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特許7194731機械的なサンプリングピペットのための機能化されたアクセサリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】機械的なサンプリングピペットのための機能化されたアクセサリ
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 1/00 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020519039
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 FR2018052899
(87)【国際公開番号】W WO2019097191
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】1760945
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513310243
【氏名又は名称】ジルソン エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ マーク,フレデリック
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/050781(WO,A1)
【文献】特表2019-507616(JP,A)
【文献】実開昭54-033182(JP,U)
【文献】国際公開第2014/111336(WO,A1)
【文献】特表2015-509769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01N 1/00- 1/44
A61M 5/00- 5/34
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動の機械式収集ピペット(1)のためのアクセサリ(2)であって、ハンドルを形成しているピペット上部本体(4)の周囲に可逆的に取り付けられ得る前記アクセサリが、アクセサリ本体(36)と、当該アクセサリ本体を前記ピペット上部本体(4)に取り付けるための取り付け手段(60,62,66,70,74,74’)とを含み、
また、前記アクセサリ(2)が、前記アクセサリ本体及び/又は前記取り付け手段に取り付けられる以下の要素、すなわち、
a)電源モジュール(82)と、
b)当該電源モジュール(82)により電力供給される少なくとも1つのセンサ(83,88,91,93)と、
をさらに含み、
前記アクセサリ(2)が、さらに、以下の要素、すなわち、
c)前記センサにより取得されたデータを表示するためのモジュール(90)と、
d)前記センサにより取得されたデータに従って作動されるアラームモジュール(94)と、
e)前記アクセサリ(2)が一方で前記センサと通信し、他方で、前記ピペットから離れて配置された情報処理装置(95)と通信することを可能にする無線通信モジュール(96)と、
のうちの少なくとも1つのモジュールを含み、
前記アクセサリ本体(36)が、ピペッティング操作中に操作者の人差し指が前記ピペット(1)を保持するための軸方向ストップを形成するために前記アクセサリ(2)に設けられた人差し指支持フック(42)を含み、前記人差し指支持フック(42)が、前記取り付け手段の一部であるトラフ(66)を画成し、当該トラフが、前記ピペット上部本体(4)を形成している前記ハンドル上に設けられた人差し指支持フック(6)を受け入れるためのものであることを特徴とする、アクセサリ(2)。
【請求項2】
前記アクセサリ(2)が、さらに、前記アクセサリ本体(36)及び/又は前記取り付け手段に取り付けられる以下の要素、すなわち、
f)前記センサにより取得されたデータを処理するためのマイクロコントローラ(84)と、
g)前記ピペッティング操作をタイムスタンプするための、及び/又はメンテナンス作業を監視するためのリアルタイムクロック(86)と、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサが、以下の要素、すなわち、
-加速度計(93)と、
-力センサ(91)と、
大気圧センサ及び周囲空気温度センサを含む1以上の環境センサ(88)と、
-前記ピペットにより収集された試料の温度を測定するための赤外線センサ(83)と、のうちの少なくとも1つに対応することを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項4】
