(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】キャビティを組み込んだ工具保持具及びその工具保持具を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/117 20060101AFI20221215BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20221215BHJP
B23B 31/00 20060101ALI20221215BHJP
B22F 7/00 20060101ALI20221215BHJP
B22F 7/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B23B31/117 610B
B23Q3/12 A
B23B31/00 C
B22F7/00 H
B22F7/06 A
(21)【出願番号】P 2020184999
(22)【出願日】2020-11-05
(62)【分割の表示】P 2018233268の分割
【原出願日】2013-12-20
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】102012025075.4
(32)【優先日】2012-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102013103168.4
(32)【優先日】2013-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512086552
【氏名又は名称】フランツ ハイマー マシーネンバウ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ハイマー
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201108970(CN,Y)
【文献】特表2003-522650(JP,A)
【文献】特表2003-501278(JP,A)
【文献】特開2010-240745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0052598(US,A1)
【文献】実開平03-100005(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00 - 31/42
B23Q 3/12
B22F 7/00
B22F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体と結合され、工具シャンクを摩擦で固定するための締め付け部分(3)、または、前記本体と結合され、前記工具シャンクを摩擦で固定するためのスリーブ部分と、その周りで前記工具シャンクが回転可能である回転軸線(R)と、を備えた工具保持具(1)において、
前記工具保持具(1)が少なくとも1つの一体に成形された部分を有し、該一体に形成された部分に外側結合通路(20)が形成され、該外側結合通路が前記一体に成形された部分の内部へ延在し、そこで拡張して複数のキャビティ(9)を形成し、隣り合っているキャビティ(9)が、局部的に結合部分(19)を介して互いに流動結合しており、前記隣り合っているキャビティ(9)は、前記工具保持具(1)の前記回転軸線(R)の方向に相前後して配置され、前記結合部分(19)は、前記キャビティ(9)自体の内のり横断面よりも小さな内のり横断面を流動方向に有し、
前記キャビティ(9)は、前記外側結合通路(20)を介して外部環境と接触しており、
前記工具保持具(1)は、少なくとも円錐形の部分を有し、
前記円錐形は、その近位端の直径よりも遠位端の直径が小さく、
前記外側結合通路(20)は、前記キャビティ(9)の近位端に配置され、前記キャビティ(9)は、前記工具保持具(1)の遠位端に配置されることを特徴とする工具保持具(1)。
【請求項2】
前記キャビティ(9)が液体で充填され、少なくとも1つの前記外側結合通路(20)に、好ましくは外部から操作される圧力付与器が組み込まれ、該圧力付与器を用いて前記液体に圧力を作用させることを特徴とする、請求項1に記載の工具保持具(1)。
【請求項3】
前記キャビティ(9)が3次元のキャビティ群を形成し、該キャビティ群は、半径方向において内側から外側へ向けて複数のキャビティ(9)が相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置され、同時に前記回転軸線(R)の方向において複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置されているように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の工具保持具(1)。
【請求項4】
少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個のキャビティ(9)が設けられ、これらキャビティは、好ましくはそのすべてが、一体の前記締め付け部分または一体の前記スリーブ部分(3)の内部にあって、内側結合通路を介して互いに連通し、且つ少なくとも1つの外側結合通路(20)を介して圧力付与器と結合し、該圧力付与器が前記キャビティ(9)を充填している
液体に圧力を付与することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の工具保持具(1)。
【請求項5】
前記工具保持具(1)が、該工具保持具(1)の、金属層材料から成っている領域に加工されている、少なくとも1つの冷媒供給管(11)を有し、該冷媒供給管が、前記工具保持具(1)の、締め付けられる工具側の端面から、前記本体(2)内まで延在して、好ましくは該本体によって取り囲まれている内部空間に開口し、前記冷媒供給管は、前記工具保持具(1)の外表面から該工具保持具(1)内に穿設された孔によって形成される枝を有することなく、少なくとも1か所でその延在方向を変化させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の工具保持具(1)。
【請求項6】
前記冷媒供給管(11)が、ほぼ半径方向に延在している少なくとも1つの部分を有していることを特徴とする、請求項5に記載の工具保持具(1)。
【請求項7】
前記工具保持具(1)がその内部に少なくとも1つの形状拘束要素を有し、該形状拘束要素は、前記工具保持具(1)の金属層材から成る領域の組み込み構成部材であり、且つ次のように構成されており、すなわち実質的に摩擦により前記工具保持具(1)によって固持される工具シャンクとの形状拘束的相互作用によって、前記回転軸線(R)に沿った方向における工具受容部からの前記工具シャンクの不慮の引き抜きを阻止するように、構成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の工具保持具(1)。
【請求項8】
前記工具保持具(1)が少なくとも1つの冷媒貯留室(22)を有し、該冷媒貯留室が特にバッフル板(23)によって画成され、該バッフル板が、前記工具保持具(1)の金属層材から成る領域の組み込み構成部材であり、前記バッフル板(23)は、前記回転軸線(R)に沿った方向に見て、好ましくは少なくとも1つの冷媒供給管(11)の少なくとも1つの開口部を覆っていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の工具保持具(1)。
【請求項9】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体に結合され、工具シャンクを固定するための、好ましくは収縮解除するための締め付け部分(3)とを備え、前記工具保持具(1)の第1の部分が鍛造金属または鋳造金属から成っている、上記請求項1~8のいずれか一つに記載の工具保持具(1)において、
前記工具保持具(1)の第2の部分が金属層材から成り、前記第1の部分が好ましくは前記工具保持具(1)の前記本体(2)であり、前記第2の部分が好ましくは前記工具保持具(1)の前記締め付け部分(3)であり、或いはその逆であることを特徴とする工具保持具。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の工具保持具(1)を製造する方法であって、
第1の部分を、好ましくは前記本体(2)を、回転部材として中実材(Vollen)から、或いは、予鍛造または予鋳造したブランクから、好ましくは工具鋼から製造するようにした前記方法において、
第2の部分を、好ましくは、理想的にはスリーブ部分として形成される締め付け部分(3)を、個々の金属層から構成し、該個々の金属層を、前記締め付け部分(3)が所定の形状を有するまで互いに順次連続して生成させることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1の部分を形成する前記金属層を、異種金属または異種合金の混合物から溶融させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属層の組成を局所的に多様に変化させ、すなわち前記金属層が局所的に特別な機械的特性および/または電気特性および/または磁気特性を有するように変化させることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記工具保持具(1)を製造する前記方法を次のように行い、すなわちスリーブ部分の形態で実施された締め付け部分(3)が、前記スリーブ部分の外周を形成する外側部分であって、該外側部分が金属材から成り、該金属材内に、交流磁場の作用で誘導的に熱を生成させることができる前記外側部分と、該外側部分と一成分的に結合され、工具受容部を形成している内側部分とを有し、該内側部分が金属材から成り、該金属材が、交流場の作用で、前記外側部分の材料よりも弱く加熱され、且つ前記外側部分の材料よりも大きな熱膨張を有するように、前記方法を行なうことを特徴とする、請求項10から12までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記第2の部分を、好ましくは個々の前記層の生成の終了後に、組織変化させる熱処理に曝すことを特徴とする、請求項10から13までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
鍛造金属または鋳造金属から成っている前記工具保持具(1)の前記第1の部分を基体として使用し、該基体上に、金属層材から成る前記工具保持具(1)の前記第2の部分を順次塗布することを特徴とする、請求項10から14までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記第2の部分または前記スリーブ部分を、
熱処理を終了した後にはじめて前記本体(2)と結合させ、特に溶着させることを特徴とする、請求項10から14までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記第2の部分または前記スリーブ部分(3)に、前記個々の層の生成を終了後に、好ましくはこれに続く熱処理の後に、回転加工および/または円筒研削および/または内面研削を施し、前記加工を理想的には前記本体と前記スリーブ部分とを結合させた後にはじめて行うことを特徴とする、請求項10から16までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
工具受容部を、前記個々の層の生成終了後に、好ましくはこれに続く熱処理の後に、摩擦加工および/または研削加工することを特徴とする、請求項10から17までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体に結合され、工具シャンクを熱でまたは液圧で締め付け固定するためのスリーブ部分(3)とを備える、上記請求項1~9のいずれか一つに記載の工具保持具(1)において、
前記スリーブ部分(3)の外周がインダクション部分を有し、該インダクション部分が電気誘導性および磁気誘導性の金属から成り、前記スリーブ部分(3)の、前記インダクション部分の内側にある部分が、前記インダクション部分を構成している金属よりも大きな熱膨張係数を有する金属から成り、前記インダクション部分と、前記スリーブ部分の、前記インダクション部分の内側にある前記部分とが、両者とも前記スリーブ部分(3)の組み込み一体構成部材である周壁であることを特徴とする工具保持具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸線のまわりに回転可能な工具のための工具保持具、特にドリル、フライス、リーマまたはカッターヘッド用の工具保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンク側で締め付け固定される工具のシャンクを、工具保持具の、それ自体閉じたリング状の部分の、ほとんどの場合スリーブ部分として実施される部分の中央受容穴でプレスばめによって保持することは知られている。スリーブ部分は、そのほかの通常の工具保持具の工具側端部を形成している。
