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特許7194692光出力システム及び該システムを備える照明ユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光出力システム及び該システムを備える照明ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/04 20060101AFI20221215BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20221215BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20221215BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221215BHJP
【FI】
F21V5/04 350
F21V5/04 200
F21V5/00 320
F21V5/04 400
G02B3/00 A
F21Y115:10 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019554632
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057716
(87)【国際公開番号】W WO2018184905
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】17164536.9
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ボーネカンプ エリック ポール
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527111(JP,A)
【文献】米国特許第06507441(US,B1)
【文献】国際公開第2015/172794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/04
F21V 5/00
G02B 3/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源位置に設けられるLED光源のための光出力システムであって、当該光出力システムは、
前記光源位置の方を向く凸レンズを含む、第1のレンズアレイと、
前記光源位置に対して前記第1のレンズアレイの反対側にあり、前記光源位置と逆の方を向く凸レンズを含む、第2のレンズアレイと
を備え、
前記第1のレンズアレイ及び前記第2のレンズアレイ間にエアギャップがあり、前記エアギャップの厚さは、前記第1のレンズアレイの外面及び前記第2のレンズアレイの外面間の最大厚さの10%未満であり、
前記第1のレンズアレイのレンズポケット及び前記第2のレンズアレイのレンズポケット間の距離である、組み合わされた前記第1のレンズアレイ及び前記第2のレンズアレイの全体の厚さは、前記第2のレンズアレイのレンズピッチ以下である、システム。
【請求項2】
前記エアギャップは、0.1mm未満の厚さ有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイの外面及び前記第2のレンズアレイの外面間の最大厚さは、1mm以上、5mm以下である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
各レンズアレイの前記レンズは、300μm以上、5mm以下のピッチ配置される、請求項1、2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
各レンズアレイの前記レンズは、六角形のグリッドに配置される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のレンズアレイ及び前記第2のレンズアレイの前記レンズは、同じレンズピッチを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のレンズアレイの各レンズの焦点は、前記第2のレンズアレイの外面の近くにある、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記エアギャップは平坦である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記エアギャップは、前記第1のレンズアレイ又は前記第2のレンズアレイから前記全体の厚さの最大25%離れて位置付けられる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光出力システムと、