前記アラームモジュール(94)が、音、及び/又は光、及び/又は触覚型のモジュールであることを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項5】
前記無線通信モジュール(96)がブルートゥース型のモジュールであることを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項6】
前記人差し指支持フック(42)が、前記要素a)~g)の少なくとも1つを担持していることを特徴とする、請求項に記載のアクセサリ。
【請求項7】
前記人差し指支持フック(42)が、互いに取り付けられたフック上部(52)とフック下部(54)とを用いて作製され、前記フック上部(52)と前記フック下部(54)との間に、組み立て時に前記トラフ(66)が画成されることを特徴とする、請求項に記載のアクセサリ。
【請求項8】
前記アクセサリ本体(36)が、また、前記ピペット上部本体(4)に沿って軸方向に延在する中央部分(40)も含み、且つ、目視窓を形成している開口部(50)を有することを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項9】
前記中央部分(40)が、前記要素a)~g)の少なくとも1つを担持していることを特徴とする、請求項に記載のアクセサリ。
【請求項10】
前記中央部分(40)が、前記ピペット上部本体(4)のほぼ全長にわたって延在するようになっていることを特徴とする、請求項に記載のアクセサリ。
【請求項11】
前記アクセサリ本体の前記取り付け手段が、前記ピペット上部本体(4)を取り囲むためのリング(74)、及び/又は、このピペット上部本体を部分的に取り囲むためのクリップ(74’)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクセサリ。
【請求項12】
手動の機械式収集ピペット(1)と、請求項1に記載の、ピペット上部本体(4)を形成しているハンドルの周囲に可逆的に取り付けられるためのアクセサリ(2)と、を備えたキット(100)。
【請求項13】
前記ピペットが、前記アクセサリ(2)内に設けられた前記無線通信モジュール(96)と通信することが可能である少なくとも1つの追加のセンサ(32)を備えたピペッティングノブ(30)を含むことを特徴とする、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記ピペットが、収集されるべき量を表示するための装置(14)を含み、当該装置(14)が、前記ピペット上部本体(4)上に設けられた窓(12)を通して目視可能であり、且つ、前記ピペット上に組み付けられた状態において、前記アクセサリ(2)の前記中央部分(40)の前記開口部(50)が前記ピペット上部本体(4)の前記窓(12)に一致することを特徴とする、請求項と組み合わされた請求項12に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器などに入った液体を収集及び分注するための収集ピペット(ラボラトリピペットとも、又は、液体移動ピペットとも称される)の分野に関する。
【0002】
本発明によるピペットは、より具体的には、手動の機械式収集ピペットである。これらのピペットは、液体の収集及び分注操作中に操作者が把持するようになっている。これらの操作は、制御ノブに操作者の親指を介して作動圧力を加えることで制御ノブを動かすことにより行われる。この作動圧力はピペットピストンに伝達され、このピストンの変位により液体が吸引又は分注される。情報として、機械式ピペットが、いわゆる電子ピペットとは対照的であり、電子ピペットにおいては、ピストンの運動が操作者の労作により発生するのではなく、ノブに圧力を加えるピペット操作者からのコマンドを受信するモータにより発生されることに留意されたい。
【背景技術】
【0003】
ピペットの寿命及びピペットを使用して行われる操作のトレーサビリティ(具体的には、メンテナンスフォローアップ)に関するニーズが実際に益々増えている。また、リアルタイムのピペッティング補助のニーズも増えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのニーズを満たそうとするために、手動の機械式ピペットには、一般的に、その設計の大幅な変更が、新しい機能を組み込むために必要である。しかし、設計の改良には長い時間がかかり、費用高であることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
