(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】複数材料のソレノイドアクチュエータプランジャ
(51)【国際特許分類】
F16H 48/34 20120101AFI20221215BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20221215BHJP
F16H 48/24 20060101ALI20221215BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F16H48/34
F16H48/08
F16H48/24
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2019557602
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 US2018028075
(87)【国際公開番号】W WO2018200276
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 寿明
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035129(WO,A1)
【文献】特開2013-119903(JP,A)
【文献】特開2003-206915(JP,A)
【文献】特開2015-102185(JP,A)
【文献】特開2007-092990(JP,A)
【文献】特開2007-315583(JP,A)
【文献】特開2017-067257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/34
F16H 48/08
F16H 48/24
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギヤを有する車両差動装置用のシステムであって、
コイルと、
前記コイルへの電気の印加によって生成される磁場に応答して移動可能な駆動部材であって、前記駆動部材は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、前記駆動部材は、軸線を有し、磁気応答性の第1の材料から少なくとも部分的に形成された第1の本体、及び
非磁性の第2の材料から少なくとも部分的に形成された第2の本体を含み、前記第1の本体と前記第2の本体とは、前記軸線上の対向する2つの方向における前記第1の本体と前記第2の本体との間の相対的な動きを制限又は防止するように、前記対向する2つの方向のそれぞれにおいて互いがオーバーラップする部分をそれぞれ有し、かつ前記部分を介して互いが連結している、駆動部材と、
前記駆動部材が前記第2の位置にある場合に、前記駆動部材によって駆動されて前記差動装置のギヤと係合し、前記駆動部材が前記第1の位置にある場合に、前記ギヤから係合解除されるように適合されている、ロック部材と、を備え
、
前記第2の位置にある前記駆動部材は、前記第2の本体の一部が差動装置ハウジングと係合すことで前記軸線に沿った一方向の移動が規制され
るシステム。
【請求項2】
前記第1の材料は金属であり、前記第2の本体はポリマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の本体は対向して面する停止面を含み、前記第2の本体は、前記第1の本体の前記停止面に隣接する、対向して面する停止面を含んで、前記第1の本体と前記第2の本体との間の相対的な軸線方向の動きを制限又は防止する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の本体及び前記第2の本体は、1つ以上の取付けフィーチャによって一緒に連結されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記駆動部材は軸線方向に延びる少なくとも1つの脚部を有し、前記少なくとも1つの脚部は、前記第1の本体又は前記第2の本体のうちの少なくとも一方の内面への半径方向距離よりも大きい半径方向距離に内面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの脚部は前記第2の本体によって支持され、前記少なくとも1つの脚部の前記内面は、前記第1の本体の内面への前記半径方向距離よりも大きい半径方向距離にある、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の本体は、前記軸線から第1の半径方向距離に外面を有する環状の側壁を含み、前記少なくとも1つの脚部は、前記第1の本体側壁に対して半径方向外側に延び、それにより、前記脚部の半径方向外面は、前記軸線から、前記側壁の前記外面よりも大きい半径方向距離にある、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの脚部は複数の脚部を備え、前記脚部の各々は前記第2の本体によって支持され、前記脚部の各々の前記内面は、前記第1の本体の内面への前記半径方向距離よりも大きい半径方向距離にある、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の本体は前記第1の本体の隣接面を超えて軸線方向に延びる停止面を含み、前記駆動部材が前記第2の位置にある場合に、
