。充填剤バルブ70が開かれると、充填剤供給源からの充填剤が、充填剤配管69から充填剤ノズル66に供給される。これにより、充填剤ノズル66の吐出口66aから下方に向けて充填剤が吐出される。充填剤配管69に供給される充填剤は、たとえば、アクリル樹脂等のポリマーを含む。そして、充填剤配管69に供給される充填剤は、溶質としてのポリマーを、たとえば水や有機溶剤等の溶媒に溶解させた溶液である。
【0073】
図2に示すように、処理カップ17は、スピンチャック8に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
以下、主として、処理カップ17の構成について説明する。処理カップ17については、
図2に加え、適宜
図8Aを参照しながら説明する。
処理カップ17は、円筒部材80と、円筒部材80の内側においてスピンチャック8の周囲を取り囲む複数のカップ(第1のカップ81、第2のカップ82)と、基板Wの周囲に飛散した処理液(薬液、リンス液、溶剤、充填剤等)を受け止める複数のガード(第1のガード83、第2のガード84)と、複数のガード(第1のガード83、第2のガード84)を個別に昇降させるガード昇降ユニット85とを含む。処理カップ17は、スピンチャック8に保持されている基板Wの外周よりも外側(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
【0074】
各カップ(第1のカップ81、第2のカップ82)は、円筒状(円環状)であり、スピンチャック8の周囲を取り囲んでいる。外側の第2のカップ82は、内側の第1のカップ81よりも外側に配置されている。各カップ(第1のカップ81、第2のカップ82)は、上向きに開いた環状の溝を形成している。
第1のカップ81の溝には、排液配管86が接続されている。第1のカップ81の溝に導かれた処理液(薬液またはリンス液)は、排液配管86を通して機外の排液処理設備に送られ、この排液処理設備において排液処理される。
【0075】
第2のカップ82の溝には、配管87が接続されている。配管87の下流端には、溶剤を回収するための溶剤回収配管88、溶剤を排液するための溶剤排液配管89、および充填剤を排液するための充填剤排液配管90が接続されている。溶剤回収配管88には、溶剤回収配管88を開閉する溶剤回収バルブ91が介装されている。溶剤排液配管89には、溶剤排液配管89を開閉する溶剤排液バルブ92が介装されている。充填剤排液配管90には、充填剤排液配管90を開閉する充填剤排液バルブ93が介装されている。溶剤排液バルブ92および充填剤排液バルブ93を閉じた状態で溶剤回収バルブ91を開くことにより、配管87を流れる液体が溶剤回収配管88に案内される。溶剤回収バルブ91および充填剤排液バルブ93を閉じた状態で溶剤排液バルブ92を開くことにより、配管87を流れる液体が溶剤排液配管89に案内される。溶剤回収バルブ91および溶剤排液バルブ92を閉じた状態で充填剤排液バルブ93を開くことにより、配管87を流れる液体が充填剤排液配管90に案内される。
【0076】
内側の第1のガード83は、スピンチャック8の周囲を取り囲み、スピンチャック8による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第1のガード83は、スピンチャック8の周囲を取り囲む円筒状の下端部94と、下端部94の上端から外方(基板Wの回転軸線A1から遠ざかる方向)に延びる筒状部95と、筒状部95の上面外周部から鉛直上方に延びる円筒状の中段部96と、中段部96の上端から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の傾斜部97とを含む。下端部94は、第1のカップ81の溝上に位置し、第1のガード83と第1のカップ81とが最も近接した状態で、第1のカップ81の溝の内部に収容される。第1のガード83の内周端83a(傾斜部97の先端)は、平面視で、スピンチャック8に保持されている基板Wよりも大径の円形をなしている。また、傾斜部97は、
図2等に示すようにその断面形状が直線状である。
【0077】
外側の第2のガード84は、第1のガード83の外側において、スピンチャック8の周囲を取り囲み、スピンチャック8による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のガード84は、第1のガード83と同軸の円筒部98と、円筒部98の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)斜め上方に延びる傾斜部99とを有している。第2のガード84の内周端84a(傾斜部99の先端)は、平面視で、スピンチャック8に保持されている基板Wよりも大径の円形をなしている。傾斜部99は、その断面形状が直線状である。
【0078】
円筒部98は、第2のカップ82の溝上に位置している。また、傾斜部99は、第1のガード83の傾斜部97と上方に重なるように設けられている。傾斜部99は、第1のガード83と第2のガード84とが最も近接した状態で傾斜部97に対して微少な隙間を保って近接するように形成されている。
各傾斜部97,99の先端(各ガード(第1のガード83、第2のガード84))の内周端には、下方に向けて折れ曲がった折り返し部97a,99aが形成されている。
【0079】
ガード昇降ユニット85の駆動によって、各ガード(第1のガード83、第2のガード84)が、上位置(傾斜部97,99の先端が、基板Wの上面よりも上方の位置)と、下位置(傾斜部97,99の先端が、基板Wの上面よりも下方の位置)との間で昇降させられる。
基板Wへの処理液(薬液、リンス液、溶剤、充填剤等)の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード(第1のガード83、第2のガード84)が、基板Wの側方に対向している状態で行われる。
【0080】
第1のガード83が基板Wの側方に対向している状態を実現するために、2つのガード(第1のガード83、第2のガード84)の全てを上位置に配置する。第1のガード対向状態では、回転状態にある基板Wの周縁部から排出される処理液の全てが、第1のガード83によって受け止められる。
また、第2のガード84が基板Wの側方に対向している状態(以下、「第2のガード対向状態」という場合がある)を実現するために、第1のガード83を下位置に配置し、第2のガード84を上位置に配置する。第2のガード対向状態では、回転状態にある基板Wの周縁部から排出される処理液の全てが、第2のガード84によって受け止められる。
【0081】
図4は、基板処理装置1に備えられたベークユニット6Bの構成例を説明するための図解的な図である。
ベークユニット6Bは、チャンバー111と、ホットプレート112とを含む。ホットプレート112は上面112aを有している。ホットプレート112によって基板Wの下面を下方から接触支持し、かつ上面112aによって基板Wを下方から加熱する。ホットプレート112には、内蔵ヒータ113が内蔵されている。内蔵ヒータ113は、ジュール熱を発生させるヒータであり、たとえば、通電により発熱する電熱線である。ホットプレート112の上面112aの温度は、面内で均一である。ホットプレート112からの輻射熱によって基板Wの下面が均一に加熱される。ホットプレート112によって基板Wを加熱することにより、パターン形成面Waに供給された充填剤を固化させて、充填剤の固化膜SFを形成できる(固化膜形成工程)。
【0082】