機械式ピペットの有意な再設計の欠点を発生させずに上述のニーズを少なくとも部分的に満たすために、発明の1つの目的は、手動の機械式収集ピペットのためのアクセサリであり、ハンドルを形成しているピペット上部本体の周囲に可逆的に取り付けられ得る前記アクセサリが、アクセサリ本体と、当該アクセサリ本体を前記ピペット上部本体に取り付けるための取り付け手段とを含み、また、前記アクセサリは、前記アクセサリ本体及び/又は前記取り付け手段に取り付けられる以下の要素、すなわち、
a)電源モジュールと、
b)当該電源モジュールにより電力供給される少なくとも1つのセンサと、も含み、さらに、以下の要素、すなわち、
c)前記センサ(複数可)により取得されたデータを表示するためのモジュールと、
d)前記センサ(複数可)により取得されたデータに従って作動されるアラームモジュールと、
e)前記アクセサリが一方で前記センサ(複数可)と通信し、他方で、前記ピペットから離れて配置された情報処理装置と通信することを可能にする無線通信モジュールと、のうちの少なくとも1つのモジュールも含む。
【0006】
従って、本発明は、ピペットの寿命及びピペットを用いて行われる操作のトレーサビリティを保証するための、シンプルで効率的且つ安価なレスポンス(cheap response)を提供し、且つ/又は、これにリアルタイムのピペッティング補助も提供する。
【0007】
こうして、本発明によるアクセサリは、ハンドルを形成しているピペット上部本体の周囲に、ちょうどシェルのように固定されるように設けられる。従って、前記アクセサリは、既存の機械式ピペットの全在庫に、これらをリーズナブルなコストで簡単に機能化するために容易に適合され得る。本発明によるこのアクセサリを用いれば、一般的には電子ピペット専用である機能を、機械式ピペットが有利に有することが可能である。
【0008】
本発明は、さらに、以下の任意選択的な特性の少なくともいずれかを、単独で、又は組み合わせて有する。
【0009】
また、前記アクセサリは、前記アクセサリ本体及び/又は前記取り付け手段に取り付けられる以下の要素、すなわち、
f)前記センサ(複数可)により取得されたデータを処理するためのマイクロコントローラと、
g)前記ピペッティング操作をタイムスタンプするための、及び/又はメンテナンス作業、例えば、行われるべき次のキャリブレーションを監視するためのリアルタイムクロックと、のうちの少なくとも1つも含む。
【0010】
さらに、前記少なくとも1つのセンサは、以下の要素、すなわち、
-加速度計と、
-力センサと、
-1以上の環境センサ、特には大気圧センサ及び周囲空気温度センサと、
-前記ピペットにより収集された試料の温度を測定するための赤外線センサと、のうちの少なくとも1つに対応する。
【0011】
もちろん、本発明の範囲から逸脱せずに、トレーサビリティ及び/又はピペッティング補助機能を強化するためにさらなるセンサをアクセサリに埋め込むことが可能である。
【0012】
好ましくは、前記アラームモジュールは、音、及び/又は光、及び/又は触覚型のモジュールである。
【0013】
好ましくは、前記無線通信モジュールは、ブルートゥース型のモジュールである。
【0014】
前記アクセサリ本体は、ピペッティング操作中に操作者の人差し指が前記ピペットを保持するための軸方向ストップを形成するために前記アクセサリに設けられた人差し指支持フックを含み、当該フックは、好ましくは、前記取り付け手段の一部であるトラフを画成し、当該トラフは、ピペット上部本体を形成している前記ハンドル上に設けられた人差し指支持フックを受け入れるためのものである。しかし、前記アクセサリがこのようなフックを組み込まなくてもよく、本発明の範囲から逸脱せずに、前記アクセサリが前記ピペット上部本体の前記フックの下に配置されてもよい。
【0015】
好ましくは、前記人差し指支持フックは、前記要素a)~g)の少なくとも1つ、及び、好ましくはこのフックの下部に配置された力センサを担持している。
【0016】
好ましくは、前記人差し指支持フックは、互いに取り付けられた2つの別々の部品、特にはフック上部とフック下部とを用いて作製され、これらの2つの部品の間に、組み立て時に前記トラフが画成される。
【0017】
好ましくは、前記アクセサリ本体は、また、前記ピペットの前記上部本体に沿って軸方向に延在する中央部分も含み、且つ、好ましくは、目視窓を形成している開口部を有する。
【0018】
前記中央部分は、前記要素a)~g)の少なくとも1つ、好ましくは電源モジュールを担持している。