前記光源位置における光源と
を備える、照明ユニット。
【請求項11】
前記光源は、LED又はLED配列を含む、請求項10に記載の照明ユニット。
【請求項12】
前記LED、又は前記LED配列の各LEDは、ランバート光出力強度分布を有する、請求項11に記載の照明ユニット。
【請求項13】
前記光源は、チップオンボードLED又はチップオンボードLED配列を含む、請求項11又は12に記載の照明ユニット。
【請求項14】
当該照明ユニットは反射側壁及び反射基部を有するハウジングを備え、前記光源は前記基部に設けられ、前記光出力システムは前記側壁上に設けられる、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLED光源の出力を処理するための光出力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(1つ又は複数のLED)のLED光源がハウジング内に設けられ、光出力パネルが照明器具内に光源の前方に設けられる、LED照明器具はよく知られている。
【0003】
透過光が望ましくない方向に放射されるのを防ぐために、光出力パネルにプロファイル面(profiled surface)を設けることが知られている。光出力パネルは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネート(PC)等のプラスチック又は他の任意の材料のプレートである。
【0004】
パネルの目的は、透過光がパネルから所望の方向に放射されるようにすることである。さらに、パネルは、色の混合を提供する、及び光源を原因とする画像アーチファクトを低減するために使用されてもよい。
【0005】
色の混合を提供する1つのアプローチは、レンズレットのアレイ、例えば、2つのレンズレットアレイのスタックを使用することである。特定のアプローチの1つは、例えば、Dross, O.の"Kohler Integration in Color Mixing Collimators", Proc. Of SPIE Vol. 9571 957109, 2015に述べられている、いわゆるケーラーインテグレーション(Kohler integration)を利用することである。
【0006】
ケーラーインテグレーションは、さまざまな放射色のソースのアレイから均一な色混合ビームを作り出す、又は不均一な単一のソースから光混合を提供する強力な概念(powerful concept)である。
【0007】
ケーラーインテグレータ(Kohler integrator)の典型的な例は、図1に描かれるような線形レンズレットアレイである。インテグレータは、屈折率1.5のPMMA等のポリマーで形成されたレンズ本体10を含む。対向する2つの表面は各々、図示のようにピッチp、レンズ半径R、及び球面レンズ中心からの角度が+/-αの、整列されたマイクロレンズのアレイを有する。レンズは凸状である、すなわち、各レンズは、レンズ本体10の中央から外側に向かって湾曲している。レンズの間には、単一プレートのポケットが存在する。組み合わされた2つのレンズプレートの全体の厚さvは、第1のレンズアレイのレンズポケット及び第2のレンズアレイのレンズポケット間の(法線(normal)、最短)距離である。
【0008】
このタイプのインテグレータは、角度ψによって特徴付けられる。入射ビームが最大角φを有する場合、出射ビームの光は、φ<ψの場合2ψの角度範囲にわたって均一に配光される。
【0009】
コリメート光入力に対するインテグレータの機能は、ペイン12に示されている。第1のレンズレットアレイは、第2のレンズレットアレイの表面に集束し、この表面から広角ビームが放出される。
【0010】
図1の下部は、ψに必要な値を持つ線形レンズレットアレイの構築を可能にする幾何学的方程式を示している。グラフは、屈折率がレンズパラメータαと図示の式に基づく出力角度ψとの関係にどのように影響するかを示している。
【0011】
図2は、上側のプロットとして50°の半値全幅(FWHM)(すなわち、φ=25°であり、すべての光がこの範囲に制限される(confined))の入射ビームの強度(intensity)対角度(degree)のプロットを示し、ψ=40°(ゆえに、FWHM=80°)のレンズレット表面についての出射ビームの強度対角度のプロットも示す。
【0012】
この線形ケーラーインテグレータの入力パラメータは、n=1.50(屈折率)、R=0.5mm、ψ=40°である。α、v、p、xの計算値は、α=61.1°、v=0.665mm、p=0.875mm、x=0.258mmである。
【0013】
