(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】配線部品
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20221215BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/524 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
H01B7/00 302
H01M50/503
H01M50/524
H01M50/588 101
H01M50/591
(21)【出願番号】P 2021520741
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019240
(87)【国際公開番号】W WO2020235437
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019093920
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 稔
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-152995(JP,A)
【文献】特開2016-110796(JP,A)
【文献】特開昭62-212464(JP,A)
【文献】特開2016-199640(JP,A)
【文献】特開2003-086167(JP,A)
【文献】特開2018-064366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01M 50/503
H01M 50/524
H01M 50/588
H01M 50/591
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延在長さ450mm以上の導電性部材と該導電性部材を覆う被覆部材とを含む配線部品であり、
前記被覆部材はポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含み、
前記被覆部材の130℃、24時間の熱エージング後の延在長さ方向の二次収縮A(%)が以下の式(1)
A<12.5×e
-0.92t・・・(1)
(式(1)中、e:自然対数の底、t:厚み(mm))
を満たし、
前記被覆部材が、互いに嵌合することが可能な複数の部材を含む嵌合型の射出成形体であるか、又は前記導電性部材をインサート成形することで被覆された一体型の射出成形体であ
り、
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂とからなり、前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系樹脂との質量割合(ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系樹脂)が、41/59~68/32である、
ことを特徴とする、配線部品。
【請求項2】
前記導電性部材の断面形状の平均面積が、10.0~150mm
2である、請求項1に記載の配線部品。
【請求項3】
前記導電性部材が単一の部品からなる、請求項1又は2に記載の配線部品。
【請求項4】
前記導電性部材の前記被覆部材による被覆率が70~95%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項5】
前記導電性部材と前記被覆部材との間の距離Cの平均(クリアランスCの平均)が、2mm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の表面硬度が60以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項7】
前記被覆部材の内部空間における前記導電性部材の占有率が40体積%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項8】
前記被覆部材が互いに嵌合することが可能な複数の部材を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項9】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のビカット軟化点が140℃以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項10】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の曲げ弾性率が1800MPa以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の配線部品。
【請求項11】
前記被覆部材が、ビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体及び/又はビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるすくなくとも1種をさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の配線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
非常用電源設備等に用いられる複数個の電池を接続した組電池等の電気設備内の配線に、電池の端子間を接続する等の目的で金属製の配線部品が用いられることがある。この配線部品は、作業時に金属製の工具と接触してショートする等の危険があるため、絶縁性の樹脂で覆うことが多い(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気設備の高容量化、大型化が進み、電気設備等の内部に用いられる配線部品が長くなってきている。長い配線部品に高容量の電気が流れると、発熱し、被覆する樹脂が熱収縮して、被覆する樹脂が割れたり、位置がずれたりすることがあった。
従って、本発明の目的は、高容量の電気を流しても、被覆材が破損したり位置ずれを起こしたりしにくい配線部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
延在長さ450mm以上の導電性部材と該導電性部材を覆う被覆部材とを含む配線部品であり、
前記被覆部材はポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含み、
前記被覆部材の130℃、24時間の熱エージング後の延在長さ方向の二次収縮A(%)が以下の式(1)
A<12.5×e-0.92t・・・(1)
(式(1)中、e:自然対数の底、t:厚み(mm))
を満たし、
