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  • 特許-キャスク用緩衝体 図1
  • 特許-キャスク用緩衝体 図2
  • 特許-キャスク用緩衝体 図3A
  • 特許-キャスク用緩衝体 図3B
  • 特許-キャスク用緩衝体 図4A
  • 特許-キャスク用緩衝体 図4B
  • 特許-キャスク用緩衝体 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】キャスク用緩衝体
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/08 20060101AFI20221215BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20221215BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G21F5/08
G21C19/32 100
G21F9/36 501J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019104408
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020197471
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小山 維之
(72)【発明者】
【氏名】小野 航平
(72)【発明者】
【氏名】中根 一起
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077128(JP,A)
【文献】特開2005-321348(JP,A)
【文献】特開2009-198401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/08
G21C 19/32
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスクの蓋側または底側に設置するキャスク用緩衝体であって、
外殻を構成する緩衝体外殻と、
内殻を構成する緩衝体内殻と、
前記緩衝体外殻と前記緩衝体内殻の間に設けられた衝撃吸収部材と、を備え、
前記キャスクまわりの位置においては、前記衝撃吸収部材が多層構造の略環状衝撃吸収部材であり、
該略環状衝撃吸収部材の軸方向のキャスク中心側では、前記緩衝体外殻と前記緩衝体内殻を接続する放射状リブを配置するとともに、外周側衝撃吸収部材と内周側衝撃吸収部材を周方向に位相をずらさず配置しており、
前記略環状衝撃吸収部材の軸方向のキャスク先端側では、内周側衝撃吸収部材は複数の外周側衝撃吸収部材と接しており、かつ、外周側衝撃吸収部材は複数の内周側衝撃吸収部材と接しているとともに、前記放射状リブを配置しないことを特徴とするキャスク用緩衝体。
【請求項2】
請求項1に記載のキャスク用緩衝体において、
前記内周側衝撃吸収部材の一部を前記外周側衝撃吸収部材と異なる特性を有する材料または空隙としたことを特徴とするキャスク用緩衝体。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載のキャスク用緩衝体において、
前記内周側衝撃吸収部材または前記外周側衝撃吸収部材の各々は、繊維方向が略一様な木製の合板で製造されたものであることを特徴とするキャスク用緩衝体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の炉心から発生する使用済燃料等の放射性物質を収納するキャスクに取り付けるキャスク用緩衝体に関し、特にキャスク用緩衝体の外殻内に充填される衝撃吸収部材の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原子炉の炉心から発生した使用済燃料は、まず原子力発電所内に設けられた冷却プールで、放射線量が一定レベル以下に低下するまで保管される。その後、遮へい機能および密封機能を有するキャスクに収められ、燃料処理施設等まで輸送される。キャスクは放射性物資を内包する重量物であることから、輸送時および取扱い時の万一の落下時おいても、所定の遮へい機能および密封機能を有することが義務付けられている。このためキャスク輸送時および取扱い時には、キャスクの上下端にキャスク用緩衝体を取り付け、落下時の衝撃を緩和させる対応がとられている。
