(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/035 20060101AFI20221215BHJP
F16K 31/18 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
B60K15/035 A
F16K31/18 C
(21)【出願番号】P 2020555639
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043933
(87)【国際公開番号】W WO2020100751
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018215011
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 健太
(72)【発明者】
【氏名】矢島 一樹
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106525(JP,A)
【文献】特開2013-95339(JP,A)
【文献】特開2013-24288(JP,A)
【文献】特開2000-73881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/035
F16K 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク外に連通し底面側に仕切壁を有する通気室、及び、燃料タンク内に連通する弁室を有し、前記仕切壁に、前記弁室と前記通気室とを連通する第1開口が設けられた、ケースと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記第1開口を開閉するフロート弁と、
前記仕切壁に形成され、前記通気室と前記弁室とを連通するか、又は、前記通気室と前記燃料タンク内とを連通する第2開口と、
前記通気室に配置され、前記第2開口を開閉するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁を前記第2開口に向けて付勢する付勢バネと、
該付勢バネの一端を押えた状態で、前記通気室に設けられたキャップ取付部に取付けられる、バネ押えキャップとを有しており、
前記バネ押えキャップは、前記付勢バネの一端を支持するバネ支持部と、係合部とを有しており、
前記キャップ取付部は、前記バネ押えキャップが、その取付方向に押し込まれたときに、前記係合部に係合する被係合部を有しており、
前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、前記バネ支持部と前記係合部とが、前記通気室の内周面に沿って配置されており、
前記バネ押えキャップは、前記バネ支持部よりも、バネ押えキャップの取付方向に向けて延びるガイド脚部を有しており、このガイド脚部に前記係合部が形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
燃料タンク外に連通し底面側に仕切壁を有する通気室、及び、燃料タンク内に連通する弁室を有し、前記仕切壁に、前記弁室と前記通気室とを連通する第1開口が設けられた、ケースと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記第1開口を開閉するフロート弁と、
前記仕切壁に形成され、前記通気室と前記弁室とを連通するか、又は、前記通気室と前記燃料タンク内とを連通する第2開口と、
前記通気室に配置され、前記第2開口を開閉するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁を前記第2開口に向けて付勢する付勢バネと、
該付勢バネの一端を押えた状態で、前記通気室に設けられたキャップ取付部に取付けられる、バネ押えキャップとを有しており、
前記バネ押えキャップは、前記付勢バネの一端を支持するバネ支持部と、
該バネ支持部の両側に位置する一対の係合部とを有しており、
前記第1開口は、前記仕切壁の内側に形成されており、前記第2開口は、前記第1開口よりも、前記仕切壁の外側に形成されており、
前記バネ支持部が前記第2開口に対向して配置されると共に、前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、前記
一対の係合部
を結ぶ線が前記第1開口と前記第2開口との間
を通過するように、前記バネ押えキャップが前記キャップ取付部に取付けられており、
前記バネ押えキャップは、前記バネ支持部よりも、バネ押えキャップの取付方向に向けて延びるガイド脚部を有しており、このガイド脚部に前記係合部が形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
前記ガイド脚部は、前記バネ支持部の両側に設けられた一対からなり、前記キャップ取付部に前記バネ押えキャップが取付けられた状態で、前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、
前記バネ支持部は、前記一対のガイド脚部どうしを結ぶ線よりも、前記ケースの外径側に位置するように、前記バネ支持部と前記一対のガイド脚部とが位置ずれして設けられている請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項4】
前記キャップ取付部は、前記ガイド脚部の外周の一側面に沿うように延び、バネ押えキャップの取付時に前記ガイド脚部をガイドする、ガイド壁部を有している請求項1~3のいずれか1つに記載の弁装置。
【請求項5】
前記ガイド脚部には、前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときであって、前記第1開口から前記第2開口へ向かう方向において、前記第2開口側に面する端面が設けられており、前記通気室には、前記ガイド脚部の、前記端面と対向する位置に、転び防止部が設けられている請求項2記載の弁装置。
【請求項6】
前記ガイド脚部には、前記ガイド脚部どうしを結ぶ線よりも、前記ケースの内径側に延出する、延出部が設けられている請求項3記載の弁装置。
【請求項7】
前記延出部は、前記バネ押えキャップの取付け時に前記ガイド脚部をガイドするように前記キャップ取付部に設けられたガイド壁部を囲むように形成された部分を有している請求項6記載の弁装置。
【請求項8】
前記通気室の、前記仕切壁と対向する天井面側から、前記仕切壁側に向かって一対の第1突部が突出しており、
前記ガイド脚部は、前記バネ支持部の両側に設けられた一対からなり、
前記キャップ取付部は、前記被係合部を一対有しており、
前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、前記一対の被係合部は、前記一対の第1突部の間に配置される請求項1記載の弁装置。
