IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

特許7194820印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法
<>
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図1
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図2
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図3
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図4
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図5A
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図5B
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図6
  • 特許-印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/08 20060101AFI20221215BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20221215BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20221215BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41F33/00 210
B41M1/12
H05K3/34 505D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515734
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019018113
(87)【国際公開番号】W WO2020217510
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光昭
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-024665(JP,A)
【文献】特開2002-297236(JP,A)
【文献】米国特許第05738904(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00 - 15/46
B41F 31/00 - 35/06
B41M 1/00 - 3/18
B41M 7/00 - 9/04
H05K 3/32 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する取得部と、
前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得部によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータであって前記信頼度が所定レベル以上の前記印刷パラメータを出力する出力部と、
を備え
前記データベースは、
前記印刷機の製造者によって作成された前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶されている第一データベースと、
前記印刷機の使用者が前記印刷機を使用して基板製品を生産したときに用いられた前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶される第二データベースと、
を備える印刷パラメータ取得装置。
【請求項2】
基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する取得部と、
前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得部によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度を出力する出力部と、
を備え
前記データベースは、
前記印刷機の製造者によって作成された前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶されている第一データベースと、
前記印刷機の使用者が前記印刷機を使用して基板製品を生産したときに用いられた前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶される第二データベースと、
を備える印刷パラメータ取得装置。
【請求項3】
前記第二データベースは、前記印刷機を駆動させる生産プログラムに含まれる前記印刷パラメータのうちの少なくとも一部が変更されたときに、前記印刷条件、変更後の前記印刷パラメータおよび変更後の前記印刷パラメータの前記信頼度を新たに関連付けて記憶する請求項1または請求項2に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記取得部によって取得された前記印刷条件と前記データベースに記憶されている前記印刷条件との合致度について、前記印刷条件ごとの重み付けを示す係数を乗じて点数化し、前記合致度を示す合致点数が高いほど前記取得部によって取得された前記印刷条件と前記データベースに記憶されている前記印刷条件とが対応していると判断する請求項1~請求項のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記印刷機の前記製造者によって決定された前記係数について、前記印刷機の前記使用者による変更を受け付ける請求項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項6】
前記印刷パラメータの前記信頼度は、前記合致点数によって表され、
前記出力部は、前記合致点数が高いものから順に前記印刷パラメータを出力する請求項または請求項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項7】
前記印刷パラメータの前記信頼度は、前記印刷パラメータを使用して生産した基板製品の生産数によって表され、
前記出力部は、前記生産数が多いものから順に前記印刷パラメータを出力する請求項1~請求項のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項8】
前記印刷パラメータの前記信頼度は、前記印刷機が前記基板の搬入を開始してから前記基板に前記はんだを印刷して前記印刷機から前記基板を搬出可能になるまでの間のスループットによって表され、
前記出力部は、前記スループットが高いものから順に前記印刷パラメータを出力する請求項1~請求項のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項9】
前記印刷パラメータの前記信頼度は、前記印刷パラメータを使用して複数の基板製品を生産したときの良品の割合である良品率によって表され、
前記出力部は、前記良品率が高いものから順に前記印刷パラメータを出力する請求項1~請求項のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項10】
前記印刷パラメータの前記信頼度は、前記基板に印刷された前記はんだの面積、高さおよび体積の各々についての目標値に対する偏差によって表され、
前記出力部は、前記偏差が小さいものから順に前記印刷パラメータを出力する請求項1~請求項のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項11】