【0003】
万一の落下の例としては、キャスク中心軸が垂直になる姿勢で落下する垂直落下(以下、単に「垂直落下」という)、キャスク中心軸が水平になる姿勢で落下する水平落下(以下、単に「水平落下」という)、そしてキャスク中心軸がある角度をもつ姿勢で落下するコーナー落下(以下、単に「コーナー落下」という)などがあり、キャスク用緩衝体はキャスクがあらゆる姿勢で落下しても、キャスクの遮へい機能および密封機能を維持する必要がある。
【0004】
キャスク用緩衝体は、キャスクがどのような姿勢で落下しても、落下時の衝撃エネルギーを限られた変形量内で効率的に吸収しきることが要求されるため、衝撃を吸収する材料(衝撃吸収部材)として、木材や発泡材料のように比重が小さく、衝撃吸収能力が大きい材料が採用されることが多く、また、衝撃吸収部材の配置や方向を調整することでより効果的に衝撃を吸収できる構造が適用されている。
【0005】
例えば、特許文献1の請求項1では、「木材の衝撃吸収ブロックが環状に組み合わされて構成されるとともに、前記衝撃吸収ブロックには、衝撃吸収特性を調整するための空間が設けられ、さらに、複数の前記衝撃吸収ブロックを貫通する貫通孔を設け、前記貫通孔に締結手段であるボルトを挿入して、複数の前記衝撃吸収ブロックを固定することを特徴とするキャスク用緩衝体」が示されている。
【0006】
このキャスク用緩衝体によれば、キャスクの様々な姿勢の落下時における衝撃を適度に吸収することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-233098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、キャスク用緩衝体は、キャスク落下時の衝撃を限られた変形量内で効率的に吸収しきる必要がある。特に、水平落下時には、キャスク外周の緩衝体が薄く、変形できる緩衝体領域が限られており、衝撃を吸収しきれない場合にはキャスクの突起部であるトラニオン等が落下面に衝突してしまう可能性が生じるため、より効率的に衝撃を吸収する必要がある。
【0009】
この問題を解決するには、緩衝体をより厚くすることでエネルギー吸収可能な領域を拡大したり、単位体積あたりのエネルギー吸収量が大きい衝撃吸収部材に変更したりする方法等が挙げられる。しかしながら、輸送する際の機器の制約上、緩衝体取付後のキャスクの最大外形寸法が定められており、緩衝体の領域を大きくすると、その分、キャスクの燃料収納領域が減少してしまい、燃料収納効率が低下してしまう。また、緩衝体内の衝撃吸収部材を変更すると、他の落下姿勢も踏まえた緩衝体構造の再設計が必要となり、また新規材料の開発や導入コスト、製造コスト等の増加が懸念される。このため、緩衝体の領域、衝撃吸収部材の材質を変化させることなく衝撃吸収能力を向上させる手法が必要となる。
【0010】
ここで、特許文献1では、キャスクの落下姿勢によらず衝撃を適切に吸収することを目的として、衝撃吸収ブロックに設けられた空間により衝撃吸収性能を調整することや、衝撃吸収ブロックを貫通する貫通孔にボルトやワイヤを挿入して、衝撃吸収ブロックのずれを抑制することを提案している。そして、その前提として、同文献の図6図10の断面図や、段落0046の「図6図10中の矢印は、衝撃吸収材を構成する木材の繊維の方向を示している。」の説明から明らかなように、繊維方向を放射状とした木製の外周側の衝撃吸収ブロック(特許文献1中では符号10~13)を利用することで、キャスクが円周方向の何れの向きで水平落下した場合でも落下方向と繊維方向(すなわち、強度方向)を一致させ、高い衝撃吸収性能を発揮できるようにしている。
【0011】
ところが、緩衝体内の衝撃吸収部材として一般的に用いられる木製の合板は繊維方向(強度方向)が一様であるため、それを用いて扇形状の衝撃吸収部材を製造すると、扇形状の中央部、一端側、他端側の夫々で繊維方向(強度方向)が同一となり、中央部では高い衝撃吸収性能が得られるものの、端部では低い衝撃吸収性能しか得られないという問題があった。
【0012】