前記第2の本体と前記差動装置ハウジングと係合
しかつ前記第1の本体と前記差動装置ハウジングとの間に空隙が形成されるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
磁場に応答して移動可能な、車両差動装置ロック機構用の駆動部材であって、前記駆動部材は、軸線を有し、磁気応答性の第1の材料から少なくとも部分的に形成された第1の本体、及び
非磁性の第2の材料から少なくとも部分的に形成された第2の本体を含み、前記第1の本体と前記第2の本体は、単一構成要素として前記軸線に沿って移動するように、前記第1の本体と前記第2の本体との分離を阻止又は防止するための前記軸線上の対向する2つの方向のそれぞれにおいて対向しオーバーラップする表面によって、互いに連結され
、前記第2の本体の一部が差動装置ハウジングと係合すことで前記軸線に沿った一方向の移動が規制される
ように構成された、駆動部材。
【請求項11】
前記第1の材料は金属であり、前記第2の本体は、モールド成形プロセスによって前記第2の本体の中に形成されることができるポリマーを含む、請求項10に記載の駆動部材。
【請求項12】
前記駆動部材は軸線方向に延びる少なくとも1つの脚部を有し、前記少なくとも1つの脚部は、前記第1の本体又は前記第2の本体のうちの少なくとも一方の内面への半径方向距離よりも大きい半径方向距離に内面を有する、請求項10または11に記載の駆動部材。
【請求項13】
前記第1の本体は、前記軸線から第1の半径方向距離に外面を有する環状の側壁を含み、前記少なくとも1つの脚部は、前記第1の本体の前記側壁に対して半径方向外側に延び、それにより、前記脚部の半径方向外面は、前記軸線から、前記側壁の前記外面よりも大きい半径方向距離にある、請求項12に記載の駆動部材。
【請求項14】
磁場に応答して移動可能な、車両差動装置ロック機構用の駆動部材を形成する方法であって、前記方法は、
少なくとも部分的に磁気応答性材料で形成された第1の本体を金型の中に入れることと、
前記金型の中に
非磁性の流動性材料を供給することと、
前記流動性材料を固体に硬化させて、前記第1の本体に一体的に連結された第2の本体を画定することと、を含み、
前記第1の本体及び前記第2の本体のそれぞれの少なくとも一部に、前記軸線上の対向する2つの方向における前記第1の本体と前記第2の本体との間の相対的な動きが制限又は防止されるように、前記対向する2つの方向のそれぞれにおいて互いをオーバーラップさせる部分をそれぞれ形成
し、前記駆動部材の前記軸線に沿った一方向の移動を規制するために差動装置ハウジングと係合する部分を前記第2の本体の一部分に形成する、方法。
【請求項15】
前記第2の本体は、軸線方向に延びる少なくとも1つの脚部を有し、前記少なくとも1つの脚部は、前記第1の本体の内面への半径方向距離よりも大きい半径方向距離に内面を有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年4月25日に出願された米国特許出願第15/496,574号の利益を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、複数の材料から作製され、電気的に制御される車両差動装置ロック装置に使用されてもよいプランジャに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の通常の運転中、4輪の全てが同一速度で回転しないことはよくある。車輪回転速度の差異は、車両が曲がる際に最も一般的に発生するが、ブレーキ又は不均一な路面条件によって生じる場合もある。異なる車輪回転速度に対応する一方で、2つの車輪に動力を導き続けるために、動力供給される車輪間で異なる車輪回転速度を可能にする差動装置を設けることが可能である。差動装置は、各車輪に動力を伝達しながら、車輪を異なる速度で回転させることを可能にする。この解決策は、ある運転条件においては満足な場合がある一方で、動力供給される車輪の一方が、他方の車輪が係合する表面よりもかなり低い摩擦係数を有する表面に接する条件下では、不十分である。そのような条件では、より大きな牽引力で車輪にトルクを加えることが妨げられ、それにより、望ましくない車両性能がもたらされる場合がある。少なくともいくつかの状況では、差動装置をロックし、2つの車輪間の車輪回転速度の差異を防止するために、ロック機構が設けられてもよい。