ベークユニット6Bは、基板Wを昇降させるための昇降ユニット114をさらに含む。昇降ユニット114は、ホットプレート112に対して基板Wを昇降させる複数本(たとえば、3本)のリフトピン115と、複数本のリフトピン115を支持する共通の支持部材116と、リフトピン115に結合されたリフトピン昇降ユニット117と、をさらに含む。リフトピン昇降ユニット117は、シリンダ等によって構成されている。
【0083】
図5は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置4は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置4はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0084】
また、制御装置4には、制御対象として、スピンモータ23、ノズル移動ユニット63,68、遮断部材昇降ユニット33、遮断板回転ユニット32およびガード昇降ユニット85等が接続されている。制御装置4は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ23、ノズル移動ユニット63,68、遮断部材昇降ユニット33、遮断板回転ユニット32およびガード昇降ユニット85等の動作を制御する。
【0085】
また、制御装置4は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ43、リンス液バルブ48、溶剤バルブ53、不活性ガスバルブ58、溶剤バルブ65、充填剤バルブ70、溶剤回収バルブ91、溶剤排液バルブ92、充填剤排液バルブ93等を開閉する。
また、制御装置4は、予め定められたプログラムに従って、第1の流量調整バルブ44、第2の流量調整バルブ49、第3の流量調整バルブ54、第4の流量調整バルブ59等の開度を調整する。
【0086】
以下では、パターン形成面Waにパターンが形成された基板Wを処理する場合について説明する。
図6は、基板処理装置1による処理対象の基板Wのパターン形成面Waを拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面Waにパターン100が形成されている。パターン100は、たとえば微細パターンである。パターン100は、
図6に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体101が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体101の線幅W1はたとえば10nm~45nm程度に、パターン100の隙間W2はたとえば10nm~数μm程度に、それぞれ設けられている。パターン100の膜厚Tは、たとえば、1μm程度である。また、パターン100は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5~500程度であってもよい(典型的には、5~50程度である)。
【0087】
また、パターン100は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターン100は、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターン100は、たとえば絶縁膜を含む。また、パターン100は、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターン100は、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターン100は、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。
【0088】
また、パターン100は、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図7は、液処理ユニット6Aにおいて実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
図8A~8Oは、前記基板処理例を説明する模式的な図である。
図1~
図7を参照しながら、前記基板処理例について説明する。
図8A~8Oについては適宜参照する。
【0089】
まず、未処理の基板W(たとえば直径300mmの円形基板)が、チャンバー7の内部に搬入される(
図7のS1)。未処理の基板Wは、インデクサロボットIRおよび第1の搬送ロボットCR1を介して、基板収容器Cから、第2の搬送ロボットCR2に受け渡される。そして、第2の搬送ロボットCR2によって、チャンバー7内に基板Wが搬入され、基板Wがそのパターン形成面Waを上方に向けた状態でスピンチャック8に受け渡される。その後、基板Wの下面(パターン形成面と反対側の裏面)中央部が吸着支持されることにより、
図8Aに示すように、スピンチャック8によって基板Wが保持される(基板保持工程)。
【0090】
チャンバー7への基板Wの搬入は、かつガード83,84が下位置に配置された状態、溶剤ノズル61および充填剤ノズル66が退避位置に退避されている状態、かつ、遮断部材9が上位置に退避されている状態で行われる。
第2の搬送ロボットCR2が液処理ユニット6A外に退避した後、制御装置4は、遮断部材昇降ユニット33を制御して、遮断部材9を下降させ、
図8Bに示すように、下位置に配置する。これにより、基板対向面26aと基板Wの上面との間の内部空間SPが遮断空間とされる(
図7のS2:遮断部材降下、下位置配置工程)。
【0091】
また、制御装置4は、ガード昇降ユニット85を制御して、第1および第2のガード83,84を上位置に上昇させることにより、第1のガード83を基板Wの側方に対向させる(第1のガード対向状態を実現)。
次いで、制御装置4は、スピンモータ23を制御してスピンベース22の回転速度を、所定の液処理速度(10~1200rpmの範囲内で、たとえば1000rpm)まで上昇させ、その液処理速度に維持する(
図7のS3:基板W回転開始)。スピンベース22の回転に同伴して、基板Wが回転軸線A1まわりに、回転させられる。
【0092】
また、制御装置4は、遮断板回転ユニット32を制御して、遮断板26を、回転に同期して(つまり、基板Wの回転と同じ回転方向および同じ回転速度で)、回転軸線A1まわりに回転させる。
また、制御装置4は、不活性ガスバルブ58を開く。これにより、
図8Bに示すように、中央ノズル10(第4のノズル配管56)の第4の吐出口56aから下方に向けて(すなわち、パターン形成面Waの中央部に向けて)不活性ガスが吐出される(不活性ガス供給工程)。このときの不活性ガスの吐出流量は、たとえば20~100(リットル/分)で、好ましくは55(リットル/分)である。このような大流量の不活性ガスが内部空間SPに供給されるため、内部空間SP内の雰囲気が低酸素濃度状態になる。第4の吐出口56aから吐出された不活性ガスは、パターン形成面Waと遮断部材9の基板対向面26aとの間の内部空間SPを、パターン形成面Waに沿って広がる。これにより、内部空間SPが不活性ガスで満たされることにより、内部空間SPの雰囲気中の酸素濃度の低減が図られる。
【0093】
内部空間SPが不活性ガスに置換されるのに十分な時間が経過し、かつ基板Wの回転が液処理速度に達すると、制御装置4は、
図8Cに示すように、パターン形成面Waを、薬液の一例としてのフッ酸を用いて処理する薬液処理工程(
図7のステップS4)を実行開始する。
薬液処理工程(
