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特許7194737磁気パルスによりリングを管状部品に組み付ける方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】磁気パルスによりリングを管状部品に組み付ける方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/06 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B23K20/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020533805
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018085859
(87)【国際公開番号】W WO2019129575
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】1763207
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517100174
【氏名又は名称】エイディエム28・エスアーエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,エリック
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-038778(JP,B1)
【文献】特開昭60-008592(JP,A)
【文献】特開昭54-024245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングを管状部品(2)に組み付ける方法であって、前記管状部品(2)は、内面(21)および外面(22)を有する円筒壁(20)を備え、前記リング(3)および前記管状部品(2)は金属材料で構成されている、方法において、
当該方法は、
前記管状部品(2)の長手方向の一部分(23)にわたって、前記管状部品(2)の前記壁(20)の厚さを減少させることにより、前記長手方向部分(23)の周囲に台形のリセスを形成するステップであって、前記管状部品(2)の前記壁(20)の厚さを減少させることは、前記壁(20)の前記外面(22)から材料の層を除去することにより得られる、ステップと、
前記長手方向部分(23)の周りに前記リング(3)を配置するステップであって、前記リング(3)は、前記リセスに面して、前記管状部品(2)の前記リセスの形状に相補的な形状を有する内面(31)を有する、ステップと、
前記リング(3)がコイル(10)に面して配置されるように、前記コイル(10)の開口部に前記管状部品(2)/リング(3)・アセンブリを配置するステップと、
前記コイル(10)で発生させた磁気パルスによって、前記リング(3)を前記管状部品(2)に溶接するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記磁気パルス溶接ステップの後に、前記リング(3)の外面(32)が前記管状部品(2)の前記壁(20)の前記外面(22)と面一になるように、前記リング(3)の前記外面(32)から材料の層(35)を除去することを伴って、前記リング(3)を機械加工するステップを含む、請求項1に記載の組み付け方法。
【請求項3】
前記磁気パルス溶接ステップの後に、前記壁(20)の前記内面(21)が前記リング(3)の前記内面(31)と面一になるように、前記管状部品(2)の前記壁(20)の前記内面(21)から材料の層(25)を除去することを伴って、前記管状部品(2)の前記壁(20)を機械加工するステップを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の組み付け方法。
【請求項4】
前記磁気パルス溶接ステップの後に、前記壁(20)の前記内面(21)が前記リング(3)の前記内面(31)と面一になるように、前記管状部品(2)の前記壁(20)の前記内面(21)から材料の層(25)を除去することを伴って、前記管状部品(2)の前記壁(20)を機械加工するステップを含み、前記リング(3)の前記外面(32)を機械加工する前記ステップと、前記管状部品(2)の前記壁(20)の前記内面(21)を機械加工する前記ステップは、同時に実施される、請求項2に記載の組み付け方法。
【請求項5】
