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特許7194698患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するための抗C5抗体の投薬量および投与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するための抗C5抗体の投薬量および投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221215BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61P1/04
A61P9/00
A61P7/00
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019563123
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018033678
(87)【国際公開番号】W WO2018217638
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】62/509,576
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アディブ, オーリー エシャク
(72)【発明者】
【氏名】ベドロシアン, カミール
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン, ハジット バリス
(72)【発明者】
【氏名】クロラップ, アリーナ
(72)【発明者】
【氏名】マックナイト, スーザン ファース
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508262(JP,A)
【文献】国際公開第2018/053039(WO,A1)
【文献】J. Immunol. (May 2017) vol.198, issue 1, Supplement, Abstract 59.10, <https://www.jimmunol.org/content/198/1_Supplement/59.10>
【文献】Nephrol. Dial. Transplant. (Feb 2017) vol.32, issue 3, p.466-474
【文献】Ann. Hematol. (2009) vol.88, issue7, p.705-707
【文献】Gut (1984) vol.25, issue 9, p.1013-1015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 1/04
A61P 9/00
A61P 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配列番号1、2および3に示されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、タンパク質漏出性腸症を有するヒト患者を処置するための組成物であって、前記組成物は、前記患者に、投与サイクルの間に、以下:
i. 10kgから<20kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
ii. 20kgから<30kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
iii. 30kgから<40kgの体重の患者に、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;または
iv. ≧40kgの体重の患者に、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごと
与されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
それぞれ配列番号1、2および3に示されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、リンパ管拡張症を有するヒト患者を処置するための組成物であって、前記組成物は、前記患者に、投与サイクルの間に、以下:
i. 10kgから<20kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
ii. 20kgから<30kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
iii. 30kgから<40kgの体重の患者に、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;または
iv. ≧40kgの体重の患者に、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに
与されることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
前記組成物は、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgまたは600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、≧40kgの体重の患者に、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7および8に示されるとおりの重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗C5抗体は、配列番号10および11に示されるとおりの重鎖および/または軽鎖配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の投与は、前記投与サイクルの間に、100μg/mLまたはこれより高い前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の投与は、前記投与サイクルの間に、200μg/mLまたはこれより高い前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、静脈内投与のために製剤化される、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の投与は、血清アルブミンの正常レベルに向かうシフトを生じる、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の投与は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.7倍増大する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の投与は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも5倍増大する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の投与は、正常な全タンパク質血清レベルに向かうシフトを生じる、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物の投与は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍増大する、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物の投与は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも2.26倍増大する、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の投与は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.8に減少する、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物の投与は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/3.25に減少する、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の投与は、タンパク質喪失、浮腫、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症の低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じる、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記患者は、18歳未満である、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記投与サイクルは、合計27週間の処置である、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、300mg、600mg、900mgもしくは1200mgの用量で前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを前記投与サイクル後に最長2年間にわたって2週間ごとに、投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
ヒト患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するためのキットであって、前記キットは、
(a)ある用量の、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント;ならびに
(b)ヒト患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するための方法において、前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示、
を含む、キット。
【請求項25】
ヒト患者においてリンパ管拡張症を処置するためのキットであって、前記キットは、
(a)ある用量の、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント;ならびに
(b)ヒト患者においてリンパ管拡張症を処置するための方法において、前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示、
を含む、キット。
【請求項26】
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgの用量で投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgの用量で4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項24または25に記載のキット。
【請求項27】
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgの用量で投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgの用量で3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項24または25に記載のキット。
【請求項28】
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgの用量で投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgの用量で3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項24または25に記載のキット。
【請求項29】
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に、1200mgの用量で投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgの用量で3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、投与されることを特徴とする、請求項24または25に記載のキット。
【請求項30】
前記組成物は、タンパク質漏出性腸症を有する患者における使用のために、複数回のIV用量後に、安全で、耐容性があり、効果的でかつ十分に非免疫原性であることが決定される、請求項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物は、リンパ管拡張症を有する患者における使用のために、複数回のIV用量後に、安全で、耐容性があり、効果的でかつ十分に非免疫原性であることが決定される、請求項に記載の組成物。
【請求項32】
前記患者は、小児患者である、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
この出願は、2017年5月22日に出願された米国仮出願第62/509,576号の利益を主張する。上記で言及された仮特許出願の全内容は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出されておりかつその全体において参考として援用される配列表を含む。上記ASCIIコピー(2018年5月15日作成)は、名称がAXJ-240PC_SL.txtであり、サイズが25,120バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
タンパク質漏出性腸症(protein-losing enteropathy)(PLE)は、腸管を通じたタンパク質および他の栄養素の喪失によって特徴づけられる希な状態である。PLEを有する患者は、浮腫、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、下痢、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症を含む種々の症状に悩まされ得る。PLEの診断は一般に、糞便のα-1アンチトリプシンのクリアランスに基づき、処置は、症状の管理および食事の改善(dietary modification)を含む。
【0004】
PLEは、単一の疾患ではなく、粘膜傷害または腸の障害の結果として生じる合併症である。1つのこのような障害は、原発性腸リンパ管拡張症(「腸リンパ管拡張症(intestinal lymphangiectasia)」、「原発性腸リンパ管拡張症(primary intestinal lymphangiectasia)、および「PIL」としても公知)である。成人がリンパ管拡張症と診断されることはあるが、それは、小児および若年成人において最も一般的に報告される。診断は、内視鏡評価および組織生検標本の組織病理検査に基づく。現在の処置としては、中鎖トリグリセリド(MCT)を補充した低脂肪食プラン、オクトレオチドの投与、および血清アルブミン輸液が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有する患者は、実質的な病的状態および死亡のリスクにある。よって、PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有するヒト患者(例えば、小児患者)を処置するための方法を提供することは、本明細書の目的である。
【0006】
要旨
患者(例えば、18歳未満の小児患者)においてタンパク質漏出性腸症(例えば、リンパ管拡張症)を処置するための組成物および方法が本明細書で提供され、上記方法は、上記患者に、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程を包含し、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、特定の臨床投与レジメンに従って(すなわち、初期の高いおよび頻繁な投与レジメン、続いて、アルブミンレベルが正常化する場合の定期的な維持投与に従って)、投与される(または投与のためのものである)。一実施形態において、上記患者は、以前に補体インヒビターで処置されたことがない(例えば、上記患者は、補体インヒビター処置未経験患者である)。
【0007】
例示的な抗C5抗体は、エクリズマブ(Soliris(登録商標))である。他の実施形態において、上記抗体は、エクリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。よって、一実施形態において、上記抗体は、配列番号7に示される配列を有する、エクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する、エクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号1、2および3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに、配列番号4、5および6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号7および配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号9に示される配列を有するエクリズマブの重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。別の実施形態において、上記抗体は、配列番号10および配列番号11にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む。
【0008】
別の実施形態において、上記抗体は、上記で言及される抗体との結合に関して競合する、および/または上記で言及される抗体とC5上の同じエピトープに結合する。別の実施形態において、上記抗体は、上記で言及される抗体と少なくとも約90% 可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、配列番号7および配列番号8と少なくとも約90%、95%または99% 可変領域同一性)を有する。
【0009】
一実施形態において、本明細書で記載される方法に従って処置される上記患者は、18歳以上(≧18歳)である成人である。別の実施形態において、本明細書で記載される方法に従って処置される上記患者は、18歳未満(<18歳)である小児患者である。一実施形態において、上記小児患者は、12歳未満(<12歳)である。別の実施形態において、上記小児患者は、6歳未満(<6歳)である。別の実施形態において、上記小児患者は、2歳未満(<2歳)である。別の実施形態において、上記小児患者は、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳または18歳未満である。
【0010】
一実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの用量は、上記患者の体重に基づく。例えば、一実施形態において、約300mg、約600mg、約900mg、および/または約1200mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、患者の体重に基づいて、その患者に投与される。一実施形態において、300mgまたは600mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に投与される。別の実施形態において、600mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<30kgの体重の患者に投与される。別の実施形態において、600mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に投与される。別の実施形態において、900mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に投与される。別の実施形態において、1200mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に投与される。ある種の実施形態において、投与レジメンは、最適な望ましい応答(例えば、有効な応答)を提供するために調節される。
【0011】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、1またはこれより多くの投与サイクルにわたって投与される。一実施形態において、上記投与サイクルは、27週間である。