図7のS4)において、制御装置4は、薬液バルブ43を開く。それにより、回転状態の基板Wのパターン形成面Waの中央部に向けて、中央ノズル10(第1のノズル配管41)の第1の吐出口41aから、パターン形成面Waの中央部に向けてフッ酸が吐出される(薬液供給工程)。このときのフッ酸の吐出流量は、たとえば2(リットル/分)である。パターン形成面Waに供給されるフッ酸として、溶存酸素量が十分に低減されたものが用いられる。これにより、薬液処理工程(
図7のS4)において、フッ酸の溶存酸素によってパターン形成面Waが酸化されることを抑制または防止できる。
【0094】
パターン形成面Waに供給されたフッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、パターン形成面Waに、パターン形成面Waの全域を覆うフッ酸の液膜LF1が形成される。パターン形成面Waが、フッ酸によりカバレッジされる。フッ酸の液膜LF1に含まれるフッ酸が、パターン形成面Waに接液することにより、パターン形成面Waがフッ酸を用いて処理される。具体的には、パターン形成面Waに形成された自然酸化膜(シリコン酸化膜)が、フッ酸によって除去される。
【0095】
基板Wの周縁部に移動したフッ酸は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。基板Wの周縁部から排出されたフッ酸は、遮断部材9の内周面26bによって受け止められた後、遮断板26の円筒部29の下端部から側方に向けて飛散する。円筒部29から飛散するフッ酸は、第1のガード83の内壁に受け止められ、第1のガード83の内壁を伝って流下し、第1のカップ81および排液配管86を介して、機外の排液処理設備に送られる。
【0096】
薬液処理工程(
図7のS4)において、不活性ガスの供給が連続的に行われる。また、内部空間SPの外側の空間には、酸素を含む雰囲気が存在している。しかしながら、遮断部材9が下位置に配置されているので、内部空間SPと、内部空間SPの外側の空間と、の間で流体の流通がほとんどない。すなわち、遮断部材9が下位置に位置する状態で、内部空間SPの雰囲気と、外側の空間の雰囲気(酸素を含む)と、が実質的に遮断される。
【0097】
これらにより、内部空間SPへの、外側の空間の雰囲気(酸素を含む雰囲気)の進入を抑制または防止でき、ゆえに、薬液処理工程(
図7のS4)において、内部空間SP内の雰囲気を低酸素濃度に保つことができる。
フッ酸の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置4は、薬液バルブ43を閉じて、中央ノズル10(第1のノズル配管41)からのフッ酸の吐出を停止する。これにより、薬液処理工程(
図7のS4)が終了する。
【0098】
次いで、制御装置4は、
図8Dに示すように、基板W上のフッ酸をリンス液に置換して基板W上からフッ酸を排除するためのリンス工程(
図7のステップS5。)を実行する。具体的には、制御装置4は、基板Wおよび遮断板26の回転を液処理速度に維持しながら、リンス液バルブ48を開く。これにより、回転状態の基板Wのパターン形成面Waの中央部に向けて、中央ノズル10(第2のノズル配管46)の第2の吐出口46aから、リンス液が吐出される。基板Wの上面中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、パターン形成面Waに、パターン形成面Waの全域を覆うリンス液の液膜LF2が形成される。パターン形成面Waが、リンス液によりカバレッジされることにより、パターン形成面Waに付着しているフッ酸が、リンス液によって洗い流される。
【0099】
基板Wの周縁部に移動したリンス液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。基板Wの周縁部から排出されたリンス液は、遮断部材9の内周面26bによって受け止められた後、遮断板26の円筒部29の下端部から側方に向けて飛散する。円筒部29から飛散するリンス液は、第1のガード83の内壁に受け止められ、第1のガード83の内壁を伝って流下し、第1のカップ81および排液配管86を介して、機外の排液処理設備に送られる。
【0100】
リンス液の供給開始から予め定める期間が経過すると、パターン形成面Waの全域がリンス液に覆われている状態で、制御装置4は、リンス液の吐出を続行させながら、スピンモータ23および遮断板回転ユニット32を制御して、基板Wおよび遮断板26の回転速度を液処理速度からパドル速度(零または40rpm以下の低回転速度。この基板処理例では、たとえば10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をそのパドル速度に維持する(パドルリンス工程(
図7のステップS6))。これにより、
図8Eに示すように、パターン形成面Waに、その全域を覆うリンス液の液膜LF2がパドル状に支持される。この状態では、リンス液の液膜LF2に作用する遠心力がリンス液と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗している。基板Wの減速により、基板W上のリンス液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出されるリンス液の量が減少する。これにより、パターン形成面Waに保持されているリンス液の液膜LF2の厚みが大きくなる。
【0101】
基板Wをパドル速度に減速してから予め定める期間が経過すると、制御装置4は、基板Wの回転をパドル速度に維持しながら、
図8Fに示すように、リンス液バルブ48を閉じて、中央ノズル10(第2のノズル配管46)からのリンス液の吐出を停止する。これにより、パターン形成面Waに保持されているリンス液の液膜LF2が全体的に中央部に寄り、リンス液の液膜LF2の膜厚を十分に厚くできる(液溜め工程(
図7のステップS7))。これにより、パターン形成面Waの酸化を確実に抑制または防止できる。低酸素雰囲気下で行うため、パターン形成面Waの酸化をより確実に抑制または防止できる。
【0102】
リンス液の吐出停止から予め定める期間が経過すると、次いで、制御装置4は、
図8Gに示すように、置換工程(
図7のステップS8。溶剤処理工程、中間処理工程)の実行を開始する。置換工程(
図7のS8)は、基板W上のリンス液を、充填剤に対する可溶性(混和性)の高い溶剤(この例では、IPA)に置換する工程である。充填剤の種類によっては、リンス液との間で可溶性(混和性)を有さないことがある。パターン形成面Waを覆うリンス液の液膜LF2を、充填剤との間で可溶性(混和性)を有するような溶剤に置換することにより、充填剤塗布工程(
図7のS9)以降の工程を円滑に実行できる。
【0103】
具体的には、制御装置4は、ガード昇降ユニット85を制御して、第1のガード対向状態にある処理カップ17の第1のガード83を下位置まで下降させることにより、第2のガード84を基板Wの側方に対向させる(第2のガード対向状態を実現)。すなわち、置換工程(
図7のS8)は、遮断部材9を下位置に位置させながら、かつ処理カップ17を第2のガード対向状態に実現しながら、実行される。
【0104】
具体的には、制御装置4は、基板Wの回転速度をパドル速度に維持しながら、溶剤バルブ53を開く。これにより、回転状態の基板Wのパターン形成面Waの中央部に向けて、中央ノズル10(第3のノズル配管51)の第3の吐出口51aから、溶剤の一例としてのIPAが吐出される(中間処理液供給工程)。このとき、第3の吐出口51aからのIPAの吐出流量は、たとえば300(ミリリットル/分)に設定されている。これにより、リンス液の液膜LF2に含まれるリンス液がIPAに順次置換されていく。これにより、パターン形成面Waに、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜(中間処理液の液膜)LF3がパドル状に保持される。膜厚が十分に厚いリンス液の液膜LF2のリンス液をIPAに置換してIPAの液膜LF3を形成するので、IPAの液膜LF3の膜厚も、十分に厚くできる。これにより、パターン形成面Waの酸化を確実に抑制または防止できる。低酸素雰囲気下で行うため、パターン形成面Waの酸化をより確実に抑制または防止できる。
