IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

特許7194792変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置
<>
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図1
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図2
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図3
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図4
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図5
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図6a
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図6b
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図6c
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図6d
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図7
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図8
  • 特許-変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】変速曲線を変更する装置を含む無段変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F16H9/18 A
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021145157
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2018529049の分割
【原出願日】2016-12-01
(65)【公開番号】P2021193315
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】102015000081842
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ワルター
(72)【発明者】
【氏名】フレスキ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ネスティ,パオロ
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0171443(US,A1)
【文献】特開2002-250417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(2)に接続可能な二輪、三輪または四輪のオートバイ用無段変速装置(1)であって、
Vベルト(6)用の作用面(8a、10a)を備え、前記作用面のうちの一方(8a)を担持する可動ブッシュ(9)を備えた駆動プーリ(4)であって、前記可動ブッシュ(9)が、ローギヤとトップギヤとの間の変速を達成するように速度調整機(12)のローラ(18)の作用の下で軸方向に摺動可能である、駆動プーリ(4)と、
電動機軸(2)に対して固定可能かつ同軸である固定ブッシュ(11)と、
前記固定ブッシュ(11)と前記可動ブッシュ(9)との間の回転を伝達するのに適しており、前記作用面(8a、10a)間の接近を防止するか、または前記作用面(8a、10a)間の接近を容易にするように構成された、前記固定ブッシュ(11)と前記可動ブッシュ(9)との間で動作するカム機構(20、22)と、
を含み、
前記カム機構が、前記固定ブッシュ(11)に固定され、かつ前記固定ブッシュ(11)から径方向外側に突出している少なくとも1つのピン(20)と、前記可動ブッシュ(9)の第1のカム輪郭(22)とを含み、
前記第1のカム輪郭(22)が、前記可動ブッシュ(9)を径方向に貫通するカム開口部(24)の閉じた周縁部で構成され、
前記電動機軸(2)が加速段階で駆動トルクを与える場合に前記ピン(20)が当接する駆動部分(30a)と、前記電動機軸(2)が減速段階で制動トルクを与える場合に前記ピン(20)が当接する、前記駆動部分(30a)とは異なる制動部分(30b)とを有し、
前記駆動部分(30a)は、直線状であって、回転軸線Xに対して所定の角度をなす勾配を有しており、
前記制動部分(30b)は、直線状であって、前記駆動部分(30a)とは逆方向で且つ回転軸線Xに対してより小さい角度をなす勾配を有していることを特徴とする、
変速装置。
【請求項2】
前記ピン(20)が、前記可動ブッシュ(9)の前記第1のカム輪郭(22)と接触するように頭部を覆うプラスチック材料製のフード(26)を含む、請求項1に記載の変速
装置。
【請求項3】
前記フード(26)には、丸みを帯びた輪郭を実現する環状側面(28)が設けられている、請求項2に記載の変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機構に関し、特に、変速曲線を変更する装置を備えたオートバイ用無段変速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この文書では、「オートバイ」という用語は、出願人が販売しているVespa(登録商標)車、Ape(登録商標)車またはMP3(登録商標)車などの揺動式または非揺動式の二輪、三輪または四輪の車両を意味する。
