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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ガスセンサのセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20221215BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20221215BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20221215BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
G01N27/41 325J
G01N27/419 327J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021511292
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009602
(87)【国際公開番号】W WO2020203030
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2019066768
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】大西 諒
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】日野 隆志
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096792(JP,A)
【文献】特開2018-169324(JP,A)
【文献】特開2016-065851(JP,A)
【文献】特開2016-065853(JP,A)
【文献】特開2011-158390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサのセンサ素子であって、
一方端部にガス導入口が設けられてなるとともに前記ガス導入口から長手方向に連通するガス流通部を内部に有してなるセラミックス構造体であって、測定対象ガス成分を含む被測定ガスが前記ガス導入口を通じて前記ガス流通部に導入され、前記測定対象ガス成分が前記ガス流通部内に設けられた検知部によって検知される素子基体と、
前記素子基体のうち、前記一方端部から所定範囲の外周部に設けられた多孔質層である先端保護層と、
を備え、
前記先端保護層が、
前記端部と、前記端部と連続する前記素子基体の4つの側面とを覆うように設けられてなる内側先端保護層と、
前記内側先端保護層を覆うように設けられてなり、前記内側先端保護層よりも気孔率が小さい外側先端保護層と、
を備え、
前記素子基体の2つの主面の上において前記素子基体と前記内側先端保護層との間に設けられてなる多孔質の下地層、
をさらに備え、
前記下地層の気孔率が30%~60%であり、厚みが15μm~50μmであり、
少なくとも、
前記ガス導入口が設けられた前記ガス流通部の起点位置である第1の位置と、
前記ガス流通部の中間位置である第2の位置と、
前記ガス流通部の前記ガス導入口からの最奥端の位置である第3の位置と、
を含む、複数の厚み評価位置のそれぞれにおける、前記先端保護層の総厚の平均値を、総厚代表値と定義し、前記総厚代表値を100としたときの、前記複数の厚み評価位置のそれぞれにおける前記先端保護層の総厚の最大値と最小値の差の前記総厚代表値に対する比を、膜厚ばらつき度と定義するときに、
前記総厚代表値が250μm以上であり、前記膜厚ばらつき度が20以下である、
ことを特徴とする、ガスセンサのセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ素子であって、
前記内側先端保護層の気孔率が40%~80%であり、
前記外側先端保護層の気孔率が10%~40%である、
ことを特徴とする、ガスセンサのセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサのセンサ素子に関し、特にその表面保護層に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関からの排ガスなどの被測定ガス中に含まれる所望ガス成分の濃度を知るためのガスセンサとして、ジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質からなり、表面や内部にいくつかの電極を備えるセンサ素子を有するものが、広く知られている。係るセンサ素子として、長尺板状の素子形状を有し、かつ、被測定ガスを導入する部分が備わる側の端部に、多孔質体からなる保護層(多孔質保護層)が設けられるものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