【0105】
基板Wの周縁部からは、リンス液およびIPAが排出される。基板Wの周縁部から排出されたリンス液およびIPAは、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82に受け止められる。置換工程(
図7のS8)において、溶剤回収バルブ91および充填剤排液バルブ93が閉じられた状態で溶剤排液バルブ92が開かれている。それにより、第2のカップ82に受け止められたリンス液およびIPAは、配管87を介して、溶剤排液配管89に案内される。第2のカップ82に受け止められた液体を排液するようにしたのは、この液体がIPAだけでなく、リンス液を多量に含むからである。
【0106】
IPAの吐出開始から予め定める期間(液膜が完全にIPAに置換されるのに十分な期間)が経過すると、制御装置4は、遮断部材昇降ユニット33を制御して、
図8Hに示すように、遮断部材9を、下位置よりも上方で、かつ上位置よりも下方に設定された中間位置に向けて上昇させ、その中間位置に保持する(中間位置配置工程)。中間位置は、遮断部材9の円筒部29の下端が、上位置に位置している第2のガード84の上端と同じ高さ位置になるような、遮断部材9の高さ位置である。また、制御装置4は、溶剤排液バルブ92を閉じ、かつ溶剤回収バルブ91を開く。これにより、配管87の流通先が、溶剤回収配管88に切り換えられる。また、制御装置4が遮断板回転ユニット32を制御して、中間位置に位置している遮断部材9(遮断板26)を所定の高速(たとえば500rpm)まで加速させる。
【0107】
遮断部材9が下位置に位置した状態で実行される置換工程(
図7のS8)では、円筒部29にIPAが付着することがある。遮断部材9を中間位置に位置させながら遮断板26を高速回転させることにより、円筒部29に付着しているIPAを振り切ることができる。
また、処理カップ17の上端17a(すなわち、上位置に位置している第2のガード84の上端)が、中間位置に位置している遮断部材9(遮断板26)の円筒部29の下端と同じ高さに設けられている。そのため、遮断部材9の回転によって円筒部29から振り切られたIPAを、処理カップ17によって良好に捕獲することができる。
【0108】
基板Wの周縁部からは、IPAが排出される。基板Wの周縁部から排出されたIPAは、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82および配管87を介して、溶剤回収配管88に案内される。
遮断部材9の上昇から予め定める期間が経過すると、制御装置4は、
図8Iに示すように、遮断部材昇降ユニット33を制御して、遮断部材9を中間位置から上位置に向けて上昇する(遮断部材上昇工程)。上位置まで上昇された後の遮断部材9は、上位置に保持される。また、制御装置4は、溶剤バルブ53および不活性ガスバルブ58を閉じる。これにより、中央ノズル10からのIPAおよび不活性ガスの吐出が停止される。また、制御装置4は、遮断板回転ユニット32を制御して、遮断板26の回転を停止させる。また、制御装置4は、溶剤回収バルブ91を閉じ、かつ充填剤排液バルブ93を開く。これにより、配管87の流通先が、充填剤排液配管90に切り換えられる。
【0109】
遮断部材9が中間位置から上昇されることにより、内部空間SPの遮断状態が解除される。遮断部材9の上昇(遮断状態の解除)は、パターン形成面WaがIPAの液膜LF3によって覆われている状態で行われる。すなわち、IPAの液膜LF3によってパターン形成面Waを保護しながら内部空間SPの遮断状態を解除する。これにより、それ以降における、パターン形成面Waの酸化を確実に抑制または防止できる。
【0110】
また、制御装置4は、ノズル移動ユニット63を制御して、
図8Iに示すように、溶剤ノズル61を、上位置に位置している遮断部材9の基板対向面26aとパターン形成面Waとの間に進入させ、溶剤ノズル61を、パターン形成面Waの中央部に対向する位置に配置する。溶剤ノズル61が、パターン形成面Waの中央部に対向する位置に配置された後、制御装置4は、溶剤バルブ65を開く。これにより、
図8Iに示すように、溶剤ノズル61から溶剤が吐出される。
【0111】
遮断部材9の上昇後には、中央ノズル10からの溶剤に代えて、溶剤ノズル61からの溶剤がパターン形成面Waに供給される。その結果、パターン形成面WaにIPAの液膜LF3が良好に保持される。すなわち、パターン形成面WaがIPAによってカバレッジされ続ける。したがって、遮断部材9の上昇後も、パターン形成面Wa上へのIPAの液切れが生じることがない。
【0112】
基板Wの周縁部からは、IPAが排出される。基板Wの周縁部から排出されたIPAは、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82および配管87を介して、溶剤回収配管88に案内される。
溶剤ノズル61からの溶剤の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置4は、溶剤バルブ65を閉じる。これにより、置換工程(
図7のS8)が終了する。制御装置4は、ノズル移動ユニット63を制御して、溶剤ノズル61を退避位置に戻す。
【0113】
次いで、制御装置4は、パターン形成面Waに充填剤を塗布する充填剤塗布工程(
図7のステップS9)を実行する。充填剤塗布工程(
図7のS9)は、充填剤吐出工程と、充填剤拡大工程とを含む。
具体的には、置換工程(
図7のS8)の終了後直ちに、制御装置4は、ノズル移動ユニット68を制御して、
図8Jに示すように、上位置に位置している遮断部材9の基板対向面26aとパターン形成面Waとの間に充填剤ノズル66を進入させ、充填剤ノズル66を、パターン形成面Waの中央部に対向する位置に配置する。また、制御装置4がスピンモータ23を制御して、基板Wの回転を、基板Wの中央部に充填剤コアを形成可能な充填剤コア速度(50~200rpm。たとえば100rpm)で回転させ、その充填剤コア速度に維持する。ここで、充填剤コアとは、基板Wのパターン形成面Waに供給された充填剤が基板Wの中央部(とくに回転付近)において形成している、基板Wの径よりも小さい円形上の液溜まりをいう。充填剤ノズル66がパターン形成面Waの中央部に対向する位置に配置された後、制御装置4は、充填剤バルブ70を開いて、
図8Jに示すように、充填剤ノズル66の吐出口66aから液体の充填剤(ポリマー)を、パターン形成面Waの中央部に向けて吐出する(充填剤吐出工程)。
【0114】
充填剤に含まれるポリマーは、高価である。また、パターン形成面Waに供給された充填剤のうち、パターン100の構造体101間の充填に用いられない充填剤は排液(廃棄)される。それらにより、パターン形成面Waに供給される充填剤は、可能な限り少量であることが好ましい。この基板処理例では、充填剤ノズル66からの充填剤(ポリマー)の吐出流量は非常に少ない(たとえば、0.8ミリリットル/秒)。すなわち、充填剤吐出工程における充填剤ノズル66からの充填剤の吐出流量が、薬液処理工程(
図7のS4)におけるパターン形成面Waへのフッ酸の供給流量、リンス液処理工程(
