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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】姿勢制御システム及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20221215BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/64
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115537
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000919
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜生 春樹
(72)【発明者】
【氏名】小牧 慎一郎
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240554(JP,A)
【文献】特開2002-047843(JP,A)
【文献】特開2013-001221(JP,A)
【文献】特開2001-001816(JP,A)
【文献】特開2006-335311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに対してシート前後方向に揺動可能なシートバックと、
前記シートバックを支持するバックフレームと、
第1固定位置と、前記第1固定位置よりもシート後方の第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、前記バックフレームのシート前後方向の揺動を規制するロック機構と、
前記バックフレームをシート前方に押すことで前記バックフレームをシート前方に揺動させる当接部を有する回転体と、前記回転体を回転させる駆動部とを有する揺動機構と、
前記ロック機構を前記バックフレームの揺動を規制するロック状態から、前記バックフレームの揺動を規制しない解除状態に変位させるロック操作アクチュエータと、
を備えるシート本体の姿勢を制御する姿勢制御システムであって、
前記揺動機構及び前記ロック操作アクチュエータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記当接部が前記バックフレームをシート前方に押すように前記回転体を回転させる前方揺動処理を行い、
前記前方揺動処理において、前記制御部は、前記回転体の回転と並行して前記ロック操作アクチュエータを駆動させると共に、前記ロック機構が前記解除状態に変位するよりも先に、又は前記解除状態に変位するのと同時に、前記当接部を前記バックフレームに当接させる、姿勢制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の姿勢制御システムであって、
前記前方揺動処理において、前記制御部は、前記ロック機構が前記解除状態に変位するよりも先に、前記当接部を前記バックフレームに当接させる、姿勢制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の姿勢制御システムであって、
前記ロック機構は、前記ロック操作アクチュエータの駆動によって前記解除状態が維持されると共に、前記ロック操作アクチュエータの停止によって前記解除状態から前記ロック状態に変位し、
前記前方揺動処理において、前記制御部は、前記当接部が前記バックフレームに当接した時点で前記回転体の回転を停止させると共に、前記ロック機構が前記解除状態に変位した後、前記ロック操作アクチュエータを駆動させたまま、前記当接部が前記バックフレームをシート前方に押すように前記回転体を再回転させる、姿勢制御システム。
【請求項4】
前記シート本体と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の姿勢制御システムと、
を備える乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、姿勢制御システム及び乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの角度を多段階的に調整するリクライニング装置を備えた乗物用シートが知られている。このリクライニング装置は、複数の固定位置でシートバックの揺動を規制するロック機構を有する(特許文献1参照)。
【0003】