前記被覆部材が、互いに嵌合することが可能な複数の部材を含む嵌合型の射出成形体であるか、又は前記導電性部材をインサート成形することで被覆された一体型の射出成形体であり、
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂とからなり、前記ポリフェニレンエーテルと前記ポリスチレン系樹脂との質量割合(ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン系樹脂)が、41/59~68/32である、
ことを特徴とする、配線部品。
[2]
前記導電性部材の断面形状の平均面積が、10.0~150mm2である、[1]に記載の配線部品。
[3]
前記導電性部材が単一の部品からなる、[1]又は[2]に記載の配線部品。
[4]
前記導電性部材の前記被覆部材による被覆率が70~95%である、[1]~[3]のいずれかに記載の配線部品。
[5]
前記導電性部材と前記被覆部材との間の距離Cの平均(クリアランスCの平均)が、2mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の配線部品。
[6]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の表面硬度が60以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の配線部品。
[7]
前記被覆部材の内部空間における前記導電性部材の占有率が40体積%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の配線部品。
[8]
前記被覆部材が互いに嵌合することが可能な複数の部材を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の配線部品。
[9]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のビカット軟化点が140℃以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の配線部品。
[10]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の曲げ弾性率が1800MPa以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の配線部品。
[11]
前記被覆部材が、ビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体及び/又はビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるすくなくとも1種をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載の配線部品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の配線部品は、上記構成を有するため、高容量の電気を流しても、破損したり位置ずれを起こしたりしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の一例の配線部品の一部を示す斜視図である。
【
図2】(A)本実施形態の一例の配線部品をその延在方向に対して直交する面(
図1に示す線A-Aに沿う面)により切断したときの断面図である。(B)本実施形態の一例の配線部品をその延在方向に沿う面(
図1に示す線B-Bに沿う面)により切断したときの断面図である。
【
図3】(A)本実施形態の別の例の配線部品をその延在方向に対して直交する面により切断したときの断面図である。(B)本実施形態の更なる例の配線部品をその延在方向に対して直交する面により切断したときの断面図である。
【
図4】(A)本実施形態の第一変形例の配線部品の一部を示す斜視図である。(B)本実施形態の第二変形例の配線部品の一部を示す斜視図である。(C)本実施形態の第三変形例の配線部品の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細説明する。本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0009】
[配線部品]
本実施形態の配線部品は、延在長さ450mm以上の導電性部材と該導電性部材を覆う被覆部材とを含む配線部品であり、上記被覆部材はポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含み、上記被覆部材の130℃、24時間の熱エージング後の延在長さ方向の二次収縮A(%)が以下の式(1)を満たす。
A<12.5×e-0.92t・・・(1)
(式(1)中、e:自然対数の底、t:厚み(mm))
なお、延在方向とは、導電性部材の、一方の端から他方の端に向かう導電性部材表面に沿う方向としてよい。
【0010】
図1は、本実施形態の配線部品1の一例である。導電性部材2は少なくとも一部が被覆部材3に覆われている。
本実施形態の配線部品1は、1つの導電性部材2の少なくとも一部が被覆部材3に覆われていてもよいし、複数の導電性部材2の少なくとも一部が被覆部材3に覆われていてもよい。
本実施形態の配線部品1は、被覆部材3の延在方向の一方の端から他方の端に導電性部材2が貫通していてよい。また、導電性部材2への入力部と出力部とは、被覆部材3に覆われず露出していてよい(
図1、4)。
被覆部材3は、導電性部材2に接触しない状態で設けられていてもよいし(
図2A、3A)、導電性部材2の一部に接触する状態で設けられていてもよいし(
図3B)、導電性部材の周囲全面に接触する状態で設けられていてもよい。
本実施形態の配線部品1は、直線状であってもよいし(
図1~3)、少なくとも1箇所(好ましくは2箇所以上)の屈曲部を有していてもよい(
図4)。
導電性部材2及び被覆部材3は、延在方向に、厚みが同じであってもよいし(
図1、4)、厚みが異なっていてもよい。また、導電性部材2と被覆部材との間の距離Cは、一定であってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態の配線部品1は、導電性部材2と、導電性部材2を覆う被覆部材3とが、さらに他の被覆材が覆われていてもよい。
【0011】
本実施形態の配線部品において、上記被覆部材の厚みは、導電性、漏電防止性と、省スペース化、軽量化を両立する観点から、0.4~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.6~2.0mm、さらに好ましくは0.8~1.5mmである。なお、上記被覆部材の厚みは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
