(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】超音波臨床特徴検出及び関連する装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2019553196
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2018058030
(87)【国際公開番号】W WO2018178212
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】キム,スンス
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ,バラスンダー イヤヴ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/046140(WO,A1)
【文献】特開2016-221264(JP,A)
【文献】米国特許第09589374(US,B1)
【文献】国際公開第2016/193979(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0239959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床状態検出システムであって、当該システムは、
超音波イメージング装置と通信し、且つある期間に亘って被検体を表す一連の超音波画像フレームを受信するように構成される通信装置と、
該通信装置と通信するプロセッサと、含み、
該プロセッサは、
第1の深層学習ネットワークを前記一連の超音波画像フレームの各超音波画像フレームに適用することにより、前記一連の超音波画像フレームにおける空間ドメイン情報を分類して、臨床特性の第1のセットの各臨床特性の確率を含む分類ベクトルを生成し、
第2の深層学習ネットワークを
前記生成した分類ベクトルに適用することにより、前記期間に亘る前記一連の超音波画像フレームに対応する前記分類ベクトルにおける時間ドメイン情報を分類して、臨床特性の第2のセットの各臨床特性の確率を生成し、且つ
前記臨床特性の第2のセットの前記確率に基づいて前記被検体の臨床状態を特定する、ように構成される、
システム。
【請求項2】
前記第1の深層学習ネットワークは畳み込みニューラルネットワークである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記臨床特性の第2のセットの前記確率から最も高い確率を選択することによって、前記臨床状態を特定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記臨床特性の第1のセットは、前記臨床特性の第2のセットと同一である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記臨床特性の第1のセットは、異なるタイプの臨床的特徴に関連付けられ、前記臨床特性の第2のセットは、前記異なるタイプの臨床的特徴のうちの少なくとも1つの特徴の異なる重症度に関連付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記臨床特性の第1のセットは、異なるタイプの臨床的特徴
又は異なる重症度のうちの少なくとも一方の第1のカテゴリー分類に関連付けられ、前記臨床特性の第2のセットは、前記異なるタイプの臨床的特徴
又は前記異なる重症度のうちの少なくとも一方の第2のカテゴリー分類に関連付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記被検体には、肺の少なくとも一部が含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、
又は胸水のうちの少なくとも1つに関連する特徴が含まれる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、
又は胸水のうちの少なくとも1つの重症度に関連する特徴が含まれる、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも前記第1の深層学習ネットワーク又は前記第2の深層学習ネットワークは、
異なる超音波イメージング装置によって取り込まれた前記臨床状態を含む、テスト被検体を表す複数のスキャン形式の超音波画像を提供すること、
前記異なる超音波イメージング装置から独立した共通の次元
又は共通のフォーマットの少なくとも一方に基づいて、前記複数のスキャン形式の超音波画像を複数のスキャン前形式の超音波画像に変換すること、及び
前記臨床状態に関して、前記複数のスキャン前形式の超音波画像の各超音波画像にスコアを割り当てること、により訓練される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記異なる超音波イメージング装置は、線形超音波トランスデューサ装置、曲線超音波トランスデューサ装置、
又はフェーズドアレイ超音波トランスデューサ装置のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサと通信し、且つ前記臨床状態の指標を表示するように構成されたディスプレイをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
臨床状態検出
システムの
作動方法であって、当該
作動方法は、
前記臨床状態検出システムの処理コンポーネントが、ある期間に亘って被検体を表す一連の超音波画像フレームを超音波イメージング装置から受信するステップと、
前記処理コンポーネントが、第1の深層学習ネットワークを前記
受信した一連の超音波画像フレームの各超音波画像フレームに適用することにより、前記一連の超音波画像フレームにおける空間ドメイン情報を分類して、臨床特性の第1のセットの各臨床特性の確率を含む分類ベクトルを生成するステップと、
前記処理コンポーネントが、第2の深層学習ネットワークを
前記生成した分類ベクトルに適用することにより、前記期間に亘る前記一連の超音波画像フレームに対応する前記分類ベクトルにおける時間ドメイン情報を分類して、臨床特性の第2のセットの各臨床特性の確率を生成するステップと、
前記処理コンポーネントが、前記臨床特性の第2のセットに前記確率に基づいて前記被検体の臨床状態を特定するステップと、を含む、
作動方法。
【請求項14】
前記第1の深層学習ネットワークは畳み込みニューラルネットワークである、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項15】
前記特定するステップは、
前記処理コンポーネントが、前記臨床特性の第2のセットの前記確率から最も高い確率を選択するステップ、を含む、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項16】
前記被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ、前記臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、
又は胸水のうちの少なくとも1つに関連する特徴が含まれる、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項17】