前記印刷条件は、前記部材である前記基板、前記はんだ、マスクおよびスキージのうちの少なくとも一つを特定する請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項12】
前記印刷パラメータは、印刷速度、印刷圧力、版離れ速度、版離れ距離、マスクのクリーニング間隔およびクリーニング方法、並びに、印刷時のスキージの角度のうちの少なくとも一つを制御する際の制御パラメータである請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の印刷パラメータ取得装置。
【請求項13】
基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する取得工程と、
前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得工程によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータであって前記信頼度が所定レベル以上の前記印刷パラメータを出力する出力工程と、
を備え
前記データベースは、
前記印刷機の製造者によって作成された前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶されている第一データベースと、
前記印刷機の使用者が前記印刷機を使用して基板製品を生産したときに用いられた前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶される第二データベースと、
を備える印刷パラメータ取得方法。
【請求項14】
基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する取得工程と、
前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得工程によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度を出力する出力工程と、
を備え
前記データベースは、
前記印刷機の製造者によって作成された前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶されている第一データベースと、
前記印刷機の使用者が前記印刷機を使用して基板製品を生産したときに用いられた前記印刷条件、前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度が関連付けられて記憶される第二データベースと、
を備える印刷パラメータ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の印刷方法は、プリント基板のサイズに応じた印刷圧力を予めバックデータとして取得しておく。そして、印刷機は、バックデータを元に基板データから最適な印刷圧力を自動的に呼び出して印刷を始める。また、特許文献1に記載の印刷方法は、メタルマスクの種類に応じた印刷速度および版離れ速度を予めバックデータとして取得しておく。そして、印刷機は、バックデータを元にメタルマスクの種類から最適な印刷速度および版離れ速度を自動的に呼び出して印刷を始める。
【0003】
さらに、特許文献1に記載の印刷方法は、クリームはんだの種類(メーカ、粘度など)に応じた印刷速度および版離れ速度を予めバックデータとして取得しておく。そして、印刷機は、バックデータを元にクリームはんだの種類から最適な印刷速度および版離れ速度を自動的に呼び出して印刷を始める。これらにより、特許文献1に記載の印刷方法は、生産開始時および機種切り替え時の作業者による印刷圧力、印刷速度および版離れ速度の調整を省略しようとしている。
【0004】
特許文献2に記載のデータ管理システムでは、各電子部品組立工場は、自工場で装着テストを終えた検証済みの搭載部品情報をホストコンピュータのデータベースに登録する。データベースは、搭載部品情報名が特定の書式によって一般化されており、他の電子部品組立工場が利用しやすいように検索エンジンを提供する。搭載部品情報には、電子部品の形状データ、寸法データ、電子部品と電子部品組立機の関係を記述する吸着条件などが記載されている。
【0005】
また、データベースからダウンロードした試用版の搭載部品情報を使用者が使用できないときに、ホストコンピュータは、当該搭載部品情報の評価ランクを下げる。逆に、データベースからダウンロードした試用版の搭載部品情報を使用者が使用できたときに、ホストコンピュータは、当該搭載部品情報の評価ランクを上げる。評価ランクは、情報の信頼性の目安として、搭載部品情報の使用者に公開される。これらにより、特許文献2に記載のデータ管理システムは、搭載部品情報の使用者に対して、情報の有効性を判断する材料を提供しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-32717号公報
【文献】特開2003-323487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷方法では、バックデータは、種類ごとに個別に管理されている。そのため、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータをバックデータから選択して出力する作業が煩雑になる可能性がある。また、特許文献1には、最適な条件が如何なる条件を示すのか記載されていない。さらに、特許文献2に記載のデータ管理システムは、搭載部品情報を管理するものであり、印刷パラメータを管理するものではない。
【0008】
このような事情に鑑みて、本明細書は、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータをより好適に出力可能な印刷パラメータ取得装置および印刷パラメータ取得方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、取得部と、出力部とを備える第一の印刷パラメータ取得装置を開示する。前記取得部は、基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する。前記出力部は、前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得部によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータであって前記信頼度が所定レベル以上の前記印刷パラメータを出力する。
【0010】
また、本明細書は、取得部と、出力部とを備える第二の印刷パラメータ取得装置を開示する。前記取得部は、基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する。前記出力部は、前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得部によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度を出力する。
【0011】
さらに、本明細書は、取得工程と、出力工程とを備える第一の印刷パラメータ取得方法を開示する。前記取得工程は、基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する。前記出力工程は、前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得工程によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータであって前記信頼度が所定レベル以上の前記印刷パラメータを出力する。
