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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】試料除去領域選択方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20221215BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221215BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/17 A
G06T7/00 630
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021209046
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2018501905の分割
【原出願日】2016-07-15
(65)【公開番号】P2022050455
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】15176985.8
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ボアムファ,マリウス ヨシフ
(72)【発明者】
【氏名】ピーリク,アンケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィムベルガー-フリードル,ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ファン レーウェン,マリニュス バスティアーン(リーン)
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525579(JP,A)
【文献】特開2003-161893(JP,A)
【文献】特開2001-091822(JP,A)
【文献】特表2001-502414(JP,A)
【文献】特開2012-073953(JP,A)
【文献】特開2010-211303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0099390(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G01N 33/48 - 33/98
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子診断のために除去すべき未染色組織試料の試料除去領域を選択する方法であって、
a)対象物の参照スライスの参照画像における参照除去領域を選択するするステップであって、前記参照スライスにおける生物学的材料は染色組織サンプルであるステップと、
b)イメージング設定下で、前記対象物のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、
前記サンプルスライス中の生物学的材料は、パラフィンに埋め込まれた非染色組織サンプルであり、前記サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け取られ、明視野顕微鏡の光源と画像検出器との間の光路に配置され、
光源と画像検出器との間の光路には、パラフィンに埋め込まれた未染色の生体材料と背景との間のコントラストを改善するコントラスト増強構成がさらに設けられ、
前記サンプルスライスを通過し、前記画像検出器によって受光される光が提供され、
e1)デジタルサンプル画像における背景領域の平均強度値を計算し、
e2)計算された平均強度値よりも高い強度値をクリッピングして、クリッピングされたデジタルサンプル画像を提供し、
e3)クリッピングされた画像の強度値のモルフォロジカルクロージングを実行して、クローズドデジタルサンプル画像を提供し、
e4)クローズドデジタルサンプル画像を、ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として提供する
ステップと、
c)デジタルサンプル画像を参照画像とレジストレーションし、参照画像内の参照除去領域をデジタルサンプル画像に平行移動するステップと、
d)平行移動された参照除去領域に基づいて、デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル病理学の分野に関し、特に、デジタル病理学で使用されるシステム、デジタル病理学を分子診断と統合する方法に関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム要素ならびにコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル病理学は、生体物質(例えば、組織)を含むサンプルスライドのデジタル画像の作成、閲覧、管理、共有、分析、および解釈を指し、デジタルイメージング環境に特有のワークフローに関する考慮を含む。デジタル病理学の重要な性能面は、デジタル画像の画質です。例えば、サンプルスライドが、染色されていない組織など、染色されていない生体物質を含む場合、一部のデジタル画像は弱いコントラストを有することがある。コントラストが弱いと、デジタル画像の可読性に影響を及ぼし、例えば、コンピュータアルゴリズムによる自動レジストレーションを困難にする。例えば、特許文献1には、画像レジストレーション方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,229,194B2号
【発明の概要】
【0004】
分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルの関心領域を選択するプロセスにおいてワークフローを改善するためのシステムを提供する必要があり得る。
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の主題により達成され、さらに別の実施形態は従属請求項に記載されている。本発明の以下に記載された態様は、デジタル病理学において使用するシステム、分子診断とデジタル病理学を統合する方法、コンピュータプログラム要素、およびコンピュータ可読媒体にも適用されることに留意すべきである。
【0006】
本発明の第1の態様によると、分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルのサンプル除去領域を選択する方法が提供される。本方法は次のステップを含む:a)対象の参照スライスの参照画像内の参照除去領域を選択するステップであって、前記参照スライス内の生体物質は染色されている、ステップと、b)イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質は染色されていない、ステップとを含む。サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、光源と画像検出器との間の光路内に配置される。光源と画像検出器との間の光路には、染色されていない生体物質と背景の間のコントラストを改善するコントラスト強調装置がさらに設けられる。サンプルスライスを通過して画像検出器によって受け取られる光が提供される。c)前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像内の前記参照除去領域を前記デジタルサンプル画像にトランスレートするステップと、d)トランスレートされた参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定することとを含む。
【0007】