仮に、特許文献1の図6等に示されるように、衝撃吸収ブロックの繊維方向を放射状にすることができれば、扇形状の周方向位置によらず同等の衝撃吸収性能を得ることができ、上記の問題は生じないが、特許文献1には、繊維方向が放射状の衝撃吸収部材をどのような材料、製法で製造するかが説明されておらず、特許文献1の出願人以外には同文献の構成の実現は極めて困難であった。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、繊維方向(強度方向)が一様な合板のような衝撃吸収部材を用いる場合であっても、緩衝体の外形寸法を大きくすることなく、緩衝体内部の衝撃吸収部材の配置によってエネルギー吸収可能領域を増加し、緩衝体の変形量に対する衝撃吸収エネルギーを増加させることができる、キャスク用緩衝体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願発明のキャスク用緩衝体は、キャスクの蓋側または底側に設置するものであって、外殻を構成する緩衝体外殻と、内殻を構成する緩衝体内殻と、前記緩衝体外殻と前記緩衝体内殻の間に設けられた衝撃吸収部材と、を備え、前記キャスクまわりの位置においては、前記衝撃吸収部材が多層構造の略環状衝撃吸収部材であり、該略環状衝撃吸収部材の軸方向のキャスク中心側では、前記緩衝体外殻と前記緩衝体内殻を接続する放射状リブを配置するとともに、外周側衝撃吸収部材と内周側衝撃吸収部材を周方向に位相をずらさず配置しており、前記略環状衝撃吸収部材の軸方向のキャスク先端側では、内周側衝撃吸収部材は複数の外周側衝撃吸収部材と接しており、かつ、外周側衝撃吸収部材は複数の内周側衝撃吸収部材と接しているとともに、前記放射状リブを配置しない構造とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、繊維方向(強度方向)が一様な合板のような衝撃吸収部材を用いる場合であっても、緩衝体の外形寸法を大きくすることなく、緩衝体内部の衝撃吸収部材の配置によってエネルギー吸収可能領域を増加し、キャスク用緩衝体の変形量に対する衝撃吸収エネルギーを増加させることができる、キャスク用緩衝体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】キャスク用緩衝体をキャスク本体に設置した状態の模式断面図である。
図2】実施例1におけるキャスク用緩衝体の蓋部周りの模式断面図である。
図3A】実施例1におけるキャスク用緩衝体の圧潰挙動を示す模式断面図である。
図3B】実施例1におけるキャスク用緩衝体の圧潰挙動を示す模式断面図である。
図4A】実施例2におけるキャスク用緩衝体の蓋部周りの模式断面図である。
図4B】実施例2におけるキャスク用緩衝体の蓋部周りの模式断面図である。
図5】実施例3におけるキャスク用緩衝体の蓋部周りの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のキャスク用緩衝体の実施例を説明する。まず、図1を用いて、キャスク1へのキャスク用緩衝体10の設置形態を説明する。なお、本発明のキャスク用緩衝体10は特定の使用済燃料用キャスクに限定するものではなく、他の使用済燃料輸送容器に使用される緩衝体にも適用可能である。
【0018】
図1に示すように、本発明のキャスク用緩衝体10は、略円柱形状をなすキャスク1の蓋部3と底部4の周りを覆うようにボルト等を用いて固定されるものであり、輸送時および取扱い時の万一の落下事故に備え、垂直落下、水平落下、コーナー落下等の様々な角度での落下に対して一定の範囲内で変形することで、蓋部3や底部4への衝撃荷重を緩和するものである。また、このキャスク用緩衝体10は、外殻を構成する緩衝体外殻11と、内殻を構成する緩衝体内殻12と、両者に囲まれた空間内に配置された、略円盤状衝撃吸収部材15と、略環状衝撃吸収部材16と、から構成されている。
【0019】
一方、キャスク1は、略円柱形状をなし、原子力発電所において、使用済燃料8を内部に収納して輸送するための容器である。キャスク1は、基本的に、有底円筒状の胴部2と、この胴部2の上部開口に取り付けられる蓋部3と、底部4と、胴部2の外側に設けた中性子吸収材5、中性子吸収材5を囲む外筒6、キャスク1の吊上げ用および固定用として用いられるトラニオン7を備えて構成されている。
【実施例1】
【0020】
実施例1のキャスク用緩衝体10の構成を、図2図3A図3Bを用いて説明する。図2は、実施例1におけるキャスク用緩衝体10の蓋部3まわりの構成を示す模式断面図である。また、図3A図3Bは、実施例1におけるキャスク用緩衝体10の圧潰挙動を示す模式図である。
【0021】