センサ素子の表面に保護層を設けるのは、ガスセンサの使用時におけるセンサ素子の耐被水性を確保するためである。具体的には、センサ素子の表面に付着した水滴からの熱(冷熱)に起因する熱衝撃がセンサ素子に作用して、センサ素子が割れてしまう、被水割れを防止するためである。
【0004】
また、センサ素子の耐被水性試験の一手法として、センサ素子を組み込んだガスセンサを、実車を模擬した試験装置(被水量測定装置)の排気管(パイプ)に取り付け、水を含んだ試験用ガスを所定の条件で排気管内に流したときの被水割れの発生の有無から、当該センサ素子の耐被水性を評価する手法も、すでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
センサ素子の表面に対する水滴の付着は、局所的に起こり得る現象であるため、たとえ保護層の平均的な厚み(膜厚)が被水割れの抑制にとって十分なものであるとしても、厚みの均一性が十分ではないならば、厚みが小さい箇所に水滴が付着して当該個所に熱衝撃が生じた場合には、被水割れが生じる可能性が高いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5344375号公報
【文献】特許第5997833号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、保護層における耐熱衝撃性の均一性が確保されてなることで、被水割れの発生より確実に抑制された、ガスセンサのセンサ素子を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、ガスセンサのセンサ素子であって、一方端部にガス導入口が設けられてなるとともに前記ガス導入口から長手方向に連通するガス流通部を内部に有してなるセラミックス構造体であって、測定対象ガス成分を含む被測定ガスが前記ガス導入口を通じて前記ガス流通部に導入され、前記測定対象ガス成分が前記ガス流通部内に設けられた検知部によって検知される素子基体と、前記素子基体のうち、前記一方端部から所定範囲の外周部に設けられた多孔質層である先端保護層と、を備え、前記先端保護層が、前記端部と、前記端部と連続する前記素子基体の4つの側面とを覆うように設けられてなる内側先端保護層と、前記内側先端保護層を覆うように設けられてなり、前記内側先端保護層よりも気孔率が小さい外側先端保護層と、を備え、前記素子基体の2つの主面の上において前記素子基体と前記内側先端保護層との間に設けられてなる多孔質の下地層、をさらに備え、前記下地層の気孔率が30%~60%であり、厚みが15μm~50μmであり、少なくとも前記ガス導入口が設けられた前記ガス流通部の起点位置である第1の位置と、前記ガス流通部の中間位置である第2の位置と、前記ガス流通部の前記ガス導入口からの最奥端の位置である第3の位置とを含む、複数の厚み評価位置のそれぞれにおける、前記先端保護層の総厚の平均値を、総厚代表値と定義し、前記総厚代表値を100としたときの、前記複数の厚み評価位置のそれぞれにおける、前記先端保護層の総厚の最大値と最小値の差の前記総厚代表値に対する比を、膜厚ばらつき度と定義するときに、前記総厚代表値が250μm以上であり、前記膜厚ばらつき度が20以下である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るセンサ素子であって、前記内側先端保護層の気孔率が40%~80%であり、前記外側先端保護層の気孔率が10%~40%である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第1およびの態様によれば、先端保護層が優れた耐熱衝撃性を均一に具備してなり、これによって耐被水性が好適に確保されたセンサ素子が、実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】センサ素子10の概略的な外観斜視図である。
図2】センサ素子10の長手方向に沿った断面図を含むガスセンサ100の構成の概略図である。
図3】センサ素子10を作製する際の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<センサ素子およびガスセンサの概要>
図1は、本発明の実施の形態に係るセンサ素子(ガスセンサ素子)10の概略的な外観斜視図である。また、図2は、センサ素子10の長手方向に沿った断面図を含むガスセンサ100の構成の概略図である。センサ素子10は、被測定ガス中の所定ガス成分を検知しその濃度を測定するガスセンサ100の、主たる構成要素であるセラミックス構造体である。センサ素子10は、いわゆる限界電流型のガスセンサ素子である。
【0013】
ガスセンサ100は、センサ素子10のほか、ポンプセル電源30と、ヒータ電源40と、コントローラ50とを主として備える。
【0014】
図1に示すように、センサ素子10は概略、長尺板状の素子基体1の一方端部側が、多孔質の先端保護層2にて被覆された構成を有する。
【0015】
