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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】材料層形成装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/28 20060101AFI20221215BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20221215BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20221215BHJP
【FI】
B05B1/28
B05B1/06
D04H1/736
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020180602
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071565
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 直人
(72)【発明者】
【氏名】川原 吉広
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 敏
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089805(JP,A)
【文献】特開2008-290023(JP,A)
【文献】特開2008-115505(JP,A)
【文献】特開平07-279021(JP,A)
【文献】特開2008-088610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
B05B1/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料を吹出対象面に吹き出し、前記吹出対象面上に前記原材料を堆積させて、シート状の材料層を形成する材料層形成装置であって、
前記原材料を吹き出す吹出領域を有するノズルを備え、
前記ノズルは、
前記吹出領域に近接し、前記吹出領域から吹き出した前記原材料の内、前記吹出領域の外側に広がった前記原材料を吸引する吸引領域をさらに備えており、
前記ノズルは、
内部に前記吹出領域を形成する内筒と、
前記内筒の外周に間隔を空けて設けられ、前記内筒との間に前記吸引領域を形成する外筒と、を備え、
前記外筒における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部は、前記内筒における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部よりも、軸方向先端側に設けられており、
前記外筒の軸方向先端側の部位には、通気性を有するとともに前記原材料を捕獲可能な通気性捕獲部を備えている、材料層形成装置。
【請求項2】
前記吸引領域は、前記ノズルの吹き出し方向から見て、前記吹出領域の外側を囲うように設けられている、請求項1に記載の材料層形成装置。
【請求項3】
前記通気性捕獲部は、軸方向に延びる複数のブラシ毛を有するブラシで構成されている、請求項1又は2に記載の材料層形成装置。
【請求項4】
前記ブラシは、前記外筒の周方向の一部に、前記ブラシ毛を除去あるいは疎とした除毛部を備えている、請求項3に記載の材料層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型表面に短繊維を堆積、積層させて繊維集合体を製造する装置がある(例えば、特許文献1参照)。この装置では、金型表面に通気性を有し、金型表面で空気を吸引しつつ、金型表面に向けてノズルから短繊維を吹き出す。これにより、金型表面に短繊維が堆積して短繊維層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2003/021025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ノズルから吹き出した短繊維は、ノズルの周囲に飛散しやすい。飛散した短繊維は、ノズルが狙った範囲の周囲に余剰に堆積することがあり、繊維層の厚さが不均一になってしまう可能性があった。
【0005】