【0012】
一実施形態において、上記処置は、誘導相を含み、上記誘導相では、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、2週間にわたって1週間あたり2回、続いて、3回の毎週用量(three weekly dose)を投与される。別の実施形態において、上記誘導相に続いて、維持相があり、維持相では、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、2週間ごとに投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに投与される。
【0013】
別の実施形態において、タンパク質漏出性腸症(PLE)を有するヒト患者を処置するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、投与サイクルの間に、有効量の、CDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列(それぞれ配列番号1、2および3に示されるとおり)ならびにCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列(それぞれ配列番号4、5および6に示されるとおり)を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程を包含し、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の用量で投与される: i)10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;ii)20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;iii)30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;またはiv)≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに。
【0014】
別の実施形態において、リンパ管拡張症を有するヒト小児患者を処置するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、投与サイクルの間に、有効量の、CDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列(それぞれ配列番号1、2および3に示されるとおり)ならびにCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列(それぞれ配列番号4、5および6に示されるとおり)を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程を包含し、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下の用量で投与される: i)10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;ii)20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;iii)30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;またはiv)≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに。
【0015】
別の実施形態において、600mgの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<30kgの体重の患者に投与される。
【0016】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0017】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0018】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0019】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0020】
別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの完了後に2週間ごとに投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの完了後に、毎月の基準(例えば、4週間ごと)または隔月の基準(例えば、8週間ごとに)で投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの完了後に、1年間にわたって毎月の基準または隔月の基準で投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの完了後に、2年間、3年間、4年間または5年間にわたって毎月の基準または隔月の基準で投与される。特定の実施形態において、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記投与サイクルの完了後に、最長2年間にわたって毎月の基準または隔月の基準で投与される。
【0021】
別の局面において、記載される処置レジメンは、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの特定の血清トラフ濃度を維持するために十分である。例えば、一実施形態において、上記処置は、50μg/mL、55μg/mL、60μg/mL、65μg/mL、70μg/mL、75μg/mL、80μg/mL、85μg/mL、90μg/mL、95μg/mL、100μg/mL、105μg/mL、110μg/mL、115μg/mL、120μg/mL、125μg/mL、130μg/mL、135μg/mL、140μg/mL、145μg/mL、150μg/mL、155μg/mL、160μg/mL、165μg/mL、170μg/mL、175μg/mL、180μg/mL、185μg/mL、190μg/mL、200μg/mL、205μg/mL、210μg/mL、215μg/mL、220μg/mL、225μg/mL、230μg/mL、240μg/mL、245μg/mL、250μg/mL、255μg/mL、260μg/mL、265μg/mL、270μg/mL、280μg/mL、290μg/mL、300μg/mL、305μg/mL、310μg/mL、315μg/mL、320μg/mL、325μg/mL、330μg/mL、335μg/mL、340μg/mL、345μg/mL、350μg/mL、355μg/mL、360μg/mL、365μg/mL、370μg/mL、375μg/mL、380μg/mL、385μg/mL、390μg/mL、395μg/mL、もしくは400μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。一実施形態において、上記処置は、100μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、150μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、200μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、250μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、300μg/mLまたはこれより高い上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、100μg/mL~200μg/mLの間の上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態において、上記処置は、約175μg/mLの上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する。
【0022】
別の実施形態において、有効な応答を得るために、上記抗C5抗体は、上記患者に、上記患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μgまたは260μgの抗体を維持する量および頻度で投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体は、上記患者に、上記患者の血液1ミリリットルあたり50μg~250μgの間の抗体を維持する量および頻度で投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体は、上記患者に、上記患者の血液1ミリリットルあたり100μg~200μgの間の抗体を維持する量および頻度で投与される。別の実施形態において、上記抗C5抗体は、上記患者に、上記患者の血液1ミリリットルあたり約175μgの抗体を維持する量および頻度で投与される。
【0023】
別の実施形態において、有効な応答を得るために、上記抗C5抗体は、上記患者に、最小の遊離C5濃度を維持する量および頻度で投与される。例えば、一実施形態において、上記抗C5抗体は上記患者に、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mLもしくはこれより低い遊離C5濃度を維持する量および頻度で投与される。
【0024】
上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、任意の適切な手段によって患者に投与され得る。一実施形態において、上記抗体は、静脈内投与のために製剤化される。
【0025】
一実施形態において、上記患者は、本明細書で記載される処置方法を受ける前に、Neisseria髄膜炎菌ワクチンをワクチン接種されている。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で処置を受ける患者は、ワクチン接種後2週間まで、適切な予防的抗生物質での処置を受け得る。血清タイプA、C、Y、W 135、およびBに対するワクチンは、利用可能であれば、一般的な病原性髄膜炎菌血清タイプを防止するために推奨される。
【0026】
本明細書で提供される処置方法の有効性は、任意の適切な手段を使用して評価され得る。一実施形態において、PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有する患者に関しては、上記処置は、タンパク質喪失、浮腫、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症の低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じる。
【0027】
別の実施形態において、上記処置は、全タンパク質(例えば、全血清タンパク質)の正常レベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、全タンパク質の正常レベルに近いか、または全タンパク質の正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への、全タンパク質血清レベルの増大を経験する。別の実施形態において、上記処置は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍または2.0倍増大する。特定の実施形態において、上記処置は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍増大する。別の実施形態において、上記処置は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍または3.0倍増大する。特定の実施形態において、上記処置は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも約2.3倍(例えば、2.26倍)増大する。
【0028】
別の実施形態において、上記処置は、正常な血清アルブミンレベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、血清アルブミンの正常レベルに近いか、または血清アルブミンの正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への血清アルブミンレベルにおける増大を経験する。別の実施形態において、上記処置は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍または2.0倍増大する。特定の実施形態において、上記処置は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.7倍増大する。別の実施形態において、上記処置は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4.0倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5.0倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6.0倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍または7.0倍増大する。別の実施形態において、上記処置は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも5.0倍増大する。
【0029】
別の実施形態において、上記処置は、正常な血清TNFR1レベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、血清TNFR1の正常レベルに近いか、または血清TNFR1の正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への血清TNFR1レベルにおける減少を経験する。別の実施形態において、上記処置は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.0、1/1.1、1/1.2、1/1.3、1/1.4、1/1.5、1/1.6、1/1.7、1/1.8、1/1.9、1/2.0、1/2.1、1/2.2または1/2.3に減少する。特定の実施形態において、上記処置は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.8に減少する。別の実施形態において、上記処置は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/2.0、1/2.1、1/2.2、1/2.3、1/2.4、1/2.5、1/2.6、1/2.7、1/2.8、1/2.9、1/3.0、1/3.1、1/3.2、1/3.3、1/3.4、1/3.5、1/3.6、1/3.7、1/3.8、1/3.9、1/4.0、1/4.1、1/4.2、1/4.3、1/4.4、1/4.5、1/4.6、1/4.7、1/4.8、1/4.9、1/5.0、1/5.1、1/5.2、1/5.3、1/5.4、1/5.5、1/5.6、1/5.7、1/5.8、1/5.9、1/6.0、1/6.1、1/6.2、1/6.3、1/6.4、1/6.5、1/6.6、1/6.7、1/6.8、1/6.9、または1/7.0に減少する。特定の実施形態において、上記処置は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも約1/3.3(例えば、1/3.25)に減少する。
【0030】
別の実施形態において、上記処置は、正常な遊離C5レベルに向かうシフトを生じる。一実施形態において、上記遊離C5レベルは、検出限界未満に減少される。別の実施形態において、上記遊離C5レベルは、第1の処置用量後に検出限界未満に減少される。
【0031】
別の実施形態において、上記処置は、顆粒球および単球を含む白血球(WBC)上の正常細胞膜傷害複合体(MAC)沈着に向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、本明細書で記載される方法に従って処置される患者は、59日間後に、白血球(WBC)上のMAC沈着においてベースラインから約60%低減を経験する。別の実施形態において、上記処置は、白血球(WBC)上のMAC沈着においてベースラインから少なくとも約40%、50%、60%、70%または80%低減を生じる。別の実施形態において、上記処置は、白血球(WBC)上のMAC沈着において、ベースラインと比較して多くとも1/1.0、1/1.1、1/1.2、1/1.3、1/1.4、1/1.5、1/1.6、1/1.7、1/1.8、1/1.9、1/2.0、1/2.1、1/2.2、1/2.3、1/2.4、1/2.5、1/2.6、1/2.7、1/2.8、1/2.9、1/3.0、1/3.1、1/3.2、1/3.3、1/3.4、1/3.5、1/3.6、1/3.7、1/3.8、1/3.9、1/4.0、1/4.1、1/4.2、1/4.3、1/4.4、1/4.5、1/4.6、1/4.7、1/4.8、1/4.9、1/5.0、1/5.1、1/5.2、1/5.3、1/5.4、1/5.5、1/5.6、1/5.7、1/5.8、1/5.9、1/6.0、1/6.1、1/6.2、1/6.3、1/6.4、1/6.5、1/6.6、1/6.7、1/6.8、1/6.9または1/7.0に減少する。
【0032】
別の実施形態において、全タンパク質レベル、血清アルブミンレベル、血清TNFR1レベル、遊離C5レベル、および/または白血球(WBC)上のMAC沈着は、治療に対する応答性を評価するために使用される(例えば、全血清タンパク質および/もしくは血清アルブミンレベルにおける増大ならびに/または血清TNFR1レベルにおける減少は、PLE(例えば、リンパ管拡張症)の少なくとも1つの徴候における改善を示す。
【0033】
別の局面において、患者(例えば、PLE(例えば、リンパ管拡張症のような)を有する患者)に投与するための、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、i)10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;ii)20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;iii)30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;またはiv)≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mg 3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0034】
一実施形態において、上記抗体は、PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有する患者における使用のために複数回のIV用量後に、安全で、耐容性があり、かつ十分に非免疫原性であると決定される。
【0035】
本明細書で記載される方法における使用に適合された治療上有効な量において、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、エクリズマブ)および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を含むキットがさらに提供される。一実施形態において、上記キットは、a)配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントのある用量;ならびにb)本明細書で記載される方法のうちのいずれかに従って上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示を含む。
【0036】
別の実施形態において、上記キットは、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントのある用量を含み、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0037】
別の実施形態において、上記キットは、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントのある用量を含み、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0038】