素子基体1は概略、図2に示すように、長尺板状のセラミックス体101を主たる構造体とするとともに、該セラミックス体101の2つの主面上には主面保護層170を備え、さらに、センサ素子10においては、一先端部側の端面(セラミックス体101の先端面101e)および4つの側面の外側に先端保護層2が設けられてなる。なお、以降においては、センサ素子10(もしくは素子基体1、セラミックス体101)の長手方向における両端面を除く4つの側面を単に、センサ素子10(もしくは素子基体1、セラミックス体101)の側面と称する。
【0016】
セラミックス体101は、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニア(イットリウム安定化ジルコニア)を主成分とするセラミックスからなる。また、係るセラミックス体101の外部および内部には、センサ素子10の種々の構成要素が設けられてなる。係る構成を有するセラミックス体101は、緻密かつ気密なものである。なお、図2に示すセンサ素子10の構成はあくまで例示であって、センサ素子10の具体的構成はこれに限られるものではない。
【0017】
図2に示すセンサ素子10は、セラミックス体101の内部に第一の内部空室102と第二の内部空室103と第三の内部空室104とを有する、いわゆる直列三室構造型のガスセンサ素子である。すなわち、センサ素子10においては概略、第一の内部空室102が、セラミックス体101の一方端部E1側において外部に対し開口する(厳密には先端保護層2を介して外部と連通する)ガス導入口105と第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120を通じて連通しており、第二の内部空室103が第三の拡散律速部130を通じて第一の内部空室102と連通しており、第三の内部空室104が第四の拡散律速部140を通じて第二の内部空室103と連通している。なお、ガス導入口105から第三の内部空室104に至るまでの経路を、ガス流通部とも称する。本実施の形態に係るセンサ素子10においては、係るガス流通部がセラミックス体101の長手方向に沿って一直線状に設けられてなる。
【0018】
第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140はいずれも、図面視上下2つのスリットとして設けられている。第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140は、通過する被測定ガスに対して所定の拡散抵抗を付与する。なお、第一の拡散律速部110と第二の拡散律速部120の間には、被測定ガスの脈動を緩衝する効果を有する緩衝空間115が設けられている。
【0019】
また、セラミックス体101の外面には外部ポンプ電極141が備わり、第一の内部空室102には内部ポンプ電極142が備わっている。さらには、第二の内部空室103には補助ポンプ電極143が備わり、第三の内部空室104には、測定対象ガス成分の直接の検知部である測定電極145が備わっている。加えて、セラミックス体101の他方端部E2側には、外部に連通し基準ガスが導入される基準ガス導入口106が備わっており、該基準ガス導入口106内には、基準電極147が設けられている。
【0020】
例えば、係るセンサ素子10の測定対象が被測定ガス中のNOxである場合であれば、以下のようなプロセスによって、被測定ガス中のNOxガス濃度が算出される。
【0021】
まず、第一の内部空室102に導入された被測定ガスは、主ポンプセルP1のポンピング作用(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整されたうえで、第二の内部空室103に導入される。主ポンプセルP1は、外部ポンプ電極141と、内部ポンプ電極142と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101aとによって構成される電気化学的ポンプセルである。第二の内部空室103においては、同じく電気化学的ポンプセルである、補助ポンプセルP2のポンピング作用により、被測定ガス中の酸素が素子外部へと汲み出されて、被測定ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。補助ポンプセルP2は、外部ポンプ電極141と、補助ポンプ電極143と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101bとによって構成される。
【0022】
外部ポンプ電極141、内部ポンプ電極142、および補助ポンプ電極143は、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO とのサーメット電極)として形成されてなる。なお、被測定ガスに接触する内部ポンプ電極142および補助ポンプ電極143は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた、あるいは、還元能力のない材料を用いて形成される。
【0023】