【0003】
工具保持具のこのスリーブ部分は加熱によって半径方向に拡幅させることができるので、工具の冷えたシャンクをスリーブ部分に挿入することができ、或いはこれから引き抜くことができる。スリーブ部分が再び冷えると、スリーブ部分と工具のシャンクとの間に圧着が生じて、工具は工具保持具で確実に固持される(たとえば特許文献1を参照)。
【0004】
これとは択一的に、液圧で締め付け固定を行なうことができる。このため、工具保持具の前記スリーブ部分の内部に液圧締め付け機構が配置され、該液圧締め付け機構は、液圧が作用すると、工具シャンクを取り囲んでいるその内径が縮小して工具シャンクを摩擦で締め付け固定する。
【0005】
他の構成はいわゆるコレットチャックであり、外側テーパを備えたコレットチャックを補完的な円錐座部に挿入して閉鎖させることで、工具シャンクを摩擦で締め付け保持するものである。
【0006】
さらに、いわゆるカッターヘッドの形態の工具を、ほとんどの場合中央の締め付けねじと1つまたは好ましくは複数の駆動体とを用いて工具保持具と形状拘束的に結合させることが知られている。この工具保持具は、ここではほとんどの場合、いわゆるカッターヘッド受容具と呼ばれる。
【0007】
上述したチャックは実際に非常に優れたものである。
【0008】
上述した種類のチャックの場合、一般に、好ましくない状況で、工具の刃に起因する反作用力のために振動が励起し、この振動が共鳴範囲内にあるかその付近にあるという問題がある。このような振動が発生するのは、たとえば時間的に高速で連続してn番目の刃とn+1番目の刃とが工具に工作物に係合することで、工具の刃が高速交番負荷に曝されるためである。この振動は工具とチャックと工作機械とから成るシステム全体で強くなり、たとえば切削速度および/または他の切断パラメータを減少させねばならず、実際のシステムの処理能力を損なわせ、望ましいものではない。
【0009】
いくつかのケースでは、このようなシステム全体の振動傾向を、工具を「より柔軟に」締め付け固定することによって好影響を与えることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、加工精度に妥協をすることなく、工具の振動挙動に特に好ましく影響する工具締め付け固定を可能にする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、工具を締め付けるための本発明による工具保持具によって解決される。本発明による工具保持具は、該工具保持具を工作機械の主軸に連結させるための本体と、該本体と好ましくは溶着または少なくとも一体に結合され、工具シャンクを締め付け固定する締め付け部分とを有している。この場合、締め付け部分は実際にはスリーブ部分として実施されることが多く、スリーブ部分は、工具シャンクを熱でまたは液圧でスリーブ部分内に固定できるように構成されている。理想的には、このようなスリーブ部分は、工具シャンクがスリーブ部分によって提供される工具受容部で収縮できるように構成され、すなわち冷えた状態で工具シャンクの外径に比べて寸法が小さな工具受容部が熱の吸収によって拡幅して、冷えた工具シャンクを挿着できて、少なくとも大部分がスリーブ部分の再冷却の際に生じるプレスばめによって保持できるように、構成されている。
【0013】
締め付け部分がどのように構成されているかに関係なく、本発明によれば、工具保持具は少なくとも1つの一体に成形された部分を有し、該部分は1つまたは複数のキャビティを有し、該キャビティは前記成形された部分の内部に配置され、一体に成形された部分内でエンクレーブ(Enklave)を形成している。エンクレーブとは、その周囲に対して、特に外部に対して完全に閉じた構成物である。この場合、螺着または溶着によって固定されるカバー、栓等は必要ない。
【0014】
完全に閉じて、成形された部分の内部に全体が形成されているキャビティが、際だった緩衝特性を有することが明らかになった。この場合、複数のキャビティが設けられていれば、この効果は倍増する。
【0015】
さらに、本発明に従って構成されるキャビティはいわゆる「構造的バランス」の可能性を提供し、しかもこのバランスをとるために1つまたは複数の孔を工具保持具の表面に穿設することで、工具保持具の表面を破断する必要がない。このような孔は工具の操作時および挿着時に障害となることが多い。収縮型チャックの形態の工具保持具の場合にこのような孔が障害になるケースが多いのは、その中に冷却潤滑材および/または冷却液が集積し、高速冷却の目的で工具保持具を収縮または収縮解除後にスプレーして、次に最短時間内で鋭い空気線を用いて噴射乾燥させる必要がある場合に、冷却潤滑材および/または冷却液を孔から排出させるのが簡単でないからである。
【0016】
材料組織の不意の不定個所に発生する空洞、組織穴またはその他の欠陥は本発明の意味でのキャビティではない。本発明の意味でのキャビティは、好ましくは、予め特定された規則に従って形成された所定の幾何学的形状を有し、理想的には半径方向の延在部と、1/10mm以上の、好ましくは1mm以上の工具保持具の回転軸線の方向での延在部とを有している。特に有利には、避けがたい製造公差を除外すれば、複数のキャビティにそれぞれ同じ構成を付与することである。
本発明によれば、前記複数のキャビティは、少なくとも2つの、好ましくは3つの、互いに同軸に位置している仮想の筒側面または円錐側面上に位置するように、配置されている。
【0017】
有利な更なる改良形の範囲内では、キャビティは周方向においてそれぞれリング部分状の通路を形成し、該通路が好ましくは工具保持具の回転軸線に対し同心に前記成形された部分の内部に完全に延在している。理想的には、キャビティはそれぞれ環状通路を形成し、該環状通路が周方向において完全に閉じている。このような構造は特に防振作用として機能することが明らかになった。
【0018】
他の改良実施態様では、工具保持具は複数のキャビティを有し、これらキャビティは、前記回転軸線に対しほぼ平行に延在し、または、前記回転軸線のまわりに巻回されているねじ線に沿って延在し、且つキャビティは好ましくは周方向において互いに対称に配置されている。このような構造も優れた防振特性を有し、さらに、スリーブ部分から工具シャフトに事前に多くの熱を供給して収縮解除を困難にさせることを阻止する特に有効な手段であることが明らかになった。
【0019】
キャビティは、前記回転軸線に対し垂直な面内で、または、前記回転軸線を完全に含んでいる面内で、円形横断面または平坦横断面を有しているべきである。平坦横断面とは、実質的に長方形の横断面であり、半径方向におけるその延在距離は周方向および前記回転軸線の方向における延在距離よりも短い。キャビティの横断面は、好ましくは、キャビティの内部方向に凹の2つの側部湾曲部と、これら側部湾曲部を結合させている直線部とから成る。
【0020】
最適には、特に隣接しあっているキャビティの間の分離壁がハニカム構造を形成するほどにキャビティが密な間隔をもって配置されている場所では、六角形の横断面である。
【0021】
合目的には、工具保持具は10個以上、好ましくは15個以上の、理想的には25個以上の互いに独立の、好ましくはそれぞれが1つのエンクレーブを形成するキャビティを有し、これらキャビティは、好ましくはそのすべてが、締め付け部分を形成している部分に完全に形成され、締め付け部分は理想的にはスリーブ部分として形成されている。これにより、対応する中実材料に比べて軽量化を図ることができ、工具保持具の操作を著しく容易にさせる。これは工具保持具の慣性を減少させるので、特に工具自動交換の際に好影響を与えるが、軽量化に伴う強度損失は生じない。理想的には、キャビティの数量およびサイズは次のように選定され、すなわち工具をまだ備えていない工具保持部の質量が、中実材から成って同一に構成された工具保持具に比べて、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%減少するように選定されている。さらに、このような構成により材料の節約にもなり、特にこのような工具保持具を大量生産する場合には短時間で材料節約が顕著になり、好影響を与える。
【0022】
この場合、キャビティが3次元のキャビティ群を形成し、該キャビティ群は、半径方向において内側から外側へ向けて複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置され、同時に前記回転軸線の方向において複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置されているように構成されていれば、特に好ましい。最適には、それぞれ隣接しあっているキャビティが次のように互いに密に並設され、すなわちこれらキャビティが前記回転軸線に対し垂直な面内で全横断面を形成し、その全面積が細条部の横断面積の総和の最大で60%、好ましくは最大で40%までを占めるように互いに密に並設される。
【0023】
上述した可能な構成により、大型の哺乳類の骨に生物学的に対応する「ハニカム構造または多孔構造」を形成するキャビティ群が得られる。中空の担持構造が一貫して中実の壁を有さずに、それぞれの壁の中央領域で多孔構成に形成されていれば、強度に破たんが生じることはない。この多孔構造には際立った緩衝作用がある。
【0024】
他の有利な実施態様によれば、本体内にして締め付け部分またはスリーブ部分の外側にある領域に、少なくとも1つの、好ましくは複数のキャビティが形成されている。理想的には、この少なくとも1つのキャビティは、半径方向内側の方向において、工具保持具を自動操作する操作システムのための保持フランジによって外周を取り囲まれている領域に位置するように、位置決めされている。典型的には工具保持具の中実部分であるこの領域には、従来緩衝目的のキャビティは設けられていなかった。本発明者は、従来の推定に反して、この中実な領域にキャビティを設ければ、際だった効果を決して損なうことなく、むしろ強度を過度に低減させることなく著しい作用を示すという確信に至った。
【0025】
好ましくは、この少なくとも1つのキャビティは本体内で環状円板の構成を有し、その対称軸線は前記回転軸線と一致し、且つその、前記回転軸線に平行な方向での延在距離は、前記回転軸線に垂直な半径方向における延在距離よりも著しく短く、好ましくは少なくとも3分の1だけ小さい。
【0026】
これとは択一的に、少なくとも1つのキャビティは筒環の構成を有し、前記回転軸線に対し垂直な方向におけるその壁厚は、前記回転軸線に対し平行な方向におけるその延在距離よりも著しく小さく、好ましくは少なくとも3分の1だけ小さい。このように構成したキャビティも十分明確な作用を示す。
【0027】
合目的には、複数のキャビティは、前記回転軸線に沿った方向において、または、前記回転軸線に対し10゜以下で傾斜した直線に沿った方向において、互いに整列して相前後するように配置され、これによって仮想の筒側面上または円錐側面上に位置している。複数のキャビティが次のように配置されているのが特に好ましく、すなわち少なくとも2つの、好ましくは3つの、互いに同軸に位置している仮想の筒側面または円錐側面上に位置し、異なる筒側面または円錐側面上にあるキャビティは半径方向において整列せずに、好ましくは中央が他髄に相対的にずれて配置されているのが特に好ましい。
【0028】
このように規則的な配置と前記他の処置とは、振動挙動に好影響を与える。
【0029】
本発明は、さらに、工具保持具の緩衝挙動および/または締め付け挙動をいかにして液圧で可能な限り確実に制御できるかという問題にも取り組む。
【0030】
技術水準では、工具保持具の緩衝挙動および/または締め付け挙動を制御するために、工具保持具内に少なくとも1つのキャビティを設け、このキャビティを必要な場合に液圧で強くまたは弱く付勢することが知られている。従来公知のこの構成は、外側から追加的に形成される個々の孔によって形成されるか、或いは、工具保持具内部のキャビティによって形成されるかのいずれかであり、後者のキャビティは、カバーまたは工具保持具内に挿入されるスリーブによって外側から密封され、または、互いに溶接されてその間に1つまたは複数のキャビティを形成する2つの部分から工具保持具を形成することによって形成される。
【0031】
このように複数の部分から形成されるキャビティは、慎重な密封を必要とする。その際、特に工具保持具を大きな力で自ら締め付けるために高い液圧(内圧)で作動させるべき個所においては、密封コストがかなり増大する。特に、カバーインサートまたはブシュを使用して形成される、複数の部分から成るキャビティは、圧力が増大するに伴って漏れの危険が増える。特に作動当初は著しくない潜行性の漏れは極めて望ましくない。というのは、工具保持具によって達成可能な加工品質が著しく低下したときにはじめて工具の締め付け力が徐々に変化していることに気づくのがほとんどの場合だからである。
【0032】
そこで、本発明はこの点を改善することをも課題とする。
【0033】