【発明の概要】
【0004】
少なくともいくつかの実現形態では、複数のギヤを有する車両差動装置用のシステムは、コイル、コイルへの電気の印加によって生成される磁場に応答して移動可能な駆動部材、及び駆動部材によって駆動されて差動装置のギヤを選択的に係合するロック部材を含んでもよい。駆動部材は、第1の位置と第2の位置との間を移動可能であり、軸線を有し、磁気応答性の第1の材料から少なくとも部分的に形成された第1の本体、及び第2の材料から少なくとも部分的に形成された第2の本体を含む。第1の本体と第2の本体は互いに連結され、反対向きの2つの軸線方向にオーバーラップして、第1の本体と第2の本体との間の相対的な軸線方向の動きを制限又は防止する。
【0005】
少なくともいくつかの実現形態では、磁場に応答して移動可能な、車両差動装置ロック機構用の駆動部材は、軸線を有し、磁気応答性の第1の材料から少なくとも部分的に形成された第1の本体、及び第2の材料から少なくとも部分的に形成された第2の本体を含む。第1の本体と第2の本体は互いに連結され、反対向きの2つの軸線方向にオーバーラップして、第1の本体と第2の本体との間の相対的な軸線方向の動きを制限又は防止する。
【0006】
少なくともいくつかの実現形態では、磁場に応答して移動可能な車両差動装置ロック機構用の駆動部材は、
少なくとも部分的に磁気応答性材料で形成された第1の本体を金型の中に入れることと、
金型の中に流動性材料を供給することと、
流動性材料を固体に硬化させて、第1の本体に一体的に連結された第2の本体を画定することと、
を含む方法によって形成されてもよく、
第1の本体と第2の本体とは、反対向きの2つの軸線方向にオーバーラップし、第1の本体と第2の本体との間の相対的な軸線方向の動きを制限又は防止する。
【0007】
好ましい実現形態及び最良の態様についての以下の詳細な説明は、添付図面を参照して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両動力伝達装置アセンブリの概略図である。
【
図2】電気作動式のロック機構を有する差動装置の断面図であり、差動装置は開放位置で示している。
【
図3】ロック機構を示す、差動装置の一部の部分断面図である。
【
図4】ロック機構のプランジャの部分斜視図である。
【
図9】改善されたプランジャを有するロック機構を示す、差動装置の一部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面をより詳細に参照すると、
図1は、エンジン14から複数の車輪16に動力を供給する車両動力伝達装置12を示す。エンジン14は入力シャフト20にトルクを供給し、入力シャフト20は、スプール22、動力伝達ユニット又は類似装置を介して動力伝達装置12の残りの部分に連結されている。スプール22又は他の装置は、前部駆動ユニット23に連結された出力を有してもよく、前部駆動ユニット23は差動装置アセンブリを含んでもよい。第1のサイドシャフト24及び第2のサイドシャフト26が、駆動ユニット/差動装置23に連結され、サイドシャフト24、26間の相対的回転が可能になっている。プロペラシャフト27が、前部駆動ユニット23と後部駆動ユニット28との間に延びていてもよく、後部駆動ユニット28は、後部サイドシャフト30、32に連結された差動装置アセンブリ29を含んでもよい。
【0010】
ここで
図2を参照すると、第1の後部サイドシャフト30は、差動装置29の内部の第1のサイドギヤ34に接続されている。同様に、第2の後部サイドシャフト32は、差動装置29の内部の第2のサイドギヤ36に接続されている。差動装置29はサイドギヤ34、36を含み、サイドギヤ34、36は通常、差動装置29のハウジング37内に収容され、それぞれサイドシャフト30、32に回転可能に連結される。差動装置はまた、ピニオンギヤ38、40を含み、ピニオンギヤ38、40は、サイドギヤ34、36のそれぞれと噛み合い、ハウジング37内で、ピニオンシャフト42上に取り付けられている。
【0011】
差動装置29を選択的にロック及びロック解除するために、ロック機構46が設けられる。ロック機構46は、作動状態及び作動停止状態を有してもよく、一方の状態では、ロック機構は、サイドシャフトのうちの一方(例えば32)を差動装置ハウジング37に連結させ、それにより、連結されたサイドシャフトはハウジングと共に回転する。これにより、次に、他方のサイドシャフト30が、ハウジング37、及びハウジングに連結しているサイドシャフト32と揃って回転し、それにより、サイドシャフト30、32の両方が同じ速度で回転する。
【0012】