図2の模式断面図に示すように、本実施例のキャスク用緩衝体10は、キャスク1の蓋部3まわりの断面位置に、外周側の緩衝体外殻11と、内周側の緩衝体内殻12と、両者を接続する放射状リブ13と、緩衝体外殻11と緩衝体内殻12に挟まれた空間内に配置された略環状衝撃吸収部材16と、が配置されている。略環状衝撃吸収部材16は、緩衝体内殻12側に配置される内殻側衝撃吸収部材17と、緩衝体外殻11側に配置される外殻側衝撃吸収部材18と、両部材間に配置される中間衝撃吸収部材19から構成される多層構造となっている。また、本実施例では、放射状リブ13は90°ごとに配置されており、四つの放射状リブ13によって、緩衝体外殻11と緩衝体内殻12を接続することで緩衝体としての強度を保っている。
【0022】
ここで、図2の各衝撃吸収部材内に示した矢印は、例えば異方性を有する衝撃緩衝部材の強度が高い方向を示すものであり、木材を用いる場合は、繊維方向に相当する。上述したように、木製の合板は繊維方向が略一様であるため、衝撃吸収部材に合板を用いた場合には、図2の右上側の衝撃吸収部材群に示すように、衝撃吸収部材の各々の内部では繊維方向が略一様となっている。従って、周方向に隣接する衝撃吸収部材同士、および、径方向に隣接する衝撃吸収部材同士では、その境界部において強度の高い方向が非連続となっている。
【0023】
このような特性を踏まえ、本実施例では、内殻側衝撃吸収部材17に対して、一層外周側に位置する中間衝撃吸収部材19は、周方向に位相をずらして配置した。同様に、中間衝撃吸収部材19に対して、一層外周に位置する外殻側衝撃吸収部材18は、外殻側衝撃吸収部材18は対して周方向に位相をずらして配置した。すなわち、内側の衝撃吸収部材が複数の外側の衝撃吸収部材と接する部分があり、かつ、外側の衝撃吸収部材が複数の内側の衝撃吸収部材と接している部分があるように構成した。なお、本実施例においては、位相のずれ量を衝撃吸収部材の周方向長さの約半分として図示しているが、本発明はそれに限定するものではない。
【0024】
なお、本実施例では、キャスク用緩衝体10を円筒形状の構造として、内部に配置される衝撃吸収部材を中心角45°の扇形状の構造と想定しているが、例えばキャスク用緩衝体10が多角形であり、内部の衝撃吸収部材が外殻形状に応じた他の形状であっても適用可能である。また、衝撃吸収部材として、異方性を有する衝撃吸収部材である木材を想定して説明するが、同様の衝撃吸収特性を有する他の部材も適用可能である。
【0025】
次に、キャスク用緩衝体10を取り付けたキャスク1が図2中の実線矢印の方向に水平落下し、図2中下側に位置する略環状衝撃吸収部材16が圧潰される場合の挙動を説明する。
【0026】
図3Aに示すように、キャスク用緩衝体10を外装したキャスク1が、図中の矢印の方向に水平落下し、床面等の落下面100に衝突したことを想定する。この場合、まず落下面側に位置する外殻側衝撃吸収部材18aと18bが変形をはじめ、荷重が内部に伝達されると、中間衝撃吸収部材19bと、内殻側衝撃吸収部材17aと17bのうち中間衝撃吸収部材19bと接する範囲が変形を始める。次に、図3Bに示すように緩衝体の変形量が大きくなると、内殻側衝撃吸収部材17aと17bおよび外殻側衝撃吸収部材18aと18bのより周方向に広い範囲まで変形し、このとき、中間衝撃吸収部材19aと19cも捲き込みながら変形する。これにより、各層の衝撃吸収部の位相をずらさないで配置した場合と比較して広い範囲の衝撃吸収部材が変形し、より多くの衝撃エネルギーを吸収することができ、キャスク用緩衝体10の変形量当たりの衝撃エネルギー吸収量を増加させることができる。また、より広い範囲で衝撃力を吸収することで、蓋部3に作用する荷重をキャスク周方向に分散することができる。
【0027】
さらに、本実施例は、従来と同じ緩衝体外形寸法、かつ同量の衝撃吸収部材で達成することができるため、既存のキャスクにも適用できるとともに、緩衝体の製造コストも維持することが可能である。
【0028】
以上で説明したように、本実施例によれば、キャスク用緩衝体が変形しながら落下時の衝撃エネルギーを吸収するとき、緩衝体内の内周側と外周側に配置される衝撃吸収部材を互いに位相をずらして配置しているので、ひとつの緩衝材が圧潰する時に隣接する衝撃吸収部材を巻き込みながら圧潰する。これにより、より広い範囲で衝撃エネルギーを吸収することが可能となり、位相をずらさないで配置する場合よりも、キャスク用緩衝体の変形量に対する衝撃吸収エネルギーを増加させることができる。
