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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】複層ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20221215BHJP
   E06B 3/663 20060101ALI20221215BHJP
   E06B 3/667 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C03C27/06 101D
C03C27/06 101K
E06B3/663 N
E06B3/663 F
E06B3/663 K
E06B3/667
E06B3/663 D
E06B3/663 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019108596
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200220
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】臼井 勇一
(72)【発明者】
【氏名】八田 耕一
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/068305(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068306(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139165(US,A1)
【文献】特開2012-207458(JP,A)
【文献】特開昭59-021549(JP,A)
【文献】特開平11-130478(JP,A)
【文献】特開2017-088442(JP,A)
【文献】国際公開第2008/024605(WO,A1)
【文献】米国特許第6401428(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
E06B 3/663
E06B 3/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の縦辺と、前記縦辺に連設される一対の横辺とを有する第1のガラス板と、
前記第1のガラス板に対向配置され、一対の縦辺と、前記縦辺に連接される一対の横辺とを有する第2のガラス板と、
前記第1のガラス板と前記第2のガラス板の対向する前記縦辺、及び前記横辺に沿って配置され、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを隔置し、カーボン繊維で補強された合成樹脂からなる枠体であって、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間隔を保持する枠体外面及び枠体内面と、前記枠体外面及び前記枠体内面に連設し前記第1のガラス板に面する枠体第1側面と、前記枠体外面及び前記枠体内面に連設し前記第2のガラス板に面する枠体第2側面とを有する枠体と、
前記第1のガラス板と前記枠体第1側面と、及び前記第2のガラス板と前記枠体第2側面とを、それぞれ結合する接着材と、
前記枠体の前記枠体内面に沿って配置されるスペーサであって、前記枠体内面に面するスペーサ外面と、長手方向に沿う少なくとも一つのスペーサ溝が形成されたスペーサ内面と、前記スペーサ外面及び前記スペーサ内面に連設し前記第1のガラス板に面するスペーサ第1側面と、前記スペーサ外面及び前記スペーサ内面に連設し前記第2のガラス板に面するスペーサ第2側面とを有するスペーサと、
前記第1のガラス板と前記スペーサ第1側面と、及び前記第2のガラス板と前記スペーサ第2側面とを、それぞれ封止するシール材と、
前記枠体内面と前記スペーサ外面との間に配置されたガス透過防止フィルムであって、前記シール材と連なるガス透過防止フィルムと、
前記スペーサの前記スペーサ溝に設置された中間ガラス板であって、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の中空層を2以上の区画中空層に分割する中間ガラス板と、
を備える複層ガラス。
【請求項2】
前記枠体の前記枠体内面には、前記枠体の長さ方向に沿う枠体溝が形成されており、
前記スペーサ第1側面の少なくとも一部、前記スペーサ第2側面の少なくとも一部、及び前記スペーサ外面は、前記枠体溝に沿う形状であり、
前記スペーサと前記枠体とが嵌め合い構造である、請求項1に記載の複層ガラス。
【請求項3】
