IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特許7194804診断機検証システムおよび診断機検証方法
<>
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図1
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図2
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図3A
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図3B
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図3C
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図3D
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図4A
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図4B
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図4C
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図5
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図6
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図7A
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図7B
  • 特許-診断機検証システムおよび診断機検証方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】診断機検証システムおよび診断機検証方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G01M17/007 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021503999
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007692
(87)【国際公開番号】W WO2020179574
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019037400
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】原田 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】金井 健
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014558(JP,A)
【文献】特開2005-122616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両制御装置と通信可能に接続されて前記車両の診断を行う診断機と、
前記車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置と、
前記診断機と前記模擬装置とに通信可能に接続され、前記診断機の動作を検証する検証装置と、を備え、
前記診断機は、前記模擬装置との通信により得られた診断結果を表示する表示部を有し、
前記検証装置は、
診断すべき診断項目を前記診断機に指示する項目指示部と、
前記項目指示部により指示された診断項目に対応する応答内容を前記模擬装置に指示する応答指示部と、
前記表示部に表示されて検証作業者により正常な表示であることが確認された診断結果画面の情報を記憶する記憶部と、
前記表示部に表示された診断結果画面の情報を取得する結果取得部と、
前記結果取得部により取得された診断結果画面の情報と前記記憶部に記憶された診断結果画面の情報とを比較する比較部と、を有することを特徴とする診断機検証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診断機検証システムにおいて、
前記比較部は、前記結果取得部により取得された診断結果画面の情報に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、前記記憶部に記憶された診断結果画面の情報に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、を比較することを特徴とする診断機検証システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の診断機検証システムにおいて、
前記検証装置をそれぞれ有する複数のスレーブコンピュータと、