また、シートバックは、アクチュエータと回転体とを有する揺動機構によってシート前後方向に揺動する。回転体は、当接部によってバックフレームをシート前方又はシート後方に押すように回転することで、シートバックを電動で揺動させる。
【0004】
また、回転体は、ロック機構と共に制御部によって制御される。制御部は、ロック機構のロックを解除した上で、回転体を回転させることで、シートバックをシート前方に倒し、格納状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-215995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のロック機構は、制御部によるロック解除に加えて、マニュアル操作でもロック解除が可能である。例えば、手動でロック解除した後、さらに手動でシートバックを揺動させることができる。
【0007】
このようなマニュアル操作によってシートバックが現在よりも前方の固定位置まで揺動されると、シートバックと回転体の当接部とが離間し、当接部がシートバックよりも後方に残された離間状態でロック機構がロックされる。また、電動でシートバックを揺動させた場合でも、シートバックの位置によっては当接部とシートバックとが離間した状態になり得る。
【0008】
このような離間状態において、シートバックを揺動機構によって前方に揺動させるためにロックを解除すると、シートバックが自重によって当接部と当接する位置まで後方に倒れるように揺動する。
【0009】
これに対し、回転体を回転させて当接部をシートバックに当接させた後、ロック機構を解除することで、シートバックの後方への揺動が抑制される。しかし、この場合、シートバックの前方への揺動を受け付けてから、実際にシートバックの搖動が開始されるまでの時間が長くなる。
【0010】
本開示の一局面は、多段階リクライニング式のシートバックにおいて、シートバックの後方への揺動を抑制しつつ、シートバックの前方への揺動を速やかに実行できる姿勢制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートクッション(2)に対してシート前後方向に揺動可能なシートバック(3)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(5)と、第1固定位置と、第1固定位置よりもシート後方の第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、バックフレーム(5)のシート前後方向の揺動を規制するロック機構(6)と、バックフレーム(5)をシート前方に押すことでバックフレーム(5)をシート前方に揺動させる当接部(71A)を有する回転体(71)と、回転体(71)を回転させる駆動部(72)とを有する揺動機構(7)と、ロック機構(6)をバックフレーム(5)の揺動を規制するロック状態から、バックフレーム(5)の揺動を規制しない解除状態に変位させるロック操作アクチュエータ(8)と、を備えるシート本体(1)の姿勢を制御する姿勢制御システム(10A)である。
【0012】
姿勢制御システム(10A)は、揺動機構(7)及びロック操作アクチュエータ(8)を制御する制御部(9)を備える。制御部(9)は、当接部(71A)がバックフレーム(5)をシート前方に押すように回転体(71)を回転させる前方揺動処理を行う。
【0013】
また、前方揺動処理において、制御部(9)は、回転体(71)の回転と並行してロック操作アクチュエータ(8)を駆動させると共に、ロック機構(6)が解除状態に変位するよりも先に、又は解除状態に変位するのと同時に、当接部(71A)をバックフレーム(5)に当接させる。
【0014】
このような構成によれば、前方揺動処理において、ロック機構(6)によるロックの解除と当接部(71A)のバックフレーム(5)への押し当てとが同時に行われるので、シートバック(3)の前方への揺動が速やかに実行できる。また、ロック機構(6)のロックが解除される前か、又は解除と同時に、当接部(71A)がバックフレーム(5)に当接するように回転体(71)が回転されるので、シートバック(3)の後方への揺動も抑制される。
【0015】
本開示の一態様では、前方揺動処理において、制御部(9)は、ロック機構(6)が解除状態に変位するよりも先に、当接部(71A)をバックフレーム(5)に当接させてもよい。このような構成によれば、シートバック(3)の後方への揺動がより確実に抑制される。
【0016】