【請求項9】
前記通気室の、前記仕切壁と対向する天井面側から、前記仕切壁側に向かって第2突部が突出しており、
前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、前記バネ支持部は、前記第2突部に重なる位置に配置される請求項1~8のいずれか1つに記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、フロート弁及びリリーフ弁を有する、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、車両が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する、フロート弁を有する弁装置が取付けられている。このような弁装置には、更に燃料タンク内の圧力が所定値以上になったときに、燃料タンク内の燃料蒸気をキャニスタ側へ排出させる、リリーフ弁が設けられていることがある。
【0003】
上記のようなものとして、例えば、下記特許文献1には、上方に枠状のブラケットを設けたケース本体と、該ケース本体内にスライド可能に収容されるフロート弁と、ケース側方に形成された枠状の弁体収容部と、該弁体収容部の底部の開口部を開閉する弁体と、該弁体を付勢するスプリングと、前記ブラケットの上方開口部に装着されると共に、前記スプリングの上端を支持する上部キャップとを有する、リリーフバルブが記載されている。また、前記上部キャップは、ケース本体上方に設けられた、ブラケットの上方開口部の周縁に、超音波溶着や熱板溶着等により溶着することで、取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のリリーフバルブにおける上部キャップは、上述したように、ブラケットの上方開口部の周縁に溶着することで、取付けられるようになっているので、取付作業性が良いとは言えない。また、上部キャップは、長板状をなしており、弁体を付勢するスプリングを支持する部分と、ブラケットの上方開口部に溶着される部分とが、直線上に配置されているため、小型化も困難であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、リリーフ弁を付勢する付勢バネを支持するキャップの、ケースに対する取付作業性を向上させることができ、小型化も容易な、弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る弁装置の1つは、燃料タンク外に連通し底面側に仕切壁を有する通気室、及び、燃料タンク内に連通する弁室を有し、前記仕切壁に、前記弁室と前記通気室とを連通する第1開口が設けられた、ケースと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記第1開口を開閉するフロート弁と、前記仕切壁に形成され、前記通気室と前記弁室とを連通するか、又は、前記通気室と前記燃料タンク内とを連通する第2開口と、前記通気室に配置され、前記第2開口を開閉するリリーフ弁と、前記リリーフ弁を前記第2開口に向けて付勢する付勢バネと、該付勢バネの一端を押えた状態で、前記通気室に設けられたキャップ取付部に取付けられる、バネ押えキャップとを有しており、前記バネ押えキャップは、前記付勢バネの一端を支持するバネ支持部と、係合部とを有しており、前記キャップ取付部は、前記バネ押えキャップが、その取付方向に押し込まれたときに、前記係合部に係合する被係合部を有しており、前記フロート弁の軸方向から前記通気室を見たときに、前記バネ支持部と前記係合部とが、前記通気室の内周面に沿って配置されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る弁装置のもう1つは、燃料タンク外に連通し底面側に仕切壁を有する通気室、及び、燃料タンク内に連通する弁室を有し、前記仕切壁に、前記弁室と前記通気室とを連通する第1開口が設けられた、ケースと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記第1開口を開閉するフロート弁と、前記仕切壁に形成され、前記通気室と前記弁室とを連通するか、又は、前記通気室と前記燃料タンク内とを連通する第2開口と、前記通気室に配置され、前記第2開口を開閉するリリーフ弁と、前記リリーフ弁を前記第2開口に向けて付勢する付勢バネと、該付勢バネの一端を押えた状態で、前記通気室に設けられたキャップ取付部に取付けられる、バネ押えキャップとを有しており、前記バネ押えキャップは、前記付勢バネの一端を支持するバネ支持部と、係合部とを有しており、前記第1開口は、前記仕切壁の内側に形成されており、前記第2開口は、前記第1開口よりも、前記仕切壁の外側に形成されており、前記バネ支持部が前記第2開口に対向して配置されると共に、前記係合部が前記第1開口と前記第2開口との間に位置するように、前記バネ押えキャップが前記キャップ取付部に取付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弁装置によれば、第2開口の通気室側にリリーフ弁を配置した後、バネ支持部で、付勢バネの一端を支持して、バネ押えキャップを取付方向に押し込んで、被係合部に係合部を係合させることによって、キャップ取付部に、バネ押えキャップを付勢バネの一端を支持した状態で取付けることができ、バネ押えキャップの取付作業性を向上させることができる。また、本発明の弁装置の1つによれば、バネ支持部と係合部が、通気室の内周面に沿って配置されているため、バネ押えキャップを、小型化しやすい。更に、本発明の弁装置のもう1つによれば、第1開口は、仕切壁の内側に形成されており、第2開口は、第1開口よりも、仕切壁の外側に形成されており、バネ支持部が第2開口に対向して配置されると共に、係合部が第1開口と第2開口との間に位置するように、バネ押えキャップがキャップ取付部に取付けられるため、バネ押えキャップを小型化しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同弁装置のケースを構成するケース本体の斜視図である。
【
図3】同弁装置を構成するバネ押えキャップを示しており、(a)はその斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図4】同弁装置を構成するケースに、バネ押えキャップを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】同弁装置を構成するケースに、バネ押えキャップを取付けた状態の、要部拡大側面図である。
【
図7】同弁装置において、フロート弁が下降して第1開口が開いた状態の断面図である。
【
図9】同弁装置において、キャップ取付部にバネ押えキャップを取付ける際の工程を示しており、(a)は第1工程を示す拡大説明図、(b)は第2工程を示す拡大説明図、(c)は第3工程を示す拡大説明図、(d)は第4工程を示す拡大説明図、(e)は第5工程を示す拡大説明図である。
