(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】多段渦巻きポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20221215BHJP
F04D 1/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F04D29/44 D
F04D1/08 C
F04D29/44 E
(21)【出願番号】P 2020032580
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笹山 大寛
(72)【発明者】
【氏名】本多 武史
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和寛
(72)【発明者】
【氏名】大和田 道夫
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176426(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0036404(US,A1)
【文献】特開2015-143475(JP,A)
【文献】特開昭60-036702(JP,A)
【文献】特開昭59-122800(JP,A)
【文献】米国特許第5320489(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、該電動機で回転駆動される羽根車を備える羽根車部と、該羽根車部の外周を覆うように位置すると共に外郭でポンプ室を形成するケーシングと、を有し、前記羽根車の回転により渦巻きポンプ作用を行う多段渦巻きポンプ装置において、
前記電動機は、前記ケーシングに対してポンプ室側とは反対側の背面側に位置し、
前記羽根車部は、ガイドカバーと、第1の羽根車と、クロスオーバーリターンと、シャフトスペーサと、リターンガイドと、第2の羽根車と、を有し、
前記クロスオーバーリターンは、リターンディフューザと、タンデムディフューザを備え、
前記リターンディフューザと前記タンデムディフューザの間に開口部を有
し、
前記ケーシングは、前記第2の羽根車から吐出された加圧水を整流する静翼部を有し、この静翼部には凹部を備え、
前記リターンガイドは、背面側に前記凹部と嵌合する凸部を有することを特徴とする多段渦巻きポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多段渦巻きポンプ装置において、
前記シャフトスペーサは、
前記第1の羽根車の後端と、前記第2の羽根車の前端とに接触することを特徴とする多段渦巻きポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段渦巻きポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦巻きポンプ装置としては特許文献1に示すような、多段渦巻きポンプ装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポンプ効率が優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、部品間の水密性を向上させることで、ポンプ効率が優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多段渦巻きポンプ装置は、電動機と、該電動機で回転駆動される羽根車と、該羽根車の外周を覆うように位置すると共に外郭でポンプ室を形成するケーシングと、を有し、前記羽根車の回転により渦巻きポンプ作用を行う多段渦巻きポンプ装置において、前記電動機は、前記ケーシングに対してポンプ室側とは反対側の背面側に位置し、前記羽根車部は、ガイドカバーと、第1の羽根車と、クロスオーバーリターンと、シャフトスペーサと、リターンガイドと、第2の羽根車と、を有し、前記クロスオーバーリターンは、リターンディフューザと、タンデムディフューザを備え、前記リターンディフューザと前記タンデムディフューザの間に開口部を有する。
また、本発明は、部品間の水密性を向上させる手段として、リターンガイドの背面側に、ケーシングの静翼に設けられた凹部に嵌合する複数の凸部を設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リターンディフューザとタンデムディフューザを備えたクロスオーバーリターンを搭載することで、周方向に均一な流れを形成でき、ポンプ効率に優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することができる。
【0007】
また、本発明によれば、凸部と凹部を嵌合させることで、ラビリンス効果が生まれ水密性が向上することで、ポンプ効率に優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することができる。
また、凸部と凹部を嵌合させることで、部品組立時の位置決めが容易になり組立作業性の向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例に係り、多段渦巻きポンプ装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の上面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の右側面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の左側面図である。
【
図5】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の上面図である。
【
図6】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ部の縦断面図である。
【
図7】本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ部の縦断面図であって、クロスオーバーリターンおよびシャフトスペーサ部を拡大した図である。