少なくともいくつかの実現形態では、ロック機構46は電気的に作動され、環状ワイヤコイル49を有するソレノイド48と、コイルの内部に少なくとも部分的に収容されたアーマチュア又はプランジャ54を含んでもよい駆動部材とを含む。少なくともいくつかの実現形態では、プランジャ54もまた環状であり、プランジャ及びコイル49は、ハウジングと共に回転するように同軸に配置されハウジング37によって支持されており、一方のサイドシャフト(ここでは第2のサイドシャフト32)はコイルとプランジャを通って同軸に延びている。電力が電力線50を介してコイル49に供給されて、コイルに対してプランジャ54を第1の位置又は後退位置から第2の位置又は前進位置に変位させる磁場を生成する。電力がコイル49に供給されていない場合にプランジャ54が第2の位置から第1の位置に戻ることを促進するために、以下に示すように、ばね55(
図2)等の付勢部材をプランジャ54上又はプランジャと係合する構成要素上で作用させてもよい。少なくともいくつかの実現形態では、ロック機構46は、プランジャ54が第2の位置にあるときに作動し、ロック機構は、プランジャが第1の位置にあるときに作動停止する。示される例では、プランジャ54は、電力をコイル49に供給した場合に第2の位置にあり、電力をコイルに供給していない場合にはプランジャは第1の位置に移動するが、必要に応じて、この反対を有効とすることができる(例えば、ロック機構46を、付勢部材55によって作動位置に移動させ、コイルへの電力供給によって作動停止させることができる)。
【0013】
少なくともいくつかの実現形態では、ロック機構46は更に、ロック部材56を含むか又はロック部材56と関連付けることができ、ロック部材56は、以下に示すように、プランジャ54によって駆動され、サイドギヤ36とインタフェースするように適合されている。ロック部材56は略環状であってもよく、第2のサイドギヤ36及び/又はシャフト32の一部は、ロック部材を通って延びていてもよい。ロック部材56は、プランジャ54によって係合可能な後面57、及びギヤ又はクラッチ歯(例えばドッグクラッチ歯)などの少なくとも1つの係合フィーチャ58を有する前面59を含んでもよく、係合フィーチャ58は、第2のサイドギヤ36の後面上に形成された、対応する係合フィーチャ60(例えばギヤ又はドッグクラッチ歯)と係合するように構成されている。上記のとおり、ばね55は、ロック部材56に作用してロック部材をプランジャ54の中に強く押し込み、コイル49に電力供給されていない場合に、プランジャを第1の位置に移動させてもよい。図示した実現形態では、プランジャ54は、ハウジング壁62の一方の側に隣接して位置し、ロック部材56は、壁62の反対の側に隣接して位置している。壁62は、空洞64を含み、プランジャ54及びロック部材56はそれぞれ、軸線方向に延びる脚部66、68を含み(例えば
図2及び
図3)、脚部66、68は、壁の空洞64の中に又は空洞64を通って延び、それにより、プランジャ及びロック部材は、壁を横断して又は壁を通って互いに係合される。コイル49及びプランジャ54と同様に、ロック部材56もハウジング37によって支持され、ハウジング37と共に回転する。
【0014】
図2及び
図3に示す差動装置29は、開放モード又は開放位置で示されている(
図2)。図示した実現形態では、差動装置の開放位置では、コイル49に電力供給されておらず、プランジャ54は、その第1の位置にあり、ロック部材56はサイドギヤ36と係合していないため、サイドギヤは、ロック部材56及びハウジング37に対して回転することができる。開放位置では、サイドシャフト30、32は、互いに異なる速度で回転してもよい。しかし、特定の運転条件では、トルクが両輪に加えられるようにサイドシャフト30、32が揃って回転することが望ましい場合があり、それは車輪にとって最も有用である。
【0015】
ロック位置では、コイル49に電力供給され、プランジャ54は第2の位置に前進し、これがロック部材56を駆動してサイドギヤ36と係合させる(即ち、歯58は歯60と係合する)。それゆえ、サイドギヤ36はハウジング37に連結しているので、サイドギヤはハウジングに対して回転するのではなくハウジングと共に回転する。実際には、第2のサイドシャフト32は、ハウジング37にロックされ、ハウジング37と共に回転し、ハウジング37は、次に、第1のサイドシャフト30及び第2のサイドシャフト32を強制的に揃って回転させる。
【0016】
ロック機構46が作動しても、ロック部材56がサイドギヤ36と適切に係合し連結することが保証されない場合がある。例えば、歯58、60の軸線方向の端部が整列する場合があり、少なくとも一時的に、歯58、60の向かい合った噛み合いが妨げられる場合がある。換言すれば、ロック機構46が作動しても、ロック部材56とサイドギヤ36とが適切に係合しないように、歯58、60が位置する場合が時にはある。加えて、ロック機構46が作動している場合であっても、歯58、60が飛び越すか、又は係合に失敗する場合がある。
【0017】