前記枠体が、一対の縦辺枠体と一対の横辺枠体とから構成され、
前記一対の縦辺枠体の長さが、前記第1のガラス板及び前記第2のガラス板の縦辺と同じ長さであり、
前記一対の横辺枠体の少なくとも一方の横辺枠体が、前記一対の縦辺枠体の少なくとも一方の縦辺枠体から離間して配置される、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
【請求項4】
前記スペーサが、一対の縦辺スペーサと、一対の横辺スペーサと、前記縦辺スペーサと前記横辺スペーサとを連結する4個のコーナージョイント部とから構成されており、
前記4個のコーナージョイント部の少なくとも1個のコーナージョイント部には、前記区画中空層のそれぞれに連通するガス注入口が、前記コーナージョイント部の内壁により画定されており、
前記内壁の前記ガス注入口の長さ方向の延長線が前記縦辺枠体に交わらない、請求項3に記載の複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性、及び防音性の観点から、ガラス窓として複層ガラスが多用されている。複層ガラスは、2枚のガラス板と、2枚のガラス板を隔置するスペーサと、2枚のガラス板の間に形成された中空層と、を有する。
【0003】
近年、断熱性、及び防音性をさらに向上させるため、3枚以上のガラス板を含む複層ガラスが提案されている。この複層ガラスは2枚のガラス板の間に1枚以上の中間ガラス板を含んでいる。
【0004】
特許文献1は、3枚のガラス板を含む複層ガラスを開示する。特許文献1の複層ガラスは、2枚のガラス板と、2枚のガラス板を隔置し、かつ溝を有するスペーサと、溝に差し込まれたガラス板と、溝と反対側に位置するウェブと、ウェブと2枚のガラスとにより形成される空間に充填される封着材と、を備える。2枚のガラス板とスペーサとはシールを介して結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-505977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複層ガラスが建物に設置されると、温度、及び気圧の変化により複層ガラスの中空層の内圧が変化する。また、複層ガラスは、風などの風圧を受ける。したがって、複層ガラスには、面外強度を負担することが求められる。しかしながら、特許文献1の構造は、面外強度を十分負担できない懸念がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、面内強度を負担できる複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複層ガラスは、一対の縦辺と、縦辺に連設される一対の横辺とを有する第1のガラス板と、第1のガラス板に対向配置され、一対の縦辺と、縦辺に連接される一対の横辺とを有する第2のガラス板と、第1のガラス板と第2のガラス板の対向する縦辺、及び横辺に沿って配置され、第1のガラス板と第2のガラス板とを隔置し、カーボン繊維で補強された合成樹脂からなる枠体であって、第1のガラス板と第2のガラス板との間隔を保持する枠体外面及び枠体内面と、枠体外面及び枠体内面に連設し第1のガラス板に面する枠体第1側面と、枠体外面及び枠体内面に連設し第2のガラス板に面する枠体第2側面とを有する枠体と、第1のガラス板と枠体第1側面と、及び第2のガラス板と枠体第2側面とを、それぞれ結合する接着材と、枠体の枠体内面に沿って配置されるスペーサであって、枠体内面に面するスペーサ外面と、長手方向に沿う少なくとも一つのスペーサ溝が形成されたスペーサ内面と、スペーサ外面及びスペーサ内面に連設し第1のガラス板に面するスペーサ第1側面と、スペーサ外面及びスペーサ内面に連設し第2のガラス板に面するスペーサ第2側面とを有するスペーサと、第1のガラス板とスペーサ第1側面と、及び第2のガラス板とスペーサ第2側面とを、それぞれ封止するシール材と、枠体内面とスペーサ外面との間に配置されたガス透過防止フィルムであって、シール材と連なるガス透過防止フィルムと、スペーサのスペーサ溝に設置された中間ガラス板であって、第1のガラス板と第2のガラス板との間の中空層を2以上の区画中空層に分割する中間ガラス板と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複層ガラスは面内強度を負担できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る複層ガラスの全体斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る複層ガラスの要部断面図である。