この課題を解決するため、工具保持具を工作機械の主軸に連結させるための本体と、該本体と結合され、前記本体と結合され、前記工具シャンクを固定または収縮させるスリーブ部分とを備えた工具保持具において、前記工具保持具が少なくとも1つの一体に成形された部分を有し、該一体に形成された部分に外側結合通路が形成され、該外側結合通路が好ましくは工具保持具の外周から前記一体に成形された部分の内部へ延在し、そこで拡張して少なくとも1つのキャビティを形成していることを特徴とする工具保持具を提案する。キャビティは前記一体に形成された部分のなかに完全に位置している。これは、隣接している部分(たとえばカバー、ブシュ、またはスリーブ部分に溶接された本体)がキャビティの形成に寄与していないことを意味している。拡幅ということは、外側結合通路の内のり横断面が(その主流動方向に見て)これと結合されるキャビティの内のり横断面の総和よりも小さいことを意味している。
【0034】
すなわち、該当部分には、比較的大きなキャビティが形成され、この比較的大きなキャビティは、小さな開口部を介して外側から圧力付与器を用いて所望の態様で液圧を作用させることができる。1つまたは複数のキャビティは、内圧が高い場合でも自ら密封を行なう。というのは、キャビティは一体の該当部分内に全体が形成されているからである。外側結合管の慎重な密封のみを必要とするにすぎない。これは特別なコストなしに確実に実現できる。
【0035】
好ましくは、少なくとも1つのキャビティは液体で充填され、少なくとも1つの外側結合通路に、好ましくは外部から操作される圧力付与器が組み込まれ、該圧力付与器を用いて液体に圧力を作用させることができる。
【0036】
この場合もキャビティが3次元のキャビティ群を形成し、該キャビティ群は、半径方向において内側から外側へ向けて複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置され、同時に前記回転軸線の方向において複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置されているように構成されているのが特に好ましい。このようなキャビティ群を介して、大きな範囲にわたって、正確に配量され、所望どおりに空間的に定義され配分される圧力作用を生成させることができる。
【0037】
最適には、少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個のキャビティが設けられ、これらキャビティは、好ましくはそのすべてが、一体のスリーブ部分の内部にある。その際、これらのキャビティは合目的には内側結合通路を介して互いに連通している。この場合、少なくとも1つのキャビティは少なくとも1つの外側結合通路を介して圧力付与器と直接結合し、その結果圧力付与器を介して、キャビティを充填する液体の圧力を予め設定することができる。
【0038】
本発明は、さらに、いかにして冷媒または潤滑剤を工具保持具の連結側からその工具側端部へ搬送して、工具が工作物と係合している領域を最適に冷却または潤滑することができるかにも取り組んでいる。
【0039】
この目的のため、技術水準では、相互に接続しあっている複数の孔を工具保持具に穿設し、このようにして連続する液体供給管を工具保持具の連結領域から該工具保持具の工具側端部まで提供することが知られている。この場合、ほぼ半径方向に延在する少なくとも1つの孔を設け、この孔はほぼ回転軸線の方向に延在する孔に連接しなければならない。この半径方向に延在する孔は、工具保持具の外周面と交差する個所で閉鎖しなければならない。これは面倒である。さらに、このような閉鎖は質量が集積する個所であり、補償すべきアンバランスを大きくさせる。
【0040】
このような欠点は、工具保持具が少なくとも1つの冷媒供給管を有し、該冷媒供給管が、前記工具保持具の、締め付けられる工具側の端面から、本体内まで延在して、好ましくは該本体によって取り囲まれている内部空間に開口し、その際冷媒供給管は、工具保持具の外表面から該工具保持具内に穿設された孔によって形成される枝を有することなく、少なくとも1か所でその延在方向を変化させていることによって解決される。通常のケースでは、工具保持具の少なくとも冷却供給管が延在している部分は、金属層材料から構成されている。
【0041】
合目的には、冷媒供給管は、ほぼ半径方向に延在している少なくとも1つの部分を有している。
【0042】
本発明は、さらに、収縮型チャックの形態の工具チャックにおいて、以下にすれば収縮解除を改善できるかという問題に取り組み、それ故従来公知の収縮型チャックよりも収縮解除の改善を可能にする収縮型チャックを提供することをも課題とする。
【0043】
この課題は、工具保持具を工作機械の主軸に連結させるための本体と、該本体に結合され、工具シャンクを熱でまたは液圧で締め付け固定するためのスリーブ部分とを備えた工具保持具において、前記スリーブ部分の外周がインダクション部分を有し、該インダクション部分が電気誘導性および磁気誘導性の金属から成り、前記スリーブ部分が前記インダクション部分の内側にある部分を有し、この部分が、前記インダクション部分を構成している金属よりも大きな熱膨張係数を有する金属から成り、前記インダクション部分と、前記スリーブ部分の、前記インダクション部分の内側にある前記部分とが、両者とも前記スリーブ部分の組み込み一体構成部材である周壁であることによって解決される。
【0044】
本発明は、さらに、特に外部からのアクセスが困難で、および/または、アンダーカット状に構成されている工具保持具の複合構造をいかにして作製するかの問題に取り組む。
【0045】
複合構造は、いわゆる層溶融方式を使用して作成することができ、この方式では、一点一点にまたは一層一層に金属材を溶接または焼結させることで、生成すべき構造が提供される。
【0046】
しかし、層溶融方式は必然的に比較的緩速な製造ステップを有しており、それ故比較的大きな質量のある物体の大量生産にとってはそれ自体としては好ましいものではない。
【0047】
それ故本発明の他の課題は、複合構造であるにもかかわらず、従来よりもより合理的に作製できる工具保持具を提供することである。
【0048】
この課題は、工具保持具(好ましくは工具シャンクを少なくとも大部分において摩擦で締め付け固定するために構成されている)を工作機械の主軸に連結させるための本体と、該本体に結合され、好ましくは工具シャンクを収縮固定するためのスリーブ部分として形成されている締め付け部分とを備えている工具保持具によって解決される。この場合、工具保持具の第1の部分は鍛造、圧延、または鋳造された金属から成り、このことは、通常のケースでは、第1の部分の適当な組織構造に適用される。工具保持具の第2の部分は金属層材から成っている。ここで「金属層材」という概念は、互いに順次溶融され、または、互いに溶着され、または、互いに焼結されている個々の金属層、金属ゾーンまたは金属点から成っている材料のことである。これはレーザーを用いて行われる。この種の成形も、通常のケースでは特徴的な組織構造を提供し、その結果このケースでの工具保持具の製造の種類は、その実体的な性質の点で特徴的である。
【0049】
なお、「金属層材」という概念は、少なからずの成分として、有利にはその質量に関して、大部分が金属から成っている材料のことである。金属層材はもっぱら金属層、金属ゾーン、または金属点のみから成り、不純物のランク(Rang)を介して出てくる他の構成成分を全く含んでいない、または少なくとも含んでいない。この場合、異なる金属および/またはその合金を混合させるのが合目的である。たとえば、少なくとも1つの形状記憶合金(FGL)の使用または供給が合目的であることが明らかになった。しかし、場合によっては、金属層材は少なくとも1つの金属母材または金属粉から製造されていてよく、該金属母材または金属粉は、少なくとも1つの非金属材料の、材料特性に影響する成分を含んでいる。この場合考慮する点火物または混合物としてはセラミック材、および/または、少なくとも1つの炭素化合物、および/または、少なくとも1つのプラスチックまたはプラスチックの関与で形成される少なくとも1つの繊維複合材である。
【0050】
このような材料添加は連続的に或いは局所的に行ってよい。
【0051】
この種の製造の大きな利点は、従来の態様でより合理的に加工できるような部分(通常のケースではこれは本体である)がそのまま加工されることである。緩速な層溶融方式は、従来では製造が不可能または困難である複合構造が形成される、空間的に画成された第2の部分に対してのみ適用される。これは、複合構造の形成を断念することなく、製造プロセスを数倍加速させる。
【0052】
上記の課題は、さらに、方法に関する並列請求項に記載の方法によって解決される。この方法の範囲内では、工具保持具を工作機械の主軸に連結させるための本体と、該本体に結合され、工具シャンクを固定するための、特に収縮固定させるための締め付け部分(好ましくはスリーブ部分)とを備えた工具保持具を製造する方法であって、第1の部分を、好ましくは前記本体を、回転部材として中実材(Vollen)から、或いは、予鍛造または予鋳造したブランクから、好ましくは工具鋼から製造するようにした前記方法において、第2の部分を、好ましくはスリーブ部分を、個々の金属層から構成し、該個々の金属層を、前記第2の部分が所定の形状を有するまで互いに順次連続して生成させる。なお、第2の部分は、場合によっては工具保持具の局所領域であってもよく、たとえば局所的にのみ形成されるアンダーカット領域であってもよい。アンダーカット領域は、従来の切削で製造される工具保持具に穿設され、その後追加的に層溶融方式を用いて挿入されて工具保持具を完成させる。
【0053】
好ましくは、上記方法は、第2の部分を形成する金属層を、異種金属または異種合金の混合物から溶融させるようにして実施される。このようにして第2の部分の特定の領域を材料的に特定の課題のために強化することができる。従って、局所的に特別な要求がなされる個所を、抵抗力を向上させた材料から作製することができ、同時に第2の部分全体を、このような高価でおよび/または高い時間コストをかけて所望の形状へもたらされる材料から作製する必要はない。同様のことは、たとえば特に高い電気誘導性および/または磁気誘導性が期待される個所に対しても適用される。たとえばスリーブ部分として形成される締め付け部分に、交流磁場の影響のもとで誘導熱を生じさせることのできる金属材料をあてがうことができ、これと一体に結合されて、工具受容部を形成する内側部分が得られ、該内側部分は外側部分の材料よりも高い熱膨張を有する金属材料から成る。
【0054】
従って重要な点は、材料層が局所的に特別な機械的特性および/または電気的特性および/または磁気的特性を有するように、金属層の組成を局所的に多様に変化させることである。
【0055】
好ましくは、本発明による製造方法は次のように実施され、すなわち前記第2の部分を、好ましくは個々の層の溶融または溶着の終了後に熱処理に曝す。好ましくは、この熱処理は組織変化を誘導し、および/または、理想的には第1の部分での固有締め付けの解除の用を成す。
【0056】
本発明による方法を特に効率的に実施するため、鍛造金属または鋳造金属から成っている前記工具保持具の第1の部分を基体として使用し、該基体上に、金属層材から成る工具保持具の第2の部分を順次塗布する。このようにして、第1の部分と第2の部分との相対的な特に高い位置精度を保証でき、このような工具保持具が必要とする可能なかぎり正確な同心性に好影響を与える。さらに、特別な結合過程、および、そのために必要な両部分相互の正確な配向過程を省略できる。
【0057】
他の使用例(すなわち第2の部分に特に十分な熱処理を施す必要がある使用例)に対しては、第2の部分またはスリーブ部分を、熱処理を終了した後にはじめて本体と結合させ、その結果1つの部分の熱処理が他の部分の組織構造に影響を与えないようにするのが好ましいことが明らかになった。この意味で同じことが、たとえば本体に肌焼を施す場合にも適用される。前記結合は、好ましくは溶接により、特に摩擦溶接過程によって行う。
【0058】
第2の部分またはスリーブ部分に、前記個々の層の相互の溶融または相互の結合を終了後に、好ましくはこれに続く熱処理の後に、回転加工および/または円筒研削および/または内面研削を施す。この場合、理想的には、このような加工を本体とスリーブ部分とを結合させた後にはじめて行う。というのは、このようにして最も簡単に工具保持具の同心性を達成できるからである。
【0059】
場合によっては、工具保持具の、一体に成形された部分がもっぱら金属層、金属ゾーン、または金属点のみから成り、不純物のランクを介して出てくる他の構成成分を全く含んでいない、または少なくとも含んでいないのが合目的である。
【0060】
他方、一体に成形された部分は、少なくとも1つの金属母材または金属粉から製造され、該金属母材または金属粉は、少なくとも1つの非金属材料の、材料特性に影響する成分を含んでいる。
【0061】
更なる構成の可能性、作用および効果は、図面を用いたいくつかの具体的な実施形態に関する以下の説明から読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
次に、添付の図面を用いて説明する。
【
図1】本発明の第1実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図5】切断線A-Aに沿った断面を前方から見た図である。