同様に、ロック機構46が作動解除されても、サイドギヤ36からのロック部材56の係合解除が保証されない場合がある。換言すれば、作動信号がロック機構46から取り除かれた場合に、噛み合った歯58、60への圧力又は力により、ロック部材56がサイドギヤ36から即座に係合解除されることが妨げられる場合があり、従って、コイル49に電力供給されなくなった後、少なくともしばらくの間、差動装置29がロック位置に留まる場合がある。このような状況では、プランジャ54がロック部材56から分離している場合、プランジャの位置はロック部材56の位置を示さないので、プランジャ54の位置を監視することによって差動装置29がロックされているか、又はロック解除されているかどうかを判断する試みは効果的ではない。
【0018】
従って、プランジャ54及びロック部材56は、それらがユニットとして一緒に軸線方向に移動するように、一緒に連結されていてもよい。
図3~
図8に示されるような、少なくともいくつかの実現形態では、プランジャ54とロック部材56のうちの一方又は両方は、プランジャとロック部材とを一緒に保持する力を提供する磁石70を含む。示される例では、磁石70は、プランジャ54によってプランジャの脚部66で支持されている。プランジャ54の環状の本体72(
図4~
図7)は、コイル49の軸線方向幅又はエンベロープ内に少なくとも部分的に収容されているが、脚部66は、コイルエンベロープを少なくとも部分的に越えて延びてもよい(コイル49が略円筒形の場所では、エンベロープは円筒形の内部の軸線方向の長さを含んでもよい)。また、少なくともいくつかの実現形態では、磁石70は脚部66によって支持されてもよいので、プランジャ54がその第1の位置にあるか、又は第2の位置にあるかに関わらず、磁石はコイルエンベロープの外側にある。さもなくば、磁石70はプランジャ54(本体72及び/又は脚部66)によって支持されてもよく、磁石は、代わりに又は更に、ロック部材56によって、及びロック部材の脚部68(もしあれば)で、又は所望に応じて他の方法で支持されてもよい。磁石を使用する代わりに、他の連結構成を使用してもよい。例えば、プランジャ54及びロック部材56は、例えば、オーバーラップしたフィンガ又はフック、又は他の方法により、機械的に連結されてもよい。
【0019】
図2~
図8に示すように、プランジャ54は、コイル49によって生成された磁場に対して磁気応答する材料と、磁場に応答しても、又はしなくてもよい少なくとも1つの他の材料と、を含む複数の材料から形成されてもよい。従って、磁場がコイル49によって生成された場合、プランジャ54は、ある位置から別の位置に(例えば後退位置から前進位置に)駆動されてもよい。本明細書に記載されるような用途で使用されるタイプのソレノイド48によって生成される大きさの磁場が、そのような材料から形成されるか、又はそのような材料を含む構成要素を変位させ得る場合には、本明細書で使用する材料は磁場に応答する。本明細書に記載の例では、プランジャ54は、ロック機構46の効果的な動作を可能にするのに十分な力及び速度を有して、前進位置と後退位置との間を移動する必要がある。従って、全ての材料は、磁場、特に、大きな強度又は大きさをもつ磁場によって何らかの形で影響を受け得る一方で、本開示で材料という語を使用する場合、全ての材料が磁気応答するわけではない。
【0020】
例えば、鉄、ニッケル及びコバルトは、磁場によって比較的強力に影響を受けるので、磁気応答するものとして挙げられることが多い。プランジャ54の1つの材料は、鉄に限定されないが、強磁性で比較的強力に磁気応答することが知られている様々なグレードの鉄を含んでもよい。逆に、木、プラスチック及びガラス等の材料は、磁場によって受ける影響/引力がかなり弱いため、磁気応答しないものとして挙げられることが多い。もちろん、磁気応答性材料を、磁気応答性ではない材料と組み合わせて(例えば磁性材料をポリマー材料中に混合することによって)、磁気応答性の構成要素を形成してもよい。
【0021】
少なくともいくつかの実現形態では、プランジャ54は、1つ以上の取付けフィーチャによって、又は第1の本体と第2の本体との分離を阻止又は防止する対向しオーバーラップする表面によって、又はこれらの両方によって、一緒に連結された第1の本体74及び第2の本体76を含む。取付けフィーチャの非限定的な例は、嵌合する突出部及び空洞を含み、突出部は、フランジ、タブ、フィンガ、舌状部等を含んでもよく、空洞は、本体の下部切欠き部分に隣接する、スロット、穴、領域等を含んでもよい。少なくともいくつかの実現形態では、第1の本体74及び第2の本体76は、一体的に一緒に連結されているので、単一構成要素として移動し、使用中に分離されることはない。更に、少なくともいくつかの実現形態では、第1の本体74及び第2の本体76は、本体のうちの少なくとも一方の一部を破壊(例えば切断又は破断)しなければ分離されないように構成されてもよい。