別の実施形態において、上記キットは、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントのある用量を含み、ここで上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0039】
別の実施形態において、上記キットは、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントのある用量を含み、上記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
タンパク質漏出性腸症を有するヒト患者を処置するための方法であって、前記方法は、前記患者に、投与サイクルの間に、有効量の、それぞれ配列番号1、2および3に示されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程を包含し、ここで前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
i. 10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
ii. 20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
iii. 30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;または
iv. ≧40kgの体重の患者に、1200mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに
の用量で投与される、方法。
(項目2)
リンパ管拡張症を有するヒト患者を処置するための方法であって、前記方法は、前記患者に、投与サイクルの間に、有効量の、それぞれ配列番号1、2および3に示されるCDR1、CDR2およびCDR3重鎖配列ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示されるCDR1、CDR2およびCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを投与する工程を包含し、ここで前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
i. 10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
ii. 20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
iii. 30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;または
iv. ≧40kgの体重の患者に、1200mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、
の用量で投与される、方法。
(項目3)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgまたは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目6)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に、1200mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目7)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号7および8に示されるとおりの重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記抗C5抗体は、配列番号10および11に示されるとおりの重鎖および/または軽鎖配列を含む、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記処置は、前記投与サイクルの間に、100μg/mLまたはこれより高い前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記処置は、前記投与サイクルの間に、200μg/mLまたはこれより高い前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの血清トラフ濃度を維持する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、静脈内投与のために製剤化される、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記処置は、血清アルブミンの正常レベルに向かうシフトを生じる、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記処置は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.7倍増大する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記処置は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも5倍増大する、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記処置は、正常な全タンパク質血清レベルに向かうシフトを生じる、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記処置は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍増大する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記処置は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも2.26倍増大する、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記処置は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.8に減少する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記処置は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/3.25に減少する、項目1~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記処置は、タンパク質喪失、浮腫、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症の低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じる、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記患者は、18歳未満である、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記投与サイクルは、合計27週間の処置である、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、300mg、600mg、900mgもしくは1200mgを前記投与サイクル後に最長2年間にわたって2週間ごとに、の用量で投与される、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
ヒト患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するためのキットであって、前記キットは、
(a)ある用量の、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント;ならびに
(b)ヒト患者においてタンパク質漏出性腸症を処置するための方法において、前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示、
を含む、キット。
(項目25)
ヒト患者においてリンパ管拡張症を処置するためのキットであって、前記キットは、
(a)ある用量の、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント;ならびに
(b)ヒト患者においてリンパ管拡張症を処置するための方法において、前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示、
を含む、キット。
(項目26)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目24または25に記載のキット。
(項目27)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目24または25に記載のキット。
(項目28)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目24または25に記載のキット。
(項目29)
前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、≧40kgの体重の患者に、1200mgを投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される、項目24または25に記載のキット。
(項目30)
サイクルで投与するための、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントであって、ここで前記抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
i. 10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgもしくは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
ii. 20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;
iii. 30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに;または
iv. ≧40kgの体重の患者に、1200mgを前記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、
投与される、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目31)
前記抗体は、タンパク質漏出性腸症を有する患者における使用のために、複数回のIV用量後に、安全で、耐容性があり、効果的でかつ十分に非免疫原性であることが決定される、項目30に記載の抗体。
(項目32)
前記抗体は、リンパ管拡張症を有する患者における使用のために、複数回のIV用量後に、安全で、耐容性があり、効果的でかつ十分に非免疫原性であることが決定される、項目30に記載の抗体。
(項目33)
前記患者は、小児患者である、項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1-1】図1A~1Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者A」の検査パラメーター(laboratory parameter)および関連パラメーターを示す。
図1-2】図1A~1Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者A」の検査パラメーター(laboratory parameter)および関連パラメーターを示す。
図1-3】図1A~1Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者A」の検査パラメーター(laboratory parameter)および関連パラメーターを示す。
図1-4】図1A~1Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者A」の検査パラメーター(laboratory parameter)および関連パラメーターを示す。
【0041】
図2-1】図2A~2Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者B」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図2-2】図2A~2Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者B」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図2-3】図2A~2Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者B」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図2-4】図2A~2Dは、処置第1~5週間目にわたる「患者B」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
【0042】
図3図3Aは、処置22日目までの間中の「患者B」の(基準低値(low normal value)および基準高値(high normal value)と比較した)血清アルブミンレベルを示すグラフである。図3Bは、処置22日目までの間中の「患者B」の(基準低値および基準高値と比較した)生の血清アルブミンレベルを示す。
【0043】
図4図4Aは、処置22日目までの間中の「患者B」の(基準低値および基準高値と比較した)全血清タンパク質レベルを示すグラフである。図4Bは、処置22日目までの間中の「患者B」の(基準低値および基準高値と比較した)生の全血清タンパク質レベルを示す。
【0044】
図5図5は、処置15日目までの間中の「患者B」に関する遊離C5 μg/mLおよびピークにおいて薬物動態(PK)および薬力学(PD)のベースライン/トラフを示すグラフである。
【0045】
図6図6Aは、処置15日目までの間中の「患者B」の体重を示すグラフである。図6Bは、処置1日目、4日目、8日目、11日目、および15日目の「患者B」の実際の体重を示す。
【0046】
図7-1】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-2】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-3】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-4】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-5】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-6】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-7】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
図7-8】図7A~7Hは、処置1~17週間目にわたる「患者C」の検査パラメーターおよび関連パラメーターを示す。
【0047】
図8図8Aは、処置85日目までの間中の「患者C」の(基準低値および基準高値と比較した)血清アルブミンレベルを示すグラフである。図8Bは、処置85日目までの間中の「患者C」の(基準低値および基準高値と比較した)生の血清アルブミンレベルを示す。
【0048】
図9図9Aは、処置85日目までの間中の「患者C」の(基準低値および基準高値と比較した)全血清タンパク質レベルを示すグラフである。図9Bは、処置85日目までの間中の「患者C」(基準低値および基準高値と比較した)の生の全血清タンパク質レベルを示す。
【0049】
図10図10Aは、処置15日目までの間中の「患者C」の遊離C5 μg/mLおよびピークにおける薬物動態(PK)および薬力学(PD)のベースライン/トラフを示すグラフである。図10Bは、処置15日目までの間中の、生のPKおよびPDのベースライン/トラフおよびピーク値を示す。
【0050】
図11図11Aは、処置86日目までの間中の「患者C」の体重を示すグラフである。図11Bは、処置1日目、4日目、8日目、11日目、15日目、22日目、29日目、43日目、57日目、71日目および85日目の「患者C」の実際の体重を示す。
【0051】
図12図12は、処置43日目までの間中の(基準低値および基準高値と比較した)「患者C」の血清TNFR1レベルを示すグラフである。
【0052】
図13-1】図13Aは、CD55改変体とPLEとの共分離を示す系統を示す。図13Bおよび図13Cは、患者3における腸リンパ管拡張症の内視鏡所見および組織学的所見の画像である。図13Bは、回腸末端部におけるキャビア様絨毛(caviar-like villi)の証拠(矢印で示される)を示し、図13Cは、十二指腸粘膜における拡張した腸リンパ管(矢印で示される)、すなわち、リンパ管拡張症を示す。図13Dは、CD55 NM_001114752.1:c.43del改変体を示す、患者(ホモ接合性)および健康な親(ヘテロ接合性)の配列クロマトグラムを示す。図13Eは、正常コントロール(白)と比較した場合、患者6の赤血球上の(黒)ならびに患者4および6の好中球上の(重ね合わせヒストグラム、黒およびグレー)CD55抗原への結合がないことを明らかにする、CD55のフローサイトメトリー分析を示す。
図13-2】図13Aは、CD55改変体とPLEとの共分離を示す系統を示す。図13Bおよび図13Cは、患者3における腸リンパ管拡張症の内視鏡所見および組織学的所見の画像である。図13Bは、回腸末端部におけるキャビア様絨毛(caviar-like villi)の証拠(矢印で示される)を示し、図13Cは、十二指腸粘膜における拡張した腸リンパ管(矢印で示される)、すなわち、リンパ管拡張症を示す。図13Dは、CD55 NM_001114752.1:c.43del改変体を示す、患者(ホモ接合性)および健康な親(ヘテロ接合性)の配列クロマトグラムを示す。図13Eは、正常コントロール(白)と比較した場合、患者6の赤血球上の(黒)ならびに患者4および6の好中球上の(重ね合わせヒストグラム、黒およびグレー)CD55抗原への結合がないことを明らかにする、CD55のフローサイトメトリー分析を示す。
図13-3】図13Aは、CD55改変体とPLEとの共分離を示す系統を示す。図13Bおよび図13Cは、患者3における腸リンパ管拡張症の内視鏡所見および組織学的所見の画像である。図13Bは、回腸末端部におけるキャビア様絨毛(caviar-like villi)の証拠(矢印で示される)を示し、図13Cは、十二指腸粘膜における拡張した腸リンパ管(矢印で示される)、すなわち、リンパ管拡張症を示す。図13Dは、CD55 NM_001114752.1:c.43del改変体を示す、患者(ホモ接合性)および健康な親(ヘテロ接合性)の配列クロマトグラムを示す。図13Eは、正常コントロール(白)と比較した場合、患者6の赤血球上の(黒)ならびに患者4および6の好中球上の(重ね合わせヒストグラム、黒およびグレー)CD55抗原への結合がないことを明らかにする、CD55のフローサイトメトリー分析を示す。
【0053】
図14図14Aおよび14Bは、血清アルブミンおよび全タンパク質濃度におけるベースラインからのおよび100日間のエクリズマブ処置全体を通じての改善を示す。図14Cは、単一のエクリズマブ用量および100日間までのエクリズマブ処置後の1日あたりの便通の回数の顕著な減少を明らかにする。回数の減少は、便の粘稠度における改善に付随する。
【0054】
図15-1】図15Aは、処置前、15日間の処置の後、および59日間の処置の後の患者4および年齢を合わせたコントロールにおける全WBC、顆粒球、および単球上のMACのフローサイトメトリーを示す。図15Bは、処置前の値と比較して、細胞上のMAC沈着物における顕著な低減を示す。
図15-2】図15Aは、処置前、15日間の処置の後、および59日間の処置の後の患者4および年齢を合わせたコントロールにおける全WBC、顆粒球、および単球上のMACのフローサイトメトリーを示す。図15Bは、処置前の値と比較して、細胞上のMAC沈着物における顕著な低減を示す。
【0055】
図16図16は、処置前、15日間の処置の後、および59日間の処置の後の患者4および年齢を合わせたコントロールにおける全WBC、顆粒球、および単球上のiC3bのフローサイトメトリーを示す。