本実施形態の配線部品の二次収縮Aは、高容量の電気を流しても、被覆部材が破損したり位置ずれを起こしたりしにくくなる観点から、12.5×e-0.92t%未満であり、9.6×e-0.93t%未満であることが好ましく、より好ましくは9.0×e-1.1t%未満である。
なお、二次収縮Aは後述の実施例に記載の方法より測定することができる。
ここで、本発明者らは、配線部品中の被覆部材の破損や位置ずれの原因について鋭意検討を進めたところ、高容量の電気を流した際に起こる、被覆部材の延在方向に対して直交する周方向の熱収縮よりも、延在方向の熱収縮が主要因であることを見出した。そして、破損や位置ずれの課題解決には、被覆部材の延在方向の熱収縮を抑えることが特に有効であることを見出した。
二次収縮Aは、例えば、ポリフェニレンーテル樹脂組成物の組成を調整し、ビカット軟化点を高くすることで小さくすることができる。ビカット軟化点を高くするための組成の具体的な調整方法としては、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの含有比率を高めること、後述のポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分として、Tg及び/又は融点の高い樹脂を用いること、等が挙げられる。
また、射出成形時に、金型温度を高くすること(例えば80℃以上)、樹脂温度を高くすること(例えば250℃以上)、保圧を高くすること(例えば20%以上)、射出時間を長くすること(例えば15秒以上)等によっても、二次収縮Aを小さくすることができる。
【0013】
本実施形態の配線部品において、上記導電性部材の上記被覆部材による被覆率は、導電性、漏電防止性の観点から、70~95%であることが好ましく、より好ましくは75~95%、さらに好ましくは80~95%である。
なお、被覆率とは、導電性部材の外表面の面積に対する、被覆部材の内部空間の外表面を構成する被覆部材の内面の面積の割合をいう。
ここで、被覆部材の内部空間とは、被覆部材の収容可能領域をいう。より具体的には、被覆部材の内面が閉じた系(閉鎖系)を形成している場合には、被覆部材の内部空間は、被覆部材の内面で画成される領域をいう。また、被覆部材の内面が、延在方向の周囲に関して、及び/又は延在方向に関して、開いた系(開放系)を少なくとも一部で形成している場合(
図1参照)には、被覆部材の内部空間は、被覆部材の内面、及び開いた系(開放系)の周囲の内面間を繋ぐ仮想内面で画成される領域をいう。
被覆部材が導電性部材をその延在方向の周囲(延在方向周り)の全部又は一部について被覆していてよい。また、導電性部材への入力部と出力部とを除き、被覆部材が導電性部材をその延在方向の全部又は一部について被覆していてよい。
【0014】
本実施形態の配線部品において、上記導電性部材と上記被覆部材との間の距離Cの平均(クリアランスCの平均)は、導電性部材の熱を外部に放出しやすくすることと、被覆部材の位置ずれを起こしにくくすることを両立する観点から、2mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0mm(上記導電性部材と上記被覆部材とが全被覆領域で接している)である。
なお、導電性部材と被覆部材との間の距離Cは、配線部品をその延在方向に直交する面により切断したときの断面における両部材間の最小距離をいう(
図2A)。そして、導電性部材と被覆部材との間の距離Cの平均は、上記両部材間の最小距離を配線部品の延在方向について平均したものをいう。なお、上記最小距離は、延在方向にわたり、一定であってもよいし異なっていてもよいが、一定であることが好ましい。
導電性部材が被覆部材の内部において揺動可能である場合には、導電性部材と被覆部材との間の距離は変動し得ることとなるが、この場合、水平面上に任意に静置した状態における上記両部材間の最小距離を導電性部材と被覆部材との間の距離Cとしてよい。なお、上記クリアランスCの平均は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0015】
本実施形態の配線部品の表面硬度は、配線部品が変形しにくくなる観点から、60以上であることが好ましく、より好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上である。
なお、表面硬度は、JIS K 7202-2に準拠し、Mスケールにて測定されるロックウェル硬さである。
上記配線部品の表面硬度は、配線部品の表面を構成する被覆部材表面の表面硬度としてよい。
【0016】
本実施形態の配線部品の曲げ弾性率は、配線部品が変形しにくくなる観点から、1800MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2000~3000MPa、さらに好ましくは2200~3000MPaである。
なお、曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定される値である。
上記配線部品の曲げ弾性率は、配線部品の表面を構成する被覆部材の曲げ弾性率としてよい。
【0017】
本実施形態の配線部品において、上記被覆部材の内部空間における前記導電性部材の占有率は、導電性部材の熱を外部に放出しやすくすることと、被覆部材の位置ずれを起こしにくくすることを両立する観点から、40~100体積%であることが好ましく、より好ましくは40~90体積%、さらに好ましくは50~90体積%、特に好ましくは60~90体積%である。
なお、上記占有率とは、上述の被覆部材の内部空間の体積に対する、被覆部材の内部空間に存在する導電性部材の体積の割合をいう。
【0018】
(導電性部材)
上記導電性部材は延在長さが450mm以上であり、好ましくは500~1500mm、より好ましくは550~1200mm、さらに好ましくは600~700mmである。なお、延在長さ(延在方向長さ)とは、導電性部材の、一方の端から他方の端に向かう方向の導電性部材表面に沿う長さとしてよい。
【0019】
導電性部材の形状は、目的や用途に応じて適宜選択されてよく、特に限定されない。断面形状(延在方向に対して直交する断面)は、
図1に示すような長方形であってもよいが、これに限定されず、長方形以外の矩形、円形、楕円形等としてよい。上記断面形状は、延在方向の全長さにわたって同じであってもよいし異なっていてもよい。
全体形状は、
図1に示すような直線形状であってもよいが、
図4(A)~(C)に示すように、屈曲形状や捻れ形状を備える形状としてもよい。
【0020】
上記導電性部材の断面形状の平均面積は、例えば、10.0~150mm2としてよく、12.5~120mm2、15.0~100mm2であってもよい。なお、断面形状の平均面積とは、導電性部材の延在方向の全長さの断面積の平均をいう。平均面積が10.0mm2以上であることで、高容量の電気をより流しやすくなる傾向にある。平均面積が150mm2以下であることで、電気設備が省スペース化できる傾向にある。また、上記省スペース化の観点に加えて、配線部品の製造を容易とする観点から、上記導電性部材は単一の部品からなることが好ましい。例えば、複数の部品を、連結したり、編み込んだり、積層したり、していない構造であることが好ましい。