【
図7】本発明の第3実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図、すなわち線B-Bに沿った断面図である。
【
図8】第3実施形態の、線Y-Yに沿って切断した斜視図である。
【
図9】同様に切断線Y-Yに沿って切断した図である。
【
図10】第3実施形態の、線C-Cに沿った断面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図12】第4実施形態の、線D-Dに沿って切断した斜視図である。
【
図13】同様に切断線D-Dに沿って切断した、前方から見た図である。
【
図14】第4実施形態の、線E-Eに沿った断面図である。
【
図15】本発明の第5実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図16】切断線F-Fに沿って切断した、前方から見た図である。
【
図18】同様に第5実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図であるが、別の切断角で切断した図である。
【
図19】本発明の第6実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図20】切断線G-Gに沿って切断した、前方から見た図である。
【
図22】同様に第6実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図であるが、別の切断角で切断した図である。
【
図23】本発明の第8実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図25】第8実施形態を変形した第9実施形態を示す図である。
【
図25a】本発明の第10実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図26】本発明の第11実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図27】切断線H-Hに沿って切断した、前方から見た図である。
【
図29】本発明の第12実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図30】技術水準の厚壁の収縮型チャック図であり、技術水準で生じる問題を説明する図である。
【
図31】本発明の第13実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図32】本発明の第14実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図33】
図32で円で表わしたスリーブ部分および継ぎナットの領域の拡大図である。
【
図34】
図32で円で表わした操作システム用保持フランジ下方の領域の拡大断面図である。
【
図36】本発明の第15実施形態の、回転軸線Rに沿った断面図である。
【
図37】
図36で円で表わしたカッターヘッドの拡大領域を示す図である。
【
図40】カッターヘッドとその上に着座している締め付け部分との、回転軸線に対し垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
【0064】
この工具チャック1は、本体2と、これから突出しているスリーブ部分とから成り、本実施形態では、スリーブ部分は締め付け固定部分3を形成している(以下では、対応するいくつかの実施形態において一貫して「スリーブ部分3」と記すが、これは「スリーブ部分の形態で構成された締め付け固定部分3」のことである。)。スリーブ部分3の内部には工具受容部4が形成されている。
【0065】
工具チャックはいわゆる収縮型チャックとして実施されているが、これは一般的に有利である。スリーブ部分3内に形成されている工具受容部4の内径は、図示していない工具シャンクの外径よりもいくぶん小さく、その結果スリーブ部分3は、スリーブ部分3が工具シャンクの挿着後に冷却されると、図示していない工具シャンクをプレスばめでしっかりと保持する。
図1からよくわかるように、本体2は連結部分5を有している。この連結部分は、工具チャック1とこれによって保持される工具とから成るユニットを工作機械に連結させるために用いられる。ここでは連結部分5は有利に中空軸連結部分として実施されているが、本発明はこれに限定されるものではない。中空軸連結部分の代わりに他の実施形態の連結部分も発明の対象であり、たとえば急テーパ連結軸も可能である。
【0066】
本体2は、さらに、通常のケースでは保持フランジ6を有し、該保持フランジにあらゆる種類の操作システムを装着することができて、工具自動交換の際に工具チャック1を操作することができる。
【0067】
図1および
図2を参照すればわかるように、工具保持具はここでは多分割に実施されており、すなわち工具保持具は、互いに独立に成形された少なくとも2つの部分から成り、これらの部分は後で互いに結合される。本実施形態では、これは本体2とスリーブ部分3である。従来、本体2は好ましくは中実材から切削によって製造され、或いは、予め鍛造されたブランクを切削することによって製造される。本体2を、肌焼に曝すことのできる鋼から製造するのが好ましい。
【0068】
本体2はここではその保持フランジ6に直接接続する終端を有しておらず、保持フランジ6の工具側で、径段部をもった部分から、付加部分8と記す縮径部分へ移行している。この付加部分8は本体2の一体構成部分に始端を有し、本体とともに成形される。付加部分は好ましくは次のように構成され、すなわちスリーブ部分3が径段部なしにこの付加部分に接続できるように構成されている。スリーブ部分3は好ましくは層溶融方式によって一体に製造される。このような層溶融方式は、ほとんどの場合レーザーを用いて、先行する各層の上に、本来は粉末形状で存在している金属材から成る他の層を溶着または焼結させることにより、構成要素が一層ずつ製造される。
【0069】
これに続いて、スリーブ部分3を好ましくは熱処理する。これによって金属材料の望ましい継ぎ目構造が形成される。これとは別個に、本体2を熱処理および/または肌焼する。
【0070】
通常のケースでは、これに引き続いてスリーブ部分3を本体2と結合させる。好ましくは、この結合は溶接によって行い、理想的には摩擦溶接によって行う。摩擦溶接では、両構成要素を互いにしっかりと圧接させ、その際に互いに相対的に回転させ、その結果両構成要素はその接触面Kにおいて摩擦熱によって強く加熱されて、最終的に溶接される(これに対しては
図1を参照)。
【0071】
これに引き続いて、ほとんどの場合、更なる加工を行う。この加工で工具保持具の外周を旋盤仕上げおよび/または切削し、そして工具受容部4のリーマ仕上げまたは内面研削を行う。
【0072】
最後に、工具保持具のバランシングを行い、その後使用可能状態になる。
【0073】
上に述べたような追加的な合同溶接の代わりに、通例的態様で製造された本体2を基体として使用し、その上にスリーブ部分をステップバイステップで、または、一層ずつ被着させることも可能である。上に述べたような1つの部材から成形したスリーブ部分3は、その内部に、周方向に周回するように延在する多数のキャビティ9を有し、これらのキャビティのそれぞれが周方向に閉じた環状通路を形成することを特徴としている。
図1および
図2に図示したこれらキャビティのそれぞれは、スリーブ部分3内で完全なエンクレーブを形成しており、すなわちどこの個所でもスリーブ部分3または他のキャビティと結合しておらず、また局所的でも結合していない。有利な実施形態では、20個以上のキャビティが設けられている。キャビティのそれぞれはスリーブ部分の成形に引き続いてすでに形成され、すなわちスリーブ部分に追加的に加工されたものではない。
【0074】
図面からわかるように、キャビティ9は1つのキャビティ群を形成している。キャビティ群の特徴は、回転軸線Rの方向に複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して配置されていることにある。好ましくは、半径方向において内側から外側へも漸進的に複数のキャビティが相前後して配置されている。理想的には、これらのキャビティも半径方向において互いに整列するように相前後して配置される。この種の配置により3次元のキャビティ群が生じ、構造的な観点からみると、締め付け固定特性(締め付け固定の強度)および緩衝特性の非常に微細な調整が可能になる。
【0075】
図示していない変形実施形態によれば、
図1および
図2に図示した個々のキャビティはエンクレーブを形成しておらず、スリーブ部分の周部と結合している。
【0076】
回転軸線を完全に含んでいる断面において、理想的には、キャビティ9はそれぞれ六角横断面を有し、その結果回転軸線Rを含む断面においてハニカム状の構造が生じる(
図1を参照)。
【0077】
図1を参照して認められることは、キャビティ9が3つの仮想の円環上にあり、これらの円環がそれぞれ回転軸線Rに対し同心であり、異なる中央径R1,R2,R3を有していることである。それぞれ第1の仮想の円環上に配置されているキャビティ9は、工具保持具回転軸線Rの方向に見て、互いに相前後して一列に位置している。第2の仮想の円環(その半径R2は第1の仮想の円環の半径R1よりもいくぶん大きい)上にあるキャビティ9は、半径方向において、第1の仮想の円環上にあるキャビティと整列していない。その代わり、これに対してずらして、好ましくは中心をずらして配置されている。このことは、第2の仮想の円環上にあるそれぞれ1つのキャビティが半径方向において(回転軸線Rに対し垂直に見て)、半径R1をもった第1の円環上にある2つのキャビティ9の間の中間空間内にあることを意味している。この場合、図からわかるように、キャビティは互いに非常に密に隣接しており、理想的には、互いに隣接しあっている円環上にあるキャビティが回転軸線Rに沿った方向に見て互いにオーバーラップしているように配置される。
【0078】
好ましくは、第3の仮想の円環(その半径R3は前記半径R1,R2よりも大きい)上にあるキャビティ9は、半径方向において第1の仮想の円環のキャビティ9と整列している。
【0079】
図1および
図2に基づいて容易に見てとれるように、キャビティ9はそれぞれ互いに密に並設され、その結果互いに隣接しあっている2つのキャビティの間の細条部は、それぞれ隣接しあっているキャビティの最大横断面よりも小さな範囲で延在している。
【0080】
それぞれ隣接しあっているキャビティ9を次のように互いに密に配置するのが特に好ましいことが明らかになった。すなわち、それぞれ隣接しあっているキャビティは、回転軸線Rを完全に含んでいる面内で、全面積が細条部の横断面積の総和の最大で60%、より好ましくは最大で40%の全横断面積を形成しているのが好ましい。この条件が満たされているかどうかは、簡単に検出することができる。1つの横断面内にあるキャビティ群の周囲に、キャビティ群を外側から取り囲む仮想の急傾斜線を引く。この急傾斜線によって取り囲まれている面が全横断面である。この算術上の横断面の一部は、細条部に寄与する面の総和によって形成され、この面の他の部分は個々のキャビティ9の横断面の総和によって形成される。好ましくは、これらの面によって上記の比率が維持される。
【0081】
これにより、
図1および
図2から見て取れる多孔構造が生じる。この多孔構造は優れた緩衝作用を有し、工具シャンクをどの程度しっかりと締め付け固定されるかに影響する。孔は担持構造の表面まで及んでいる必要はなく、或いは、生成ばらばらに前記表面まで及んでいればよいが、実際にはそれぞれの担持構造の内部で全面が閉じたエンクレーブを形成しなければならない。
【0082】
キャビティの緩衝作用は、特に、回転軸線Rの方向に見てキャビティが工具シャンクをプレスばめによって締め付け固定して保持する工具受容部の長さWのほぼ全長にわたって、または、少なくともその2/3にわたって延在している場合に顕著になる。この場合、回転軸線Rを完全に含んでいる面内にある個々のキャビティの横断面積が60mm2よりも小さい場合、理想的には30mm2よりも小さい場合、特に好ましいケースでは15mm2よりも小さい場合に特に好ましいことが明らかになった。
【0083】
このようなキャビティ群は、特に、個々のキャビティ9が腐食または穿孔によって追加的に形成されたものではなく、すでに成形の際にスリーブ部分3に加工されていれば、特に有利な緩衝作用を発揮する。この場合、個々のキャビティは非常に正確な幾何学的形態と互いに正確な相対配置とを有し、あとになってスリーブ部分3の継ぎ目構造を阻害しない。なお、真正なエンクレーブとして実施され、スリーブ部分3の周囲と結合させるような局所的に弱い開口部を有していないキャビティ9は、特に有利な強力な緩衝作用を発揮する。
【0084】
通常のケースの場合、このように配置されるキャビティは同時に他の主要な利点をももたらす。すなわちキャビティは次のように配置されており、すなわち図示していないインダクションコイルによってスリーブ部分3の外周表面に発生して収縮解除(Ausschrumpfen)のために利用される熱が若干の時間的遅延をもって工具シャンクの領域まで浸透するように、配置されている。これにより、誘導加熱されて膨張したスリーブ部分から工具シャンクを引き出すためのタイムウィンドウが拡大される。