前記複数のスレーブコンピュータを統合するマスタコンピュータと、を備え、
前記複数のスレーブコンピュータは、互いに異なる検証項目の検証を行って検証結果を出力し、
前記マスタコンピュータは、前記複数のスレーブコンピュータから出力された検証結果を受信することを特徴とする診断機検証システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の診断機検証システムにおいて、
前記記憶部は、さらに、前記診断機による診断対象である第1機種に対応して予め設定された第1診断項目と、前記診断機による診断対象である第2機種に対応して設定され、前記第1診断項目と前記第1診断項目に追加された追加項目とを含む第2診断項目と、を記憶し、
前記追加項目を入力する入力部をさらに備え、
前記項目指示部は、前記診断機による診断対象が前記第1機種であるとき、前記記憶部に記憶された第1診断項目を前記診断機に指示し、前記診断機による診断対象が前記第2機種であるとき、前記記憶部に記憶された第2診断項目を前記診断機に指示することを特徴とする診断機検証システム。
【請求項5】
車両に搭載された車両制御装置と通信可能に接続されて前記車両の診断を行う診断機および前記車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置のそれぞれと通信し、前記診断機の動作を検証する診断機検証方法であって、
診断すべき診断項目を前記診断機に指示し、
前記診断機に指示した診断項目に対応する応答内容を前記模擬装置に指示し、
前記診断機の表示部に表示されて検証作業者により正常な表示であることが確認された診断結果画面の情報を記憶し、
前記診断機が前記模擬装置との通信により得て表示部に表示した診断結果画面の情報を取得し、
前記診断機から取得した診断結果画面の情報と記憶された診断結果画面の情報とを比較することを含む診断機検証方法。
【請求項6】
請求項5に記載の診断機検証方法において、
前記診断機から取得した診断結果画面の情報に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、記憶された診断結果画面の情報に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、を比較することを特徴とする診断機検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両診断機の動作を検証する診断機検証システムおよび診断機検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両制御装置(ECU)と通信して診断を行う車両診断機に関し、診断機の動作を記録し、記録した動作を再生することで診断を自動的に行うようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、ユーザによる診断機の操作、診断機からECUに送信された診断指令、および診断機がECUから受信した診断結果が記録され、再生可能な電子ファイルとして保存される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-219092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、診断機は車両の種類(モデル)に応じて異なる診断を行うため、診断機のソフトウェアプログラムはモデルに応じてバージョンアップされ、その度に診断機が正常に動作するか否かを検証する必要がある。しかしながら、検証作業者が手動で診断機の動作を検証する場合には検証項目が多く、多大な労力を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、診断機検証システムであって、車両に搭載された車両制御装置と通信可能に接続されて車両の診断を行う診断機と、車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置と、診断機と模擬装置とに通信可能に接続され、診断機の動作を検証する検証装置と、を備える。診断機は、模擬装置との通信により得られた診断結果を表示する表示部を有する。検証装置は、診断すべき診断項目を診断機に指示する項目指示部と、項目指示部により指示された診断項目に対応する応答内容を模擬装置に指示する応答指示部と、表示部に表示されて検証作業者により正常な表示であることが確認された診断結果画面の情報を記憶する記憶部と、表示部に表示された診断結果画面の情報を取得する結果取得部と、結果取得部により取得された診断結果画面の情報記憶部に記憶された診断結果画面の情報とを比較する比較部と、を有する。
【0006】