図3図3は、複層ガラスの作用を説明する概略図である。
図4図4は、複層ガラスの作用を説明する別の概略図である。
図5図5は、複層ガラスが建物に設置された状態を示す概略図である。
図6図6は、コーナージョイント部の斜視図である。
図7図7は、複層ガラスの要部断面図である。
図8図8は、別の形態のコーナージョイント部の斜視図である。
図9図9は、別の形態の複層ガラスの要部断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る複層ガラスの要部断面図である。
図11図11は、第2実施形態の変形例の要部断面図である。
図12図12は、第3実施形態に係る複層ガラスの要部断面図である。
図13図13は、第3実施形態の変形例の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面にしたがって、本発明に係る複層ガラスの好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、方向、位置を表わす「縦」、「横」、「上(U)」、「下(D)」、「右(R)」、「左(L)」は、複層ガラスが建物に取りつけられた状態を基準に使用される。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る複層ガラスの全体斜視図である。複層ガラス100は、第1のガラス板110と、第1のガラス板110に対向配置される第2のガラス板112とを備える。第1のガラス板110は、対向する一対の縦辺110Aと、縦辺110Aに連接され対向する一対の横辺110Bと有する。第1のガラス板110は、対向する主面と、主面に連接する4つの側面とを有する板形状であり、主面から見て四角形状を有している。
【0013】
同様に、第2のガラス板112は、対向する一対の縦辺112Aと、縦辺112Aに連接され対向する一対の横辺112Bと有する。第2のガラス板112は、対向する主面と、主面に連接する4つの側面とを有する板形状であり、主面から見て四角形状を有している。
【0014】
第1のガラス板110、及び第2のガラス板112は、軽量化を図るため、1.3mm~3mmの範囲の厚みであることが好ましい。但し、第1のガラス板110、及び第2のガラス板112の厚みは、この範囲に限定されない。第1のガラス板110、及び第2のガラス板112は、上述の厚みの範囲内において、同じ厚みであっても、異なる厚みであってもよい。
【0015】
第1のガラス板110、及び第2のガラス板112は、化学強化ガラスであることが好ましい。第1のガラス板110、及び第2のガラス板112の厚みを薄くしても、第1のガラス板110、及び第2のガラス板112は充分な強度を有することができる。化学強化ガラス板とは、ソーダライムシリケートガラス等のNa成分やLi成分を含有するガラス板を、硝酸カリウム等の溶融塩中に浸漬させ、ガラス板の表面に存在する原子径の小さなNaイオン及び/又はLiイオンと、溶融塩中に存在する原子径の大きなKイオンとを置換してガラス板の表面層に圧縮応力層を形成して強度が高められたガラス板である。但し、第1のガラス板110、及び第2のガラス板112は、化学強化ガラスに限定されず、フロート板ガラス、風冷強化ガラス、合わせガラス、及び網入りガラスを適用できる。
【0016】
複層ガラス100は、第1のガラス板110と第2のガラス板112とを隔置する枠体120を備える。枠体120は、一対の縦辺枠体122と一対の横辺枠体124とから構成される。一対の縦辺枠体122は、第1のガラス板110の縦辺110A及び第2のガラス板112の縦辺112Aに沿って配置される。一対の横辺枠体124は、第1のガラス板110の横辺110B及び第2のガラス板112の横辺112Bに沿って配置される。枠体120は、カーボン繊維で補強された合成樹脂から構成される。合成樹脂として、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド、熱可塑性樹脂ではポリアミド(PA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が、適用できる。
【0017】
実施形態では、一対の縦辺枠体122の長さが、第1のガラス板110の縦辺110A及び第2のガラス板112の縦辺112Aと同じ長さである。なお、縦辺110Aと縦辺112Aとの長さが異なる場合、縦辺枠体122の長さは、縦辺110A及び縦辺112Aのいずれか長い方の長さと同じであることが好ましい。
【0018】