【0085】
工具受容部4の内表面と、キャビティが配置されている最小仮想円環との間に、回転軸線の方向に貫通する安定な筒状部分が配置され、その最小壁厚Wが少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mmであるのがと間に有利であることが明らかになった(
図1を参照)。さらに、スリーブ部分3の遠位の端部、すなわち工具側の端部にあるキャビティが、スリーブ部分3の組み込み構成部材を形成している壁によって覆われ、この壁が少なくとも1mmの、好ましくは少なくとも2mmの壁厚WKを有しているのが特に好ましいことが明らかになった。同様のことは、スリーブ部分3の組み込み構成部材として実施され、キャビティをスリーブ部分の外周面から切り離している壁部分に対しても適用される。この有利な実施態様は、有利にはすべての実施形態に対して適用される。
【0086】
上述のキャビティにより更なる効果を達成することができる。
【0087】
重荷重用の厚壁の収縮型チャックは、工具の締め付け固定を解除する目的でスリーブ部分を誘導加熱する際に反りかえる傾向がある。このようにして収縮解除が部分的に非常に困難になる。
【0088】
前記の遅延が生じる原因は、誘導加熱の際にまず収縮型チャックの外周が強く加熱され、誘導発生した熱が若干の遅延をもって熱伝導により収縮型チャックの内部領域へ転送されることにある。収縮型チャックが厚壁に実施されている個所では、何らかのときに、
図30に黒で示したスリーブ部分3の最外層がすでに強く加熱されて回転軸線Rの方向でも強く膨張するような状況になる。このことを
図30では矢印Pによって示した。この時点では、スリーブ部分の外層によって取り囲まれているスリーブ部分の内層はまだ冷えており、半径方向にも回転軸線Rの方向にもまだ膨張していない。その結果、スリーブ部分3の工具側端部は内側へ反る(
図30の矢印VWを参照)。これは非生産的である。というのは、熱による工具受容部の膨張で工具シャンクを解放する傾向に反作用するからである。
【0089】
この問題も本発明によるキャビティ9を使用することによって解消される。
【0090】
たとえば、スリーブ部分3の外周よりも工具受容部に近い位置にあるスリーブ部分3の壁領域に、本発明による(場合によっては付加的な)複数のキャビティを設ける。
【0091】
これらのキャビティをいかに正確に配置するかは、最終的には使用例にも依存しており、それ故専門的な実験に基づいて個々のケースに対し難なく決定することができる。簡単な例としては、キャビティ9は次のように配置されている必要があり、すなわちキャビティが回転軸線Rに対し平行な方向においてスリーブ部分の内側領域を強く弱体化して、スリーブ部分のこの内側領域がすでに熱くなっているスリーブ部分の外側領域の膨張を著しく阻害しないように、配置されている必要がある。なぜなら、スリーブ部分のすでに熱くなっている外側領域が、弱体化されたスリーブ部分の内側領域に対して、該内側領域の加熱がないにもかかわらず、または、加熱がわずかであるにもかかわらず、回転軸線Rの方向での膨張を強制するからである。これらのキャビティをこのような使用例に対しておおよそいかに配置するかは、
図31に図示されている。
【0092】
図3ないし
図5は本発明の第2実施形態を示すもので、第2実施形態は、
図1および
図2を用いて詳細に説明した本発明の第1実施形態にほぼ対応している。従って、この第2実施形態に対する以下の説明から相違が生じなければ、第1実施形態に対し述べたことは第2実施形態に対しても適用される。
【0093】
この第2実施形態では、本体2とスリーブ部分3とははじめから共通の成形によって一体に生じたものである。従って、工具保持具全体は上述の種類の層溶融方法によって構成されている。これは、成形によって互いに別個に製造される2つの管から上述のように製造する場合よりも長くかかるが、しかし継ぎ目構造が溶接によって阻害されず、しかも工具保持具のほぼパーフェクトな同心円精度をより簡単に保証するという利点がある。
【0094】
キャビティ9は、第1の実施形態の範囲内で説明したように互いに相対的に配置されている。
【0095】
特に、キャビティ9はここでも周方向において閉じた円環である(
図5を参照)。
【0096】
この第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、キャビティがそれぞれ回転軸線を含んでいる断面を有している横断面が、第1実施形態の場合とはいくぶん異なるように構成されている点である。第1実施形態の場合、この横断面は理想的には六角形であったが、ここでのキャビティはほぼ長方形の横断面を有し、この横断面は2つの直線部分によって画成され、2つの直線部分はそれぞれキャビティの外周と内周とを定義しており、キャビティの内部へ凹状に延びる2つの部分が設けられ。これら2つの部分が前記2つの直線部分を互いに結合させている。これに関しては、
図6をも参照されたい。
図6は、この実施形態の個々のキャビティ9の横断面を拡大して示している。
【0097】
第1実施形態を用いてすでに説明したように、キャビティが周方向において閉じた円環を形成しているならば特に有利である。しかしこれは必ずしも必要なものではない。むしろ、キャビティの主方向が原則から周方向へ延びており(これは、キャビティの最大延在距離が周方向にある場合である)、しかし個々のキャビティはそれぞれ円環セグメントを形成しているにすぎず、これら円環セグメントのうちいくつかは周方向に見て互いに整列するように配置されていれば(たとえば
図16を参照)、特に好ましいような使用例が存在することもある(これに関しては後述する)。このケースでは、周方向に見て少なくとも
図16に示した3つのキャビティが、より好ましくはこのようなキャビティのうちの6つのキャビティが互いに整列して配置されているならば、特に好ましい。
【0098】
別の使用目的に対しては、キャビティの主方向(すなわちその最大延在距離)が回転軸線Rに対し平行に延びているのが特に有利であることが明らかになった。この実施形態は
図7ないし
図10を用いればわかりやすく説明することができる。
【0099】
図7ないし
図10に示した実施形態では、本体2とスリーブ部分3とは、はじめから前述の層溶融方式による共通の成形によって生じさせたものである。この場合、成形のために、スリーブ部分3および/または本体2の一体構成部材として、(ここには図示しておらず、以後も同様であるが)その中に形成されるキャビティを生じさせる。これとは択一的に、この実施形態でも、第1実施形態に対しすでに述べたように、スリーブ部分3をその中に配置されているキャビティ9とともに一体に成形し、且つ本体2とは別個に成形し、本体2はスリーブ部分3とは独立に成形して後でスリーブ部分3と結合させるようにしてもよい。
【0100】
図7ないし
図10の本実施形態において使用されるキャビティは、回転軸線に対し平行な方向でのその延在距離が、周方向でのその延在距離よりも少なくとも5倍だけ大きいことを特徴としている。好ましくは、これらのキャビティのそれぞれは、工具受容部4の全長にわたって、または、工具受容部の長さの少なくとも2/3以上にわたって、一貫して連続的に延在している。ここでも多数のキャビティが設けられているが、図面では20個以上のキャビティが設けられている。
【0101】
これらのキャビティ9は、基本的には、すでに第1実施形態との関連で説明したように互いに相対的に配置されている。
【0102】
この実施形態でも、これらキャビティは少なくとも3つの仮想に円環上にあり、これら仮想の円環はそれぞれ回転軸線Rに同心に位置し、異なる平均径R1,R2,R3を有している(
図10を参照)。それぞれ1つの仮想の円環上にある複数のキャビティ9は、周方向において互いに相前後して整列している(
図9を参照)。第2の仮想の円環(その径R2は第1の仮想の円環の半径R1よりもいくぶん大きい)上にあるキャビティ9は、半径方向において、半径R1の第1の仮想の円環上にあるキャビティと整列していない。その代わりこれらキャビティはずらして配置され、好ましくは不整合状態で配置されている。これが意味するところは、第2の円環上にあるそれぞれ1つのキャビティが、半径方向に見て、半径R1を持つ第1の円環上にある2つのキャビティ9の間の中間空間内にあるということである。この実施形態では、互いに隣接しあっている円環上にあるキャビティは周方向に見て互いに部分的にオーバーラップしている(
図9を参照)。
【0103】
好ましくは、第3の仮想の円環(その半径R3は半径R1,R2よりも大きい)上にあるキャビティ9は、半径方向において、第1の仮想の円環のキャビティ9と整列している(
図9および
図10を参照)。
【0104】
この実施形態に関しても、個々のキャビティが微孔であり、回転軸線Rに垂直な面での個々の各キャビティの横断面積が60mm2よりも小さければ、理想的には30mm2よりも小さければ、特に好ましいことが明らかになった。
【0105】
このように配置されたキャビティ群は、すでに述べた緩衝効果を有しており、これらキャビティの少なくとも大部分が、完全に閉じておりスリーブ部分の周囲と結合していない真正なエンクレーブとして形成されていれば、特に予想外の大きな効果をもたらす。
【0106】
さらに、
図7ないし
図10が示すように、収縮解除を容易にする前述の絶縁作用を持つように配置されたキャビティ群も示している。
【0107】
しかし、この実施形態の場合、作用の重心はいくぶんずれている。
【0108】
仮に個々のケースにおいてディメンショニングに大きく依存しているとしても、おおざっぱにいえば、主配向が周方向に延びているキャビティの群れは、特に著しい緩衝作用と、傾向的に小さい絶縁作用を示し、他方主配向が回転軸線Rに対し平行に延びているキャビティの群れの場合は、傾向的には逆である。このようなキャビティは特に強い絶縁作用と、傾向的により小さな緩衝作用とを示す。
【0109】
図11ないし
図14は他の実施形態を示すもので、
図7ないし
図10の実施形態と密接に関係しており、以下の説明以外では、
図7ないし
図10との関連で述べたことが適用される。
【0110】
この実施形態では、キャビティ9は六角形の横断面をもった回転軸線Rに対し垂直な面内に形成され、その結果隣接しあっているキャビティまたはこれらを切り離している細条部はハニカム構造を形成している。
【0111】
この実施形態で特徴的なことは、キャビティの数量が際立っていることである。50個以上のキャビティが設けられている。このうちの大部分(または、図示したこの実施形態ではこれらキャビティ9のすべて)は、真正なエンクレーブとして実施されている。
【0112】
【0113】
本発明のこの実施形態の特徴は、本体2とスリーブ部分3とを最初から共通の成形によって一体に生じさせた点にある。工具保持具全体は、上述した種類の層溶融方式によって構成されたものである。
【0114】
この実施形態では、工具保持具は、上述の第2実施形態に対応する複数のキャビティ9を備えている。従って、第2実施形態でキャビティで述べたことはここでも適用される。これとは択一的に、前述した他の実施形態で説明したようなキャビティを設けてももちろんよい。
【0115】
この工具保持具の特徴は以下の点にある。
【0116】
この工具保持具は、
図17が示しているように、少なくとも1つの冷媒供給管11を備えている。さらに詳細に述べるこの種の冷媒供給管に対しては、絶縁保護が要求され、すなわち完全に一般的にいえば、層成形方式を用いて製造された工具保持具に対しては、該工具保持具がどのような構成をもっているかに関係なく、以下に詳細に述べる種類の冷媒供給管11を有する保護が要求される。
【0117】
この冷媒供給管11は、工具保持具のスリーブ部分3の端面から本体2の内部まで延在している。そこで冷媒供給管は本体の内周面にて開口している。好ましくは、この冷媒供給管11は、本体2に設けられている、工具保持具を操作するための保持フランジ6の下方まで延びている。
【0118】
この冷媒供給管11の特徴は、半径外側方向において工具保持具を破断する個所がないこと、または、どの時点でも工具保持具を破断しないことである。
【0119】
この目的のため、冷媒供給管11は、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは3つの異なる部分から成っている。具体例では、冷媒供給管11は第1の部分11.1を有し(
図17を参照)、該第1の部分は本体2の内表面から半径方向外側方向へ延在し、実質的に回転軸線Rに対し垂直に延在している。この第1の部分11.1の半径方向外側端部に直接接続して、第2の部分11.2が設けられている。第2の部分11.2は好ましくは直線状であり、回転軸線Rに対し傾斜して本体2からスリーブ部分3内へ延在している(
図17aを参照)。この第2の部分11.2の、スリーブ部分3内にある端部には、冷媒供給管11の第3の部分11.3が直接接続している。第3の部分11.3はスリーブ部分の端面の内部まで延在し、そこで開口している(同様に
図17aを参照)。
【0120】