本発明の他の態様は、車両に搭載された車両制御装置と通信可能に接続されて車両の診断を行う診断機および車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置のそれぞれと通信し、診断機の動作を検証する診断機検証方法であって、診断すべき診断項目を診断機に指示し、診断機に指示した診断項目に対応する応答内容を模擬装置に指示し、表示部に表示されて検証作業者により正常な表示であることが確認された診断結果画面の情報を記憶し、診断機が模擬装置との通信により得て表示部に表示した診断結果画面の情報を取得し、診断機から取得した診断結果画面の情報記憶された診断結果画面の情報とを比較することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両診断機の動作を自動的に検証することができ、診断機のソフトウェアプログラムの検証に要する検証作業者の労力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】診断機による車両の診断の一例を概略的に示す図。
図2】本発明の実施形態に係る診断機検証システムが適用される診断プログラムの動作検証の一例を概略的に示す図。
図3A】診断項目について説明するための、図2の診断機の表示部の表示画面の一例を示す図。
図3B図3Aに続く、図2の診断機の表示部の表示画面の一例を示す図。
図3C図3Bに続く、図2の診断機の表示部の表示画面の一例を示す図。
図3D図3Cに続く、図2の診断機の表示部の表示画面の一例を示す図。
図4A図2の診断機の表示部に表示される診断結果の一例を示す図。
図4B図2の診断機の表示部に表示される診断結果の別の例を示す図。
図4C図2の診断機の表示部に表示される診断結果のさらに別の例を示す図。
図5】診断プログラムのバージョンアップ前後における既存の診断項目と新規の診断項目とを示す表の一例。
図6】本発明の実施形態に係る診断機検証システムの要部構成を示すブロック図。
図7A】本発明の実施形態に係る診断機検証システムで実行される検証処理の一例を示すフローチャート。
図7B】本発明の実施形態に係る診断機検証システムで実行される記録処理の一例を示すフローチャート。
図8図6の変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図8を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、診断機30による車両2の診断の一例を概略的に示す図である。図1に示すように、診断機30は、診断用の専用機器や市販のコンピュータ等により構成され、診断対象の車両2に搭載されたECU3とCAN(Controller Area Network)通信等により通信可能に接続される。車両2の診断を行うユーザP1(サービススタッフ等)は、車両2の症状に応じた必要な診断項目について、診断機30を用いて診断を行う。診断の診断項目には、エラーコードの確認や各種センサ値の確認等の様々な項目が含まれる。
【0010】
車両2の動作を制御するECU3の車両制御用のソフトウェアプログラム(以下、車両制御プログラム)は、車両2のモデル(機種)毎に異なるため、診断が行われる診断項目もモデル毎に異なる。例えば、既存モデルに対して新たな機能が追加され、新たなエラーコードや新たなセンサが追加された最新モデルでは、新たに追加されたエラーコードやセンサ値を確認するための新たな診断項目が追加される。診断機30の診断用のソフトウェアプログラム(以下、診断プログラム)は、このような診断項目の追加に対応するために、必要に応じてバージョンアップされる。
【0011】
最新バージョンの診断プログラムは、診断機30上で正常に動作することが確認された後、診断機30のユーザP1に配布される。このような診断機30上での診断プログラムの動作検証は、実際の車両2に搭載されたECU3を用いて行うこともできるが、車両2に搭載されたECU3の動作を模擬するシミュレータを用いて行うこともできる。
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係る診断機検証システムが適用される診断プログラムの動作検証の一例を示す図であり、シミュレータ40を用いて行う動作検証を概略的に示す。シミュレータ40は、市販のコンピュータ等により構成され、動作検証に先立って予め、診断プログラムの診断対象となるモデルの車両制御プログラムがインストールされるとともに、診断項目に対応する応答内容が設定される。
【0013】
図3A図3Dは、診断項目について説明するための図であり、検証対象の診断プログラムがインストールされた診断機30のディスプレイ等の表示部における表示画面D10の一例を示す。図3A図3Dに示すように、診断機30の表示部には、インストールされている診断プログラムのバージョン(D11)、設定等の各種機能ボタン(D12)、現在の表示画面の階層(D13)が表示される。
【0014】
図3Aは、診断を行う車両2のモデル等を選択する車両選択画面D14の一例である。診断プログラムの動作検証を行う検証作業者P2(図2)は、診断機30のタッチパネル等の入力部を介して、車両選択画面D14の識別情報入力部D141に車両2のモデル等の識別情報を入力する。表示画面D10上での検証作業者P2の操作は、ポインタPTとして表示画面D10上に重ねて表示される。
【0015】