そこで本発明は、ノズルから吹き出す原材料の飛散を少なくして、吹出対象面の必要な部分に原材料を効率よく堆積させることができる材料層形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、原材料(例えば実施形態の短繊維F1)を吹出対象面(例えば実施形態の壁面4b)に吹き出し、前記吹出対象面上に前記原材料を堆積させて、シート状の材料層(例えば実施形態の短繊維層F1)を形成する材料層形成装置(例えば実施形態の繊維層形成装置1A)であって、前記原材料を吹き出す吹出領域(例えば実施形態の吹出領域11c)を有するノズル(例えば実施形態のノズル10)を備え、前記ノズルは、前記吹出領域に近接し、前記吹出領域から吹き出した前記原材料の内、前記吹出領域の外側に広がった前記原材料を吸引する吸引領域(例えば実施形態の吸引領域12c)をさらに備えており、前記ノズルは、内部に前記吹出領域を形成する内筒(例えば実施形態の内筒11)と、前記内筒の外周に間隔を空けて設けられ、前記内筒との間に前記吸引領域を形成する外筒(例えば実施形態の外筒12)と、を備え、前記外筒における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部(例えば実施形態の軸方向先端部14a)は、前記内筒における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部(例えば実施形態の軸方向先端部11a)よりも、軸方向先端側に設けられており、前記外筒の軸方向先端側の部位には、通気性を有するとともに前記原材料を捕獲可能な通気性捕獲部(例えば実施形態のブラシ14)を備えている。
この構成によれば、ノズルから吹き出す原材料がノズルの周囲に飛散し難くなるため、飛散した原材料によって材料層の厚さが不均一になる可能性を抑えることができる。
また、ノズルが内外筒を備える二重管構造をなし、内筒が吹出領域を形成し、外筒が吸引領域を形成する。このノズルの外筒が内筒よりも軸方向で先端側に長く設けられているため、吹出領域の外側に広がる原材料を捕獲しやすく、原材料がノズルの外側に飛散する可能性をさらに抑えることができる。
また、外筒の先端側が通気性捕獲部で構成されているため、原材料の吹き出しや吸い込みに伴う気流を保ちつつ、余剰の原材料を捕獲することが可能となる。このため、原材料がノズルの外側に飛散する可能性をさらに低くすることができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記吸引領域は、前記ノズルの吹き出し方向から見て、前記吹出領域の外側を囲うように設けられている。
この構成によれば、原材料がノズルの外側に飛散する前に、吹出領域の外側で速やかに原材料を吸引することができるため、原材料がノズルの外側に飛散する可能性をさらに抑えることができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記通気性捕獲部は、軸方向に延びる複数のブラシ毛(例えば実施形態のブラシ毛15)を有するブラシで構成されている。
この構成によれば、外筒の先端側が軸方向に延びるブラシで構成されているため、外筒の径方向の厚み内で効率よく通気性捕獲部を設けることが可能となる。このため、原材料がノズルの外側に飛散する可能性をさらに低くすることができる。
【0011】
請求項4に記載した発明は、前記ブラシは、前記外筒の周方向の一部に、前記ブラシ毛を除去あるいは疎とした除毛部(例えば実施形態の)を備えている。
この構成によれば、ブラシの一部領域に除毛部を備えるため、原材料がノズルの外側に飛散する可能性を低くしつつも、ブラシ毛を除去あるいは疎とした除毛部を設けることによって、外筒の吸引力を弱めることが可能となる。これにより、内筒から吹き出す原材料が必要以上に外筒側に引き寄せられることを抑えることができる。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズルから吹き出す原材料の飛散を少なくして、吹出対象面の必要な部分に原材料を効率よく堆積させることができる材料層形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における材料層形成装置を適用した成型装置を示す説明図である。
図2】上記成型装置の型締め状態を示す説明図である。
図3】上記成型装置の展開状態および成型品を示す説明図である。
図4】上記材料層形成装置の要部を示す説明図である。
図5】上記材料層形成装置の材料吹き出しノズルの軸方向に沿う断面図である。
図6】上記ノズルの軸方向に沿う断面図であり、図5と直交する断面図である。
図7図5のVII-VII断面図である。
図8図5のVIII-VIII断面図である。
図9図5のIX-IX断面図である。