図2は、入射ビームのすべての光が配光される、したがって80°(2ψ)の角度範囲内で混合されることを示している。
【0014】
図3は、入力光が所要の狭い角度範囲に制限されない場合の状況を示している。
【0015】
図3は、上側のプロットとしてFWHM=120°(すなわち、φ=60°)の入射ビームの強度対角度のプロットを示し、ψ=40°の同じレンズレット表面についての出射ビームの強度対角度のプロットも示す。
【0016】
図3に示されるようにψ<φの場合、光は、レンズアレイからすべての方向に逃げる。角度>ψで逃げる光は混合されず、床又は壁等のターゲット表面にアーチファクト(色混合の減少によるカラーアーチファクト等)を与える可能性がある。
【0017】
これは、これらのアーチファクトを回避するために、光がケーラーレンズレットプレートに入る前にコリメートされる必要があることを意味する。斯くして、追加の光学系が必要であり、これは、光システムを望ましくないほど大きな体積/サイズ及び高コストにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、良好な光混合を備えた出力ビーム角度の制御を可能にし、低コスト及び低重量の光学部品で達成され得る光学システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【0020】
本発明の一態様による例によれば、光源位置に設けられるLED光源のための光出力システムであって、当該光出力システムは、
光源位置の方を向く凸レンズを含む、第1のレンズアレイと、
光源位置に対して第1のレンズアレイの反対側にあり、光源位置と逆の方を向く凸レンズを含む、第2のレンズアレイと
を備え、
第1のレンズアレイ及び第2のレンズアレイ間にエアギャップがあり、エアギャップの厚さは、第1のレンズアレイの外面及び第2のレンズアレイの外面間の最大厚さの10%未満である、システムが提供される。
【0021】
好ましくは、第1のレンズアレイ及び第2のレンズアレイの全体の厚さは、第2のレンズアレイのレンズピッチ以下である。斯くして、クロストークがさらに相殺又は低減されるというさらに改善された光出力システムが得られる。代替的又は追加的に、光出力システムの所望の品質に応じて、ギャップの位置を選択することにより、光出力システムの特性は調整されることができる。好ましくは、エアギャップは、第1のレンズアレイ又は第2のレンズアレイから全体の厚さの最大25%離れて位置付けられる。
【0022】
当該出力システムは、本質的にケーラーインテグレーターとして機能し、2つのレンズアレイは互いに反対を向いている。2つのレンズアレイのレンズは、レンズの対を形成するように整列される。しかしながら、エアギャップを設けることは、インテグレーション機能が、低グレアのワイドビームが形成されることを可能にするために、とりわけ事前のコリメーションのない、拡散光で作用することを意味する。エアギャップは、臨界角を超える入射角に対して全反射機能を提供する、角度選択性リフレクタとして機能するものと見なされてもよい。光出力システムは、均一な光出口窓が、魅力的な外観を有して形成されることを可能にする。
【0023】
エアギャップは、第1のレンズアレイにおけるレンズからの屈折光ビームが、対のレンズではない第2のレンズアレイにおけるレンズに渡り得るのを防ぐように狭い。エアギャップは、例えば、0.1mm未満の厚さ、例えば、0.05mm未満の厚さを有し、例えば、0.01mmと薄くてもよい。
【0024】
第1のレンズアレイ及び第2のレンズアレイの(ポケット)表面間の最大厚さvは、0.3mm以上、5mm以下であってもよい。これは、低コストで軽量のレンズシステムが形成されることを可能にする。しかしながら、デザインは、異なる寸法にスケーリングされてもよい。
【0025】
各レンズアレイのレンズは、例えば、300μm以上、5mm以下のピッチ、例えば、マイクロスケールシステムに対して300μm以上、500μm以下のピッチ、又はミリメートルスケールシステムに対して0.8mm以上、5mm以下のピッチで配置される。
【0026】
各レンズアレイのレンズは、六角形のグリッドに配置されてもよい。第1及び第2のレンズアレイのレンズは、好ましくは、整列されたレンズの対を形成するために同じレンズピッチを有する。
【0027】
第1のレンズアレイの各レンズの焦点は、好ましくは、第2のレンズアレイの表面に又は第2のレンズアレイの表面の近くにある。これは、従来のケーラー構造(Kohler configuration)を規定する。
【0028】