図7のS5)におけるパターン形成面Waへのリンス液の供給流量、および置換工程(
図7のS8)におけるパターン形成面WaへのIPAの供給流量よりも少ない。また、吐出流量の積算である合計の供給量も少量(たとえば、0.8~5.0ミリリットル)である。充填剤ノズル66から吐出された充填剤は、膜厚が十分に厚いIPAの液膜LF3の上面の回転中心付近に滞留する。
【0115】
制御装置4は、充填剤吐出工程の終了後、直ちに、スピンモータ23を制御して、基板Wの回転を高速度(1500~3000rpmの範囲内で、たとえば2500rpm)まで加速し、その高速度に維持する(高速回転工程)。この高速度は、ステップS4~S8における基板Wの回転速度よりも高い回転速度である。基板Wの高速度での回転により、それまでIPAの液膜LF3の上面の回転中心付近に滞留していた充填剤が、基板Wの回転による遠心力を受けて、パターン形成面Waの全域に広がる(充填剤拡大工程)。その結果、
図8Kに示すように、パターン形成面Waにおいて、IPAの液膜LF3の上面に、充填剤の液膜LF4が積層されるようになる。基板Wの高速度での回転を、充填剤吐出工程に並行して、基板Wを高速度で回転させてもよい。
【0116】
基板Wの周縁部からは、IPAおよび充填剤(主として、IPA)が側方に向けて飛散する。基板Wの周縁部から飛散したIPAおよび充填剤は、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82および配管87を介して、充填剤排液配管90に案内される。
基板Wの加速開始から予め定める期間(たとえば2~3秒間)が経過すると、充填剤拡大工程が終了し、これにより、充填剤塗布工程(
図7のS9)が終了する。
【0117】
制御装置4は、充填剤塗布工程(
図7のS9)の終了後、直ちに、スピンモータ23を制御して、
図8Lに示すように、基板Wの回転を第1のスピンオフ速度(500~2000rpmの範囲内で、たとえば2000rpm)に制御し、その第1のスピンオフ速度に維持する(
図7のS10;第1のスピンオフ工程)。
第1のスピンオフ工程(
図7のS10)において、第1のスピンオフ速度で基板Wが回転させられることにより、余分な充填剤がパターン形成面Waから振り切り除去されて、充填剤の液膜LF4の厚みが、所望厚みに調整される 。
【0118】
基板Wの周縁部からは、IPAおよび充填剤が側方に向けて飛散する。基板Wの周縁部から飛散したIPAおよび充填剤は、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82および配管87を介して、充填剤排液配管90に案内される。
第1のスピンオフ工程(
図7のS10)の開始から予め定める期間が経過すると、第1のスピンオフ工程(
図7のS10)が終了する。
【0119】
次いで、パターン形成面Waの全域に広げられた充填剤を沈下させるための充填剤沈下工程(
図7のステップS11)が実行される。具体的には、制御装置4は、スピンモータ23を制御して、基板Wの回転速度を低速度(100rpm以下。たとえば10rpm)に減速し、その低速度に維持する。これにより、基板Wが低速度で回転させられる。基板Wの回転速度が大きく低下することにより、基板Wに作用する遠心力が低下する。そして、充填剤とIPAとの比重差により、IPAの液膜LF3の上面に存在していた充填剤が沈下する。これにより、充填剤の液膜LF4が沈下し、
図8Mに示すように、パターン形成面Waに形成されたパターン100が充填剤の液膜LF4に覆われるようになる。そして、パターン100の隣接する構造体101の間に充填剤が充填される。
【0120】
基板Wの減速開始から予め定める期間(パターン100の隣接する構造体101の間に充填剤が充填されるのに十分な期間)が経過すると、充填剤沈下工程工程(
図7のS11)が終了し、次いで、充填剤の液膜LF4の厚みを調整するための第2のスピンオフ工程(
図7のステップS12)が実行される。
具体的には、第2のスピンオフ工程(
図7のS12)において、制御装置4は、スピンモータ23を制御して、基板Wの回転を基板Wの回転を第2のスピンオフ速度(500~2500rpmの範囲内で、たとえば1500rpm)まで加速し、その第2のスピンオフ速度に維持する。基板Wを高速回転させる。これにより、パターン形成面Waに存在するIPAおよび余分な充填剤が振り切られる。その結果、
図8Nに示すように、パターン100(構造体101)の膜厚Tと同程度の厚みを有する充填剤の液膜LF5によって、パターン100の隣接する構造体101の間が充填されるようになる。第2のスピンオフ工程(
図7のS12)において、パターン形成面Waから液体(IPAおよび余分な充填剤)が除去されることにより、パターン形成面Waが乾燥される。
【0121】
基板Wの周縁部から飛散したIPAおよび充填剤は、第2のガード84の内壁に受け止められ、第2のガード84の内壁を伝って流下し、第2のカップ82および配管87を介して、充填剤排液配管90に案内される。
基板Wの加速開始から予め定める期間が経過すると、制御装置4は、スピンモータ23を制御することにより、スピンチャック8による基板Wの回転を停止させる(
図7のステップS13)。また、制御装置4は、ガード昇降ユニット85を制御して、第2のガード84を下位置に下げる。
【0122】
その後、液処理ユニット6Aのチャンバー7内から基板Wが搬出される(
図7のステップS14)。具体的には、制御装置4は、第2の搬送ロボットCR2のハンドをチャンバー7の内部に進入させる。そして、制御装置4は、スピンチャック8による基板Wの吸着を解除し、第2の搬送ロボットCR2のハンドにスピンチャック8上の基板Wを保持させる。その後、制御装置4は、第2の搬送ロボットCR2のハンドをチャンバー7内から退避させる。これにより、液処理後の基板Wが、液処理ユニット6Aのチャンバー7から搬出される。
図8Oには、基板Wの搬出後における、チャンバー7の状態を示す。
【0123】
液処理ユニット2Aから排出された基板Wには、次いで、ベークユニット6Bにおいて基板加熱処理が施される。
図9は、ベークユニット6Bにおいて実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
次に、ベークユニット6Bによる基板Wに対する処理(加熱処理)について、
図1、
図4および
図9を参照しながら説明する。ベークユニット6Bによる加熱処理が実行されるときには、液処理ユニット2Aによって液処理された後の基板Wが、チャンバー111の内部に搬入される(
図9のステップS21)。ベークユニット6B内への基板Wの搬入に先立ち、制御装置4はシャッタを開位置まで移動させ、これにより、搬出入口が開放される。また、ベークユニット6B内への基板Wの搬入に先立ち、制御装置4はリフトピン昇降ユニット117を制御して、リフトピン115を、その先端がホットプレート112の上方に突出する位置に配置させる。
【0124】
具体的には、制御装置4は、基板Wを保持している第1の搬送ロボットCR1のハンドをチャンバー111の内部に進入させる。これにより、基板Wが、そのパターン形成面Waを上方に向けた状態で昇降ユニット114に受け渡される。チャンバー111内に搬入された基板Wは、ハンドによってリフトピン115上に載置される。その後、制御装置4は、リフトピン昇降ユニット117を制御して、リフトピン115を下位置に向けて下降させる。このリフトピン115の下降により、リフトピン115上の基板Wがホットプレート112上に移載される。そして、基板Wの下面とホットプレート112の上面112aとの間に生じる摩擦力により、基板Wがホットプレート112に保持される。