【0056】
図17-1】図17A~Lは、患者の処置前および処置後の写真である。パネルA~Eは、患者6における腸性先端皮膚炎様の発疹の消散を示す。パネルF~Gは、腹部膨満の低減を明らかにし、パネルH~Jは、患者3における後天性魚鱗癬の改善を示す。パネルK~Lは、腸閉塞手術後の患者4における造影剤を用いた腹部画像を示す。パネルKは、エクリズマブ処置前の患者の腸の大部分を示さないが、パネルL(66日間のエクリズマブ後に画像化した)は、腸の完全性における改善を示す。
図17-2】図17A~Lは、患者の処置前および処置後の写真である。パネルA~Eは、患者6における腸性先端皮膚炎様の発疹の消散を示す。パネルF~Gは、腹部膨満の低減を明らかにし、パネルH~Jは、患者3における後天性魚鱗癬の改善を示す。パネルK~Lは、腸閉塞手術後の患者4における造影剤を用いた腹部画像を示す。パネルKは、エクリズマブ処置前の患者の腸の大部分を示さないが、パネルL(66日間のエクリズマブ後に画像化した)は、腸の完全性における改善を示す。
【0057】
図18図18Aは、患者6、4および3のエクリズマブでの処置後のアルブミン(g/dL)および全タンパク質(g/dL)レベル、ならびに全タンパク質基準低値(上側の線)およびアルブミン基準低値(下側の線)を示す。図18Bは、エクリズマブでの処置後の患者3の身長およびボディーマス指数(BMI)の改善を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
I.定義
本明細書で使用される場合、用語「被験体」または「患者」とは、ヒト患者(例えば、PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有する患者)である。
【0059】
PLEは、腸からのタンパク質喪失をもたらし、通常は、低アルブミン血症に起因する末梢浮腫として現れる、リンパ系または腸の崩壊から生じる状態である(Braamskamp, M.ら, Eur. J. Pediatr., 169:1179-85, 2010)。診断はしばしば、糞便のα-1アンチトリプシンクリアランスに基づいて確定され、症状としては、浮腫、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、下痢、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症が挙げられ得る(Umar, S. & DiBaise, J., Am. J. Gastroenterol., 105:43-9, 2010)。遺伝的要因が、PLEの発生に寄与し得、これらとしては、補体経路と関連する遺伝子が挙げられる。本明細書の目的に関して、CD55は、PLEにおいて役割を果たすことが示されている。CD55(崩壊促進因子またはDAFとしても公知)は、C3/C5コンバターゼの形成および安定性を阻害し、それらの分解を促進することによって、補体活性を調節する(Lublin, D., Immunohematology, 21:39-47, 2005; Kim, D. & Song, W., Clin. Immunol., 118:127-36, 2006)。炎症性腸疾患および原発性腸リンパ管拡張症(PIL)は、中でもPLEの主原因である(Alexander, J.ら, Pathophysiology, 17:315-35, 2010)。
【0060】
リンパ管拡張症(「腸リンパ管拡張症(intestinal lymphangiectasia)」、「原発性腸リンパ管拡張症(primary intestinal lymphangiectasia)」および「PIL」としても公知)は、1961年に初めて記載された希なPLEである(Waldmann, T.ら, Gastroenterology, 41:197-207, 1961)。その最初の記録以来、200未満の症例が全世界で報告されている(Alshikho, Mら, Am. J. Case Rep., 17:512-22, 2016)。リンパ管拡張症が希であることに起因して、その有病率および病因は未知である。それは多数の家族構成員に影響を及ぼすことはめったになく、従って、遺伝性疾患ではないようである。しかし、いくらかの研究が、リンパ管拡張症を有する患者においてリンパ管新生と関連する遺伝子の調節において変化を示した(Hokari, R.ら, J. Gastroenterol. Hepatol., 23:e88-95, 2008)ことから、遺伝的性質が疾患の始まりにおいて役割をなお果たすこともある。
【0061】
リンパ管拡張症は、消化管へのリンパ液の漏出をもたらす、腸の粘膜、粘膜下組織、または漿膜下組織における血管の拡張によって特徴づけられる。代表的には、小児、しばしば3歳前の小児において診断され、男性および女性に等しく罹患する。患者は、ある範囲の症状を呈し、タンパク質喪失に起因する浮腫が最も一般的である。他の症状としては、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少および/またはビタミン欠乏症が挙げられ得る。検査分析から、リンパ液の喪失に起因して、低アルブミン血症、リンパ球減少症および/または低ガンマグロブリン血症が頻繁に明らかにされる。診断は、内視鏡検査を使用して、および生検組織の組織病理分析によって確定される。さらなる検査としては、アルブミンシンチグラフィー、超音波、コンピューター断層撮影法(CT)スキャンおよびリンパシンチグラフィーが挙げられ得る(Vignes, S. & Bellanger, J., Orphanet J. Rare Dis., 3:5, 2008)。
【0062】
現在、リンパ管拡張症の治療法は存在せず、患者は、彼らの症状の管理によって処置される。最も成功裡の介入は、中鎖トリグリセリド(MCT)を補充した低脂肪食の実行である(Jeffries, G.ら, N. Engl. J. Med., 270:761-6, 1964; Alfano, V.ら, Nutrition, 16:303-4, 2000)。他の処置としては、オクトレオチドの投与(実験的)またはアルブミンの注入が挙げられる(Ballinger, A. & Farthing, M., Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 10:699-702, 1998)。希な症例では、外科手術が、罹患組織を除去するために必要とされ得る。長期処置がなければ、リンパ管拡張症患者は、死亡を含め、その疾患の重篤な合併症に悩まされ得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「有効な処置」とは、有益な効果、例えば、疾患または障害の少なくとも1つの症状の改善を生じる処置をいう。有益な効果は、ベースラインを超える改善、例えば、上記方法に従う治療の開始前に行われた測定または観察を超える改善の形態をとり得る。有効な処置は、PLE(例えば、リンパ管拡張症)の少なくとも1つの症状(例えば、タンパク質喪失、浮腫、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少および/またはビタミン欠乏症)の緩和をいい得る。
【0064】
用語「有効量」とは、所望の生物学的、治療的および/または予防的結果を提供する薬剤の量をいう。その結果は、徴候、症状、もしくは疾患の原因のうちの1またはこれより多くの低減、改善、軽減、減少、遅れ、および/または緩和、あるいは生物学的システムの任意の他の望ましい変更であり得る。一例では、「有効量」は、PLE(例えば、リンパ管拡張症)の少なくとも1つの症状(例えば、タンパク質喪失、浮腫、下痢、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、腹痛、疲労、体重減少および/またはビタミン欠乏症)を緩和することが臨床的に証明された抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの量である。有効量は、1またはこれより多くの投与において投与され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「誘導(induction)」および「誘導相(induction phase)」とは、交換可能に使用され、処置の第1の相をいう。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「維持(maintenance)」および「維持相(maintenance phase)」とは、交換可能に使用され、処置の第2の相をいう。ある種の実施形態において、処置は、臨床上の利益が観察される限りにおいて、または手に負えない毒性または疾患の進行が起こるまで、継続される。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「血清トラフレベル(serum trough level)」とは、薬剤(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)または医薬が血清中に存在する最低レベルをいう。対照的に、「ピーク血清レベル(peak serum level)」とは、血清中の薬剤の最高レベルをいう。「平均血清レベル(average serum level)」とは、経時的な血清中の薬剤の平均レベル(mean level)をいう。
【0068】
用語「抗体」とは、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域またはFv、もしくはCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体は、抗体の公知の形態を含む。例えば、その抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科抗体、二重特異的抗体、またはキメラ抗体であり得る。その抗体はまた、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディー(nanobody)、またはドメイン抗体であり得る。その抗体はまた、以下のアイソタイプのうちのいずれかのものであり得る: IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD、およびIgE。その抗体は、天然に存在する抗体またはタンパク質工学技術によって(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分への結合体化によって)変更されている抗体であり得る。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1またはこれより多くの改変アミノ酸(天然に存在する抗体と比較して)を含み得る。例えば、多くのこのような変更は、当該分野で公知であり、例えば、半減期、エフェクター機能、および/または患者におけるその抗体への免疫応答に影響を及ぼす。その用語抗体はまた、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工のまたは操作されたポリペプチド構築物を含む。
【0069】
II.抗C5抗体
本明細書で記載される抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、フラグメントC5aおよびC5bへのC5の切断を阻害する。
【0070】
本明細書で記載される組成物および方法における使用に適した抗C5抗体(またはこれに由来するVH/VLドメイン)は、当該分野で公知の方法を使用して生成され得る。あるいは、当該分野で認識される抗C5抗体が使用され得る。これらの当該分野で認識される抗体のうちのいずれかとC5への結合に関して競合する抗体はまた、使用され得る。
【0071】
例示的な抗C5抗体は、エクリズマブ(Soliris(登録商標))である。エクリズマブは、ヒト補体C5タンパク質に対して独特の特異的な結合特異性を有するヒト化モノクローナル抗体(注入用のh5G1.1-mAb液剤)である。エクリズマブは、米国特許第6,355,245号(その教示全体は、参考として明示的に援用される)に記載される。およそ148kDaの分子量を有する1324アミノ酸から構成されるが、エクリズマブは、ヒト補体成分C5を認識するマウスモノクローナル抗体(m5G1.1-mAb)に由来した。
【0072】
他の実施形態において、その抗体は、エクリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。よって、一実施形態において、その抗体は、配列番号7に示される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号8に示される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号1、2、および3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号4、5および6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号7および配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号9に示される配列を有するエクリズマブの重鎖定常領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号10および配列番号11にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む。
【0073】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号および同第8,883,158号に記載される7086抗体である。一実施形態において、その抗体は、7086抗体の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む(米国特許第8,241,628号および同第8,883,158号を参照のこと)。別の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号12、13および14にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号15、16および17にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号18に示される配列を有する7086抗体のVH領域および配列番号19に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0074】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号および同第8,883,158号にも記載される8110抗体である。一実施形態において、その抗体は、8110抗体の重鎖および軽鎖CDR、または可変領域を含む。別の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号20、21および22にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメイン、ならびに配列番号23、24、および25にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号26に示される配列を有する8110抗体のVH領域および配列番号27に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0075】
別の例示的な抗C5抗体は、US2016/0176954A1に記載される305LO5抗体である。一実施形態において、その抗体は、305LO5抗体の重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を含む。別の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号28、29および30にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号31、32および33にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号34に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域および配列番号35に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0076】
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って異なって定義されている。いくつかの実施形態において、軽鎖または重鎖可変ドメイン内のCDRまたはフレームワーク領域の位置は、Kabatら[(1991) 「Sequences of Proteins of Immunological Interest.」 NIH Publication No. 91-3242, U.S. Department of Health and Human Services, Bethesda, MD]によって定義されるとおりであり得る。このような場合に、そのCDRは、「Kabat CDR」(例えば、「Kabat LCDR2」または「Kabat HCDR1」)といわれ得る。いくつかの実施形態において、軽鎖または重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothiaら(Nature, 342:877-83, 1989)によって定義されるとおりであり得る。よって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」または「Chothia HCDR3」)といわれ得る。いくつかの実施形態において、軽鎖または重鎖可変領域のCDRは、Kabat-Chothiaを組み合わせた定義によって定義されるとおりであり得る。このような実施形態において、これらの領域は、「組み合わせたKabat-Chothia CDR」といわれ得る。Thomasら(Mol. Immunol., 33:1389-1401, 1996)は、KabatおよびChothiaの定義に従ってCDR境界の同定を例示する。
【0077】
一実施形態において、その抗体は、本明細書で記載される抗体とC5上の同じエピトープとの結合に関して競合するおよび/またはその同じエピトープに結合する。2またはこれより多くの抗体に言及して用語「同じエピトープに結合する」とは、それらの抗体が、所定の方法によって決定される場合に、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書で記載される抗体と「C5上の同じエピトープ」に結合するか否かを決定するための技術としては、例えば、エピトープマッピング法(例えば、抗原-抗体複合体の結晶のX線分析(これは、エピトープの原子分解能を提供する)および水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)のような)が挙げられる。他の方法は、ペプチド抗原フラグメントまたは抗原の変異バリエーションへの抗体の結合をモニタリングする。この場合、その抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の喪失が、エピトープ構成要素の指標としばしば考えられる。さらに、エピトープマッピングのコンピューターによるコンビナトリアル法(computational combinatorial methods for epitope mapping)もまた使用され得る。これらの方法は、目的の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的な短いペプチドをアフィニティー単離する能力に依拠する。同じVHおよびVLまたは同じCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0078】
「標的への結合に関して別の抗体と競合する」抗体は、その標的への他の抗体の結合を(部分的にまたは完全に)阻害する抗体をいう。2つの抗体が標的への結合に関して互いと競合するか否か、すなわち、一方の抗体が標的への他方の抗体の結合を阻害するか否か、およびどの程度阻害するかは、公知の競合実験を使用して決定され得る。ある種の実施形態において、抗体は、標的への別の抗体の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%競合および阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「ブロッキング抗体(blocking antibody)」(すなわち、その標的と最初にインキュベートされる抗体)であるかに依存して、異なり得る。競合する抗体は、同じエピトープ、重なり合うエピトープまたは隣接するエピトープに結合する(例えば、立体障害によって示されるとおり)。