エアギャップは、好ましくは、平坦である。各レンズアレイは、エアギャップの一方の側を形成する一方の側に平坦な表面を有し、反対の側にテクスチャード加工されたレンズ表面を有してもよい。これは、一般的に言うと、2つのレンズアレイが平坦である(すなわち、レンズは共通平面から投影する)ことを意味する。しかしながら、ギャップは、レンズアレイの共通(平坦)面と鋭角で延びてもよく、及び/又は外側表面は、レンズが共通平面から投影しないが、依然として相互焦点を有するように(内側/外側に)湾曲されてもよい。また、照明システムの審美的デザインが非平坦な光出力面を必要とする場合、システムは非平坦であってもよい。エアギャップは、2つのレンズアレイのちょうど中間にあってもよい。この場合、2つのレンズアレイは、例えば射出成形によって作られる、同一のプレートとして形成されてもよい。さらに代替的に、エアギャップは、第1及び第2のレンズアレイのいずれか一方の近くに位置付けられてもよい。ギャップが、光源の方を向く第1のレンズアレイの近くに位置付けられる、例えば、第1のレンズアレイから厚さvの最大25%離れて位置付けられることは、2つのレンズプレートが、所望の光学効果を達成するために相互に異なる屈折率を有する材料から作られる場合、この光学効果が、ギャップが第2のレンズアレイの近くに位置付けられる場合よりも顕著、すなわち、増長されるという有利な点を有する。一方、ギャップが第2のレンズアレイの近くに位置付けられる、例えば、第1のレンズアレイから厚さvの少なくとも75%離れて位置付けられる場合、光出力システムは、ギャップの/内の歪み、例えば、表面粗さ又は汚れにそれほどセンシブルではない。
【0029】
本発明はまた、
上記で定義された光出力システムと、
光源位置における光源と
を備える照明ユニットを提供する。
【0030】
光源は、例えば、LED又はLED配列(LED arrangement)を含む。光出力は、コリメータを介在させることなく、光出力システムに直接提供されてもよい。LED、又はLED配列の各LEDは、例えば、ランバート光出力強度分布を有する。チップオンボードLEDが、低コストの実装のために使用されてもよい。
【0031】
照明ユニットは、例えば、80°及び100°の間の半値全幅角度を有してもよい。これは、良好な光混合がレンズ配列により提供される、広角の出力ビームを提供する。
【0032】
照明ユニットは、反射側壁及び反射基部を有するハウジングを備え、光源は、基部に設けられ、光出力システムは、側壁上に設けられてもよい。これは、高効率の光出力を可能にするライトボックス構造を規定する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下、本発明の例を添付の図面を参照して詳細に述べる。
図1図1は、線形レンズレットアレイとして形成されるケーラーインテグレータの典型的な例と、入射角の範囲及び出射角の範囲の関係を示すグラフと式を示す。
図2図2は、図1に基づくデザインに対する制限された入射ビーム及び出射ビームの強度対角度のプロットを示す。
図3図3は、入力光が所要の狭い角度範囲に制限されない場合の図2のプロットを示す。
図4図4は、本発明による光出力システムの一例を示す。
図5図5は、図4の構造を通る光路のいくつかの例を示す。
図6図6は、図5の光出力システムを使用したライトボックスを示す。
図7図7A~7Dは、ひとつの可能なレンズレットデザインを示す。
図8図8は、2つの直交軸におけるレンズピッチを示し、光出力システムの斜視図を示す。
図9図9は、システムの強度分布を示す。
図10図10A~10Cは、さまざまな視野角における光学窓全体の輝度を示す。
図11図11A~11Bは、構造内の異なるエアギャップの位置及びレンズ材料の異なる屈折率についての、構造を通る光線経路に対する効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、レンズアレイ間に狭いエアギャップを持つ一対のレンズアレイを有する、LED光源のための光出力システムを提供する。光出力システムは、光混合のための光インテグレーション機能を提供し、エアギャップは、均一なワイドビーム出力が、例えば非コリメート光源から受けるような、広範囲の角度からの入射光についてさえ提供されることを可能にする。
【0035】
図4は、出力システムの一例を示している。
【0036】
第1のレンズアレイ40は、入射光に面する、すなわち、光源位置の方を向く凸レンズ42を含む。第2のレンズアレイ44は、光源位置に対して第1のレンズアレイの反対側にあり、光源位置と逆の方を向く凸レンズ46を含む。第1のレンズアレイ40は、レンズ形状を規定する外面40a及び平坦な内面40bを有する。第2のレンズアレイ44は、レンズ形状を規定する外面44a及び平坦な内面44bを有する。
【0037】