前記被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ、前記臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、
又は胸水のうちの少なくとも1つの重症度に関連する特徴が含まれる、請求項13に記載の
作動方法。
【請求項18】
前記臨床状態検出システムのディスプレイが、前記臨床状態の指標を表示するステップをさらに含む、請求項13に記載の
作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2017年3月28日に出願された米国仮出願第62/477,536号の優先権及び利益を主張するものであり、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、超音波イメージングに関し、特に、様々な臨床状態及び/又は疾患の評価のために臨床的特徴を検出するための自動化されたシステム及び方法の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
肺の超音波検査は、肺炎、気胸、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺疾患、及びうっ血性心不全を含む臨床状態の指標を提供することができる。例えば、臨床医又は医師は、患者の超音波画像を取得することにより患者に対して超音波検査を行い、超音波画像から特定した特徴に基づいて患者が特定の臨床状態を有し得るかどうかを判定することができる。肺の超音波画像の特徴の例には、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション(consolidation)、エア・ブロンコグラム(air bronchogram)、及び/又は胸水が含まれ得る。そのような特徴の存在は、特定の肺の症状又は疾患を示す可能性があるが、これらの特徴の欠如は、健康な正常肺を示し得る。経験豊富な超音波ユーザは、取得した超音波画像からこのような肺超音波画像の特徴を容易に特定することができる。しかしながら、経験の無いユーザや経験の浅いユーザは、取得した画像の解釈が困難になる場合がある。そのような臨床評価手順における標準化及び/又は定量化の欠如は、経験豊富なユーザの間でも異なる結果につながる可能性がある。そのため、超音波検査に続いて、X線等の追加検査が必要になることがよくある。
【発明の概要】
【0004】
既存の超音波イメージングは臨床評価及び診断に有用であることが証明されたが、自動化された臨床診断ツールを提供するための改良されたシステム及び技術に対する臨床的必要性が残っている。本開示の実施形態は、自動化された超音波画像ビデオ分類のための深層学習フレームワークを提供する。分類は、臨床評価を支援するために使用できる。分類には、空間的特徴解析のためのフレーム毎の分類と、それに続く時系列ベクトル解析が含まれる。例えば、ビデオには、時間をかけた一連の超音波画像フレームが含まれ得る。フレーム毎の分類は、各超音波画像フレームを臨床特性の第1のセットに関連付けられた複数のカテゴリーのうちの1つにカテゴリー分類する。時系列ベクトル解析は、例えば、フレーム毎の分類出力を解析して、臨床特性の第2のセットに基づいた分類を決定する。臨床特性の第1のセット及び臨床特性の第2のセットは、異なるタイプの疾患又は臨床状態及び/又は異なる重症度を表す特徴を含むことができる。開示される実施形態は、フレーム毎の画像分類のために畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用することができ、且つ時系列ベクトル解析のために機械学習ネットワーク又はモデルを使用することができる。フレーム毎の画像分類及び時系列ベクトル解析から得られた累積又は統合された分類及び解析結果は、特定のタイプの疾患又は特定の疾患の重症度のレベルを示すことができる。開示される実施形態について、肺の状態を特定するための肺の超音波画像特徴分類の文脈で説明しているが、開示される実施形態は、異なるタイプの疾患を特定するために異なる器官(例えば、心臓)の超音波画像に適用することができる。
【0005】
一実施形態では、臨床状態検出システムは、超音波イメージング装置と通信し、且つある期間に亘って被検体(subject body)を表す一連の超音波画像フレームを受信するように構成された通信装置と;通信装置と通信するプロセッサと;を含み、プロセッサは、第1の予測ネットワークを一連の超音波画像フレームに適用することにより、一連の超音波画像フレームを臨床特性の第1のセットに分類して、臨床特性の第1のセットを表す分類ベクトルのセットを生成し;且つ第2の予測ネットワークを分類ベクトルのセットに適用することにより、被検体の臨床状態を特定する;ように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、第1の予測ネットワークを一連の超音波画像フレームの各超音波画像フレームに適用することにより、一連の超音波画像フレームを分類して、分類ベクトルのセットのうちの1つの分類ベクトルを生成するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、第1の予測ネットワークは畳み込みニューラルネットワークであり、各分類ベクトルには、臨床特性の第1のセットに関して対応する超音波画像フレームの複数のスコアが含まれる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、第2の予測ネットワークが、臨床特性の第2のセットに関して分類ベクトルのセットのための複数のスコアを生成すること;及び複数のスコアから最も高いスコアを選択すること;により、臨床状態を特定するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、臨床特性の第1のセットは、臨床特性の第2のセットと同一である。いくつかの実施形態では、臨床特性の第1のセットは、異なるタイプの臨床的特徴に関連付けられ、臨床特性の第2のセットは、異なるタイプの臨床的特徴のうちの少なくとも1つの特徴の異なる重症度に関連付けられる。いくつかの実施形態では、臨床特性の第1のセットは、異なるタイプの臨床的特徴及び異なる重症度のうちの少なくとも一方の第1のカテゴリー分類に関連付けられ、臨床特性の第2のセットは、異なるタイプの臨床的特徴及び異なる重症度のうちの少なくとも一方の第2のカテゴリー分類に関連付けられる。いくつかの実施形態では、被検体には、肺の少なくとも一部が含まれる。いくつかの実施形態では、臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム(bronchogram)、及び胸水のうちの少なくとも1つに関連する特徴が含まれる。いくつかの実施形態では、臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び胸水のうちの少なくとも1つの重症度に関連する特徴が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも第1の予測ネットワーク又は第2の予測ネットワークは、異なる超音波イメージング装置によって取り込まれた臨床状態を含む、テスト被検体(test subject bodies)を表す複数のスキャン形式の超音波画像を提供すること;異なる超音波イメージング装置から独立した共通の次元及び共通のフォーマットの少なくとも一方に基づいて、複数のスキャン形式の超音波画像を複数のスキャン前形式の超音波画像に変換すること;及び臨床状態に関して、複数のスキャン前形式の超音波画像の各超音波画像にスコアを割り当てること;により訓練される。