【
図8】本発明の一実施例に係り、ガイドカバーをケーシングカバー側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の一実施例に係り、第1の羽根車をケーシング側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の一実施例に係り、第2の羽根車をケーシングカバー側から見た斜視図である。
【
図11】本発明の一実施例に係り、クロスオーバーリターンをケーシングカバー側から見た斜視図である。
【
図12】本発明の一実施例に掛かり、クロスオーバーリターンをケーシング側から見た斜視図である。
【
図13】本発明の一実施例に係り、タンデムディフューザに開口部を持つクロスオーバリターンをケーシング側から見た平面図である。
【
図14】本発明の一実施例に係り、シャフトスペーサをケーシング側から見た斜視図である。
【
図15】本発明の一実施例に係り、リターンガイドをケーシングカバー側から見た斜視図である。
【
図16】本発明の一実施例に係り、リターンガイドをケーシング側から見た斜視図である。
【
図17】本発明の一実施例に係り、ケーシングをケーシングカバー側から見た斜視図である。
【
図18】本発明の一実施例に係り、リターンガイドをケーシングに組み込んだ断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を本発明の実施例の図面に沿って説明する。
【0010】
まず、本発明の多段渦巻きポンプ装置の概要について
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係り、多段渦巻きポンプ装置の斜視図である。
図2は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の上面図である。
図3は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の右側面図である。
図4は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の左側面図である。
図5は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ装置の上面図である。
【0011】
多段渦巻きポンプ装置100は、ベース5と、ポンプ部101と、圧力タンク6と、圧力スイッチ7と、外郭カバー11と、から構成されている。ベース5は、略直方体形状の部材である。ベース5の上面には、圧力タンク6と、圧力スイッチ7と、ポンプ部101と、が連通して配置されている。
【0012】
圧力タンク6は、ポンプ部101で加圧した水を蓄水するものである。
【0013】
圧力スイッチ7は、圧力値に応じてポンプ部101の起動・停止を制御するものである。
外郭カバー11はベース5に対し着脱自在である。これは、ポンプ部101や圧力タンク6や圧力スイッチ7を操作可能とするためである。
次に、ポンプ部101について
図6~
図18を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ部の縦断面図である。
図7は、本発明の一実施例に係り、外かくカバーを外した多段渦巻きポンプ部の縦断面図であって、クロスオーバーリターンおよびシャフトスペーサ部を拡大した図である。
図8は、本発明の一実施例に係り、ガイドカバーをケーシングカバー側から見た斜視図 である。
図9は、本発明の一実施例に係り、第1の羽根車をケーシング側から見た斜視図である。
図10は、本発明の一実施例に係り、第2の羽根車をケーシングカバー側から見た斜視図である。
図11は、本発明の一実施例に係り、クロスオーバーリターンをケーシングカバー側から見た斜視図である。
図12は、本発明の一実施例に掛かり、クロスオーバーリターンをケーシング側から見た斜視図である。
図13は、本発明の一実施例に係り、タンデムディフューザに開口部を持つクロスオーバリターンをケーシング側から見た平面図である。
図14は、本発明の一実施例に係り、シャフトスペーサをケーシング側から見た斜視図 である。
図15は、本発明の一実施例に係り、リターンガイドをケーシングカバー側から見た斜視図である。
図16は、本発明の一実施例に係り、ケーシングをケーシングカバー側から見た斜視図である。
図17は、本発明の一実施例に係り、ケーシングをケーシングカバー側から見た斜視図である。
図18は、本発明の一実施例に係り、リターンガイドをケーシングに組み込んだ断面斜視図である。
【0014】
ポンプ部101は、電動機1と、ケーシング3と、ケーシングカバー4と、羽根車部を備える。羽根車部はケーシング3の内部に位置し、ガイドカバー21と、第1の羽根車14と、クロスオーバーリターン22と、シャフトスペーサ23と、リターンガイド24と、第2の羽根車15とから構成される。第1の羽根車14と、第2の羽根車15と、シャフトスペーサ23のボス内径形状は、電動機1の回転軸2の形状に合わせHカット形状2aにすることで、廻り止め機能を有している。
【0015】
ポンプ装置100は、電動機1で回転駆動される羽根車(第1の羽根車14や第2の羽根車15)の回転により、渦巻きポンプ作用を行う。
【0016】
電動機1は、ケーシング3に対し、ケーシングカバー4側とは反対側(背面側)に位置する。
【0017】
ガイドカバー21は、ケーシングカバー4に形成された吸込口4aからの流入水4bを第1の羽根車14に導く入口通路21aを持つとともに、第1の羽根車14から吐出された加圧水14bがケーシング3内に漏れないように、リターンガイド24のケーシングカバー4側の開口部24aを塞ぐためのカバーとしての役割も持っており、水密性を高めるためリターンガイド24の外周にパッキン装着用の溝24cを設けパッキン25を装着し、ガイドカバー21の内壁とで水封する構造にしている。また、第1の羽根車14から吐出された加圧水14bの一部は圧力差により戻り水14cとなってガイドカバー21の入口通路21a側へ漏れてしまうが、第1の羽根車14の入口外周部14aとガイドカバー21の内周部21bとのギャップ隙間寸法を0.2mm程度に狭めることで漏れ量を極力減らす構造にもなっている。