本開示の一態様では、ロック機構(6)は、ロック操作アクチュエータ(8)の駆動によって解除状態が維持されると共に、ロック操作アクチュエータ(8)の停止によって解除状態からロック状態に変位してもよい。前方揺動処理において、制御部(9)は、当接部(71A)がバックフレーム(5)に当接した時点で回転体(71)の回転を停止させると共に、ロック機構(6)が解除状態に変位した後、ロック操作アクチュエータ(8)を駆動させたまま、当接部(71A)がバックフレーム(5)をシート前方に押すように回転体(71)を再回転させてもよい。このような構成によれば、ロック機構(6)の構成を簡素化しつつ、当接部(71A)がバックフレーム(5)を押し出す前にロック機構(6)がロック状態に戻ることが避けられる。
【0017】
本開示の別の態様は、シート本体(1)と、上記姿勢制御システム(10A)とを備える乗物用シート(10B)である。
このような構成によれば、シートバック(3)の後方への揺動を抑制しつつ、シートバック(3)の前方への揺動を速やかに実行できる。
【0018】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A図1B及び図1Cは、実施形態における乗物用シートを示す模式的な構成図である。
図2図2は、図1の乗物用シートのバックフレームと、ロック機構と、揺動機構とを示す模式的な斜視図である。
図3図3Aは、ロック機構のスタンバイ状態を示す模式的な側面図であり、図3Bは、ロック機構の第1ロック状態を示す模式的な側面図であり、図3Cは、ロック機構の解除状態を示す模式的な側面図であり、図3Dは、ロック機構の第2ロック状態を示す模式的な側面図である。
図4図4は、揺動機構の模式的な分解斜視図である。
図5図5A図5B図5C及び図5Dは、バックフレームの被当接部と回転体との位置関係を示す模式図である。
図6図6は、制御部による制御を示すタイムチャートである。
図7図7は、制御部が実行する前方揺動処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1B,1Cに示す乗物用シート10Bは、シート本体1と、姿勢制御システム10Aとを備える。
【0021】
本実施形態の乗物用シート10B(つまりシート本体1)は、車両の運転席、助手席、又は後部座席のシートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート10B(つまりシート本体1)を車両に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、車両の左右方向に一致し、シート前方は、車両の前方に一致する。
【0022】
<シート本体>
シート本体1は、シートクッション2と、シートバック3と、クッションフレーム(図示省略)と、バックフレーム5(図2参照)と、ロック機構6と、揺動機構7と、ロック操作アクチュエータ8と備える。
【0023】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位であり、シートクッション2に対してシート前後方向に揺動可能である。
【0024】
クッションフレームは、シートクッション2を支持する。バックフレーム5は、シートバック3を支持する。
バックフレーム5は、図2に示すように、右サイドフレーム5A及び左サイドフレーム5Bと、被当接部5Cと、支持ブラケット5Dとを有する。
【0025】
右サイドフレーム5A及び左サイドフレーム5Bは、上下方向に延伸すると共に、シート幅方向に互いに離間して配置されている。
被当接部5Cは、支持ブラケット5Dを介して、右サイドフレーム5Aの下端部に連結されたピン状の部材である。被当接部5Cの中心軸はシート幅方向と平行である。つまり、被当接部5Cは、シート幅方向に延伸している。また、被当接部5Cは、右サイドフレーム5Aよりもシート前方に配置されている。被当接部5Cは、右サイドフレーム5Aに対し相対的に移動及び回転しない。
【0026】
支持ブラケット5Dは、右サイドフレーム5Aの下端部に固定された板状の部材である。支持ブラケット5Dには、被当接部5Cが固定されている。また、支持ブラケット5Dは、後述する回転体71を回転可能に支持している。
【0027】
シートバック3は、少なくとも、図1Aに示す第1固定位置と、図1Bに示す第2固定位置と、図1Cに示す格納位置との間で揺動可能に構成されている。第2固定位置は、第1固定位置よりも後方に設けられている。格納位置では、シートバック3がシートクッション2と重なるように配置され、シート本体1が折りたたまれる。
【0028】
(ロック機構)
ロック機構6は、第1固定位置と第2固定位置とを少なくとも含む複数の固定位置において、シートバック3のシート前後方向の揺動を規制する。
【0029】
本実施形態では、ロック機構6は、図2に示すように、バックフレーム5の右サイドフレーム5Aの上部に取り付けられている。