図10図5のIX-IX断面図であり、ブラシの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1図3に模式的に示すように、実施形態の繊維層形成装置1Aは、例えば自動車のシート用クッション材であるウレタンパッドの成型装置1に適用される。この成型装置1で得られる成型品Wは、ウレタンフォーム本体WAの表面(表層)の少なくとも一部に、繊維補強層であるウレタン含浸硬化層WBを一体形成したものである。ウレタン含浸硬化層WBは、ウレタンのみの他部位と比べて局所的に硬く、例えばシートフレームに接触する部位等に設けられる。
【0015】
成型装置1は、ウレタンフォーム本体WAを成型するとともに、このウレタンフォーム本体WAの表面にウレタン含浸硬化層WBを成型するための金型2と、金型2におけるキャビティ2C内に臨む壁面の少なくとも一部に、ウレタン含浸硬化層WBの補強材料である短繊維材料(以下、単に短繊維F1という)を吹き付けるノズル10と、を備えている。短繊維F1は、例えば以下の繊維が挙げられる。すなわち、紙などを粉砕して得られるセルロースファイバーやPET繊維、PA繊維等の有機合成繊維である。また、繊維長は20mm以下が望ましく、10mm以下が更に望ましい。短繊維の搬送性の観点では、繊維長は5mm以下が好適である。また、有機合成繊維は、一般的には帯電防止のために界面活性剤を用いるが、本実施形態の用途においては、金型の絶縁性フィルター層に帯電吸着させる都合上、帯電防止処理が無いもの、または、帯電防止処理剤を洗浄除去後に乾燥させたものが好適である。使用する短繊維は、熱風乾燥等の工程を経た繊維を使用することが望ましい。
【0016】
金型2は、図1図3に示す展開状態P1と図2に示す型締め状態P2との間で可動する。図中符号3は固定プラテンに固定された固定型、符号4は固定型3に対して可動する可動型をそれぞれ示す。
固定型3は、固定プラテン側に凹んだ凹部3aを有する。凹部3aの壁面3bは、成型品Wの意匠面を形成する面である。
【0017】
可動型4は、可動プラテンとともに、図示しない変位機構(例えば、油圧シリンダ等)の作動によって作動し、固定型3に対して接近離反する。可動型4が固定側に対して接近することで、金型2の型閉じ(型締め)がなされる。可動型4は、型締め時に固定型3の凹部3aと対向する対向部4aを有する。これら凹部3aおよび対向部4aによって、金型2の内側にキャビティ2Cが形成される。対向部4aの壁面4bは、成型品Wにおける意匠面と反対側の裏面を形成する面である。
【0018】
可動型4の壁面4bは、例えば多数の孔が穿設されることで、空気が流通可能な通気性を有している。可動型4は、不図示の負圧発生装置によって、壁面4bの孔から可動型4内へ空気を吸引可能である。可動型4の壁面4bで空気が吸引されることで、ノズル10から吹き出した短繊維F1が壁面4bに吸着し、壁面4b上に繊維層F2を形成することが可能である。
【0019】
図5図9に示すように、ノズル10は、例えば円筒状をなし、軸方向基端側がロボットアーム5(図1参照)に保持されている。ノズル10には、帯電した短繊維F1が搬送空気とともに供給される。ノズル10の軸方向先端部10aには、供給された短繊維F1を吹き出す吹出口11dが設けられる。ノズル10の基端部10bには、不図示の材料供給装置から延びるフレキシブルパイプ6が接続される。以下、ノズル10の軸方向先端および軸方向基端をそれぞれ単に先端および基端という。図中符号11bは内筒11におけるノズル10の基端部10bに位置する基端部、符号C1はノズル10の軸方向に沿う中心軸線をそれぞれ示す。
【0020】
図4を併せて参照し、ノズル10は、ロボットアーム5の作動によって、展開状態P1の金型2の可動型4の壁面4bの予め定めた規定部位に対して、先端部10aを対向させる。このとき、例えばノズル10の軸方向が壁面4bの法線方向を向く。このノズル10の先端部10aの吹出口11dから可動型4の壁面4bに向けて、短繊維F1が吹き付けられる。この短繊維F1が壁面4b上に堆積することで、可動型4の壁面4b上に規定厚さの繊維層F2が形成される。繊維層F2は、可動型4の壁面4bが空気を吸引することで、壁面4bに吸着される。可動型4内には吸引通路4cが形成され、壁面4b上の空気を吸引可能とする。
【0021】
可動型4の壁面4b上に繊維層F2の形成が完了すると、金型2内に各種インサート部品をセットするとともに、固定型3の凹部3a内にウレタン液を注入する。その後、展開状態P1にある金型2の可動型4を固定型3に重ね合わせて型締めし、金型2とともにウレタン液を熱処理する。これにより、固定型3の凹部3aおよび可動型4の壁面4bによって形成されるキャビティ2C内でウレタンが発泡、硬化し、規定形状の成型品Wが形成される。
【0022】