【0021】
上記導電性部材は、導電性部材と被覆部材とが位置ずれを起こしにくくなる観点から、屈曲部を有していてもよい。屈曲部の数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい(
図4)。
【0022】
上記導電性部材を構成する材料としては、導電性を有する限り特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、銀、これらの組み合わせ等の金属等が挙げられる。導電性部材は、表面をめっき処理した導体を用いてもよい。
【0023】
(被覆部材)
上記被覆部材は、一つの部材からなっていてもよいし(
図4)、互いに嵌合することが可能な複数の部材を含んでいてもよい(
図1~3)。中でも、製造が容易であることから、互いに嵌合することが可能な複数の部材(例えば、2個の部材)を含むことが好ましい。複数の部材は、例えば、嵌合部4で接続されていてよい(
図1)。
嵌合の態様としては、
図1等に示すようなものに限定されることなく、例えば、延在方向に複数の部材をつなぎ合わせてもよい。
【0024】
上記被覆部材は、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含む。
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、さらにポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分、その他の成分を含んでいてもよい。
【0025】
-ポリフェニレンエーテル系樹脂-
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル(本明細書において、「PPE」と記載する場合がある)を含み、さらにポリスチレン系樹脂を含んでいてもよい。すなわち、上記PPE系樹脂は、PPEとポリスチレン系樹脂とからなる混合樹脂であってもよいし、PPEのみからなる樹脂であってもよい。
【0026】
上記PPEとしては、例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体、下記化学式(1)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
上記PPEは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化1】
上記化学式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7の第1級アルキル基、炭素数1~7の第2級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される一価の基である。
【0027】
上記PPEは、加工時の流動性、靭性及び耐熱老化性の観点から、0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液を用いて、30℃の条件下、ウベローデ型粘度管で測定した還元粘度が、0.15~2.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.20~1.0dL/g、さらに好ましくは0.30~0.70dL/gである。
【0028】
上記PPEとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)等のホモ重合体;2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体等の共重合体;等が挙げられる。中でも、樹脂組成物としたときの靭性と剛性のバランスや、原料の入手のし易さの観点から、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0029】
上記PPEは、公知の方法により製造することができる。PPEの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、米国特許第3306874号明細書に記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6-キシレノールを酸化重合する方法、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52-17880号公報、特開昭50-51197号公報、特開昭63-152628号公報等に記載の方法等が挙げられる。
【0030】
上記PPEは、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、スチレン系モノマー若しくはその誘導体、及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体と、を反応させることによって得られる変性PPEであってもよい。ここで、上記スチレン系モノマー若しくはその誘導体、及び/又はα,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のグラフト量又は付加量としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。
【0031】
上記変性PPEの製造方法としては、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80~350℃の温度下で反応させる方法等が挙げられる。
上記PPEとしては、上記ホモ重合体及び/又は上記共重合体と、上記変性PPEとの、任意の割合の混合物を用いてもよい。
【0032】
上記ポリスチレン系樹脂としては、アタクチックポリスチレン、ゴム補強されたポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)、スチレン含有量が50質量%以上のスチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、及び該スチレン-アクリロニトリル共重合体がゴム補強されたAS樹脂等が挙げられ、アタクチックポリスチレン及び/又はハイインパクトポリスチレンが好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、PPEとポリスチレン系樹脂とからなり、PPEとポリスチレン系樹脂との質量割合(PPE/ポリスチレン系樹脂)が、97/3~5/95であるポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることができる。このような樹脂を被覆部材に用いることで、被覆部材の反りを防止し、高容量の電気を流した際の、被覆部材の破損や位置ずれをより防止できる傾向にある。PPEとポリスチレン系樹脂との質量割合(PPE/ポリスチレン系樹脂)としては、高流動性かつ高いビカット軟化点の組成物とする観点から、90/10~40/60であることがより好ましく、90/10~50/50であることがさらに好ましく、90/10~60/40であることが特に好ましい。