ロック機構6は、図3Aに示すように、ベースプレート61と、フック62と、スタンバイプレート63と、解除リンク64とを有する。
【0030】
フック62は、上下方向に揺動可能であり、第1ストライカ11A及び第2ストライカ11Bのいずれかに上方から係合する。第1ストライカ11A及び第2ストライカ11Bは、車両の本体からシートバック3に向かって延伸すると共に、互いにシート前後方向に離間して配置された棒状の部材である。
【0031】
フック62は、第1固定位置において第1ストライカ11Aに係合する(図3B参照)。また、フック62は、第2固定位置において第2ストライカ11Bに係合する(図3D参照)。フック62は、図示しない弾性体によって、各ストライカから離間するように、上方に向かって付勢されている。
【0032】
スタンバイプレート63は、シート前後方向に揺動可能である。スタンバイプレート63は、図示しない弾性体によって、第1ストライカ11Aに前方から押し付けられるように、シート後方に向かって付勢されている。
【0033】
解除リンク64は、フック62の揺動を規制する規制位置(図3B,3D参照)と、規制を解除した解除位置(図3A,3C参照)とに移動可能な部材である。解除リンク64は、ロック操作アクチュエータ8によって規制位置と解除位置との間で移動する。
【0034】
図3Aに示されるロック機構6がロックしていないスタンバイ状態では、解除リンク64は解除位置にあり、フック62は上述の付勢力によって第1ストライカ11Aよりも上方に押し上げられている。シートバック3のシート後方への揺動によりベースプレート61がシート後方へ移動した状態において、解除リンク64が規制位置に移動してフック62を下方に押圧することで、フック62が第1ストライカ11Aに係合する。その結果、第1ストライカ11Aがフック62とスタンバイプレート63とに挟持される。つまり、ロック機構6が、シートバック3を第1固定位置に固定する第1ロック状態(図3B参照)に移行する。
【0035】
第1ロック状態から解除リンク64を解除位置に移動させることで、フック62の第1ストライカ11Aへの係合が解除され、ロック機構6が図3Cに示される解除状態となる。解除状態では、シートバック3がシート前後方向に搖動可能である。
【0036】
図3Cの解除状態からシートバック3がさらにシート後方へ揺動した状態において、解除リンク64が規制位置に移動してフック62を下方に押圧することで、フック62が第2ストライカ11Bに係合する。その結果、第2ストライカ11Bがフック62とスタンバイプレート63とに挟持される。つまり、ロック機構6が、シートバック3を第2固定位置に固定する第2ロック状態(図3D参照)に移行する。
【0037】
ロック機構6は、後述するロック操作アクチュエータ8の駆動によって解除状態が維持されると共に、ロック操作アクチュエータ8の停止によって解除状態から第1ロック状態又は第2ロック状態に変位する。
【0038】
(揺動機構)
揺動機構7は、図4に示すように、回転体71と、駆動部72と、第1補助ブラケット73と、第2補助ブラケット74とを有する。
【0039】
回転体71は、外周の一部に歯71Cが形成された円盤状の部材である。回転体71は、後述する駆動部72の出力が歯71Cを介して伝達される歯車である。回転体71は、バックフレーム5の支持ブラケット5Dに固定されたピン5Eを中心として軸回転可能に、ピン5Eに取り付けられている。ピン5Eの中心軸(つまり、回転体71の回転軸)は、シート幅方向と平行である。
【0040】
回転体71は、バックフレーム5の被当接部5Cをシート前方に押すことで、バックフレーム5をシート前方に揺動させる第1当接部71Aと、被当接部5Cをシート後方に押すことで、バックフレーム5をシート後方に揺動させる第2当接部71Bとを有する。
【0041】
図5Aに示すように、第1当接部71A及び第2当接部71Bは、それぞれ、回転体71の径方向に突出している。第1当接部71A及び第2当接部71Bは、バックフレーム5の被当接部5Cを回転体71の周方向に沿って挟むように配置されている。
【0042】
第1当接部71Aは、第1固定位置(図5A参照)又は第2固定位置(図5B参照)にあるバックフレーム5をシート前方に揺動させるとき、例えば、バックフレーム5を格納位置に移動させるとき、回転体71の回転によって被当接部5Cに後方から当接する。
【0043】
第2当接部71Bは、図5Cに示すように、バックフレーム5をシート後方に揺動させるとき、例えば、バックフレーム5を格納位置から第1固定位置又は第2固定位置に移動させるとき、回転体71の回転によって被当接部5Cに前方から当接する。第2当接部71Bは、回転体71の回転に伴って、第1当接部71Aと共に移動する。