前記管状部品(2)の軸(XX’)における長手方向断面図による前記リセスの前記形状に対応した前記台形は、前記管状部品(2)の前記壁(20)の前記外面(22)において長辺を有するとともに、前記長辺に対向する短辺を有し、前記長辺と前記台形の一辺とで形成される各角度は、8°~20°の間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組み付け方法。
【請求項6】
前記リング(3)は銅で構成されており、前記管状部品(2)はステンレス鋼で構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の分野、より具体的には磁気パルス溶接の分野のものである。本発明は、リングを管状部品に組み付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の構築のような特定の産業分野では、いくつかの特定の構成部品の製造で、例えば銅である特定の材料で構成されたリングを、例えばステンレス鋼である異なる材料で構成された管状部品に組み付けることが必要となる。
【0003】
従って、このようにして得られたアセンブリは、リングに二重の機能を有する。
【0004】
一方で、銅製のリングがアセンブリの構造的脆弱性を示す限りにおいて、リングは、メカニカルヒューズ機能を有することができる。従って、アセンブリは、衝撃が発生した場合に、リングにおいて破断する傾向がある。
【0005】
他方で、銅製のリングは、例えば、管状部品に流れる流体の流量を制御または調整し、その流量に応じて増減させた電流を流すための、電気的接触機能を有することができる。銅は、実際に、ステンレス鋼よりも優れた導電体である。
【0006】
そのようなアセンブリを半田付けによって形成することが知られている。図1は、いかにしてリング5を半田付けによって管状部品4に組み付けることができるかを概略的に示している。図1は、管状部品4の長手軸XX’における断面図で示している。
【0007】
リング5の内径d51は、管状部品4の内径d41よりも大きく、かつ管状部品4の外径d42よりも小さい。リング5の外径d52は、管状部品4の外径d42よりも大きい。
【0008】
リング5を管状部品4に組み付けることを可能とするためには、以下のことを順に行わなければならない。
- 管状部品4の壁40の長手方向の一部分43にわたって、その周囲にリセスを機械加工により形成する。このリセスは、壁40の外面42を起点として、リセスでは、管状部品4の壁40の外面42の直径が、リング5の内径d51に略等しくなるように形成される(このリセスに、リング5が収容される)。
- リセス内に、例えば銀の層である半田6の薄層を塗布する。
- 軸XX’に直交するとともにリセスの真ん中を通る切断平面Sで、管状部品4を2つの部分に切断する。
- 管状部品4の2つの切断端のそれぞれをリング5内に挿入する。
- 半田付けによってリング5を管状部品4に溶接する。
【0009】
次に、半田の膨らみを除去して、アセンブリの壁の内面および外面の滑らかな外観を得るために、この組み付けによって得られた部品を機械加工する必要がある。
【0010】
半田付けによる溶接は、銅とステンレス鋼との界面で半田層6を溶融するために、得られたアセンブリを高温にした後に、それらの2つの材料を相互に接合するために急速冷却することを伴う。
【0011】
ところが、半田付けによる溶接には多くの欠点がある。実際に、それは、実施するのが特に複雑なプロセスである。良好な条件で半田付けを行うには、銅製のリングとステンレス鋼製の管状部品との間に特に清浄な界面を有していなければならない。これは、半田面において銅製のリングのポロシティを発生させる可能性のある複雑な洗浄方法によって得られる。従って、リングが示すメカニカルヒューズの破断条件を制御することが難しくなる。さらに、第3の材料すなわち半田を使用することによって、リングにおける電気的接触を妨げる可能性がある。また、管状部品の2つのピースのアライメントも特に困難である。さらに、このアライメントの問題は、アセンブリの変形を引き起こす可能性がある半田付けの加熱および冷却の段階が示す熱衝撃によっても顕著になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、特に上記で提示した、先行技術の欠点のすべてまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、第1の態様により、本発明は、リングを管状部品に組み付ける方法について提案する。その管状部品は、内面および外面を有する円筒壁を備える。リングおよび管状部品は金属材料で構成されている。この方法は、