図5図9に示すように、ノズル10は、内外筒11,12による二重管構造を有している。例えば、内外筒11,12は、それぞれ円筒状をなし、互いに同軸に配置されている。内筒11の内部空間は、短繊維F1を吹き出す吹出領域11cとされる。内外筒11,12間の空間は、吹出領域11cの周囲を囲うように設けられる。内外筒11,12間の空間は、径方向幅が一定な環状をなしている。内外筒11,12間の空間は、吹出領域11cよりも外側に広がった短繊維F1を、吹出領域11cの近傍で吸引、回収する吸引領域12cとされる。吹出領域11cの先端部(内筒11の先端部11a)には、ノズル10の先端側(図中下側)に向けて開口する円形の吹出口11dが形成される。吸引領域12cの先端部には、吹出口11dの周囲でノズル10の先端側に向けて開口する環状の吸引口12dが形成される。
【0023】
これにより、ノズル10の先端部10aよりも径方向外側へ飛散しようとする短繊維F1が、吸引領域12cに吸引、回収される。したがって、吹出対象面(可動型4の壁面4b)の規定部位の周囲に短繊維F1が飛散する可能性が低くなる。
外筒12の外側には、径方向外側に向けて吸出し管12eが延出する。吸出し管12eには、不図示の繊維回収装置から延びるフレキシブルパイプ12fが接続される。繊維回収装置に回収された短繊維F1は、前記材料供給装置に戻され、再度ノズル10からの吹き出しに供される。
【0024】
外筒12は、円筒状の外筒本体13と、外筒本体13の先端部13aからノズル10の先端側へブラシ毛15を延出してなるブラシ14と、を備えている。すなわち、外筒12の先端側の部位はブラシ14で構成されている。図中符号13bは外筒本体13の基端部を示す。外筒本体13の基端部13bは、内筒11の基端部11bよりも先端側に位置し、軸方向で閉塞されている。図示都合上、ブラシ毛15は太く粗く示している。
【0025】
吹出領域11cを形成する内筒11の先端部11aは、吸引領域12cを形成する外筒12の先端部(ブラシ14の先端部14a)よりも基端側に位置している。換言すれば、内筒11の先端部11aは、外筒12の先端部(ブラシ14の先端部14a)よりも軸方向長さが短い。内筒11の先端部11a(吹出領域11cの先端部)は、円形の吹出口11dとされる。実施形態では、吹出口11dと同一の軸方向位置に環状の吸引口12dがあるものとする。なお、外筒本体13の先端部13aと同一の軸方向位置に環状の吸引口12dがあるものとしてもよい。吹出領域11cおよび吸引領域12cは、ブラシ14の内側にも軸方向で延長すると捉えてもよい。
【0026】
図4を参照し、ノズル10の先端部10a(ブラシ14の先端部14a)を可動型4の壁面4bに接近させて繊維層F2を形成する場合について説明する。この場合、内筒11の先端部11aの吹出口11dから壁面4bに向けて吹き出された短繊維F1は、壁面4bに吸着されて堆積される。このとき、吹き出された短繊維F1の一部は、吹出領域11cよりも径方向外側に広がり、ノズル10の径方向外側に飛散しようとする。実施形態では、吹出領域11cの外側に広がる短繊維F1は、吹出領域11cの外周に近接配置された吸引領域12cで速やかに捕獲、回収される。
【0027】
ノズル10の先端側を構成するブラシ14は、繊維飛散防止用のブラシ状枠を構成している。ブラシ14は、通気性を有するとともに短繊維F1を捕獲可能な通気性捕獲部の一例である。ノズル10の外筒12の先端側は、ブラシ14で構成される。外筒12の先端部(ブラシ14の先端部14a)は、内筒11の先端部11aよりも軸方向先端側に位置している。このため、壁面4bに繊維層F2を形成する際、ブラシ14が壁面4bに接近する。これにより、短繊維F1を搬送した空気を吹出領域11cの外側に逃がしやすく(排気しやすく)、かつ吹出領域11cの外側に広がる短繊維F1は捕獲可能となる。また、吸引領域12cがブラシ14の外側から吸気可能となり、吹出領域11cに対する吸引領域12cの吸引力を調節可能となる。
【0028】
ブラシ14は、外筒本体13の周方向に沿って多数のブラシ毛15を配列する。ブラシ14は、外筒12の周方向で均等な密集度をもってブラシ毛15を配列してもよい。
図10に示すように、ブラシ14は、外筒12の周方向の少なくとも一部に、他部位に対してブラシ毛15を除去した除毛部16を有してもよい。除毛部16は、ブラシ14の周方向の一部に孔(切り欠き)を設けた態様である。除毛部16は、周方向で等間隔に複数設けられてもよい。除毛部16は、吸引領域12cがノズル10の外側の空気を吸引しやすくすることで、吹出領域11cの短繊維F1に対する吸引力を弱める作用を奏する。
【0029】
除毛部16により吸引領域12cの吸引力を調節することで、吹出領域11cの短繊維F1が吸引領域12cに過剰に引き寄せられて吸引されることを抑制可能である。除毛部16の数は3乃至5箇所が好適だが、それ以外の数であってもよい。除毛部16は、ブラシ毛15を完全に除去した態様に限らず、ブラシ毛15の密集度を低くした(疎にした)態様でもよい。また、除毛部16は、ブラシ毛15の長さを短縮した態様でもよい。