【0019】
前記中央部分は、前記ピペット上部本体のほぼ全長にわたって延在するようになっており、好ましくは1cm~2cmの幅にわたり、且つ、好ましくは0.1cm~0.5cmの厚さにわたって延在するようになっている。
【0020】
最後に、前記アクセサリ本体の前記取り付け手段は、前記ピペット上部本体を取り囲むためのリング、及び/又は、このピペット上部本体を部分的に取り囲むためのクリップを含む。
【0021】
本発明の別の目的は、手動の機械式収集ピペットと、ピペット上部本体を形成しているハンドルの周囲に可逆的に取り付けられるためのアクセサリと、を備えたキットである。
【0022】
好ましくは、前記ピペットは、前記アクセサリ内に設けられた前記無線通信モジュールと通信できる少なくとも1つの追加のセンサを備えたピペッティングノブを含む。
【0023】
最後に、前記ピペットは、収集されるべき量を表示するための装置を含み、当該装置は、前記ピペット上部本体上に設けられた窓を通して目視可能であり、前記ピペット上に組み付けられた状態において、前記アクセサリの前記中央部分の前記開口部が前記ピペット上部本体の前記窓に一致する。
【0024】
本発明のさらなる利点及び特徴が、以下の非限定的な詳細な説明において明らかになろう。
【0025】
この説明を、添付図面を参照しつつ行う。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】機械式ピペットと、ピペット上に取り付けられていない状態で示されているアクセサリとを含む、本発明の好ましい実施形態によるキットの斜視図である。
図2図1に示したキットの、アクセサリがまだ取り付けられていない状態の側面図である。
図3図1と類似の、アクセサリがピペット上に取り付けられた状態の図である。
図4図3の線IV-IVに沿った断面図である。
図5図1図4に示したアクセサリのフックの上部の底面図である。
図6図1図5に示したキットの、アクセサリをピペット上に組み付けたときの斜視図である。
図7A】ピペットアクセサリのその他の好ましい実施形態を示す。
図7B】ピペットアクセサリのその他の好ましい実施形態を示す。
図7C】ピペットアクセサリのその他の好ましい実施形態を示す。
図7D】ピペットアクセサリのその他の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1図5を参照すると、本発明の好ましい実施形態によるキット100が示されている。キット100は、自律的に操作可能な手動の機械式収集ピペット1を含む。また、キットは、ピペットに備えるアクセサリ2も含み、トレーサビリティ及び/又はリアルタイムピペッティング補助機能を提供する。アクセサリ2は、ピペット1に取り付けられたときに自律的に動作するように提供される。
【0028】
最初にピペット1に関して説明すると、ピペット1は、ピペッティング操作中に操作者が把持するためのハンドルを形成している上部本体4を含む。このピペット上部本体4は、トップ部に、半径方向外向き突出部としての人差し指支持フック6を有する。上部本体4は中央部分に窓12を有し、この窓12を通して、操作者は、上部本体4内部に設置された、収集されるべき容量を表示するための装置14により伝達される情報を読むことが可能である。この装置14は、優先的には、先行技術により公知の、ギヤ(歯車)を有する機械的装置である。
【0029】
ピペット底部8が、ハンドル形成本体4上に、クランプリング10を介して取り付けられている。またこの底部8にチャンバ16も設けられており、チャンバ16を通してピストン(図示せず)が、ピペッティング操作中に軸方向にスライドするようになっている。
【0030】
ピペットは、さらに、排出ノブ22をピペットのトップ部にて露出させるように上部本体4を通過しているエジェクタ20を含む。また、エジェクタ20は下方に延在しており、エジェクタ20の排出端部24がチャンバ16の周りでスライドする。
【0031】
ピペットのトップ部にて、制御ロッド26が軸方向上方に突出している。制御ロッド26の上端に制御ノブ30が設けられており、好ましくは、以下に説明する少なくとも1つのセンサ32を備えている。このセンサ32は、図2に概略的に示されている。制御ロッド26はその下端にて、ピペットピストンの変位を、先行技術により公知の戻りばねシステムに関連付けて生じさせる。
【0032】
この機械式ピペット1に、アクセサリ2が可逆的に、より正確に言えば、ピペット上部本体4の周囲に取り付けられるようになっている。
【0033】