いくつかの実施形態では、異なる超音波イメージング装置は、線形超音波トランスデューサ装置、曲線超音波トランスデューサ装置、及びフェーズドアレイ超音波トランスデューサ装置のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサと通信し、且つ臨床状態の指標を表示するように構成されたディスプレイをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、臨床状態検出のための方法は、ある期間に亘って被検体を表す一連の超音波画像フレームを超音波イメージング装置から受信するステップと;第1の予測ネットワークを一連の超音波画像フレームに適用することにより、一連の超音波画像フレームを臨床特性の第1のセットに分類して、臨床特性の第1のセットに関連する分類ベクトルのセットを生成するステップと;第2の予測ネットワークを分類ベクトルのセットに適用することにより、被検体の臨床状態を特定するステップと;を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、分類するステップは、第1の予測ネットワークを一連の超音波画像フレームの各超音波画像フレームに適用して、分類ベクトルのセットのうちの1つの分類ベクトルを生成するステップを含む。いくつかの実施形態では、第1の予測ネットワークは畳み込みニューラルネットワークであり、各分類ベクトルには、臨床特性の第1のセットに関して対応する超音波画像フレームの複数のスコアが含まれる。いくつかの実施形態では、特定するステップは、第2の予測ネットワークが、臨床特性の第2のセットに関して分類ベクトルのセットに対する複数のスコアを生成するステップと;複数のスコアから最も高いスコアを選択するステップと;を含む。いくつかの実施形態では、被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ、臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び胸水のうちの少なくとも1つに関連する特徴が含まれる。いくつかの実施形態では、被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ、臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び胸水のうちの少なくとも1つの重症度に関連する特徴が含まれる。いくつかの実施形態では、この方法は、ディスプレイが、臨床状態の指標を表示するステップをさらに含む。
【0009】
本開示の追加の態様、特徴、及び利点が、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【
図1】本開示の態様による超音波イメージング・システムの概略図である。
【
図2】本開示の態様による超音波画像特徴検出スキームを示す概略図である。
【
図3A】本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。
【
図3B】本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。
【
図3C】本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。
【
図4A】本開示の態様による、正常肺の状態を示す超音波画像である。
【
図4B】本開示の態様による、Bライン・アーチファクトを示す超音波画像フレームである。
【
図4C】本開示の態様による、コンソリデーションを示す超音波画像フレームである。
【
図4D】本開示の態様による、エア・ブロンコグラムを示す超音波画像フレームである。
【
図4E】本開示の態様による、胸水を示す超音波画像フレームを示す図である。
【
図5】本開示の態様による、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の構成を示す概略図である。
【
図6】本開示の態様による、超音波画像特徴検出のための深層学習ネットワークの構成を示す概略図である。
【
図7】本開示の態様による、自動化された超音波画像特徴検出方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の原理の理解を促す目的で、図面に示された実施形態について参照を行い、特定の言語を使用してそれら実施形態を説明する。それにもかかわらず、本開示の範囲に対する限定は意図していないことが理解される。説明する装置、システム、及び方法に対するあらゆる変更及び更なる修正、並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示が関係する当業者に通常想起されるように、本開示の範囲内で完全に企図され且つ含まれる。特に、一実施形態に関して説明する特徴、構成要素、及び/又はステップは、本開示の他の実施形態に関して説明する特徴、構成要素、及び/又はステップと組み合わせることができると十分に企図される。ただし、簡潔にするために、これらの組合せの多数の繰返しについては個別に説明しない。
【0012】
図1は、本開示の態様による超音波イメージング・システム100の概略図である。システム100は、患者の身体の領域又はボリュームをスキャンするために使用される。システム100は、通信インターフェイス又はリンク120を介してホスト130と通信する超音波イメージング・プローブ110を含む。プローブ110は、トランスデューサ112、ビームフォーマ(beamformer)114、処理コンポーネント116、及び通信インターフェイス118を含む。ホスト130は、ディスプレイ132、処理コンポーネント134、及び通信インターフェイス136を含む。
【0013】
トランスデューサ112は、解剖学的対象物105に向けて超音波信号を放射し、対象物105から反射されてトランスデューサ112に戻るエコー信号を受信する。超音波トランスデューサ112は、1つ以上の音響素子又は複数の音響素子を含む、任意の適切な数の音響素子を含むことができる。場合によっては、トランスデューサ112は単一の音響素子を含む。場合によっては、トランスデューサ112は、任意の適切な構成の任意の数の音響素子を有する音響素子のアレイを含むことができる。例えば、トランスデューサ112は、1個の音響素子~1000個の音響素子(例えば2個の音響素子、4個の音響素子、36個の音響素子、64個の音響素子、128個の音響素子、500個の音響素子、812個の音響素子、及び/又はこれより大きい、小さい他の値等を含む)を含むことができる。場合によっては、トランスデューサ112は、線形アレイ、平面アレイ、湾曲アレイ、曲線アレイ、周囲アレイ、環状アレイ等、フェーズドアレイ、マトリックスアレイ、1次元(1D)アレイ、1.x次元アレイ(例えば、1.5Dアレイ)、又は2次元(2D)アレイ等の、任意の適切な構成の任意の数の音響素子を有する音響素子のアレイを含むことができる。音響素子のアレイ(例えば、1つ又は複数の行、1つ又は複数の列、及び/又は1つ又は複数の向き)を均一に又は独立して制御及びアクティブ化することができる。トランスデューサ112は、患者の解剖学的構造の1次元、2次元、及び/又は3次元画像を取得するように構成することができる。いくつかの実施形態では、超音波イメージング素子112は、圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)、容量マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、単結晶、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、PZT複合材料、他の適切なトランスデューサタイプ、及び/又はこれらの組合せを含むことができる。