【0012】
また、本明細書は、取得工程と、出力工程とを備える第二の印刷パラメータ取得方法を開示する。前記取得工程は、基板にはんだを印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する。前記出力工程は、前記印刷条件、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、前記取得工程によって取得された前記印刷条件に対応する前記印刷条件に関連付けられている前記印刷パラメータおよび前記印刷パラメータの前記信頼度を出力する。
【発明の効果】
【0013】
第一および第二の印刷パラメータ取得装置によれば、出力部は、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベースから、取得部によって取得された印刷条件に対応する印刷条件に関連付けられている印刷パラメータを出力する。よって、第一および第二の印刷パラメータ取得装置は、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度の管理が容易であり、印刷パラメータの出力が容易である。また、第一の印刷パラメータ取得装置の出力部は、信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータを出力する。第二の印刷パラメータ取得装置の出力部は、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を出力する。よって、第一および第二の印刷パラメータ取得装置は、印刷機の駆動の制御に用いられる印刷パラメータをより好適に出力することができる。印刷パラメータ取得装置について上述したことは、印刷パラメータ取得方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】印刷機1の構成例を示す断面図である。
図2】第一の印刷パラメータ取得装置100および第二の印刷パラメータ取得装置200の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
図3】第一の印刷パラメータ取得装置100および第二の印刷パラメータ取得装置200による制御手順の一例を示すフローチャートである。
図4】データベース60に記憶されているデータの一例を示す模式図である。
図5A】入力画面の一例を示す模式図である。
図5B】出力画面の一例を示す模式図である。
図6】合致点数の算出方法の一例を示す模式図である。
図7】基板90に印刷されたはんだ80の面積の偏差を表示する表示方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態
1-1.印刷機1の構成例
本実施形態の印刷機1は、スキージ34によって、はんだ80をマスク70に沿って移動させて基板90に印刷処理を実行する。印刷機1は、基板90に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機に含まれる。印刷機1は、印刷検査機、部品装着機、リフロー炉および外観検査機などの対基板作業機(いずれも図示略)と共に、基板生産ラインを構成している。
【0016】
図1に示すように、印刷機1は、基板搬送装置10と、マスク支持装置20と、スキージ移動装置30と、表示装置40と、制御装置50とを備えている。図1に示すように、基板90の搬送方向(図1の前後方向)をX軸方向とし、X軸に直交する印刷機1の前後方向(図1の左右方向)をY軸方向とし、X軸およびY軸に直交する鉛直方向(図1の上下方向)をZ軸方向とする。
【0017】
基板搬送装置10は、印刷対象の基板90を搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路および電気回路のうちの少なくとも一方が形成される。基板搬送装置10は、印刷機1の基台2に設けられる。基板搬送装置10は、例えば、X軸方向に延びるベルトコンベアによって、パレット上に配置された基板90を搬送する。基板搬送装置10は、印刷機1に搬入された基板90を保持する基板保持部11を備えている。基板保持部11は、マスク70の下面側の所定の位置において、マスク70の下面に基板90の上面を密着させた状態で基板90を保持する。
【0018】
マスク支持装置20は、基板搬送装置10の上方に配置される。マスク支持装置20は、一対の支持台(図1では、一の支持台が図示されている。)によって、マスク70を支持する。一対の支持台は、正面方向視の印刷機1の左側および右側に配置され、Y軸方向に沿って延びるように形成されている。なお、図1は、印刷機1をY軸方向に沿って切断した一部断面図であり、側面方向視の印刷機1の内部と、マスク70および基板90の断面とが模式的に示されている。マスク70には、基板90の配線パターンに対応した位置において貫通する開口部71が形成されている。マスク70は、例えば、外周縁に設けられた枠部材を介して、マスク支持装置20に支持される。
【0019】
スキージ移動装置30は、スキージ34をマスク70に垂直な方向(Z軸方向)に昇降させるとともに、スキージ34をマスク70の上面においてY軸方向に移動させる。スキージ移動装置30は、ヘッド駆動装置31と、スキージヘッド32と、一対の昇降装置33,33と、一対のスキージ34,34とを備えている。ヘッド駆動装置31は、印刷機1の上部に配置されている。ヘッド駆動装置31は、例えば、送りねじ機構などの直動機構によって、スキージヘッド32をY軸方向に移動させることができる。
【0020】
スキージヘッド32は、ヘッド駆動装置31の直動機構を構成する移動体にクランプして固定される。スキージヘッド32は、一対の昇降装置33,33を保持する。一対の昇降装置33,33の各々は、スキージ34を保持し、互いに独立して駆動することができる。一対の昇降装置33,33の各々は、例えば、エアーシリンダなどのアクチュエータを駆動させて、保持するスキージ34を昇降させる。
【0021】
一対のスキージ34,34は、マスク70の上面を摺動して、マスク70の上面に供給されたはんだ80をマスク70に沿って移動させる。はんだ80は、クリームはんだ(はんだペースト)を用いることができる。はんだ80がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90に、はんだ80が印刷される。本実施形態では、一対のスキージ34,34の各々は、印刷方向(Y軸方向)に直交するX軸方向に沿って延びるように形成されている板状部材である。
【0022】
一対のスキージ34,34のうちの前側(図1の左側)のスキージ34は、前側から後側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機1の前側から後側に向かう方向を進行方向とする。一対のスキージ34,34のうちの後側(図1の右側)のスキージ34は、後側から前側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、印刷機1の後側から前側に向かう方向を進行方向とする。また、いずれのスキージ34においても、進行方向と反対の方向を後退方向とする。
【0023】
一対のスキージ34,34の各々は、進行側に位置する前面部が下方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。換言すれば、一対のスキージ34,34の各々は、後退側に位置する背面部が上方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。一対のスキージ34,34の各々の傾斜角度は、昇降装置33の下部に設けられている調整機構によって調整される。
【0024】