実施形態では、一対の横辺枠体124のいずれもが、一対の縦辺枠体122から離間して配置される。上側の横辺枠体124は、左側の縦辺枠体122から離間する。一方で、上側の横辺枠体124は、右側の縦辺枠体122と離間していない。なお、上側の横辺枠体124は、右側及び左側の両方の縦辺枠体122と離間してもよい。
【0019】
また、下側の横辺枠体124は、右側の縦辺枠体122から離間する。一方で、下側の横辺枠体124は、左側の縦辺枠体122と離間していない。なお、下側の横辺枠体124は、右側及び左側の両方の縦辺枠体122と離間してもよい。
【0020】
縦辺枠体122と横辺枠体124とが離間されると隙間が形成される。この隙間は、図1に示されるように、例えば、封着材180が充填される。封着材180として、ポリサルファイド系シーラント又はシリコーン系シーラントが適用できる。
【0021】
複層ガラス100は、枠体120の内面に沿って配置されるスペーサ140を備える。スペーサ140は、一対の縦辺スペーサ142と、一対の横辺スペーサ144と、縦辺スペーサ142と横辺スペーサ144とを連結する4つのコーナージョイント部146と、を備える。
【0022】
一対の縦辺スペーサ142の内面には長手方向に沿うスペーサ溝148が形成される。同様に一対の横辺スペーサ144の内面には長手方向に沿うスペーサ溝148が形成される。中間ガラス板114がスペーサ溝148に設置される。
【0023】
中間ガラス板114は、対向する一対の縦辺と、縦辺に連接され対向する一対の横辺と有する。中間ガラス板114は、対向する主面と、主面に連接する4つの側面とを有する板形状であり、主面から見て四角形状を有している。少なくとも1枚の中間ガラス板114が設置される。複層ガラス100は、複数枚の中間ガラス板を設置できる。
【0024】
中間ガラス板114は、軽量化を図るために1mm~2mmの範囲の厚みを有する。
【0025】
但し、中間ガラス板114の厚みは、この範囲に限定されない。中間ガラス板114は、第1のガラス板110、及び第2のガラス板112と同様に、化学強化ガラスを適用できる。但し、中間ガラス板114は、化学強化ガラスに限定されず、フロート板ガラス、風冷強化ガラス、合わせガラス、及び網入りガラスを適用できる。
【0026】
中間ガラス板114は、スペーサ140のスペーサ溝148に挿入できるように、第1のガラス板110と第2のガラス板112よりも小さい面積の主面を有する相似形の四角形状とするのが好ましい。
【0027】
次に、図2を参照して、複層ガラス100の断面構造を説明する。図2は、複層ガラス100の第1のガラス板110及び第2のガラス板112に直交する方向で切断した断面図である。なお、図2では、縦辺枠体122、及び横辺枠体124を区別せず枠体120として説明する。同様に、縦辺スペーサ142、及び横辺スペーサ144を区別せずスペーサ140として説明する。
【0028】
図2に示されるように、枠体120は、第1のガラス板110と第2のガラス板112との間隔を保持する枠体外面120A及び枠体内面120Bとを有する。枠体外面120Aと枠体内面120Bとは対向して配置される。枠体120は、枠体外面120A及び枠体内面120Bに連設し第1のガラス板110に面する枠体第1側面120Cを備える。枠体120は、枠体外面120A及び枠体内面120Bに連設し第2のガラス板112に面する枠体第2側面120Dを備える。枠体第1側面120Cと枠体第2側面120Dとは対向して配置される。枠体120は、断面視で四角形状を有している。
【0029】
第1のガラス板110と枠体第1側面120Cとが接着材130により結合される。また、第2のガラス板112と枠体第2側面120Dとが接着材130により結合される。接着材130として、2液性のウレタン系接着材、アクリル系接着材、エポキシ系接着材、シアノアクリレート系接着材、ポリウレタン系接着材、及び酢酸ビニル系接着材が適用できる。
【0030】
枠体120の枠体内面120Bに沿って配置されるスペーサ140は、枠体内面120Bに面するスペーサ外面140Aを備える。また、スペーサ140は、スペーサ外面140Aとは反対側に、スペーサ140の長手方向に沿う少なくとも一つのスペーサ溝148が形成されたスペーサ内面140Bを備える。スペーサ140は、スペーサ外面140A及びスペーサ内面140Bに連設し第1のガラス板110に面するスペーサ第1側面140Cを備える。スペーサ140は、スペーサ外面140A及びスペーサ内面140Bに連設し第2のガラス板112に面するスペーサ第2側面140Dを備える。
【0031】
スペーサ140の内部には、複数の空間部150が、スペーサ140の長手方向に沿って形成される。空間部150は、隣り合うスペーサ140(縦辺スペーサ142、及び横辺スペーサ144)を連結するコーナージョイント部146(不図示)のL字形状に配置された挿入部を収容できる。また、空間部150は、乾燥剤(不図示)を収容できる。