【0018】
クロスオーバーリターン22は、リターンディフューザ22aと、タンデムディフューザ22bとを備える。
【0019】
クロスオーバーリターン22は、第1の羽根車14から吐出した加圧水14bの流れをスムーズ流れに変更し、リターンガイド24の流入口24aに導く役割を持っている。
【0020】
図11ならびに
図12に示すとおり、クロスオーバーリターン22の形状は、第1の羽根車14側からリターンガイド24側にかけて連なる複数枚の翼で形成されたリターンディフューザ22aと、リターンディフューザ22aを通過した水22a1を清流するタンデムディフューザ22bを備えており、リターンディフューザ22aとタンデムディフューザ22bの間に開口部22cを設けている。この開口部22cを設けて加圧水14bを交差させてエネルギーを与える水の流れ22d(22d:
図10の破線矢印)により、
図10に示すような複数枚で形成される翼形状22eに沿った流れとなり、剥離を生じない周方向に均一な流れ22fを形成できポンプ効率の向上に繋げることが可能である。つまり、電動機と、電動機で回転駆動される羽根車と、羽根車の外周を覆うように位置すると共に外郭でポンプ室を形成するケーシングと、を有し、羽根車の回転により渦巻きポンプ作用を行うポンプ装置において、電動機は、ケーシングに対してポンプ室側とは反対側の背面側に位置し、羽根車部は、ガイドカバーと、第1の羽根車と、クロスオーバーリターンと、シャフトスペーサと、リターンガイドと、第2の羽根車と、を有し、クロスオーバーリターンは、リターンディフューザと、タンデムディフューザを備えることにより、周方向に均一な流れを形成でき、ポンプ効率に優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することができる。
【0021】
なお、リターンディフューザ22aは、クロスオーバーリターン22における外周側に位置する。タンデムディフューザ22bはクロスオーバーリターン22における内周側に位置する。径方向に見て、リターンディフューザ22aはタンデムディフューザ22bよりも、大半が外周側に位置し、一部が開口部22cを挟み重なる。言い換えると、タンデムディフューザ22の中心からある径の位置において、リターンディフューザ22aと開口部22cとタンデムディフューザ22bは周方向に存在する。隣り合う2つのリターンディフューザ22a間に設けられるリターンディフューザ間流路の外周側の一端部側から入ってきた流体は、大半が、隣り合う2つのタンデムディフューザ22b間に設けられるタンデムディフューザ間流路の内周側の他端部側へと至る。ただし、リターンディフューザ間流路を通る流体の一部は、1つのリターンディフューザ22aの他端部と1つのタンデムディフューザ22bの一端部との間に位置する開口部22cから、隣のタンデムディフューザ間流路(リターンディフューザ間流路)へと入る。これにより、翼形状に沿った流れとなり、剥離を生じない周方向に均一な流れ22fを形成でき、ポンプ効率に優れる多段渦巻きポンプ装置を提供することができる。
【0022】
シャフトスペーサ23は、第1の羽根車14のボス後端14dと、第2の羽根車15のボス前端15dとに接触し、第1の羽根車14と第2の羽根車15の距離を保つ効果を奏する。更に、クロスオーバーリターン22に設けられたリターンディフューザ22aとタンデムディフューザ22bの間の開口部22cと、リターンガイド24の入口通路24aを連通するように設けられ、リターンガイド24の入口通路24aの流路壁24bの一部として滑らかな流れになる効果をそうする。
【0023】
リターンガイド24は、クロスオーバーリターン22からの吐出を第2の羽根車15に導く。また、第2の羽根車15の入口外周部15aとリターンガイド24の内周部24cとの隙間寸法δ2を0.2mm程度に狭めることで、第2の羽根車15から吐出された加圧水15bが圧力差によってクロスオーバーリターン22側への戻り水15cを極力減らす構造にもなっており、ネジ穴24dにてケーシング3にで固定される。
【0024】
第2の羽根車15で再加圧された加圧水15bは、ケーシング3に複数枚の翼で形成された静翼3aにより清流されケーシング3のケース内に排出され、吐出口3bを経由して給水されるが、リターンガイド24のケーシング3側の面と、ケーシング3に複数枚の翼で形成された静翼3aとの、水密性が得られるように組付けされるのが望ましい。
【0025】
そこで、本発明の多段ポンプ装置では、リターンガイド24の背面側に、ケーシング3の静翼3aの凹部3cに嵌合する凸部24eを設けて両者を嵌合させることでラビリンス効果が生まれ水密性向上の効果をそうする。
【0026】
また、凸部24eと凹部3cを嵌合させることで、部品組立時の位置決めが容易になり組立作業の向上の効果もそうする。
【符号の説明】
【0027】
1・・・電動機、2・・・回転軸、2a・・・Hカット形状、3・・・ケーシング、3a・・・静翼、3b・・・吐出口、3c・・・凹部、4・・・ケーシングカバー、4a・・・吸込口、4b・・・流入水、5・・・ベース、6・・・圧力タンク、7・・・圧力スイッチ、11・・・外郭カバー、14・・・第1の羽根車、14a・・・入口外周部、14b・・・加圧水、14c・・・加圧水の戻り、14d・・・ボス後端、15・・・第2の羽根車、15a・・・入口外周部、15b・・・加圧水、15c・・・加圧水の戻り、15d・・・ボス前端、21・・・ガイドカバー、21a・・・入口通路、22・・・クロスオーバーリターン、22a・・・リターンディフューザ、22a1・・・リターンディフューザを通過した水、22b・・・タンデムディフューザ、22c・・・開口部、22d・・・交差させてエネルギーを与える水の流れ、22e・・・翼形状、22f・・・周方向に均一な流れ、23・・・シャフトスペーサ、24・・・リターンガイド、24a・・・入口通路、24b・・・流路壁、24c・・・内周部、24d・・・ネジ穴、24e・・・凸部、25・・・パッキン、40・・・ネジ、100・・・多段渦巻きポンプ装置、101・・・ポンプ部