表示装置40は、印刷機1の作業状況を表示することができる。また、表示装置40は、タッチパネルにより構成されており、印刷機1の使用者による種々の操作を受け付ける入力装置としても機能する。
【0025】
制御装置50は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている(いずれも図示略)。制御装置50は、ネットワークを介して管理装置と通信可能に接続されており、各種データを送受信することができる。制御装置50は、生産プログラム、各種センサによって検出された検出結果などに基づいて、基板搬送装置10、マスク支持装置20、スキージ移動装置30および表示装置40を駆動制御する。
【0026】
図2に示すように、制御装置50は、制御ブロックとして捉えると、取得部51と、出力部52と、印刷制御部53とを備えている。また、制御装置50には、データベース60が設けられている。取得部51、出力部52およびデータベース60の説明は、後記されている。
【0027】
印刷制御部53は、例えば、スキージ移動装置30を駆動制御する。この場合、印刷制御部53は、記憶装置に記憶されている各種情報および印刷機1に設けられている各種センサの検出結果を取得する。記憶装置は、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置などを用いることができる。記憶装置には、印刷機1を駆動させる生産プログラムなどが記憶される。
【0028】
印刷制御部53は、上記の各種情報および検出結果などに基づいて、スキージ移動装置30に制御信号を送出する。これにより、スキージヘッド32に保持されている一対のスキージ34,34のY軸方向の位置およびZ軸方向の位置(高さ)、並びに、移動速度および傾斜角度が制御される。
【0029】
1-2.印刷処理の一例
基板搬送装置10によって基板90が搬入され、基板90がマスク70の下面側の所定位置に配置されると、印刷処理が実行される。また、印刷処理の開始時には、マスク70の上面に、はんだ80が供給される。図1に示すように、はんだ80は、練り合わせ処理によって、はんだロール81が形成される。
【0030】
はんだロール81は、ペースト状のクリームはんだが一対のスキージ34,34によって練り合わされて形成される。はんだロール81は、スキージ34の長さ方向(X軸方向)に延び、且つ、印刷方向(Y軸方向)の幅が概ね均一となった状態のはんだ80である。以下の説明では、はんだロール81は、適宜、はんだ80として記載されている。
【0031】
印刷制御部53は、最初に準備工程を実行する。一対のスキージ34,34のうちの一方のスキージ34を第一スキージとする。また、一対のスキージ34,34のうちの他方のスキージ34を第二スキージとする。第一スキージは、準備工程において、マスク70の上方に退避した所定の位置(高さ)に位置決めされる。さらに、第一スキージは、はんだロール81のY軸方向位置よりも後退側となる所定の位置に位置決めされる。
【0032】
次に、印刷制御部53は、スキージ下降工程を実行して、第一スキージの下端部がマスク70に接触する印刷位置(高さ)まで第一スキージを下降させる。これにより、第一スキージがマスク70に所定の圧力をもって接触する状態となる。続いて、印刷制御部53は、ヘッド駆動装置31を駆動制御して、印刷工程を実行する。
【0033】
印刷制御部53は、印刷工程において、上記の印刷位置(高さ)を維持した状態で、第一スキージを進行方向に移動させる。そして、マスク70の上面に供給されたはんだロール81は、第一スキージの移動に伴ってマスク70に沿って移動される。このとき、はんだロール81がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90の上面に、はんだ80が印刷される。
【0034】
印刷制御部53は、第一スキージが所定の印刷範囲を通過した後に、昇降装置33を駆動制御して、スキージ上昇工程を実行する。スキージ上昇工程において、第一スキージは、はんだロール81から離間される。このとき、印刷制御部53は、所定の移動軌跡に沿って所定の移動速度で、第一スキージを上昇させる。上記の移動軌跡および移動速度は、例えば、使用中のはんだロール81の物性などに基づいて設定される。次に、印刷制御部53は、第一スキージから第二スキージに切り替えて、スキージヘッド32がY軸方向に往復されるように、上記の印刷処理を繰り返す。
【0035】
1-3.第一の印刷パラメータ取得装置100の構成例
例えば、基板90のサイズ、厚みなどが異なると、基板保持部11が基板90を保持しているときの基板90の撓み量が変動する可能性がある。そのため、はんだ80の印刷精度を向上させようとすると、基板90のサイズ、厚みなどに合わせて、印刷機1の駆動の制御に用いられる印刷パラメータ(この場合、例えば、印刷圧力、版離れ速度、版離れ距離など)を変更する必要がある。本明細書では、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材(この場合、基板)を特定する指標を印刷条件という。
【0036】
このように、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材が異なると、印刷パラメータを変更する必要がある。しかしながら、部材の数が多くなるほど、印刷パラメータの設定作業が煩雑になる。また、印刷条件から適切な印刷パラメータを導出するには、印刷専門のエンジニアの経験と印刷実績が必要な場合が多い。
【0037】
具体的には、印刷専門のエンジニアがこれまでの経験から暫定の印刷パラメータを算出し、暫定の印刷パラメータを用いたテスト印刷を繰り返して、適切な印刷パラメータが導出される。そのため、印刷機1の製造者側のエンジニア、評価部門、営業部門などのアドバイスが必要であり、印刷機1の使用者が印刷条件から適切な印刷パラメータを導出することは困難である。
【0038】
そこで、本実施形態の印刷機1は、第一の印刷パラメータ取得装置100を備えている。図2に示すように、第一の印刷パラメータ取得装置100は、取得部51と、出力部52とを備えている。取得部51は、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する。出力部52は、データベース60から、取得部51によって取得された印刷条件に対応する印刷条件に関連付けられている印刷パラメータであって信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータを出力する。
【0039】
第一の印刷パラメータ取得装置100は、図3に示すフローチャートに従って、制御を実行する。取得部51は、ステップS11に示す処理を行う。出力部52は、ステップS12およびステップS13に示す処理を行う。なお、印刷パラメータが決定し、生産プログラムが確定すると、印刷制御部53は、印刷処理を実行する。また、印刷処理が完了すると、第一の印刷パラメータ取得装置100は、印刷パラメータの信頼度を更新して、必要なデータをデータベース60に記憶させる。
【0040】
1-3-1.データベース60の構成例
データベース60には、印刷条件、印刷機1の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されている。印刷条件は、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材を特定可能であれば良く、限定されない。本実施形態の印刷条件は、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材である基板90、はんだ80、マスク70およびスキージ34のうちの少なくとも一つを特定すると好適である。
【0041】
