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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】姿勢制御システム及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20221215BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/64
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115536
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000918
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜生 春樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 猛氏
(72)【発明者】
【氏名】小牧 慎一郎
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240554(JP,A)
【文献】特開2010-000116(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124381(WO,A1)
【文献】特開2007-030536(JP,A)
【文献】特開2016-215995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0026073(US,A1)
【文献】特開2013-001221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに対してシート前後方向に揺動可能なシートバックと、
前記シートバックを支持するバックフレームと、
第1固定位置と、前記第1固定位置よりもシート後方の第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、前記バックフレームのシート前後方向の揺動を規制するロック機構と、
前記バックフレームをシート前方に押すことで前記バックフレームをシート前方に揺動させる第1当接部と、前記バックフレームをシート後方に押すことで前記バックフレームをシート後方に揺動させる第2当接部とを有する回転体と、前記回転体を回転させる駆動部とを有する揺動機構と、
を備えるシート本体の姿勢を制御する姿勢制御システムであって、
前記揺動機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記バックフレームの揺動を規制しない待機位置にある前記回転体を、前記第1当接部が前記バックフレームをシート前方に押すように回転させる格納処理と、
前記待機位置にある前記回転体を、前記第2当接部が前記バックフレームをシート後方に押すように回転させる復帰処理と、
前記格納処理の実行後又は前記復帰処理の実行後に、前記回転体を前記待機位置まで回転させる第1リセット処理と、
前記格納処理及び前記復帰処理の少なくとも一方の処理の実行中においてこの処理を中断させるキャンセル入力があった際に、前記回転体を前記待機位置まで回転させる第2リセット処理と、
を行う、姿勢制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の姿勢制御システムであって、
前記第2リセット処理は、前記格納処理の実行中及び前記復帰処理の実行中の双方において実行される、姿勢制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の姿勢制御システムであって、
前記第2リセット処理において前記回転体を回転させる前記駆動部の出力は、前記第1リセット処理において前記回転体を回転させる前記駆動部の出力よりも大きい、姿勢制御システム。
【請求項4】
前記シート本体と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の姿勢制御システムと、
を備える乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、姿勢制御システム及び乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの角度を多段階的に調整するリクライニング装置を備えた乗物用シートが知られている。このリクライニング装置は、複数の固定位置でシートバックの揺動を規制するロック機構を有する(特許文献1参照)。
【0003】