一例では、デジタル病理学を分子診断と統合する方法が提供される。本方法は次のステップを含む:a)染色されていない生体物質を含む対象物のサンプルスライスを有するサンプルスライドを受け入れ、光源と画像検出器との間の光路に前記サンプルスライスを配置するステップとを含む。 光源と画像検出器との間の光路には、生体物質対背景のコントラストを改善するコントラスト強調装置がさらに設けられている。b)前記サンプルスライスを通過して前記画像検出器によって受け取られる光を供給するステップと、c)イメージング設定の下で前記サンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップと、d)前記デジタルサンプル画像を対象の参照スライスの参照画像とレジストレーションして、前記参照画像内の参照除去領域をデジタルサンプル画像にトランスレートするステップとを含む。
【0008】
有利なことに、染色されていない生体物質(例えば、組織)と背景(例えば、包埋パラフィン)との間のコントラストを増大させることができる。したがって、レジストレーション装置は、サンプルスライド上の染色されていない生体物質を識別し、デジタルサンプルスライドを参照スライドに自動的にレジストレーションすることができる。これにより、参照スライドを見て、参照スライドとサンプルスライドとを比較することによって、マニュアルレジストレーションを必要としない、デジタル作業方法をさらに可能にすることができる。したがって、デジタル病理学ワークフローを改善することができる。コントラストの増大により、染色されていない生体物質を検出する際に病理学者を支援し、参照スライドを用いてサンプルスライドと非染色生物学的材料とを視覚的に比較するユーザ(例えば実験技師)の負担を軽減して、分子テスト用に正しいセクションが選択されるようにする。
【0009】
本発明の第2の態様により、分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルのサンプル除去領域を選択するシステムが提供される。このシステムは、画像形成装置およびレジストレーション装置を含む。前記画像形成装置は、光源と、対象受け入れ装置と、画像検出器とを有する。前記光源と前記画像検出器とが光路内に配置される。前記光源は、サンプルスライドを通過して前記画像検出器によって受け取られる光を提供するように構成される。対象受け入れ装置は、サンプルスライス内の生体物質が染色されていない対象のサンプルスライスを有するサンプルスライドを受け入れ、サンプルスライスを、サンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するために光路に配置するように構成される。光源と画像検出器との間の光路には、染色されていない生体物質と背景の間のコントラストを改善するコントラスト強調装置がさらに設けられる。 前記レジストレーション装置は、前記対象の参照スライスの参照画像を受け取るように構成され、前記参照スライス内の生体物質は染色されており、参照画像において参照除去領域が確定される。 前記レジストレーション装置はさらに、前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像の参照除去領域をデジタルサンプル画像にトランスレートし、トランスレートされた参照除去領域に基づいて前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を識別するように構成される。
【0010】
一例では、デジタル病理学において用いるシステムが提供される。このシステムは、画像形成装置およびレジストレーション装置を含む。前記画像形成装置は、光源と、対象受け入れ装置と、画像検出器とを有する。前記光源と前記画像検出器とが光路内に配置される。前記光源は、サンプルスライドを通過して前記画像検出器によって受け取られる光を提供するように構成される。対象受け入れ装置は、染色されていない生体物質を含む対象のサンプルスライスを有するサンプルスライドを受け入れ、サンプルスライスを、サンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得する光路に配置するように構成される。レジストレーション装置は、前記デジタルサンプル画像を対象の参照スライスの参照画像とレジストレーションして、前記参照画像内の参照除去領域をデジタルサンプル画像にトランスレートするように構成される。光源と画像検出器との間の光路には、生体物質対背景のコントラストを改善するコントラスト強調装置がさらに設けられている。
【0011】
本発明の第3の態様によると、上述の、及び以下の実施形態のうちの1つによる装置を制御し、処理ユニットによって実行されるとき、本発明の方法を実行するように適合されるコンピュータプログラム要素が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によると、プログラム要素を格納したコンピュータ可読媒体が提供される。
【0013】
一例によれば、前記コントラスト強調装置は偏光子装置を有し、前記偏光子装置は、第1の偏光子と、第2の偏光子とを有する。前記対象受け入れ装置は、前記第1の偏光子と前記第2の偏光子との間の光路に前記サンプルスライスを配置するように構成される。偏光子配置の提供は、関心領域の注釈付け、及び/又はオペレータ及び/又は関心領域の自動位置合わせによる領域の除去、及び/又は参照画像内に定義された領域の除去のため、染色されていない生体物質(例えば、パラフィン包埋された非染色組織)の光学コントラストを強調し得る。これにより、分子診断を達成するために、例えばデジタル信号のためのデジタルおよび自動のサンプル選択方法が提供され、これによりパラフィンスライドを参照スライドと視覚的に比較するための退屈で面倒な作業の負担を軽減することができる。
【0014】
一例によれば、前記コントラスト強調装置は光学フィルタ装置を有し、前記光学フィルタ装置は、着色ガラスフィルタと、着色プラスチックフィルタと、ゼラチンフィルタと、誘電体フィルタと、プラズモンフィルタとよりなるグループから選択された少なくとも1つの光フィルタを有する。
【0015】
光学フィルタの使用はまた、染色されていない生体物質と、パラフィンを含み得る周囲の背景との間のコントラストを高めることができる。蛍光検出に使用される光学フィルター(例えば、バンドパスフィルター)を用いて、偏光子による自己蛍光(生体物質による光が吸収されたときの発光)を含めることが可能である。
【0016】
着色されたガラスフィルタは、着色ガラスに関連し得る。
【0017】
着色されたプラスチックフィルタは、プラスチックマトリックスに埋め込まれた発色団色素に関連し得る。
【0018】
誘電体フィルタは、選択反射器または透過器として作用するガラスまたはプラスチック支持体上にデポジットされた誘電体多層構造を含むことができる。
【0019】
プラズモンフィルタは、例えば、ガラスまたはプラスチック基板上に堆積された金属ナノ構造におけるプラズモン共鳴に基づくカラーフィルタに関連する。
【0020】
一例では、前記レジストレーション装置は、前記参照画像の参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を識別するように構成される。
【0021】
識別されたサンプル除去領域は、サンプルスライド上の除去領域を見つけるための参照として使用することができる。
【0022】
一例によれば、システムはマーキング装置をさらに備える。 前記マーキング装置は、前記デジタルサンプル画像において識別された前記サンプル除去領域に基づいて、前記サンプルスライド上に除去マークを提供するように構成される。
【0023】
除去マークは、生体物質が除去される領域を示す。オペレータ(例えば、研究技師)は、生物学的材料を手動で除去することができる。あるいは、切開装置を利用して生体物質を除去してもよい。
【0024】
一例によれば、システムは切開装置をさらに備える。切開装置は、サンプルスライスから除去領域内の生体物質を除去するように構成される。除去領域は、デジタルサンプル画像30内で識別されたサンプル除去領域54に基づき、設けられる。
【0025】
切開装置を使用することにより、(例えば、指でスライドに触れることによる)汚染の危険性または精度の欠如を回避することができる。さらに、サンプルの選択および切開のワークフローを改善することができる。
【0026】
一例では、画像形成装置は明視野顕微鏡である。
【0027】