【
図10】同弁装置において、フロート弁が上昇して第1開口を閉じた状態の断面図である。
【
図11】本発明に係る弁装置の、他の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【
図12】同弁装置のケースを構成するケース本体の斜視図である。
【
図13】同弁装置を構成するバネ押えキャップを示す斜視図である。
【
図14】本発明に係る弁装置の、更に他の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【
図15】同弁装置のケースを構成する上部カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~10を参照して、本発明に係る弁装置の、一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0012】
図1や
図7に示すように、この実施形態における弁装置10は、燃料タンク1外に連通し底面側に仕切壁22を有する通気室R、及び、燃料タンク1内に連通する弁室Vを有し、仕切壁22に、弁室Vと通気室Rとを連通する第1開口23が設けられた、ケース15を有している。また、このケース15は、略筒状をなし、上方に仕切壁22を設けたケース本体20と、該ケース本体20の上方に装着される上部カバー40と、前記ケース本体20の下方に装着される下部キャップ50とから構成されている。
【0013】
図1に示すように、前記ケース本体20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、その上方に、通気室Rの底面側に位置する仕切壁22が配置されている。前記周壁21には、複数の通口21aが形成されている。また、周壁21の上方に第1係止爪21bが突設されており、下方に第2係止爪21cが突設されている。
【0014】
図2に示すように、この実施形態における前記仕切壁22は、周壁21の上方開口部の内周に設けられた、環状をなした底壁22aと、この底壁22aの内周縁から立設した略円筒状をなした筒状壁22bと、この筒状壁22bの上端周縁から次第に縮径するように、山形状に突出してなる天井壁22cとから構成されている。
図7に示すように、この天井壁22cの頂部に、弁室Vと通気室Rとを連通する、円形状の第1開口23が形成されている。すなわち、仕切壁22の径方向中心に、第1開口23が形成されている。
【0015】
なお、この実施形態における仕切壁は、上述したように、その中央部が筒状に隆起した形状となっているが(筒状壁22b参照)、仕切壁としては、例えば、ケース本体20の上方開口周縁に配置された円板状としたり、周壁21の軸方向途中に配置された円板状としたりしてもよく、その形状や位置等は特に限定されるものではない。
【0016】
また、仕切壁22を構成する底壁22aの外周には、前記筒状壁22bに対して同心状をなした環状壁24が立設されている。更に、周壁21の上方周縁からは、環状をなしたフランジ部26が外径方向に延設されている。また、
図7に示すように、底壁22aの所定箇所には、弁室Vと通気室Rとを連通する、円形状をなした第2開口27が形成されている。すなわち、この実施形態においては、前記仕切壁22の径方向内側(ここでは径方向中心)に形成された第1開口23に対して、第2開口27は、第1開口23よりも仕切壁22の径方向外側に位置するように形成されている。
【0017】
なお、この実施形態における仕切壁22は、その下方に弁室Vを画成し、上方に通気室Rを画成するための、ケース内空間を仕切るための隔壁として機能するようになっているが、この態様に限定されるものではない。例えば、本出願人が出願した特願2006-323969号(特開2008-138732号)に記載されたリリーフバルブのように、ケース本体外周に、リリーフ弁を収容可能な箱状の弁体収容部を設けて、その底壁を本発明における仕切壁の一部としてもよい。この場合には、弁体収容部の底壁をなす仕切壁に、第2開口を形成し、この第2開口が、通気室と燃料タンク内とを直接連通することとなる。本発明における「第2開口」は、このような態様も含むことを意味する。
【0018】
一方、前記下部キャップ50は、その底部に複数の通口51が形成されており、また、外周には、複数の係止孔52が形成されている。そして、ケース本体20の第2係止爪21cを、下部キャップ50の係止孔52に係止させることで、ケース本体20の下方に下部キャップ50が装着される。その結果、前記仕切壁22を介して、ケース下方に燃料タンク1内に連通する弁室Vが形成される(
図7参照)。
【0019】
また、上記弁室V内には、フロート弁60が、前記下部キャップ50との間に、コイルスプリングからなるフロート弁用付勢バネS1(以下、単に「付勢バネS1」ともいう)を介在させた状態で、昇降可能に収容配置されるようになっている。このフロート弁60の上面中央からは、弁頭61が突設されている。そして、このフロート弁60は、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢バネS1の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降するようになっている。
図7や
図10に示すように、このフロート弁60は、前記弁頭61が、ケース本体20の仕切壁22に設けた第1開口23に接離して、同第1開口23を開閉する。
【0020】
また、前記上部カバー40は、上部が閉塞し、下方周縁部がフランジ状に広がるフランジ部41を有する、略ハット状をなしている。この上部カバー40の周壁43の所定箇所には、図示しない通気口が形成されており、その周縁から、略円筒状をなした燃料蒸気配管44が外方に向けて延設されている。この燃料蒸気配管44には、燃料タンク1の外部に配置されるキャニスター等に連通する、図示しないチューブが接続されるようになっている。なお、上記フランジ部41の下面側周縁部を、燃料タンク1の開口部1aの表側周縁に接着や溶着等によって固着することによって、燃料タンク1に弁装置10が取付けられるようになっている(
図7参照)。
【0021】
そして、前記ケース本体20の環状壁24の外周にシールリング45を装着した状態で、上部カバー40を上方から被せて、そのフランジ部41を前記ケース本体20のフランジ部26上に載置して、上部カバー40の周壁43の下端部と環状壁24とでシールリング45を挟持すると共に、上部カバー40の図示しない係止片を、ケース本体20の第1係止爪21bに係止させることで、ケース本体20の上方に上部カバー40が取付けられる。その結果、仕切壁22を介して、その上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが形成されるようになっている(
図7参照)。