【0029】
さらに、本実施例は従来と同じ緩衝体外形寸法、かつ同量の衝撃吸収部材で達成することができるため、既存のキャスクにも適用できるとともに、緩衝体の製造コストも維持することが可能である。
【実施例2】
【0030】
次に、キャスク用緩衝体10の実施例2の構成を、図4A図4Bを用いて説明する。図4A図4Bは、本実施例のキャスク用緩衝体10の蓋部3まわりの構成を、キャスク1の軸方向に関して位置を違えて示す模式断面図である。なお、実施例1と同様の構成については説明を省略する。
【0031】
図4A図4Bに示すように、本実施例のキャスク用緩衝体10は、蓋部3まわりにおいて、位置によって図4Aおよび図4Bに示す2つ構成を有する。図4Aは、キャスク中心側の構成であり、主に緩衝体外殻11と、緩衝体内殻12と、放射状リブ13と、内殻側衝撃吸収部材17と、外殻側衝撃吸収部材18と、中間衝撃吸収部材19から構成される。本実施例では、放射状リブ13は、45°ごとに配置されるとともに実施例1に比べてキャスク軸方向に短い構成である。一方、図4Bは、キャスク先端側の構成であり、主に緩衝体外殻11と、緩衝体内殻12と、内殻側衝撃吸収部材17と、外殻側衝撃吸収部材18と、中間衝撃吸収部材19から構成される。
【0032】
本実施例の構成によると、図4Aに示す放射リブ13の構成により、実施例1に比べてキャスク用緩衝体10の外殻強度をより高めることができる。また、蓋部3まわりには放射状リブを配置せず、内殻側衝撃吸収部材17と、外殻側衝撃吸収部材18と、中間衝撃吸収部材19を周方向に位相をずらして配置しているので、実施例1と同じように周方向の広い範囲の衝撃吸収部材が変形し、より多くの衝撃エネルギーを吸収することができるとともに、放射リブを配置していないので蓋部3に作用する荷重を低減することが可能である。
【実施例3】
【0033】
次に、キャスク用緩衝体10の実施例3の構成を、図5を用いて説明する。図5は、本実施例におけるキャスク用緩衝体10の蓋部3まわりの構成を示す模式断面図である。なお、上述した実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0034】
図5に示すように、本実施例のキャスク用緩衝体10は、蓋部3まわりにおいて、主に緩衝体外殻11と、緩衝体内殻12と、放射状リブ13と、内殻側衝撃吸収部材17と、外殻側衝撃吸収部材18と、低強度衝撃吸収部材20から構成される。本実施例における衝撃吸収部材は、2層構成として、また中心角22.5°の扇形状の構造として位相をずらして配置される。
【0035】
本実施例の構成によると、内殻側衝撃吸収部材17と、外殻側衝撃吸収部材18を周方向に位相をずらして配置しているので、前述の実施例と同じように、周方向の広い範囲の衝撃吸収部材が変形し、衝撃エネルギーを吸収することができる。また、圧縮強度の低い低強度衝撃吸収部材20が内周側の一部に配置されているので、緩衝体変形時には、まず低強度衝撃吸収部材20が若干変形して、次に、内殻側衝撃吸収部材17aと外殻側衝撃吸収部材18aと18b、および内殻側衝撃吸収部材17bと外殻側衝撃吸収部材18cと18dで衝撃を吸収する。これにより、前述の実施例に比べて、より蓋部3の周方向に分散して衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0036】
なお、低強度衝撃吸収部材20は空隙としてもよく、本実施例のように、衝撃吸収部材を周方向に位相をずらして配置していれば、層数(2層以上)や、寸法、衝撃吸収部材の強度等を、目的に応じて変更することが可能である。
【0037】
本発明は上述した実施例1~3の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…キャスク、
2…胴体、
3…蓋部、
4…底部、
5…中性子吸収材、
6…外筒、
7…トラニオン、
8…使用済燃料、
10…キャスク用緩衝体、
11…緩衝体外殻、
12…緩衝体内殻、
13…放射状リブ、
15…略円盤状衝撃吸収部材、
16…略環状衝撃吸収部材、
17…内殻側衝撃吸収部材、
18…外殻側衝撃吸収部材、
19…中間衝撃吸収部材、
20…低強度衝撃吸収部材、
100…落下面
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5