【0079】
抗体がタンパク質抗原に結合するか否かおよび/またはタンパク質抗原への抗体の親和性を決定するための方法は、当該分野で公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、種々の技術(例えば、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム)、または酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない)を使用して検出および/または定量され得る(Benny K. C. Lo (2004) 「Antibody Engineering: Methods and Protocols」, Humana Press (ISBN: 1588290921); Johne, B.ら, J. Immunol. Meth., 160:191-8, 1993; Joensson, U.ら, Ann. Biol. Clin., 51:19-26, 1993; Joensson, U.ら, Biotechniques, 11:620-7, 1991)。さらに、結合親和性(例えば、解離定数および会合定数)を測定するための方法は、当該分野で公知であり、実際に行った実施例に示される。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「k」とは、例えば、抗原への抗体の会合の速度定数をいう。用語「k」とは、例えば、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数をいう。そして用語「K」とは、例えば、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数をいう。その平衡解離定数は、動力学的速度定数の比、K=k/kから導き出される。このような決定は、例えば、25℃または37℃において測定され得る。ヒトC5への抗体結合の動力学は、例えば、pH8.0、7.4、7.0、6.5または6.0において、その抗体を固定化するための抗Fc捕捉法を使用するBIAcore 3000機器でのSPRを介して決定され得る。
【0081】
一実施形態において、その抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5aおよび/またはC5b活性フラグメントの生成または活性をブロックする。このブロッキング効果を通じて、その抗体は、例えば、C5aの炎症促進性効果および細胞の表面におけるC5b-9 MACの生成を阻害する。
【0082】
本明細書で記載される特定の抗体がC5切断を阻害するか否かを決定するための方法は、当該分野で公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、被験体の体液中の補体の細胞溶解能力を低減し得る。体液中に存在する補体の細胞溶解能力のこのような低減は、例えば、従来の溶血アッセイ(Kabat and Mayer (編), 「Experimental Immunochemistry, 第2版」, 135-240, Springfield, IL, CC Thomas (1961), 第135~9頁)またはそのアッセイの従来のバリエーション(例えば、ニワトリ赤血球溶血法(Hillmen, P.ら, N. Engl. J. Med., 350:552, 2004))のようなものによって、当該分野で公知の方法によって測定され得る。候補化合物がヒトC5をC5aおよびC5bの形態へと切断することを阻害するか否かを決定するための方法は、当該分野で公知である(Evans, M.ら, Mol. Immunol., 32:1183-95, 1995)。体液中のC5aおよびC5bの濃度および/または生理的活性は、例えば、当該分野で公知の方法によって測定され得る。C5bに関しては、溶血アッセイまたは本明細書で考察されるとおりの可溶性C5b-9に関するアッセイが使用され得る。当該分野で公知の他のアッセイがまた、使用され得る。これらのまたは他の適切なタイプのアッセイを使用すると、ヒト補体成分C5を阻害し得る候補薬剤がスクリーニングされ得る。
【0083】
免疫学的技術(例えば、ELISAが挙げられるが、これらに限定されない)は、C5および/またはその分解生成物(split product)のタンパク質濃度を測定して、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントが、C5を生物学的に活性な生成物へと変換することを阻害する能力を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、C5a生成が測定される。いくつかの実施形態において、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体は、終末補体の形成を検出するために使用される。
【0084】
溶血アッセイは、補体活性化に対する抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの阻害活性を決定するために使用され得る。インビトロで血清試験溶液における古典的補体経路媒介性溶血に対する抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの効果を決定するために、例えば、溶血素でコーティングしたヒツジ赤血球または抗ニワトリ赤血球抗体で感作したニワトリ赤血球を、標的細胞として使用する。溶血のパーセンテージを、100%溶解をそのインヒビターの非存在下で起こる溶血に等しいと見做すことによって正規化する。いくつかの実施形態において、その古典的補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標) Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標) COMPL CP310, Euro-Diagnostica, Sweden)において利用されるように、ヒトIgM抗体によって活性化される。簡潔には、試験血清を、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントとともに、ヒトIgM抗体の存在下でインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、その混合物を、酵素結合体化抗C5b-9抗体および蛍光発生基質と接触させ、適切な波長で吸光度を測定することによって測定される。コントロールとして、試験血清を抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの非存在下でインキュベートする。いくつかの実施形態において、その試験血清は、C5ポリペプチドで再構成したC5欠乏血清である。
【0085】
第2経路媒介性溶血に対する抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの効果を決定するために、非感作のウサギまたはモルモット赤血球が、標的細胞として使用され得る。いくつかの実施形態において、その血清試験溶液は、C5ポリペプチドで再構成したC5欠乏血清である。溶血のパーセンテージを、100%溶解をそのインヒビターの非存在下で起こる溶血に等しいと見做すことによって正規化する。いくつかの実施形態において、第2補体経路は、例えば、Wieslab(登録商標) Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標) COMPL AP330, Euro-Diagnostica, Sweden)において利用されるように、リポポリサッカリド分子によって活性化される。簡潔には、試験血清を、リポポリサッカリドの存在下で、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントとともにインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、その混合物を、酵素結合体化抗C5b-9抗体および蛍光発生基質と接触させ、適切な波長で蛍光を測定することによって測定される。コントロールとして、試験血清を抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントの非存在下でインキュベートする。
【0086】
いくつかの実施形態において、C5活性またはその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量される。そのCH50eqアッセイは、血清中の全古典的補体活性を測定するための方法である。これは、古典的補体経路の活性化因子としての抗体感作赤血球、および試験血清の種々の希釈物を使用して、50%溶解を与えるために必要とされる量(CH50)を決定する溶解アッセイである。パーセント溶血は、例えば、分光光度計を使用して決定され得る。そのCH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的尺度を提供する。なぜならそのTCC自体は、測定される溶血を直接担うからである。そのアッセイは公知であり、当業者によって一般的に実施される。簡潔には、古典的補体経路を活性化するために、希釈されていない血清サンプル(例えば、再構成されたヒト血清サンプル)を、抗体感作赤血球を含むマイクロアッセイウェルに添加して、それによってTCCを生成する。次に、活性化した血清をマイクロアッセイウェル中で希釈し、これを、捕捉試薬(例えば、TCCの1またはこれより多くの構成要素に結合する抗体)でコーティングする。その活性化したサンプル中に存在するTCCは、そのマイクロアッセイウェルの表面をコーティングするモノクローナル抗体に結合する。そのウェルを洗浄し、各ウェルに、検出可能に標識されかつその結合したTCCを認識する検出試薬を添加する。その検出可能な標識は、例えば、蛍光標識または酵素標識であり得る。そのアッセイ結果を、CH50 ユニット当量/ミリリットル(CH50 U Eq/mL)で表す。
【0087】
阻害は、例えば、終末補体活性に関係することから、例えば、溶血アッセイまたはCH50eqアッセイにおいて、類似の条件下でおよび等モル濃度において、コントロール抗体(またはその抗原結合フラグメント)の効果と比較した場合に、終末補体の活性において少なくとも5%(例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%)の減少を含む。実質的阻害とは、本明細書で使用される場合、少なくとも40%(例えば、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%またはこれより大きい%)の所定の活性(例えば、終末補体活性)の阻害をいう。
【0088】
本明細書で記載される方法において使用される抗C5抗体または本明細書で記載されるその抗原結合フラグメントは、当該分野で認識される種々の技術を使用して生成され得る。モノクローナル抗体は、当業者が精通した種々の技術によって得られ得る。簡潔には、例えば、所望の抗原で免疫化した動物の脾細胞を、一般には骨髄腫細胞との融合によって不死化する(Koehler, G. & Milstein, C., Eur. J. Immunol., 6:511-9, 1976)。不死化の代替法としては、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスでの形質転換、または当該分野で公知の他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の生成についてスクリーニングされ、このような細胞によって生成されるモノクローナル抗体の収量は、種々の技術(脊椎動物宿主の腹腔への注射が挙げられる)によって増強され得る。あるいは、ヒトB細胞に由来するDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列が単離され得る(Huse, W.ら, Science, 246:1275-81, 1989)。
【0089】
III.組成物
抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物が、本明細書で提供される。一実施形態において、その組成物は、配列番号7に示される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号8に示される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗体を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号1、2および3にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号4、5および6にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVH領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVL領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号7および配列番号8にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHおよびVL領域を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。別の実施形態において、その抗体は、配列番号10および配列番号11にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有する重鎖および軽鎖を含む。
【0090】
その組成物は、例えば、PLE(例えば、リンパ管拡張症)の処置または防止のために被験体に投与するための薬学的液剤として製剤化され得る。その薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」とは、生理的に適合性である任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などをいい、これらを含む。その組成物は、薬学的に受容可能な塩、例えば、酸付加塩(acid addition salt)もしくは塩基付加塩(base addition salt)、糖、炭水化物、ポリオールおよび/または張度改変剤(tonicity modifier)を含み得る。
【0091】
その組成物は、標準的方法に従って製剤化され得る(Gennaro (2000) 「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」, 第20版, Lippincott, Williams & Wilkins (ISBN: 0683306472); Anselら (1999) 「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」, 第7版, Lippincott Williams & Wilkins Publishers (ISBN: 0683305727);およびKibbe (2000) 「Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association」, 第3版(ISBN: 091733096X))。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば、適切な濃度において緩衝化液剤として製剤化され得、2~8℃(例えば、4℃)での貯蔵に適切であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃または-80℃)での貯蔵のために製剤化され得る。いくつかの実施形態において、その組成物は、最長2年間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、1年半、または2年間)にわたって2~8℃(例えば、4℃)における貯蔵のために製剤化され得る。従って、いくつかの実施形態において、本明細書で記載される組成物は、少なくとも1年間にわたって2~8℃(例えば、4℃)での貯蔵に安定である。
【0092】
その薬学的組成物は、種々の形態にあり得る。これらの形態としては、例えば、液体、半固体および固体の投与形態(例えば、液体の液剤(例えば、注射用および注入用の液剤)、分散物(dispersion)もしくは懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤が挙げられる。好ましい形態は、その意図された投与様式および治療的適用に一部依存する。例えば、全身送達または局所送達が意図された組成物を含む組成物は、注射用または注入用の液剤の形態にあり得る。よって、その組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)による投与のために製剤化され得る。「非経口投与」、「非経口投与される」および他の文法的に等価な語句は、本明細書で使用される場合、経腸的投与および局所投与以外の投与様式(通常は、注射による)に言及し、静脈内、鼻内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、大脳内、頭蓋内、頚動脈内および胸骨内の注射および注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
IV.患者集団
ヒト患者においてPLE(例えば、リンパ管拡張症)を処置するための組成物および方法が、本明細書で提供される。一実施形態において、その患者はPLEを有する。別の実施形態において、その患者はリンパ管拡張症を有する。別の実施形態において、その患者は、タンパク質喪失、浮腫、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、下痢、腹痛、疲労、体重減少、および/またはビタミン欠乏症を有する。一実施形態において、その患者は、小児患者(例えば、18歳未満)である。別の実施形態において、小児患者は12歳未満である。別の実施形態において、その小児患者は6歳未満である。別の実施形態において、その小児患者は2歳未満である。別の実施形態において、その小児患者は、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳、16歳、17歳または18歳未満である。別の実施形態において、その患者は成人患者である。別の実施形態において、成人患者は18歳以上である。
【0094】
一実施形態において、その患者は、10kgから<20kgの体重である。別の実施形態において、その患者は、10kgから<30kgの体重である。別の実施形態において、その患者は、20kgから<30kgの体重である。別の実施形態において、その患者は、30kgから<40kgの体重である。別の実施形態において、その患者は、40kg以上の体重である。
【0095】
一実施形態において、その患者は、補体経路に関与する遺伝子(例えば、補体経路の調節と関わる遺伝子)において変異を有する。特定の実施形態において、その患者は、CD55遺伝子において変異を有する。別の実施形態において、その患者は、CD55を発現しない。別の実施形態において、その患者は、CD55改変体NM_001114752.1:c.43del(p.Leu15Serfs*46)を有する。別の実施形態において、その患者は、赤血球タイプCROM:-1 [Cr(a-)]を有する。別の実施形態において、その患者は、赤血球タイプCROM:-5 [Dr(a-)]を有する。別の実施形態において、その患者は、赤血球タイプCROM:-6 [Es(a-)]を有する。別の実施形態において、その患者は、CROK陰性赤血球を有する。別の実施形態において、その患者は、Cromer Inab(CD55ヌル)表現型を有する。
【0096】
V.転帰