冷媒供給管11の、半径方向において内側から外側へ延在している部分が、途中で、冷媒供給管の、回転軸線Rに対し実質的に平行に延在している部分により、側方から切断されて形成されるTカット部は、ここでは必要ない。このことは合理的な製造を可能にする。というのは、冷媒供給管11の、工具保持部の外周面に開口する分岐部を、栓等で閉鎖させる必要がないからである。
【0121】
完全を期すために述べておくと、冷媒供給管11の、上述した第2の部分11.2と上述した第3の部分11.3とは、必ずしも異なる部分でなければならないというわけではない。その代わりに、第2の部分と第3の部分とを、適当な態様で湾曲する部分に合体してよく、たとえばバナナ状に湾曲した部分に合体してよい。もちろん、同じ態様で第1の部分11.2と他の2つの部分11.2および11.3とを互いに合体させて、たとえば全体が好ましくは連続的に延在するJ字状の冷媒供給管(図示せず)を形成させてもよい。重要なことは、一部は外周側から形成されて本来の冷媒供給管にとって部分的にしか必要でない複数の孔と、「デッドブランチ」を形成するその他の孔とから成る集合体を省略できることである。
【0122】
図示はしていないが、冷媒供給管11に、流動方向において可変な、すなわち増減可能な内のり横断面を付与するのが好ましい。このようにして、たとえば冷媒供給管の長さ方向において発生して障害を起こし、或いは、冷媒供給管の分岐部の接続部において、異なる場所に開口する複数の枝部で発生する圧力降下を補償することができる。
【0123】
本発明を用いて簡単に実現できる他の構成の可能性は、開口領域のノズル状構成である。半径方向または周方向に配向されるノズルを難なく設けることができる。なお、「ノズル」とは、流動横断面の局所的狭隘部または対応的に作用する転向領域であって、高速で流出して被冷却領域および/または被潤滑領域に確実に正確に到達する流線を生成させる前記流動横断面の局所的狭隘部または対応的に作用する転向領域である。一般的には、本発明を用いれば開口領域を十分自在に構成することができる。
【0124】
この実施形態の他の利点は、工具を受容するための工具受容部4の表面側へ開口する複数の溝13が加工されていることである(特に
図17aを参照)。これらの溝13は好ましくはすでにスリーブ部分3または工具保持具1全体を成形する段階で設けられ、その結果、工具受容部を追加的にリーマ加工または再切削する場合でも、溝底自体の構造は後になってから変化しない。これらの溝13の幾何学的形態は比較的自由に選定できる。溝13は、工具シャンクの締め付け固定の強度に付加的に影響するために、または、収縮解除の段階でどの程度の熱量がどの時間内でスリーブ部分から工具シャンクへ伝動するかに対して影響を与えるために設けられていてよい。これに加えてまたはこれとは択一的に、溝は、たとえば残留オイルおよび不純物を受容するため設けられていてよい。残留オイルおよび不純物は、たとえば工具シャンクを押し込む際に工具シャンクからはぎ取られ、まさに前述の溝のように阻害を起こさない領域に蓄積する可能性がなければ、締め付け固定のクオリティを損なわせる。
【0125】
さらに、この実施形態は以下の点を特徴としており、すなわち工具受容部4後方の排出部14の内表面に、1つまたはここでのように複数の形状拘束要素が設けられ、好ましくは突出部15の形態で設けられている点である。この突出部15に対しては絶縁保護の用をも成すよう要求するという観点に立っており、すなわちごく一般的にいえば、少なくとも部分的に層成形方式を用いて製造された工具保持部に対して、このような突出部15を有する保護が要求される。突出部15の形態のこの形状拘束要素は、好ましくは、内側へ突出する螺旋状リブのように形成され、いわゆるスクリューリブである。突出部15は、工具シャンクに設けた対応する溝に係合して、いわゆる「セーフロック機能」を実現し、すなわち本出願人のEP2004351に記載されているように工具シャンクが回転軸線Rの方向に不慮に抜けるのを防止する。これに対応して、突出部15は工具保持具の一体構成部材であり、通常のケースではすでに成形による工具保持具の製造の段階でその最終的構成が維持されている。有利には、これら突出部15はすでに述べたようにスクリューリブとして構成され、その結果周方向に結構な長さにわたって延在しており、上記欧州特許公報で提案されているピンとは異なっている。
【0126】
図19ないし
図22は本発明の他の実施形態を示している。この実施形態は、
図15ないし
図18を用いて説明した実施形態と密接に関係している。従って、そこで述べたことを、以下の説明を除いてこの実施形態に対しても適用する。
【0127】
この実施形態では、キャビティ9は、たとえば第2実施形態に対し前述したように実施されている。すなわち、キャビティは大部分が、好ましくはすべてが周方向に完全に閉じた円環として実施されている。この場合、それぞれの複数のキャビティ9は、径が異なる少なくとも2つの仮想の筒体上に前述したように位置している。決定的な点は、半径方向に連続しているキャビティ9の間に少なくとも局部的に次のように多数のスペースが残っており、すなわち少なくとも1つの、好ましくは複数の冷媒供給管11が回転軸線Rに対し実質的に平行な方向においてスリーブ部分を貫通できるように、しかもキャビティ9が切断されずに貫通できるように、残っている(
図20を参照)。好ましくは、ここでもスリーブ部分の周方向に対称に配分される少なくとも3つの冷媒供給管11が設けられている。
【0128】
図22aおよび特に
図22bは、特別な冷媒貯留室の構成の点で重要な本発明の他の観点を示している。このためには同様に絶縁保護が要求される。すなわち、ごく一般的にいえば、少なくとも部分的に層成形方式を用いて製造される工具保持具に対し、どのような構成をさらに有しているかどうかに関係なく、以下に詳細に述べる態様の冷却貯留室を有する保護部が要求される。この実施形態の場合、冷媒供給管11は、工具側端面に、冷媒をコントロールせずに周囲へ流出させる自由開口部を有していない。その代わり、冷媒供給管11は、工具保持具1の工具側端面で冷媒貯留室22内へ開口している。冷媒貯留室22は、機能的にスリーブ部分3からバッフル板23を分離させている溝によって形成され、しかしこの場合バッフル板23はスリーブ部分3の組み込み構成部材であり、これとともに成形される。バッフル板23は冷媒供給管11の開口部24を覆い、冷媒流を60゜以上転向させる。バッフル板23はほぼ工具シャンク25まで達しており、該工具シャンクに対し環状隙間26を形成している。この環状隙間26は高速冷媒放射流を生成させる。冷媒放射流は工具シャンクに密に沿って投げ飛ばされ、このようにして、途中で扇状に著しく拡がることなく、従って一部が工具カッターの冷却のために失われることなく、工具カッターへ到達する。必要な場合には、バッフル板23内に、半径方向に延在して冷媒放射流の形状に付加的に影響する複数のスリット27が設けられる。
【0129】
【0130】
これらの図に示す実施形態では、スリーブ部分3の領域にキャビティ9は設けられていない。しかしこれは必ずしも強制的なものではなく、以前に説明した実施形態のうちの1つの実施形態の範囲内で述べたように構成されているキャビティが付加的に設けられていてよい。
【0131】
さらに、前記の図が示す実施形態では、本体2とスリーブ部分3とは共通の成形によって最初から一体に生成されている。工具保持具の全体は、前述したような層溶融方式によって構成されたものである。しかしこの点も強制的なものではない。その代わり、本体2とスリーブ部分3とを互いに別個に成形し、後で継ぎ合わせるようにしてもよい。これもすでに前述したとおりである。
【0132】
決定的な点は、この実施形態の場合、本体2がスリーブ部分3の外側に少なくとも1つのキャビティ9を、好ましくは複数のキャビティ9を有していることである。複数のキャビティはそれぞれ本体2内で完全にエンクレーブを描いている。理想的には、これらのキャビティ9は、本体2の、工具保持部の自動操作のために用いられる保持フランジ6によって外周を取り囲まれる領域に、設けられている。
【0133】
この領域は、技術水準で従来公知の工具保持具において中実に実施されていた領域である。この領域に1つまたは複数のキャビティ9が配置されていれば、この領域は中空の緩衝ポテンシャルを有していることが明らかになった。
【0134】
この場合、これらのキャビティ9にそれぞれ、半径方向における最大延在距離が回転軸線Rに対し平行な方向での最大延在距離よりも著しく大きいような横断面を備えさせるのが合目的であることが証明された(
図23を参照)。特に優れた結果は、半径方向におけるそれぞれのキャビティ9の最大延在距離が回転軸線Rの方向でのキャビティ9の最大延在距離よりも少なくとも3倍だけ、より好ましくは4倍だけ大きい場合に得られる。
【0135】
スリーブ部分3にもキャビティが設けられている場合には、好ましくは、保持フランジの領域における個々のキャビティ9の容積が他のキャビティ9の容積よりも著しく大きいことが適用され、この場合この容積は好ましくは、スリーブ部分3の領域における個々のキャビティの容積よりも少なくとも10倍だけ、より好ましくは少なくとも30倍だけ大きい。
【0136】
理想的には、これらキャビティ9のそれぞれは円環円板を形成し、その軸線は回転軸線Rに対し同軸である。好ましくは、少なくとも2つのこのようなキャビティ9が設けられる。この場合、これらキャビティ9が回転軸線Rに対し平行な方向において互いに整列している、実質的にまたは完全に整列していれば、特に好ましい。
【0137】
キャビティ9のこのような構成および位置決めは、キャビティ9がエンクレーブを形成せずに、外部から操作できる圧力付与器と局所的に結合している場合でも有利である。
【0138】
このような選択任意の解決手段を
図25に示す。これからわかるように、キャビティ9のそれぞれは結合管16を有し、結合管16は、外部からアクセス可能に収納されていて、好ましくは工具保持具を操作するための保持フランジ6の領域に設けられるねじ山部分17に開口している。ねじ山部分17には、典型的には六角穴を介して操作される栓18が挿入され、そのねじ込み深さに応じて、該当するキャビティ9内の圧力を調整することができる。現時点で印加されている圧力がどの程度のものであるかに応じて、該当するキャビティ9は多かれ少なかれ際だった緩衝特性を示す。キャビティ9は2つとも互いに結合されていてよく、このときに1つの圧力付与器によって操作されるが、この点は図示していない。もちろん、これとは択一的に、
図25が示すように各キャビティに対し固有の圧力付与器を設けてもよい。
【0139】
図25aと
図25bは他の実施形態を示すもので、以下に述べる相違点以外は前述した実施形態に類似しており、そこで述べたことが適用される。
【0140】
この実施形態では、少なくとも2つのキャビティ9が設けられ、これらのキャビティはそれぞれ筒環または円錐環の構成を有している。好ましくは、これらの環(リング)の、回転軸線Rに対し垂直な半径方向における壁厚は、回転軸線に対し平行な方向におけるその延在距離よりもかなり短く、理想的には少なくとも3分の1だけ小さい。好ましくは、キャビティ9のそれぞれは周方向において閉じている。特に好ましいのは、これらのキャビティが互いに同軸に配置され、その結果外側のキャビティ9が内側のキャビティ9を少なくとも実質的に完全に取り囲んでいる場合である。
【0141】
本発明の他の1実施形態を
図26ないし
図30に示す。ここに図示した実施形態では、本体2とスリーブ部分3とは最初から共通の成形によって一体に生成されている。しかし、その代わりに、冒頭で述べたように複数の部分から成る実施形態も難なく可能である。
【0142】
スリーブ部分内に一体に20個以上のキャビティ9が形成され、この実施形態では30個以上のキャビティ9が形成され、これらのキャビティは、たとえば、第2実施形態の範囲内で説明したように構成され、配置されている。たとえば第1実施形態の範囲内で説明したような他の構成も考えられる。
【0143】
この実施形態の範囲内で使用するキャビティが以前に説明した実施形態と決定的に異なる点は、一体のスリーブ部分3に形成されているキャビティ9が真正なエンクレーブを形成していないことである。キャビティ9は実質的にすべての側で閉じているけれども、隣り合っているキャビティ9は局部的に結合部分19を介して互いに流動結合している(
図28aを参照)。
図28aからわかるように、結合部分19は典型的には、キャビティ9自体の内のり横断面よりも小さな内のり横断面を流動方向に有し、好ましくは3分の1だけ、理想的には4分の1だけ小さい。これが好ましいのは、このように成形された結合部分19は、一方ではキャビティ9をすべて互いに連通させるのを保証し、その結果その内圧を中央で制御できるからであり、他方では、工具保持具とキャビティ9とが曝されている振動の影響で、絞り損失により流動からエネルギーが引き出されて緩衝効果を生じさせるような強力な絞り作用を有しているからである。
【0144】
複数のキャビティ9のうちの少なくとも1つは、外側結合通路20を介して、スリーブ部分の外側の領域と結合される(
図28aおよび
図26を参照)。
【0145】