- 管状部品の長手方向の一部分にわたって、管状部品の壁の厚さを減少させることにより、その長手方向部分の周囲に台形のリセスを形成するステップであって、管状部品の壁の厚さを減少させることは、壁の外面から材料の層を除去することにより得られる、ステップと、
- 長手方向部分の周りにリングを配置するステップであって、リングは、リセスに面して、管状部品のリセスの形状に相補的な形状を有する内面を有する、ステップと、
- 長手方向部分がコイルに面して配置されるように、コイルの開口部に管状部品/リング・アセンブリを配置するステップと、
- コイルで発生させた磁気パルスによって、リングを管状部品に溶接するステップと、を含む。
【0014】
リングは、例えば銅で構成されており、管状部品はステンレス鋼で構成されている(ただし、材料の他の選択も可能である)。「管状部品」とは、その部品が、その長さの全体または一部にわたって、少なくともリングとリセスが重なる領域で、管の形状を有することを意味する。
【0015】
磁気パルス溶接(MPW:Magnetic Pulse Welding)は、一般に「磁気溶接」とも呼ばれ、電磁力を用いて周囲温度で「冷間溶接」を発生させる。これにより、半田の場合のように熱または第3の接合材料を使用する必要なく、2つの異なる金属材料を相互に溶接することが可能となる。このようにして、原子的および化学的に純粋なアセンブリが得られ、すなわち、アセンブリは、リングと管状部品との間に、第3の汚染物質で構成されたバリアを伴うことなく完璧な界面を有する。磁気パルス溶接ステップでは、2つの金属の原子が電子を共有するように、リングを管状部品に対して力で突出させて、これにより2つの基本材料を混合することによって金属アセンブリを形成する。
【0016】
管状部品の軸に沿った長手方向断面図では、リセスは台形の形状を有する。この台形の長辺は、管状部品の壁の外面に位置する。その長辺と、台形の底辺ではない辺と、によって形成される角度は、磁気溶接プロセスにおいて特に重要である。実際に、「衝突角度」または「衝撃角度」と呼ばれるこの角度によって、磁気パルス溶接を行うことができる。リングと管状部品との接合は、実際に、台形の非平行な2つの辺において主に行われる。磁気溶接ステップでは、リセスのこれらの斜辺に沿って空気が高速で押し出されるとともに、リングと管状部品との界面において材料の第1の層から不純物が剥がされて、これにより原子レベルでの結合が可能となる。
【0017】
「相補的な形状」とは、磁気溶接ステップでリングがリセスに収容されるように、リセスに面して配置されるリングの内面が、リセスの形状に対して類似した形状であって反転した形状を有することを意味する。
【0018】
具体的な実施形態では、本発明は、以下の特徴の1つ以上を、単独で、または技術的に可能なあらゆる組み合わせで、さらに有することができる。
【0019】
具体的な実施形態では、この組み付け方法は、磁気パルス溶接ステップの後に、リングの外面が管状部品の外面と面一になるように、リングの外面から材料の層を除去することを伴って、リングを機械加工するステップを含む。
【0020】
「面一」とは、リングの外面が管状部品の外面と同じ高さであることを意味する。この機械加工を、磁気溶接ステップの後に実施することによって、リングを管状部品に組み付けることにより得られる製品の完全に滑らかな外面を得ることが可能となる。美的外観に加えて、これにより、アセンブリの外面上の突出した切断の可能性がある部分がいずれも除去されるので、安全面でも利点が得られる。
【0021】
具体的な実施形態では、この組み付け方法は、磁気パルス溶接ステップの後に、壁の内面がリングの内面と面一になるように、管状部品の壁の内面から材料の層を除去することを伴って、管状部品の壁を機械加工するステップを含む。
【0022】
この機械加工を、磁気溶接ステップの後に実施することによって、管内を循環する流体とリングとの間の導電性を確保することが可能となる。実際に、この機械加工によって、リングの内壁の下に残っているステンレス鋼の薄層が除去される。従って、得られたアセンブリは、リングで連結された2ピースの管に相当し、リングにおいては、管の内側が銅製のリングの内面に直接接触している。この機械加工によって、メカニカルヒューズ機能を最適化することも可能となり得る。
【0023】
具体的な実施形態では、リングの外面および管状部品の内面を機械加工するステップは、同時に実施される。
【0024】
具体的な実施形態では、管状部品の軸における長手方向断面図によるリセスの形状に対応した台形は、管状部品の壁の外面において長辺を有するとともに、長辺に対向する短辺を有し、長辺と台形の一辺とで形成される各角度は、8°~20°の間である。