補助ポンプセルP2によって低酸素分圧状態とされた被測定ガス中のNOxは、第三の内部空室104に導入され、第三の内部空室104に設けられた測定電極145において還元ないし分解される。測定電極145は、第三の内部空室104内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する多孔質サーメット電極である。係る還元ないし分解の際には、測定電極145と基準電極147との間の電位差が、一定に保たれている。そして、上述の還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定用ポンプセルP3によって素子外部へと汲み出される。測定用ポンプセルP3は、外部ポンプ電極141と、測定電極145と、両電極の間に存在するセラミックス体101の部分であるセラミックス層101cとによって構成される。測定用ポンプセルP3は、測定電極145の周囲の雰囲気中におけるNOxの分解によって生じた酸素を汲み出す電気化学的ポンプセルである。
【0024】
主ポンプセルP1、補助ポンプセルP2、および測定用ポンプセルP3におけるポンピング(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)は、コントローラ50による制御のもと、ポンプセル電源(可変電源)30によって各ポンプセルに備わる電極の間にポンピングに必要な電圧が印加されることにより、実現される。測定用ポンプセルP3の場合であれば、測定電極145と基準電極147との間の電位差が所定の値に保たれるように、外部ポンプ電極141と測定電極145との間に電圧が印加される。ポンプセル電源30は通常、各ポンプセル毎に設けられる。
【0025】
コントローラ50は、測定用ポンプセルP3により汲み出される酸素の量に応じて測定電極145と外部ポンプ電極141との間を流れるポンプ電流Ip2を検出し、このポンプ電流Ip2の電流値(NOx信号)と、分解されたNOxの濃度との間に線型関係があることに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を算出する。
【0026】
なお、好ましくは、ガスセンサ100は、それぞれのポンプ電極と基準電極147との間の電位差を検知する、図示しない複数の電気化学的センサセルを備えており、コントローラ50による各ポンプセルの制御は、それらのセンサセルの検出信号に基づいて行われる。
【0027】
また、センサ素子10においては、セラミックス体101の内部にヒータ150が埋設されている。ヒータ150は、ガス流通部の図2における図面視下方側において、一方端部E1近傍から少なくとも測定電極145および基準電極147の形成位置までの範囲にわたって設けられる。ヒータ150は、センサ素子10の使用時に、セラミックス体101を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるべく、センサ素子10を加熱することを主たる目的として、設けられてなる。より詳細には、ヒータ150はその周囲を絶縁層151に囲繞される態様にて設けられてなる。
【0028】
ヒータ150は、例えば白金などからなる抵抗発熱体である。ヒータ150は、コントローラ50による制御のもと、ヒータ電源40からの給電により発熱する。
【0029】
本実施の形態に係るセンサ素子10はその使用時、ヒータ150によって、少なくとも第一の内部空室102から第二の内部空室103に至る範囲の温度が500℃以上となるように、加熱される。さらには、ガス導入口105から第三の内部空室104に至るまでのガス流通部全体が500℃以上となるように、加熱される場合もある。これらは、各ポンプセルを構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高め、各ポンプセルの能力が好適に発揮されるようにするためである。係る場合、最も高温となる第一の内部空室102付近の温度は、700℃~800℃程度となる。
【0030】
以降においては、セラミックス体101の2つの主面のうち、図2において図面視上方側に位置する、主に主ポンプセルP1、補助ポンプセルP2、および測定用ポンプセルP3が備わる側の主面(あるいは当該主面が備わるセンサ素子10の外面)をポンプ面と称し、図2において図面視下方に位置する、ヒータ150が備わる側の主面(あるいは当該主面が備わるセンサ素子10の外面)をヒータ面と称することがある。換言すれば、ポンプ面は、ヒータ150よりもガス導入口105、3つの内部空室、および各ポンプセルに近接する側の主面であり、ヒータ面はガス導入口105、3つの内部空室、および各ポンプセルよりもヒータ150に近接する側の主面である。
【0031】
セラミックス体101のそれぞれの主面上の他方端部E2側には、センサ素子10と外部との間の電気的接続を図るための複数の電極端子160が形成されてなる。これらの電極端子160は、セラミックス体101の内部に備わる図示しないリード線を通じて、上述した5つの電極と、ヒータ150の両端と、図示しないヒータ抵抗検出用のリード線と、所定の対応関係にて電気的に接続されている。よって、センサ素子10の各ポンプセルに対するポンプセル電源30から電圧の印加や、ヒータ電源40からの給電によるヒータ150の加熱は、電極端子160を通じてなされる。