また、シートバックは、アクチュエータと回転体とを有する揺動機構によってシート前後方向に揺動する。回転体は、当接部によってバックフレームをシート前方又はシート後方に押すように回転することで、シートバックを電動で揺動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-215995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のロック機構は、制御部によるロック解除に加えて、マニュアル操作でもロック解除が可能である。例えば、手動でロック解除した後、さらに手動でシートバックを揺動させることができる。
【0006】
また、上記揺動機構は、シートバックを搖動させている際に、ユーザの操作や外部の条件等によってシートバックの揺動がキャンセルされると、アクチュエータによる回転体の回転を停止させる。
【0007】
したがって、揺動機構による揺動がキャンセルされた後に、ユーザが手動でシートバックを揺動させると、停止した回転体の当接部にシートバックが当接する。そのため、当接部によってシートバックの揺動が規制され、シートバックを所望の位置に揺動させることができない。
【0008】
本開示の一局面は、電動によるシートバックの搖動がキャンセルされた後でも、手動でシートバックを揺動できる姿勢制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートクッション(2)に対してシート前後方向に揺動可能なシートバック(3)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(5)と、第1固定位置と、第1固定位置よりもシート後方の第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、バックフレーム(5)のシート前後方向の揺動を規制するロック機構(6)と、バックフレーム(5)をシート前方に押すことでバックフレーム(5)をシート前方に揺動させる第1当接部(71A)と、バックフレーム(5)をシート後方に押すことでバックフレーム(5)をシート後方に揺動させる第2当接部(71B)とを有する回転体(71)と、回転体(71)を回転させる駆動部(72)とを有する揺動機構(7)と、を備えるシート本体(1)の姿勢を制御する姿勢制御システム(10A)である。
【0010】
また、姿勢制御システム(10A)は、揺動機構(7)を制御する制御部(8)を備える。制御部(8)は、バックフレーム(5)の揺動を規制しない待機位置にある回転体(71)を、第1当接部(71A)がバックフレーム(5)をシート前方に押すように回転させる格納処理と、待機位置にある回転体(71)を、第2当接部(71B)がバックフレーム(5)をシート後方に押すように回転させる復帰処理と、格納処理の実行後又は復帰処理の実行後に、回転体(71)を待機位置まで回転させる第1リセット処理と、格納処理及び復帰処理の少なくとも一方の処理の実行中においてこの処理を中断させるキャンセル入力があった際に、回転体(71)を待機位置まで回転させる第2リセット処理と、を行う。
【0011】
このような構成によれば、格納処理又は復帰処理がキャンセルされた際に、第2リセット処理によって第1当接部(71A)及び第2当接部(71B)がバックフレーム(5)の揺動を規制しない待機位置に戻される。そのため、格納処理又は復帰処理のキャンセル後に手動でのシートバック(3)の揺動操作が可能となる。
【0012】
本開示の一態様では、第2リセット処理は、格納処理の実行中及び復帰処理の実行中の双方において実行されてもよい。このような構成によれば、格納処理及び復帰処理の双方において、キャンセル後の手動でのシートバック(3)の揺動が可能であるため、ユーザの利便性が向上する。
【0013】
本開示の一態様では、第2リセット処理において回転体(71)を回転させる駆動部(72)の出力は、第1リセット処理において回転体(71)を回転させる駆動部(72)の出力よりも大きくてもよい。このような構成によれば、格納処理又は復帰処理後のリセット処理における駆動音を抑えつつ、格納処理又は復帰処理がキャンセルされたときのリセット処理を素早く行うことができる。そのため、キャンセル後、手動によるシートバック(3)の揺動が可能となるまでの時間を短縮できる。
【0014】
本開示の別の態様は、シート本体(1)と、上記姿勢制御システム(10A)とを備える乗物用シート(10B)である。
このような構成によれば、格納処理又は復帰処理のキャンセル後に手動でのシートバック(3)の揺動操作が可能となる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1A図1B及び図1Cは、実施形態における乗物用シートを示す模式的な構成図である。
図2図2は、図1の乗物用シートのバックフレームと、ロック機構と、揺動機構とを示す模式的な斜視図である。