【0044】
被当接部5Cが第1当接部71A又は第2当接部71Bに押されることによって、バックフレーム5は、バックフレーム5の左サイドフレーム5Bの下部に取り付けられたヒンジ51(図2参照)を軸としてシート前後方向に搖動する。
【0045】
駆動部72は、回転体71を軸回転させる装置である。図4に示すように、駆動部72は、回転アクチュエータ72Aと、ギアボックス72Bとを有する。回転アクチュエータ72Aは、電気式及び空気式のいずれであってもよい。回転アクチュエータ72Aの動力は、回転体71の歯71Cと噛み合ったギアボックス72Bを介して、回転体71に伝達される。
【0046】
本実施形態では、駆動部72は、バックフレーム5の右サイドフレーム5Aの下部(つまり支持ブラケット5D)に、第1補助ブラケット73及び第2補助ブラケット74を介して取り付けられている。第1補助ブラケット73は、支持ブラケット5Dに取り付けられている。駆動部72が取り付けられた第2補助ブラケット74は、回転体71を挟むように、第1補助ブラケット73に取り付けられている。
【0047】
(ロック操作アクチュエータ)
ロック操作アクチュエータ8(図1A及び図1B参照)は、ロック機構6をバックフレーム5の揺動を規制する第1ロック状態又は第2ロック状態から、バックフレーム5の揺動を規制しない解除状態に変位させる。ロック操作アクチュエータ8は、電気式及び空気式のいずれであってもよい。
【0048】
具体的には、ロック操作アクチュエータ8は、駆動によって、ロック機構6の解除リンク64を規制位置(図3B及び図3D参照)から解除位置(図3C参照)に移動させる。ロック操作アクチュエータ8が駆動している間は、解除リンク64は、解除位置に保持される。ロック操作アクチュエータ8が停止すると、解除リンク64は、付勢力によって規制位置に変位する。
【0049】
<姿勢制御システム>
姿勢制御システム10Aは、シート本体1の姿勢を制御する。姿勢制御システム10Aは、揺動機構7及びロック操作アクチュエータ8を制御することで、シートバック3を電動で揺動させる制御部9を備える。制御部9は、前方揺動処理と、後方揺動処理とを少なくとも行う。
【0050】
制御部9は、例えば、マイクロプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるマイクロコンピュータにより構成される。制御部9は、予め記憶されたプログラムを実行することで、回転アクチュエータ72A及びロック操作アクチュエータ8を制御する。なお、制御部9は、車両に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0051】
前方揺動処理は、シートバック3を第1固定位置又は第2固定位置から格納位置へ揺動する場合、及びシートバック3を第2固定位置から第1固定位置へ揺動する場合に実行される。前方揺動処理では、第1当接部71Aがバックフレーム5(つまり被当接部5C)をシート前方に押すように回転体71を回転させる。
【0052】
前方揺動処理において、制御部9は、回転体71の回転と並行してロック操作アクチュエータ8を駆動させる。つまり、制御部9は、ロック解除のためのロック操作アクチュエータ8の駆動と、バックフレーム5の前方揺動のための駆動部72の駆動とを重ねて実行する。
【0053】
また、前方揺動処理において、制御部9は、ロック機構6が解除状態に変位するよりも先に、第1当接部71Aをバックフレーム5に当接させる。制御部9は、ロック操作アクチュエータ8及び駆動部72それぞれの駆動開始タイミング、駆動時間、出力等の調整により、ロック解除よりも先に第1当接部71Aをバックフレーム5に当接させる。
【0054】
前方揺動処理では、ロック操作アクチュエータ8が駆動部72よりも先に駆動されてもよいが、駆動部72がロック操作アクチュエータ8よりも先に駆動されたほうがよい。これにより、ロックが解除される前に第1当接部71Aをバックフレーム5に当接させることが容易になる。なお、電源電圧によって各アクチュエータの作動速度が変化するため、電源電圧に合わせてアクチュエータの駆動開始タイミングが調整されるとよい。
【0055】
さらに、前方揺動処理において、制御部9は、第1当接部71Aがバックフレーム5に当接した時点で回転体71の回転を停止させる(つまり、駆動部72の出力をゼロにする)。また、制御部9は、ロック機構6が解除状態に変位した後、ロック操作アクチュエータ8を駆動させたまま、第1当接部71Aがバックフレーム5をシート前方に押すように回転体71を再回転させる。