【0022】
ケース本体20の説明に戻ると、
図7に示すように、仕切壁22を構成する底壁22aに形成された第2開口27には、常時は第2開口27を閉じ、燃料タンク内の圧力が所定値以上になったときに、第2開口27を開いて燃料タンク内の燃料蒸気を通気室R側に流出させる、リリーフ弁65が接離可能に配置されている。この実施形態のリリーフ弁65は、金属製のボール状をなしている。
【0023】
また、
図7に示すように、上記リリーフ弁65は、コイルスプリングからなるリリーフ弁用付勢バネS2(以下、単に「付勢バネS2」ともいう)によって上方から押されて、第2開口27を閉じる方向に付勢されており、常時は第2開口27を閉塞するようになっている。なお、上記リリーフ弁用付勢バネS2が、本発明における「付勢バネ」をなしている。そして、車両の走行等によって、燃料タンク1内における燃料蒸気の圧力が所定値以上に上昇したときに、付勢バネS2の付勢力に抗して、
図10の二点鎖線に示すように、リリーフ弁65が押し上げられることで、第2開口27が開いて、燃料蒸気を通気室R側に逃がすようになっている。
【0024】
なお、この実施形態のリリーフ弁65は球形のボール状をなしているが、板状等をなしていてもよく、特に限定はされない。
【0025】
また、
図2に示すように、前記底壁22aの表面(通気室R側の面)であって、第2開口27(
図7参照)の両側からは、一対のバネ保護壁28,28が互いに平行となるように立設されている。これらの間に、前記付勢バネS2が配置されており、その保護が図られている。更に、これらのバネ保護壁28,28は、その外径側の側部が、前記環状壁24の内周側に連結されており(
図2参照)、その剛性が高められている。
【0026】
上記付勢バネS2は、その下端(他端)がリリーフ弁65に当接して支持されているが、上端(一端)は、バネ押えキャップ70によって押え付けられるようになっている。そして、このバネ押えキャップ70(以下、単に「キャップ70」ともいう)は、通気室Rに設けられたキャップ取付部30(以下、単に「取付部30」ともいう)に取付けられるようになっている。
【0027】
まず、キャップ70について説明する。この実施形態のキャップ70は、
図3に示すように、付勢バネS2の一端(上端)を支持するバネ支持部71と、このバネ支持部71の両側から、キャップ70の取付方向T(
図1参照)に向けて延びる一対のガイド脚部75,75と、このガイド脚部75にそれぞれ形成された係合部76とを有している。
【0028】
また、キャップ70のバネ支持部71の外側には、一対の連結部73,73が配置されており、前記バネ支持部71は、一対の連結部73,73を介して、一対のガイド脚部75,75に連結された構造となっている。なお、一対のガイド脚部75,75は、一対の連結部73,73を介して、バネ支持部71に連結されることで、バネ支持部71に対して外側に開いたり内側に倒れたり等といった変形が可能となっている。
【0029】
より具体的に説明すると、前記バネ支持部71は、略円形板状をなしており、その裏側(キャップ70の取付方向T側)からは、円柱状をなしたバネ挿入部71aが、キャップ取付方向Tに沿って延設されている。このバネ挿入部71aは、付勢バネS2の一端から挿入されて、付勢バネS2を、その傾きを抑制して支持するものである。
【0030】
また、
図3(a)に示すように、バネ支持部71の両側からは、前記バネ挿入部71aと直交する向きに、一対の腕部72,72が互いに平行に延設されている。更に
図3(b)に示すように、一対の腕部72,72の裏側(キャップ取付方向T側)であって、その延出方向途中からは、一対の連結部73,73が、キャップ取付方向Tに向けて互いに平行に延設されている。また、これらの一対の連結部73,73の、延出方向の先端部73a,73aは、互いに離れる方向となるように外側に向けて突出しており、連結部73は略L字状をなしている。
【0031】
そして、一対の連結部73,73の先端部73a,73aに、前記一対のガイド脚部75,75が連結されている。各ガイド脚部75は長板状に延びており、その厚さ方向の内側面75c(バネ支持部71に対向する面)であって、延出方向の途中位置に、前記連結部73の先端部73aが連結されている。
【0032】
上記ガイド脚部75の外周の一側面、この実施形態では、ガイド脚部75の厚さ方向の外側面75d(バネ支持部71とは反対側の面)が、取付部30にキャップ70を取付すべく、キャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込む際に、取付部30のガイド壁部31によってガイドされるようになっている(
図9参照)。
【0033】
また、
図8に示すように、ガイド脚部75の基部75a(連結部73の先端部73aとの連結部分よりも、バネ支持部71側に位置する部分)は、一定の間隙を空けて連結部73と平行に配置されており、
図9に示すように、キャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込む際に、取付部30の、後述するガイド壁部31に押圧されて、撓み変形可能となっている。
【0034】
なお、
図3(a)や
図7に示すように、ガイド脚部75の基部75aの端部は、バネ支持部71の表側(キャップ取付方向Tとは反対側)よりも高くなるように突出している。また、ガイド脚部75の先端部75bは、
図8に示すように、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で、仕切壁22の底壁22aに近接する位置まで延びている。
【0035】
そして、ガイド脚部75の基部75a側の外側面75dには、突起状をなした係合部76が突設されている。各係合部76は、その基端側に、ガイド脚部75の延出方向に対して直角な係合面76aが設けられている。また、各係合部76の外面には、最も高く突出した頂部から、キャップ取付方向Tに向けて、突出高さが次第に低くなる、テーパ面76bが形成されている。
【0036】
また、この弁装置10においては、
図5に示すように、このフロート弁60の軸方向C(
図7参照)から通気室Rを見たときに、バネ支持部71と、前記一対の係合部76,76とが、通気室Rの内周面に沿って配置されるように構成されている。なお、通気室の内周面に沿って配置とは、通気室Rを画成する壁部のうち、フロート弁の軸方向に沿って延びる外壁部の内周面に対して、その周方向に沿って配置されることを意味する。この実施形態においては、ケース15を構成する上部カバー40の周壁43の内周面に対して、その周方向に沿って、バネ支持部71と、前記一対の係合部76,76とが配置されている。
【0037】
また、
図7に示すように、バネ支持部71が第2開口27に対向して配置されると共に、
図5に示すように、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、係合部76が第1開口23と第2開口27との間に位置するように、キャップ70が取付部30に取付けられるように構成されている。