図3図3Aは、ロック機構のスタンバイ状態を示す模式的な側面図であり、図3Bは、ロック機構の第1ロック状態を示す模式的な側面図であり、図3Cは、ロック機構の解除状態を示す模式的な側面図であり、図3Dは、ロック機構の第2ロック状態を示す模式的な側面図である。
図4図4は、揺動機構の模式的な分解斜視図である。
図5図5A図5B図5C及び図5Dは、バックフレームの被当接部と回転体との位置関係を示す模式図である。
図6図6は、制御部が実行する格納処理及びリセット処理を概略的に示すフロー図である。
図7図7は、制御部が実行する復帰処理及びリセット処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1B,1Cに示す乗物用シート10Bは、シート本体1と、姿勢制御システム10Aとを備える。
【0018】
本実施形態の乗物用シート10B(つまりシート本体1)は、車両の運転席、助手席、又は後部座席のシートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート10B(つまりシート本体1)を車両に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、車両の左右方向に一致し、シート前方は、車両の前方に一致する。
【0019】
<シート本体>
シート本体1は、シートクッション2と、シートバック3と、クッションフレーム(図示省略)と、バックフレーム5(図2参照)と、ロック機構6と、揺動機構7と備える。
【0020】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位であり、シートクッション2に対してシート前後方向に揺動可能である。
【0021】
クッションフレームは、シートクッション2を支持する。バックフレーム5は、シートバック3を支持する。
バックフレーム5は、図2に示すように、右サイドフレーム5A及び左サイドフレーム5Bと、被当接部5Cと、支持ブラケット5Dとを有する。
【0022】
右サイドフレーム5A及び左サイドフレーム5Bは、上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離間して配置されている。
被当接部5Cは、支持ブラケット5Dを介して、右サイドフレーム5Aの下端部に連結されたピン状の部材である。被当接部5Cの中心軸はシート幅方向と平行である。つまり、被当接部5Cは、シート幅方向に延伸している。また、被当接部5Cは、右サイドフレーム5Aよりもシート前方に配置されている。被当接部5Cは、右サイドフレーム5Aに対し相対的に移動及び回転しない。
【0023】
支持ブラケット5Dは、右サイドフレーム5Aの下端部に固定された板状の部材である。支持ブラケット5Dには、被当接部5Cが固定されている。また、支持ブラケット5Dは、後述する回転体71を回転可能に支持している。
【0024】
シートバック3は、少なくとも、図1Aに示す第1固定位置と、図1Bに示す第2固定位置と、図1Cに示す格納位置との間で揺動可能に構成されている。第2固定位置は、第1固定位置よりも後方に設けられている。格納位置では、シートバック3がシートクッション2と重なるように配置され、シート本体1が折りたたまれる。
【0025】
(ロック機構)
ロック機構6は、第1固定位置と第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、シートバック3のシート前後方向の揺動を規制する。
【0026】
本実施形態では、ロック機構6は、図2に示すように、バックフレーム5の右サイドフレーム5Aの上部に取り付けられている。
ロック機構6は、図3Aに示すように、ベースプレート61と、フック62と、スタンバイプレート63と、解除リンク64とを有する。
【0027】
フック62は、上下方向に揺動可能であり、第1ストライカ11A及び第2ストライカ11Bのいずれかに上方から係合する。第1ストライカ11A及び第2ストライカ11Bは、車両の本体からシートバック3に向かって延伸すると共に、互いにシート前後方向に離間して配置された棒状の部材である。
【0028】
フック62は、第1固定位置において第1ストライカ11Aに係合する(図3B参照)。また、フック62は、第2固定位置において第2ストライカ11Bに係合する(図3D参照)。フック62は、図示しない弾性体によって、各ストライカから離間するように、上方に向かって付勢されている。
【0029】
スタンバイプレート63は、シート前後方向に揺動可能である。スタンバイプレート63は、図示しない弾性体によって、第1ストライカ11Aに前方から押し付けられるように、シート後方に向かって付勢されている。
【0030】