【0032】
さらに、センサ素子10においては、セラミックス体101のポンプ面およびヒータ面に、上述した主面保護層170(170a、170b)が備わっている。主面保護層170は、アルミナからなる、厚みが5μm~30μm程度であり、かつ20%~40%程度の気孔率にて気孔が存在する層であり、セラミックス体101の主面(ポンプ面およびヒータ面)や、ポンプ面側に備わる外部ポンプ電極141に対する、異物や被毒物質の付着を防ぐ目的で設けられてなる。それゆえ、ポンプ面側の主面保護層170aは、外部ポンプ電極141を保護するポンプ電極保護層としても機能するものである。
【0033】
なお、本実施の形態において、気孔率は、評価対象物のSEM(走査電子顕微鏡)像に対し公知の画像処理手法(二値化処理など)を適用することで求めるものとする。
【0034】
図2においては、電極端子160の一部を露出させるほかはポンプ面およびヒータ面の略全面にわたって主面保護層170が設けられてなるが、これはあくまで例示であり、図2に示す場合よりも、主面保護層170は、一方端部E1側の外部ポンプ電極141近傍に偏在させて設けられてもよい。
【0035】
<先端保護層の詳細>
センサ素子10においては、上述のような構成を有する素子基体1の一方端部E1から所定範囲の最外周部に、先端保護層2が設けられてなる。
【0036】
先端保護層2を設けるのは、素子基体1のうちガスセンサ100の使用時に高温(最高で700℃~800℃程度)となる部分を囲繞することによって、当該部分における耐被水性を確保し、当該部分が直接に被水することによる局所的な温度低下に起因した熱衝撃により素子基体1にクラック(被水割れ)が生じることを、抑制するためである。
【0037】
加えて、先端保護層2は、センサ素子10の内部にMgなどの被毒物質が入り込むことを防ぐ、耐被毒性の確保のためにも、設けられてなる。
【0038】
図2に示すように、本実施の形態に係るセンサ素子10においては、先端保護層2が、内側先端保護層22、外側先端保護層23の2層で構成される。また、先端保護層2と(内側先端保護層22と)素子基体1の間には、下地層3が設けられる。
【0039】
下地層3は、その上に形成される内側先端保護層22(さらには外側先端保護層23)との間における接着性(密着性)を確保するべく設けられる層である。下地層3は少なくとも、素子基体1のポンプ面側およびヒータ面側の2つの主面上に設けられてなる。すなわち、下地層3は、ポンプ面側の下地層3aとヒータ面側の下地層3bとを備える。ただし、下地層3は、セラミックス体101の(素子基体1の)先端面101e側には設けられない。
【0040】
下地層3は、アルミナにて、30%~60%の気孔率を有しかつ15μm~50μmの厚みに形成されてなる。なお、下地層3は、後述するように、内側先端保護層22および外側先端保護層23とは異なり、素子基体1の作製の過程で素子基体1ともども形成される。
【0041】
内側先端保護層22と外側先端保護層23は、素子基体1の一方端部E1側の先端面101eと4つの側面とを覆うように(素子基体1の一方端部E1側の外周に)、内側から順に設けられてなる。内側先端保護層22のうち、先端面101e側の部分を特に先端部221と称し、ポンプ面側とヒータ面側の部分を特に主面部222と称する。同様に、外側先端保護層23のうち、先端面101e側の部分を特に先端部231と称し、ポンプ面側とヒータ面側の部分を特に主面部232と称する。内側先端保護層22の主面部222は、下地層3と隣接している。
【0042】
内側先端保護層22は、アルミナにて、40%~80%の気孔率を有しかつ300μm~800μmの厚みを有するように、設けられてなる。また、外側先端保護層23は、アルミナにて、内側先端保護層22よりも小さい10%~40%の気孔率を有しかつ50μm~300μmの厚みを有するように、設けられてなる。これにより、先端保護層2においては、外側先端保護層23よりも熱伝導率の小さい内側先端保護層22が、該内側先端保護層22よりも気孔率の小さい外側先端保護層23に、被覆された構成となっている。内側先端保護層22は、低熱伝導率の層として設けられることで、外部から素子基体1への熱伝導を抑制する機能を有してなる。
【0043】
内側先端保護層22と外側先端保護層23は、表面に下地層3が形成された素子基体1に対し、それぞれの構成材料を順次に溶射(プラズマ溶射)することで形成される。これは、素子基体1の作製とともにあらかじめ形成されてなる下地層3と内側先端保護層22の間にアンカー効果を発現させ、下地層3に対する(外側に形成される外側先端保護層23も含めた)内側先端保護層22の接着性(密着性)を、確保するためである。これは、換言すれば、下地層3が内側先端保護層22との間における接着性(密着性)を確保する機能を有しているということを意味する。
【0044】
ただし、本実施の形態においては、先端保護層2が、総厚代表値が250μm以上であり、かつ、膜厚ばらつき度が20以下であるように、設けられる。