【0014】
ビームフォーマ114は、トランスデューサ・アレイ112に結合される。ビームフォーマ114は、例えば、超音波信号の送信及び超音波エコー信号の受信のためにトランスデューサ・アレイ112を制御する。ビームフォーマ114は、応答又は受信した超音波エコー信号に基づいて画像信号を処理コンポーネント116に提供する。ビームフォーマ114は、複数の段階のビームフォーミング(beamforming)を含むことができる。ビームフォーミングによって、処理コンポーネント116に結合するための信号線の数を減らすことができる。いくつかの実施形態では、ビームフォーマ114と組み合わされたトランスデューサ・アレイ112は、超音波イメージング・コンポーネントと呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、対象物105には、肺の超音波検査のために患者の肺の少なくとも一部が含まれ得る。他の実施形態では、対象物105には、適切な超音波イメージング検査である、患者の任意の解剖学的構造(例えば、血管、心臓、腎臓、及び/又は肝臓)が含まれ得る。
【0015】
処理コンポーネント116は、ビームフォーマ114に結合される。処理コンポーネント116は、本明細書で説明する動作を行うように構成された中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、コントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)装置、別のハードウェア装置、ファームウェア装置、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。処理コンポーネント134は、コンピュータ装置の組合せ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに関連する1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は他のそのような構成として実装してもよい。処理コンポーネント116は、ビームフォーミングされた画像信号を処理するように構成される。例えば、処理コンポーネント116は、フィルタリング及び/又は直交復調を行って、画像信号を調整することができる。
【0016】
通信インターフェイス118は、処理コンポーネント116に結合される。通信インターフェイス118は、1つ又は複数の送信機、1つ又は複数の受信機、1つ又は複数のトランシーバ、及び/又は、通信信号を送信及び/又は受信する回路を含み得る。通信インターフェイス118は、通信リンク120を介して信号をホスト130に転送するのに適した特定の通信プロトコルを実装するハードウェア・コンポーネント及び/又はソフトウェア・コンポーネントを含むことができる。通信インターフェイス118は、通信装置又は通信インターフェイス・モジュールと呼ぶことができる。
【0017】
通信リンク120は、任意の適切な通信リンクであり得る。例えば、通信リンク120は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)リンク又はイーサネット(登録商標)・リンク等の有線リンクであってもよい。あるいはまた、通信リンク120は、ウルトラワイドバンド(UWB)リンク、IEEE(電気電子技術者協会)802.11WiFiリンク、又はブルートゥース(登録商標)・リンク等の無線リンクであってもよい。
【0018】
ホスト130において、通信インターフェイス136は画像信号を受信することができる。通信インターフェイス136は、通信インターフェイス118と実質的に同様であってよい。ホスト130は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、タブレット、又は携帯電話等の任意の適切なコンピュータ及び表示装置であり得る。
【0019】
処理コンポーネント134は、通信インターフェイス136に結合される。処理コンポーネント134は、ソフトウェア・コンポーネントとハードウェア・コンポーネントとの組合せとして実装してもよい。処理コンポーネント134は、本明細書で説明する動作を行うように構成された中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、コントローラ、FPGA装置、別のハードウェア装置、ファームウェア装置、又はこれらの任意の組合せを含み得る。処理コンポーネント134は、コンピュータ装置の組合せ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに関連する1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は他のそのような構成として実装してもよい。処理コンポーネント134は、プローブ110から受信した画像信号から画像データを生成するように構成することができる。処理コンポーネント134は、高度な信号処理及び/又は画像処理技術を画像信号に適用することができる。いくつかの実施形態では、処理コンポーネント134は、画像データから3次元(3D)ボリューム画像を形成することができる。いくつかの実施形態では、処理コンポーネント134は、画像データに対してリアルタイム処理を行って、対象物105の超音波画像のストリーミングビデオを提供することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、処理コンポーネント134は、画像データに対してスキャン形式(scan format)変換を行うことができる。例えば、処理コンポーネント134は、画像データを表示データに補間することができる。画像データは、画像信号を取り込むために使用されるトランスデューサ(例えば、トランスデューサ・アレイ112)又はプローブのタイプに応じて、様々なフォーマットにすることができる。プローブタイプのいくつかの例には、線形、曲線、及びフェーズドアレイが含まれる。線形プローブは、線形アレイ構成で配置されたトランスデューサのアレイを含み得る。曲線プローブは、曲線又は凸構成で配置されたトランスデューサのアレイを含み得る。フェーズドアレイ・プローブは、(例えば、遅延及び位相制御に基づいて)操縦可能な集束ビームを生成できるトランスデューサのアレイを含み得る。プローブ110が線形プローブ(例えば、線形構成で配置されたトランスデューサ・アレイ112)である場合に、画像データはデカルト座標であってもよい。プローブ110が曲線プローブ(例えば、曲線構成で配置されたトランスデューサ・アレイ112)又はフェーズドアレイ・プローブ(例えば、遅延及び位相制御を含むトランスデューサ・アレイ112)である場合に、画像データは極座標であってもよい。処理コンポーネント134は、本明細書でより詳細に説明するように、画像データに対して座標変換を行って、表示用のスキャン形式(scan-formatted)の画像フレームを生成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、処理コンポーネント134は、臨床評価のために画像データ又は画像フレームに対して画像解析を行うことができる。例えば、処理コンポーネント134は、本明細書でより詳細に説明するように、画像データ又は画像フレームに基づいて臨床評価を行うために深層学習ベースの技術を適用することができる。