解除リンク64は、フック62の揺動を規制する規制位置(図3B,3D参照)と、規制を解除した解除位置(図3A,3C参照)とに移動可能な部材である。解除リンク64は、図示しないロック操作アクチュエータによって、規制位置と解除位置との間で移動する。
【0031】
図3Aに示されるロック機構6がロックしていないスタンバイ状態では、解除リンク64は解除位置にあり、フック62は上述の付勢力によって第1ストライカ11Aよりも上方に押し上げられている。シートバック3のシート後方への揺動によりベースプレート61がシート後方へ移動した状態において、解除リンク64が規制位置に移動してフック62を下方に押圧することで、フック62が第1ストライカ11Aに係合する。その結果、第1ストライカ11Aがフック62とスタンバイプレート63とに挟持される。つまり、ロック機構6が、シートバック3を第1固定位置に固定する第1ロック状態(図3B参照)に移行する。
【0032】
第1ロック状態から解除リンク64を解除位置に移動させることで、フック62の第1ストライカ11Aへの係合が解除され、ロック機構6が図3Cに示される解除状態となる。解除状態では、シートバック3がシート前後方向に搖動可能である。
【0033】
図3Cの解除状態からシートバック3がさらにシート後方へ揺動した状態において、解除リンク64が規制位置に移動してフック62を下方に押圧することで、フック62が第2ストライカ11Bに係合する。その結果、第2ストライカ11Bがフック62とスタンバイプレート63とに挟持される。つまり、ロック機構6が、シートバック3を第2固定位置に固定する第2ロック状態(図3D参照)に移行する。
【0034】
(揺動機構)
揺動機構7は、図4に示すように、回転体71と、駆動部72と、第1補助ブラケット73と、第2補助ブラケット74とを有する。
【0035】
回転体71は、外周の一部に歯71Cが形成された円盤状の部材である。回転体71は、後述する駆動部72の出力が歯71Cを介して伝達される歯車である。回転体71は、バックフレーム5の支持ブラケット5Dに固定されたピン5Eを中心として軸回転可能に、ピン5Eに取り付けられている。ピン5Eの中心軸(つまり、回転体71の回転軸)は、シート幅方向と平行である。
【0036】
回転体71は、バックフレーム5の被当接部5Cをシート前方に押すことで、バックフレーム5をシート前方に揺動させる第1当接部71Aと、被当接部5Cをシート後方に押すことで、バックフレーム5をシート後方に揺動させる第2当接部71Bとを有する。
【0037】
図5Aに示すように、第1当接部71A及び第2当接部71Bは、それぞれ、回転体71の径方向に突出している。第1当接部71A及び第2当接部71Bは、バックフレーム5の被当接部5Cを回転体71の周方向に沿って挟むように配置されている。
【0038】
第1当接部71Aは、第1固定位置(図5A参照)又は第2固定位置(図5B参照)にあるバックフレーム5をシート前方に揺動させるとき、例えば、バックフレーム5を格納位置に移動させるとき、回転体71の回転によって被当接部5Cに後方から当接する。
【0039】
第2当接部71Bは、図5Cに示すように、バックフレーム5をシート後方に揺動させるとき、例えば、バックフレーム5を格納位置から第1固定位置又は第2固定位置に移動させるとき、回転体71の回転によって被当接部5Cに前方から当接する。第2当接部71Bは、回転体71の回転に伴って、第1当接部71Aと共に移動する。
【0040】
被当接部5Cが第1当接部71A又は第2当接部71Bに押されることによって、バックフレーム5は、バックフレーム5の左サイドフレーム5Bの下部に取り付けられたヒンジ51(図2参照)を軸としてシート前後方向に搖動する。
【0041】
駆動部72は、回転体71を軸回転させる装置である。図4に示すように、駆動部72は、回転アクチュエータ72Aと、ギアボックス72Bとを有する。回転アクチュエータ72Aは、電気式及び空気式のいずれであってもよい。回転アクチュエータ72Aの動力は、回転体71の歯71Cと噛み合ったギアボックス72Bを介して、回転体71に伝達される。
【0042】
本実施形態では、駆動部72は、バックフレーム5の右サイドフレーム5Aの下部(つまり支持ブラケット5D)に、第1補助ブラケット73及び第2補助ブラケット74を介して取り付けられている。第1補助ブラケット73は、支持ブラケット5Dに取り付けられている。駆動部72が取り付けられた第2補助ブラケット74は、回転体71を挟むように、第1補助ブラケット73に取り付けられている。
【0043】
<姿勢制御システム>
姿勢制御システム10Aは、シート本体1の姿勢を制御する。姿勢制御システム10Aは、ロック機構6及び揺動機構7を制御することで、シートバック3を電動で揺動させる制御部8を備える。制御部8は、格納処理と、復帰処理と、第1リセット処理と、第2リセット処理とを少なくとも行う。