一例では、ステップb)はさらに、c1)異なるイメージング設定の下で前記サンプルスライスのさらに別のデジタルサンプル画像を取得するステップと、c2)ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として、前記デジタルサンプル画像と前記さらに別のデジタルサンプル画像との和を提供するステップとを含む。
【0028】
デジタルサンプル画像は、背景領域(例えば、パラフィンを含む領域)における強度変動を含むことができる。異なるイメージング設定の下での2つ以上のデジタルサンプル画像の組み合わせは、このような不均一な背景を除去または抑制し、デジタルサンプル画像と画像レジストレーションのための参照画像との間の類似性を増加させる可能性がある。
【0029】
一例では、ステップb)のイメージング設定は、次のグループのうち少なくとも1つのパラメータを含む:前記偏光子構成内の偏光子の相互配向、前記サンプルスライスに対する前記偏光子構成の配向と、光の波長と、前記光路内の複屈折媒質の配置。
【0030】
一例では、ステップc)の前に以下のステップが設けられる:e1)デジタルサンプル画像内の背景領域の平均強度値を計算するステップと;e2)計算された平均強度値より高い強度値をクリップして、クリップされたデジタルサンプル画像を提供するステップと、e3)クリップされた画像の強度値の形態学的クロージングを実行して、クローズドデジタルサンプル画像を提供するステップと、e4) ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として前記クローズドデジタルサンプル画像を提供するステップとが設けられ、好ましくは、さらに、e5)参照画像内の強度値の形態学的クロージングを実行して、クローズド参照画像を提供するステップと;e6) ステップc)で使用する参照画像として前記クローズド参照画像を提供するステップとを含む。
【0031】
デジタルサンプル画像はまた、背景領域にスポット(強度変動を有するピクセル)を含むことができる。デジタルサンプル画像内および任意的に参照画像内の強度値のクリッピングおよび形態的クロージングにより、背景領域内の強度変動が平滑化され得る。画像ペア(デジタルサンプル画像および参照画像)の外観における類似性は、画像位置合わせのために改善され得る。
【0032】
一例によれば、以下のステップの少なくとも1つが、ステップd)の後に設けられる:f)参照画像内の参照除去領域に基づいて、デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップと、g)デジタルサンプル画像において識別されたサンプル除去領域に基づいて、サンプルスライド上に除去マークを提供するステップと、h)除去領域内の生体物質をサンプルスライスから除去するステップであって、除去領域は、デジタルサンプル画像において識別されたサンプル除去領域に基づいて提供されるステップ。
【0033】
除去領域内の生体物質は、これらの領域で実施される分子診断試験のために除去される。デジタル病理学および分子診断のより良い統合が提供され得る。
【0034】
以下の説明において、「生体物質(biological material)」という用語は、ヒトまたは非ヒトの領域から得られる組織、細胞、または体液または他の物質に関する。生体物質は、生物から、または非生物(死んだ)生物からも得ることができる。例えば、疑わしい癌のタイプに応じて、生体物質は、パンチ/コア生検、切除/切開生検などの様々な方法で得ることができる。
【0035】
用語「対象(object)」は、生体物質のサンプル、特に物質ブロックを形成するサンプルに関する。したがって、対象は、「対象サンプル」、「物質サンプル」、または「対象ブロック」とも呼ばれることがある。
【0036】
「サンプルスライス」という用語は、生体物質の(小さい)部分、例えば、組織、細胞、または体液のような、生体物質(biological material)の薄いスライスに関する。これは、例えば、パラフィン包埋された病理学的標本を(例えば、化学的固定、処理および包埋手順の後に)薄片に細断することにより得られる。スライスの厚さは、数マイクロメートルのオーダーに関連する。例えば、サンプルスライスの厚さは、2ないし4マイクロメートルであってもよい。用途に応じて、サンプルスライスは、0.5ないし50マイクロメートルの範囲の厚さを有することもできる。たとえば、いくつかのサンプルスライスが対象から順に切り取られる。
【0037】
「サンプルスライド」という用語は、正確な視覚化および/または画像取得のためにサンプルスライスが(ガラス)スライド上に取り付けられるガラススライドまたは他の透明なキャリア材料に関する。したがって、「サンプル」という用語は、病理学的スライドまたはスライドとも呼ばれ得る。サンプルスライドは、例えば組織病理学的スライド(すなわち、生検の組織またはスライド上にマウントされた外科用標本)ならびに細胞学スライド(すなわち、スライド上に取り付けられた遊離細胞または組織断片)を含む。
【0038】
用語「参照スライス」は、参照スライドによって支持される生物学的材料の薄いスライスに関連し得る。これでは、関心領域(例えば、組織のような生物学的材料を含む領域)または関心領域(例えば、分子検査目的のために組織が掻き取られた領域)の除去が、コンピュータアルゴリズムまたはユーザ(病理学者)のいずれかによって注釈付けまたはマークされる。例えば、参照スライスは、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)染色スライスなどの染色スライスであり、病理学者は関心領域を特定したり、関心領域を除去したりすることができる。病理学者は、関心領域を示すか、または参照スライス上の関心領域を除去することができる。参照として役立ち得る正常組織領域を示す追加のコメントも同様に記載することができる。
【0039】
「参照スライス」という用語は、同じ光学的設定で撮像された先の非染色のサンプルスライスに関連していてもよい。例えば、4つのスライスA、B、CおよびDがあり、スライスAが染色され(例えば、H&E染色され)、スライスB、CおよびDは染色されていない(または異なる処理を受けている)とする。染色されたスライスAの、染色されていないスライスBとのレジストレーションを開始し、次いで染色されていないスライスBの、染色されていないスライスCとのレジストレーション、及び染色されていないスライスCの、染色されていないスライスDとのレジストレーションを行うことが可能である。
【0040】
用語「参照除去領域」は、参照画像内の領域(例えば、H&E染色画像)を指し、これは関心領域(例えば、組織を含む領域)または除去領域(例えば、分子診断試験のために組織が掻き取られる領域を含む領域)を示すために注釈またはマークされる。
【0041】
「サンプル除去領域」という用語は、デジタルサンプル画像内の領域(すなわち、サンプルスライスのデジタル画像)を指し、これは参照除去領域と重複するまたは一致する特徴を有する。
「除去領域」という用語は、サンプルスライス内の領域を指し、生体物質は、例えば、さらに別の分子診断試験のために、試験管中で除去され、回収される。
【0042】
「デジタルサンプル画像」という用語は、サンプルスライド上のサンプルスライスのデジタル表現に関連し、そのため、デジタルスライドまたはデジタル化スライドガラスとも呼ばれる。画像データは、スキャナのような画像形成装置を用いてサンプルスライドから生成される。デジタルサンプル画像は、画像管理システム(IMS)から取得することもできる。
【0043】
用語「参照画像」は、参照スライスのデジタル表現に関する。参照画像は、例えば、関心領域又は関心除去領域を示す注釈又はマーク、及び参照として機能する正常組織領域を示すコメントを含み得る。アノテーション、マーク、及びコメントは、参照スライスを担う参照スライド上に直接表示されてもよいし、例えば、コンピュータ画面上に表示されてもよい。同様に、イメージスキャナーまたは顕微鏡によって参照画像を取得することができる。あるいは、インターネットを介してローカルまたは遠隔的にアーカイブまたはインテリジェント検索を可能にするIMSによって、参照画像を提供することができる。