例えば、基板90のサイズ、厚み、材質(例えば、柔軟度などを含む)およびレジスト(絶縁層)の厚み、並びに、基板製品の用途(例えば、一般民生用機器、車載用機器など)は、基板90を特定する印刷条件に含まれる。また、例えば、はんだ80の製造メーカ、型式、粒径、粘度およびチキソ比(チクソ比)は、はんだ80を特定する印刷条件に含まれる。
【0042】
さらに、例えば、マスク70の開口部の形状(例えば、円形、正方形、長方形など)、開口部のサイズ、マスク70の厚み、枠サイズおよびハーフエッチングの有無、印刷後の基板90に実装されるべき部品のサイズは、マスク70を特定する印刷条件に含まれる。また、例えば、スキージ34の材質(例えば、メタルスキージ、ウレタンスキージなど)および厚みは、スキージ34を特定する印刷条件に含まれる。
【0043】
印刷パラメータは、印刷機1の駆動の制御に用いられるものであれば良く、限定されない。本実施形態の印刷パラメータは、印刷速度、印刷圧力、版離れ速度、版離れ距離、マスク70のクリーニング間隔およびクリーニング方法、並びに、印刷時のスキージ34の角度のうちの少なくとも一つを制御する際の制御パラメータであると好適である。
【0044】
印刷速度は、印刷工程において、スキージ34が進行方向に移動するときの移動速度をいう。印刷圧力は、印刷工程において、スキージ34がマスク70に付与する圧力をいう。版離れ速度および版離れ距離は、印刷工程の後に、基板90からマスク70を離すときの速度および距離(高さ)をいう。クリーニング間隔およびクリーニング方法は、マスク70を清掃する間隔および方法をいう。
【0045】
例えば、乾式、湿式(例えば、アルコールなどを塗布して清掃する方法)および吸引式(マスク70に残留する残留物を吸引して清掃する方法)は、クリーニング方法に含まれる。スキージ34の角度は、印刷工程において、スキージ34が進行方向に移動するときのマスク70に対するスキージ34の角度をいう。
【0046】
印刷パラメータの信頼度は、例えば、合致点数、印刷パラメータを使用して生産した基板製品の生産数、スループット、良品率、基板90に印刷されたはんだ80の面積、高さおよび体積の各々についての目標値に対する偏差などによって表すことができる。合致点数は、取得部51によって取得された印刷条件とデータベース60に記憶されている印刷条件との合致度について、印刷条件ごとの重み付けを示す係数を乗じて点数化したものをいう。
【0047】
スループットは、印刷機1が基板90の搬入を開始してから基板90にはんだ80を印刷して印刷機1から基板90を搬出可能になるまでの間の単位時間あたりの処理能力をいう。良品率は、印刷パラメータを使用して複数の基板製品を生産したときの良品の割合をいう。印刷パラメータの信頼度については、出力部52の説明において、詳細に説明されている。
【0048】
図4は、データベース60において、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されている状態を模式的に示している。No.1は、データ6A1で示される基板90を特定する印刷条件と、データ6B1で示されるはんだ80を特定する印刷条件と、データ6C1で示されるマスク70を特定する印刷条件とが関連付けられてデータベース60に記憶されていることを示している。また、No.1は、データ6D1で示される印刷速度を制御する印刷パラメータと、データ6E1で示される印刷圧力を制御する印刷パラメータとが関連付けられてデータベース60に記憶されていることを示している。
【0049】
さらに、No.1は、データ6F1で示される基板製品の生産数によって表される印刷パラメータの信頼度と、データ6G1で示される良品率によって表される印刷パラメータの信頼度と、データ6H1で示される偏差によって表される印刷パラメータの信頼度とが関連付けられてデータベース60に記憶されていることを示している。また、No.1は、上記の印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられてデータベース60に記憶されていることを示している。
【0050】
なお、同図では、図示の便宜上、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度の一部が模式的に示されている。例えば、基板90を特定する印刷条件は、既述した複数の指標(例えば、基板90のサイズ、厚み、材質およびレジストの厚み、並びに、基板製品の用途など)について、それぞれ記憶されている。上述したことは、他の印刷条件についても同様に言える。また、データベース60は、既述した他の印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を記憶することもできる。さらに、上述したことは、No.2以降のデータについても同様に言える。
【0051】
図2に示すように、データベース60は、第一データベース61と、第二データベース62とを備えると好適である。第一データベース61は、印刷機1の製造者によって設けられる。第一データベース61には、主に、印刷機1の導入初期に使用するデータが記憶される。既述したように、印刷条件から適切な印刷パラメータを導出するには、印刷専門のエンジニアの経験と印刷実績が必要な場合が多い。そのため、第一データベース61には、印刷機1の製造者側の印刷専門のエンジニアの経験と印刷実績に基づいて作成されるデータ(印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度)を記憶させると良い。
【0052】
第二データベース62は、印刷機1の使用者が印刷機1を使用して基板製品を生産したときに用いられた印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶される。つまり、第二データベース62には、印刷機1の使用者が生産した基板製品に関連するデータが記憶される。そのため、印刷機1の使用者が基板製品を生産するほど、当該データが蓄積し、印刷機1の使用者が生産する基板製品に合致した印刷パラメータが得られ易くなる。また、印刷機1の使用者側のエンジニアが、基板製品の生産結果に基づいて印刷パラメータを調整することにより、印刷パラメータの信頼度の向上が期待できる。
【0053】
また、第二データベース62は、印刷機1を駆動させる生産プログラムに含まれる印刷パラメータのうちの少なくとも一部が変更されたときに、印刷条件、変更後の印刷パラメータおよび変更後の印刷パラメータの信頼度を新たに関連付けて記憶すると好適である。これにより、第二データベース62は、生産プログラムに含まれる印刷パラメータのうちの少なくとも一部が変更されたときに、印刷条件、変更後の印刷パラメータおよび変更後の印刷パラメータの信頼度を適切に関連付けて記憶することができる。
【0054】
例えば、図4に示すNo.1のデータにおいて、データ6D1で示される印刷速度を制御する印刷パラメータが変更されたとする。この場合、第二データベース62は、No.1のデータを更新するのではなく、No.1のデータと別個に記憶領域を確保し、印刷条件、変更後の印刷パラメータおよび変更後の印刷パラメータの信頼度を関連付けて記憶する。なお、第一データベース61および第二データベース62は、同一のデータ構造で構築されていると良い。また、データベース60は、正規化されていると良い。これらにより、印刷パラメータの検索が容易になり、印刷パラメータの検索時間を短縮し易い。
【0055】
1-3-2.取得部51
取得部51は、基板90にはんだ80を印刷するときに使用する部材を特定する印刷条件を取得する(図3に示すステップS11)。取得部51は、例えば、図5Aに示す入力画面を用いて、印刷条件を取得することができる。入力画面は、例えば、図1および図2に示す表示装置40に表示される。