【0044】
制御部8は、例えば、マイクロプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるマイクロコンピュータにより構成される。制御部8は、予め記憶されたプログラムを実行することで、ロック機構6及び回転アクチュエータ72Aを制御する。なお、制御部8は、車両に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0045】
格納処理では、制御部8は、シートバック3を第1固定位置又は第2固定位置から、格納位置に揺動させる。格納処理では、制御部8は、待機位置にある回転体71を、第1当接部71Aがバックフレーム5をシート前方に押すように回転させる。
【0046】
回転体71の待機位置は、図5A及び図5Cに示すように、バックフレーム5の揺動を規制しない位置である。つまり、待機位置は、被当接部5Cが第2固定位置から格納位置まで自在に揺動できる位置に設定されている。回転体71が待機位置にあるとき、第1当接部71Aは、第2固定位置にある被当接部5Cよりも後方に位置し、第2当接部71Bは、格納位置にある被当接部5Cよりも下方に位置する。
【0047】
また、図5Dに示すように、シートバック3が第1固定位置にあるときの回転体71の待機位置は、シートバック3が第2固定位置にあるとき(図5A参照)の待機位置と同じである。つまり、シートバック3が第1固定位置にあるとき、待機位置における第1当接部71Aは、被当接部5Cから離間している。
【0048】
制御部8は、シートバック3の格納指令を受けると、ロック機構6を解除状態に切り替える。ロック機構6が解除状態になったことが例えばリミットスイッチによって検出されると、制御部8は、格納処理を実行する。
【0049】
制御部8は、格納処理の実行後(つまり、シートバック3が格納位置まで揺動した後)、第1リセット処理を実行する。第1リセット処理では、制御部8は、回転体71を待機位置まで回転させる。具体的には、格納処理後の第1リセット処理では、回転体71を格納処理とは逆向きに回転させる。
【0050】
格納処理では、第1当接部71Aが被当接部5Cをシート前方に押すことで、第1固定位置又は第2固定位置にあるバックフレーム5が格納位置までシート前方に揺動する。その後、第1リセット処理によって回転体71が回転することで、図5Cに示すように、被当接部5Cは、回転体71の第2当接部71Bに当接又は近接する。
【0051】
復帰処理では、制御部8は、シートバック3を格納位置から、第1固定位置又は第2固定位置に揺動させる。復帰処理では、制御部8は、待機位置にある回転体71を、第2当接部71Bがバックフレーム5をシート後方に押すように回転させる。
【0052】
制御部8は、復帰処理の実行後(つまり、シートバック3が第1固定位置又は第2固定位置まで揺動した後)、上述した第1リセット処理を実行する。具体的には、復帰処理後の第1リセット処理では、回転体71を復帰処理とは逆向きに回転させる。また、制御部8は、シートバック3が第1固定位置又は第2固定位置に到達した時点で、ロック機構6をロック状態に切り替える。
【0053】
第2リセット処理では、制御部8は、格納処理及び復帰処理の少なくとも一方の処理の実行中においてこの処理を中断させるキャンセル入力があった際に、回転体71を待機位置まで回転させる。第2リセット処理は、格納処理の実行中及び復帰処理の実行中の双方において実行される。
【0054】
キャンセル入力は、例えば、ユーザによる停止スイッチの操作、駆動部72の作動エラーの検知等によって発生する。駆動部72の作動エラーとしては、例えば、揺動中のシートバック3が障害物に当接し、回転アクチュエータ72Aのトルクが過大となった状態が想定される。
【0055】
第2リセット処理によって、回転体71は、格納処理又は復帰処理における通常の(つまりキャンセル入力前の)回転方向とは逆方向に回転する。これにより、回転体71は、第1当接部71A及び第2当接部71Bを被当接部5Cから離間させつつ、待機位置に戻る。
【0056】
第2リセット処理後の被当接部5Cは、手動によるシートバック3の揺動、又は制御部8による格納処理あるいは復帰処理によって、格納位置、第1固定位置、又は第2固定位置に移動される。また、キャンセル入力時のシートバック3の位置によっては、第2リセット処理と並行して、シートバック3が自重によって格納位置又は第2固定位置に移動する。
【0057】
第2リセット処理において回転体71を待機位置に向けて回転させる駆動部72の出力は、第1リセット処理において回転体71を待機位置に向けて回転させる駆動部72の出力よりも大きい。
【0058】