【0125】
リフトピン115上への基板Wの載置後、制御装置4は、チャンバー111内からハンドを退避させる。チャンバー111内からハンドが退避した後は、制御装置4は、シャッタを閉位置まで移動させ、これにより、搬出入口がシャッタにより密閉され、チャンバー111内は密閉空間になる。
チャンバー111内が密閉された後、制御装置4は内蔵ヒータ113を制御して、基板Wに対し下面側から加熱開始し、基板Wを予め定める加熱温度で加熱する。これにより、充填剤の液膜LF5(
図8N参照)が固化し、充填剤の固化膜SF(
図4参照)が形成される。
【0126】
基板Wの加熱開始から予め定める加熱期間が経過すると、制御装置4は、リフトピン昇降ユニット117を制御して、リフトピン115を、ホットプレート112に対して基板Wが上位置まで上昇させる。リフトピン115の上昇によって、それまでホットプレート112に支持されていた基板Wがリフトピン115に支持される。その後、制御装置4は、シャッタを開位置に配置し、これにより搬出入口が開放される。この状態で、リフトピン115によって支持されている基板Wが、第1の搬送ロボットCR1によってチャンバー111から搬出される(
図9のステップS23)。
【0127】
第2の搬送ロボットCR2は、ベークユニット6Bから搬出した基板Wを、インデクサロボットIRに受け渡す。インデクサロボットIRは、受け取った基板WをロードポートLPの基板収容器Cに収容する。
加熱処理後の基板Wが、基板処理装置1の外部のアッシング装置(充填剤除去装置)に搬送され、このアッシング装置において、たとえばドライエッチ等によりパターン形成面Waから、ドライエッチングにより充填剤が除去される。充填剤の除去方法としては、これ以外に、例えば特開2013-258272号公報のような充填剤の昇華や、特開2011-124313号公報のようなプラズマ処理等による充填剤の除去を例示できる。
【0128】
以上によりこの実施形態によれば、遮断部材9に円筒部29が設けられているため、遮断部材9が下位置に位置している状態において、内部空間SPの雰囲気と、内部空間SPの外側の空間の雰囲気と、を実質的に遮断可能である。この場合、基板Wと下位置に位置している遮断部材9との間に形成される内部空間SPを、酸素濃度の低い状態に保つことが可能である。
【0129】
そして、遮断部材9を下位置に位置させながら、フッ酸を用いた薬液処理が行われる。内部空間SPの酸素濃度を十分に低下させた後に、フッ酸を用いた薬液処理を開始させることにより、酸素濃度の低い雰囲気下において、フッ酸を用いた薬液処理をパターン形成面Waに施すことができる。これにより、薬液処理工程(S4)におけるパターン形成面Waの酸化を抑制または防止できる。
【0130】
また、遮断部材9を下位置に位置させながら、リンス工程(
図7のS5)、パドルリンス工程(
図7のS6)および液溜め工程(
図7のS7)が行われる。さらに、遮断部材9を下位置に位置させながら、置換工程(
図7のS8)が行われる。これにより、リンス工程(
図7のS5)から置換工程(
図7のS8)までの各工程において、パターン形成面Waの酸化を抑制または防止できる。
【0131】
また、遮断部材9が上位置に位置している状態においてパターン形成面Waに向けて充填剤が吐出される。これにより、パターン形成面Waに充填剤が供給され、パターン形成面Waに充填剤の液膜LF4,LF5が形成される。その後、充填剤の液膜LF5が固化されることにより、充填剤の固化膜SFが形成される。
仮に、下位置に位置している遮断部材9の中央部吐出口(中央ノズル10の下端に形成された吐出口)からパターン形成面Waに向けて充填剤を吐出するようにすると、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部から飛散する充填剤が遮断部材9の円筒部29に当たり(衝突し)、パターン形成面Waに再供給されるおそれがある。パターン形成面に充填剤が再供給されると、パターン形成面Waに存在している充填剤に乱れが生じ、充填剤の液膜LF4,LF5を良好に(たとえば、均一な厚みに)設けられないおそれがある。この場合、固化膜除去後の基板Wにディフェクトが生じるおそれがある。
【0132】
これに対し、この実施形態では、遮断部材9が上位置に位置している状態でパターン形成面Waにおける充填剤の拡大を開始する。遮断部材9が上位置に位置している状態では、円筒部29の下端がパターン形成面Waよりも上方に位置している。そのため、基板Wの周縁部から飛散する充填剤が遮断部材9の円筒部29に当たってパターン形成面に再供給されることを抑制または防止できる。そのため、パターン形成面Waに存在している充填剤に乱れが生じることを抑制または防止できる。これにより、充填剤の液膜LF4,LF5を良好に(たとえば、均一な厚みに)設けることができ、固化膜除去後の基板にディフェクトが生じることを抑制できる。
【0133】
また、この実施形態では、パターン形成面WaがIPAの液膜LF3で覆われている状態で遮断部材9の上昇を開始する。すなわち、IPAの液膜LF3によってパターン形成面Waを保護しながら内部空間SPの遮断状態を解除する。遮断状態の解除後も、パターン形成面Waは、液膜(IPAの液膜LF3や充填剤の液膜LF4,LF5)によって保護される。そのため、内部空間SPの遮断状態の解除に伴う、パターン形成面Waの酸化を、確実に抑制または防止できる。すなわち、置換工程(
図7のS8)から充填剤塗布工程への移行過程における、パターン形成面Waの酸化を良好に抑制または防止できる。
【0134】
また、充填剤塗布工程(
図7のS9)において、充填剤ノズル66が、基板Wと下位置に位置している遮断部材9との間に配置される。そして、中央ノズル10の中央部吐出口からではなく充填剤ノズル66の吐出口66aから、パターン形成面Waに向けて充填剤が吐出される。このとき、充填剤ノズル66の吐出口66aとの間の鉛直方向の距離が、薬液処理工程(
図7のS4)における中央ノズル10の中央部吐出口とパターン形成面Waとの間の鉛直方向の距離よりも短い。
【0135】
吐出口とパターン形成面Waとの間の鉛直方向の距離が長くなるのに従って、吐出口から吐出された充填剤がパターン形成面Waに達するまでの時間が長くなる。そのため、吐出口とパターン形成面Waとの間の鉛直方向の距離が長いと、吐出された充填剤の液流が、外乱の影響を受け易い。したがって、充填剤塗布工程(
図7のS9)において、仮に、上位置に位置している遮断部材9の中央部吐出口からパターン形成面Waに向けて充填剤を吐出すると、パターン形成面Waの所期の着液位置に、所期の着液流量で充填剤を着液させることが困難なことがある。この場合、パターン形成面Waに充填剤を良好に供給(塗布)できないおそれがある。
【0136】
加えて、この基板処理例では、充填剤塗布工程(
図7のS8)における充填剤ノズル66からの充填剤の吐出流量が少ない。そのため、仮に、充填剤ノズル66の吐出口66aからではなく遮断部材9の中央部吐出口から充填剤を吐出すると、遮断部材9の中央部吐出口から吐出される充填剤が外乱の影響を強く受け、パターン形成面Waに供給される充填剤が連続流でなく間欠状を呈したり、所期の着液位置からずれた位置に充填剤が着液したりするおそれがある。加えて、この基板処理例では、パターン形成面Waに供給された充填剤を広げるために、基板Wを高速度で回転させている(充填剤拡大工程)。この基板Wの高速回転によって、基板Wと遮断部材9との間に強い気流が発生するおそれがあり、この気流が、外乱として充填剤に影響するおそれがある。
【0137】