【0056】
なお、バックフレーム5が所定の位置(つまり格納位置又は第1固定位置)に到達した後、制御部9は、次の操作に備えて回転体71を待機位置(図5C又は図5D参照)まで回転させる。
【0057】
以下、図6を用いて制御部9による前方揺動処理を具体的に説明する。図6は、第1固定位置から格納位置までシートバック3を前倒しする場合の前方揺動処理のタイムチャートである。
【0058】
シートバック3(図6中「SEAT」)が第1固定位置S1にある状態で前倒しの実行を指示する入力スイッチ(図6中「SW」)がオンになると、制御部9は、ロック操作アクチュエータ8(図6中「ACT2」)よりも先に、駆動部72の回転アクチュエータ72A(図6中「ACT1」)を第1当接部71Aが前方に移動する向き(FWD)に駆動させる。
【0059】
制御部9は、回転アクチュエータ72Aの駆動開始後、すぐにロック操作アクチュエータ8を駆動させる。これにより、第1当接部71Aの移動と同時に、ロック機構6が解除状態へ向かって変位する。
【0060】
ロック操作アクチュエータ8の駆動開始から、ロック機構6が解除状態に変位するまでには一定の時間(例えば1秒程度)を有する。その間に、回転アクチュエータ72Aによって回転体71が回転され、第1当接部71A(図6中「ABUT」)が待機位置P0から第1位置P1に移動し、バックフレーム5に当接する。
【0061】
第1当接部71Aがバックフレーム5に当接した時点T1で、制御部9は、回転アクチュエータ72Aの駆動を停止させる。その後、ロック機構6が解除状態となった後も、制御部9は、ロック操作アクチュエータ8の駆動を維持する。制御部9は、ロック操作アクチュエータ8の駆動を維持しながら、時点T2において回転アクチュエータ72Aを再駆動し、回転体71を再回転させる。
【0062】
これにより、ロックが解除されたバックフレーム5が、回転体71の第1当接部71Aによってシート前方に押し出される。その結果、シートバック3が格納位置SSに移動する。なお、第1当接部71Aは、第2位置P2まで移動するが、シートバック3は、途中から自重で前方に倒れるため、バックフレーム5は搖動の途中で第1当接部71Aから離間する。
【0063】
なお、制御部9は、シートバック3が格納位置SSに到達後、回転アクチュエータ72AをFWDとは逆向きのBWDに駆動させることで、第1当接部71Aを第2位置P2から待機位置P0に戻す。
【0064】
また、制御部9は、ロック機構6が解除状態となった後、ロック操作アクチュエータ8の出力を2段階で下げる。これにより、ロック操作アクチュエータ8とロック機構6とを連結するワイヤーの急激な移動に伴う異音の発生が低減される。
【0065】
後方揺動処理では、制御部9は、第2当接部71Bがバックフレーム5の被当接部5Cに当接又は近接した状態で、バックフレーム5をシート後方に揺動させる向きに回転体71を回転させる。その後、制御部9は、シートバック3が第1固定位置又は第2固定位置に到達した時点で、ロック機構6をロック状態に切り替える。
【0066】
[1-2.処理]
以下、図7のフロー図を参照しつつ、制御部9が実行する前方揺動処理について説明する。
【0067】
前方揺動処理では、制御部9は、まず、前方揺動スイッチがオンか判定する(ステップS110)。前方揺動スイッチがオフの場合(S110:NO)、制御部9は、処理を終了する。なお、前方揺動スイッチは、シートバック3を格納する場合、又は第2固定位置にあるシートバック3を第1固定位置に前倒しする場合に操作されるスイッチである。
【0068】
一方、前方揺動スイッチがオンの場合(S110:YES)、制御部9は、第1当接部71Aがシート前方に動く向きに回転体71を回転させる(ステップS120)。続けて、制御部9は、ロック操作アクチュエータ8を駆動させる(ステップS130)。
【0069】
ロック操作アクチュエータ8の駆動後、制御部9は、回転体71の回転によって第1当接部71Aがバックフレーム5に当接したか判定し(ステップS140)、第1当接部71Aがバックフレーム5に当接するまで待機する。なお、第1当接部71Aとバックフレーム5との当接は、例えば、回転アクチュエータ72Aのパルス及びトルク、バックフレーム5に取り付けたセンサの出力等によって判定される。
【0070】
第1当接部71Aがバックフレーム5に当接した後、制御部9は、回転体71の回転を停止させる(ステップS150)。回転体71の停止後、制御部9は、ロック操作アクチュエータ8の駆動開始からロック解除時間が経過しているか判定し(ステップS160)、ロック解除時間が経過するまで待機する。なお、ロック解除時間は、ロック状態のロック機構6が、ロック操作アクチュエータ8の駆動によって解除状態に変位するまでに必要な時間である。