このようにして、すべてのキャビティは互いに流動結合しているキャビティから成るネットワークを形成し、キャビティのこのネットワークは、外側結合通路20を介して適当な圧力をもたらすことで、必要に応じて内圧に曝すことができる。しかし、この外側結合通路20またはこれらの外側結合通路20を除けば、キャビティは外側雰囲気またはスリーブ部分の内部と連通していない。空間的に配分して配置されるキャビティから成る本発明によるネットワークにより、もたらした圧力によって工具保持具をどのようにどの部分を変形させ、または締め付け固定するかを、従来よりも著しく正確に「調整する」ことができる。
【0146】
前記圧力を介して、たとえばキャビティ群の緩衝作用に対して影響を与えることができる。キャビティ9内の内圧が高ければ高いほど、緩衝傾向は小さく、工具シャンクの締め付け固定は堅固になる。この場合圧力付与器は、前述の実施形態の範囲内で述べたように構成されていてよく、たとえば六角穴を介して操作されるねじであってよい。このねじは、雌ねじを備える結合部分にねじ込まれ(図には図示せず)、そのねじ込み深さによって、互いに連通しあっているキャビティ9から成るネットワーク内の圧力を決定する。
【0147】
オプションで、この圧力を介して、たとえば工具を締め付け固定するために使用するスリーブ部分3と工具シャンクとの間のプレス力に影響を与えることもできる。この場合キャビティは次のようなサイズで配置されていなければならず、すなわちこれらキャビティが内圧に曝されたときに半径方向内側に作用する圧力を生じさせるようなサイズで配置されていなければならない。
【0148】
キャビティを適当に配置し構成すると、本実施形態の範囲内で説明しているようなキャビティを、収縮解除を容易にしたり、或いは、工具シャンクを取り外したりするのを可能にさせるためにも使用することができる。これを達成するには、キャビティは次のように配置し構成されねばならず、すなわちこれらキャビティが適当な内圧に曝されたときにスリーブ部分の内部または工具受容部を拡大させるように、配置し構成されねばならない。この点も非常に簡単に可能であり、すなわち少数のキャビティが設けられているのではなく、20個以上のキャビティから成るキャビティ群、好ましくは30個以上のキャビティから成るキャビティ群が設けられ、これらのキャビティが、一体に製造された工具保持具または工具保持具の一体に製造されたスリーブ部分の組み込み構成部材であり、理想的には1つまたは複数の圧力付与器を介してキャビティが同期的に適宜な内圧に曝されるような場所であれば、非常に簡単に可能である。なぜなら、キャビティはすべて互いに連通しているからである。
【0149】
図29は、本発明の全く特殊な他の実施形態を示している。ここに示した実施形態でも、本体2とスリーブ部分3とは最初から共通の成形によって一体的に生成されている。しかし、この実施形態では、冒頭で述べたようにこれらを複数の部材から構成する実施形態も難なく可能である。好ましくは、ここでも、キャビティ9は前記実施形態の1つに従って組み込まれて形成されているが、キャビティを設けることは本発明のこの実施形態にとって強制的なものではない。
【0150】
この実施形態の特徴は、スリーブ部分の外周が、ここでは黒で示したインダクション部分を有していることである。黒で示したインダクション部分は、スリーブ部分の表面から見て、好ましくは0.3mmないし1.5mm、理想的には少なくとも0.5mmないし最大で1.5mmだけ半径方向内側へ延在している。インダクション部分は電気的かつ磁気的に誘導性がある金属から成り、それ故交流磁場の影響で迅速に加熱される。インダクション部分は、たとえば追加的にスリーブ部分3の外側に載置されてそこに固定されるスリーブではない。インダクション部分はスリーブ部分の組み込み構成部材であり、スリーブ部分とともに成形されたものであり、それ故スリーブ部分の内側部分とアプリオリに一体結合して熱伝導により熱交換を行う。インダクション部分は、回転軸線の方向に見て、
図29が示すよりも短いが、他手軸線方向においては工具受容部4と少なくともほぼ同じ延在距離を有しているべきである。
【0151】
好ましくは、少なくとも、スリーブ部分の、ハッチングで示した内側部分、すなわちインダクション部分の内側にある部分は、黒で示したインダクション部分の金属よりも大きな熱膨張係数を有する金属から成っている。この場合、この部分に対し使用される金属が電気的および/または磁気的誘導性を有しておらず、或いは、インダクション部分の金属よりもかなり小さな電気的および/または磁気的誘導性を有しているにすぎない。このような内側部分の利点は、インダクションコイルによってインダクション部分に生成された熱がこの内側部分に供給されると、該内側部分が非常に迅速かつ広範囲に膨張することである。
【0152】
有利な実施形態の範囲内では、工具保持具の残りの部分は、インダクション部分および該インダクション部分の内側にあるスリーブ部分の内側部分とアプリオリに一体に結合されているが、しかし少なくとも局所的に別の特性を有する金属材料から成っており、たとえば前記残りの部分を局所的に限定して浸炭または硝酸処理し、このようにして、たとえばこれによってインダクション部分の材料特性を損なわせることなく、特別な臨界個所を肌焼または硝酸処理することができる。
【0153】
【0154】
この実施形態では、工具保持具はコレットチャックとして構成されている。それ故工具保持具は、保持フランジ6を備えた本体2から成っている。保持フランジ6には、本体2の付加部分8が接続している。付加部分8は、スリーブ部分によって形成される締め付け部分3へ移行している。スリーブ部分は工具受容部4を有し、工具受容部4は部分的に円錐状着座28を形成し、円錐状着座28には、工具保持具の他の構成部材を形成している本来のコレットチャック30を、工具受容部の他の構成部材を形成している継ぎナット29を用いて圧入することができる。この圧入は公知の態様で行い、すなわちコレットチャックをその円錐状着座に挿入したときに、コレットチャックのアームを半径方向内側へ閉じ、工具シャンクを摩擦でその間で締め付けるようにして行う。
【0155】
この実施形態では、好ましくは、本体2も締め付け部分3も、そしてオプションで工具保持具に属する継ぎナット29も、本発明の意味でキャビティを有し、たとえば
図32が示すようなキャビティを有する。必要な場合には、コレットチャックにも、或いはコレットチャックだけに本発明によるキャビティを備えさせ、このときこれらキャビティは、そのすべてまたは少なくとも大部分がコレットチャックのアーム内で同様にエンクレーブを形成する。
【0156】
これらすべてのキャビティに対しては、前記実施形態に対し述べたことが対応的に適用される。たとえば、
図32に示した実施形態の場合、キャビティは、
図3ないし
図5の第2実施形態を有しているキャビティに対し述べたように構成されている。これとは択一的に、キャビティを、
図1の第1実施形態を用いて説明したように構成してもよく、或いは、他の実施形態の1つを用いて説明したようにも構成してよい。
【0157】
この実施形態の特徴は、締め付け部分3を形成しているスリーブ部分以外に、好ましくは、本体に理想的には2種類のキャビティを備えさせてもよく、すなわちいわゆる「多孔部を形成する」キャビティを備えさせてもよい。このようなキャビティは、好ましくは、前述の実施形態の1つを用いて説明したキャビティのように構成されていてよく、特に合目的には、比較的大きく、
図22aないし
図25bを用いて説明したように構成されている付加的なキャビティを備えさせてもよい。
【0158】
締め付け部分3を形成しているスリーブ部分内に設けられているキャビティは、回転軸線の方向に見て、好ましくはスリーブ部分の全長以上にわたって延在し、理想的には、継ぎナット29を引き締めるためのねじ山の半径方向下方領域にも設けられている。キャビティは、上述したように緩衝の改善のための用をも成している。
【0159】
さらに、キャビティは、この実施形態でも、次のような数量で(本体1とスリーブ部分3との間の部分領域には、半径方向においてたとえば少なくとも8層の、図では10層のキャビティが設けられ、これらのキャビティは互いに同軸の仮想の円環上に配置されている)設けられ、すなわちこの工具保持具に対しても操作を改善する軽量化が生じるように、好ましくは一貫して中実材料から成っている対応する工具保持具に比べて少なくとも10%の、より好ましくは少なくとも20%の軽量化が生じるように、設けられている。
【0160】
すでに述べたように、継ぎナット29も、前述した実施形態のキャビティを備えていてよい。これらのキャビティもエンクレーブとして形成されている。継ぎナットの次のような部分にも、または、次のような部分にのみキャビティを設けるのが合目的であり、すなわち内周部に継ぎナットのねじ山を形成し、このねじ山が工具保持具に設けた対向ねじ山と相互作用するような前記部分にも、または、次のような部分にのみキャビティを設けるのが合目的である。このようにして、継ぎナットは、回転軸線方向の締め付け力を著しく損失することなく、半径方向において「より柔軟」になる。従って継ぎナットは「硬い」ベルトではなく、該継ぎナットがその内面に円錐部を形成している個所でスリーブ部分を撓まないように取り囲み、これによって、締め付け部分3内のキャビティにより合目的に可能になる、緩衝にとって重要なスリーブ部分の微細動を過度に阻止する。
【0161】
同じ理由から、継ぎナットを次のような個所にも(または、これよりも有利さに欠けるが、次のような個所だけに)キャビティを備えさせるのが合目的であり、すなわちその個所とは、継ぎナット29の、実質的に縦軸線方向に延在している部分が、該継ぎナットの、実質的に半径方向に延在している部分へ移行し、該半径方向に延在している部分によって継ぎナットがコレットチャックに作用するような個所である(
図32を参照)。
【0162】
さらに、コレットチャック30に、エンクレーブを形成し、前述したような実施形態に対応して構成されるキャビティを備えさせるのが合目的である。このようなキャビティが、スリットによって互いに仕切られているコレットチャックのアーム内に配置されていれば、キャビティはもちろん周方向に「貫通する」のではなく、該当するアームと同じ幅だけ周方向に延在し、その結果キャビティはその内部でエンクレーブを形成する。
【0163】
【0164】
この実施形態では、工具保持具はカッターヘッド受容具として構成されている。なお図面には、一例としてカッターヘッド33を備えた工具受容具がそれぞれ図示されている。
【0165】
それ故工具保持具は、保持フランジ6を備えた本体2から成っている。保持フランジ6には、ここではさらに本体2の付加部分8が接続している。付加部分8は締め付け部分3へ移行し、締め付け部分3はここではスリーブ部分によって形成され、スリーブ部分はその外周にカッターヘッド33のための工具受容部4を形成している。ここでは、スリーブ部分の内部は雌ねじを担持しており、この雌ねじに保持ねじ31をねじ込むことができ、保持ねじ31はカッターヘッド33をその回転軸線に対し平行な方向で固定させる。
図38と
図39から最もよく認められるように、本体2はさらに形状拘束要素32を備え、形状拘束要素32はここでは、本体に圧入され、適当な嵌合面または作用面を備えたピンとして実施され、前記嵌合面または作用面を介してカッターヘッド33が周方向に連行(駆動)される。
【0166】
この実施形態でも、締め付け部分3は本発明の意味でのキャビティを有し、すなわちたとえば
図39から見て取れるキャビティを有している。好ましくは、本体2も、或いは、本体2のみがキャビティを有していてもよい。
【0167】
これらのキャビティすべてに対して、前述の実施形態に対し述べことが対応的に適用される。たとえば、キャビティは、
図3ないし
図5の第2実施形態を有する
図38によって示した実施形態でキャビティに対し述べたように構成されている。しかしこれとは択一的に、キャビティをたとえば
図1の第1実施形態を用いて説明したように、或いは、他の実施形態を用いて説明したように構成してもよい。
【0168】
この実施形態の特徴は、締め付け部分3を形成しているスリーブ部分以外に、好ましくは、本実施形態の1つ前の実施形態で述べたように、本体も理想的には2種類のキャビティを備えていることである。
【0169】
締め付け部分3を形成しているスリーブ部分に設けられたキャビティは、回転軸線の方向に見て、好ましくは締め付け部分の全長にわたって延在している。キャビティは、ここでも、前述したように緩衝作用の改善の用を成している。
【0170】
その他の点では、この種の工具保持具に対しては、カッターヘッド受容部の構成の点で次のような構成が特に好ましく、すなわち保持フランジ6と締め付け部分3との間にある本体の付加部分8が、多数の(少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個)のキャビティを備え、その結果この領域の大部分が緩衝に大きく寄与する多孔構造を有しているのが、特に好ましい。
【0171】