【0022】
示される例では、第1の本体74は環状であり、強磁性金属で形成され、第2の本体76は環状であり、ポリマー又は複合材料を含んでもよい非強磁性材料で形成される。示されるように、第1の本体74は、対向する面80、82をつなぐ略円筒形の側壁78を含む。対向する面80、82の一方又は両方は、以下でリム84と呼ばれる、半径方向内向きに延びる突出部を含んでもよい。示される例では、一方の面80はリム84を含む。リム84は、第1の本体74の円周の全て又は一部のみに沿って延びてもよく、1つ以上のセグメントにおいて円周方向に連続又は不連続であってもよい。半径方向、軸線方向、及び円周方向という用語は、第1の本体74の中心軸線86に対するものである。その点で、
図8に示すように、側壁78の少なくとも一部の内面90まで延びる半径88は、リム84の少なくとも一部まで至る半径92よりも長さが大きくてもよい。示される例では、リム84の内面94が第1の本体74の最小内径を画定し、側壁78の内面90は、より大きな、この実現形態では最大の、第1の本体74の内径を画定する。1つ以上のスロット96又は他の開口部が、側壁78の中に又は側壁78を通して形成されてもよい。スロット96のうちの1つ以上が、必要に応じて、及び
図5、
図7、及び
図8に示すように、第1の本体74の1つの面80又は82に向かって開いていてもよく、又は、スロットは、必要に応じて、第1の本体74によって完全に囲まれた穴を備えることができる。側壁78の外面98は、必要に応じて、円周方向に連続していてもよく、半径方向内向きに面する、ソレノイド48の面100(
図3)に隣接して収容されるように構成されていてもよい。
【0023】
第2の本体76は、少なくとも部分的に第1の本体74の内部に収容されていてもよい。図示した実現形態では、第2の本体76は側壁101を有し、その少なくとも一部は、側壁78の内径よりも小さい内径を有し、第2の本体76の少なくとも一部の外面102(
図8)は、第1の本体74の側壁78の内面90と接触して収容されている。側壁101の内面103は、ハウジング37の延長部の周囲に収容されるように寸法決めされており、任意の所望の形態で外形を描くか又は構成されていてもよい。外面102の少なくとも一部は、第1の本体74の側壁78の内径(又は半径)よりも小さく、リム84の内径(又は半径)よりも大きい、外径(又は半径)を画定する。換言すれば、第2の本体76の少なくとも一部は、半径方向にリム84にオーバーラップするので、リムは、第2の本体76が第1の本体74の内部からリム84の方向に外れることを防止する停止面を提供する。それゆえ、リム84は、第1の本体74に対する第2の本体76の一方向における移動に抗する、軸線方向の停止部を提供する。第1の本体74が面80、82の各々に、又はその側壁78の端部にリム84を含む例では、第2の本体76の一部が対向するリムの間に閉じ込められて、いずれかの方向における、第1の本体74に対しての第2の本体76の軸線方向移動が阻止又は防止されてもよい。対向するリムがなくても、第1の本体74に対しての第2の本体76の軸線方向移動が他の構造によって阻止又は防止されてもよく、他の構造は、タブフック、テーパー角α(
図7)、あるいは、第2の本体の材料、又は第1の本体側壁内の溝の中に延びるか若しくはスロットを通って延びる第2の本体の部分によって、対向する面の間に収容されるか若しくは対向する面で取り囲まれる、第1の本体の他の突出部、を含むが、これらに限定されない。
【0024】
図示した実現形態では、第2の本体76は、第1の本体74から軸線方向に間隔を空けて位置する端部104を有する脚部66を画定する。示されるように、脚部66は、リム84から軸線方向に離れるように延び、脚部66がロック部材56に向かって延びるように、プランジャ54はアセンブリ内で方向付けされている。代わりに、脚部66を、第1の本体74の他方の側面から離れて延びるように構成することができる(そのとき、第1の本体は向きが反転される)。脚部66は、第1の本体側壁78に対して半径方向外側に延びてもよく、それにより、軸線86からの半径方向距離は、側壁78の外面98よりも、脚部66の半径方向外面106の方が、より大きい。示される例では、脚部66の半径方向寸法の少なくとも半分は、第1の本体側壁78の外径よりも大きい距離に位置している。また、図示した実現形態では、1つ以上及び最大で全ての脚部66の内面108が、第1の本体74の最小内径よりも大きい半径方向距離に位置している。
図9に示すプランジャ54’は、外面106’を有する脚部66’を有する第2の本体76’を有し、外面106’は、第1の本体側壁78の外面98の半径方向距離に実質的に等しい半径方向距離にある。脚部66’の内面108’は、第1の本体側壁78の内面90の半径方向距離に実質的に等しい半径方向距離にあってもよい。この場合、実質的に等しいとは、等しい場合、及び等しい場合のプラス又はマイナス20%以内を含む。プランジャ54’は、他の点ではプランジャ54と類似又は同一であってもよい。