これに対し、この実施形態では、パターン形成面Waとの間の鉛直方向の距離が近いので、充填剤への気流等の外乱の影響を最小限に抑えながら、充填剤ノズル66の吐出口66aから吐出される充填剤の吐出態様を安定させることができる。これにより、パターン形成面Waに充填剤を良好に供給(塗布)できる。ゆえに、パターン形成面Waに良好な固化膜SFを形成できる。
【0138】
図10は、薬液供給部150の具体的な構成を示す図である。薬液供給部150は、フッ酸等の薬液(フッ酸)を貯留する薬液タンク151と、薬液配管42(
図2参照)の上流端に接続された配管であって、薬液タンク151に貯留されている薬液を薬液配管42に導く薬液導出配管152と、薬液タンク151に新液の薬液(および/または回収された薬液)を供給する薬液供給配管153と、薬液タンク151内の薬液に不活性ガスを供給して、不活性ガスをフッ酸に溶解させる不活性ガス溶解ユニット(溶存酸素量低減ユニット)154と、を含む。
【0139】
薬液導出配管152には、薬液タンク151内の薬液を薬液配管42に送り出すための送液ポンプ157と、薬液導出配管152を流通する薬液中の異物を除去するフィルタ158と、が介装されている。
不活性ガス溶解ユニット154は、不活性ガス供給源からの不活性ガスが供給される不活性ガス配管155を備える。不活性ガス配管155は、薬液中に配置された多数の吐出口から不活性ガスを吐出することにより、薬液中に気泡を発生させるバブリング配管156を含む。
【0140】
不活性ガスをフッ酸に溶解させることにより、薬液タンク151内の薬液から溶存酸素を脱気することができ、薬液タンク151内の薬液を、溶存酸素量の低減された状態に維持できる。これにより、薬液供給部150から薬液配管42を介して中央ノズル10に供給される薬液を、溶存酸素量が低減された(溶存酸素濃度の低い)ものとできる。ゆえに、溶存酸素量が低減された薬液(フッ酸)をパターン形成面Waに供給できる、
以上により、固化膜SFの形成の前においてパターン形成面Waの酸化を抑制または防止でき、かつ、パターン形成面Waに充填剤を円滑に供給できる。
【0141】
図11は、第2の実施形態に係る液処理ユニット206Bの構成例を説明するための図解的な図である。第2の実施形態において、前述の第1の実施形態と共通する部分には、それぞれ、
図1~
図10の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
第2の実施形態に係る基板処理装置201が、基板処理装置1と相違する主たる点は、液処理ユニット206Bのチャンバー7の内部に、基板Wの裏面(パターン形成面Waと反対側の面)Wbの下方に対向配置されるホットプレート(固化膜形成ユニット)251を設け、このホットプレート251による基板Wの加熱によって充填剤の液膜LF5を固化させて、充填剤の固化膜SFを形成するようにした点である。以下、具体的に説明する。
【0142】
基板保持ユニットとして、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のスピンチャック205が採用されている。具体的には、スピンチャック205は、スピンモータ206と、このスピンモータ206の駆動軸と一体化されたスピン軸207と、スピン軸207の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース208とを含む。
スピンベース208は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面208aを含む。上面208aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材209が配置されている。複数個の挟持部材209は、上面208aの周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。
【0143】
ホットプレート251には、内蔵ヒータ252が内蔵されている。内蔵ヒータ252は、ジュール熱を発生させるヒータであり、たとえば、通電により発熱する電熱線である。ホットプレート251は、スピンベース208の下方で、かつ、挟持部材209に保持される基板Wの下方に配置される。ホットプレート251は、基板Wの裏面Wbの全域に対向する水平な上面251aを有している。スピンチャック205が回転しても、ホットプレート251は回転しない。ホットプレート251の温度は、制御装置4によって変更される。ホットプレート251の上面251aの温度は、面内で均一である。
制御装置4がホットプレート251の上面251aの温度を上昇させることにより、ホットプレート251からの輻射熱によってパターン形成面Waの全域が均一に加熱される。
【0144】
ホットプレート251には、ホットプレート251を水平姿勢のまま昇降させるためのホットプレート昇降ユニット253が結合されている。ホットプレート昇降ユニット253は、たとえばボールねじやモータによって構成されている。ホットプレート251の昇降により、上面251aと基板Wの下面との間隔が変更される。また、ホットプレート昇降ユニット253は、各高さ位置においてホットプレート251を保持可能である。
【0145】
パターン形成面Waに充填剤の液膜LF5(
図8N参照)が形成された基板Wに、ホットプレート251によって加熱処理が施される。
具体的には、制御装置4は、ホットプレート昇降ユニット253を制御して、内蔵ヒータ252の発熱によって既に高温状態にあるホットプレート251を上位置(
図11に実線で示す位置)に配置する。ホットプレート251が上位置に配置された状態では、ホットプレート251からの輻射熱が基板Wに届き、基板Wが予め定める加熱される。これにより、充填剤の液膜LF5が固化し、充填剤の固化膜SFが形成されるパターン形成面Waに供給された充填剤を固化させて、充填剤の固化膜SFを形成できる(固化膜形成工程)。
【0146】
基板Wの加熱開始から予め定める加熱期間が経過すると、制御装置4は、ホットプレート251を、上位置から下位置(
図11に二点鎖線で示す位置)まで降下させる。ホットプレート251が下位置に配置された状態では、ホットプレート251からの輻射熱が基板Wにほとんど届かず、ホットプレート251によって基板Wは加熱されない。
第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態に加え、次の作用効果を奏する。
【0147】
すなわち、パターン形成面Waへの充填剤の液膜LF5の形成と、充填剤の液膜LF5の固化とを共通のチャンバー7で行うので、複数のチャンバー間で基板Wを搬送する必要がない。そのため、1枚の基板Wに対する処理時間を短縮することが可能であり、その結果、処理のスループットの向上を図ることができる。
また、充填剤の液膜LF5形成後のパターン形成面Waでは、充填剤の固化が終了していない。そのため、複数のチャンバー間で基板Wを搬送する際に、パターン形成面Waから液体の充填剤が落液する可能性を完全に排除できない。この場合、搬送室5を充填剤によって汚染するおそれがある。この実施形態では、複数のチャンバー間で基板Wを搬送する必要がないので、このような搬送室5の汚染の懸念がない。
【0148】
さらに、充填剤(に含まれるポリマー)が、加熱により昇華可能な性質を有する場合、パターン形成面Waに形成されている充填剤の固化膜SFに含まれる充填剤を、ホットプレート251による基板Wの加熱によって昇華させることにより、パターン形成面Waから除去させてもよい。
この場合、パターン形成面Waに充填剤の固化膜SFが形成された基板Wに、ホットプレート251によって加熱処理が施される。