【0056】
印刷機1の使用者は、破線BL1で囲まれる操作部BP11~操作部BP41を操作することにより、表示装置40に作業フェーズを表示させることができる。使用者が操作部BP11を操作すると、表示装置40は、生産プログラムの作成段階における作業を表示する。使用者が操作部BP21を操作すると、表示装置40は、生産段階における作業を表示する。使用者が操作部BP31を操作すると、表示装置40は、片付け段階における作業を表示する。使用者が操作部BP41を操作すると、表示装置40は、エラー発生段階における作業を表示する。
【0057】
また、印刷機1の使用者は、作業フェーズを選択した後に、破線BL2で囲まれる操作部(同図では、操作部BP12~操作部BP18が図示されている。)を順に操作することにより、各作業フェーズにおける作業の選択または入力が可能になる。また、表示装置40は、各作業フェーズにおける作業状況を表示することもできる。まず、使用者が操作部BP12を操作すると、既述した基板90を特定する印刷条件の選択または入力が可能になる。
【0058】
次に、使用者が操作部BP13を操作すると、基板90に設けられる位置決め基準部(図示略)の座標および形状などの選択または入力が可能になる。続いて、使用者が操作部BP14を操作すると、既述したはんだ80を特定する印刷条件、マスク70を特定する印刷条件などの選択または入力が可能になる。同図は、はんだ80の粒径PS1、粘度VC1およびチキソ比TH1が入力された状態を示している。
【0059】
また、同図は、マスク70の目標開口部の形状(例えば、円形)が選択され、目標開口部のサイズMS1、マスク70の厚みMT1、枠サイズFS1が入力された状態を示している。さらに、同図は、基板製品の用途US1が入力された状態を示している。なお、マスク70の目標開口部は、マスク70に設けられる複数の開口部のうちのサイズが最小の開口部をいう。また、入力画面は、マスク70の目標開口部のサイズMS1に加えて、印刷後の基板90に実装されるべき複数の部品のうちの最小の部品のサイズを入力可能であっても良い。入力画面は、マスク70の目標開口部のサイズMS1の代わりに、印刷後の基板90に実装されるべき複数の部品のうちの最小の部品のサイズを入力可能であっても良い。
【0060】
さらに、例えば、使用者がはんだ80のメーカおよび型式などを選択または入力することによって、予め記憶しているはんだ80の粒径、粘度およびチキソ比などが自動的に入力されるようにしても良い。上述したことは、他の印刷条件の入力についても同様に言える。次に、使用者が操作部BP15を操作すると、マスク70のクリーニングに関する設定が可能になる。続いて、使用者が操作部BP16を操作すると、段取り替えの作業が可能になる。次に、使用者が操作部BP17を操作すると、クランプ確認の作業が可能になる。続いて、使用者が操作部BP18を操作すると、テスト印刷が可能になる。
【0061】
1-3-3.出力部52
出力部52は、データベース60から、取得部51によって取得された印刷条件に対応する印刷条件に関連付けられている印刷パラメータであって信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータを出力する(図3に示すステップS12およびステップS13)。例えば、出力部52は、図5Bに示す出力画面を用いて、印刷パラメータを出力することができる。出力画面は、入力画面と同様に、例えば、図1および図2に示す表示装置40に表示される。
【0062】
出力部52は、取得部51によって取得された印刷条件とデータベース60に記憶されている印刷条件との合致度について、印刷条件ごとの重み付けを示す係数を乗じて点数化すると好適である。そして、出力部52は、合致度を示す合致点数が高いほど取得部51によって取得された印刷条件とデータベース60に記憶されている印刷条件とが対応していると判断すると好適である。
【0063】
例えば、基板90のサイズが大きくなり、基板90の厚みが薄くなるほど、基板90の撓み量は、増加し易くなる。印刷処理において、基板90の撓み量を重視する場合には、例えば、基板90のサイズおよび厚みを特定する印刷条件の重み付けを示す係数を、他の印刷条件と比べて大きくすると良い。
【0064】
図6は、このときの合致点数の算出方法の一例を示している。基板90のサイズおよび厚みの上記係数は、5に設定され(一致しているときに5倍する)、他の上記係数は、1に設定されている(一致しているときに1倍する)。データベース60に記憶されている例1の印刷条件は、例2の印刷条件と比べて、合致する印刷条件の数が多い。しかしながら、上記係数を乗じた例1の合計点数(合致点数)は、7点であり、例2の合計点数(10点)と比べて小さい。よって、上記の重み付けにおいて、データベース60に記憶されている例2の印刷条件は、例1の印刷条件と比べて、取得部51によって取得された印刷条件に対応していると判断される。
【0065】
このように、重み付けを示す係数の大きさによって、印刷条件の対応度が変動する。よって、印刷条件の重み付けを示す係数は、例えば、印刷機1の製造者側の印刷専門のエンジニアの経験と印刷実績に基づいて決定されると良い。当該エンジニアは、上述した影響度を考慮して、上記係数を決定する。また、印刷条件の重み付けを示す係数は、固定値であっても良く、例えば、基板製品の種類ごとに変更可能な可変値であっても良い。
【0066】
さらに、取得部51は、印刷機1の使用者による係数の変更を受け付けることもできる。取得部51は、例えば、図5Aに示す入力画面を用いて、印刷機1の使用者による係数の変更を受け付けることができる。この場合、例えば、印刷機1の使用者側のエンジニアが印刷実績に基づいて、印刷条件の重み付けを示す係数を調整することができる。これにより、印刷機1の使用者が生産する基板製品に好適な上記係数が設定され易くなる。
【0067】
合致点数が高いほど、取得部51によって取得された印刷条件と、データベース60に記憶されている印刷条件とが対応している。よって、合致点数が高い印刷条件(対応度が高い印刷条件)に関連付けられている印刷パラメータほど、過去の基板製品の生産状況を再現し易くなり、当該印刷パラメータを使用する信頼度が高いと言える。つまり、印刷パラメータの信頼度は、合致点数によって表すことができる。この場合、出力部52は、合致点数が所定点数以上の印刷パラメータ(信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータに相当)を出力する。また、出力部52は、合致点数が高いものから順に印刷パラメータを出力すると好適である。
【0068】
例えば、取得部51が、図4のデータ6A1で示される基板90を特定する印刷条件と、データ6B2で示されるはんだ80を特定する印刷条件と、データ6C2で示されるマスク70を特定する印刷条件とを取得したとする。この場合、出力部52は、合致点数が最も高い印刷パラメータ(データ6D3で示される印刷速度を制御する印刷パラメータと、データ6E2で示される印刷圧力を制御する印刷パラメータ)を出力する。
【0069】
図5Bは、印刷パラメータの出力例を示している。同図は、合致点数が最も高い印刷パラメータのうち、印刷速度PV1、印刷圧力PP1、版離れ速度SS1,SS2、版離れ距離SD1,SD2、マスク70のクリーニング間隔CL1およびクリーニング方法ME1が出力された状態を示している。図5Bに示す印刷速度PV1は、図4のデータ6D3で示される印刷速度を制御する印刷パラメータに相当する。図5Bに示す印刷圧力PP1は、図4のデータ6E2で示される印刷圧力を制御する印刷パラメータに相当する。図4では、版離れ速度などの他の印刷パラメータの記載が省略されている。版離れ速度および版離れ距離は、例えば、二段階で設定される。破線BL3で囲まれる領域には、第一の版離れ距離SD1および版離れ速度SS1が出力される。破線BL4で囲まれる領域には、第二の版離れ距離SD2および版離れ速度SS2が出力される。