【0038】
なお、各ガイド脚部75は、バネ支持部71の両側から延びる腕部72、及び、該腕部72から延びる連結部73を介して、バネ支持部71に連結されている関係上、バネ支持部71と一対のガイド脚部75,75とは、互いに位置ずれした構造となっている。
【0039】
具体的には、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で(
図4及び
図6参照)、
図5に示すように、フロート弁60の軸方向C(
図7参照)から通気室Rを見たときに、バネ支持部71は、一対のガイド脚部75,75に形成された係合部76,76どうしを結ぶ線L(ここでは、係合部76,76の幅方向中央を通る線)よりも、ケース15(ここではケース本体20)の外径側に位置するように、バネ支持部71と一対のガイド脚部75,75とが位置ずれして設けられている。
【0040】
更に、一対のガイド脚部75,75の基部75a,75aの各端部からは、ガイド脚部75と直交する向きで、かつ、前記バネ支持部71から離反する方向に向けて、延出部77,77がそれぞれ延出している。また、これらの延出部77,77は、一対のガイド脚部75,75に形成された係合部76,76どうしを結ぶ線Lよりも、ケース15(ここではケース本体20)の内径側に延出するように設けられている(
図5参照)。
【0041】
この実施形態における延出部77,77は、前記一対の腕部72,72の延出方向と同じ向きとなるように、互いに平行に延びる根元部78,78と、これらの根元部78,78の延出方向先端から、根元部78,78に対して直交方向に屈曲し、かつ、互いに離れる方向に外側に向けて延びる屈曲部79,79と、該屈曲部79,79の延出方向先端から、前記バネ支持部71側に向けて折り返されて、前記ガイド壁部31に至るまで延びる、ガイド壁囲み部80,80とを有しており、延出部77全体として略コ字枠状をなしている。
【0042】
また、前記ガイド壁囲み部80は、前記根元部78と平行で、かつ、前記屈曲部79に対して直交して配置されており、その内面(根元部78側に向く面であって、係合部76のテーパ面76bに対向する面)には、キャップ取付方向Tに対して高さが次第に低くなるテーパ面80aが形成されている。なお、上記のガイド壁囲み部80が、本発明における、「取付部のガイド壁部を囲むように形成された部分」をなしている。
【0043】
なお、
図9(a)に示すように、ガイド壁囲み部80のテーパ面80aの最も低い面に、前述した係合部76の頂部が整合するようになっている。すなわち、係合部76の方が、ガイド壁囲み部80よりも、キャップ取付方向Tの先端側に偏移して配置されている。そのため、取付部30にキャップ70を取付けるべく、キャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込む際には、まず、
図9(b)に示すように、係合部76がガイド壁部31に当接するようになっている。
【0044】
また、上記構造をなしたガイド脚部75には、ケース外径側に位置する端面76cが設けられており、バネ支持部71に、
図6に示すようなバネ荷重F1が作用しても、前記端面が、後述する取付部30側に設けた転び防止部に当接することで、転び規制が図られるようになっている。この実施形態においては、係合部76の幅方向一側部に位置する端面76cが、ケース外径側に位置する、本発明における「端面」をなしている。
【0045】
なお、バネ押えキャップとしては、上記形状や構造に限定されるものではなく、少なくとも、付勢バネS2の一端を支持するバネ支持部と、このバネ支持部の両側から、バネ押えキャップの取付方向Tに向けて延びる一対のガイド脚部と、このガイド脚部にそれぞれ形成された係合部とを有する形状・構造であればよい。
【0046】
次に、通気室Rに設けられた取付部30について説明する。
図1及び
図2に示すように、この取付部30は、ガイド脚部75の外周の一側面(ここではガイド脚部75の外側面75d)に沿うように延び、キャップ70の取付時に、ガイド脚部75をガイドするガイド壁部31と、このガイド壁部31に形成され、係合部76に係合する被係合部35とを有している。
【0047】
この実施形態では、前記底壁22aの表面側であって、前記一対のバネ保護壁28,28よりも更に外側に位置する部分から、一対のガイド壁部31,31が、互いに平行となるように、それぞれ立設している。
図2に示すように、各ガイド壁部31は、ガイド脚部75の外側面75d(
図3参照)に沿うように延びる延出壁32と、この延出壁32の幅方向両側から直交するように、前記バネ保護壁28側に向けて屈曲して設けられた、一対の側壁33,33とを有しており、全体として略コ字枠状をなしたレール形状を呈している。なお、一対の側壁33,33の間隙は、前記ガイド脚部75の幅に適合する大きさとなっている。
【0048】
そして、この実施形態においては、取付部30にキャップ70を取付けすべく、キャップ70を仕切壁22の上方から、キャップ取付方向Tに向けて押し込む際に、コ字枠状のレール状をなした一対のガイド壁部31,31の内側空間、すなわち、延出壁32及び一対の側壁33,33により画成された内側空間に、前記一対のガイド脚部75,75がそれぞれ挿入されて、それらの壁の内面に、ガイド脚部75の外側面75dが摺接又は近接することによって、キャップ70がガイドされるようになっている。
【0049】
上記のように、この実施形態では、ガイド壁部31をガイド脚部75の外側に配置して、ガイド脚部75をガイドするようにしているが、例えば、ガイド壁部をガイド脚部の内側に配置して、ガイドするようにしてもよく(この態様については、後述する他の実施形態で説明する)、また、ガイド壁部にガイド孔やガイド溝を設けて、これらのガイド孔やガイド溝によって、ガイド脚部をガイドするようにしてもよく、ガイド壁部によるガイド脚部をガイドする態様は、特に限定されない。
【0050】
また、各ガイド壁部31の延出壁32の上端部には、矩形孔状をなした被係合部35が形成されている。
図8に示すように、この被係合部35の内側から、キャップ70に設けた係合部76が入り込んで、同係合部76の係合面76aが、被係合部35の、キャップ取付方向Tとは反対側に位置する内面35aに係合することで、取付部30にキャップ70が取付けられるようになっている。
【0051】
なお、この実施形態では、係合部が突起状をなし、被係合部が孔状をなしているが、例えば、係合部を孔状や凹状とする一方、被係合部を突起状として、孔状や凹状の係合部に係合させたり、或いは、係合部及び被係合部の両者を、互いに係合可能な突起状としたりしてもよく、係合部及び被係合部の形状や構造は特に限定はされない。
【0052】