【0045】
ここで、総厚代表値とは、センサ素子10の幅方向中央の素子長手方向に沿った垂直断面(厚み方向断面)における、先端保護層2のポンプ面上またはヒータ面上の相異なる複数の厚み評価位置のそれぞれにおける先端保護層2の総厚の、平均値として定義される。また、膜厚ばらつき度とは、総厚代表値を100としたときの、それぞれの厚み評価位置における総厚の最大値と最小値の差(最大膜厚差)の総厚代表値に対する比と定義される。
【0046】
ただし、複数の厚み評価位置には少なくとも、ガス導入口105が設けられたガス流通部の起点位置であるセラミックス体101の先端面101eの位置(Pos.1)と、ガス流通部の中間位置(Pos.2)と、ガス流通部の最奥部(ガス導入口105からの最遠部)である第三の内部空室104の最奥端の位置(Pos.3)とが、含まれるようにする。図2においては、これら3つの位置における先端保護層2の総厚をそれぞれ、T1、T2、T3として示している。
【0047】
それぞれの厚み評価位置における先端保護層2の総厚は例えば、センサ素子10の素子長手方向に沿った垂直断面(厚み方向断面)の撮像画像から、求めることが出来る。なお、先端保護層2の総厚は、最大でもせいぜい、内側先端保護層22の厚みの最大値と外側先端保護層23の厚みの最大値との総和の1300μmである。
【0048】
膜厚ばらつき度は、先端保護層2のポンプ面上またはヒータ面上における総厚の均一性の指標となる値であり、その値が小さいほど、先端保護層2は均一に近い厚みにて形成されてなるものと評価することが出来る。
【0049】
ここで、少なくともPos.1~Pos.3を厚み評価位置に含むようにするのは、Pos.1はセラミックス体101の先端面101e側との境界位置に相当し、また、Pos.3は先端保護層2の他方端部E2側における端部に近いことから、両位置ともに上述した手法による先端保護層2の形成に際して厚みにばらつきが生じやすい一方で、Pos.2はガス流通部上の先端保護層2の代表的な位置であり、当該位置近傍においては比較的狙い厚み通りに先端保護層2を形成しやすいことから、先端保護層2の厚み均一性の程度を評価するのであれば最低限これらPos.1~Pos.3における測定値を考慮するのが妥当と思料されることによる。当然ながら、厚み評価位置を多くするほど、膜厚ばらつき度の値は先端保護層2の実際の厚み均一性をより好適に反映したものとなる。
【0050】
本実施の形態に係るガスセンサ100においては、上述のように、先端保護層2が、総厚代表値が250μm以上であり、かつ、膜厚ばらつき度が20以下であるように、設けられてなることで、先端保護層2の厚みの均一性が確保されてなる。そして、このように先端保護層2が均一な厚みにて備わることで、先端保護層2が優れた耐熱衝撃性を均一に具備してなる。これにより、先端保護層2において厚みが局所的に小さい箇所に水滴が付着したことに起因して熱衝撃が生じることが、さらにはその結果としてセンサ素子10に被水割れが生じることが、好適に抑制されてなる。すなわち、本実施の形態に係るガスセンサ100においては、センサ素子10の耐被水性の向上が図られている。
【0051】
なお、内側先端保護層22と外側先端保護層23は、下地層3(3a、3b)の全体を被覆するように設けられるのではなく、下地層3のうち、センサ素子10の長手方向において一方端部E1側とは反対側の端部を露出させる態様にて、形成される。これは、下地層3に対する(外側に形成される外側先端保護層23も含めた)内側先端保護層22の接着性(密着性)を、より確実に確保するためである。
【0052】
これに加え、図2に示すセンサ素子10においては、外側先端保護層23が、内側先端保護層22の一方端部E1側とは反対側の端部を露出させる態様にて、形成されてなるが、これは必須の態様ではなく、外側先端保護層23は内側先端保護層22の当該端部を覆うように形成されていてもよい。
【0053】
以上、説明したように、本実施の形態に係るセンサ素子10においては、先端保護層2を内側先端保護層22と外側先端保護層23の2層構成とし、気孔率が40%~80%なる範囲をみたす低熱伝導率の内側先端保護層22を気孔率が小さい外側先端保護層23にて囲繞する構成とし、さらには、先端保護層2を、総厚代表値が250μm以上であり、かつ、膜厚ばらつき度が20以下であるように設けることによって、先端保護層2が優れた耐熱衝撃性を均一に具備してなる。このような構成を有することで、センサ素子10においては、耐被水性が好適に確保されてなる。
【0054】
<センサ素子の製造プロセス>
次に、上述のような構成および特徴を有するセンサ素子10を製造するプロセスの一例について説明する。図3は、センサ素子10を作製する際の処理の流れを示す図である。
【0055】
素子基体1の作製に際しては、まず、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含み、かつ、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示省略)を、複数枚用意する(ステップS1)。