【0025】
このような値の衝突角度によって、実際に、磁気パルス溶接のための最適な条件を得ることが可能となる。
【0026】
具体的な実施形態では、リングは銅で構成されており、管状部品はステンレス鋼で構成されている。
【0027】
本発明は、図1~5を参照して、非限定的な例として提示される以下の説明を読解することで、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、半田付けによる管状部品へのリングの組み付けの図(背景技術において既に説明された図)である。
図2図2は、磁気溶接による組み付けのための装置の斜視図である。
図3図3は、磁気溶接による組み付けのための装置のコイル内への管状部品およびリングの配置の長手方向断面図である。
図4図4は、リングを管状部品に磁気溶接することによって得られるアセンブリの長手方向断面図である。
図5図5は、本発明による組み付け方法で可能な他の形状のリングの図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これらの図面では、異なる図面で同一の参照符号は、同一または類似の要素を示している。明確にするため、図示の要素は、特に明記されない限り、必ずしも縮尺通りではない。
【0030】
本発明による組み付け方法は、磁気溶接によりリングを管状部品に組み付けることを目的とする。
【0031】
図2は、磁気パルス溶接を実施するように構成された装置を概略的に示している。
【0032】
この装置は、図2に示すように、コイル10と、蓄電ユニット50と、1つ以上のスイッチ51と、を備える。
【0033】
蓄電ユニット50は、コイル10およびスイッチ(群)51に接続されている。蓄電ユニット50は、例えば数十キロジュール(kJ)程度の高エネルギーを蓄積するように構成されている。
【0034】
好ましい実施形態では、蓄電ユニット50は、放電コンデンサのバンクである。
【0035】
コイル10は、図2に示すように、周面と呼ばれる面121によって画成される開口部12が形成された本体11を有する。この管状開口部は、溶接するための管状部品およびリングを受容するように構成されている。すなわち、開口部12は、例えば、その直径がリングの最大横断面よりも大きい円形の横断面を有する。
【0036】
本体11は、一方で、数十万アンペア程度の非常に高強度の電流を流すために、塑性変形に対する機械的耐性に関して、他方で、溶接プロセス中に溶融しないように、高温耐性(すなわち、高溶融温度)に関して、特有の特性を有する材料で構成される。
【0037】
例示的な一実施形態では、本体11は鋼で構成される。
【0038】
コイル10は、これに高強度の電流が流れて、磁場を生成することが可能であるように構成される。
【0039】
また、コイル10は、コイルのある領域における電流密度が溶接条件を満たすのに十分であるように構成される。この領域は、有効部と呼ばれる。
【0040】
本実施形態に記載のコイル10の場合、電流は、有効部において、表皮厚さに対応した厚さを有する周面121によって規定される層に集中する。従って、電流は、開口部12内で、集中した磁場を生成する。鋼で構成されたコイル10の非限定的な例では、数十kHzの周波数の場合に、表皮厚さは数ミリメートル程度である。
【0041】
図3は、図2を参照して説明したような磁気溶接による組み付けのための装置のコイル10内に管状部品2およびリング3を配置することを、軸XX’に沿った長手方向断面図で概略的に示している。
【0042】
「管状部品」とは、管状部品2が、その長さの全体または一部にわたって、かつ少なくとも組み付け時にリング3が押し当てられる長手方向部分23において、管の形状を有することを意味する。管状部品2は、好ましくは円形の横断面を有する。すなわち、管状部品2は、好ましくは、少なくとも長手方向部分23において、直円柱(すなわち回転柱)の形状の壁20を有する。
【0043】
円形横断面の場合の管状部品2について、詳細に説明および図示しているが、楕円形、矩形、または三角形のような他の横断面形状を適用することもできる。
【0044】
図3に示すように、管状部品2の円筒壁20は、軸XX’に沿って延在するとともに、内面21および外面22を有する。管状部品2は、内径d21および外径d22を有する。従って、外径d22と内径d21との差は、管状部品2の壁20の厚さの2倍に相当する。
【0045】
非限定的に提示される考察中の例では、管状部品2の壁20は、ステンレス鋼で構成されており、1.75mmの厚さを有する。管状部品2の外径d22は、13.5mmである。