患者においてPLE(例えば、リンパ管拡張症)を処置するための方法が本明細書で提供され、その方法は、その患者に抗C5抗体を投与する工程を包含する。PLEの症状としては、タンパク質喪失、浮腫、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、下痢、腹痛、疲労、体重減少およびビタミン欠乏症が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で開示される方法に従って処置される患者は、PLEの少なくとも1つの症状において改善を経験する。例えば、その処置は、タンパク質喪失、浮腫、腹水、胸水、心膜炎、リンパ浮腫、下痢、腹痛、疲労、体重減少またはビタミン欠乏症における低減または停止からなる群より選択される少なくとも1つの治療効果を生じ得る。
【0097】
別の実施形態において、その処置は、全タンパク質(例えば、全血清タンパク質)の正常レベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、全タンパク質の正常レベルに近いか、または全タンパク質の正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への全タンパク質血清レベルにおける増大を経験する。別の実施形態において、その処置は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍または2.0倍増大する。特定の実施形態において、その処置は、20日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍増大する。別の実施形態において、その処置は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3.0倍増大する。特定の実施形態において、その処置は、80日間以内に、全タンパク質血清レベルにおいてベースラインから少なくとも2.3倍(例えば、2.26倍)増大する。
【0098】
別の実施形態において、その処置は、正常な血清アルブミンレベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、血清アルブミンの正常レベルに近いか、または血清アルブミンの正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への血清アルブミンレベルにおける増大を経験する。別の実施形態において、その処置は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍または2.0倍増大する。特定の実施形態において、その処置は、20日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも1.7倍増大する。別の実施形態において、その処置は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4.0倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5.0倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6.0倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍または7.0倍増大する。別の実施形態において、その処置は、80日間以内に、血清アルブミンレベルにおいてベースラインから少なくとも5倍増大する。
【0099】
別の実施形態において、その処置は、正常血清TNFR1レベルに向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、開示される方法に従って処置される患者は、血清TNFR1の正常レベルに近いか、または血清TNFR1の正常レベルと考えられるものの上下約10%以内もしくは約20%以内への血清TNFR1レベルにおける減少を経験する。別の実施形態において、その処置は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.0、1/1.1、1/1.2、1/1.3、1/1.4、1/1.5、1/1.6、1/1.7、1/1.8、1/1.9または1/2.0、1/2.1、1/2.2または1/2.3に減少する。特定の実施形態において、その処置は、8日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/1.8に減少する。別の実施形態において、その処置は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/2.0、1/2.1、1/2.2、1/2.3、1/2.4、1/2.5、1/2.6、1/2.7、1/2.8、1/2.9、1/3.0、1/3.1、1/3.2、1/3.3、1/3.4、1/3.5、1/3.6、1/3.7、1/3.8、1/3.9、1/4.0、1/4.1、1/4.2、1/4.3、1/4.4、1/4.5、1/4.6、1/4.7、1/4.8、1/4.9、1/5.0、1/5.1、1/5.2、1/5.3、1/5.4、1/5.5、1/5.6、1/5.7、1/5.8、1/5.9、1/6.0、1/6.1、1/6.2、1/6.3、1/6.4、1/6.5、1/6.6、1/6.7、1/6.8、1/6.9または1/7.0に減少する。特定の実施形態において、その処置は、43日間以内に、血清TNFR1レベルにおいてベースラインから多くとも1/3.3(例えば、1/3.25)に減少する。
【0100】
別の実施形態において、その処置は、正常遊離C5レベルに向かうシフトを生じる。一実施形態において、その遊離C5レベルは、検出限界未満に減少される。別の実施形態において、その遊離C5レベルは、第1の処置用量後に検出限界未満に減少される。
【0101】
別の実施形態において、その処置は、顆粒球およびWBCを含むWBC上の正常MAC沈着に向かうシフトを生じる。例えば、一実施形態において、本明細書で開示される方法に従って処置される患者は、59日間後に、WBC上のMAC沈着においてベースラインから約60%低減を経験する。別の実施形態において、その処置は、WBC上のMAC沈着においてベースラインから少なくとも40%、50%、60%、70%または80%低減を生じる。別の実施形態において、その処置は、WBC上のMAC沈着において、ベースラインと比較して多くとも1/1.0、1/1.1、1/1.2、1/1.3、1/1.4、1/1.5、1/1.6、1/1.7、1/1.8、1/1.9、1/2.0、1/2.1、1/2.2、1/2.3、1/2.4、1/2.5、1/2.6、1/2.7、1/2.8、1/2.9、1/3.0、1/3.1、1/3.2、1/3.3、1/3.4、1/3.5、1/3.6、1/3.7、1/3.8、1/3.9、1/4.0、1/4.1、1/4.2、1/4.3、1/4.4、1/4.5、1/4.6、1/4.7、1/4.8、1/4.9、1/5.0、1/5.1、1/5.2、1/5.3、1/5.4、1/5.5、1/5.6、1/5.7、1/5.8、1/5.9、1/6.0、1/6.1、1/6.2、1/6.3、1/6.4、1/6.5、1/6.6、1/6.7、1/6.8、1/6.9または1/7.0に減少する。
【0102】
別の実施形態において、全タンパク質レベル、血清アルブミンレベル、血清TNFR1レベル、遊離C5レベル、および/またはWBC上のMAC沈着は、治療に対する応答を評価するために使用される(例えば、全血清タンパク質および/もしくは血清アルブミンレベルにおける増大ならびに/または血清TNFR1レベルにおける減少は、PLE(例えば、リンパ管拡張症)の少なくとも1つの徴候における改善を示す)。
【0103】
VI.キットおよび単位投与形態
前述の方法における使用に適合された治療上有効な量において、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、エクリズマブ)、および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を含むキットがまた、本明細書で提供される。そのキットは、必要に応じて、実施者(例えば、医師、看護師または患者)がその中に含まれる組成物を投与して、PLE(例えば、リンパ管拡張症)を有する患者にその組成物を投与することを可能にするように、例えば、投与スケジュールを含む指示も含み得る。そのキットはまた、シリンジを含み得る。
【0104】
必要に応じて、そのキットは、本明細書で提供される方法に従う単一投与のための単一用量の薬学的組成物(各々は、有効量の抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、エクリズマブ)を含む)の複数のパッケージを含む。その薬学的組成物を投与するために必要な指示またはデバイスはまた、そのキットの中に含まれ得る。キットは、ある量のその抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含む1またはこれより多くの予め充填されたシリンジを提供し得る。
【0105】
一実施形態において、本発明は、ヒト患者においてPLE(例えば、リンパ管拡張症)を処置するためのキットを提供し、そのキットは、a)ある用量の、配列番号7に示される配列を有する重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント;ならびにb)本明細書で記載される方法のうちのいずれかに従って、その抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するための指示を含む。
【0106】
別の実施形態において、そのキットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここでその抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、10kgから<20kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回ならびに3週間目の間に1回、続いて、300mgまたは600mgを4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0107】
別の実施形態において、そのキットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここでその抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、20kgから<30kgの体重の患者に、600mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、600mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0108】
別の実施形態において、そのキットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここでその抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、30kgから<40kgの体重の患者に、900mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、900mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0109】
別の実施形態において、そのキットは、ある用量の抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、ここでこれらは、≧40kgの体重の患者に、1200mgを上記投与サイクルの1週間目および2週間目の間に1週間あたり2回、続いて、1200mgを3週間目、4週間目および5週間目の間に1週間あたり1回ならびにその後2週間ごとに、の用量で投与される。
【0110】
以下の実施例は、例証に過ぎず、多くのバリエーションおよび等価物が本開示を読めば当業者に明らかになるので、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するとは解釈されるべきではない。本出願全体を通じて引用される全ての参考文献、Genbankエントリー、特許および公開された特許出願の内容は、それらの全体において本明細書に参考として明示的に援用される。
【実施例
【0111】
実施例1:研究の概観
臨床研究を、リンパ管拡張症を有する小児患者においてエクリズマブの安全性、耐容性および有効性を調査するために行う。
【0112】
1.投与および評価スケジュール
aHUSの処置のためのエクリズマブを、以下の表1に示される投与スケジュールに従って静脈内投与する。投与および評価のスケジュールを、以下の表2~5に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0113】
表2、表3、表4および表5の脚注
*採血容積は、小児患者に関しては推奨を超えない。<2.7kgの患者については、最大採血量は、一度に0.8mLであり、1ヶ月の間に2.4mLである。2.7~3.6kgの患者については、最大採血量は、一度に2.5mLであり、1ヶ月の間に23mLである。3.6~4.5kgの患者については、最大採血量は、一度に3.5mLであり、1ヶ月の間に30mLである。4.5~6.8kgの患者については、最大採血量は、一度に5mLであり、1ヶ月の間に40mLである。7.3~18.2kgの患者については、最大採血量は、一度に10mLであり、1ヶ月の間に60~130mLである。18.6~27.3kgの患者については、最大採血量は、一度に20mLであり、1ヶ月の間に140~200mLである。27.7~29.5kgの患者については、最大採血量は、一度に25mLであり、1ヶ月の間に220mLである。30.0~45.5kgの患者については、最大採血量は、一度に30mLであり、1ヶ月の間に240~350mLである。
髄膜炎菌感染:髄膜炎菌感染のリスクを低減するために、全ての患者に、Soliris(登録商標)を受ける少なくとも2週間前にワクチン接種をし、ワクチン接種使用の現行の医療ガイドラインに従って再度ワクチン接種する。血清型A、C、YおよびW135に対する四価ワクチンならびに血清型Bに対するワクチン接種(入手可能な場合)が使用され、好ましくは結合型ワクチンが使用される。ワクチン接種は、髄膜炎菌感染を防止するために十分でないこともある。抗細菌剤の適切な使用に関する公式のガイドラインが考慮される。利益リスクバランスの評価後に、医師が14日前にエクリズマブ治療を開始すると決定する場合、その医師は、完全な免疫化(すなわち、14日間)までに、その患者に推薦されるNeisseria感染に対する予防法の選択を注意深く考慮する。
処置スケジュールは、以下のとおりである:
1日目=投与初日。
10kgから<20kgの患者または20kgから<30kgの患者は、600mg用量を1日目、4日目、8日目、11日目、および15日目に受け、続いて、10kgから<20kgの体重に関しては22日目に始まって、300mgまたは600mgの用量が毎週または隔週のいずれかで与えられ、そして20kgから<30kgの体重に関しては22日目に始まって600mg用量が毎週または隔週のいずれかで与えられる。
30kgから<40kgの患者は、900mg用量を1日目、4日目、8日目、11日目および15日目に受け、続いて、22日目に始まって、900mg用量が毎週または隔週のいずれかで与えられる。
≧40kgの患者は、1200mg用量を1日目、4日目、8日目、11日目および15日目に受け、続いて、22日目に始まって、1200mg用量が毎週または隔週のいずれかで与えられる。
投与レジメンは、特に、1週間目および2週間目の後の体重および臨床評価/検査評価に基づいて決定されるべきである。
PKおよびPD(遊離C5レベル)検査用のベースラインおよびトラフの血清サンプルは、エクリズマブ注入の5~90分前に採取される。PKおよびPD(遊離C5レベル)検査用のピークサンプルは、エクリズマブ注入が完了して60分後に採取される。
提案される検査パラメーター:ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(HCT)、血小板数、WBC数、クレアチニン、BUN、血清アルブミン、および血清免疫グロブリン。臨床検査用サンプルは、エクリズマブを投与する5~90分前に集められる。
提案される溶血マーカー:血清ラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)、血漿ハプトグロビン、ならびに網状赤血球および分裂赤血球(血液スメア)。溶血マーカー用の血液サンプルは、エクリズマブを投与する5~90分前に集められる。
提案される血栓形成促進性マーカー:血漿フィブリノゲン、血清フィブリン分解生成物、および血漿D-ダイマー。血栓形成促進性マーカー用の血液サンプルは、エクリズマブを投与する5~90分前に集められる。
提案される炎症促進性マーカー:可溶性TNFR1(sTNFR1)およびC反応性タンパク質(CRP)。炎症促進性マーカー用の血液サンプルは、エクリズマブエクリズマブを投与する5~90分前に集められる。
提案される血清補体マーカー:C3。補体マーカー用の血液サンプルは、エクリズマブを投与する5~90分前に集められる。
日付、位置および診断法を含む、任意の臨床血栓塞栓性事象に対して提案される情報。
10有害反応および重篤な有害反応は、患者のチャートに記録される。
【0114】
2.エクリズマブの調製および投与
30mLの各バイアルは、注入用の300mgのエクリズマブ(10mg/mL)を含む。その液剤は、無色透明でpH7.0の液剤である。その生成物は、1用量(1バイアル)あたり5.00mmol ナトリウムを含む。これは、ナトリウム制限食(controlled sodium diet)を使用する患者によっては考慮されるべきである。
【0115】
再構成および希釈は、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準の規定(good practices rule)に従って、特に、無菌状態の点に関して行われる。エクリズマブの全量が、滅菌シリンジを使用してバイアルから引き出される。推奨される用量が、注入バッグへと移される。エクリズマブは、水中の、0.9% 塩化ナトリウム、0.45% 塩化ナトリウムまたは5% デキストロースを使用して、その注入バッグに添加することによって5mg/mLの最終濃度へと希釈される。5mg/mL希釈液剤の最終容積は、表6に示されるように、600mg用量に関しては120mL、900mg用量に関しては180mL、または1200mg用量に関しては240mLである。
【表6】
【0116】
その希釈液剤を含む注入バッグを穏やかに撹拌して、その生成物および希釈剤の完全な混合を担保する。その希釈液剤を、周囲の空気への曝露によって投与前に室温へと加温させる。その生成物には保存剤が含まれていないことから、バイアル中に残ったいかなる未使用部分をも廃棄する。その場所の要件に従って、いかなる未使用医療生成物も廃棄物をも処分する。
【0117】
希釈後に、その注入されるべき液剤の最終濃度は、5mg/mLである。希釈後に、その医薬生成物は、即座に使用されるべきである。しかし、化学的および物理的な安定性は、2~8℃において24時間実証されている。投与前に、そのエクリズマブ液剤は、粒状物および変色に関して視覚的に検査される。
【0118】
エクリズマブを、静脈内注入を介してのみ投与する。エクリズマブは、側管注射(intravenous push)としてもボーラス注射としても投与されない。エクリズマブの希釈液剤を、重力送り、シリンジタイプポンプ、または注入ポンプを介して、1~4時間かけて静脈内注入によって投与する。患者に投与する間に、エクリズマブの希釈液剤を遮光する必要はない。
【0119】
患者を、注入後1時間にわたってモニタリングする。有害事象がエクリズマブの投与の間に起こった場合、医師の裁量で、その注入の速度を落とすか、または中止する。その注入の速度を落とした場合、合計の注入時間は、2時間を超えないこともある。
【0120】
全ての治療用タンパク質と同様に、エクリズマブの投与は、アレルギー反応または過敏性反応(アナフィラキシーを含む)を引き起こし得る輸液反応または免疫原性を生じ得るが、エクリズマブ投与の48時間以内の免疫系障害は、エクリズマブで行ったPNHおよび非PNH研究におけるプラセボ処置とは異ならなかった。臨床試験では、PNH患者は、エクリズマブの中止を要求する輸液反応を経験しなかった。エクリズマブ投与は、重篤な輸液反応を経験する全ての患者において中断され、適切な薬物療法が投与される。
【0121】
1.ワクチン接種