【0056】
ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パターン形成に先立つブランクシートの段階で、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、セラミックス体101の対応する部分に内部空間が形成されることになるグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、それぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はなく、最終的に形成される素子基体1におけるそれぞれの対応部分に応じて、厚みが違えられていてもよい。
【0057】
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対してパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、各種電極のパターンや、ヒータ150および絶縁層151のパターンや、電極端子160のパターンや、主面保護層170のパターンや、図示を省略している内部配線のパターンなどが、形成される。また、係るパターン印刷のタイミングで、第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120、第三の拡散律速部130、および第四の拡散律速部140を形成するための昇華性材料(消失材)の塗布あるいは配置も併せてなされる。加えて、積層後に最上層および最下層となるブランクシートに対しては、下地層3(3a、3b)を形成するためのパターンの印刷もなされる(ステップS2a)。
【0058】
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。例えば、下地層3の形成に際しては、最終的に得られるセンサ素子10において所望の気孔率および厚みの下地層3を形成可能なアルミナペーストが用いられる。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0059】
各ブランクシートに対するパターン印刷が終わると、グリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0060】
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。なお、係る態様にて得られた積層体に対し下地層3を形成するためのパターンの形成がなされる態様であってもよい。
【0061】
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断して、それぞれが最終的に個々の素子基体1となる単位体に切り出す(ステップS5)。
【0062】
続いて、得られた単位体を、1300℃~1500℃程度の焼成温度で焼成する(ステップS6)。これにより、両主面に下地層3を備えた素子基体1が作製される。すなわち、素子基体1は、固体電解質からなるセラミックス体101と、各電極と、主面保護層170とが、下地層3ともども一体焼成されることによって、生成されるものである。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、素子基体1においては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
【0063】
以上の態様にて素子基体1が作製されると、続いて、係る素子基体1に対し、内側先端保護層22と外側先端保護層23の形成が行われる。内側先端保護層22の形成は、あらかじめ用意した内側先端保護層形成用の粉末(アルミナ粉末)を素子基体1における内側先端保護層22の形成対象位置に対し狙いの形成厚みに応じて溶射(ステップS7)した後、係る態様にて塗布膜が形成された素子基体1を焼成する(ステップS8)ことによって行われる。内側先端保護層形成用のアルミナ粉末には、所定の粒度分布を有するアルミナ粉末と造孔材とが所望する気孔率に応じた割合にて含まれており、溶射後に素子基体1を焼成することによって係る造孔材を熱分解させることで、40%~80%という高い気孔率の内側先端保護層22が好適に形成されるようになっている。なお、溶射および焼成には公知の技術を適用可能である。
【0064】
内側先端保護層22が形成されると、続いて、同じくあらかじめ用意した、所定の粒度分布を有するアルミナ粉末が含まれる外側先端保護層形成用の粉末(アルミナ粉末)を、素子基体1における外側先端保護層23の形成対象位置に対し狙いの形成厚みに応じて溶射する(ステップS9)ことにより、所望の気孔率の外側先端保護層23を形成する。外側先端保護層形成用のアルミナ粉末には造孔材は含まれない。係る溶射についても、公知の技術を適用可能である。
【0065】
なお、先端保護層2の厚みの均一性を高める目的で、内側先端保護層22の形成後および/または外側先端保護層23の形成後に、それぞれの層を研磨するようにしてもよい。研磨の手法は特に限定されない。なお、研磨紙(紙やすり)を用いる場合は、番手が150番以下のものを用いるのが好ましい。