これを行うために、アクセサリ2は、アクセサリ本体36と、このアクセサリ本体36をピペット上部本体4に取り付けるための手段と、そしてこの自律的なアクセサリを機能化するための手段とを含む。
【0034】
最初に、このアクセサリの構造に関して説明すると、本体36は、この場合、ピペット上部本体4に沿って軸方向に延在するための中央部分40(本体36のほぼ全長にわたって延在する)と、中央部分40より上に配置された人差し指支持フック42とを含む。中央部分40は、幅狭の薄いストリップとして、ピペット上部本体4の、人差し指支持部6の軸方向下方延在部に位置する所定ゾーンに沿って延在する。
【0035】
非限定的な例として、ストリップ40の長さは3cm~10cmであり得、ストリップ40の幅は1cm~2cmであり得、ストリップ40の厚さは0.1cm~0.5cmであり得る。
【0036】
ストリップ40は中実であってよく、又は、優先的には、目視窓を形成している開口部50が設けられている。図3に示されている取り付け状態、すなわち、アクセサリをピペット上に組み付けた状態において、このアクセサリの開口部50は上部本体4の窓12と一致する。従って、開口部50が窓12にこのように重なることにより、操作者は、収集されるべき容量を表示するための装置14により伝達される情報を読み得る。
【0037】
そして、フック42は、互いに、好ましくはスナップ嵌めにより取り付けられた2つの別個の部品を用いて作製される。2つの別個の部品とは、フック上部(上側部分)52とフック下部(下側部分)54であり、フック下部54は、アクセサリ本体36の中央部分40と共に単一部品として作製され得る。部品54の下面56は軸方向ストップを形成しており、この軸方向ストップは、ピペッティング操作中にアクセサリが組み付けられたピペットを操作者の人差し指が保持するためのものである。
【0038】
スナップ嵌め連結を確実にするために、フック上部52の内面58に、半径方向下向きに突出した1以上の爪60が設けられている。これらの爪60は、フック下部54の内面64から上向きに突出しているその他の爪62と協働する。
【0039】
フック42は、その2つの部品52,54間に、アクセサリをピペットに取り付けるための手段の一体的部分であるトラフ66を画成している。図4においてより良好にみられるように、トラフ66は、実際にはその一部がピペットの人差し指支持フック6により占められており、人差し指支持フック6の遠位端71が爪60,62の全ての間に挟まれており、リング状突起70がフック上部52の内面58から下方に延在している。これらの部品のブロッキング連結を保証するために、爪60,62の全てと、人差し指支持フック6の遠位端71と、そしてこの端部と協働する環状突起70の一部とが、各々、相補的形状を有する面を有するように円弧の形状で形成されている。さらに、環状突起70は、ピペットの人差し指支持フック6の凹部ゾーン72に侵入している。また、アクセサリが取り付けられた状態でフック42がピペットのフック6に隣接することにより、このフック6がより長くされることが可能になり、これにより、より良好なエルゴノミクスを操作者に提供できることにも留意されたい。
【0040】
従って、トラフ66と、要素60,62,70とが、一緒に、アクセサリ2をピペット上部本体4に取り付けるための上側手段を形成する。これらの手段を完成するために、アクセサリに、その中央部分40の底部にて、ピペット上部本体4の下方部分を完全に取り囲むための取り付けリング74が設けられている。リング74はピペット上部本体4の下端を取り囲み、従って、この本体4の形状に対して相補的な形状を有する。好ましくは、両方の要素4と74との間には取り付けクリアランスのみが設けられ、リング74は、優先的には、アクセサリ本体36の中央部分40とフック下部54とを有する単一部品からつくられる。この点に関し、この単一部品は、優先的には、プラスチック材料、例えば、ポリプロピレンタイプ、又はその他の任意の射出可能なプラスチック材料からつくられる。取り付けられた状態で、リング74は、ピペットのクランプリング10のすぐ上に配置される。
【0041】
この構造で、アクセサリ2は、ピペットを機能化するためにコンポーネントが取り付けられ得る複数のゾーンを有する。これらのゾーンは、具体的には、フック42における第1ゾーン76、開口部50の上の第2ゾーン78、及び、この開口部50の下に位置する第3ゾーン80である。第1ゾーン76が、実際にはフック42内の複数の別々のサブゾーンにより形成され得て、これらの各々が1以上のコンポーネントを収容していることを明記しておく。同じことが第2ゾーン78及び第3ゾーン80にも当てはまる。