【0046】
次に、本発明による組み付け方法について説明する。
【0047】
第1のステップで、管状部品2の壁20の厚さを、長さL23を有する長手方向部分23にわたって、減少させる。
【0048】
好ましくは、長手方向部分23は、管状部品2の端24を始点としていない。
【0049】
長手方向部分23の周囲に台形のリセスを形成するように、管状部品2の壁20の厚さを減少させる。すなわち、長手方向部分23の長さにわたって、管状部品2の壁20の厚さを以下のように減少させる。
- 長手方向部分23の第1の部分233にわたって、壁20の厚さが単調減少する。
- 第1の部分に連続した、長手方向部分23の第2の部分234にわたって、管状部品2の壁20の厚さが一定である。
- 第2の部分に連続した、長手方向部分23の第3の部分235にわたって、管状部品2の壁20の厚さが単調増加する。
【0050】
管状部品2の壁20の厚さは、効果的には、壁20の外面22を起点として減少する。
【0051】
壁20の厚さの減少は、管状部品2の壁20の外面22から材料の層を除去することによって得られる。
【0052】
この第1のステップを実施するための手段は、例えば、機械加工によって管状部品2の壁20の厚さを減少させることを伴う。
【0053】
従って、軸XX’における長手方向断面図によるリセスの形状に対応した台形は、管状部品2の壁20の外面22において、長さL23の長辺を有する。台形は、長辺に平行かつL23よりも小さい長さの短辺を有する。図3に示す考察中の例では、台形は、等脚台形であり、長辺と台形の非平行な辺の1つとで形成される角度αを有する。
【0054】
図3に示すように、台形のリセスは、台形の高さ(すなわち、その長辺と短辺との間の距離)が管状部品2の壁20の厚さよりも小さいように形成される。また、リング3の厚さは、台形の高さに少なくとも等しい。
【0055】
長手方向部分23の長さL23は、最大で、コイル10の周面121の軸方向長さL121に等しい。
【0056】
第2のステップで、管状部品2の周りにリング3を配置する。
【0057】
リング3は、管状部品2の外径d22よりも大きい最小横断面を有する。好ましくは、リング3の横断面は、管状部品2の横断面の形状と同様の形状を有する。説明および図示される例では、リング3は円形の横断面を有する。従って、リング3は、管状部品2の外径d22よりも大きい内径d31と、外径d32と、を有する。従って、リング3の外径d32と内径d31との差は、リング3の最大厚さの2倍に相当する。
【0058】
ここで非限定的に説明される考察中の例では、リング3は2mmの厚さを有する。
【0059】
リングは、好ましくは金属材料で構成される。効果的には、リングの材料は、管状部品の材料とは異なる。ここで説明される例では、リング3の材料は銅である。
【0060】
リング3は、その重なり位置にオーバラップ領域25を形成するように、管状部品2の周りに同軸状に配置される。
【0061】
管状部品2は、オーバラップ領域25が少なくとも管状部品2の長手方向部分23をカバーするように、リング3に係合する。
【0062】
図3に示すように、リング3は、外面32および内面31を有する。リング3の内面31は、管状部品2の壁20の長手方向部分23に面して配置される目的のものであり、管状部品2の壁20に形成されたリセスの形状に相補的な形状を有する。すなわち、後の磁気溶接ステップでリング3がリセスに収容されるように、リセスに面して配置されるリング3の内面31は、リセスの形状に対して類似した形状であって反転した形状を有する。
【0063】
従って、リング3も台形形状を有する。台形の短辺は、リセス形状の台形の短辺と同じ長さを有する。それでも、軸XX’に沿ったリング3の長手方向断面によって形成される台形の高さは、リセス形状の台形の高さよりも高いことがあり得る。考察中の例では、台形は等脚台形であり、台形の長辺と台形の各辺とで形成される角度は、上記で定義された角度αに等しい。
【0064】
リング3は、オーバラップ領域25において、リセスに相補的な内面31の形状がリセスに面して配置されるように、位置決めされる。磁気溶接ステップで、リング3は、管状部品2の壁20のリセスに収容される。
【0065】
第3のステップで、管状部品2/リング3・アセンブリは、オーバラップ領域25の全体または一部がコイル10の周面121に面するように、磁気溶接による組み付けのための装置のコイル10の円形開口部12内に配置される。
【0066】