【0032】
スペーサ140の形成材料として、合成樹脂材料が好ましく使用される。合成樹脂材料としては、硬質塩化ビニル樹脂材料、アクリロニトリル・スチレン樹脂材料、及びこれらにガラス繊維材を入れたものが好ましい。形成材料は、これらの合成樹脂に限定されない。形成材料としては、一種に限らず、複数種の材料を用いて複合構造としてもよい。複合構造として、異なる合成樹脂材料からなる複合構造でもよく、合成樹脂材料とアルミニウム材料とからなる複合構造でもよい。
【0033】
第1のガラス板110とスペーサ第1側面140Cとがシール材160により封止される。また、第2のガラス板112とスペーサ第2側面140Dとがシール材160により封止される。シール材160として、ガス透過防止性能をもったシール材、ブチルゴム、熱可塑性ポリイソブチレン系シーリング材等が適用できる。
【0034】
中間ガラス板114の周縁部がスペーサ140のスペーサ溝148に嵌め込まれことにより、中間ガラス板114がスペーサ140に設置される。
【0035】
第1のガラス板110と、第2のガラス板112と、スペーサ140と、コーナージョイント部146(不図示)と、シール材160とにより、複層ガラス100の第1のガラス板110と第2のガラス板112との間に中空層が形成される。中空層が、中間ガラス板114により、2以上(実施形態では2個)の区画中空層164に分割される。中間ガラス板114の数を増加する毎に、区画中空層164の数が増加する。
【0036】
区画中空層164の好ましい一態様において、区画中空層164に空気よりも熱伝導率が小さいアルゴンガスが封入される。複層ガラス100の断熱性能が高められる。スペーサ140の空間部150に収容された乾燥剤(不図示)より、区画中空層164の中のアルゴンガスが乾燥される。第1のガラス板110、第2のガラス板112、及び中間ガラス板114の内部結露が防止されている。区画中空層164の厚みは、5mm~20mmであることが好ましい。区画中空層164の厚みは、第1のガラス板110と中間ガラス板114との距離、及び第2のガラス板112と中間ガラス板114との距離になる。区画中空層164には、アルゴンガスに限らず、例えば、乾燥空気や、クリプトンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが充填されてもよい。
【0037】
複層ガラス100は、枠体120の枠体内面120Bと、スペーサ140のスペーサ外面140Aとの間に配置されたガス透過防止フィルム162を備える。ガス透過防止フィルム162としては、ガス透過防止性能をもった金属被覆フィルム、セラミック被覆フィルム、金属及びセラミックの複合被覆フィルム、金属テープ、フィルム自身がガス透過防止性能をもった樹脂からなるガス透過防止樹脂フィルム、又はガス透過防止樹脂被覆フィルムが挙げられる。ブチルゴム系接着材からなるブチルテープと、金属テープ、例えばアルミニウム箔やステンレス箔とを積層したガス透過防止複合フィルムも好ましく使用することができる。
【0038】
断面視において、第1のガラス板110とスペーサ第1側面140Cとの間のシール材160と、ガス透過防止フィルム162と、第2のガラス板112とスペーサ第2側面140Dとの間のシール材160とが連なる。2つのシール材160とガス透過防止フィルム162とが連なることで、区画中空層164と区画中空層164の外部との間に、いわゆるガス透過防止ラインが形成される。ガス透過防止ラインが区画中空層164の気密性を向上させる。
【0039】
次に、実施形態に係る複層ガラス100が面外強度を負担できる作用について、図3、及び図4に基づいて説明する。理解を容易にするため、第1のガラス板110、第2のガラス板112、枠体120、及び接着材130のみが、図示されている。
【0040】
図3は、中空層が温度及び/又は気圧の変化により膨張した場合を示す。枠体120は、カーボン繊維で補強された合成樹脂から構成されるので、高い強度を有する。第1のガラス板110と高い強度を有する枠体120とが、接着材130により強固に結合される。また、第2のガラス板112と高い強度を有する枠体120とが、接着材130により強固に結合される。その結果、第1のガラス板110、第2のガラス板112、及び枠体120が一体となることにより、モノコック構造が形成される。複層ガラス100は、全体として剛性と強度とを保持できる。
【0041】