第1リセット処理は、キャンセル入力が発生していない通常動作時に実行されるため、駆動音を低減するために駆動部72の出力が抑えられる。一方、第2リセット処理では、キャンセル入力後、すぐに手動でシートバック3を揺動できるように、駆動音の低減よりも回転体71の高速回転を優先し、駆動部72の出力が大きくされる。
【0059】
[1-2.処理]
以下、図6及び図7のフロー図を参照しつつ、制御部8が実行する処理について説明する。
【0060】
図6は、シートバック3を格納する時のフロー図である。このフローでは、制御部8は、まず、格納スイッチがオンか判定する(ステップS110)。格納スイッチがオフの場合(S110:NO)、制御部8は、処理を終了する。
【0061】
一方、格納スイッチがオンの場合(S110:YES)、制御部8は、ロック機構6を解除状態とする(ステップS120)。ロックの解除後、制御部8は、第1当接部71Aがシート前方に動く向きに回転体71を回転させ、シートバック3を格納位置に向けて揺動させる(ステップS130)。
【0062】
制御部8は、S130による回転体71の回転中にキャンセル入力があるか判定する(ステップS140)。キャンセル入力がない場合(S140:NO)、制御部8は、続けてシートバック3が格納位置に到達したか判定する(ステップS150)。シートバック3が格納位置に到達したか否かは、例えば、シートバック3を格納位置にロックする機構に設けられたリミットスイッチによって検出される。
【0063】
シートバック3が格納位置に到達していない場合(S150:NO)、制御部8は、S130及びS140を繰り返し、回転体71の回転を継続する。シートバック3が格納位置に到達した場合(S150:YES)、制御部8は、第1当接部71Aがシート後方に動く向きに回転体71を第1速度で回転させる(ステップS160)。
【0064】
続いて、制御部8は、回転体71が待機位置に到達したか判定する(ステップS170)。回転体71が待機位置に到達していない場合(S170:NO)、制御部8は、S160を繰り返し、回転体71の回転を継続する。回転体71が待機位置に到達した場合(S170:YES)、制御部8は、回転体71の回転を停止させ(ステップS200)、処理を終了する。
【0065】
S130による回転体71の回転中にキャンセル入力があった場合(S140:YES)、制御部8は、第1当接部71Aがシート後方に動く向きに回転体71を、第1速度よりも大きい第2速度で回転させる(ステップS180)。
【0066】
続いて、制御部8は、回転体71が待機位置に到達したか判定する(ステップS190)。回転体71が待機位置に到達していない場合(S190:NO)、制御部8は、S180を繰り返し、回転体71の回転を継続する。回転体71が待機位置に到達した場合(S190:YES)、制御部8は、回転体71の回転を停止させ(ステップS200)、処理を終了する。
【0067】
なお、本フローにおいて、S130、S140及びS150は、格納処理を構成している。S160、S170及びS200は、第1リセット処理を構成している。S180、S190及びS200は、第2リセット処理を構成している。
【0068】
図7は、シートバック3を格納状態から復帰させる時のフロー図である。このフローでは、制御部8は、まず、復帰スイッチがオンか判定する(ステップS210)。復帰スイッチがオフの場合(S210:NO)、制御部8は、処理を終了する。
【0069】
一方、復帰スイッチがオンの場合(S210:YES)、制御部8は、第2当接部71Bがシート後方に動く向きに回転体71を回転させ、シートバック3を第1固定位置又は第2固定位置に向けて揺動させる(ステップS220)。
【0070】
制御部8は、S220による回転体71の回転中にキャンセル入力があるか判定する(ステップS230)。キャンセル入力がない場合(S230:NO)、制御部8は、続けてシートバック3が第1固定位置又は第2固定位置に復帰したか判定する(ステップS240)。シートバック3が復帰したか否かは、例えば、ロック機構6に設けられたリミットスイッチによって検出される。
【0071】
シートバック3が復帰していない場合(S240:NO)、制御部8は、S220及びS230を繰り返し、回転体71の回転を継続する。シートバック3が復帰した場合(S240:YES)、制御部8は、第2当接部71Bがシート前方に動く向きに回転体71を第1速度で回転させる(ステップS250)。なお、本フローの第1速度は、図6のフローの第1速度と同じである必要はない。
【0072】
続いて、制御部8は、回転体71が待機位置に到達したか判定する(ステップS260)。回転体71が待機位置に到達していない場合(S260:NO)、制御部8は、S250を繰り返し、回転体71の回転を継続する。回転体71が待機位置に到達した場合(S260:YES)、制御部8は、回転体71の回転を停止させ(ステップS290)、処理を終了する。