より具体的には、管状部品2およびリング3は、オーバラップ領域25がコイル10の有効部125に面して配置されるように、コイル10の開口部12内に配置される。
【0067】
管状部品2およびリング3をコイル10の開口部12内に保持することを可能とする固定手段は、図3に示していない。
【0068】
管状部品2およびリング3は、コイル10の開口部12内で、軸XX’に沿って互いに同軸状かつ開口部12と同軸状に保持される。
【0069】
管状部品2は、例えば、コイルの外部の固定手段によって所定位置に保持される。リング3は、例えば、コイル10の周面121とリング3との間に配置される例えば約1mmの厚さのプラスチック環である絶縁材料の環を挿し込むことによって、所定位置に保持される。このプラスチック環の外径は、コイル10の開口部12の直径に対応する。このプラスチック環の内径は、リング3の外径d32に対応する。
【0070】
第2と第3のステップの実施順序は、制限されるものではなく、本方法の実施形態によれば、記載された順序と逆の順序で実施することができ、または、これらのステップの結果が変わることなく同時に実施することができる。
【0071】
これらのステップの結果として、管状部品2およびリング3は、相互に位置決めされるとともに、コイル10内に位置決めされる。
【0072】
本発明による組み付け方法は、次に、磁気パルスによって管状部品2/リング3・アセンブリを溶接するステップを含む。
【0073】
蓄電ユニット50は、高エネルギーを蓄積する。スイッチ(群)51が閉じているときには、コイル10は蓄電ユニットに接続される。従って、エネルギーは、数マイクロ秒程度で非常に急速にコイル10に放出されて、高強度の電流がコイル10の有効部125に流れる。
【0074】
電流によって、コイル10とリング3との間に可変磁場が発生して、リング3に渦電流が誘導される。
【0075】
周囲の磁場に関連してリング3に誘導される電流は、ローレンツ力と呼ばれるかなりの体積力をリングにおいて発生させる。これらのローレンツ力は、リング3のあらゆる点において径方向に磁気圧力をリング3に作用させ、これによりリングを管状部品2の方向に加速させる。
【0076】
従って、これらの求心力の作用によって、リング3は非常に高速で管状部品2に対して突出する。リング3が管状部品2に対して衝突することにより、リング3は管状部品2に即時溶接される。
【0077】
リング3と管状部品2との磁気パルス溶接が有効であるためには、リング3の銅と管状部品2のステンレス鋼との衝突は、それらの2つの表面が原子を交換できる特定の条件で行われなければならない。この目的のため、2つの表面は、原子的および化学的に純粋でなければならない。そのために、銅がステンレス鋼に衝突する作用によって、加熱し、加速し(速度は700m/sに達し得る)、2つの表面をスイープし、あらゆる汚染物質(塵埃、第1の材料層の不純物、など)を除去する空気を押し出すことにより、2つの表面は洗浄される。組み付けされる表面から剥がされた固形物のこのマイクロメトリック「ジェット」の発生は、2つの部品間の接触の開始時に起こって、台形の非平行な辺26、27に対応した組み付けラインの全体に沿って非常に高速で伝搬する。これにより、接触面が露出して、溶融することなく原子レベルでの結合が可能となる。
【0078】
空気の排出速度は、衝突角度αの大きさに依存する。記載の例において考察中の材料および寸法では、角度αが8°~20°の間であるときに最適な溶接条件が生じることが観測されている。考察中の例では、角度αは、好ましくは10°の値をとる。図面を分かりやすくするために、図3に示す角度αは、上記の範囲よりも大きいことに留意すべきである。実際には、台形は、はるかに「扁平な」形状である。
【0079】
銅製のリング3がステンレス鋼製の管状部品2に対して非常に高速で衝突すると、2つの材料は、それらの界面で、非常に短時間(数十μs)の間、固体状態から粘塑性状態に移行し、これにより原子結合を引き起こす。
【0080】
この磁気パルス溶接ステップの後に、リング3と管状部品2は、管状部品2の壁20に形成された台形のリセスの非平行な辺26、27によって管状部品2の周囲に形成された表面において、主に溶接される。
【0081】
磁気溶接ステップ中に、リング3は変形する。より具体的には、その直径は、これが長手方向部分23における管状部品2の周りのリセスに押し込まれるときにコイル10によって発生する電磁力の作用によって、減少する。
【0082】
図4は、リング3を管状部品2に磁気溶接することにより得られるアセンブリを、長手方向断面図で概略的に示している。
【0083】