【0025】
示されるように、脚部66は、第1の本体側壁78内のスロット96の中に、及び/又はスロット96を通って延びてもよく、それにより、脚部66の少なくとも一部が側壁78の外面98の半径方向外側に位置している。脚部66がスロット96の中に、又はスロット96を通って延びると、第2の本体76の一部は、スロット96の一部を画定する、軸線方向に面する停止面110に半径方向にオーバーラップし係合する。これが、停止面110の方向への、第1の本体74に対する第2の本体76の相対的な軸線方向の動きを阻止又は防止する。それゆえ、第1の本体74に対する第2の本体76の、軸線方向のいずれの方向への動きも、本体の一部(例えば、第1の本体と第2の本体の両方の、軸線方向に対向する停止面)の係合により阻止又は防止されて、第2の本体76が第1の本体74から外れることが防止される。少なくともいくつかの実現形態では、第1の本体74及び第2の本体76は、相対的な軸線方向の動きが許容されないように堅く保持されていてもよい。
【0026】
プランジャ54の製造及び組み立てを容易にするために、プランジャは、第2の本体76が、第1の本体74の中に、及び/又は第1の本体74上にモールド成形されるオーバーモールド又はインサート成形プロセスによって形成されてもよい。第1の本体74は、所望に応じて、完全に形成されてから、金型の中に挿入されてもよい。次に、第2の本体76は、構成要素を一緒に連結させるために、又はプランジャ54が形成された後に、第1の本体74から第2の本体76が外れることを少なくとも阻止するために設けられた所望の嵌合若しくはオーバーラップフィーチャと共に、適切なモールド成形プロセス(例えば射出成形であるが、これに限定されない)によって形成されてもよい。第2の本体76をモールド成形することにより、プランジャが金属のみから形成されるプランジャと比較して、半径方向外側及び軸線方向に延びる脚部66の形成が容易になる。
【0027】
プランジャが全て金属である場合、プランジャは、典型的には、例えば旋盤で機械加工され、プランジャと脚部の形状は旋盤プロセスによって制限され、脚部の外径はプランジャの側壁の外径よりも大きくない。プランジャが2つの金属部品から形成される場合、内側部品のプランジャ脚部の外径は、外側部品の外径より小さくなければならない。脚部の内径が小さいほど、シャフトが連結されている隣接する差動装置ハウジングのトラニオンの外径が小さい必要があり、これが差動装置ハウジングの弱点になる可能性がある。従って、プランジャ54におけるように、脚部66を半径方向外側に配置する能力により、差動装置ハウジング37の隣接部分をより厚く、より強くすることができ、またトラニオン半径R(
図3)をより大きくすることができる。これが、差動装置ハウジング37の強度を大幅に増加させ、差動装置の有効寿命を増加させる。更に、プランジャが2つの金属片から形成される場合、それらは、圧入、溶接及び/又はステーキングなどによって一緒に連結されなければならず、これは、大きな労働力を要し、時間がかかり、費用のかかるプロセスとなり得る。
【0028】
更に、第2の本体76は、プランジャ54がその前進位置に移動したときに差動装置ハウジング37の一部と係合してもよい少なくとも1つの停止面114を含んでもよい。停止面114は、少なくともいくつかの実現形態では、
図7に示すように、第1の本体74の隣接面80を超えて軸線方向に延びてもよく、それにより、この面114は差動装置ハウジング37と係合し、第1の本体の面80は係合しない。これにより、ハウジング37と第1の本体74との間に空隙116(
図7にも示されている)が設けられる。所望に応じて、複数の停止面114を円周方向に間隔を空けて設けてもよい。示される例では、各脚部66のいずれの側にも停止面114が設けられているが、他の構成が使用されてもよい。更に、空隙116は別の方法で設けられてもよい。
【0029】
少なくともいくつかの実現形態では、プランジャ54が完全に前進した場合でも、空隙116は、差動装置ハウジング37と第1の本体74の面80との間に空間を提供する(例えば、停止面114が面80を超えて軸線方向に延びる程度まで)。そうすることにより、第1の本体74と差動装置ハウジング37との間に、連続的な又は完全に閉じた磁気回路が形成されることを防ぐことができる。そのような閉回路は、プランジャ54がその後退位置に向かって移動するはずである場合でさえ、ハウジング37に対する第1の本体74の(従って、プランジャ54の)位置を保持するようにはたらく場合がある。空隙116が存在し、磁気回路が完全には閉じられていないので、ロック部材56をロック解除することが所望される場合に、プランジャ54は、その前進位置からその後退位置に向かってより容易に移動する。他の構成が使用されてもよい。