【0034】
-ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分-
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分としては、ビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体及び/又はビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体;ポリプロピレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;熱可塑性エラストマー(ポリオレフィン系エラストマー等);等が挙げられる。
【0035】
--ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体及び/又はビニル芳香族化合物を主体とする2個以上の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする1個以上の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる上記水添ブロック共重合体(本明細書において、「ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体」と称する場合がある)を含有することにより、被覆部材の成形加工性が向上する。
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体以外のブロック共重合体が含まれていてもよい。
【0036】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック、又は重合体ブロックA中のビニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有量が、50質量%超、好ましくは70質量%以上である、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックをいう。上記重合体ブロックAは、共役ジエン化合物を実質的に含まなくてもよいし、共役ジエン化合物を含まなくてもよい。なお、「実質的に含まない」には、本発明の効果を損なわない範囲で含む場合が含まれ、例えば、重合体ブロックA全量に対して3質量%以下であってもよい。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック、又は重合体ブロックB中の共役ジエン化合物に由来する構成単位の含有量が、50質量%超、好ましくは70質量%以上である、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックをいう。上記重合体ブロックBは、ビニル芳香族化合物を実質的に含まなくてもよいし、ビニル芳香族化合物を含まなくてもよい。なお、「実質的に含まない」には、本発明の効果を損なわない範囲で含む場合が含まれ、例えば、重合体ブロックB全量に対して3質量%以下であってもよい。
【0037】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体としては、2種のブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を組合せることが好ましく、従来から知られ販売されているブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の組合せでもよく、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体に属するものであれば如何なるものを用いることも可能である。
【0038】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上が選択でき、特にスチレンが好ましい。
【0039】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、特にブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
この水添する前のブタジエンの結合形態は通常、赤外分光光度計やNMR等で知ることができる。
【0040】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体は、ブロックAを2個以上及びブロックBを1個以上含むブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体が好ましく、より好ましくはA-B-A型(2個のA、1個のBの分子量は同じであっても異なっていてもよい)のブロック単位が結合した構造を有するビニル芳香族化合物-共役ジエン化合物ブロック共重合体及び/又はその水素添加物である。
【0041】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの個々の構造は、それぞれの重合体ブロックの分子鎖中のビニル芳香族化合物又は共役ジエン化合物の分布が、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)である構造等であってもよい。上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に、上記重合体ブロックA又は上記重合体ブロックBが2個以上含まれる場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0042】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる少なくとも1個の重合体ブロックBは、水添前の共役ジエン化合物の1,2-ビニル結合量が70~90%である重合体ブロックであってもよい。また、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる少なくとも1個の重合体ブロックBは、水添前の共役ジエン化合物の1,2-ビニル結合量が70~90%である重合体ブロック(重合体ブロックB1)と、水添前の共役ジエン化合物の1,2-ビニル結合量が30~70%である重合体ブロック(重合体ブロックB2)とを併せ持つ重合体ブロックであってもよい。このようなブロック構造を示すブロック共重合体は、例えば、A-B2-B1-Aで示され、調整された各モノマー単位のフィードシーケンスに基づいて1,2-ビニル結合量を制御した公知の重合方法によって得ることができる。