【0044】
本発明の一態様によると、デジタル病理学における画質を改善するシステムが提供される。このシステムは、染色されていない生体物質を含むサンプルスライドのデジタルサンプル画像を取得する、2つの偏光子および/または少なくとも1つの光学フィルタを有する明視野顕微鏡などの画像形成デバイスを備える。サンプルスライドは、透過モードで互いに角度をなして配向された2つの偏光子の間に配置される。偏光子の角度は、最適コントラストのために0°ないし90°の間で選択することができる。光学フィルタはまた、コントラストを高めるために使用されてもよい。例えば、光学フィルタは、蛍光検出のためのバンドパスフィルタとして設けられてもよい。光学フィルタと2つの偏光子を組み合わせて、偏光を有する自己蛍光を含むことも可能である。類似の外観を示す一致する画像特徴に基づく画像レジストレーションを用いて、偏光子および/または光学フィルタで得られたデジタルサンプル画像と、参照画像(例えばH&E染色画像)とのレジストレーションを行うことができる。しかし、画像ペア(デジタルサンプル画像および参照画像)の外観の類似性は、例えば生体物質を取り囲む背景領域における強度変動のため、比較的低くてもよい。非染色サンプルのデジタルサンプル画像における背景構造を低減し、画像ペアの外観の類似性を向上させるために、2つの方法を提案する:(i)画像処理に基づく方法、及び(ii)偏光子ペアおよび/または光学フィルタで取得された少なくとも2つの画像の合成を使用する方法。このようにして、画質、例えば、コントラスト及び類似性をさらに向上させることができる。結果として、無染色のサンプルとの参照スライドのレジストレーションの性能も向上させることができる。レジストレーション結果に基づいて、システムはさらに、サンプルスライド上の除去領域をマーキングまたは指示するためのマーキング装置を備えることができる。分子診断の目的のために、除去領域内の生体物質を除去する切開装置を設けることもできる。このようにして、サンプル選択ワークフローも改善することができる。
【0045】
本発明のこれらの態様等は、以下に説明する実施形態から明らかであり、これらの実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
以下の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を以下に説明する。
図1】デジタル病理学で用いるシステムの一例を示す。
図2A】参照画像の一例を示す。
図2B】互いに平行な2つの偏光子で得られた、図2Aのデジタルサンプル画像を示す。
図3A】参照画像の別の一例を示す。
図3B図3Aの参照画像とレジストレーションされたデジタルサンプル画像を示す。
図4】デジタル病理学を分子診断と統合する方法の基本的方法ステップの一例を示す。
図5】方法の別の一例を示す。
図6A】デジタルサンプル画像の別の一例を示す。
図6B図6Aの拡大された領域を示す。
図6C図6Bの、クリップされたデジタルサンプル画像を示す。
図6D図6Cの閉じたデジタルサンプル画像を示す。
図7】方法のさらに別の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、デジタル病理学で用いるシステム10の一例を示す。システム10は、画像形成装置12およびレジストレーション装置14を含む。画像形成装置12は、光源16、対象受け入れ装置18(詳細には図示せず)および画像検出器20を含む。光源および画像検出器は、光路22(破線で示す)に配置されている。破線は、説明目的のみのためであり、特許請求される発明の一部を構成しない。
【0048】
光源16は、サンプルスライド26を通過し画像検出器20によって受け取られる光24(矢印で示す)を供給するように構成されている。対象受け入れ装置18は、染色されていない生体物質を含む対象のサンプルスライス28を有するサンプルスライド26を受け入れ、サンプルスライス28のデジタルサンプル画像30(図1には図示せず、図2Bおよび図3Bの例を参照)を取得するために、光路22にサンプルスライス28を配置するように構成される。レジストレーションは、対象の参照スライス34(図1には示さず、図2Aおよび図3Aの例を参照)を受け入れるように構成されている。参照スライス34内の生体物質は染色されていない。参照画像32において、参照除去領域36(図3A参照)が選択される。レジストレーション装置14は、参照画像32中の参照除去領域36(図3A参照)をデジタルサンプル画像30にトランスレートするため、デジタルサンプル画像30を対象の参照スライス34の参照画像32とレジストレーションするように構成されている。レジストレーション装置14はさらに、参照画像32のトランスレートされた参照除去領域36(図3Aおよび図3B参照)に基づいて、デジタルサンプル画像30内のサンプル除去領域54(図3B参照)を特定するように構成される。
【0049】
光源16と画像検出器20との間の光路22には、生体物質対背景のコントラストを改善するコントラスト強調装置38がさらに設けられている。
【0050】
当業者には言うまでもなく、画像形成装置12は、照明光学系、対物レンズ、鏡筒(tube lens)など、その他の光学部品を含むことができる。しかしながら、本技術の説明を容易にするために、これらの付加的な(または任意的な)光学的構成要素についてはここでは説明しない。画像形成装置は画像取得装置とも呼ばれることもある。
【0051】
一例では、画像形成装置12は明視野顕微鏡である。
【0052】
一例として、光源16は、サンプルスライド26の均等照明のためのバックライト照明として設けられた白色LEDであってもよい。必要に応じて、サンプルスライス28を走査するため、光源16の並進運動を制御する並進装置を設けてもよい。
【0053】
サンプルスライス28は、染色されていない生体物質を含み、パラフィンに包埋されていてもよい。サンプルスライス28は、サンプルスライド26上に支持され、例えば配置され、または固定され(「マウント」され)、次いで、共に、観察および/または画像取得のために、物体受け入れ装置18によって、光路22に挿入される。図1には示されていないが、カバー、例えば薄いガラス層またはプレートを設けて、サンプルスライス28を保護および保持することができる。
【0054】
対象物受け入れ装置18は、サンプルスライドを適所に固定するスライドホルダ(例えば、スライドクリップ、スライドクランプまたはクロステーブル)を備えた手動ステージまたは電動ステージを備えることができる。スライドホルダはまた、例えば自動化/コンピュータ操作システムにおいては、特に、汚染の危険性または精度の不足のために、指でスライドに触れることが適当でない場合、電動化され、ステージ上のスライドの正確で遠隔の移動を実現する。
【0055】
サンプルスライド26を通過する光24は、画像検出器20によって捕捉される。画像検出器は、画像を得るデジタルカメラで使用されるものと同様のタイプのセンサとして提供され、画像は、コンピュータモニタ上に表示されるか、保存され画像管理システムに転送される。これらのセンサは、アプリケーションに応じて、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電荷結合素子(CCD)技術を使用することができる。画像形成装置12がスライドスキャナとして設計される場合、画像検出器20としてラインスキャンカメラを用いてもよい。
【0056】
生体物質対背景コントラストを改善するために、コントラスト強調装置38が、光源16と画像検出器20との間の光路22に配置される。
【0057】
図1のオプションとして示される例では、コントラスト強調装置38は、偏光子配列40を含む。偏光子配列40は、第1の偏光子42および第2の偏光子44を含む。対象受け入れ装置18は、画像取得のために第1の偏光子42と第2の偏光子44との間の光路22にサンプルスライス28を配置するように構成される。
【0058】
第1の偏光子は偏光子と呼ばれることがあり、第2の偏光子はアナライザーと呼ばれることがある。