識別情報入力部D141に車両2の識別情報が入力されると、車両2のモデルに対応したエラーコードを一覧表示するメニューボタンD142、よく使う項目を表示するメニューボタンD143、車両2に搭載された複数のECU3を一覧表示して選択するメニューボタンD144が表示される。検証作業者P2がメニューボタンD144をタッチしてECU3を選択すると、表示画面D10は、図3BのECU選択画面D15に遷移する。
【0016】
図3Bは、診断を行うECU3を選択するECU選択画面D15の一例である。車両2には、モデル毎に、エンジンの動作を制御するエンジンECU、変速機の動作を制御する変速機ECU等、機能の異なる複数のECU3が搭載される。検証作業者P2が、診断項目に応じて、ECU選択画面D15のECU選択部D151で診断を行うECU3を選択し、決定ボタンD152をタッチして決定すると、表示画面D10は、図3Cの診断項目選択画面D16に遷移する。
【0017】
図3Cおよび図3Dは、診断項目を選択する診断項目選択画面D16の一例である。診断には、車両2で発生したエラーの内容を示すエラーコードを確認するエラーコード確認、車両2に搭載された各種センサの値を確認するデータリスト確認、車両2に搭載された各種デバイスの動作を確認する機能テスト等の診断項目が含まれる。図3Cに示すように、検証作業者P2が診断項目選択画面D16の診断項目選択部D161でエラーコード確認やデータリスト確認等の診断項目を選択し、決定ボタンD162をタッチして決定すると、診断機30からシミュレータ40に診断項目を示す診断信号が送信される。
【0018】
一方、検証作業者P2が診断項目選択画面D16の診断項目選択部D161で機能テスト等の診断項目を選択し、決定ボタンD162をタッチして決定すると、表示画面D10は、図3Dの診断項目選択画面D16に遷移する。図3Dに示すように、検証作業者P2が各種デバイスの動作を確認する機能テストの中から特定の機能テストの診断項目を選択し、決定ボタンD162をタッチして決定すると、診断機30からシミュレータ40に診断項目を示す診断信号が送信される。
【0019】
シミュレータ40は、診断機30から診断信号を受信すると、診断項目に対応する応答内容を示す応答信号を診断機30に送信する。診断機30は、シミュレータ40から応答信号を受信すると、表示部に診断結果を表示する。
【0020】
図4A図4Cは、診断機30の表示部に表示される診断結果の一例を示す図であり、それぞれ図3C図3Dの診断項目選択画面D16でエラーコード確認、データリスト確認、DBWスロットルの機能テストの診断項目を選択したときの診断結果を示す診断結果画面D17を示す。
【0021】
検証作業者P2は、診断機30の表示部に表示される診断結果画面D17を診断プログラムの仕様書等に掲載された各診断項目の診断結果画面と比較して画面全体が正常に表示されているか否かを確認する。また、診断結果が動作検証に先立って予め設定された診断項目に対応する応答内容と一致しているか否かを確認する。これにより、各診断項目について診断プログラムが診断機30上で正常に動作したか否かを判断する。
【0022】
図5は、最新バージョンの診断プログラムで実行される診断の診断項目について説明するための図であり、バージョンアップ前から設定されている既存の診断項目とバージョンアップ後に新たに設定された新規の診断項目とを示す表の一例である。車両2のモデルチェンジにより、例えば走行車線や前走車を認識する機能等の新たな機能が追加されると、車両2に搭載されるカメラやレーダ等のデバイスや車両制御を行うECU3の種類が追加される。そして診断プログラムは、新たに追加されたデバイスやECU3の診断を行うための新規項目が追加され、バージョンアップされる。
【0023】
このような最新バージョンの診断プログラムがインストールされた診断機30で診断を行う場合、新たに追加された新規の診断項目が何らかの影響を及ぼすことで、既存の診断項目の診断時に予期しないエラーが発生する可能性がある。このため、最新バージョンの診断プログラムが診断機30上で正常に動作するか否かを検証する場合は、新規の診断項目だけでなく、既存の診断項目を含めた全ての診断項目について動作検証を行うことが好ましい。
【0024】
しかしながら、図5に示すように、既存の診断項目を含めた項目数は多く、全てのバージョンの診断プログラムについて全ての診断項目の動作検証を行うとすると検証作業者P2の負担が過大になる。また、診断項目の項目数は車両制御プログラムの制御内容が複雑化するにつれて増大するため、今後、自動走行制御等の高度な機能が搭載されることで診断項目の項目数も著しく増大すると考えられる。そこで、本実施形態では、診断プログラムが診断機30上で正常に動作するか否かを自動的に検証し、診断プログラムの検証に要する検証作業者P2の労力を低減できるよう、以下のように診断機検証システムを構成する。
【0025】