図3に示されるように、丸で囲まれた場所において、接着材130の伸びは、ほとんど生じない。枠体120と第1のガラス板110との距離は一定に保持される。同様に、枠体120と第2のガラス板112との距離は一定に保持される。第1のガラス板110と枠体120との角度、及び第2のガラス板112と枠体120との角度が一定に維持される。中空層の内圧が変化した場合でも、シール材160(図2参照)は引き剥がし方向の力を受けにくくなる。シール材160の薄膜化が抑制され、ガス透過防止ラインが維持できる。
【0042】
図4は、第2のガラス板112が風圧を受けた場合を示す。上述したように、第1のガラス板110、第2のガラス板112、及び枠体120が一体となることによりモノコック構造が形成され、全体として剛性と強度とを保持できる。丸で囲まれた場所において、接着材130の伸びはほとんど生じない。枠体120と第1のガラス板110との距離は一定に保持される。同様に、枠体120と第2のガラス板112との距離は一定に保持される。
【0043】
風圧をうけた場合でも、シール材160(図2参照)は引き剥がし方向の力を受けにくくなる。シール材160の薄膜化が抑制され、ガス透過防止ラインが維持できる。
【0044】
図3、及び図4で説明したように、複層ガラス100がモノコック構造を形成するので、複層ガラス100は面外強度を負担できる。
【0045】
次に、図5から図9に基づいて、区画中空層にガスを封入するのに適した構成について説明する。
【0046】
図5は、複層ガラス100が建物に設置された状態を示す。上述したように、複層ガラス100は、枠体120とスペーサ140とを備える。枠体120は、一対の縦辺枠体122と、一対の横辺枠体124とを有する。スペーサ140は一対の縦辺スペーサ142と、一対の横辺スペーサ144と、縦辺スペーサ142と横辺スペーサ144とを連結する4個のコーナージョイント部146とを有する。スペーサ140の内面の側に区画中空層164が形成される。
【0047】
建物に設置する際、複層ガラス100の上側横辺及び下側横辺が、サッシ枠(不図示)の中に収納される構造が考えらえる。複層ガラス100をサッシ枠に収納する場合、モノコック構造を構成する枠体120(横辺枠体124)は、サッシ枠の中に収納される。複層ガラス100において、枠体120は、接着材130により、第1のガラス板110、及び第2のガラス板112に結合されるので(図2参照)、区画中空層164へのガス封入は、枠体120の接着後に行う必要がある。
【0048】
すなわち、枠体120の接着後でも、複層ガラス100の区画中空層164にガスを封入できるガス封入経路を確保することが必要となる。
【0049】
図5に示されるように、上側の横辺枠体124、及び下側の横辺枠体124は、一対の縦辺枠体122から離間して配置され、縦辺枠体122と横辺枠体124との間に隙間が形成される。縦辺枠体122と横辺枠体124との隙間から、枠体120の内面の側に配置されるスペーサ140のコーナージョイント部146が露出できる。アルゴンガス等の断熱機能を向上させるガスが、コーナージョイント部146から区画中空層164に封入できる。
【0050】
図6及び図7に基づいて、コーナージョイント部146について説明する。図6に示されるように、コーナージョイント部146は、本体部146Aと、本体部146Aから突出しL字形状に配置される挿入部146Bと、を備える。コーナージョイント部146の本体部146Aには、本体部146Aの内壁146D(図7参照)により画定されたガス注入口146Cが形成される。4個のコーナージョイント部146の少なくとも1個のコーナージョイント部146がガス注入口146Cを備えていればよい。
【0051】
図7に示されるように、コーナージョイント部146の挿入部146Bが、縦辺スペーサ142の空間部150、及び横辺スペーサ144の空間部150のそれぞれに挿入される。縦辺スペーサ142と横辺スペーサ144とが連結される。ガス注入口146Cは、スペーサ140のスペーサ外面の側とスペーサ内面の側とに連通し、複層ガラス100の複数の区画中空層164のそれぞれに連通する。
【0052】
内壁146Dのガス注入口146Cの長さ方向の延長線ELが縦辺枠体122に交わらないように、ガス注入口146Cがコーナージョイント部146に設けられる。
【0053】
したがって、ガス封入用のノズル(不図示)が、縦辺枠体122に阻害されずに、ガス注入口146Cに挿入でき、ガス封入経路が確保できる。ガス封入後は、ガス注入口146Cが、例えば、栓で塞がれ、次いで、封着材180が縦辺枠体122と横辺枠体124との隙間に充填される。
【0054】