【0022】
ディスプレイ132は、処理コンポーネント134に結合される。ディスプレイ132は、モニタ又は任意の適切なディスプレイであり得る。ディスプレイ132は、処理コンポーネント134によって処理された超音波画像、画像ビデオ、及び/又は診断結果を表示するように構成される。
【0023】
システム100は、臨床評価のために超音波イメージング特徴検出の様々な段階で使用するように構成することができる。一実施形態では、システム100は、超音波画像を収集して訓練データセットを形成するために使用され得る。例えば、ホスト130は、メモリ138を含むことができ、メモリ138は、キャッシュメモリ(例えば、処理コンポーネント134のキャッシュメモリ)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気抵抗RAM(MRAM)、読取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能な読取り専用メモリ(PROM)、消去可能でプログラム可能な読取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能でプログラム可能な読取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、固体状態メモリ装置、ハードディスクドライブ、固体状態ドライブ、他の形式の揮発性及び不揮発性メモリ、又は異なる種類のメモリの組合せ等の任意の適切なストレージ装置であり得る。メモリ138は、深層学習ベースの訓練のためにスキャン形式の画像フレームを含む画像データセット140を記憶するように構成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、システム100は、臨床的特徴の検出及び評価のために深層学習ネットワークを訓練するために使用され得る。訓練データセット140は、訓練に適した特定のフォーマット、例えばスキャン前形式(pre-scan format)に変換され得る。スキャン前形式のデータセットを使用して、深層学習ネットワークを訓練し、特定の臨床的特徴及び/又は状態に関してプローブ110によって取り込まれた超音波画像又はビデオ内の特徴を分類することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、システム100は、臨床状態を決定するために訓練された深層学習ネットワークが適用され得るライブ超音波検査の臨床設定で使用され得る。学習ベースの技術に基づいて超音波画像から臨床的特徴及び/又は臨床状態を自動的且つ体系的に検出するためのメカニズムについて、本明細書でより詳細に説明する。
【0026】
図2は、本開示の態様による超音波画像特徴検出スキーム200を示す概略図である。スキーム200は、様々な段階の超音波画像特徴検出のためにシステム100によって使用され得る。スキーム200は、深層学習ベースの技術を使用して、超音波画像及び/又はビデオから臨床的特徴を抽出し、臨床評価のために臨床的特徴を分類する。スキーム200には、逆スキャン変換段階210、深層学習訓練段階220、及び臨床応用段階230が含まれる。逆スキャン変換段階210は、異なる超音波プローブ(例えば、線形プローブ、曲線プローブ、及びフェーズドアレイ・プローブ)を使用して取得した超音波画像を、深層学習ネットワークの訓練に適した共通の画像フォーマット及び/又は次元にフォーマット化する。深層学習ネットワーク段階220は、深層学習ネットワークを訓練して、例えば逆スキャン変換段階210によって出力される訓練データを使用して、超音波画像を臨床評価に適した臨床的特徴カテゴリーに分類する。臨床応用段階230は、訓練された深層学習ネットワークを患者から取り込まれたライブ又はリアルタイムの超音波イメージングビデオに適用して、患者の臨床状態を特定する。スキーム200について、
図3A、
図3B、
図3C、
図4A、
図4B、
図4C、
図4D、
図4E、
図5、及び
図6を参照して以下に説明する。
【0027】
逆スキャン変換段階210では、スキャン形式の超音波画像202は、スキャン前形式(pre-scan-formatted)の超音波画像204に変換される。スキャン形式の超音波画像202は、処理コンポーネント134によって生成され且つメモリ138に訓練データセット140として記憶されるスキャン形式の画像に対応し得る。上述したように、超音波画像は、線形プローブ、曲線プローブ、及びフェーズドアレイ・プローブ等の様々なタイプのトランスデューサプローブ(例えば、プローブ110)によって取り込まれ得る。プローブの形状と画像フォーマットの違いにより、超音波画像のサイズ及び/又は画像形状が異なる場合がある。異なるサイズ及び/又は画像形状は、有用又は有意義な臨床情報を伝えない可能性がある。それどころか、画像フォーマットの違いやバリエーションは、臨床的特徴分類のための深層学習ネットワークの訓練に影響を与えたり、バイアスをかけたりする可能性がある。
【0028】
逆スキャン変換は、トランスデューサタイプ、及び/又は、撮像深度及び/又は視野角等の撮像構成に関係なく、様々なタイプのプローブから得られたスキャン形式の画像202を、同じフォーマット又は同じ次元の超音波画像に再フォーマット化する。逆スキャン変換には、臨床分類に重要な画像部分又は領域を含めることができ、訓練に影響を与える可能性のある画像部分又は領域を排除することができる。例えば、肺の超音波では、特定の肺の状態は、超音波画像におけるBライン・アーチファクト、コンソリデーション、胸水、及び/又はブロンコグラム等の特定の臨床的特徴の有無に基づいて決定され、画像のジオメトリの長さ及び/又は面積に基づいて決定されるものではない。
【0029】
図3Aは、本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。超音波画像310は、上述したように線形プローブによって取り込まれ、スキャン形式化される。図示されるように、超音波画像310は、線形プローブが平行な超音波ビームを放出するため、肺の画像を長方形で示す。超音波画像312は、逆スキャン変換後の超音波画像310に対応する。例えば、超音波画像310はスキャン形式の画像202に対応し得、超音波画像312はスキャン前形式の画像204に対応し得る。
【0030】
図3Bは、本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。超音波画像320は、上述したように、曲線プローブによって取り込まれ、スキャン形式化される。図示されるように、超音波画像320は、曲線プローブが超音波ビームを(発散する)異なる角度又は方向で放出するため、肺の画像を扇形又はパイ形で示す。超音波画像322は、逆スキャン変換後の超音波画像320に対応する。例えば、超音波画像320はスキャン形式の画像202に対応し得、超音波画像322はスキャン前形式の画像204に対応し得る。