【0042】
好ましくは、コンポーネントは、これらの3つのゾーン76,78,80の各々に埋め込まれている。ここで、例示的な実施形態を、図1を参照しつつ説明する。しかし、本発明の範囲から逸脱せずに、異なるゾーンにおけるコンポーネントの分布が変更され得ることを明記しておく。
【0043】
まず、ゾーン80内に電源モジュール82が配置されており、ゾーン80は、また、ピペットにより収集された液体試料の温度を測定するための赤外線式センサ83も収容している。モジュール82は、例えば、単純な電池の形態である。
【0044】
また、アクセサリのセンサにより取得されたデータを処理するためのマイクロコントローラ84と、そして、ピペッティング操作及び/又はメンテナンス監視(例えば、行われるべき次のキャリブレーションの監視)操作のタイムスタンプのためのリアルタイムクロック86も具備されている。両方のコンポーネント84,86は、好ましくは、周囲空気温度センサ及び大気圧センサなどの1以上の環境センサ88と同様に、フックのゾーン76に配置される。これらのセンサは、アクセサリ2に埋め込まれた全てのその他の可能なセンサ及び他のコンポーネントと同様に、モジュール82により電力供給される。
【0045】
また、フックのゾーン76は、センサにより取得され、そしておそらくマイクロコントローラ84により処理されたデータを表示するためのモジュール90も収容している。このオプショナルの表示モジュールは、好ましくは、操作者が完全に読み取り可能なようにフック上部52上に配置される。
【0046】
また、図4に示されている力センサ91がフック下部54に装備され得る。操作者の人差し指によりこのフック下部54上で生じる反作用は、実際、ピストンの動きの精巧な追跡を可能にする。人差し指がこの部分54に加える各反作用値が、ピストンの戻りばねシステムの正確なたわみ量に相当し、そして、このたわみ量は、ピストンの吸引/分注ストロークに沿った正確な位置に相当する。例として、この力センサ91を用いて、ピストンがドレイン(排出)段階に達したことを判断すること、そしてそれより、これらのデータを使用して、アクセサリが装填されたピペットにより行われるピペッティング操作の回数をカウントすることが可能である。
【0047】
中間ゾーン78は、好ましくは、加速度計93を収容している。加速度計93は、1以上の検出(特には、収集コーン係合の検出、収集コーン排出の検出、コーン係合方法コンプライアンスの検出、ピペッティング中のピペット角度、又は、収集されるべき液体の吸引中のピペット安定性の監視も)を実行できる。
【0048】
また、フックゾーン76は、アラームモジュール94及び無線通信モジュール96も収容できる。モジュール94は、センサにより取得されたデータに従ってアラームを作動させるためのものであり、このアラームは、音及び/又は光であり、及び/又は触覚タイプである。無線通信モジュール96は、好ましくはブルートゥース又はWi‐fi型であり、そして、その設計は、アクセサリが、一方ではセンサと、他方ではピペットから離れて配置されたリモート情報処理装置と通信できるようになされている。この装置95は、タブレット、PC、スマートフォン型などの装置であり得、ピペッティング操作中にセンサにより提供されたデータから解釈された任意のイベントを記録する。例えば、ピペッティング操作中に測定された圧力値は情報処理装置に送信され、情報処理装置は、測定された圧力変動を時間の関数として表す曲線をリアルタイムで描く。得られた曲線を分析することにより、ピペッティング操作中の異常を検出でき、そして、おそらくアラームが、アラームモジュール94によりリアルタイムでトリガーされ得る。
【0049】
一般的に、無線通信モジュール96は、各センサにより提供された全ての情報を含むメッセージを装置95に送信し、装置95は、送信された情報を、現在のピペッティングプロトコルステップにおける期待される結果と比較する。さらに、情報処理装置95により収集された情報は照合確認される。情報処理装置が、プロトコルの実行において異常を検出した場合、情報処理装置は、アクセサリ2にエラー信号を、無線通信モジュール96を介して返信する。このエラー信号を受信したならば、アクセサリの関連モジュール94がアラーム信号を即座に生成する。このようにして、操作者は、異常に対して即座に、例えば、操作者(彼/彼女)のピペットの傾きを修正してプロトコルに準拠させることにより対応できる。
【0050】
さらに、現在の日付が次のメンテナンス又は制御の日付よりも後である場合、アラームが操作者に送信されて、ピペット及び/又はアクセサリを使用できないことを操作者に通知する。