2つのレンズアレイは空気によって囲まれ、第1のアレイ42と第2のアレイ46との間、内面40bと内面44bとの間にはエアギャップ48もある。エアギャップの厚さdgは、第1のレンズアレイ42の外面及び第2のレンズアレイ46の外面間の最大厚さの10%未満である。斯くして、図示のパラメータについて、エアギャップの幅は、0.1(v+2x)未満である。
【0038】
2つのレンズアレイはケーラーインテグレータとして機能するが、エアギャップによって提供される修正された光学機能を備える。斯くして、2つのレンズアレイのレンズは、レンズの対を形成するように整列される。エアギャップは、第1のレンズアレイにおけるレンズからの屈折光ビームが、対のレンズではない第2のレンズアレイにおけるレンズに渡り得るのを防ぐように狭い。エアギャップは、例えば、0.1mm未満の厚さ、例えば、0.05mm未満の厚さを有し、例えば、0.01mmと薄くてもよい。
【0039】
図1に示されているものに対応する寸法パラメータが、図4に示されている。
【0040】
エアギャップは、2つのレンズアレイのちょうど中間にあってもよい。この場合、2つのレンズアレイは、例えば射出成形によって作られる、同一のプレートとして形成されてもよい。
【0041】
光路のいくつかの例が図5に示されている。第1の光路のセットは、法線入射角(φ=0)における平行ビームとして示され、第2の光路のセットは、大きな入射角(φ=65°)における平行ビームとして示されている。
【0042】
垂直入射光線は、90%以上の透過があるように、二重層構造全体を介して容易に透過される。約60°よりも大きい角度を有する入射光線は、エアギャップにおける光線の全反射によって非常に低い透過率、したがって高い反射率を有する。高角度は、例えばライトボックスデザインの側壁及び基部において散漫散乱を提供することにより、光学システム内で再利用されることができる。最終結果は、高角においては非常に限られた強度しか持たないビーム形状である。このデザインは、特にワイドビームデザイン(FWHMが80°~100°)に特に適している。
【0043】
斯くして、エアギャップは、インテグレーション機能が、低グレアのワイドビームが形成されることを可能にするために、とりわけ事前のコリメーションのない、拡散光で作用することを意味する。光出力システムは、均一な光出口窓が、魅力的な外観を有して形成されることを可能にする。
【0044】
レンズアレイは、線形構造として形成されてもよい。斯くして、図5(及び図6)は3Dレンズのアレイを示すが、レンズは、これらレンズの長さに沿って一定の断面を持つ押出線形構造であることを意味する、2Dであってもよい。この場合、ビーム整形又は色混合は一方向にだけであるが、3D構造は、すべての方向でビーム形状を制御することができる。
【0045】
図6は、中央にLED光源64を備える基部62と、光出口窓を形成する、側壁66及び上述の光学システム68とを含む、単純なライトボックスを示している。左側に側面図が示され、右側に上面図が示されている。
【0046】
基部及び側壁は、拡散反射面(例えば、白色)を有する。ライトボックスは、例えばランバート放射プロファイルを持つ2mm x 2mmの、単一のLEDのみを含んでもよい。しかしながら、1色又は複数の色のLEDのアレイが使用されてもよい。LED光出力は、コリメータを介在させることなく、光出力システム68に直接提供される。チップオンボードLEDが、低コストの実装のために使用されてもよい。
【0047】
光出口窓68のレンズはテッセレーションされ(tessellated)、この目的のために、六角形のグリッドを形成する六角形のレンズレットが使用されてもよい。第1及び第2のレンズアレイのレンズは、好ましくは、整列されたレンズの対を形成するために同じレンズピッチを有し、これは、同一のレンズアレイが使用されてもよいことを意味する。
【0048】
図7は、例えば第1のレンズレットのアレイのための、ひとつの可能なレンズレットデザインを示している。図7Aは、(1つの六角形の面を目いっぱい(full on)示し、2つの他の面を斜めから示す)第1の側面図を示し、図7Bは、平面図を示し、図7Cは、(2つの六角形の面を目いっぱいにではなく示す)第2の側面図を示し、図7Dは、斜視図を示す。
【0049】
各レンズは、平面図において六角形に面取りされた(truncated)(半径Rの)球面レンズ表面を有する。
【0050】
この例の六角形の幾何学的形状は、n=1.50(屈折率)、R=1.0mm、ψ=60°のパラメータを使用して規定される。これらのパラメータがα、v、p、xを計算するために使用され、結果は以下の通りである。
α=75.5°
v=0.620mm