次に、図8及び図9に基づいて、別の形態のコーナージョイント部246について説明する。図8に示されるように、コーナージョイント部246は、本体部246Aと、本体部246Aから突出しL字形状に配置される挿入部246Bと、を備える。コーナージョイント部246の本体部246Aには、本体部246Aの内壁246E(図9参照)により画定されたガス注入口246Cが形成される。4個のコーナージョイント部246の少なくとも1個のコーナージョイント部246がガス注入口246Cを備えていればよい。コーナージョイント部246の本体部246Aは、コーナージョイント部146の本体部246Aの形状と異なる形状を有している。本体部246Aは、延長部246Dを有し、延長部246Dにガス注入口246Cが形成される。
【0055】
図9に示されるように、コーナージョイント部246の挿入部246Bが、縦辺スペーサ142の空間部150、及び横辺スペーサ144の空間部150のそれぞれに挿入される。ガス注入口246Cは、スペーサ140のスペーサ外面の側とスペーサ内面の側とに連通し、そして複層ガラス100の複数の区画中空層164のそれぞれに連通する。
【0056】
内壁246Eのガス注入口246Cの長さ方向の延長線ELが縦辺枠体122に交わらないように、ガス注入口246Cがコーナージョイント部246に設けられる。
【0057】
したがって、ガス封入用のノズル(不図示)が、縦辺枠体122に阻害されずに、ガス注入口246Cに挿入でき、ガス封入経路が確保できる。ガス封入後は、ガス注入口246Cが栓で塞がれる。次いで、封着材180が縦辺枠体122と横辺枠体124との隙間に充填される。
【0058】
<第2実施形態>
図面を参照して、第2実施形態の複層ガラス200について説明する。第1実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する場合がある。第2実施形態の複層ガラス200は、第1実施形態と異なり、枠体120に枠体溝126が形成されている。
【0059】
図10に示されるように、枠体120の枠体内面120Bには、枠体120の長さ方向に沿う枠体溝126が形成されている。枠体溝126は、対向する内壁と、底面とにより画定される。対向する内壁は、平行であり、かつ底面に対し直交する。枠体溝126は断面視で四角形状となる。
【0060】
スペーサ第1側面140Cは、スペーサ外面140Aからスペーサ内面140Bに向かうにしたがい、第1のガラス板110と面する距離が小さくなる、階段形状を有している。同様に、スペーサ第2側面140Dは、スペーサ外面140Aからスペーサ内面140Bに向かうにしたがい、第2のガラス板112と面する距離が小さくなる、階段形状を有している。一方で、スペーサ第1側面140Cの少なくとも一部、スペーサ第2側面140Dの少なくとも一部、及びスペーサ外面140Aは、枠体溝126に沿う形状に構成される。
【0061】
枠体溝126に位置するスペーサ第1側面140Cの一部は、枠体溝126を画定する内壁と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。同様に、枠体溝126に位置するスペーサ第2側面140Dの一部は、枠体溝126を画定する内壁と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。枠体溝126に位置するスペーサ外面140Aは、枠体溝126を画定する底面と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。スペーサ140と枠体溝126とを沿う形状にすることにより、スペーサ140と枠体120とが嵌め合い構造にできる。嵌め合い構造は見付け寸法Hを小さくでき、小さな見付け寸法Hは複層ガラス100の外観意匠性を向上できる。
【0062】
一方、枠体第1側面120Cと枠体第2側面120Dとは、所定の長さを維持できるので、接着材130の範囲と曲げ強度とを確保できる。
【0063】
図10に示されるように、ガス透過防止フィルム162が、枠体溝126に沿って配置される。シール材160はスペーサ第1側面140C及びスペーサ第2側面140Dに配置される。シール材160とガス透過防止フィルム162とは、連なることによりガス透過防止ラインを形成する。スペーサ第1側面140C及びスペーサ第2側面140Dが階段形状を有するので、シール材160を厚く形成できる。シール材160の薄膜化が抑制される。
【0064】
次に、第2実施形態の変形例を図11に基づいて説明する。理解を容易にするため、図11は、枠体120、スペーサ140及びガス透過防止フィルム162のみを示す。第2実施形態の変形例は、図10に示される第2実施形態と異なる形状の枠体溝126、及びスペーサ140を有する。図11に示されるように、枠体溝126は、枠体内面120Bの側に向かうにつれて広がるテーパー形状の内壁と、底面と、により画定される。