図6は、本発明の実施形態に係る診断機検証システム100の要部構成を示すブロック図である。図6に示すように、診断機検証システム100は、検証対象の診断プログラムがインストールされた診断機30と、車両制御プログラムがインストールされ、車両2に搭載されたECU3の模擬動作を実行するシミュレータ40と、診断機30上での診断プログラムの動作検証を行う検証装置50とを備える。診断機30とシミュレータ40と検証装置50とは互いに通信可能に接続される。
【0026】
診断機30は、CPU31、ROM,RAM等のメモリ32、およびI/Oインタフェース等その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。診断機30には、キーボードやマウス、タッチパネル等により構成される入力部33と、液晶ディスプレイ等により構成される表示部34とがそれぞれ有線または無線により接続される。
【0027】
診断機30のCPU31は、検証装置50から受信した指令に従い、メモリ32に記憶された診断プログラムを実行して診断信号を生成し、シミュレータ40に送信する。また、シミュレータ40から受信した応答信号を処理して診断結果画面D17(図4A図4C)の画像信号を生成して表示部34に出力する。診断機30のCPU31により生成された画像信号は、診断結果画面D17の画像情報として診断機30に接続された検証装置50により取得されるとともに、診断結果画面D17に含まれる文字情報(テキストデータ)として検証装置50により取得される。
【0028】
また、診断機30のCPU31は、図3A図3Dに示すような検証作業者P2の手動操作により入力部33を介して入力された指令に従い、メモリ32に記憶された診断プログラムを実行して診断項目ごとに診断信号を生成し、シミュレータ40に送信する。診断項目ごとに入力部33を介して入力された一連の操作の情報は、診断機30に接続された検証装置50により取得され、記録される。具体的には、図3A図3Dの表示画面D10上のポインタPTの動き、車両選択画面D14での入力操作、ECU選択画面D15、診断項目選択画面D16での選択操作、メニューボタンD144、決定ボタンD152,D162のタッチ操作等の情報が取得され、記録される。なお、一連の操作の情報を診断機30側で記録して検証装置50に送信してもよい。
【0029】
シミュレータ40は、CPU41、ROM,RAM等のメモリ42、およびI/Oインタフェース等その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。シミュレータ40のメモリ42には、動作検証に先立って予め検証装置50から受信した診断項目に対応する応答内容が記憶される。シミュレータ40のCPU41は、メモリ42に記憶された車両制御プログラムを実行し、診断機30から診断信号を受信すると、メモリ42に記憶された診断項目に対応する応答内容に従って、受信した診断信号に対応する応答信号を生成して診断機30に送信する。
【0030】
検証装置50は、CPU51、ROM,RAM等のメモリ52、およびI/Oインタフェース等その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。検証装置50には、キーボードやマウス、タッチパネル等により構成される入力部58と、液晶ディスプレイ等により構成される表示部59とがそれぞれ有線または無線により接続される。
【0031】
検証装置50のメモリ52には、検証作業者P2による手動の動作検証時に診断機30から取得した診断項目ごとの一連の操作の情報および診断結果画面D17の情報(画像情報および文字情報)が記憶される。すなわち、診断プログラムのバージョンアップで追加された新規項目(図5)については、検証作業者P2により手動で診断プログラムの動作検証が行われる。このとき、検証作業者P2による診断機30の一連の操作の情報、および診断機30の表示部34に表示されて検証作業者P2により正常な表示であることが確認された診断結果画面D17の情報が、診断機30から検証装置50により取得される。これらの情報は、新規の診断項目について検証作業者P2による手動の動作検証が行われる度に検証装置50により取得され、診断項目ごとにメモリ52に記憶され、蓄積される。
【0032】
さらに検証装置50のメモリ52には、入力部58を介して入力された診断項目および診断項目に対応する応答内容が記憶される。すなわち、新規の診断項目については、検証作業者P2により入力部58を介して診断項目に対応する応答内容が入力される。具体的には、診断プログラムおよび車両制御プログラムの仕様に従って、診断機30から出力される診断信号の情報と、その診断信号に対応してECU3から出力される応答信号を模擬した応答信号の情報とが入力される。診断項目に対応する応答内容の情報も、新規の診断項目について検証作業者P2による手動の動作検証が行われる度に、診断項目ごとにメモリ52に記憶され、蓄積される。
【0033】
CPU51は、診断項目を診断機30に指示する項目指示部53と、診断項目に対応する応答内容をシミュレータ40に指示する応答指示部54と、診断機30から出力された一連の操作の情報および診断結果を取得する情報取得部55と、情報取得部55により取得された診断結果と応答指示部54により指示された応答内容とを比較する比較部56と、比較部56による比較結果を出力する出力部57として機能する。