【0031】
図3Cは、本開示の態様による、逆スキャン変換の前後の患者の肺の超音波画像である。超音波画像330は、上述したように、フェーズドアレイ・プローブによって取り込まれ、スキャン形式化される。図示されるように、超音波画像330は、フェーズドアレイ・プローブが超音波ビームを様々な角度又は方向に集束させるように電子ステアリングを適用するため、肺の画像を扇形又はパイ形で示す。超音波画像332は、逆スキャン変換後の超音波画像330に対応する。例えば、超音波画像330はスキャン形式の画像202に対応し得、超音波画像332はスキャン前形式の画像204に対応し得る。
【0032】
図3A~
図3Cから分かるように、超音波画像312、322、及び332では、画像310、320、及び330からプローブ特有の画像特徴(例えば、パイ形状又は扇形)がそれぞれ除外される。つまり、逆スキャン変換は、スキャン形式の画像をスキャン前形式に戻すように変換する。加えて、逆スキャン変換は、肺の部分を含まない、画像310、320、及び330の暗い部分又は領域を除去する。
【0033】
スキーム200は、逆スキャン変換段階210とともに示されているが、いくつかの実施形態では、逆スキャン変換段階210はオプションであり得る。例えば、ホスト130は、スキャン形式の画像フレームの代わりに又はその画像フレームに加えて、スキャン形式変換前の処理済み画像データをメモリ138に記憶させることができる。換言すれば、ホスト130は、スキャン前形式の超音波画像204をメモリ138に記憶させることができる。こうして、スキャン前形式の超音波画像204は、逆スキャン変換段階210を必要とせずに、スキーム200で使用することができる。
【0034】
深層学習訓練段階220では、スキャン前形式の超音波画像204を使用して、深層学習ネットワーク206を訓練することができる。例えば、スキャン前形式の超音波画像204は、特定の肺の状態を示す様々な可視構造及び/又はアーチファクトを含む肺の画像であり得る。深層学習ネットワーク206は、特定の臨床状態又は疾患を決定するのに有用な特定の画像特徴又はアーチファクトを認識するように訓練することができる。例えば、深層学習ネットワーク206は、スキャン前形式の超音波画像204を複数のカテゴリーの臨床的重要性に分類するように訓練することができる。
図4A~
図4Eは、肺の超音波検査又は評価に役立つ様々な臨床的特徴を示す。
【0035】
図4Aは、本開示の態様による、正常肺の状態を示す超音波画像410である。
図4Bは、本開示の態様による、Bライン・アーチファクトを示す超音波画像420である。超音波画像420には、略水平な複数の白い線422が含まれ、これらの線はBライン・アーチファクトと呼ばれ、正常な状態では肺の超音波画像410に存在しない。Bライン・アーチファクトは、肺末梢部の通気(aeration)の喪失による密度の増加の兆候を表し得る。
【0036】
図4Cは、本開示の態様による、コンソリデーションを示す超音波画像430である。超音波画像430には、正常な状態では肺の超音波画像410に存在しない、充実性(solid)で且つ均一な低エコーであるように見えるくさび形領域432が含まれる。低エコーのくさび形領域432は、肺のコンソリデーション状態を示し得る。
【0037】
図4Dは、本開示の態様による、エア・ブロンコグラムを示す超音波画像440である。超音波画像440には、正常な状態では肺の超音波画像410に存在しない明るい管状構造442が含まれる。管状構造442は、肺のブロンコグラム状態を示し得る。
【0038】
図4Eは、本開示の態様による、胸水を示す超音波画像450を示す。超音波画像450には、正常な状態では肺の超音波画像410に存在しない無響領域452が含まれる。無響領域452は、肺の胸水状態を示し得る。
【0039】
深層学習ネットワーク206は、複数の段階又は層の深層学習又は複数の深層学習サブネットワークを含むことができる。本明細書でより詳細に説明するように、異なる層又は異なるサブネットワークは、異なるドメイン(例えば、空間ドメイン及び時間ドメインを含む)で特徴解析及び/又は分類を実行し得る。深層学習には、(分類又はパターン解析に非線形処理と特徴抽出及び/又は変換とを使用する、)機械学習及び畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の様々な学習ベースの手法が含まれ得る。例えば、深層学習ネットワーク206は、肺の状態の特定を容易にするために、肺超音波画像を複数のカテゴリーに分類するように訓練することができる。カテゴリーは、
図4A~
図4Eに関して上述した特徴及び/又は状態(例えば、正常、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び/又は胸水)と同様であってもよい。一例として、深層学習ネットワーク206は、フレーム毎の解析を行うCNN(例えば、
図5のCNN510及び
図6のCNN612)と、フレーム毎の解析の出力に対して時間解析を行う機械学習コンポーネント(例えば、
図6の機械学習コンポーネント614)とを含むことができる。
【0040】
図5は、本開示の態様による、CNN510の構成500を示す概略図である。CNN510は、フレーム毎の分類のためにスキーム200によって使用され得る。CNN510は、N個の畳み込み層512のセットと、それに続くK個の完全に接続された層514のセットとを含むことができ、ここでN及びKは任意の正の整数とすることができる。値N及びKは、実施形態に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、NとKとの両方が少なくとも3であってもよい。各畳み込み層512は、入力画像から撮像特徴(例えば、1次元(ID)特徴マップ)を抽出するように構成されるフィルタ520のセットを含み得る。完全に接続された層514は、非線形であってもよく、且つ最後の畳み込み層512
(N)の高次元出力を出力516における分類530の数に対応する長さに徐々に縮小してもよい。例えば、分類530には、正常肺の状態、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び胸水が含まれ得る。
【0041】
図5には示されていないが、いくつかの実施形態では、畳み込み層512はプーリング(pooling)層とインターリーブされ得、各々が、抽出されたイメージング特徴の次元性を低減し得るダウンサンプリング動作のセットを含む。加えて、畳み込み層512は、修正された特徴マップを抽出するように構成された非線形関数(例えば、修正された非線形(ReLU)演算を含む)を含むことができる。
【0042】
入力画像502(例えば、スキャン前形式の超音波画像204)は、特徴抽出、解析、及び/又は分類のために各層512及び514を連続して通過させることができる。各層512又は514は、入力画像502又は前の層512又は514の出力に適用される重み(例えば、畳み込み層512のフィルタ520のフィルタ係数及び完全に接続された層514の非線形重み)を含むことができる。
【0043】