一般的にいえば、ここでもキャビティは好ましくは次のような多数の数量で設けられ(本体2とスリーブ部分3との間の部分領域には、半径方向においてたとえば8層の、図では15層のキャビティが設けられ、これらのキャビティは互いに同軸の仮想の円環上に配置されている)、すなわちこの工具保持具に対しても、操作を改善させる軽量化が得られるように、好ましくは一貫して中実材から成っている対応する工具保持具に比べて少なくとも10%の割合で、より好ましくは少なくとも20%の割合で、設けられている。
【0172】
以上説明した実施形態に関連して、ごく一般的にいえば、請求の範囲とは独立に、または、請求の範囲に加えて、本発明によるキャビティを備えているものとしてのコレットチャックに対しても権利保護が要求される。合目的にはこのコレットチャックは前述したように構成され、特に、コレットチャックの特定の周辺部を示している図面からもその構成が明らかである。なお、キャビティは有利には工具保持具に対し前述したように構成されている。
【0173】
個々の実施形態の説明に加えて、ごく一般的に述べておくと、請求の範囲に加えて、または、請求の範囲とは独立に、コレットチャックを駆動するための作用面を備えた継ぎナットに対しても独立した権利が要求され、この場合継ぎナットは、該継ぎナット内でそれぞれエンクレーブを形成する複数のキャビティを備え、キャビティは好ましくは工具保持具に対し前述したように構成されている。
【0174】
最後にごく一般的にいえば、後続の段落の1つまたは複数に挙げられている特徴を有する工具保持具またはこれを製造する方法の保護もまた望まれる。
【0175】
いずれの場合にも、請求項の1つまたは複数によって予め設定される特徴に加えて、構成要件の中に更なる特徴が存在する可能性があるという意味で、この保護は要求される。しかしまた、「好ましくは請求項のいずれか1つに記載の」および/または「方法」と記載されている箇所では、然るべき時に、今まで求めていたメインクレームの特徴に依存しない別なメインクレームのための基礎として望まれる構成要件のセットである、という意味でもこの保護は要求される。
【0176】
以下において「前述の段落」が引き合いに出される限りは、これは、この文章に続く段落についての関連性を意味する。
【0177】
前記少なくとも1つのキャビティ(9)が液体で充填され、少なくとも1つの前記外側結合通路(20)に、好ましくは外部から操作される圧力付与器が組み込まれ、該圧力付与器を用いて前記液体に圧力を作用させることを特徴とする、現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0178】
前記キャビティ(9)が3次元のキャビティ群を形成し、該キャビティ群は、半径方向において内側から外側へ向けて複数のキャビティ(9)が相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置され、同時に前記回転軸線(R)の方向において複数のキャビティが相前後して配置され、好ましくは互いに整列して相前後して配置されているように構成されていることを特徴とする、前述の段落および/または現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0179】
少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個のキャビティ(9)が設けられ、これらキャビティは、好ましくはそのすべてが、一体の前記締め付け部分または一体の前記スリーブ部分(3)の内部にあって、内側結合通路を介して互いに連通し、且つ少なくとも1つの外側結合通路(20)を介して圧力付与器と結合し、該圧力付与器が前記キャビティ(9)を充填している前記液体に圧力を付与することを特徴とする、前述の段落の少なくとも1つおよび/または現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0180】
前記工具保持具(1)が、該工具保持具(1)の、金属層材料から成っている領域に加工されている、少なくとも1つの冷媒供給管(11)を有し、該冷媒供給管が、前記工具保持具(1)の、締め付けられる工具側の端面から、前記本体(2)内まで延在して、好ましくは該本体によって取り囲まれている内部空間に開口し、前記冷媒供給管は、前記工具保持具(1)の外表面から該工具保持具(1)内に穿設された孔によって形成される枝を有することなく、少なくとも1か所でその延在方向を変化させることを特徴とする、好ましくは前述の段落の少なくとも1つおよび/または好ましくは現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0181】
前記冷媒供給管(11)が、ほぼ半径方向に延在している少なくとも1つの部分を有していることを特徴とする、前述の段落の少なくとも1つおよび/または現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0182】
前記工具保持具(1)がその内部に少なくとも1つの形状拘束要素を有し、該形状拘束要素は、前記工具保持具(1)の金属層材から成る領域の組み込み構成部材であり、且つ次のように構成されており、すなわち実質的に摩擦により前記工具保持具(1)によって固持される工具シャンクとの形状拘束的相互作用によって、前記回転軸線(R)に沿った方向における工具受容部からの前記工具シャンクの不慮の引き抜きを阻止するように、構成されていることを特徴とする、好ましくは前述の段落の少なくとも1つおよび/または好ましくは現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0183】
前記工具保持具(1)が少なくとも1つの冷媒貯留室(22)を有し、該冷媒貯留室が特にバッフル板(23)によって画成され、該バッフル板が、前記工具保持具(1)の金属層材から成る領域の組み込み構成部材であり、前記バッフル板(23)は、前記回転軸線(R)に沿った方向に見て、好ましくは少なくとも1つの冷媒供給管(11)の少なくとも1つの開口部を覆っていることを特徴とする、好ましくは前述の段落の少なくとも1つおよび/または好ましくは現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具(1)。
【0184】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体に結合され、工具シャンクを固定するための、好ましくは収縮解除するための締め付け部分(3)とを備え、前記工具保持具(1)の第1の部分が鍛造金属または鋳造金属から成っている、好ましくは上記請求項のいずれか一つに記載の工具保持具(1)において、前記工具保持具(1)の第2の部分が金属層材から成り、前記第1の部分が好ましくは前記工具保持具(1)の前記本体(2)であり、前記第2の部分が好ましくは前記工具保持具(1)の前記締め付け部分(2)であり、或いはその逆であることを特徴とする、好ましくは前述の段落の少なくとも1つおよび/または好ましくは現請求項のいずれか1つに記載の工具保持具。
【0185】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体に結合され、工具シャンクを固定するための、特に収縮固定させるための締め付け部分(3)とを備えた工具保持具(1)を製造する方法であって、第1の部分を、好ましくは前記本体(2)を、回転部材として中実材(Vollen)から、或いは、予鍛造または予鋳造したブランクから、好ましくは工具鋼から製造するようにした前記方法において、第2の部分を、好ましくは、理想的にはスリーブ部分として形成される締め付け部分(3)を、個々の金属層から構成し、該個々の金属層を、前記締め付け部分(3)が所定の形状を有するまで互いに順次連続して生成させることを特徴とする方法。
【0186】
前記第1の部分を形成する前記金属層を、異種金属または異種合金の混合物から溶融させることを特徴とする、前述の段落に記載の方法。
【0187】
前記金属層の組成を局所的に多様に変化させ、すなわち前記金属層が局所的に特別な機械的特性および/または電気特性および/または磁気特性を有するように変化させることを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0188】
前記工具保持具(1)を製造する前記方法を次のように行い、すなわちスリーブ部分の形態で実施された締め付け部分(1)が、前記スリーブ部分の外周を形成する外側部分であって、該外側部分が金属材から成り、該金属材内に、交流磁場の作用で誘導的に熱を生成させることができる前記外側部分と、該外側部分と一成分的に結合され、工具受容部を形成している内側部分とを有し、該内側部分が金属材から成り、該金属材が、交流場の作用で、前記外側部分の材料よりも弱く加熱され、且つ前記外側部分の材料よりも大きな熱膨張を有するように、前記方法を行なうことを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0189】
前記第2の部分を、好ましくは個々の前記層の生成の終了後に、組織変化させる熱処理に曝すことを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0190】
鍛造金属または鋳造金属から成っている前記工具保持具(1)の前記第1の部分を基体として使用し、該基体上に、金属層材から成る前記工具保持具(1)の前記第2の部分を順次塗布することを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0191】
前記第2の部分または前記スリーブ部分を、前記熱処理を終了した後にはじめて前記本体(2)と結合させ、特に溶着させることを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0192】
前記第2の部分または前記スリーブ部分(3)に、前記個々の層の生成を終了後に、好ましくはこれに続く熱処理の後に、回転加工および/または円筒研削および/または内面研削を施し、前記加工を理想的には前記本体と前記スリーブ部分とを結合させた後にはじめて行うことを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0193】
前記工具受容部を、前記個々の層の生成終了後に、好ましくはこれに続く熱処理の後に、摩擦加工および/または研削加工することを特徴とする、方法について記載している少なくとも1つの前述の段落に記載の方法。
【0194】
工具保持具(1)を工作機械の主軸に連結させるための本体(2)と、該本体に結合され、工具シャンクを熱でまたは液圧で締め付け固定するためのスリーブ部分(3)とを備えた工具保持具(1)において、前記スリーブ部分(3)の外周がインダクション部分を有し、該インダクション部分が電気誘導性および磁気誘導性の金属から成り、前記スリーブ部分(3)の、前記インダクション部分の内側にある部分が、前記インダクション部分を構成している金属よりも大きな熱膨張係数を有する金属から成り、前記インダクション部分と、前記スリーブ部分の、前記インダクション部分の内側にある前記部分とが、両者とも前記スリーブ部分(3)の組み込み一体構成部材である周壁であることを特徴とする工具保持具(1)。
【0195】
一体に成形された前記部分が金属層、金属ゾーン、または金属点のみから成り、不純物のランクを介して出てくる他の構成成分を全く含んでいない、または少なくとも含んでいないことを特徴とする、請求項のいずれか一つおよび/または前述の段落に記載の工具保持具。
【0196】
一体に成形された前記部分が、完全にまたは部分的に、少なくとも1つの合金および特に形状記憶合金から成っていることを特徴とする、請求項のいずれか一つおよび/または前述の段落に記載の工具保持具。
【0197】
一体に成形された前記部分が、少なくとも、金属母材または金属粉から製造され、該金属母材または金属粉が、少なくとも1つの非金属材料の、材料特性に影響する成分を含んでいることを特徴とする、請求項のいずれか一つおよび/または前述の段落に記載の工具保持具。
【符号の説明】
【0198】
1 工具チャック
2 本体
3 スリーブ部分
4 工具受容部
5 連結部分
6 操作システム用保持フランジ
7 該当なし
8 付加部分
9 キャビティ
10 安定筒状部分
11 冷媒供給管
11.1 冷却供給管の第1の部分
11.2 冷却供給管の第2の部分
11.3 冷却供給管の第3の部分
12 細条部
13 工具受容部の溝
14 排出部
15 突出部またはスクリューリブ
16 結合管
17 ねじ山部分
18 栓
19 内側結合通路
20 外側結合通路
21 該当なし
22 冷媒貯留室
23 バッフル板
24 冷媒供給管の開口部
25 工具シャンク
26 環状間隙
27 スリット
28 円錐状座部
29 継ぎナット
30 コレットチャック
31 保持ねじ
32 形状拘束要素
33 カッターヘッド
R 回転軸線
W 安定筒状部分の最小壁厚
WK キャビティと外側端雌面との間の端面側外壁の最小壁厚
WU キャビティを外周から切り離している壁部分の最小壁厚
R1 複数の溝を配置した第1の仮想の筒体の半径
R2 複数の溝を配置した第2の仮想の筒体の半径
R3 複数の溝を配置した第3の仮想の筒体の半径
K 2分割実施形態における本体とスリーブ部分との間の接触面