【0034】
項目指示部53は、前回までの診断プログラムの動作検証で検証されてメモリ52に記憶(蓄積)された全ての診断項目(図5の全ての既存項目)を診断機30に指示(送信)するとともに、メモリ52に記憶された診断項目ごとの一連の操作の情報に基づいて、診断項目ごとの一連の操作の指令を診断機30に送信する。
【0035】
応答指示部54は、メモリ52に記憶(蓄積)された全ての診断項目(図5の既存項目および新規項目)に対応する応答内容をシミュレータ40に指示(送信)する。すなわち、全ての診断項目に対応して設定された応答の指令をシミュレータ40に送信する。
【0036】
情報取得部55は、診断項目ごとに診断機30から出力された診断結果画面D17の画像情報および文字情報を取得するとともに、入力部33を介して診断機30に入力される操作の情報を常時取得して診断項目ごとに一連の操作の情報として記録する。診断結果画面D17の情報には、検証作業者P2による手動の動作検証での既存項目(図5)の診断結果画面D17の情報と、検証装置50による自動の動作検証での既存項目および新規項目(図5)を含む全ての診断項目の診断結果画面D17の情報とが含まれる。
【0037】
比較部56は、検証装置50による自動検証で情報取得部55により取得された診断結果画面D17の情報を、検証作業者P2による手動検証で情報取得部55により取得されて検証装置50のメモリ52に記憶された診断結果画面D17の情報と比較する。すなわち、予め設定された診断項目に対応する応答内容と一致した診断結果が正常に表示されていることが検証作業者P2により確認された診断結果画面D17の情報と比較する。また、比較結果に基づいて、各診断項目について診断プログラムが診断機30上で正常に動作したか否かを判定する。
【0038】
なお、診断結果画面D17の画像情報は、ピクセル単位の画像データとして比較される。この場合、診断機30のオペレーションシステムの違い等に起因して、例えば各種機能ボタンD12(図3A図4C)等の表示位置が多少変化することがある。このような表示位置の変化に対応するため、ボタン等の表示要素単位で表示位置の補正を行ってもよい。すなわち、例えば、パターンマッチングにより同一であると判定された表示要素の表示位置の差が所定値以内であれば正常な表示であると判定してもよい。
【0039】
出力部57は、比較部56による比較結果および判定結果を表示部59に出力する。すなわち、診断項目ごとに診断プログラムが診断機30上で正常に動作したか否かの判定結果を表示部59に出力する。
【0040】
図7Aおよび図7Bは、診断機検証システム100で実行される処理の一例を示すフローチャートであり、予めメモリに記憶されたプログラムに従い、検証装置50のCPU51で実行される検証処理(図7A)および記録処理(図7B)、診断機30のCPU31で実行される診断処理、およびシミュレータ40のCPU41で実行される応答処理を示す。図7Aのフローチャートに示す検証処理は、既存の診断項目(図5)について診断機検証システム100により自動的に実行される処理であり、検証装置50の入力部58を介して診断プログラムの動作検証の開始指令が入力されると実行される。
【0041】
検証装置50の検証処理では、まず、ステップS10で、応答指示部54での処理により、メモリ52に記憶された診断項目に対応する応答内容をシミュレータ40に送信する。シミュレータ40の応答処理では、ステップS30で、検証装置50から送信された診断項目に対する応答内容を受信する。検証装置50の検証処理では、次いで、ステップS11で、項目指示部53での処理により、メモリ52に記憶された診断項目および診断項目ごとの一連の操作の指令を、診断項目ごとに診断機30に送信する。
【0042】
診断機30の診断処理では、ステップS20で、検証装置50から送信された診断項目を受信すると、ステップS21で、診断信号を生成してシミュレータ40に送信する。シミュレータ40の応答処理では、ステップS31で、診断機30から送信された診断信号を受信すると、ステップS32で、メモリ42に記憶された診断項目に対応する応答内容に従って、ステップS31で受信された診断信号に対応する応答信号を生成して診断機30に送信する。
【0043】
診断機30の診断処理では、ステップS22で、シミュレータ40から送信された応答信号を受信すると、ステップS23で、ステップS22で受信された応答信号を処理して診断結果(診断結果画面D17の情報)を生成し、表示部34に出力する。
【0044】
検証装置50の検証処理では、ステップS12で、情報取得部55での処理により、診断機30から診断結果を取得する。次いで、ステップS13で、比較部56での処理により、ステップS12で取得された診断結果を、メモリ52に記憶された診断結果と比較し、比較結果に基づいて、各診断項目について診断プログラムが診断機30上で正常に動作したか否かを判定する。次いで、ステップS14で、出力部57での処理により、ステップS13で得られた比較結果および判定結果を表示部59に出力する。