【0003】
無段変速機(Continuously Variable Transmission,CVT)は、変速比を2つの限界値の間で連続的に変化させることができる車両用の自動変速機の一種である。無段変速機は、エンジンサイズが中小規模の二輪車、特にスクータで広く使用されている。
【0004】
従来のCVT(無段変速機)では、変速比の変化は、2つのプーリ(pulley、ベルト車)上のベルトの巻径を変化させることによって起こり、2つのプーリの一方は駆動プーリ(drive pulley)であり、他方は従動プーリ(driven pulley)であり、これらのプーリの少なくとも1つは、自己を構成する2つの部分またはハーフプーリ(half-pulley)を一緒に引き出し、離間させることができる。
【0005】
典型的には、駆動プーリは、一般的に「ローラ(roller)」と呼ばれる遠心重錘(centrifugal mass)で作られた速度調整機を含み、このローラは、それぞれのハーフプーリを軸方向に一緒に引き出すことを実現し、(ハーフプーリが離間した)ローギヤ状態から(ハーフプーリが並置(juxtapose)された)トップギヤ状態に移行する役割を有している。
【0006】
したがって、従来のCVTでは、装置の物理的特性および幾何学的特性が設定されると、変速比はエンジン回転数に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
代わりに、変速曲線を運転者の加速または減速要求に応じて変更することができるCVT変速機構を提供する必要がある。
【0008】
換言すれば、例えば特定の条件から運転者が急に加速または減速を行う場合に、このような要求に適応して対応し、車両の加速または減速を容易にするCVT変速機構を提供する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、上記の必要性を満たす変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、請求項1に記載の変速装置によって達成される。従属請求項は、実施形態の変形を記載する。
【0011】
本発明による変速装置の特徴および利点は、添付の図面による非限定的な例として、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態による車両用変速装置の縦断面図である。
【0013】
図2図2は、可動ブッシュ(mobile bushing)のカム輪郭(cam profile)が強調表示された図1の変速装置の断面図である。
【0014】
図3図3は、さらなる実施形態による、本発明による変速装置の縦断面図である。
【0015】
図4図4は、図3の装置の可動ブッシュのカム輪郭と接触しているフード(hood、覆い)を含むピンを概略的に示す図である。
【0016】
図5図5は、図4の「フード」の平面図である。
【0017】
図6a図6aは、カム輪郭の変形例を示す図である。
図6b図6bは、カム輪郭の別の変形例を示す図である。
図6c図6cは、カム輪郭の他の変形例を示す図である。
図6d図6dは、カム輪郭のさらに別の変形例を示す図である。
【0018】
図7図7は、参考例の変速装置の縦断面図である。
【0019】
図8図8は、図7の変速装置の可動ブッシュおよび固定ブッシュの相互貫入部分を概略的に示す図である。
【0020】
図9図9は、従来のCVT変速機構および本発明によるCVT変速機構における駆動プーリおよび従動プーリの回転を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照すると、符号1は、好ましくは自動二輪車/自動三輪車に適用されるように構成された、回転軸線X(axis of rotation X)を定義する駆動軸2(drive shaft 2)と係合する無段変速装置を包括的に示している。
【0022】
変速装置1は、Vベルト6によって互いに連結される、駆動軸2によって回転駆動される第1の駆動プーリ4と、第2の従動プーリ(図示せず)とを備えている。
【0023】
駆動プーリ4は、対向する円錐台(truncated-cone)状の作用面8a、10a(active surface8a、10a)をそれぞれ備え、前記回転軸線Xに沿って摺動して作用面8aおよび10aを並置し、かつ離間させ、一体的に回転する第1のハーフプーリ8と第2のハーフプーリ10とからなる。
【0024】
第1のハーフプーリ8は、特に、作用面8aを担持し、かつ電動機軸2と同軸のブッシュ8bを提供する可動ブッシュ9と、可動ブッシュ9によって支持され、かつ成形された座部16(shaped seat 16)が設けられたコンテナ14、および座部16に収容された複数のローラ18を含む速度制御機12とを含む。
【0025】
ローラは、エンジン回転数が増加するにつれて第1のハーフプーリ8を第2のハーフプーリ10に向けて押圧し、特に可動ブッシュ9を第2のハーフプーリ10に向けて押圧する遠心重錘を実現する。
【0026】
このようにして、駆動プーリ4上のベルト6の巻径が増大し、伸長不可能なベルトが動作して従動プーリの巻径が縮小し、変速比が増大する(トップギヤ)。
【0027】