更に、一対のガイド壁部31,31の間であって、仕切壁22を構成する筒状壁22b及び天井壁22cの外周には、それらの壁22b,22cに沿って上方に延びる、一対のキャップ支持リブ36,36が設けられている。
図7に示すように、取付部30にキャップ70が取付けられた際には、これらのキャップ支持リブ36,36の上端面に、キャップ70の腕部72,72が当接して支持されるようになっている。
【0053】
また、
図2や
図5に示すように、仕切壁22の天井壁22cであって、前記一対のガイド壁部31,31から、ケース本体20の内径方向側に所定距離を空けた位置には、受け部37,37が突設されている。
図6に示すように、この受け部37の上方には、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で、キャップ70の屈曲部79が配置されるようになっている。
【0054】
なお、ガイド壁部31を構成する一対の側壁33,33のうち、ケース本体20の内径側に位置する側壁33の上端には、切欠き33aが形成されている(
図2参照)。この切欠き33aを形成したことにより、取付部30にキャップ70を取付けた際に、キャップ70の延出部77の根元部78を受け入れて、同根元部78を、ガイド壁部31の上端から突出させないようにすると共に、前記受け部37の上方に、屈曲部79をなるべく隙間を小さくして配置可能としている。
【0055】
また、取付部30には、ガイド脚部75に設けた、転び防止用の端面(係合部76の端面76c)に対応して、それらの端面と対向する位置に、転び防止部が設けられている。
図6に示すように、この実施形態においては、被係合部35の内面のうち、キャップ70の係合部76の端面76cに対向する、内面35bが本発明における「転び防止部」をなしている。なお、上記受け部37も、キャップ70の屈曲部79の端面79aに対向するため、キャップ70の転びを防止できるようになっている。
【0056】
なお、キャップ取付部としては、上記形状や構造に限定されるものではなく、少なくとも、ガイド脚部の外周の一側面に沿うように延び、バネ押えキャップの取付時にガイド脚部をガイドするガイド壁部と、このガイド脚部に形成され、係合部に係合する被係合部とを有する形状・構造であればよい。
【0057】
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の作用効果について説明する。
【0058】
リリーフ弁65及び同リリーフ弁65を付勢する付勢バネS2を、キャップ70によって抜け止め状態で、取付部30に取付ける際には、例えば、次のようにしてキャップ70を取付ける。まず、第2開口27の通気室R側にリリーフ弁65を配置する。その後、付勢バネS2の一端側から、キャップ70のバネ挿入部71aを挿入して、バネ支持部71により付勢バネS2の一端を支持しておく。この状態を維持しつつ、一対のガイド壁部31,31の内側に、一対のガイド脚部75,75を整合するように配置して、キャップ70を仕切壁22側に向けて、すなわち、キャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込んでいく。すると、
図9(a)に示すように、レール状をなした一対のガイド壁部31,31の内側空間(延出壁32や一対の側壁33,33により画成された内側空間)に、一対のガイド脚部75,75が、その先端部75b,75b側からそれぞれ挿入されて、同ガイド壁部31,31によってガイドされながら、キャップ70が押し込まれていく。
【0059】
更にキャップ70を押し込んでいくと、係合部76のテーパ面76bが、ガイド壁部31の延出壁32の上端部により押圧されて、
図9(b)に示すように、ガイド脚部75の基部75a側が内方に撓んでいく。
【0060】
図9(b)の状態から更にキャップ70が押し込まれると、
図9(c)に示すように、延出壁32の上端部が、ガイド壁囲み部80のテーパ面80aを押圧して、
図9(d)に示すように、ガイド壁囲み部80のテーパ面80aと、ガイド脚部75の基部75a側の外側面75dとの間隙Kを広げつつ、キャップ70が押し込まれていく。
【0061】
そして、係合部76の頂部が被係合部35に至ると、
図9(e)に示すように、ガイド脚部75の基部75aが弾性復帰して、その係合面76aが被係合部35の内面35aに係合し、
図8や
図10に示すように、取付部30にキャップ70を、付勢バネS2の一端を支持した状態で取付けることができる。なお、この状態では、
図10に示すように、一対のバネ保護壁28,28の間に、付勢バネS2が圧縮した状態で抜け止め保持されて、その付勢力によってリリーフ弁65が第2開口27を閉塞する。
【0062】
また、この状態では、
図4や、
図6、
図8に示すように、キャップ支持リブ36,36の上端面に、キャップ70の腕部72,72が当接して支持されると共に、ガイド壁部31の切欠き33aに、キャップ70の根元部78が受け入れられて、キャップ70の略コ字枠状をなした延出部77の内側、すなわち、根元部78と屈曲部79とガイド壁囲み部80との間に、ガイド壁部31の上端部が挿入されて、受け部37の上方に屈曲部79が配置されるようになっている。
【0063】
また、上記取付方法では、予め、キャップ70のバネ挿入部71aを、付勢バネS2の一端に挿入して、付勢バネS2を支持した状態で、キャップ70を押し込むようにしているが、リリーフ弁65の上方に付勢バネS2を載置した後、キャップ70の押込み時に、バネ挿入部71aを付勢バネS2の一端に挿入するようにしてもよい。
【0064】
そして、この弁装置10では、第2開口27の通気室R側にリリーフ弁65を配置した後、バネ支持部71で、付勢バネS2の一端を支持して、一対のガイド脚部75,75を一対のガイド壁部31,31でガイドさせながら、キャップ70を取付方向Tに押し込んで、被係合部35に係合部76を係合させることによって、取付部30にキャップ70を、付勢バネS2の一端を支持した状態で取付けることができる。すなわち、この弁装置10においては、上記特許文献1のリリーフバルブにおける上部キャップのように、溶着によるブラケットに取付ける必要がなく、取付部30に対してキャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込むだけの簡単な作業によって、被係合部35と係合部76とを機械的に係合させて、取付部30にキャップ70をスムーズに取付けることができるので、取付部30に対するキャップ70の取付作業性を向上させることができる。
【0065】
また、この弁装置10においては、
図5に示すように、このフロート弁60の軸方向C(
図7参照)から通気室Rを見たときに、バネ支持部71と、前記一対の係合部76,76とが、通気室Rの内周面に沿って配置されるように構成されているので、上記特許文献1のリリーフバルブにおける、長板状をなした上部キャップのように、弁体を付勢するスプリングを支持する部分と、ブラケットの上方開口部に溶着される部分とが、直線上に配置されている構成と比べて、キャップ70の小型化を図ることができる。