図4に示すように、リング3の下の管状部品2の壁20には材料の層25が残っている。考察中の例では、この層25は0.5mmの厚さを有する。
【0084】
この材料層25を、追加の機械加工ステップによって、管状部品2の壁20の内面21から除去することにより、この内面21をリング3の内面31と面一にすることが効果的であり得る。「面一」とは、管状部品2の壁20の内面21がリング3の内面31と同じ高さであることを意味する。
【0085】
これは、この機械加工ステップの後に、リング3/管状部品2・アセンブリの内面は、銅で構成されているリング3の位置を除いて、主にステンレス鋼で構成されていることを意味する。これにより、効果的に、管状部品2内に流れる流体とリング3との間の良好な導電性を確保することが可能となる。さらに、リング3が果たすメカニカルヒューズ機能も最適化される。
【0086】
ただし、主にメカニカルヒューズ機能に関心がある場合であって、かつ、銅製のリング3とステンレス鋼の薄層25で構成されるアセンブリによって提供される構造的脆弱性が目的の用途に適している場合には、この機械加工ステップはオプションにとどまる。
【0087】
図4に示すように、一般的に、磁気溶接ステップの後には、管状部品2の壁20の外面22から突出したリング3の材料の層35も残る。
【0088】
この材料層35を、追加の機械加工ステップによって、リング3の外面32から除去することにより、リング3の外面32を管状部品2の壁20の外面22と面一にすることが効果的であり得る。
【0089】
これは、この機械加工ステップの後に、リング3/管状部品2・アセンブリの外面が完全に滑らかであることを意味する。美的外観に加えて、これにより、アセンブリの外面上の突出した切断の可能性がある部分がいずれも除去されるので、安全面でも利点が得られる。
【0090】
磁気溶接ステップの後に実施されるこれらの2つのオプションの機械加工ステップは、同時に実施できることに留意すべきである。
【0091】
特に、磁気パルス溶接ステップの後にリング3の外面32が管状部品2の壁20の外面22と直接面一になるように、リング3の適切な厚さを決定することによって、リング3の外面32を機械加工するステップを回避することが可能である。
【0092】
磁気溶接による組み付け後に実施されるこれらの機械加工ステップは、特にコストがかかるので、本発明による組み付け方法によって形成される部品の生産コストを削減するために、これらの機械加工ステップを回避することが効果的である。
【0093】
リング3は、図3または4に示すような台形形状を必ずしも有するわけではないことに留意すべきである。リング3は、実際に、管状部品2の壁20に形成されるリセスの形状に相補的な台形形状に一部のみが対応した様々な形状を有することができる。例えば、図5は、リセスの形状に相補的な台形形状が追加された矩形ベース36を有する具体的な形状のリング3を概略的に示している。
【0094】
上記説明は、本発明が、その様々な特徴およびそれらの効果によって、設定した目標を達成することを明確に示している。
【0095】
特に、磁気パルス溶接プロセスは非常に高速である(パルスは典型的には10~100μs持続し、総サイクル時間の唯一の制約は、それらの部品を組み付け装置内に配置することによるものである)。
【0096】
それは、大量生産によく適合した、信頼性の高いプロセスであり、様々に異なる融点を有する材料間を溶接するための多くの可能性を提供する。
【0097】
これは冷間溶接であるため、組み付けられた部品の望ましくない変形が生じない。
【0098】
例えば半田付けの場合のような、接合面の複雑な洗浄は必要ない。
【0099】
磁気パルス溶接プロセスの利点は、2つの部品の組み付けが固体状態で実施されることにあり、これにより、材料の溶融を伴う従来の溶接で知られているあらゆる問題を解消することが可能となる。
【0100】
本発明について、非限定的な例として、非常に特別な寸法を有するステンレス鋼製の管状部品2と銅製のリング3の場合について説明した。しかしながら、リング3および管状部品2について、他の材料および他の寸法を選択することが可能であることに留意すべきである。従って、リセスの形状、より具体的には衝突角度αは、磁気パルス溶接の専門家に周知の方法で適切に決定される。
【0101】
リング3および管状部品2の材料、形状、および/または寸法の選択は、本発明の変形例を構成するにすぎない。リング3および管状部品2は、好ましくは、様々に異なる機械的特性および/または電気的特性を有するように、様々に異なる材料で構成される。
図1
図2
図3
図4
図5