駆動プーリ4は固定ブッシュ11をさらに含み、固定ブッシュ11は、回転軸線Xに沿った主要延在部を有し、電動機軸2と同軸で、例えば溝付き輪郭を介して電動機軸2と回転結合される。
【0028】
可動ブッシュ9は、固定ブッシュ11によって回転係合可能であり、それぞれのカム輪郭の係合によって固定ブッシュ11に対して軸方向に並進可能である。
【0029】
変速装置1は、固定ブッシュ11と可動ブッシュ9との間の回転を伝達するのに適しており、作用面8a、10a間の接近を防止するか、または作用面8a、10a間の接近を容易にするように構成された、固定ブッシュ11と可動ブッシュ9との間で動作するカム機構を含む。
【0030】
例えば、第1の実施形態(図1~4)によれば、駆動プーリ4は、例えば鋼鉄製で、固定ブッシュ11に固定された、固定ブッシュ11から径方向外側に突出している少なくとも1つのピン20(図1および図2)を含む。
【0031】
これに対応して、可動ブッシュ9は、例えば可動ブッシュ9を径方向に貫通するカム開口部24の閉じた周縁部からなる第1のカム輪郭22を有する。
【0032】
変形例(図3および図4)によれば、ピン20は、例えば自己潤滑性の(例えばTBD)プラスチック材料などのフード26を含み、フード26は、可動ブッシュ9のカム輪郭22と接触するように頭部を覆う。
【0033】
例えば、フード26には、仮想円筒面30(imaginary circular cylindrical surface仮想円の円筒表面)に内接する丸みを帯びた輪郭をもたらす環状側面28(annular side surface 28)が設けられている。好ましくは、前記側面28は、弧状部分34によって接続された平坦部分32を提供する。
【0034】
有利には、このフードの構造は、固定ブッシュ11によって可動ブッシュ9に伝達される荷重を最小限に抑えることができ、その逆に、可動ブッシュ9によって固定ブッシュ11に伝達される荷重を最小限に抑えることもできる。
【0035】
カム輪郭22は閉鎖されており、電動機軸2が駆動トルクを与える場合(加速段階)にピン20が当接する駆動部分30aと、電動機軸2が制動トルクを与える場合(減速段階)にピン20が当接する、制動部分30bとを有する。
【0036】
例えば図6aでは、電動機軸2の回転方向が矢印Fで示される場合、ピン20は加速段階の間に輪郭22の駆動部分30aに当接し、代わりに、ピン20は減速段階の間に輪郭22の制動部分30bに当接する。
【0037】
第1の実施形態の変形例によれば、カム輪郭は、直線状の駆動部分30aと、駆動部分30aと同じ直線状の制動部分30bを提供し(図6a)、さらなる実施形態の変形例によれば、カム輪郭22は、曲線状の駆動部分30aと、駆動部分30aと同じ曲線状の制動部分30bを提供する(図6b)。
【0038】
さらなる実施形態の変形例によれば、カム輪郭は、例えば、直線状の駆動部分30aと、勾配が駆動部分30aとは異なる直線状の制動部分30bを提供し(図6c)、さらなる実施形態の変形例によれば、カム輪郭22は、例えば、曲線状の駆動部分30aと、パターンが駆動部分30aとは異なる曲線状の制動部分30bを提供する(図6d)。
【0039】
参考例図7および8)によれば、固定ブッシュ11および可動ブッシュ9は互いに軸方向に貫入し、貫入部分は、固定ブッシュ11上の駆動輪郭32aと、可動ブッシュ9上の従動輪郭32bを定義する。
【0040】
この実施形態では、作用面8aを担持するコンテナ14は可動ブッシュ9上で軸方向に移動可能である。
【0041】
変速装置1の通常動作中、運転者がローギヤから加速を行った場合に駆動トルクが電動機軸から伝達された場合、カム機構は、第2のハーフプーリ10の作用面10aへ向かう第1のハーフプーリ8の作用面8aの前進に対抗し(oppose)、これによって変速が遅延し、変速装置の挙動が標準的なCVTよりもスポーティ(sporting)なものになる。
【0042】
電動機軸によって伝達される制動トルクの代わりに、例えばスロットルまたは制動を解除することによって運転者が減速を行った場合、または車両がトップギヤから開始して下り坂を移動する場合、カム機構は、第1のハーフプーリ8の作用面8aを第2のハーフプーリ10の作用面10aから容易に離間させ、これによりシフトダウンが促進され、したがって標準的なCVTよりも際立った減速が促進される。
【0043】
革新的には、上述の変速装置は、運転者の加速または減速の要望に対応することができるので、前述の必要性を満たすことができる。
【0044】
さらに有利には、カム機構の輪郭を適切に成形することにより、程度の差はあるが加速または減速に突然応答する変速装置を設計することが可能である。
【0045】
例えば、図9は、従来のCVT変速機構および本発明によるCVT変速機構の駆動プーリおよび従動プーリのエンジン回転を示している。本発明によるCVT変速機構については明らかに大きなヒステリシスを示している。
【0046】
さらに有利な態様によれば、適切に成形されたピンに適用されたフードを使用して、ピンと可動ブッシュとの間に集中する応力を制限することが可能である。
【0047】
さらに有利には、前記フードがプラスチック材料製である場合、ピンと可動ブッシュとの間の潤滑の必要性を排除することができる。
【0048】
添付の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内に含まれる不定の要件を満たすように、上述の変速装置を変更することができることは当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9