【0045】
次いで、ステップS15で、項目指示部53での処理により、メモリ52に記憶された全ての診断項目についてステップS11~S14までの処理が行われたか否かを判定し、否定されるとステップS11に戻り、肯定されると処理を終了する。
【0046】
図7Bのフローチャートに示す記録処理は、新規の診断項目(図5)について検証作業者P2が診断機30に対して行う手動操作および、そのときの検証結果(図4A図4C)を診断機検証システム100により自動的に記録する処理であり、診断機30の入力部33を介して診断の開始指令が入力されると実行される。
【0047】
図7Aのフローチャートに示す検証処理と異なる点に焦点を当てて説明すると、診断機30の診断処理では、ステップS24で、検証作業者P2により入力部33を介して一連の手動操作が入力される。次いで、ステップS21で、検証作業者P2の手動操作による指令に従い、診断信号を生成してシミュレータ40に送信する。その後、ステップS22で、シミュレータ40から応答信号を受信すると、ステップS23で、ステップS22で受信された応答信号を処理して診断結果(診断結果画面D17の情報)を生成し、表示部34に出力する。
【0048】
検証装置50の記録処理では、ステップS16で、情報取得部55での処理により、診断機30から一連の操作の情報を取得し、ステップS17で、診断機30から診断結果を取得し、診断項目ごとにメモリ52に記憶する。
【0049】
本実施形態に係る診断機検証システム100の主要な動作についてより具体的に説明する。最新モデルの車両2に合わせて診断プログラムがバージョンアップされると、新たに追加された診断項目について、検証作業者P2により手動で、最新バージョンの診断プログラムが診断機30上で正常に動作するか否かの動作検証が行われる。検証作業者P2による診断機30の操作は、診断項目ごとに記録される(図7BのステップS24,S16)。また、検証作業者P2により動作検証が行われた診断項目ごとの検証結果も記録される(ステップS23,S17)。
【0050】
最新バージョンの診断プログラムの動作検証は、バージョンアップ前から設定されていた既存の診断項目については自動で行われる。検証作業者P2は、検証装置50の入力部58を操作して既存項目の動作検証を開始する(図7AのステップS10~S15)。検証作業者P2は、検証装置50の表示部59に表示された検証結果を確認し、既存項目で予期しないエラーが発生していないか確認する(ステップS14)。
【0051】
最新バージョンの診断プログラムの動作検証のうち、項目数の多い既存の診断項目についての動作検証が自動的に行われるため、検証作業者P2の労力を低減することができる。また、診断プログラムのバージョンアップごとに、新規の診断項目について、検証作業者P2により手動で行われる診断機30の一連の操作と、検証作業者P2により正常な表示であることが確認された診断結果画面D17の情報とが記録され、蓄積される。このため、最新バージョンの診断プログラムの動作検証のうち、検証作業者P2による手動での検証作業が必要なる診断項目が絞り込まれ、検証作業者P2の労力を低減することができる。
【0052】
図8は、図6の変形例を示すブロック図であり、本発明の実施形態に係る診断機検証システム100の変形例の要部構成を示す。図6では、検証装置50を1台のコンピュータとして示したが、検証装置50を複数台のコンピュータにより構成してもよい。例えば、図8に示すように、1台のマスタコンピュータおよび複数台のスレーブコンピュータのそれぞれを図6に示す検証装置50として構成してもよい。
【0053】
図8のように診断機検証システム100を構成する場合、マスタコンピュータは、複数のスレーブコンピュータに対して互いに異なる検証項目の検証を指令するとともに、複数のスレーブコンピュータから出力された検証結果を受信する。複数のスレーブコンピュータに診断プログラムの動作検証を行う診断項目を分散することで、検証に要する所要時間を短縮することができる。この場合、スレーブコンピュータからは、図6の検証装置50のCPU51の構成のうち応答指示部54および比較部56を省略してもよい。
【0054】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)診断機検証システム100は、車両2に搭載されたECU3と通信可能に接続されて車両2の診断を行う診断機30と、ECU3の模擬動作を実行するシミュレータ40と、診断機30とシミュレータ40とに通信可能に接続され、診断機30の動作を検証する検証装置50と、を備える(図6)。診断機30は、シミュレータ40との通信により得られた診断結果を出力するように構成される。
【0055】
検証装置50は、診断すべき診断項目を診断機30に指示する項目指示部53と、項目指示部53により指示された診断項目に対応する応答内容をシミュレータ40に指示する応答指示部54と、診断機30から出力された診断結果を取得する情報取得部55と、情報取得部55により取得された診断結果と応答指示部54により指示された診断項目に対応する応答内容とを比較する比較部56と、を有する(図6)。これにより、診断プログラムが診断機30上で正常に動作するか否かを自動的に検証することが可能となり、診断プログラムの検証に要する検証作業者P2の労力を低減することができる。