【0065】
枠体溝126に位置するスペーサ第1側面140Cの一部は、枠体溝126を画定するテーパー状の内壁と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。同様に、枠体溝126に位置するスペーサ第2側面140Dの一部は、枠体溝126を画定するテーパー状の内壁と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。枠体溝126に位置するスペーサ外面140Aは、枠体溝126を画定する内壁と一定の距離を維持し、枠体溝126に沿う形状に構成される。
【0066】
第2実施形態の変形例は、図10の第2実施形態と同様に、複層ガラス100の外観意匠性を向上でき、接着材130(不図示)の範囲と曲げ強度とを確保できる。
【0067】
<第3実施形態>
図面を参照して、第3実施形態の複層ガラス300について説明する。第1実施形態と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する場合がある。第3実施形態の複層ガラス300は、第1実施形態とは異なり、スペーサ第1側面及びスペーサ第2側面に切欠きが形成されたスペーサを備えている。
【0068】
図12に示されるように、スペーサ140のスペーサ第1側面140Cには、第1切欠き140Eが形成される。第1切欠き140Eは、スペーサ外面140Aとスペーサ第1側面140Cとが連設される位置に形成される。
【0069】
同様にスペーサ140のスペーサ第2側面140Dには、第2切欠き140Fが形成される。第2切欠き140Fは、スペーサ外面140Aとスペーサ第2側面140Dとが連設される位置に形成される。第1切欠き140Eは第1のガラス板110から遠ざかる方向に形成される。第2切欠き140Fは第2のガラス板112から遠ざかる方向に形成される。図12では、第1切欠き140E及び第2切欠き140Fは、断面視で四角形状の切欠きであるが、形状に限定は無く、例えば、半円状であってもよい。
【0070】
第1切欠き140E及び第2切欠き140Fは、シール材160の位置の確定を容易にする。また、第1切欠き140E及び第2切欠き140Fは、シール材160を収容できるので、シール材160は厚く形成できる。シール材160が繰り返しの引き剥がしの力を受けた場合でも、シール材160の薄膜化が抑制でき、ガス透過防止ラインが維持できる。
【0071】
次に、第3実施形態の変形例を図13に基づいて説明する。第3実施形態の変形例は、図12に示される第3実施形態とは異なる位置に第1切欠き140E及び第2切欠き140Fを備える。
【0072】
図13に示されるように、第1切欠き140Eは、スペーサ第1側面140Cであって、スペーサ内面140Bに近い位置に形成される。同様に、第2切欠き140Fは、スペーサ第2側面140Dであって、スペーサ内面140Bに近い位置に形成される。シール材160は、第1切欠き140E及び第2切欠き140Fの位置に配置される。ガス透過防止フィルム162は、スペーサ外面140A、スペーサ第1側面140Cの一部、及びスペーサ第2側面の一部を覆い、シール材160と連なる。これにより、ガス透過防止ラインが形成される。
【0073】
図13に示されるように、シール材160と接着材130とを離間することにより、それぞれの特性が変化するのを回避できる。
【符号の説明】
【0074】
100 複層ガラス、110 第1のガラス板、110A 縦辺、110B 横辺、112 第2のガラス板、112A 縦辺、112B 横辺、114 中間ガラス板、120 枠体、120A 枠体外面、120B 枠体内面、120C 枠体第1側面、120D 枠体第2側面、122 縦辺枠体、124 横辺枠体、126 枠体溝、130 接着材、140 スペーサ、140A スペーサ外面、140B スペーサ内面、140C スペーサ第1側面、140D スペーサ第2側面、142 縦辺スペーサ、144 横辺スペーサ、146 コーナージョイント部、146A 本体部、146B 挿入部、146C ガス注入口、146D 内壁、148 スペーサ溝、150 空間部、160 シール材、162 ガス透過防止フィルム、164 区画中空層、180 封着材、200 複層ガラス、246 コーナージョイント部、246A 本体部、246B 挿入部、246C ガス注入口、246D 延長部、246E 内壁、300 複層ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13