【0059】
第1の偏光子と第2の偏光子は、互いに対して回転可能であってもよい。
【0060】
偏光板(偏光フィルタ)や偏光プリズムを偏光子として用い、光を偏光、例えば直線偏光に変えることができる。
【0061】
一例では、第1および第2の偏光子が交差している、すなわち、それらの振動方位角が互いに直角に配置されている。標本が顕微鏡ステージ(または顕微鏡スライドの支持体)に置かれていない場合、光は光学系を通過することができず、暗い背景が画像内に提示される。照明されると、顕微鏡スライド上のサンプルスライス内のパラフィンは、光がアナライザ(第2の偏光子)によって部分的に透過されるため、偏光の振動方向を変化させ、画像内の暗い背景に明るい領域を生成する。
【0062】
別の一例では、第1および第2の偏光子は平行であり、すなわち、それらの振動方位角は互いに平行に配置されている。第1の構成とは異なり、サンプルが顕微鏡ステージ上に置かれていないとき、光は光学系を通過し、明るい背景を生成する。サンプルスライス内のパラフィンの存在は、偏光された光の振動方向を変化させ、したがって画像内の明るい背景に暗い領域を生成する。
【0063】
偏光子の両方の構成では、組織の輪郭をはっきりと識別することができ、組織内を詳細に見ることができる。領域の輝度は、偏光子の向きに依存する。パラフィンは交差した偏光子配置では明るくなるが、組織は平行の偏光子配置においてより明るくなる。これは、組織とパラフィンとの間の複屈折の差によって引き起こされる。組織領域内に存在するパラフィンは局所的に異なり、それにより組織形態の可視性をもたらす。
【0064】
例えば、図2Aは、H&Eで染色されたパラフィン包埋組織の参照画像32を示す。図2Aでは、偏光子を使用しない参照(H&Eスライド)画像32が示されており、参照スライス34の組織部分46がはっきりと見える。
【0065】
図2Bでは、2つの偏光子が平行構成であるとき、デジタルサンプル画像30が取得される。明確化のために、異なる領域-組織セクション46、パラフィン領域48、およびガラス50が示されている。
【0066】
原理的には、2つの偏光子の間の任意の角度を使用して、所望のコントラストおよび検出可能な特徴を最適化することができる。例えば、第1および第2の偏光子の振動方位の間の角度は、10°、30°、60°、またはその他の任意の適切な程度であってもよい。
【0067】
さらに別の一例では、異なる偏光子配向で撮られた複数の画像の情報を合成することができる。
【0068】
偏光子配置を使用することにより、染色されていない生体物質と、その生体物質を取り囲む背景領域(例えば、パラフィンを含む領域)との間のコントラストが改善され得る。改善されたコントラストは、背景に対する生体物質の可視性を高めることができる。
【0069】
さらに別の例では、オプションとして図1にも示されているが、コントラスト強調装置は、着色されたガラスフィルタ、着色されたプラスチックフィルタ、ゼラチンフィルタ、誘電体フィルタ、プラズモニックフィルターのグループから選択された少なくとも1つの光学フィルタを有する光学フィルタ装置52を含む。
【0070】
光学フィルタを用いて、他の色を反射または吸収しながら、小さな範囲の色の光を選択的に通過させる。光学フィルタは、フルオロフォアで標識された生体物質または自己蛍光を発する生体物質のスペクトル励起および発光特性と一致するように選択され得る。言い換えれば、光学フィルタは、励起フィルタによって透過されたすべての光を減衰し、標識された生体物質または自己蛍光を発する生体物質によって放出された任意の蛍光を非常に効率的に透過する。
【0071】
光学フィルタは、バンドパスフィルタ、ロングパスカットオンフィルタ、およびショートパスカットオフフィルタのうちの少なくとも1つを含むように構成することができる。
【0072】
バンドパスフィルタは、明確に定義された短波長カットオンと長波長カットオフを有する。ロングパスカットオフフィルターは、スペクトルの有効範囲(具体的な用途に依存する)にわたって、より短い波長を減衰させ、より長い波長を透過する。ショートパスカットオフフィルタは、スペクトルの有効範囲にわたって、より長い波長を減衰させ、より短い波長を透過する。
【0073】
偏光子配列40および光学フィルタ配列52の両方が図1に示されているが、これらはオプションとして提供されることにも留意されたい。
【0074】
一例では、偏光子配列40のみが提供され、光路22内に配置される。別の一例では、光フィルタ配列52のみが提供され、光路22内に配置される。さらに別の一例では、図1に示したように、偏光子装置40と光フィルタ装置52の両方が設けられ、光路22内に配置されている。
【0075】
(コントラスト強調された)デジタルサンプル画像30は、参照画像32とレジストレーションされ、レジストレーション装置14によって参照画像32の参照移動領域36をデジタルサンプル画像30に平行移動する。
一例では、レジストレーション装置14は、画像処理ユニットに関する。
【0076】
上述したように、参照除去領域36は、例えば、分子検査のために、組織が掻き取られる領域に関する。一例では、参照画像32内の参照除去領域36は、参照スライス34の形態または染色パターンに基づく。
【0077】
病理学者は、参照画像内の参照除去領域をデジタル選択することができる。参照画像内の参照除去領域を選択するために、対応する参照スライスは、一般的には、例えばH&Eで予め染色される。病理学者は、例えば参照スライド上の組織内の異なる領域を示すために異なる色のペンを使用することによって、参照スライス上の参照除去領域に直接アノテーションを付けることもできる。アノテーションされるスライドを参照スライドとして使用できる。あるいは、病理学者は、参照除去領域をスクリーン上にデジタルでアノテーションすることができる。別の一例として、参照除去領域は、例えば、ある特徴(強度、色、輝度など)に基づいて参照画像内の参照除去領域を決定するコンピュータアルゴリズムを用いて検出することができる。
【0078】
レジストレーションは、参照画像とデジタルサンプル画像との間の重複する特徴を検出することによって行うことができる。デジタルサンプル画像を回転、並進、又は伸張して参照画像に合わせることもできる。
例えば、画像レジストレーションの場合、参照画像の少なくとも一部の特徴(例えば、A,B、C)はサンプル画像の同様の特徴(例えば、A’、B’、C’)に投影される。
【0079】
図3Aおよび図3Bは、染色されていないパラフィン包埋組織の参照(H&Eスライド)画像32およびデジタルサンプル画像30のレジストレーション結果を示す。参照除去領域36は、本技術の説明のために四角で示されている。レジストレーション装置14は、参照画像32の参照除去領域36に基づいて、デジタルサンプル画像30内のサンプル除去領域54(図3B参照)を特定するように構成される。
【0080】
別のオプションとして、これも図1に示されるように、システム19はさらにマーキング装置56を含む。マーキング装置56は、デジタルサンプル画像30において識別されるサンプル除去領域54に基づいて、サンプルスライド26に除去マーク(図示せず)を提供するように構成されている。
除去マークは、生体物質が除去されるサンプルスライド26上の領域を示す、例えば着色またはパターン化されたマークであってもよい。
【0081】
切開装置58を図1にオプションとして示したが、これを設けてもよい。これは、除去領域(図示せず)内の生体物質をサンプルスライス28から除去するように構成される。除去領域は、デジタルサンプル画像30内で識別されたサンプル除去領域54に基づき、設けられる。
【0082】
言い換えると、切開装置58は、レジストレーション結果によって提供される情報に従った除去領域の検出に基づいて、例えば、除去領域内の組織を、例えば、その領域で実施される分子診断試験を目的として、除去する。例えば、除去領域内の選択された組織は、複数のスライドから削り取られ、単一の試験管にプールされてもよい。
【0083】