【0056】
(2)診断機30は、シミュレータ40との通信により得られた診断結果を表示する表示部34を有する(図6)。比較部56は、表示部34に表示される診断結果に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、応答指示部54により指示された診断項目に対応する応答内容に含まれる文字情報および画像情報の少なくとも一方と、を比較する。診断機30から文字情報および画像情報を含む診断結果を取得し、ピクセル単位の画像データやテキストデータを比較できるため、診断プログラムの動作検証を自動的に精度よく行うことができる。
【0057】
(3)診断機検証システム100は、検証装置50をそれぞれ有する複数のスレーブコンピュータと、複数のスレーブコンピュータを統合するマスタコンピュータと、を備える(図8)。複数のスレーブコンピュータは、互いに異なる検証項目の検証を行って検証結果を出力する。マスタコンピュータは、複数のスレーブコンピュータから出力された検証結果を受信する。これにより、複数の診断項目についての診断プログラムの検証に要する所要時間を短縮することができる。
【0058】
(4)検証装置50は、診断機30による診断対象である第1機種に対応して予め設定された既存の診断項目と、診断機30による診断対象である第2機種に対応して設定され、既存の診断項目と、既存の診断項目に追加された新規の診断項目とを含む全ての診断項目と、を記憶するメモリ52と、新規の診断項目を入力する入力部33と、をさらに有する(図6)。
【0059】
項目指示部53は、診断機30による診断対象が第1機種であるとき、メモリ52に記憶された既存の診断項目を診断機30に指示し、診断機30による診断対象が第2機種であるとき、メモリ52に記憶された全ての診断項目を診断機30に指示する。すなわち、診断プログラムのバージョンアップごとに、バージョンアップ前の新規項目がバージョンアップ後の既存項目として蓄積されるため、最新バージョンの診断プログラムの検証に要する検証作業者P2の労力を低減することができる。
【0060】
上記実施形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、市販のコンピュータ等により構成されるシミュレータ40を例示したが、車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置はこのようなものに限らない。例えば、実際のECU3に動作検証用の設定値(診断項目に対する応答内容)を設定したものをシミュレータ40として用いてもよい。
【0061】
上記実施形態では、検証装置50の情報取得部55が診断機30から出力された画像信号を取得するとしたが、診断機から出力された診断結果を取得する結果取得部の構成はこれに限らない。例えば、診断機30の表示部34を撮影するカメラを設け、カメラにより撮影された画像情報を取得してもよい。
【0062】
上記実施形態では、検証装置50のメモリ52に、検証作業者P2による一連の操作の情報および入力部58を介して入力された診断項目が記憶されるとしたが、診断機による診断対象である第1、第2機種に対応して予め設定された第1、第2診断項目を記憶する記憶部はこのようなものに限らない。記憶部は、検証装置50とは別に設けてもよく、例えば、検証装置50に接続された外部メモリやサーバ上の記憶領域等を記憶部としてもよい。
【0063】
以上では、本発明を診断機検証システム100として説明したが、本発明は、車両に搭載された車両制御装置と通信可能に接続されて車両の診断を行う診断機および車両制御装置の模擬動作を実行する模擬装置のそれぞれと通信し、診断機の動作を検証する診断機検証方法として用いることもできる。すなわち、診断機検証方法は、診断すべき診断項目を診断機30に指示し(図7AのステップS11)、診断機30に指示した診断項目に対応する応答内容をシミュレータ40に指示し(ステップS10)、診断機30がシミュレータ40との通信により得た診断結果を取得し(ステップS12)、診断機30から取得した診断結果とシミュレータ40に指示した診断項目に対応する応答内容とを比較する(ステップS13)ことを含む。
【0064】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
2 車両、3 ECU、30 診断機、31 CPU、32 メモリ、33 入力部、34 表示部、40 シミュレータ、41 CPU、42 メモリ、50 検証装置、51 CPU、52 メモリ、53 項目指示部、54 応答指示部、55 情報取得部、56 比較部、57 出力部、58 入力部、59 表示部、100 診断機検証システム
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8