訓練中に、CNN510は、例えば、フォワード・プロパゲーション(forward propagation)を使用して各スキャン前形式の画像204に適用され、各カテゴリー又は分類530についてスキャン前形式の画像204の出力又はスコアを取得することができる。畳み込み層512のフィルタ520の係数及び完全に接続された層514の重みは、例えば、出力誤差を最小化するためにバックワード・プロパゲーション(backward propagation)を使用することにより調整することができる。例えば、Bライン・アーチファクトを含む入力画像502を使用して、CNN510がBラインカテゴリーについて高い確率(例えば、90%以上)を出力できるようにCNN510を訓練することができる。
【0044】
機械学習コンポーネントは、CNN510と同じアーキテクチャ又は異なるアーキテクチャを含むことができる。機械学習コンポーネントは、実質的に同様のメカニズムを使用して訓練することができ、訓練によって、機械学習コンポーネントが高い分類精度の出力を生成できることを保証することができる。本明細書では、フレーム毎の解析及び時間的解析のメカニズムについてより詳細に説明する。
【0045】
深層学習ネットワーク206が訓練された後に、深層学習ネットワーク206は臨床応用段階230で使用することができる。例えば、臨床医又はユーザはシステム100を使用して患者の肺の画像ビデオ232を取り込むことができる。ホスト130は、画像ビデオ232をリアルタイムで受信することができる。ホスト130上の処理コンポーネント134は、訓練された深層学習ネットワーク206を画像ビデオ232に適用して、患者の臨床状態208を決定することができる。
【0046】
図6は、本開示の態様による、超音波画像特徴検出のための深層学習ネットワーク610の構成600を示す概略図である。深層学習ネットワーク610は、深層学習ネットワーク206に対応し得る。深層学習ネットワーク610は、入力画像ビデオ602が与えられると臨床状態を予測することができる。深層学習ネットワーク610は、CNN612(例えば、CNN510)と、機械学習コンポーネント614とを含む。深層学習ネットワーク610は、ハードウェア・コンポーネントとソフトウェア・コンポーネントとの組合せを使用して実装することができる。例えば、深層学習ネットワーク610は、臨床的特徴及び/又は臨床状態のリアルタイム分類を行うために処理コンポーネント134によって実装され得る。CNN612は、空間ドメインでフレーム毎の解析又は分類を行うように訓練することができる。機械学習コンポーネント614は、時系列ベクトル分類を行うように訓練することができる。
【0047】
深層学習ネットワーク610は、例えば、システム100を使用して取り込まれた超音波画像ビデオ602を受信するように構成される。ビデオ602は、ビデオ232に対応し得る。ビデオ602は、ある期間に亘った、例えば時刻t(0),t(1),・・・t(N)での患者(例えば、肺の少なくとも一部)を表す一連の超音波画像フレーム604を含むことができ、ここでNは正の整数である。超音波画像フレーム604は、604t(0),604t(1),・・・604t(N)として示されている。例えば、一連の超音波画像フレーム604は、Iin(x,y,t)によって表すことができ、ここでx及びyは空間ドメインを表し、tは1~Nまで変化する時間を表すことができる。超音波画像フレーム604は、超音波画像310、320、330、410、420、430、440、450、及び502と同様であり得る。
【0048】
フレーム毎の解析を行うために、CNN612が各超音波画像フレーム604に適用される。CNN612は、超音波画像フレーム604毎に出力ベクトル620を生成する。出力ベクトル620は、620t(0),620t(1),・・・620t(N)として示されており、それぞれ、超音波画像フレーム604t(0),604t(1),・・・604t(N)の出力に対応する。出力ベクトル620は、出力516と同様であってもよい。各出力ベクトル620は、(M+1)個のスコア又は値622を含むことができ、ここでMは正の整数である。各値622は、入力超音波画像フレーム604が特定のカテゴリー(例えば、特定の臨床的特徴又は臨床状態を含む)に分類される可能性(likelihood)又は確率を表す。カテゴリーは、C(0)~C(M)で表され得る。(M+1)個のカテゴリーの出力値622又は確率が、622C(0),622C(1),・・・622C(M)として示される。例えば、出力ベクトルのセット620はYI(c,t)で表すことができ、ここでcは1~Mまで変化するカテゴリー・インデックスを表し、tは1~Nまで変化する時間を表すことができる。
【0049】
上述した肺の症状評価の例にCNN612を適用する場合に、Mは約4であり得る。例えば、カテゴリーC(0)は正常肺の状態を表すことができ、カテゴリーC(1)はBライン・アーチファクト状態を表すことができ、カテゴリーC(2)は肺のコンソリデーション状態を表すことができ、カテゴリーC(3)はブロンコグラム状態を表すことができ、カテゴリーC(4)は肺の胸水状態を表すことができる。換言すれば、CNN612を入力画像フレーム604に適用して、入力画像フレーム604が正常な状態、Bライン・アーチファクト状態、肺コンソリデーション状態、ブロンコグラム状態、又は胸水状態の画像を含むかどうかを判定することができる。CNN612は、肺の状態毎の確率を示す出力ベクトル620を生成することができる。
【0050】
時間ドメイン解析を行うために、機械学習コンポーネント614は、出力ベクトル620のセット(例えば、(M+1)×(N+1)行列)に適用される。機械学習コンポーネント614は、(K+1)個のスコア又は値632を含む出力ベクトル630を生成し、ここでKは正の整数である。各値632は、ビデオ602が特定のカテゴリー(例えば、特定の臨床的特徴又は臨床状態を含む)に分類される可能性又は確率を表す。カテゴリーは、D(0)~D(K)で表すことができる。(K+1)個のカテゴリーの出力値632又は確率は、632D(0),632D(1),・・・632D(K)として示される。機械学習コンポーネント614は、分類のための任意の適切な学習ベースの技術を使用することができる。いくつかの実施形態では、機械学習コンポーネント614は、深層学習ネットワーク、ニューラルネットワーク、又はCNNを含むことができる。最大の確率(例えば、出力ベクトル630内の最大値632)を有するカテゴリーは、ビデオ602の分類(例えば、臨床状態)を示し得る。いくつかの実施形態では、CNN612によって出力されるカテゴリーC(0)~C(M)は、機械学習コンポーネント614によって出力されるD(0)~D(K)と同一であってもよい。換言すれば、KはMに等しい。例えば、カテゴリーC(0)~C(M)は、正常肺の状態、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、ブロンコグラム、及び胸水等の、異なるタイプの臨床的特徴に対応し得る。カテゴリーD(0)~D(K)は、カテゴリーC(0)~C(M)と同じ肺特徴のセットに対応し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、カテゴリーC(0)~C(M)は異なるタイプの臨床的特徴に対応し得、カテゴリーD(0)~D(M)は異なる重症度に対応し得る。例えば、カテゴリーC(0)~C(M)は異なるタイプの肺の状態に対応し得、カテゴリーD(0)~D(K)は正常肺の状態、軽度のBライン状態、重度のBライン状態、軽度のコンソリデーション、及び重度のコンソリデーションを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、カテゴリーC(0)~C(M)は、異なるタイプの臨床的特徴及び異なる重症度のうちの少なくとも一方の第1のカテゴリー分類に対応し得、カテゴリーD(0)~D(M)は、異なるタイプの臨床的特徴及び異なる重症度のうちの少なくとも一方の第2のカテゴリー分類に対応し得る。