【0070】
なお、同図では、マスク70のクリーニング間隔CL1およびクリーニング方法ME1は、模式的に示されているが、これらは、アイコンなどによって視覚的に表示することができる。また、出力部52は、印刷時のスキージ34の角度を出力することもできる。さらに、使用者が操作部BP51を操作すると、合致点数が二番目に高い印刷パラメータが出力される。使用者が操作部BP51を操作する毎に、表示されている印刷パラメータより合致点数が下位の印刷パラメータが出力される。
【0071】
逆に、使用者が操作部BP52を操作する毎に、表示されている印刷パラメータより合致点数が上位の印刷パラメータが出力される。また、出力部52は、印刷パラメータを一覧表示させることもできる。上述したことは、出力部52が以下に示す印刷パラメータの信頼度に基づいて印刷パラメータを出力する場合についても、同様に言える。
【0072】
印刷パラメータを使用して生産した基板製品の生産数が多くなるほど、当該印刷パラメータを使用した生産実績が高いと言える。よって、基板製品の生産数が多い印刷パラメータほど、当該印刷パラメータを使用する信頼度が高いと言える。つまり、印刷パラメータの信頼度は、印刷パラメータを使用して生産した基板製品の生産数によって表すことができる。この場合、出力部52は、基板製品の生産数が所定数以上の印刷パラメータ(信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータに相当)を出力する。また、出力部52は、生産数が多いものから順に印刷パラメータを出力すると好適である。
【0073】
ここで、印刷機1が基板90の搬入を開始してから基板90にはんだ80を印刷して印刷機1から基板90を搬出可能になるまでの間の単位時間あたりの処理能力をスループットという。スループットは、シミュレーション、実際に基板製品を生産したときの実績などに基づいて、取得することができる。スループットが高くなるほど、基板製品の生産時間を短縮し易い。例えば、印刷速度が速く設定されている印刷パラメータほど、スループットが高くなり易く、基板製品の生産時間を短縮し易い。
【0074】
よって、基板製品の生産時間を優先して印刷パラメータを出力させたい場合、スループットが高くなる印刷パラメータほど、当該印刷パラメータを使用する信頼度が高いと言える。つまり、印刷パラメータの信頼度は、スループットによって表すことができる。この場合、出力部52は、スループットが所定レベル以上の印刷パラメータ(信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータに相当)を出力する。また、出力部52は、スループットが高いものから順に印刷パラメータを出力すると好適である。
【0075】
また、印刷パラメータを使用して複数の基板製品を生産したときの良品の割合を良品率という。基板製品の良否は、印刷検査機によって判定することができる。印刷検査機は、基板90に印刷されたはんだ80の面積、高さおよび体積の各々について、良品と判定する基準範囲を設定する。そして、印刷検査機は、基板90の複数の印刷位置のすべてにおいて、はんだ80の面積、高さおよび体積のすべてが基準範囲に収まるときに、当該基板90を良品と判定する。逆に、印刷検査機は、基板90の少なくとも一つの印刷位置において、はんだ80の面積、高さおよび体積の少なくとも一つが基準範囲から外れているときに、当該基板90を不良品と判定する。
【0076】
良品率が高い(100%に近い)印刷パラメータほど、当該印刷パラメータを使用する信頼度が高いと言える。つまり、印刷パラメータの信頼度は、良品率によって表すことができる。この場合、出力部52は、良品率が所定割合以上の印刷パラメータ(信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータに相当)を出力する。また、出力部52は、良品率が高いものから順に印刷パラメータを出力すると好適である。
【0077】
なお、はんだ80の面積、高さおよび体積のすべてが基準範囲に収まっていても、基板90の複数の印刷位置におけるばらつきが大きくなるほど、印刷品質は、劣化し易い。例えば、印刷されたはんだ80の面積が目標値(はんだ80が印刷されるべき領域の面積)に対して小さくなるほど、はんだ80の欠けが生じ易い。逆に、印刷されたはんだ80の面積が目標値に対して大きくなるほど、はんだ80の滲みが生じ易い。また、印刷されたはんだ80の高さが目標値に対して低くなるほど、はんだ80のかすれが生じ易い。逆に、印刷されたはんだ80の高さが目標値に対して高くなるほど、はんだ80の角立ちが生じ易い。
【0078】
つまり、印刷パラメータの信頼度は、基板90に印刷されたはんだ80の面積、高さおよび体積の各々についての目標値に対する偏差によって表すことができる。この場合、出力部52は、上記偏差が所定値以下の印刷パラメータ(信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータに相当)を出力する。また、出力部52は、上記偏差が小さいものから順に印刷パラメータを出力すると好適である。
【0079】
図7は、基板90に印刷されたはんだ80の面積の偏差を表示する表示方法の一例を示している。同図の横軸は、時刻を示し、縦軸は、はんだ80の面積(目標値に対する割合)を示している。チャートCH1は、一の基板90に印刷されたはんだ80の面積についての目標値に対する偏差の一例を示している。チャートCH2は、他の一の基板90に印刷されたはんだ80の面積についての目標値に対する偏差の一例を示している。
【0080】
最大値MAX1は、一の基板90の複数の印刷位置にそれぞれ印刷されたはんだ80の面積の目標値に対する割合の最大値をいう。最小値MIN1は、一の基板90の複数の印刷位置にそれぞれ印刷されたはんだ80の面積の目標値に対する割合の最小値をいう。平均値AVG1は、一の基板90の複数の印刷位置にそれぞれ印刷されたはんだ80の面積の目標値に対する割合の平均値をいう。最大値MAX2、最小値MIN2および平均値AVG2については、一の基板90を他の一の基板90に読み替えることにより、上述したことが同様に言える。
【0081】
同図に示す例では、チャートCH2の最大値MAX2から最小値MIN2を減じた偏差は、チャートCH1の最大値MAX1から最小値MIN1を減じた偏差と比べて大きい。よって、チャートCH2で示される他の一の基板90は、チャートCH1で示される一の基板90と比べて、印刷品質が劣化している可能性がある。このように、基板90に印刷されたはんだ80の面積の偏差が表示されると、印刷機1の使用者は、印刷品質の優劣を判断し易い。上述したことは、はんだ80の高さおよび体積についても同様に言える。
【0082】
なお、印刷パラメータの信頼度は、既述した複数の指標によって表すこともできる。つまり、印刷パラメータの信頼度は、合致点数、印刷パラメータを使用して生産した基板製品の生産数、スループット、良品率、並びに、基板90に印刷されたはんだ80の面積、高さおよび体積の各々についての目標値に対する偏差のうちの少なくとも一つで表すことができる。また、出力部52は、複数の指標が良好のものから順に印刷パラメータを出力することもできる。例えば、出力部52は、合致点数が最も高く、且つ、基板製品の生産数が最も多いものから順に印刷パラメータを出力することができる。上述したことは、複数の指標の他の組み合わせについても、同様に言える。
【0083】