p=1.936mm
x=0.749mm
【0051】
エアギャップの幅は、0.01mmである。これらのデータから、全体の厚さvは、第1のレンズアレイのレンズレットのピッチpより小さいという結果になる。
【0052】
図8は、直交する2つの軸におけるレンズピッチを示し、光出力システムの斜視図を示している。
【0053】
これらの寸法は、ひとつの実装例の一般的なスケールの一例を示している。
【0054】
より一般的には、第1のレンズアレイの最も外側の表面と第2のレンズアレイの最も外側の表面の間の最大厚さ(すなわち、v+2x)は、0.4mm以上、5mm以下であってもよい。これは、低コストで軽量のレンズシステムが形成されることを可能にする。しかしながら、デザインは、異なる寸法にスケーリングされてもよい。
【0055】
各レンズアレイのレンズは、例えば、300μm以上、5mm以下の(図8に示されるような)ピッチ、例えば、マイクロスケールシステムに対して300μm以上、500μm以下のピッチ、又はミリメートルスケールシステムに対して0.8mm以上、5mm以下のピッチで配置される。これら2つのサブ範囲の間の任意のサイズ範囲も使用されてもよい。
【0056】
光出力ユニットの全体的な面積は、例えば、10cmから1000cmの範囲内である。
【0057】
図9は、システムの強度分布を示している。0°の角度方向(例えば、天井に配置されたライトボックスについて鉛直下方)にピーク強度I0がある。約60°より大きい視野角について、(I0と比較して)非常に低い強度しか存在しない。
【0058】
図10は、さまざまな視野角における光学窓全体の輝度を示している。
【0059】
図10Aは、視野角0°における輝度を示し、図10Bは、視野角30°における輝度を示し、図10Cは、視野角70°における輝度を示す。
【0060】
均一な面照明の印象を与える規則的なドットパターンが見える。
【0061】
図11A~11Bは、構造内の異なるエアギャップ48の位置及びレンズ材料の異なる屈折率n1、n2、n3についての、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ44を備える構造を通る光線経路に対する効果を概略的に示す。図示されるように、非屈折光線70は、屈折率n1を有する第1のレンズアレイ40に入り、屈折光線70aとして伝播する。エアギャップ48を横切った後、当該光線は、第2のレンズアレイに入り、第2のレンズアレイの材料の屈折率に応じて、該光線が第1のレンズアレイによって屈折された場合よりも多く(すなわち、n2>n1)、等しく(すなわち、n1=n1)、又は少なく(すなわち、n3<n1)屈折される。図に示されるように、エアギャップの位置(及び使用される材料の屈折率)に応じた第2のレンズアレイを出る光線のシフト位置の効果Δyは明白である。図11Aにおいて、エアギャップは、第1のレンズアレイ40から25% * v未満、すなわち、約15% * vに存在し、効果は増長される。図11Bにおいて、エアギャップは、第1のレンズアレイ40から75% * vを超えて、すなわち、約85% * vに存在し、光線経路は、汚れ及び/又はエアギャップ表面の歪みにそれほどセンシブルではない。
【0062】
光出力システムの外形、したがってシステムを使用するライトボックスは、任意の所望の形状を有することができる。
【0063】
照明システムは、例えば、オフィス又は他の部屋を照明するための照明器具であり、その場合、照明器具は、天井の凹部に若しくは天井の表面に対して取り付けられてもよく、又は天井から吊り下げられてもよい。この場合、光出力システムは照明器具の下側を形成し、該下側を通って、光が照明器具の光源からオフィスに放射される。照明器具からの光は、鉛直下方向に放射されるだけでなく、所望のワイドビームを形成するために鉛直方向とある角度を囲む方向にも放射される。斯くして、照明器具は、照明器具自体の寸法よりも遥かに大きくし得る領域を照らす。照明の最大角度がまた、照明器具からある距離にいる人々にとっての不都合を回避するために設けられる。斯くして、典型的には、複数の照明器具が天井にわたって配置され、各照明器具は、該照明器具の下のオフィスの一部を照らし、天井の表面と小さな角度を囲む光放射が回避される。
【0064】
開示された実施形態に対する他の変更は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、クレームされた発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。請求項中の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B