【0030】
なお、外筒12の先端部(ブラシ14の先端部14a)が内筒11の先端部11aよりも先端側に延びていれば、外筒本体13の先端部13aの軸方向位置は以下の態様でもよい。すなわち、外筒本体13の先端部13aの軸方向位置は、内筒11の先端部11aの軸方向位置と同一でもよく、内筒11の先端部11aよりも基端側でもよく、内筒11の先端部11aよりも先端側でもよい。
例えば、ノズル10が複数設けられて、短繊維F1の吹出工程時間を短縮してもよい。ノズル10から吹き出す短繊維F1の量の調節は、搬送空気に混入する短繊維F1の量の調節の他、ノズル10の滞留時間、搬送空気の圧力及び流量等の調節を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0031】
次に、実施形態の繊維層形成装置1Aによって、ウレタンフォーム本体WAの表面にウレタン含浸硬化層WBを一体形成した成型品Wを製造する際の作用について説明する。
まず、金型2を展開状態P1とし、展開した可動型4の壁面4bの規定部位に対し、ノズル10の先端部10a(ブラシ14の先端部14a)を接近させる。次いで、壁面4bにおいて空気の吸引を開始した状態で、ノズル10から壁面4bへ短繊維F1を吹き出す。ノズル10から吹き出した短繊維F1は、壁面4bに吸着、堆積する。これにより、可動型4の壁面4bの規定部位に繊維層F2が形成される。繊維層F2は、壁面4bの少なくとも一部において、一定の規定厚さを有する層状に形成される。
【0032】
ノズル10の先端部10aには、短繊維F1を吹き出す吹出領域11cに加え、余剰繊維を吸い込むための吸引領域12cを備えている。吸引領域12cは、吹出領域11cの周囲を囲むように設けられる。吹出領域11cから吹き出して壁面4bに衝突した短繊維F1は、壁面4bに沿って吹出領域11cの周囲に広がろうとする。このとき、吹出領域11cの外側に位置する吸引領域12cが、吹出領域11cの外側に広がった短繊維F1を良好に捕獲される。
【0033】
特に、壁面4bに短繊維F1が堆積して繊維層F2の高さが増すと、壁面4bにおいて吸引する空気の通気抵抗が大きくなる。その結果、繊維層F2の表面側で短繊維F1が飛散しやすくなるが、この飛散を吸引領域12cの吸引によって抑えることができる。実施形態では、ノズル10の外側への短繊維F1の飛散を少なくすることで、壁面4bの規定部位に短繊維F1を効率よく堆積可能となり、厚さが均一な繊維層F2を効率よく形成することができる。
【0034】
さらに、吸引領域12cを形成する外筒12の先端側には、外筒本体13の先端部13aからブラシ毛15を延出してブラシ14が構成されている。ブラシ14は、ブラシ毛15からなる先端部14aを壁面4bに接近又は接触させる。ブラシ14が壁面4bに接近又は接触することで、短繊維F1の吹き出しを阻害することなく、短繊維F1が外筒12の外側に飛散することを抑えることができる。すなわち、吹出領域11cから吹き出した搬送気流はブラシ14の外側に逃がしつつ、短繊維F1をブラシ14で捕獲することができる。
【0035】
壁面4bへの繊維層F2の形成が完了すると、金型2内にインサート部品をセットするとともにウレタン液を注入する。その後、金型2を型締めするが、その際も、壁面4bでの空気の吸引を継続しておく。これにより、壁面4bに繊維層F2を吸着させたままとし、繊維層F2の位置ずれを防止する。型締め後には、キャビティ2C内でウレタンを発泡、硬化させて、規定形状のウレタンフォーム成型品Wとする。壁面4bに保持した繊維層F2は、キャビティ2C内でウレタン液が含浸され、その後にウレタン成型時の熱処理を行うことで、成型品Wの表層として一体形成される。繊維層F2は、ウレタンフォーム成型時に硬化し、ウレタンのみの他部位と比べて局所的に硬いウレタン含浸硬化層WBを形成する。すなわち、壁面4bの規定部位に予め繊維層F2を形成しておくことで、他の部位よりも硬度を高めたウレタン含浸硬化層WBを形成することができる。
【0036】
以上説明したように、上記実施形態における繊維層形成装置1Aは、短繊維F1を吹出対象面(壁面4b)に吹き出し、前記吹出対象面上に前記短繊維F1を堆積させて、シート状の繊維層F2を形成する装置であって、前記短繊維F1を吹き出す吹出領域11cを有するノズル10を備え、前記ノズル10は、前記吹出領域11cに近接し、前記吹出領域11cから吹き出した前記短繊維F1の内、前記吹出領域11cの外側に広がった前記短繊維F1を吸引する吸引領域12cをさらに備えている。