【0073】
S220による回転体71の回転中にキャンセル入力があった場合(S230:YES)、制御部8は、第2当接部71Bがシート前方に動く向きに回転体71を、第1速度よりも大きい第2速度で回転させる(ステップS270)。なお、本フローの第2速度は、図6のフローの第2速度と同じである必要はない。
【0074】
続いて、制御部8は、回転体71が待機位置に到達したか判定する(ステップS280)。回転体71が待機位置に到達していない場合(S280:NO)、制御部8は、S270を繰り返し、回転体71の回転を継続する。回転体71が待機位置に到達した場合(S280:YES)、制御部8は、回転体71の回転を停止させ(ステップS290)、処理を終了する。
【0075】
なお、本フローにおいて、S220、S230及びS240は、復帰処理を構成している。S250、S260及びS290は、第1リセット処理を構成している。S270、S280及びS290は、第2リセット処理を構成している。
【0076】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)格納処理又は復帰処理がキャンセルされた際に、第2リセット処理によって第1当接部71A及び第2当接部71Bがバックフレーム5の揺動を規制しない待機位置に戻される。そのため、格納処理又は復帰処理のキャンセル後に手動でのシートバック3の揺動操作が可能となる。
【0077】
(1b)第2リセット処理が格納処理の実行中及び復帰処理の実行中の双方において実行されるため、格納処理及び復帰処理の双方において、キャンセル後の手動でのシートバック3の揺動が可能である。そのため、ユーザの利便性が向上する。
【0078】
(1c)第2リセット処理における駆動部72の出力が第1リセット処理における駆動部72の出力よりも大きくされることで、格納処理又は復帰処理後のリセット処理における駆動音を抑えつつ、格納処理又は復帰処理がキャンセルされたときのリセット処理を素早く行うことができる。そのため、キャンセル後、手動によるシートバック3の揺動が可能となるまでの時間を短縮できる。
【0079】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0080】
(2a)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、ロック機構6の構成は一例である。ロック機構6は、第1固定位置と第2固定位置とでシートバック3の揺動を規制できれば、上述の構成に限定されない。
【0081】
また、ロック機構6は、3つ以上の固定位置においてシートバック3をロック可能であってもよい。例えば、第1固定位置よりもシート前方、第2固定位置よりもシート後方、又は第1固定位置と第2固定位置との間に第3固定位置が設けられてもよい。
【0082】
(2b)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、回転体71の形状は一例である。回転体71は、必ずしも歯71Cを有する円盤状でなくてもよい。また、第1当接部71A及び第2当接部71Bは、バックフレーム5のうち被当接部5C以外の部分を押すように構成されてもよい。
【0083】
(2c)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、第2リセット処理における駆動部72の出力は、必ずしも第1リセット処理における駆動部72の出力よりも大きくされなくてもよい。
【0084】
(2d)上記実施形態の姿勢制御システム10A及び乗物用シート10Bは、乗用車以外の自動車や、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物のシートに対しても使用することができる。
【0085】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0086】
1…シート本体、2…シートクッション、3…シートバック、5…バックフレーム、
5A…右サイドフレーム、5B…左サイドフレーム、5C…被当接部、
5D…支持ブラケット、5E…ピン、6…ロック機構、7…揺動機構、8…制御部、
10A…姿勢制御システム、10B…乗物用シート、11A,11B…ストライカ、
51…ヒンジ、61…ベースプレート、62…フック、63…スタンバイプレート、
64…解除リンク、71…回転体、71A…第1当接部、71B…第2当接部、
71C…歯、72…駆動部、72A…回転アクチュエータ、72B…ギアボックス、
73…第1補助ブラケット、74…第2補助ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7