【0053】
深層学習ネットワーク610は、CNN612及び機械学習コンポーネント614を含むように示されているが、いくつかの実施形態では、深層学習ネットワーク610は、CNN612の代わりに機械学習コンポーネント及び/又は機械学習コンポーネント614の代わりにCNNを含み、同様の機能を実現することができる。
【0054】
図7は、本開示の態様による、自動化された超音波画像特徴検出方法700のフロー図である。方法700のステップは、プローブ110等の超音波イメージング・プローブ又はホスト130等のホストのコンピュータ装置(例えば、プロセッサ、処理回路、及び/又は他の適切なコンポーネント)によって実行することができる。方法700は、
図2に関して説明したスキーム200と同様のメカニズムを使用してもよく、そして、
図5及び
図6に関してそれぞれ説明した構成500及び600のように、深層学習ベースの分類メカニズムを使用してもよい。例示されるように、方法700は、複数の列挙されたステップを含むが、方法700の実施形態は、列挙されたステップの前、後、及び間に追加のステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、列挙されたステップのうちの1つ又は複数は、省略されるか、異なる順序で実行してもよい。
【0055】
ステップ710において、方法700は、ある期間(例えば、時刻t(0)~t(N)まで)に亘って被検体(例えば、対象物105又は患者の肺、心臓、腎臓、又は肝臓)を表す一連の超音波画像フレーム(例えば、超音波画像フレーム604)を超音波イメージング装置(例えば、プローブ110又はトランスデューサ・アレイ112)から受信するステップを含む。一連の超音波画像フレームは、画像ビデオ(例えば、ビデオ232又は602)に対応し得る。
【0056】
ステップ720において、方法700は、第1の予測ネットワーク(例えば、CNN510及び612)を一連の超音波画像フレームに適用することにより、一連の超音波画像フレームを臨床特性の第1のセット(例えば、カテゴリーC(0)~C(M))に分類するステップを含む。臨床特性の第1のセットは、分類ベクトル(例えば、出力ベクトル620)のセットによって表され得る。
【0057】
ステップ730において、方法700は、第2の予測ネットワーク(例えば、機械学習コンポーネント614)を分類ベクトルのセットに適用することにより、被検体の臨床状態(例えば、肺の状態)を特定するステップを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法700は、第1の予測ネットワークを一連の超音波画像フレームの各超音波画像フレームに適用することにより、一連の超音波画像フレームを分類して、分類ベクトルのセットのうちの1つの分類ベクトルを生成することができる。第1の予測ネットワークは、CNN(例えば、CNN510及び612)であり得、各分類ベクトルは、臨床特性の第1のセットに関して対応する超音波画像フレームの複数のスコア(例えば、確率値622)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法700は、第2の予測ネットワークが、臨床特性の第2のセット(例えば、カテゴリーD(0)~D(K))に関して分類ベクトルのセットのための複数のスコア(例えば、確率値632)を生成すること、及び複数のスコアから最も高いスコアを選択することによって、臨床状態を特定することができる。最も高いスコアを有するカテゴリーは、統合された分類結果(例えば、臨床状態)を表し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ得、臨床状態には、正常肺(例えば、超音波画像410)、Bライン・アーチファクト(例えば、超音波画像420)、コンソリデーション(例えば、超音波画像430)、ブロンコグラム(例えば、超音波画像440)、及び胸水(例えば、超音波画像450)のうちの少なくとも1つに関連する特徴が含まれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、被検体には、肺の少なくとも一部が含まれ、臨床状態には、正常肺、Bライン・アーチファクト、コンソリデーション、胸水、及びブロンコグラムのうちの少なくとも1つの重症度に関連する特徴が含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法700は、ディスプレイ(例えばディスプレイ132)が、臨床状態の指標を表示するステップを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の予測ネットワーク又は第2の予測ネットワークは、異なる超音波イメージング装置によって取り込まれた臨床状態を含むテスト被検体を表す複数のスキャン形式の超音波画像(例えば、スキャン形式の超音波画像202)を提供することにより訓練される。異なる超音波イメージング装置は、線形超音波トランスデューサ装置、曲線超音波トランスデューサ装置、及びフェーズドアレイ超音波トランスデューサ装置のうちの少なくとも1つを含むことができる。訓練には、複数のスキャン形式の超音波画像を、異なる超音波イメージング装置から独立した共通の次元及び共通フォーマットの少なくとも一方に基づいて、複数のスキャン形式の超音波画像を複数のスキャン前形式の超音波画像(例えば、スキャン前形式の超音波画像204及び502)に変換することがさらに含まれる。訓練には、臨床状態に関して複数のスキャン前形式の超音波画像の各超音波画像にスコアを割り当てることをさらに含まれ得る。
【0064】
本開示の態様は、いくつかの利点を与えることができる。例えば、分類を、空間ドメインのフレーム毎の分類と時間ドメイン解析に分割することによるビデオの分類によって、従来の機械学習ベースのビデオ分類フレームワークと比較して分類の複雑さを軽減することができる。分類の問題を複数の段階に分割することによって、従来のビデオ分類機械学習ベースのネットワークよりも小さな訓練データセットを使用して訓練を行うことができる。深層学習ネットワークを使用することにより、臨床状態の評価を自動化することができ、臨床状態を決定する際に臨床医をガイドするための支援を提供することができる。さらに、自動化により、より一貫した評価結果が得られ、異なる臨床医の異なる解釈から生じる可能性のある変動を排除することができる。さらに、自動化により、例えばある疾患の進行又はある治療の利点を評価するために、特定の臨床状態について患者を経時的に監視することができる。
【0065】
当業者は、上述した装置、システム、及び方法を様々な方法で修正できることを認識するであろう。従って、当業者は、本開示に含まれる実施形態が上述した特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解するであろう。その点に関して、例示的な実施形態を示し、説明してきたが、前述の開示では、広範な修正、変更、及び置換が企図されている。そのような変形は、本開示の範囲から逸脱することなく、前述の開示に対してなされ得ることが理解される。従って、添付の特許請求の範囲を広く、本開示と一致する方法で解釈することが適切である。