【0051】
以上に列挙したアラーム(センサにより取得され、そして、情報処理装置95により中継された情報と比較される)は、ピペッティングプロトコルの実行の制御の強化を、操作者自身による確認を要求することなく可能にする。
【0052】
しかし、本発明が、センサによりピックアップされたデータが事前に遠隔情報処理装置に送信されずに単にディスプレイモジュール90に表示され、且つ/又は、専用モジュール94を介してアラームを発生させるようなアクセサリもまた含むことに留意されたい。
【0053】
フック下体54の表面56に配置された力センサ91のデータのサイクル数のカウント又はその他の使用に関して、これらのデータを、アクセサリ内で、及び/又は、無線通信モジュール96を介して処理装置95にて使用できる。
【0054】
さらに、この無線通信モジュール96は、アクセサリ2が、制御ノブ30に配置されたセンサ32(複数可)と通信することを可能にする。これらのセンサは、任意の性質のセンサであってよく、例えば、アクセサリに装備されるものとして上述した、且つ、ノブ30にオフセット配置されるような1以上のセンサであり得る。
【0055】
上述のアクセサリのコンポーネントは、慣用的な手段、例えば、接着、はんだ付け、ろう付け、オーバーモールドにより、或いは封入によってでも、アクセサリ本体36に取り付けられ得る。
【0056】
ここで図6を参照すると、アクセサリ2をピペット1に取り付けるときのキットが示されている。まず最初に、単一部品40,54の一部を、その取り付けリング74(図6には見えない)がピペット上部本体4を取り囲むように適切な位置に配置する。次いで、アクセサリ本体36の中央部分40をピペット本体4に押し付け、また、フック下部54を、このピペットの人差し指支持フック6に押し付ける。図6に示されているこの中間取り付け状態において、フック6の遠位端71が、フック下部54のスナップ嵌め爪62に接して配置される。
【0057】
次に、フック上部52を上方からもってきて、そしてアセンブリにスナップ嵌めする。これは、フック上部52の爪60をフック下部54の爪62に、フック上部52の環状突起70を人差し指支持部6の凹状ゾーン72内に差し込みながら協働させることにより行われる。
【0058】
最後に、図7A図7Dは、アクセサリ2のその他の実施形態を示す。これらの実施形態においても、先に記載したコンポーネントの全て又は一部が組み込まれる。
【0059】
これに関し、図7Aはアクセサリ2を示し、このアクセサリ2は、図1図6に示した第1実施形態の単一のフック42の構造に制約されている。しかし、このアクセサリ2は、アクセサリの機能化を目的とした多数のコンポーネントがその内部に埋め込まれ得るかさばる部品である。
【0060】
図7Bにおいて、フック42は、第1モード(実施形態)の一部である中央部分40のみにより完成されており、この部分40は、取り付け手段を有さず、単にピペット上部本体に押し付けられる。図7Cの例についても同様であるが、その中央部分が、開口部50に一体化するまで下方により長くされて延在している。
【0061】
図7Dの例は、アクセサリ2を取り付けるための下部手段の形態によってのみ第1実施形態と異なる。図7Dの例においては、取り付け手段は、もはや完全なリングによってではなく、ピペット上部本体を部分的取り囲むための不完全なリングとしてのクリップ74’によりつくられる。このクリップ74’は、このピペットの底部を分解する必要なくピペット上部本体に水平方向に挿入できるという利点を有する。
【0062】
また、本発明の範囲から逸脱せずに、アクセサリがフック42を有さなくてもよいことに留意されたい。
【0063】
もちろん、単に非限定的な例として以上に記載した、その範囲が添付の特許請求の範囲により定義される本発明に対し、当業者は様々な修正を提示できる。例えば、アクセサリは、窓50を形成する開口部50を有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ピペット
2 アクセサリ
4 上部本体
6 人差し指支持フック
9 力センサ
12 窓
30 制御ノブ
36 アクセサリ本体
40 中央部分
42 人差し指支持フック
50 開口部
60 爪
74 取り付けリング
82 電源モジュール
83,88,91,93 センサ
90 モジュール
94 アラームモジュール
95 情報処理装置
96 無線通信モジュール
100 キット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D