【0030】
完全に金属製のプランジャでは、空隙は、良好に制御されたフライス加工プロセスで形成される必要があるが、これは難しい場合がある。更に、2つの金属体を組み立てる場合、圧入、溶接、及び/又はステーキングなどのプロセス中に空隙が確実に残るように注意する必要があり、部品の位置を制御し、空隙が確実に残るようにすることもまた、困難な場合がある。これらの困難により、モールド成形されていない2つの本体から形成されたプランジャを製造及び組み立てるコストは増加する。上述の例では、第2の本体76が第1の本体74にモールド成形される場合、2つの本体の製造及び組み立ての両方を含むモールド成形プロセス中に、1つ以上の空隙を比較的容易に設けることができる。それゆえ、このようにして、空隙116はプランジャ54内に容易に形成され、確実に維持される。
【0031】
車両差動装置アセンブリのロック機構46は、ロック解除位置とロック位置との間の作動信号に応答して移動可能なロック要素56を含んでもよい。ロック要素56は、ロック要素が差動装置29の開放位置に対応するロック解除位置にある場合に、差動装置アセンブリ29のサイドギヤ34、36が互いに対して様々な速度で回転することを可能にするように構成されていてもよい。ロック要素56はまた、一般に、ロック要素が差動装置29のロック位置に対応するロック位置にある場合に、サイドギヤ34、36を概ね同じ速度で回転させる。少なくともいくつかの実現形態では、ロック機構46は、ワイヤコイル49、コイルによって生成される磁場によって駆動されるプランジャ54、及びプランジャによって係合され駆動されるロック部材56を含む。上記のように、ロック部材56は、差動装置29のギヤ36とインタフェースして、開放位置とロック位置との間で差動装置の状態を変化させる。プランジャ54は、第1の材料から形成された第1の本体74と、第2の材料から形成された第2の本体76とを有する2つの異なる材料から形成されてもよい。第1の材料は磁気応答性であってもよく、第2の材料は、第2の本体を第1の本体にモールド成形することにより一体型のプランジャを形成できるようにモールド成形可能であってもよい。本明細書で使用する場合、一体型という用語は、2つ以上の別個の構成要素と比較すると、単一の均質材料から形成されたかのようにプランジャ54を取り扱い組み立てることができることを意味し、少なくともいくつかの実現形態における本体は、接着剤、ファスナ、溶接などを使用することなく、相互接続され一緒に保持されている。
【0032】
上記の説明は例示を意図しており、限定は意図していないことを理解されたい。提示された例以外の多くの実施形態及び用途が、上述の記載を読むと明らかになるであろう。本発明の範囲は、上述の記載を参照して決定されるべきではなく、代わりに、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と併せて参照して決定されるべきである。本明細書で論じられる技術において将来の開発が行われることになり、開示されたシステム及び方法が、そのような将来の実施形態に組み込まれることが期待され意図される。要するに、本発明は修正及び変更が可能であり、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解すべきである。
【0033】
特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書でそうではないと明示的に示さない限り、その最も幅広い正当な解釈、及び当業者によって理解されるような通常の意味が与えられることを意図している。特に、「1つの(a)」、「前記(the)」、「前記(said)」などの単数の冠詞の使用は、請求項がそうではないと明示的に限定しない限り、示された要素の1つ又は複数を引用すると読み取るべきである。上記の説明では、1つ以上の例示的な実施形態に対して、様々な動作パラメータ及び構成要素について説明した。これら特定のパラメータ及び構成要素は、例として含まれており、限定することを意図したものではない。
【0034】
上記の説明における「一例(one example、an example)」、「一実施形態(one embodiment、an embodiment)」、「一実現形態(an implementation)」、又は「少なくともいくつかの実現形態(at least some implementations)」への言及は、その例に関して説明する特定のフィーチャ、構造又は特性が、革新的フィーチャ又は構成要素の1つ以上を含むが、必ずしもこれらの全てを含むとは限らない、少なくとも1つの例又は実現形態に含まれることを意味する。様々な例、実施形態又は実現形態への言及は、これらが出現するたびに、必ず同じ例、実施形態又は実現形態を指すとは限らない。