【0066】
更に、この弁装置10においては、
図5や
図7に示すように、バネ支持部71が第2開口27に対向して配置されると共に、係合部76が第1開口23と第2開口27との間に位置するように、キャップ70が取付部30に取付けられるように構成されているので、キャップ70の小型化をより適切に図ることができる。
【0067】
更に、この実施形態においては、
図5に示すように、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、バネ支持部71は、一対のガイド脚部75,75に形成された係合部76,76どうしを結ぶ線Lよりも、ケース15の外径側に位置するように、バネ支持部71と一対のガイド脚部75,75とが位置ずれして設けられている。この態様によれば、一対のガイド脚部75,75がケース内径側に位置し、バネ支持部71がケース外径側に位置することとなるため、通気室R内の空間を無駄なく利用して、キャップ70を取付部30に取付けることができる。特に、この実施形態のように、ケース本体20の周壁21のように、円弧状周面を有している場合には、その周面に沿ってキャップ70を取付部30に取付けることができるので、弁装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0068】
ところで、上記のように、バネ支持部71と一対のガイド脚部75,75が位置ずれして設けられていると、付勢バネS2の弾性力に起因して、一対のガイド脚部75,75に、
図4や
図6に示すようなバネ荷重F1が作用して、キャップ70が転びやすくなる(キャプ70が倒れてしまうこと)場合があった
【0069】
これに対して、この実施形態においては、ガイド脚部75には、ケース外径側に面する端面(ここでは、係合部76の端面76c)が設けられており、また、通気室Rには、ガイド脚部75の、端面と対向する位置に、転び防止部(ここでは、被係合部35の内面35b)が設けられている。そのため、上記のようなバネ荷重F1がガイド脚部75に作用して、キャップ70が転びそうになっても、係合部76の端面76cが被係合部35の内面35bに当接して、キャップ70を支持するため、キャップ70が転んでしまうことを防止することができる(請求項5の効果)。なお、ケース側に設けた受け部37も、キャップ70の屈曲部79の端面79aに対向するため、キャップ70の転びを防止することができる。
【0070】
また、この実施形態においては、ガイド脚部75には、係合部76,76どうしを結ぶ線Lよりも、ケース15の内径側に延出する、延出部77が設けられているので、一対のガイド脚部75,75に、例えば、前記ケース内径側に向かう偏荷重F2(
図6参照)が作用した場合であっても、ガイド脚部75に設けられた延出部77が、ガイド壁部31に当接するため、キャップ70の転びを防止することができる。
【0071】
更にこの実施形態においては、延出部77は、ガイド壁部31を囲むように形成された部分(ガイド壁囲み部80)を有している。そのため、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で、例えば、
図8に示すように、キャップ70に横向きの外力F3が作用しても、延出部77のガイド壁囲み部80によって、ガイド脚部75の外側への開きや内側への倒れ込み等の変形を規制して、被係合部35から係合部76が外れてしまうことを防止することができると共に、キャップ70の位置ずれを確実に規制することができる。
【0072】
また、この実施形態においては、
図9(a)に示すように、ガイド脚部75に設けた係合部76が、ガイド壁囲み部80よりも、キャップ取付方向Tの先端側に偏移して配置されており、取付部30にキャップ70を取付けるべく、キャップ70をキャップ取付方向Tに向けて押し込む際に、ガイド壁部31は、まず係合部76のテーパ面76bに当接し(
図9(b)、その後、ガイド壁囲み部80のテーパ面80aに当接して(
図9(c)参照)、ガイド壁囲み部80とガイド脚部75との間隙Kを広げつつ、キャップ70が押し込まれるように構成されている。そのため、取付部30にキャップ70を取付ける際の、キャップ70の押込み抵抗の増大を抑制することができ、取付部30に対するキャップ70の取付作業性をより向上させることができる。
【0073】
更にこの実施形態においては、
図8に示すように、ガイド脚部75の先端部75bは、被係合部35に係合部76が係合して、取付部30にキャップ70が取付けられた状態で、仕切壁22の底壁22aに近接する位置まで延びている。そのため、
図8に示すように、キャップ70に横向きの外力F3が作用した場合に、ガイド脚部75の先端部75bが、ガイド壁部31の基端側に当接しやすくなるため、ガイド脚部75の外側への開き変形を、より確実に防止することができる。
【0074】
なお、この弁装置10においては、
図7に示すように、燃料タンク1内の燃料液面が上昇せず、フロート弁60が燃料に浸漬されていない状態では、第1開口23が開いている。また、付勢バネS2によって、リリーフ弁65が付勢されて、第2開口27が閉塞されている。この状態で、車両の走行等によって、燃料タンク1内での燃料蒸気が増大してタンク内圧が高まると、燃料蒸気は、下部キャップ50の通口51や、ケース本体20の通口21aから、弁室V内に流入し、第1開口23を通過して、通気室R内へと流れて、燃料蒸気配管44を介して図示しないキャニスターに送られて、燃料タンク1内の圧力の上昇が抑制される。
【0075】
そして、車両が、カーブを曲がったり、凹凸のある道や坂道等を走行したり、或いは、事故によって転倒したりして、燃料タンク内の燃料が激しく揺動して燃料液面が上昇すると、付勢バネS1の付勢力及びフロート弁60自体の浮力によって、フロート弁60が上昇して、
図10に示すように、弁頭61が第1開口23の裏側内周縁に当接して、第1開口23を閉じるので、燃料が第1開口23を通じて通気室R内に流入することが阻止されて、燃料タンク1の外部への燃料漏れを防止することができる。
【0076】
また、
図10に示すように、フロート弁60が上昇して第1開口23を閉じた状態で、なおも燃料タンク1内の燃料蒸気が増大してタンク内圧が高まると、付勢バネS2の付勢力に抗して、リリーフ弁65が押し上げられて第2開口27が開くので(
図10の二点鎖線参照)、燃料蒸気を通気室R側に逃がすことができる。
【0077】
図11~13には、本発明に係る弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この実施形態の弁装置10Aは、キャップ取付部30A及びバネ押えキャップ70Aの構造が前記実施形態と異なっており、ガイド壁部31Aがガイド脚部75Aの内側に配置された構造となっている。
【0079】
具体的には