図4は、分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルのサンプル除去領域を選択する方法100の基本ステップの一例を示す。 方法100は、次のステップを含む:
-第1のステップ102において、これはステップa)とも呼ばれるが、対象の参照スライスの参照画像において参照除去領域が選択される。参照スライス内の生体物質は染色されている。
-第2のステップ104において、これはステップb)とも呼ばれるが、対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像が画像設定の下で得られる。サンプルスライス内の生体物質は染色されていない。サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、光源と画像検出器との間の光路内に配置される。光源と画像検出器との間の光路には、染色されていない生体物質と背景の間のコントラストを改善するコントラスト強調装置38がさらに設けられる。サンプルスライスを通過して画像検出器によって受け取られる光が提供される。
-第3のステップ106において、これはステップc)とも呼ばれるが、デジタルサンプル画像は、参照画像において参照除去領域をデジタルサンプル画像にトランスレートするために、参照画像とレジストレーションされる。
-第4のステップ108において、これはステップd)とも呼ばれるが、サンプル除去領域が、トランスレートされた参照除去領域に基づいてデジタルサンプル画像内で識別される。
一例では、コントラスト強調装置は、複数の偏光子を有する偏光子配列と、少なくとも1つの光学フィルタとを有する偏光子配列を含む。
【0084】
一例では、図4に(破線で示す)オプションとして示したように、第3のステップ104またはステップb)は、さらに、c1)異なるイメージング設定の下でサンプルスライスのさらなるデジタルサンプル画像を取得するステップ110と、c2)ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として、デジタルサンプル画像と更に別のデジタルサンプル画像の和を提供するステップ112とを含む。
【0085】
デジタルサンプル画像は、第1のデジタルサンプル画像と呼ばれ、さらに別のデジタルサンプル画像は、第2のデジタルサンプル画像と呼ばれ得る。
【0086】
本技術の説明を容易にするために、異なるイメージング設定を有する2つのデジタルサンプル画像の合成について説明する。言うまでもなく、異なるイメージング設定を有する3つ以上のデジタルサンプル画像の合成もまた、本技術の範囲内にある。
【0087】
2つ以上のデジタルサンプル画像の合成を用いて、偏光子によるデジタルサンプル画像の背景における強度の変動性を除去または抑制する。これはパラフィン層の複屈折結晶の方向変化によって引き起こされるものである。2つの効果、アイソクラミックとアイソクロミックを区別する必要がある。第1の効果、すなわちアイソクラミックは、第2の偏光子の軸の方向に対する結晶の方向を決定する。これが平行であれば、結晶は画像上で暗く見える。第2の効果、すなわちアイソクロミックは、それが結晶を透過するときの通常ビームと異常ビームとの間の等しい位相差の線である。位相差は、複屈折(パラフィン結晶固有のものである)、厚さ(一定である)、および光の波長に依存する。位相差は干渉を引き起こし、したがって強度の減衰を引き起こす。
【0088】
ステップb)の画像化設定は、偏光子配列内の偏光子の相互配向、サンプルスライスに対する偏光子配列の配向、光の波長、及び光路中に複屈折媒質を配置よりなるグループの少なくとも1つのパラメータを含む。
【0089】
一例では、一方の偏光子は一定の向きに保たれ、他方の偏光子は、第1および第2の画像取得において第1および第2の偏光子の間で異なる相互配向を達成するように回転される。この場合、非複屈折部分の透過率は変化する。
【0090】
一例では、1つの偏光子の回転を他の偏光子と同時に行うことにより、偏光子の相対的な向きを固定し、サンプルスライドに対する2つの偏光子の回転を変えることができる。この場合、関心対象、例えば組織、およびガラスの背景は影響を受けない。両方の偏光子が同期して回転すると、アイソキュリンはアナライザーと共に動く。暗かった結晶は、回転角や結晶の主方向に応じて明るくなることがある。結晶の強度は、cot(2χ)で振動する。ここで、χは、アナライザーに対する結晶の方位である。
【0091】
第1および第2の画像取得における波長の変化は、いくつかの方法で達成され得る。一例では、LEDアレイのような切り替え可能な多色光源を使用して、光を例えば青色スペクトルから赤色スペクトルへと変化させる。さらに別の例では、カラーフィルタを備えた白色光源を使用して、第1および第2の画像取得における波長を変化させることが可能である。機械的な減衰を避けるために、切替え可能なフィルタを使用することができる。
【0092】
光路中の複屈折媒質の配置を用いて、像の位相差を変化させる。アナライザーに平行に複屈折媒質の配向を選択することにより、複屈折でないサンプルの領域の強度に影響を及ぼさず、このようにしてこれらの領域の輝度に影響を与えない。あるいは、この複屈折層は、線源が使用されるときに波長のちょうどN倍(Nは正の整数)を正確に付加するように選択することができる。
【0093】
さらに別のオプションとして、図5に示すように、以下のステップが、ステップc)の前に提供される:e1)デジタルサンプル画像内の背景領域の平均強度値を計算するステップ114と;
e2)計算された平均強度値より高い強度値をクリップして、クリップされたデジタルサンプル画像を提供するステップ116と、
e3)クリップされた画像の強度値の形態学的クロージングを実行して、クローズドデジタルサンプル画像を提供するステップ118と、
e4)ステップc)で使用する参照画像としてクローズド参照画像を提供するステップ120とを含む。
【0094】
さらに別のオプションとして、次のステップがさらに設けられる:
e5)参照画像内の強度値の形態学的クロージングを実行して、クローズド参照画像を提供するステップ122と;
e6)ステップc)で使用する参照としてクローズド参照画像を提供するステップ124。
「背景領域」という用語は、組織のような生体物質を含まないデジタルサンプル画像内の領域に関する。つまり、背景領域はパラフィンのみを含む。
【0095】
一例では、背景領域が自動的に識別されるように、生体物質と背景領域とを区別する組織検出アルゴリズムを実装してもよい。
【0096】
さらに別の例では、ユーザは、例えば、カーソルを動かすことによって、デジタルサンプル画像内の背景領域を直接選択することができる。
【0097】
用語「クリップする」は、強度値が閾値(この例では平均強度値)を超えると、強度値を制限することに関する。言い換えれば、平均強度値より高い強度値は、平均強度値と同じになるようにクリッピングまたは設定される。
【0098】
「形態」という用語は、測定された物理的パラメータ(この例では強度値)の値が低い構成の要素、及びパラメータの値が高い構成の要素の幾何学的配置に関する。
【0099】
形態クロージングは、画像対象内および画像対象間のギャップを「閉じる」ために使用される。形態クロージングは、既知の形態的拡張操作と、それに続く既知の形態的浸食操作からなる、増加操作である。
【0100】
パラフィン包埋された染色されていない組織のデジタルサンプル画像の一例が図6Aに示されている。図6Aにおいて、正方形のボックスは、図6Bに拡大して示されている小さな領域をハイライトする。図6Cは、図6Bの計算された平均強度値(明るい強度)より高い強度値をクリッピングした後の、クリップされたデジタルサンプル画像を示す。図6Dは、図6Cのクリッピングされた画像の背景領域における強度値の形態的クロージングの後の、クロージングされたデジタルサンプル画像を示す。
【0101】
画像処理ステップの目的は、背景領域(組織周辺の領域、すなわちパラフィンのみを含む領域の構造)を参照画像(例えば、H&E画像)で観察される滑らかな背景により似ているより滑らかなパターンにすることである。
【0102】