【0149】
具体的には、制御装置4は、内蔵ヒータ252を制御して、ホットプレート251の上面の温度を、充填剤の液膜LF5の加熱時よりも高く設ける。そして、ホットプレート251が上位置(
図11に実線で示す位置)に位置されることにより、充填剤の液膜LF5の加熱時よりも高い熱量が基板Wに付与される。これにより、充填剤の固化膜SFに含まれる充填剤が昇華し、パターン形成面Waから充填剤が除去される(充填剤除去工程)。パターン形成面Waに形成されたパターン100の構造体101の間に液体の界面を出現させずに、パターン形成面Waから充填剤を除去できるので、パターン100の倒壊が抑制される。
【0150】
この場合、充填剤の液膜LF5の固化だけでなく、パターン形成面Waからの充填剤の除去もチャンバー7で行うので、1枚の基板Wに対する処理時間をさらに短縮できる。これにより、処理のスループットの向上を、より一層図ることができる。
また、充填剤の液膜LF5の加熱時よりも高い熱量の基板Wへの付与を、ホットプレート251を上位置(
図11に実線で示す位置)よりも基板Wの裏面に近づけることによって実現してもよい。
【0151】
以上、この発明の2つの形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施できる。
第2の実施形態において、パターン形成面Waを加熱する加熱ユニットの別の態様として、遮断部材9の内部に、ジュール熱を発熱可能な内蔵ヒータを内蔵するようにしてもよい。これにより、パターン形成面Waを上方から加熱できる。
【0152】
第1および第2の実施形態において、たとえば
図12に示すように、遮断部材9が下位置に位置している状態で、遮断部材9と、処理カップ17(包囲部材)とによって、処理カップ17の内部空間SP1が、内部空間SP1の外側の空間から密閉されるようになっていてもよい。
具体的には、遮断部材9が下位置に位置している状態で、遮断部材9の円筒部29が、第2のガード84の内周端に設けられた受け部301に当接する。円筒部29と受け部301とが密着しており、この状態で、処理カップ17の内部空間SP1が外側の空間から密閉される。
【0153】
この場合、遮断部材9が下位置に位置している状態で、処理カップ17の内部空間SP1が外側の空間から密閉されるので、酸素を含む雰囲気が、処理カップ17の内部空間SP1に入ることが抑制される。これにより、遮断部材9と基板Wとの間の内部空間SPを、低酸素雰囲気に容易に保つことができる。ゆえに、パターン形成面Waの酸化を、より効果的に抑制または防止できる。
【0154】
また、第1および第2の実施形態において、充填剤吐出工程の開始に先立って、遮断部材9を上位置に向けて上昇させる態様を例に挙げたが、遮断部材9の上昇は、充填剤拡大工程(
図8K参照)の開始前であれば、充填剤吐出工程(
図8J参照)の開始以降であってもよい。この場合、充填剤吐出工程において、遮断部材9の中央部吐出口(中央ノズル10の下端に形成された吐出口)から充填剤が吐出される。
【0155】
また、置換工程(
図7のS8)において、中央ノズル10から吐出されるIPAをパターン形成面Waに供給し、次いで、溶剤ノズル61から吐出されるIPAをパターン形成面Waに供給するようにしたが、溶剤ノズル61からのIPAの吐出後も、中央ノズル10からのIPAの吐出を継続するようにしてもよい。
また、中央ノズル10および溶剤ノズル61の一方のノズルのみから吐出されたIPAを、パターン形成面Waに供給してもよい。
【0156】
また、充填剤の種類によっては、充填剤とリンス液とが可溶性(混和性)を有することがある。この場合、置換工程(
図7のS8)を省略できる。この場合、リンス液が中間処理液として機能し、リンス工程(
図7のS5)が、中間処理工程として機能する。
また、薬液処理として、複数の薬液を用いて順にパターン形成面Waを処理することもできる。たとえば、フッ酸(フッ酸含有液)を用いてパターン形成面Waを処理した後、リンス工程(
図7のS5)を挟んで、SC1を用いてパターン形成面Waを処理するようにしてもよい。
【0157】
また、各実施形態の基板処理例において、第2のスピンオフ工程(
図7のS12)の後に、エッジリンス工程を実行するようにしてもよい。このエッジリンス工程では、基板Wを回転させながら、基板Wの下面(パターン形成面Waと反対側の面)の外周部に対向する洗浄液ノズルからの洗浄液(IPA等の溶剤)を、基板Wの下面の外周部に供給し、基板Wの下面の外周部から充填剤を除去する。
【0158】
また、前述の各実施形態の基板処理例において、遮断部材9の上位置とは別に、遮断部材の退避位置を、たとえば上位置の上方に設け、非処理時において、遮断部材9が退避位置に配置してもよい。
また、各実施形態において、遮断部材9の内周面26bが、円弧状の断面を有しているとして説明したが、遮断部材9の内周面26bが、屈曲状(たとえば直角に屈曲)の断面を有していてもよい。
【0159】
また、各実施形態において、遮断部材9として、支持アーム31によって支持された支持型の遮断部材9を例に挙げて説明したが、スピンチャックのスピンベースに支持されて、スピンチャック8の回転に同伴回転する従動型の遮断部材を採用することもできる。
また、前述の各実施形態では、遮断部材9を昇降させることにより、遮断部材9とスピンチャック8との上下位置を相対的に変更するものについて説明したが、遮断部材9およびスピンチャック8の双方、ならびにスピンチャック8を昇降させることにより、遮断部材9とスピンチャック8との上下位置を相対的に変更するものであってもよい。
【0160】
さらには、処理カップ17が2段のカップである場合を例に挙げて説明したが、処理カップ17は、単カップであってもよいし、3段のカップであってもよいし、4段以上の多段カップであってもよい。
また、前述の実施形態において、基板処理装置が半導体ウエハからなる基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置が、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理する装置であってもよい。
【0161】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
【符号の説明】
【0162】
1,201 :基板処理装置
4 :制御装置
6A :液処理ユニット
6B :ベークユニット(充填剤固化ユニット)
8 :スピンチャック(基板保持ユニット)
9 :遮断部材
10 :中央ノズル
11 :薬液供給ユニット
15 :溶剤供給ユニット(中間処理液供給ユニット)
17 :処理カップ(包囲部材)
23 :スピンモータ(基板回転ユニット)
26a :基板対向面
28 :円板部
29 :円筒部
33 :遮断部材昇降ユニット
41a :第1の吐出口(中央部吐出口)
46a :第2の吐出口(中央部吐出口)
51a :第3の吐出口(中央部吐出口)
56a :第4の吐出口(不活性ガス吐出口)
66 :充填剤ノズル
69 :充填剤配管(充填剤供給ユニット)
70 :充填剤バルブ(充填剤供給ユニット)
100 :パターン
150 :薬液供給部(溶存酸素低減ユニット)
154 :不活性ガス溶解ユニット(溶存酸素量低減ユニット)
251 :ホットプレート(充填剤固化ユニット、ヒータ)
A :回転軸線
LF1 :薬液の液膜
LF3 :IPAの液膜(中間処理液の液膜)
LF4 :充填剤の液膜
LF5 :充填剤の液膜
SF :充填剤の固化膜
SP :内部空間
SP1 :内部空間
W :基板
Wa :パターン形成面