図12に示すように、この実施形態におけるキャップ取付部30A(以下、単に「取付部30A」ともいう)は、仕切壁22を構成する底壁22aの表面側から、細長い長板状をなした一対のガイド壁部31A,31Aが、所定長さで撓み可能に延設されている。各ガイド壁部31Aの上端部の外側面からは、突起状をなした被係合部35Aが突設されている。
【0080】
一方、
図13に示すように、この実施形態におけるバネ押えキャップ70A(以下、単に「キャップ70A」ともいう)は、バネ支持部71の両側から、段状をなすように一対の腕部72A,72Aが延設されており、これらの腕部72A,72Aの延出方向先端に、連結部73A,73Aを介して、一対のガイド脚部75A,75Aが連結されている。なお、各ガイド脚部75Aは、略コ字枠状のレール形状をなして、キャップ取付方向Tに向けて延びている。このガイド脚部75Aの内側に、前記ガイド壁部31Aが挿入されるようになっており(
図11参照)、同ガイド壁部31Aによって、ガイド脚部75Aがガイドされる。
【0081】
また、各ガイド脚部75Aの基端部側には、矩形孔状をなした係合部76Aが形成されている。そして、
図11に示すように、この係合部76Aと、ガイド壁部31Aに設けた被係合部35Aとが係合することで、取付部30Aにキャップ70が取付けられるようになっている。
【0082】
更に、一対のガイド脚部75A,75Aには、係合部76A,76Aどうしを結ぶ線Lよりも、ケース本体20の内径側に延出する、延出部77A,77Aがそれぞれ延出しいる。
【0083】
そして、この実施形態においては、一対のガイド脚部75A,75Aを、一対のガイド壁部31A,31Aの外側に配置して、キャップ70Aをキャップ取付方向Tに向けて押し込むと、コ字枠状のレール状をなした一対のガイド脚部75A,75Aの内側空間に、一対のガイド壁部31A,31Aがそれぞれ挿入されて、これらの一対のガイド壁部31A,31Aによって、一対のガイド脚部75A,75Aがガイドされながらキャップ70Aが押し込まれていく。すると、一対のガイド脚部75A,75Aの内面によって、被係合部35Aが押圧されて、一対のガイド壁部31A,31Aが内側に撓み変形していき、被係合部35Aが係合部76Aに至ると、一対のガイド壁部31A,31Aが弾性復帰して、被係合部35Aと係合部76Aとが係合して、取付部30Aにキャップ70Aを取付けることができる。
【0084】
このように、この実施形態においても、取付部30Aに対してキャップ70Aをキャップ取付方向Tに向けて押し込むだけの簡単な作業によって、取付部30Aにキャップ70Aをスムーズに取付けることができ、取付部30Aに対するキャップ70Aの取付作業性を向上させることができる。
【0085】
図14~17には、本発明に係る弁装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この実施形態の弁装置10Bは、バネ押えキャップ70Bの構造と、ケース15を構成する上部カバー40Bの構造とが、前記実施形態と異なっている。
【0087】
この実施形態におけるバネ押えキャップ70B(以下、単に「キャップ70B」という)は、前記実施形態のキャップ70と異なり、一対のガイド脚部75,75に、延出部77,77が設けられていない構造となっている(
図14参照)。
【0088】
また、
図15に示すように、上部カバー40Bの、仕切壁22と対向する天井面46側から、仕切壁22に向かって、一対の第1突部47,47が突出している。そして、
図17に示すように、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、取付部30の一対の被係合部35,35は、キャップ70Bの一対の係合部76,76と、前記一対の第1突部47,47との間に配置されるように、キャップ70Bが取付部30に取付けられるようになっている。
【0089】
更に、
図15に示すように、上部カバー40Bの、仕切壁22と対向する天井面46の、前記一対の第1突部47,47との間の位置からは、仕切壁22に向かって、第2突部48が突出している。そして、
図17に示すように、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、キャップ70のバネ支持部71は、上記の第2突部48に重なる位置(ラップする位置)に配置されるように、キャップ70Bが取付部30に取付けられるようになっている。
【0090】
上記のような構成を採用した結果、
図16に示すように、キャップ70Bの一対のガイド脚部75,75の係合部76,76が、一対のガイド壁部31,31の被係合部35,35に係合して、取付部30にキャップ70Bが取付けられた状態では、各ガイド壁部31の延出方向の線先端部の外側に、上記第1突部47が配置されると共に、バネ支持部71の上方に、第2突部48がラップして配置されるようになっている。
【0091】
そして、この実施形態においては、
図17に示すように、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、一対の被係合部35,35は、一対の係合部76,76と、一対の第1突部47,47との間に配置されるようになっている。そのため、取付部30にキャップ70Bが取付けられた状態で、
図16に示すように、キャップ70Bに横向きの外力F3が作用して、ガイド脚部75を介してガイド壁部31が外側へ開こうとしても、第1突部47によってガイド壁部31の開きが規制されるので、ガイド脚部75の外側への開き等の変形を規制して、被係合部35から係合部76が外れてしまうことを防止することができると共に、キャップ70Bの位置ずれを確実に規制することができる。
【0092】
また、この実施形態においては、
図17に示すように、フロート弁60の軸方向Cから通気室Rを見たときに、バネ支持部71は、第2突部48に重なる位置に配置されるようになっている。そのため、取付部30にキャップ70Bが取付けられた状態で、例えば、付勢バネS2からのバネ荷重F1やその他の力等によって、バネ支持部71が浮き上がたり、ガタ付き等が生じても、それらの浮き上がりやガタ付き等を規制することができ、付勢バネS2をしっかりと支持することができる。
【0093】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10,10A,10B 弁装置
15 ケース
20 ケース本体
22 仕切壁
23 第1開口
27 第2開口
30,30A キャップ取付部(取付部)
31,31A ガイド壁部
35,35A 被係合部
40 上部カバー
47 第1突部
48 第2突部
45 シールリング
50 下部キャップ
60 フロート弁
65 リリーフ弁
70,70A キャップ
71 バネ支持部
75,75A ガイド脚部
76,76A 係合部
77,77A 延出部
80 ガイド壁囲み部
R 通気室
V 弁室
S2 リリーフ弁用付勢バネ