その作用機構に起因して、Soliris(登録商標)の使用は、髄膜炎菌感染(Neisseria meningitidis)への患者の感受性を増大させる。これらの患者は、希な血清群(例えば、X)による疾患のリスクにあり得るが、任意の血清群に起因する髄膜炎菌による疾患が起こり得る。感染のリスクを低減するために、Soliris(登録商標)治療を遅らせることのリスクが、髄膜炎菌感染を発生させるリスクより勝るのでなければ、全ての患者に、Soliris(登録商標)を受ける少なくとも2週間前にワクチン接種する。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で、Soliris(登録商標)で処置される患者は、ワクチン接種後2週間まで、適切な予防的抗生物質での処置を受ける。血清型A、C、Y、W135およびBに対するワクチンは、利用可能な場合、一般に病原性の髄膜炎菌血清型を防止するにあたって推奨される。ワクチン接種使用に関する現行の国のワクチン接種ガイドラインに従って、患者にワクチン接種または再度ワクチン接種する。
【0122】
全ての患者を髄膜炎菌感染の初期徴候に関してモニタリングし、感染が疑われる場合には即座に評価し、必要であれば、抗生物質で処置する。患者には、これらの徴候および症状、ならびに医療的ケアを求めるためにとられた工程が即座に知らされる。ワクチン接種は、髄膜炎菌感染を防止するために十分でなくてもよい。抗細菌剤の適切な使用に関する公式のガイドラインが考慮されるべきである。
【0123】
2.合併症
1つの合併症としては、莢膜のある細菌(encapsulated bacteria)による感染への感受性の増大が挙げられる。よって、肺炎球菌および髄膜炎菌のワクチン接種は、処置前に検証される。あるいは、ワクチン接種までおよびワクチン接種して2週間後まで、予防的Moxypen処置が提供される。予防的Moxypen処置を受けた患者は、頭痛、嘔吐、筋肉痛および羞明を伴う発熱が生じた場合には、医師の診察を受けるように指導される。予防的抗生物質は、処置全体を通じて与えられ得る。
【0124】
有害反応は、有害なかつ意図していない、そして疾患の予防、診断もしくは治療のために、または生理学的機能の回復、修正もしくは改変のためにヒトで通常使用される用量で起こるか、あるいは薬物もしくは製品の誤用から生じる応答である。
【0125】
重篤な有害反応は、死亡を生じるか、もしくは生命を脅かす、持続するかもしくは重大な能力障害または不能を生じる、入院患者の入院加療(inpatient hospitalization)もしくは既存の入院加療の長期化を必要とするか、または先天性の異常/出生時欠損である、有害反応である。死亡は生じない、生命を脅かし得る、または入院加療を要し得る重要な医学的事象は、適切な医学的判断に基づいて、その医学的事象が患者を危険にさらし得、この定義において列挙される転帰のうちの1つを防止するために医療介入もしくは外科的介入を要し得る場合、重篤な有害反応と見做され得る。
【0126】
3.長期経過観察の推奨
エクリズマブ処置のための各入院加療に際して、バイタルサインが調べられる(血圧、脈拍、体重および身長が挙げられる)。2週間ごとに、CBCおよび分類(differential)、全化学(腎機能および肝機能、電解質、血液タンパク質および脂質、ならびにLDH、CRPが挙げられる)のために採血される。1ヶ月に1回、免疫グロブリン、補体レベル、ならびにビタミンA、DおよびEのために採血される。
【0127】
実施例2:小児のリンパ管拡張症患者における臨床研究からの予備結果
以下は、上記の実施例1に記載されるプロトコルに実質的に従って行われた進行中の研究において3名の患者からの予備データのまとめである。
【0128】
その3名の患者の各々に関して基本的な検査パラメーターおよび関連パラメーターを、図1(「患者A」)、図2(「患者B」)、および図7(「患者C」)に示す。処置の過程にわたる「患者B」および「患者C」の体重は、それぞれ図6および図11に示される。15日目までの処置の過程にわたる「患者B」および「患者C」のPKおよびPDベースライン/トラフおよびピークは、それぞれ図5および図10に示される。以下の患者のピークおよびトラフの時点:「患者A」(29日目、43日目、57日目および71日目)、「患者B」(43日目、57日目、71日目、および85日目)、および「患者C」(114日目)は、表7に示される。
【表7】
【0129】
図3に示されるように、「患者B」の血清アルブミンレベルは、20日間の処置後に、ベースラインと比較して約1.7倍増大した。図4に示されるように、「患者B」の全血清タンパク質レベルは、20日間の処置後に、ベースラインと比較して約1.5倍増大した。
【0130】
図8に示されるように、「患者C」の血清アルブミンレベルは、80日間の処置後に、ベースラインと比較して約5倍増大した。図9に示されるように、「患者C」の全血清タンパク質レベルは、80日間の処置後に、ベースラインと比較して約2.3倍増大した。図12に示されるように、可溶性TNFR1レベルは、8日間の処置後に約1/1.8に、43日間の処置後に約1/3.25に減少した。
【0131】
要約すると、エクリズマブの投与は、リンパ管拡張症を有する小児患者において、血清アルブミンおよび全血清タンパク質レベルを迅速に増大させ、可溶性TNFR1レベルを減少させた。
【0132】
実施例3:遺伝性補体調節不全(inherited complement dysregulation)に起因するタンパク質漏出性腸症を有する患者における臨床研究からの予備結果
PILおよび凝固能亢進と関連するPLEに罹患した6名の患者を有する大きな血族のイスラム教徒-アラブ系家族において、臨床研究を行った。その患者のうちの2名は、その疾患に由来する合併症に起因して死亡し、3名の患者をその臨床研究に登録した。遺伝子分析からCD55喪失が同定された。これは、補体調節不全が疾患の病態生理に寄与することを示唆した。これは、補体検査によって裏付けられ、エクリズマブでの治療が促された。
【0133】
I.研究デザイン
研究参加者
図13Aに示されるように、拡大されたイスラム教徒-アラブ家系家族の32名を、ヘルシンキ倫理委員会の承認およびインフォームド・コンセント後に募集した。全ての患者、彼らの親およびきょうだいについて、遺伝医学者および消化器医により表現型を決定した。入手可能な場合には、医療記録を考慮した。
【0134】
患者1
患者1(63歳)は、患者3の母方のおばである。彼女には、7名の健康なきょうだいがおり、1名は罹患した妹(患者2)である。彼らの両親は、みいとこ同士(third degree cousin)である。3歳から、彼女は、腹痛、下痢ならびに末梢浮腫および顔面浮腫のせいで何度も入院加療した。その症状は、報告によれば、思春期に改善した。彼女の疾患経過観察の医療記録は入手できなかった。彼女は、ときおり腹痛および下痢に悩まされたが、利用可能な精密検査から、概して正常であるようだった。57歳のときに、内視鏡検査から、壊死、急性炎症、フィブリンが混じった炎症性滲出液、ならびにリンパ球および形質細胞からなる深部の単核浸出液を伴う結腸粘膜の広範な潰瘍化が明らかになった。そのときに、炎症性腸疾患の診断が示唆された。彼女は、医療的経過観察または処置に従順ではなかった。彼女はまた、喘息、2型糖尿病および胃食道逆流と診断された。
【0135】
患者2
患者2は、患者3の母方のおばである。彼女は、その拡大家族の中の罹患した小児に類似の症状から、35歳で死亡した。彼女には、1名の健康な息子がおり、彼は、CD55機能喪失変異に関してヘテロ接合性である。
【0136】
患者3
患者3は、親がいとこ同士のもとにある20歳の罹患した息子である。彼には、5名の健康なきょうだいがいる。彼は、重篤な腹痛および腸重積に起因する腸閉塞と一致する症状を、2歳半のときに呈した。入院加療後、彼は、PILに起因する低アルブミン血症およびPLEと診断された。その診断は、臨床検査、内視鏡検査、病理所見および画像所見によって裏付けられた。具体的には、図13Bおよび図13Cは、患者3における腸リンパ管拡張症の内視鏡所見および組織所見の画像である。図13Bは、回腸末端部におけるキャビア様絨毛の証拠(矢印で示される)を示し、図13Cは、十二指腸粘膜において、拡張した腸リンパ管(矢印で示される)、すなわち、リンパ管拡張症を示す。低アルブミン血症(観察された最低値は、1.1g/dLであった(正常範囲は3.5~5.2g/dL))に加えて、彼は、上昇した糞便のα1アンチトリプシン(A1AT)、および低リンパ球および血中脂質の計数を有した。直腸生検から、炎症の徴候も好酸球もない粘膜固有層の浮腫が明らかになった。空腸の生検からは、増大した単核細胞、軽度に増大した好酸球、粘膜下組織層中のリンパ管の中程度の拡張に関して陽性であった。十二指腸生検から、大部分は正常な絨毛構造が示された。ごく僅かな絨毛が、粘膜固有層におけるリンパ管拡張症を示した。腹部の磁気共鳴エンテログラフィー(MRE)は、PILと一致する、リンパ管拡張に起因する腸間膜鬱血(mesenterial congestion)を示した。
【0137】
診断後の最初の数年間、彼は経鼻栄養チューブを通じて栄養され、後に胃瘻造設によって、Pregestimil(これは、中鎖トリグリセリド(MCT)および完全加水分解カゼインからなる55% 脂肪を含む)で栄養され、補助的な脂溶性ビタミン(ADEK)を受けた。彼は、軽度の体重増加および身長の伸びを示したが、再発する疾患増悪になお悩まされていた。MCTが高い(脂肪のうちの80%)Monogen、およびその後にPeptamen(脂肪のうちの70%がMCT由来および部分加水分解ホエイ)での摂食試験は、成長を改善せず、これは、再発性の腹部増悪を伴ってなお最適ではなかった。完全静脈栄養(total parenteral nutrition)(TPN)による栄養を試みたところ、体重増加を生じた。しかし、彼はなお、腹痛、おむつを要する重篤な下痢、電解質異常(electrolyte disturbance)、および小腸重積症に起因する再発性の腸閉塞に間欠的に悩まされた。彼には、精巣萎縮をもたらす重篤な陰嚢浮腫および精巣捻転症があった。さらに、彼は、再発性の中心ライン血栓(central line thrombosis)を有し、エノキサパリンでの抗凝固処置下にあってすら上大静脈(SVC)症候群の事象が2回あった。凝固能亢進に関して検査して調べたが正常であり、抗凝固因子の腸からの喪失が、彼の凝固亢進状態に関する病因として提唱された。
【0138】
エクリズマブ開始前に、患者3は、胃瘻造設によるPeptamenおよび経口低脂肪食を受けたが、彼はこれらを完全には遵守しなかったので、腸移植の候補者であった。彼の体重はアルブミン約3g/dLで安定したが、彼はなお、間欠的な増悪、腹水、およびおむつの使用を要する絶えず続く下痢に悩まされた。慢性的な下痢に関連する持続性の低カリウム血症に起因して、彼を、25mEq/日という塩化カリウム6用量を補充して処置した。彼は、脂質およびビタミン吸収不良に起因して、発毛不良であり、後天性魚鱗癬であった。彼のクオリティー・オブ・ライフが不十分であることから、重篤な不安をオランザピンで処置した。
【0139】
患者4
患者4は、10歳である。彼女は、平穏無事に妊娠満期後に、親がいとこ同士のもとに産まれた。彼女には3名の健康な兄弟がいる。彼女の発達は、下痢、重篤な低アルブミン血症(記録された最低のアルブミンは、0.8g/dLであった)、貧血、および全身浮腫に二次的な体重増加を彼女が呈した1歳3ヶ月まで正常であった。病理所見は、結節性で浮腫性の胃粘膜および十二指腸粘膜を示した。家族歴に照らせば、PLEが疑われ、彼女に、MCTを強化した低脂肪食および調合物を摂取させた。下痢が鎮まり、アルブミンレベルが僅かに改善した。
【0140】
長年にわたり、彼女はいくつかの病院で処置され、腸閉塞の事象を繰り返した。これらのエピソードのうちの1つから、穿孔、腹膜炎、生命を脅かす敗血症および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)(これは不可逆的な認知および精神運動の損傷を引き起こした)によって複雑になった緊急手術が生じた。
【0141】
エクリズマブ開始前に、彼女を、胃瘻造設によるPeptamen Juniorで栄養した(アルブミンレベルは1~2g/dL)。彼女は、医療的処置および食事の推奨をあまり遵守せず、スケジュールが組まれた経過観察も応じなかった。彼女は、反復される排液およびアルブミン補充を要する重篤な腹水、ならびに歩行不能をもたらす末梢浮腫に起因して入院加療した。入院加療の間に、彼女は、緊急手術を要する腸閉塞を発生させたが、重篤な癒着および腫脹に起因して、腸の解剖学的構造が確定できず、彼女に複数の腹部排液管を残した。その手術後、彼女は、オピオイドで処置される絶えず続く重篤な腹痛に悩まされ、便通がなく、TPNで栄養した。造影剤での腹部画像化では、彼女の腸管の複数の部分を示すことができなかった。
【0142】
患者5
患者5は、親がいとこ同士のもとに生まれ、2名の健康な兄弟がいた。彼女は、10ヶ月齢で、下痢、再発性の腸閉塞、重篤な低アルブミン血症(記録された最低アルブミンは0.5g/dLであった)および発育不全(FTT)を呈した。家族歴に起因して、PLEが疑われた。小腸からの生検から、慢性の軽度炎症、ならびに十二指腸粘膜固有層における2つの過形成のリンパ集合体(hyperplastic lymphatic aggregate)が明らかになった。しかし、リンパ管の拡張は、観察されなかった。カプセル内視鏡検査から、小腸に突出部があることが明らかになり、CTエンテログラフィー(computed tomography enterography)(CTE)が促された。CTEは、近位および遠位の小腸壁の結節性の肥厚に関して陽性であり、腸重積が疑われた。低脂肪MCT強化食を開始したが、患者5は、彼女のアルブミンレベルにおいても、彼女の成長においても改善が示されなかった。これはおそらく、遵守が不十分であることに起因した。さらに、彼女は、低カリウム血症、低ナトリウム血症および低マグネシウム血症を含む重篤な電解質欠乏症を発生させた。
【0143】
2歳半で、彼女はバッド・キアリ症候群の臨床像を伴う肝静脈血栓症に悩まされた。彼女を、エノキサパリンおよび利尿薬で処置した。TPN投与のために、中心ライン(central line)を挿入したが、下痢またはアルブミンレベルの改善はなかった。さらに、彼女は再発性のライン感染(recurrent line infection)および敗血症、その後、SVC症候群を有し、重篤な呼吸不全がもたらされた。凝固パネルは、ホモ接合性MTHFR(MIM #607093)C677T変異に関してのみ陽性であり、彼女は、抗凝固治療を受けた。中心静脈ラインを外し、彼女を経鼻胃管によって栄養したが、彼女の医学的状態および食事状態は悪化し続けた。彼女は重篤な全身浮腫および腸性先端皮膚炎様の発疹を有し、静脈アクセスに失敗した。彼女は、重篤な腸管不全に起因して4歳で死亡した。
【0144】
患者6
患者6は、両親がいとこ同士のもとに、羊水過多および逆子に起因して、36週間目に帝王切開により未熟児で生まれた。羊水過多に起因して出生前遺伝子評価を行ったところ、染色体マイクロアレイ分析(CMA)は正常であった。出生時には、彼の体重は2.4kg(25~50パーセンタイル)であり、未知の病因の、顕著な緊張低下、水頭症および呼吸窮迫を示した。代謝の精密検査は正常であった。脳室腹腔(VP)シャントを挿入し、彼を胃瘻造設で栄養した。彼は、全体的な発達遅延を示した。脳MRIから、頭蓋骨、半球および脳室の非対称性、脳室周囲白質の枯渇、および薄い脳梁が明らかになった。神経学的表現型は、家族性PLE症候群の一部であるとは考えられなかった。
【0145】
家族歴に鑑みて、患者6を検査したところ、CD55 c.43del変異に関するホモ接合性が見出された。彼を、小児消化器ユニットが経過観察したが、最初はPLEの徴候を示さなかった。1歳11か月のときに、彼は、重篤な下痢、低アルブミン血症(記録された最低アルブミンは0.6g/dL)、全身浮腫およびFTTの急性の発現によって入院加療した。タンパク尿は観察されず、糞便のA1AT上昇は、PLEの診断を示した。彼に、胃瘻造設によってPregestimil食を即座に摂取させたところ、下痢が改善され、彼のアルブミンレベルは約1g/dLで安定化した。腹部超音波検査は、腹部および骨盤の中に中程度の腹膜液とともに、肥厚した浮腫様かつ充血した腸に関して陽性であった。入院加療の間に、焦点発作の事象から、脳CTによって右矢状面の静脈洞血栓症の診断がもたらされた。凝固パネルから、彼は、ヘテロ接合性の第V因子ライデン変異に関して陽性であり、第VIII因子が軽度に上昇していることが明らかにされた。彼を、エノキサパリンで処置した。
【0146】
エクリズマブ開始の前に、彼のアルブミンレベルは依然として非常に低く、彼は下痢に悩まされた。重篤な吸収不良に起因して、彼は、二次的な真菌感染とともに顕著な腸性先端皮膚炎様の発疹を発生させた。これを、局所ステロイドおよび抗真菌剤で処置したが、成功しなかった。彼は、低アルブミン血症(1.5g/dL)、および重篤な全身浮腫を含む、危険な状態で入院加療した。彼は、骨内アルブミン注入および電解質を含む流体を受けたが、改善しなかった。彼の状態は急速に下降し、彼は、低体温(34.8℃)、低血圧(88/55)およびチェーン-ストークス呼吸を呈し、非再呼吸式マスクでの酸素補充を余儀なくされた。彼の血液検査は、呼吸性アシドーシス(pH7.17、正常は7.35~7.45;pCO 88mmHg、正常は35~45)に関して陽性であった。
【0147】
遺伝子分析
患者3、4および5のDNAサンプル(表8)、ならびに1名の健康な母親は、Nextera Rapid Capture Enrichmentキット(Illumina)を使用して、HiSeq2000プラットフォーム(Illumina, San Diego, CA, USA)で全エキソーム配列決定(WES)を受けた。リードを、参照ゲノム(GRCh37/hg19)に対してマッピングし、改変体をGenoox data analysis platform Ltd.(Tel Aviv, Israel)上でコールし、これをデータ分析にも供した。
【0148】
変動性の重篤度のPLEと診断された6名の個体を含む血縁および拡大家族構造から、常染色体劣性遺伝が示唆された。従って、WESフィルタリング基準は、健康な母親ではヘテロ接合性である、患者において希な(欧州および中東系のコントロール集団ではMAF<0.01)ホモ接合性タンパク質変更改変体(ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト、スプライス部位)を含んだ。改変体に、推定される機能的結果ならびに文献、OMIMおよびVarElectによる表現型に対する関連性に基づいて優先順位を付けた(Stelzerら, BMC Genomics. 2016;17(S2):444)。改変体検証および共分離に、サンガー法による配列決定を使用した。ExonPrimer(https://ihg.gsf.de/ihg/ExonPrimer.html)を使用してプライマーをデザインした。CD55改変体に対するプライマーは、ACGAGGCTTCTGCTTACTGC(順方向;配列番号36)およびCAGAGACCGACTTGGACCTC(逆方向、配列番号37)を含んだ。ABI Prism 3500 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)で製造業者のプロトコルに従って配列決定を行った。Sequencher 5.3ソフトウェア(GeneCodes Corporation, Ann Arbor, MI, USA)を、改変体分析に使用した。
【0149】
タンパク質検出
CD55のフローサイトメトリーを、PE結合体化抗CD55(JS11KSC2.3, Beckman Coulter, Brea, CA, USA)を使用して、Naviosフローサイトメーター(Beckman Coulter)でRBCおよび顆粒球に対して行った。結果を、FCS Express 6 Plus(De Novo Software, Glendale, CA, USA)で分析した。
【0150】
さらに、CD55抗原(Cromer式血液型)を、ID-Card Coombs Anti-IgG(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)およびNational Blood Group Reference Laboratory社内希少抗血清コレクションからのヒト抗体(抗Dr、抗Es、抗Cr、抗CROK)を使用して、赤血球凝集によってアッセイした。抗Es、抗Cr、および抗CROK溶離液を、抗原陽性赤血球(RBC)上の吸着によって調製し、ELU KIT(Immucor, Norcross, GA, USA)を使用して溶離した。特異的抗原に対する陽性コントロール赤血球(RBC)および陰性コントロールαキモトリプシン処理RBCを含めた。
【0151】
補体研究