最初に、ステップe1)において、デジタルサンプル画像内の背景領域の平均強度値を計算する。平均強度値は、例えば、デジタルサンプル画像における強度のヒストグラムの分析によって得ることができる。背景領域内のピクセルは、光が組織によって吸収されないため、比較的明るい。背景のピクセルは、一緒になって、比較的明るい強度のヒストグラムビンの周りのヒストグラムにピークを形成する。このピークの最大値に属する強度値は、背景の平均強度を表す。
【0103】
次に、ステップe2)において、算出された平均強度値よりも明るいピクセルがクリップされる。クリッピング処理の結果を図6Cに示す。
【0104】
また、ステップe1)およびe2)における平均強度値は、局所的および/または大域的に計算され得ることにも留意されたい。例えば、デジタルサンプル画像内の背景強度が均一でなくてもよい。例は、サンプルスライスの厚さの不均一性、照明の不均一性、偏光子における不均一性などである。不均一性が強い場合、単一の(グローバル)値による背景強度の表現は、正確ではないかも知れない。照明および/または偏光子の不均一性の場合、較正画像を使用して、不均一性を測定し、パラフィンのみの組織の画像から不均一性を除去することができる。パラフィンサンプルの厚さの不均一によって生じる不均一性は、グローバルではなくローカルな画像分析技術手段によって対処することができる。
【0105】
クリッピングの後、背景はまだ暗点のパターンを含むことがある(図6C参照)。次のステップとして、ステップe3)において、これらのスポットは、クリッピングされた画像の強度値の形態的クロージングによって抑制される。形態的クロージングプロセスの結果を図6Dに示す。
【0106】
形態的クロージングを実施するための様々な例が企図される。
【0107】
一例では、形態的クロージングは、背景データ上で実行されてもよいが、組織に属するデータ上では実行されない。上記のように、組織と背景とを区別するには、組織検出ステップが必要である。
【0108】
さらに別の例では、形態的クロージングは、背景領域および組織領域の両方に適用され得る。形態的クロージングによって影響される組織領域内の構造は、参照画像の任意の形態的クロージングによって補償され得る。言い換えれば、オプションとして、ステップe5)及びe6)は、画像ペア、すなわちデジタルサンプル画像及び参照画像の外観における類似性が改善されるように、参照画像における形態クロージングを実行するために設けられてもよい。
【0109】
その後、ステップe4)において、クロージングされたデジタルサンプル画像が、ステップc)で使用するためのデジタルサンプル画像として提供される。
【0110】
このようにして、デジタルサンプル画像の背景における強度の変動性を除去する(または少なくとも抑制する)ことができる。これにより、デジタルサンプル画像と参照画像との間の類似性が改善され、レジストレーションプロセスが改善される可能性がある。
【0111】
方法ステップに使用されるアルファベット記号(文字)は、方法ステップを区別するために使用されているが、これらの記号は、方法ステップの順序をアルファベットの順序に限定するものではないことに留意されたい。
一例では、デジタルサンプル画像は、逐次的ステップa)、b)、c1)、c2)、c)及びd)に基づいてレジストレーションすることができる。
【0112】
一例では、デジタルサンプル画像は、逐次的ステップa)、b)、c1)、c2)、e1)-e6)、c)及びd)に基づいてレジストレーションすることができる。
【0113】
さらに別の一例では、デジタルサンプル画像は、逐次的ステップa)、b)、e1)-e4)、c)及びd)に基づいてレジストレーションすることができる。
【0114】
さらなるオプションとして、図7に示すように、ステップd)の後に、以下のステップの少なくとも1つが設けられる:f)参照画像内の参照除去領域に基づいて、デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップ126と、g)デジタルサンプル画像において識別されたサンプル除去領域に基づいて、サンプルスライド上に除去マークを提供するステップ128と、h)除去領域内の生体物質をサンプルスライスから除去するステップ130であって、除去領域は、デジタルサンプル画像において識別されたサンプル除去領域に基づいて提供されるステップ。
【0115】
本発明の他の一実施形態では、適切なシステムにおいて、上記の実施形態の一つによる方法の方法ステップを実行するように較正されたことを特徴とするコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム要素が提供される。
【0116】
コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されてもよい。コンピュータユニットも本発明の一実施形態の一部であってもよい。このコンピューティングユニットは、上記の方法のステップを実行するまたは実行を誘起するように構成され得る。さらに、上記の装置のコンポーネントを動作させるように構成されていてもよい。コンピューティングユニットは、自動的に動作し、及び/またはユーザの命令を実行するように構成されている。コンピュータプログラムはデータプロセッサのワーキングメモリにロードされる。データプロセッサは、本発明の方法を実行するように構成されている。
【0117】
本発明のこの実施形態は、初めから本発明を用いるコンピュータプログラムと、アップデートにより本発明を用いるプログラムになる既存のプログラムとの両方をカバーする。
【0118】
さらに、コンピュータプログラム要素は、上記の方法の実施形態の手順を満たす必要なすべてのステップを提供できる。
【0119】
本発明のさらに別の一実施形態によると、CD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能媒体が提供され、そのコンピュータ読み取り可能媒体は、前のセクションで説明したコンピュータプログラム要素を記憶したものである。
【0120】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体や他のハードウェアとともに、またはその一部として供給される固体媒体などの適切な媒体に記憶及び/または配布することができ、インターネットや有線または無線の電気通信システムなどを介して他の形式で配信することもできる。
【0121】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブ等のネットワーク上で提供されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされてもよい。本発明のさらにべつの実施形態では、コンピュータプログラム要素をダウンロードできるようにする媒体が提供され、そのコンピュータプログラム要素は本発明の上記の実施形態の一つによる方法を実行するように構成されている。
【0122】
留意すべき点として、本発明の実施形態を、異なる主題を参照して説明する。具体的に、一部の実施形態を方法の請求項を参照して説明し、他の一部の実施形態を装置の請求項を参照して説明する。しかし、本技術分野の当業者は、上記の説明と以下の説明から、特に断らないかぎり、一種類の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる複数の主題に関係する特徴の間の任意の組み合わせも本出願で開示されていると考えられることが分かるであろう。しかし、すべての特徴は組み合わせて、特徴の単なる和以上のシナジー効果を提供することができる。
【0123】
図面と上記の説明に詳しく示し本発明を説明したが、かかる例示と説明は例であり限定ではない。本発明は開示した実施形態には限定されない。請求項に記載した発明を実施する際、図面、本開示、及び従属項を研究して、開示した実施形態のその他のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。
【0124】
図面は模式的に描かれており、スケール通りではない。同じ参照符号は、図面全体にわたって同じまたは類似の特徴を指す。
【0125】