さらに、出力部52は、印刷パラメータの信頼度を表す所定の指標(例えば、合致点数)について、信頼度が高い(合致点数が高い)順に印刷パラメータを出力した後に、他の指標(例えば、基板製品の生産数)について、信頼度が高い(生産数が多い)順に印刷パラメータを並び替えることもできる。印刷パラメータの出力の切り替えは、例えば、印刷機1の使用者が出力画面の所定操作部を操作することによって実行される。また、印刷パラメータの信頼度を表す複数の指標について、優先順位を設定することもできる。この場合、優先順位が高い指標から、信頼度が高い順に印刷パラメータが並び替えられる。
【0084】
既述したように、印刷パラメータが決定し、生産プログラムが確定すると、印刷制御部53は、印刷処理を実行する。また、印刷処理が完了すると、第一の印刷パラメータ取得装置100は、印刷パラメータの信頼度を更新して、必要なデータをデータベース60に記憶させる。具体的には、第一の印刷パラメータ取得装置100は、例えば、印刷検査機から印刷パラメータの信頼度(例えば、良品率)を受信して、第二データベース62は、印刷条件、印刷パラメータおよび受信した印刷パラメータの信頼度(この場合、良品率)を関連付けて記憶する。
【0085】
また、第一の印刷パラメータ取得装置100は、例えば、印刷検査機から検査結果(例えば、複数の基板製品の各々の良否)を受信して、受信した検査結果に基づいて、印刷パラメータの信頼度(この場合、良品率)を作成しても良い。この場合、第二データベース62は、印刷条件、印刷パラメータおよび作成した印刷パラメータの信頼度(この場合、良品率)を関連付けて記憶する。
【0086】
上述したデータの記憶工程は、生産プログラムに含まれる印刷パラメータが変更されていないときに行われる。また、上述したデータの記憶工程は、生産プログラムに含まれる印刷パラメータの少なくとも一部が変更されたときに、変更前の印刷パラメータおよび変更前の印刷パラメータの信頼度について行われる。なお、既述したように、第二データベース62は、生産プログラムに含まれる印刷パラメータのうちの少なくとも一部が変更されたときに、印刷条件、変更後の印刷パラメータおよび変更後の印刷パラメータの信頼度を新たに関連付けて記憶する。
【0087】
1-4.第二の印刷パラメータ取得装置200の構成例
印刷機1は、第二の印刷パラメータ取得装置200を備えることもできる。図2に示すように、第二の印刷パラメータ取得装置200は、第一の印刷パラメータ取得装置100と同様に、取得部51と、出力部52とを備えている。但し、第二の印刷パラメータ取得装置200の出力部52は、データベース60から、取得部51によって取得された印刷条件に対応する印刷条件に関連付けられている印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を出力する。データベース60には、印刷条件、印刷機1の駆動の制御に用いられる印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されている。
【0088】
また、第二の印刷パラメータ取得装置200の出力部52は、第一の印刷パラメータ取得装置100と同様に、信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータを出力すると好適である。出力部52がデータベース60から、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を出力する点以外は、第一の印刷パラメータ取得装置100と同様であり、本明細書では、重複する説明が省略されている。
【0089】
第二の印刷パラメータ取得装置200の出力部52は、例えば、図5Bに示す出力画面を用いて、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を出力することができる。同図は、既述した印刷パラメータと共に、印刷パラメータの信頼度が出力された状態を示している。印刷パラメータの信頼度は、例えば、既述した基板製品の生産数NP1、良品率GP1、並びに、既述したはんだ80の面積などの偏差DE1によって表されている。
【0090】
2.その他
実施形態の第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200は、印刷機1の制御装置50に設けられているが、印刷機1の外部に設けることもできる。第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200は、例えば、基板生産ラインを管理する管理装置に設けることもできる。また、第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200は、例えば、クラウド上に設けることもできる。
【0091】
さらに、印刷機1は、スキージ34およびマスク70を用いる形態に限定されるものではない。印刷機1は、印刷ヘッドを用いて、基板90の複数の印刷位置の各々に、はんだ80を順に塗布する形態であっても良い。この場合、印刷条件は、基板90およびはんだ80のうちの少なくとも一つを特定すると好適である。また、印刷パラメータは、印刷速度および印刷圧力のうちの少なくとも一つを制御する際の制御パラメータであると好適である。
【0092】
3.印刷パラメータ取得方法
第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200について既述したことは、印刷パラメータ取得方法についても同様に言える。具体的には、印刷パラメータ取得方法は、取得工程と、出力工程とを備えている。取得工程は、取得部51が行う制御に相当する。出力工程は、出力部52が行う制御に相当する。出力部52が行う制御は、第一の印刷パラメータ取得装置100の出力部52が行う制御(第一の印刷パラメータ取得方法)であっても良く、第二の印刷パラメータ取得装置200の出力部52が行う制御(第二の印刷パラメータ取得方法)であっても良い。
【0093】
4.実施形態の効果の一例
第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200によれば、出力部52は、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度が関連付けられて記憶されているデータベース60から、取得部51によって取得された印刷条件に対応する印刷条件に関連付けられている印刷パラメータを出力する。よって、第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200は、印刷条件、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度の管理が容易であり、印刷パラメータの出力が容易である。
【0094】
また、第一の印刷パラメータ取得装置100の出力部52は、信頼度が所定レベル以上の印刷パラメータを出力する。第二の印刷パラメータ取得装置200の出力部52は、印刷パラメータおよび印刷パラメータの信頼度を出力する。よって、第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200は、印刷機1の駆動の制御に用いられる印刷パラメータをより好適に出力することができる。第一および第二の印刷パラメータ取得装置100,200について上述したことは、印刷パラメータ取得方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0095】
1:印刷機、34:スキージ、51:取得部、52:出力部、
60:データベース、61:第一データベース、
62:第二データベース、70:マスク、80:はんだ、
90:基板、100,200:印刷パラメータ取得装置。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7