RBCおよび好中球を、iC3b(C3b切断の生成物)およびMAC沈着を評価するために染色した。RBCを即座に染色し、好中球を単離し、10%自己由来の新鮮な血清の存在下で静置した。次いで、5μLの新鮮な、クエン酸抗凝固処理血液を1mL PBS×1で希釈した。合計100μLの希釈血液を、各染色に使用した。好中球を、以前に記載されるように単離した(Mevorach, D., Mol. Immunol., 67:51-5, 2005)。次に、1μgのモノクローナル抗ヒトSC5b-9またはiC3b抗体(Neoantigen, Quidel, San Diego, CA, USA)のいずれかを添加し、細胞を30分間氷上でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、1:100のR-Phycoerythrin-AffiniPure F(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove PA, USA)で染色した。次いで、細胞をさらに20分間氷上でインキュベートし、2回洗浄し、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickenson, Franklin Lakes, NJ, USA)を使用して分析した。
【0152】
エクリズマブ処置プロトコルおよびモニタリング
エクリズマブの適応外救済使用(Compassionate off-label use)は、Rambam Health Care Campus規制当局によって認められ、患者または彼らの親がインフォームド・コンセントに署名した後に投与した。全ての患者にワクチン接種し、エクリズマブ処置における慣習どおり、予防的抗生物質を与えた。
【0153】
処置レジメンを、これらの患者における腸からのタンパク質喪失を考慮するために、PNH/aHUSプロトコルから調節した。誘導相は、2週間にわたって1週間あたり2回のエクリズマブ注入、続いて、3回の毎週用量を含んだ。その後、患者に、維持のために2週間ごとに注入を与えた。投与は、患者体重によって決定した: 処置1回あたり、10~30kgの体重に関しては600mg、30~40kgの体重に関しては、900mg、および>40kgの体重に関しては1200mg。
【0154】
患者を、バイタルサイン、体重、有害反応、および精密検査(完全化学パネル、完全血球算定(分裂赤血球のためのスメアを含む)、補体(C3、C4、遊離C5)および免疫グロブリンレベル、C反応性タンパク質、血栓形成促進性尺度(フィブリノゲン、d-ダイマー)、ならびに溶血マーカー(LDH、ハプトグロビン)を含む)のために各処置について注意深くモニタリングした。処置に対する応答を、アルブミンおよび全タンパク質レベル、便通頻度および便の粘稠度、体重、医師の評価、ならびに全般的な幸福の患者/親の説明によって評価した。
【0155】
II.結果
臨床的要約
各患者に関する包括的な臨床記述は、表8に報告される。疾患の始まりは、10ヶ月齢~3歳の間であり、全身性の浮腫、重篤な低アルブミン血症、下痢、腹部膨隆および腹痛を呈した。患者2および患者5は、それぞれ、疾患の合併症に起因して35歳および4歳で死亡した。PLE診断は、患者3および6では上昇した糞便のA1ATの臨床所見、および大部分の患者では低リンパ球数によって裏付けられた。PILの特徴は、PILの複雑な証明に関して公知の文献と一致して、図13Dおよび図13Eに示される、リンパ腫脹を示す、内視鏡検査、病理および画像化研究を通じて1名の患者(患者3)において示されたのみであった。PLE診断と一致して、MCT強化調合食および脂溶性ビタミン補充を伴う低脂肪食(主に胃瘻造設または完全静脈栄養(TPN)に従う)は、遵守する場合には、患者において有効であった。
【0156】
反復した血栓性事象は、患者のうちの3名において注記された(再発性の中心ライン血栓(患者3および5)、バッド-キアリ(患者5)、上大静脈症候群(患者3、5および6)、および静脈洞血栓症(患者6)が挙げられる)。凝固亢進および凝固パネルでは、共通する原因は得られなかった(表8)。
【表8】
【0157】
患者1(研究時には63歳)は、3歳以来の再発性の末梢浮腫および顔面浮腫(これは、思春期には改善した)を含む類似の病訴のために入院加療の繰り返していることを報告した。彼女の疾患の経過観察の医療記録は入手可能でなく、彼女はときおり腹痛および下痢に悩まされ続けている。
【0158】
PLE患者において同定されたCD55におけるホモ接合性フレームシフト改変体
WESバイオインフォマティクス分析は、リンパ関連遺伝子における希な有害改変体を同定できなかったが、偏りのない分析から、CD55の第1のエキソンにおけるホモ接合性フレームシフト改変体が明らかになった。改変体、NM_001114752.1:c.43del(p.Leu15Serfs*46)は、サンガー法による配列決定で検証したところ、図13Dに示されるように、拡大家族(n=32)においてその疾患と共分離した。それは、Greater Middle-East Variome Projectおよび多様なイスラエル民族のおよそ650のコントロール染色体の社内データベースを含む公けの改変体データベースにはなかった(Scott, Eら, Nat. Genet., 48:1071-6, 2016)。
【0159】
PLE患者におけるCD55発現の欠如
CD55抗原への結合は、図13Eに示されるように、コントロールと比較して、患者のRBC(患者3、4および6)および顆粒球(患者4および6)上でフローサイトメトリーによって検出されなかった。同様に、赤血球凝集試験から、患者3および5のRBCは、希なCromer Inab(CD55ヌル)表現型を示唆する、以下のタイプ:CROM:-1 [Cr(a-)]、CROM:-5 [Dr(a-)]、CROM:-6 [Es(a-)]、CROK陰性であることが明らかにされた。
【0160】
補体活性化
MACおよびiC3bの両方が、それぞれ、図15および図16に示されるように、年齢を合わせたコントロールと比較して、患者において有意に上昇した(p<0.001)。
【0161】
エクリズマブ治療の臨床応答
エクリズマブへの正の応答は、1回の処置後に、全3名の処置した患者において観察された。遊離C5レベルは、第1の用量投与後に、110μg/mLから定量限界未満へと低減した。
【0162】
救済治療の承認を、患者6(2.5歳の男児であり、彼は、危険な状態で入院加療した)に対して最初に得た。彼は、低体温、低血圧であり、チェーン・ストークス呼吸を示し、非再呼吸式マスクでの酸素補充を余儀なくされた。血液検査から、静脈内アルブミンに応答しない重篤な低アルブミン血症(1.5g/dL)、pCO停留(88mmHg、正常は35~45)、および呼吸性アシドーシス(pH=7.17、正常は7.35~7.45)が明らかになった。彼は、重篤な全身浮腫(極度の全身性浮腫)およびビタミン欠乏症に起因する腸性先端皮膚炎と一致する非常に顕著な発疹を有した(表8;図17(パネルA~E))。疾患の始まり以来、彼には、1日あたり>10回の水様性の下痢があり、十分な尿生成のためにフロセミドを要した。エクリズマブ開始後、バイタルサインの正常化および鼻カニューレでの体外からの酸素化で、彼の状態は24時間以内に安定化した。アシドーシスは、急速に消散した(pCO=42mmHg、pH=7.46)。彼の排尿は改善し、2週間以内に水分で体重が1.5kg減り、重篤な全身浮腫が本質的に消散した。図17(パネルA~E)に示されるように、ステロイドおよび抗真菌クリーム剤ならびに数用量の静脈内ビタミンでの補助治療で、彼の発疹は顕著に改善した。彼は、17処置日後に病院から退院した。現在は、彼の便通は、図14に示されるように、1日に3~4回へと低減し、彼は笑って人々と交流している。彼のアルブミンおよび全タンパク質レベルは、1ヶ月以内に正常化し、その後安定している。
【0163】
患者6の劇的な治療結果の後に、2名の他の患者に救済治療の承認を得た。患者4(10歳の女児)は、栄養不良状態、静脈内アルブミンに応答しない低アルブミン血症1.7g/dL、反復する脱水エピソード、顕著な腹水、腹痛、および歩行不能を引き起こす浮腫様の脚で入院加療した。彼女は腹部の閉塞を有したので手術を受け、複数のストーマおよび腹部排水管を残した。エクリズマブ処置の前に、彼女は、オピオイド処置を要する絶えず続く重篤な腹痛の状態にあった。造影剤での腹部画像化では、図17(パネルK)に認められるように、彼女の腸管の複数の部分を示すことができなかった。第1の用量後に、彼女の母親は、腹痛の緩和に注目し、彼女は鎮痛薬を受けるのを停止した。数日以内に、彼女の食欲は戻り、便通が始まり、彼女のアルブミンは、図14に示されるように、正常範囲内の全タンパク質とともに安定なレベル(約3g/dL)へと戻った。65日間のエクリズマブ後の反復の画像化から、彼女の腹部の状態において非常な改善(図17(パネルL)に示される)が明らかになったので、彼女は手術を受け、クオリティー・オブ・ライフを維持するために十分な腸(およそ140cm)を救うことができた。矯正手術の間に採取した腸生検からは、エクリズマブ処置前に採取した生検において観察されたリンパ管拡張症は明らかにならなかった。彼女は、6ヶ月の入院加療後に、アルブミンおよび全タンパク質レベルが正常化して退院し、これは安定なままである(図18Aを参照のこと)。さらに、彼女は自分の便通のコントロールを再獲得し、正常な粘稠度で1日あたり2~3回に低減した。彼女は、胃瘻造設による栄養を離れ、チューブが外された。
【0164】
患者3(20歳の男性)は、反復する腸重積および腹痛エピソード、腹水、および二次的な両側性鼠径ヘルニア、ならびに顕著なカリウム補充を要する低カリウム血症に悩まされていた。彼は、腸移植の候補者であり、低減した脂質およびビタミン吸収に起因する後天性魚鱗癬にも悩まされた(図17(パネルF~J))。彼のアルブミンレベルは3.2g/dL(他の患者ほど顕著に低くはない)であったが、彼は、おむつを要する、絶えず続くコントロールできない下痢を報告し、それは、クオリティー・オブ・ライフを妨げ、彼の気分に影響を及ぼし、抗鬱剤での処置を要した。彼は、第1のエクリズマブ注入後に具合が良くなったと報告した。1週間以内に、彼は、便通の頻度の低減および便の正常な粘稠度に起因して、おむつをはくのを止めた(図14)。彼の腹水は、図17(パネルH~J)に示されるように、魚鱗癬と同様にゆっくりと改善し、彼は、処置の43日以内に身長が3cm高くなった。彼のアルブミンおよび全タンパク質レベルは、表8および図14で報告されるように、2週間以内に正常化した。彼の腹水、魚鱗癬および爪ばち指は、完全に消散した。彼は、カリウム補給剤の摂取を止め、彼のカリウムレベルは安定なままであった。彼はもはや長期の服薬および食事補充を必要とせず、彼の胃瘻造設は外された。彼は、脂肪性の食品を含め通常の食事を食べ、PLE増悪はないと報告した。彼のボディーマス指数(BMI)は、15.9から21.1へと改善し、彼は1年以内に身長が6.5cm高くなった(図18Bを参照のこと)。21歳のときには、患者3は、以前は引きこもっていたのが、意欲、活力を示し、最終的には、彼の年齢に合った仲間に見合ったレベルの自立を成し遂げた。彼は、毎日の家事に母親の助けに依存することは少なくなり、抗鬱剤がなくても気分がよいことを報告し、意欲を見せて、より自立するようになっている。
【0165】
エクリズマブへの正の臨床的応答は、第1の処置後に全3名の処置した患者において観察されたように、血清アルブミンおよび全タンパク質における連続的な改善、ならびに減少した補体活性化が付随した。急性の疾患発現は、患者6の危険な状態の迅速な安定化および全3名の患者において便通の頻度の顕著な低減を含め、消散した。軽減したタンパク質喪失の最初の徴候は、2~4週間以内の全タンパク質レベルの正常化であった;血清アルブミンレベルは、その後直ぐに正常化した。さらに、食事制限が解かれ、患者は、大きな合併症なしに彼らの日常に戻ることができた。
【0166】
遊離C5レベルは、第1の用量後に検出限界未満に減少し、WBC上のMAC沈着が低下した(図15)。患者4では、MAC沈着は、WBCにおいては5.2倍から(コントロールと比較して)2.1倍へと(p<0.01)、顆粒球においては6.5倍から3倍へと(p<0.01)、そして単球においては4.5倍から1.7倍へと(p<0.01)、低減した。全体的に、処置前のレベルと比較して、処置59日目にMAC沈着において60%減少が観察された(図15)。iC3bの沈着は、WBCおよび顆粒球において増大した(p<0.05)(図16)。患者3は、類似のパターンを示し、患者6(彼のMACおよびiC3b沈着は処置後にのみ研究された)は、他と類似の処置後沈着を示した。
【0167】
エクリズマブ処置の間に重篤な有害事象は観察されなかった。患者3は、第2の用量後に頭痛および目眩を報告したが、他は繰り返されなかった。エクリズマブ開始前のワクチン接種および予防的抗生物質があったにも拘わらず、患者6は、Haemophilus influenzaeタイプbの肺炎を有した(これは、静脈内抗生物質後に消散した)。患者4は、5ヶ月の処置後に約160×10/μL(正常は200~370)の軽度血小板減少症を発生させ、現在では安定なままである。彼女は、上昇した肝酵素機能のエピソードを有したが、これは、通常の超音波検査および陰性のウイルス精密検査では自然に消散した。興味深いことに、全3名の患者は、第1の用量後にヘモグロビンレベルにおいて1.5~2.5g/dLの低下を経験したが、これは、その後、さらなる処置を必要とせずに改善した。正常なハプトグロビンレベルを含め、溶血の徴候は観察されなかった。
【0168】
III.考察
この研究における患者は、PILと関連するPLEおよびCD55ヌルPLE(CHAPLE)症候群として公知の凝固能亢進(これは、両アレルのCD55機能喪失によって引き起こされる)という新規の障害に悩まされている。疾患の始まり以来、全ての公知の治療の試みは失敗に終わり(ソマトスタチンおよびコルチコステロイドを含む)、患者は、低脂肪食および効果が限られた、腸リンパ管を通じた吸収を迂回するMCT強化補給剤を遵守しなければならなかった。疾患の増悪および合併症に起因する複数回の入院加療が記録されており、これは、患者および彼らの家族に物理的にも感情的にも負担になっている。感情的なストレスは、拡大家族における疾患の合併症による死亡によってさらに悪化した。
【0169】
CD55は、血液、内皮細胞および消化管を含む多くの組織において広く発現されるグリコシルホスファチジルイノシトール(glycophosphatidylinositol)(GPI)結合膜タンパク質をコードする(Lin, F.ら, Immunology,104:215-25, 2001)。CD55は、Cromer血液型抗原を有し、新たなC3/C5コンバターゼの形成を防止し、既存のコンバターゼの崩壊を加速させ、従って、C3およびC5切断および活性化を阻害し、補体誘導性自己傷害から細胞を防御することによって、補体活性化を調節する。CG55のさらなる非補体依存性機能は、T細胞免疫調節およびCD97への結合を通じた白血球接着における役割を含む(Karpus, O.ら, J. Immunol., 190:3740-8, 2013; Fang, C.ら, Blood, 118:1008-14, 2011)。
【0170】
先天性のCD55欠乏症は非常に希である。Cromer Inab(CD55ヌル)表現型を有する9個体のみが、今日までに記載されている(Yazer, M.ら, Transfusion, 46:1537-42, 2006)。興味深いことに、これらの個体のうちの4名は、PLE、クローン病および小腸毛細血管腫を含む消化管表現型を示した。表現型の不均質性は、ホモ接合体の中での無症候性または最小限の症状を含め、現在の家族構成員および公開されたCD55ヌル個体の両方の中で明らかである。これは、未知の改変因子の影響を示唆する。
【0171】
その研究した患者の病歴が不十分であることを、CD55の観察された喪失ならびにiC3b(C3b切断の生成物)およびMACの明らかに上昇したレベルと合わせると、必要に応じて調整された介入の必要性が強調された。補体媒介性病原性経路を考慮して、エクリズマブでの処置を、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および機能しないCD59に起因する再発性の脱髄性ニューロパチーのような症候群と同様に開始した(Mevorach, D., Mol. Immunol., 67:51-5, 2015; Nevo, Y.ら, Blood, 121:129-35, 2013; Nester, C & Thomas, C., Hematology, 2012:617-25, 2012)。
【0172】
CHAPLE症候群患者をエクリズマブで処置すると、劇的な臨床応答および検査応答がもたらされ、患者および彼らの親のクオリティー・オブ・ライフが本質的に回復した。患者3および6において絶えず続く下痢の消散、ならびに全3名の患者において全タンパク質およびアルブミンレベルの上昇によって示されるように、1ヶ月の処置以内に、急性の腸からのタンパク質喪失の徴候が改善された。さらに、患者は、PLE症状の再発なしに低脂肪食を止めることができた。これは、彼らが通常の生活を維持する能力において類似の患者にとって大きな見込みを示す。栄養改善の転帰は、浮腫および重篤な皮膚状態の消散、ならびに全3名の患者において観察された発毛を含んだ。患者3にとっての予期せぬ処置転帰は、20歳にして12ヶ月の処置以内に彼の身長が6.5cm高くなったことであった(図18B)。これは、ゴーシェ病のような重篤な慢性の早期発症性の障害を有する若年の患者の成人期への既知の継続した成長と一致する。
【0173】
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎を有するCD55ヌルマウスにおける以前の研究は、野生型コントロールと比較して、より重篤な表現型を示したのに対して、CD55アップレギュレーションは、消化管炎症または化生を有する患者において観察された(Lin, F.ら, J. Immunol., 172:3836-41, 2004; Berstad, A. & Brandtzaeg, P., Gut, 42:522-9, 1998; Mikesch, J.ら, Biochim. Biophys. Acta, 1766:42-52, 2006)。これらの所見は、CD55の示唆された免疫調節性および組織防御の役割と一致する。しかし、タンパク質の喪失および脂肪吸収不良を引き起こす正確な機構は、現在未知である。脂質代謝におけるC3の役割は、この点において興味深いことであり得る。なぜならその切断生成物のうちの1つは、遊離脂肪酸輸送、ならびにトリグリセリド合成およびクリアランスに関与する脂質生成ホルモンであるC3a-desArg(非活性化C3a)だからである(Barbu, A.ら, Mol. Immunol., 67:101-7, 2015; Murray, I.ら, Endocrinology, 141:1041-9, 2000)。CD55の欠如は、トリグリセリドターンオーバーおよびカイロミクロンの過剰アセンブリを上昇させるC3a-desArg過剰生成をもたらし得、従って、腸リンパ管により重い負荷をかけ得る。エクリズマブへの実質的な応答は、MACがおそらく、報告された家族におけるPLEの病原論に関与し、腸組織損傷をもたらすことを示す。
【0174】
その患者のうちの3名において観察された再発した血栓性事象は、抗凝固因子の腸からの喪失、および凝固促進因子の二次的な肝臓での合成を引き起こす低アルブミン血症に帰させられうる。しかし、CD55ヌルのPLE患者は、補体調節不全の他の障害に類似の微小血管損傷および凝固亢進状態をもたらす血栓形成促進性補体調節不全に悩まされ得る(Meri, S., Eur. J. Intern. Med., 24:496-502, 2013).
【0175】
結論として、この拡大家族においてPLEおよび凝固能亢進と一緒に分離するCD55ヌル遺伝型は、補体調節不全がCD55関連PLEの病原論において必須であることを示す。終末補体経路のインヒビターであるエクリズマブの有益な効果は、PLEのある種の形態と補体活性化との間の連鎖への裏付けを提供する。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
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図2-2】
図2-3】
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図15-2】
図16
図17-1】
図17-2】
図18
【配列表】
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