【0066】
以上の手順によりセンサ素子10が得られる。得られたセンサ素子10は、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込まれる。
【0067】
<変形例>
上述の実施の形態においては、3つの内部空室を備えたセンサ素子を対象としているが、センサ素子が3室構造であることは必須ではない。すなわち、センサ素子が、内部空室を2つあるいは1つ備える態様であってもよい。
【0068】
また、上述の実施の形態においては、ステップS7における内側先端保護層形成用の粉末の溶射後、ステップS8における焼成を行ったうえで、ステップS9における外側先端保護層形成用の粉末の溶射を行っているが、ステップS8の焼成と、ステップS9の溶射の順序は、入れ替わってもよい。
【0069】
また、上述の実施の形態においては、内側先端保護層22および外側先端保護層23をアルミナにて設けることとし、両層を形成する際の溶射材として、アルミナ粉末を用いているが、これは必須の態様ではない。アルミナに代えて、ジルコニア(ZrO)、スピネル(MgAl)、ムライト(Al 13 Si)などの金属酸化物を用いて、内側先端保護層22および外側先端保護層23を設ける態様であってもよい。係る場合は、それらの金属酸化物の粉末を溶射材として採用すればよい。
【実施例
【0070】
センサ素子10の先端保護層2の総厚を種々に違えた12通りのガスセンサ100(試料No.1~No.12)を作製した。
【0071】
それぞれのガスセンサ100について、耐被水性の評価(耐被水性試験)を行った。耐被水性試験は、特許文献2に開示された手法に準じ、実車を模擬した試験装置を用いて行った。
【0072】
具体的には、試験装置として、2本のパイプを角度が150°となるように繋ぎ合わせ、一方側のパイプに切替バルブを介して送風機を接続し、他方側のパイプの途中にガスセンサを配置したものを用意した。パイプの繋ぎ目部分には100mLの水を蓄えておき、空気雰囲気中でヒータ150による加熱を行いセンサ素子10の温度を850℃で安定させた後、送風機からガスセンサ100が取り付けられたパイプに対し風速約50m/sで3秒間の送風を行うことにより、水をガスセンサ100に向かって飛散させるようにした。そして、送風後のセンサ素子10にクラックが生じるか否かを確認した。より詳細には、ガスセンサ100が取り付けられたパイプに対する送風は、特許文献2の手法と同様、あらかじめ切替バルブをバイパスに接続した状態で用意した風速約50m/sの大気の流れを、切替バルブを操作してガスセンサ100が取り付けられたパイプへと切り替えることにより行った。
【0073】
先端保護層2において総厚が局所的に小さいところを具体的に特定するのは必ずしも容易ではないところ、係る手法によれば、先端保護層2のどこかで被水割れが生じればこれを検知できるので、先端保護層2における厚みばらつきの多少と被水割れとの関係を特定することが可能である。
【0074】
なお、耐被水性の評価手法としては、先端保護層2に対し等量の水滴を断続的に滴下し、被水割れが生じない範囲の最大滴下水量を耐被水性の指標とする手法が知られているが、係る手法は、仮に滴下箇所を多数定めたとしても、必ずしも先端保護層2の厚みが局所的に小さいところの耐被水性を評価できるとは限らないので、本発明の作用効果を確認する手法としては必ずしも適切ではない。
【0075】
また、それぞれのセンサ素子10について、断面SEM像から、ヒータ面側のPos.1、Pos.2、およびPos.3における先端保護層2の総厚を求め、得られた値を用いて、総厚代表値、最大膜厚差、膜厚ばらつき度を算出した。
【0076】
表1に、それぞれのガスセンサ100についての、Pos.1、Pos.2、およびPos.3における先端保護層2の総厚(表1においては「保護層Total膜厚」記載)と、それらの総厚代表値(表1においては「Ave.」と記載)および最大膜厚差と、両者の値から算出した膜厚ばらつき度と、耐被水性の評価結果とを、一覧にして示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1においては、耐被水性試験の終了時にクラックが発生していなかった試料について、耐被水性は良好であるとして「耐被水性」欄に「〇」(丸印)を付し、発生していた試料については「耐被水性」欄に「×」(バツ印)を付している。
【0079】
表1に示すように、膜厚ばらつき度が20を超えたNo.3およびNo.4の試料と、総厚代表値が250μmを下回ったNo.5の試料を除いては、いずれの試料においてもクラックは発生しておらず、耐被水性は良好であった。
【0080】
係る結果は、先端保護層2を、総厚代表値が250μm以上であり、かつ、膜厚ばらつき度が20以下であるように設けることによって、厚みが局所的に小さい箇所が存在することに起因したセンサ素子10の被水割れの発生が抑制され、センサ素子10において耐被水性が好適に確保されることを示している。
図1
図2
図3