この構成によれば、ノズル10から吹き出す短繊維F1がノズル10の周囲に飛散し難くなるため、飛散した短繊維F1によって繊維層F2の厚さが不均一になる可能性を抑えることができる。
【0037】
上記繊維層形成装置1Aにおいて、前記吸引領域12cは、前記ノズル10の吹き出し方向から見て、前記吹出領域11cの外側を囲うように設けられている。
この構成によれば、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する前に、吹出領域11cの外側で速やかに短繊維F1を吸引することができるため、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する可能性をさらに抑えることができる。
【0038】
上記繊維層形成装置1Aにおいて、前記ノズル10は、内部に前記吹出領域11cを形成する内筒11と、前記内筒11の外周に間隔を空けて設けられ、前記内筒11との間に前記吸引領域12cを形成する外筒12と、を備え、前記外筒12(ブラシ14)における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部14aは、前記内筒11における前記吹出対象面に臨む軸方向先端部11aよりも、軸方向先端側に設けられている。
この構成によれば、ノズル10が内外筒11,12を備える二重管構造をなし、内筒11が吹出領域11cを形成し、外筒12が吸引領域12cを形成する。このノズル10の外筒12が内筒11よりも軸方向で先端側に長く設けられているため、吹出領域11cの外側に広がる短繊維F1を捕獲しやすく、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する可能性をさらに抑えることができる。
【0039】
上記繊維層形成装置1Aにおいて、前記外筒12の軸方向先端側の部位には、通気性を有するとともに前記短繊維F1を捕獲可能な通気性捕獲部(ブラシ14)を備えている。
この構成によれば、外筒12の先端側が通気性捕獲部としてのブラシ14で構成されているため、短繊維F1の吹き出しや吸い込みに伴う気流を保ちつつ、余剰の短繊維F1を捕獲することが可能となる。このため、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する可能性をさらに低くすることができる。
【0040】
上記繊維層形成装置1Aにおいて、前記通気性捕獲部は、軸方向に延びる複数のブラシ毛15を有するブラシ14で構成されている。
この構成によれば、外筒12の先端側が軸方向に延びるブラシ14で構成されているため、外筒12の径方向の厚み内で効率よく通気性捕獲部を設けることが可能となる。このため、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する可能性をさらに低くすることができる。
【0041】
上記繊維層形成装置1Aにおいて、前記ブラシ14は、前記外筒12の周方向の一部に、前記ブラシ毛15を除去あるいは疎にした除毛部16を備えている。
この構成によれば、ブラシ14の一部領域に除毛部16を備えるため、短繊維F1がノズル10の外側に飛散する可能性を低くしつつも、ブラシ毛15を除去あるいは疎とした除毛部16を設けることによって、外筒12の吸引力を弱めることが可能となる。これにより、内筒11から吹き出す短繊維F1が必要以上に外筒12側に引き寄せられることを抑えることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、外筒12の先端側に設ける飛散防止枠(通気性捕獲部)として、ブラシ14に代わり、通気性を有する多孔質のウレタンフォームやメッシュ材料等を設けてもよい。すなわち、通気性を有して短繊維F1を捕獲することができる構造の飛散防止枠であればよい。
実施形態は、ウレタンフォーム成型装置1への適用例を示したが、ウレタンフォームに代わり、例えば合成繊維を積層してなる繊維集合体を成型する装置に適用してもよい。
短繊維F1は空気搬送されるものであれば、材質やサイズ(長さおよび太さ)は様々である。また、繊維材料に限らず粒子状や粉状の原材料を用いた材料層形成装置に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1A 繊維層形成装置(材料層形成装置)
4b 壁面(吹出対象面)
10 ノズル
10a 軸方向先端部
11 内筒
11a 軸方向先端部
11c 吹出領域
12 外筒
12c 吸引領域
14 ブラシ(通気性捕獲部)
14a 軸方向先端部
15 ブラシ毛
16 除毛部
F1 短繊維(原材料)
F2 繊維層(材料層)
図1
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図10