【0071】
ロック解除時間が経過後、制御部9は、第1当接部71Aがシート前方に動く向きに回転体71を回転させ、シートバック3をシート前方に向けて揺動させる(ステップS170)。
【0072】
回転体71の回転開始後、制御部9は、シートバック3が目標位置(つまり、格納位置又は第1固定位置)に到達することでシートバック3の揺動が完了したか判定し(ステップS180)、シートバック3の揺動が完了するまで待機する。シートバック3が目標位置に到達したか否かは、例えば、シートバック3を目標位置にロックする機構に設けられたリミットスイッチによって検出される。
【0073】
シートバック3の揺動が完了した後、制御部9は、第1当接部71Aがシート後方に動く向きに回転体71を回転させる(ステップS190)。続いて、制御部9は、回転体71が待機位置に到達したか判定し(ステップS200)、回転体71が待機位置に到達するまで待機する。
【0074】
回転体71が待機位置に到達した後、制御部9は、回転体71の回転を停止し(ステップS210)、前方揺動処理を終了する。
【0075】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)前方揺動処理において、ロック機構6によるロックの解除と第1当接部71Aのバックフレーム5への押し当てとが同時に行われるので、シートバック3の前方への揺動が速やかに実行できる。また、ロック機構6のロックが解除される前に、第1当接部71Aがバックフレーム5に当接するように回転体71が回転されるので、シートバック3の後方への揺動も抑制される。
【0076】
(1b)ロックが解除された後、ロック操作アクチュエータ8を駆動させたまま回転体71を再回転させることで、ロック機構6の構成を簡素化しつつ、第1当接部71Aがバックフレーム5を押し出す前にロック機構6がロック状態に戻ることが避けられる。
【0077】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(2a)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、ロック機構6の構成は一例である。ロック機構6は、第1固定位置と第2固定位置とでシートバック3の揺動を規制できれば、上述の構成に限定されない。
【0079】
また、ロック機構6は、3つ以上の固定位置においてシートバック3をロック可能であってもよい。例えば、第1固定位置よりもシート前方、第2固定位置よりもシート後方、又は第1固定位置と第2固定位置との間に第3固定位置が設けられてもよい。
【0080】
(2b)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、回転体71の形状は一例である。回転体71は、必ずしも歯71Cを有する円盤状でなくてもよい。また、第1当接部71A及び第2当接部71Bは、バックフレーム5のうち被当接部5C以外の部分を押すように構成されてもよい。
【0081】
(2c)上記実施形態の乗物用シート10Bにおいて、前方揺動処理において、制御部9は、ロック機構6が解除状態に変位するのと同時のタイミングで、第1当接部71Aをバックフレーム5に当接させてもよい。
【0082】
(2d)上記実施形態の姿勢制御システム10A及び乗物用シート10Bは、乗用車以外の自動車や、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物のシートに対しても使用することができる。
【0083】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0084】
1…シート本体、2…シートクッション、3…シートバック、5…バックフレーム、
5A…右サイドフレーム、5B…左サイドフレーム、5C…被当接部、
5D…支持ブラケット、5E…ピン、6…ロック機構、7…揺動機構、
8…ロック操作アクチュエータ、9…制御部、10A…姿勢制御システム、
10B…乗物用シート、11A,11B…ストライカ、51…ヒンジ、
61…ベースプレート、62…フック、63…スタンバイプレート、
64…解除リンク、71…回転体、71A…第1当接部、71B…第2当接部、
71C…歯、72…駆動部、72A…回転アクチュエータ、72B…ギアボックス、
73…第1補助ブラケット、74…第2補助ブラケット。
図1
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図7