請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの(「a」または「an」)」という表現は複数ある場合を排除するものではない。単一のプロセッサまたはその他のアイテムが請求項に記載した複数のユニットの機能を満たすこともできる。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。
【0126】
本開示は次の発明を含む。
(付記1) 分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルのサンプル除去領域を選択する方法であって、
a) 対象の参照スライスの参照画像内の参照除去領域を選択するステップであって、前記参照スライス内の生体物質は染色されている、ステップと、
b) イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質は染色されていない、ステップと、
前記サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、光源と画像検出器との間の光路内に配置され、前記光源と前記画像検出器との間の光路に、染色されていない生体物質と背景との間コントラストを向上させるコントラスト強調装置がさらに設けられ、
前記サンプルスライスを通過して前記画像検出器によって受け取られる光が供給され、
c) 前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像内の前記参照除去領域を前記デジタルサンプル画像にトランスレートするステップと、
d) トランスレートされた参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップとを含む、方法。
(付記2) 前記コントラスト強調装置は、
複数の偏光子を有する偏光子構成と、
少なくとも1つの光学フィルタを有する光学フィルタ装置とを有する、
付記1に記載の方法。
(付記3) ステップb)はさらに、
c1) 異なるイメージング設定の下で前記サンプルスライスのさらに別のデジタルサンプル画像を取得するステップと、
c2) ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として、前記デジタルサンプル画像と前記さらに別のデジタルサンプル画像との和を提供するステップとを含む、
付記1または2に記載の方法。
(付記4) ステップb)のイメージング設定は、次のグループのうち少なくとも1つのパラメータを含む:
- 前記偏光子構成内の偏光子の相互配向と、
- 前記サンプルスライスに対する前記偏光子構成の配向と、
- 光の波長と、
- 前記光路内の複屈折媒質の配置。
付記1乃至3いずれか一項に記載の方法。
(付記5) ステップc)の前に、
e1)前記デジタルサンプル画像内の背景領域の平均強度値を計算するステップと、
e2)計算された平均強度値より高い強度値をクリップして、クリップされたデジタルサンプル画像を提供するステップと、
e3)クリップされた画像の強度値の形態的クロージングを実行して、クローズドデジタルサンプル画像を提供するステップと、
e4) ステップc)で使用するデジタルサンプル画像として前記クローズドデジタルサンプル画像を提供するステップとが設けられ、
好ましくは、さらに、
e5) 前記参照画像内の強度値の形態的クロージングを実行して、クローズド参照画像を提供するステップと、
e6) ステップc)で使用する参照画像として前記クローズド参照画像を提供するステップとを含む、
付記1乃至4いずれか一項に記載の方法。
(付記6) ステップd)の後、
f) 前記参照画像内の前記参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップと、
g) 前記デジタルサンプル画像において識別された前記サンプル除去領域に基づいて、前記サンプルスライド上に除去マークを提供するステップと、
h) 除去領域内の生体物質を前記サンプルスライスから除去するステップであって、前記除去領域は前記デジタルサンプル画像において識別されたサンプル除去領域に基づいて提供されるステップとのうち少なくとも1つが設けられる、
付記1乃至5いずれか一項に記載の方法。
(付記7) 分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルのサンプル除去領域を選択するシステムであって、
- 画像形成装置と、
- レジストレーション装置とを有し、
前記画像形成装置は、
- 光源と、
- 対象受け入れ装置と、
- 画像検出器とを有し、
前記光源と前記画像検出器とが光路内に配置され、
前記光源は、サンプルスライドを通過して前記画像検出器によって受け取られる光を提供するように構成され、
前記対象受け入れ装置は、対象のサンプルスライスを有するサンプルスライドを受け入れ、前記サンプルスライス内の生体物質は染色されておらず、前記サンプルスライスを前記光路内に配置して前記サンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するように構成され、前記光源と前記画像検出器との間の光路に、染色されていない生体物質と背景との間のコントラストを改善するコントラスト強調装置がさらに設けられ、
前記レジストレーション装置は、前記対象の参照スライスの参照画像を受け取るように構成され、前記参照スライス内の生体物質は染色されており、参照画像において参照除去領域が選択され、
前記レジストレーション装置はさらに、前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像の参照除去領域をデジタルサンプル画像にトランスレートし、トランスレートされた参照除去領域に基づいて前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を識別するように構成される、
システム。
(付記8) 前記コントラスト強調装置は偏光子装置を有し、前記偏光子装置は、
- 第1の偏光子と、
- 第2の偏光子とを有し、
前記対象受け入れ装置は、画像取得のため前記第1の偏光子と前記第2の偏光子との間の光路に前記サンプルスライスを配置するように構成される、
付記7に記載のシステム。
(付記9) 前記コントラスト強調装置は光学フィルタ装置を有し、前記光学フィルタ装置は、
- 着色ガラスフィルタと、
- 着色プラスチックフィルタと、
- ゼラチンフィルタと、
- 誘電体フィルタと、
- プラズモンフィルタとよりなるグループから選択された少なくとも1つの光フィルタを有する、
付記7または8に記載のシステム。
(付記10) 前記レジストレーション装置は、前記参照画像の参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を識別するように構成される、
付記7ないし9いずれか一項に記載のシステム。
(付記11)さらに、
- マーキング装置を有し、
前記マーキング装置は、前記デジタルサンプル画像において識別された前記サンプル除去領域に基づいて、前記サンプルスライド上に除去マークを提供するように構成される、
付記7ないし10いずれか一項に記載のシステム。
(付記12) さらに、
- 切開装置を有し、
前記切開装置は、前記サンプルスライスから除去領域内の生体物質を除去するように構成され、前記除去領域は、前記デジタルサンプル画像において識別された前記サンプル除去領域に基づいて提供される、
付記7ないし11いずれか一項に記載のシステム。
(付記13) 前記画像形成装置は明視野顕微鏡である、
付記7ないし12いずれか一項に記載のシステム。
(付記14) 付記7ないし13いずれか一項に記載の装置を制御するコンピュータプログラム要素であって、処理ユニットによって実行されたとき、付記1ないし6いずれか一項に記載の方法ステップを実行するように適合された、コンピュータプログラム要素。
(付記15) 付記14に記載のプログラム要素を記憶したコンピュータ可読媒体。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7