【0043】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に結合したビニル芳香族化合物含有量は、15~80質量%であることが好ましく、より好ましくは25~80質量%、さらに好ましくは30~75質量%である。
【0044】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中の水添ブロック共重合体は、水素添加反応を行い、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB中等の脂肪族系二重結合に水素添加をして、水添共重合体ブロック(ビニル芳香族化合物-共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物)として用いることができる。かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
なお、水素添加率は通常、赤外分光光度計やNMR等によって知ることができる。
【0045】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)は、40,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは41,000~180,000、さらに好ましくは42,000~120,000、さらに好ましくは43,000~100,000、特に好ましくは45,000~100,000である。上記数平均分子量は、耐衝撃性の観点から、40,000以上であることが好ましく、ポリフェニレンエーテル系樹脂への分散性、流動性及び離型性の観点から、120,000以下であることが好ましい。
なお、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)の測定は、昭和電工(株)製ゲルパーミェーションクロマトグラフィー System21(カラム:昭和電工(株)製K-Gを1本、K-800RLを1本さらにK-800Rを1本の順番で直列につなぐ、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:10mL/min、サンプル濃度:水添ブロック共重合体の1g/Lクロロホルム溶液)で標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550)を用いて検量線を作成し、検出部のUV(紫外線)の波長は、標準ポリスチレン及び水添ブロック共重合体成分は共に254nmに設定して測定することができる。
【0046】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる上記重合体ブロックAのうち、少なくとも1つのブロックAの数平均分子量(MncA)が10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましく、耐衝撃性に一層優れる観点から、15,000超であることがさらに好ましい。また、耐衝撃性に一層優れる観点から、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる全ての重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)が、10,000以上であることが好ましい。数平均分子量(MncA)が10,000以上である重合体ブロックAを含むと、この条件を満たすブロック共重合体が、重量平均分子量(Mwppe)が15000~25000、且つ、分子量分布(Mwppe/Mnppe)が1.5~3.0のポリフェニレンエーテル系樹脂中のPPEと良好に混和でき、また、得られる樹脂組成物の耐熱性及び機械的特性に優れるため好ましい。
なお、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)は、例えば、A-B-A型構造の場合、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)を基に、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の分子量分布が1、更にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA2つが同一分子量として存在することを前提とし、(MncA)=(Mnc)×結合ビニル芳香族化合物量の割合÷2の計算式で求めることができる。同様に、A-B-A-B型のブロック共重合体成分の場合は、(MncA)=(Mnc)×結合ビニル芳香族化合物量の割合÷3の計算式で求めることができる。なお、ビニル芳香族化合物-共役ジエン化合物ブロック共重合体を合成する段階で、上記したブロック構造A及びブロック構造Bのシーケンスが明確になっている場合は、上記計算式に依存せずに、測定したブロック共重合体の数平均分子量(Mnc)をベースにブロック構造Aの割合から算出しても構わない。
【0047】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体に、数平均分子量(MncB)が15,000以上である重合体ブロックBを含むことが好ましく、耐衝撃性に一層優れる観点から、数平均分子量が40,000以上である重合体ブロックBを含むことがより好ましい。
なお、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体中に含まれる、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの数平均分子量(MncB)は、上記と同様の方法で算出することができる。
【0048】
中でも、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体は、数平均分子量(Mnc)が40,000~120,000であり、且つ、数平均分子量(MncA)が10,000以上である重合体ブロックAを含むことが好ましい。
【0049】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体は、上記の構造を有するものであればどのような製造方法で得られるものであってもかまわない。製造方法の例としては、例えば、特開昭47-11486号公報、特開昭49-66743号公報、特開昭50-75651号公報、特開昭54-126255号公報、特開昭56-10542号公報、特開昭56-62847号公報、特開昭56-100840号公報、特開2004-269665号公報、英国特許第1130770号明細書、米国特許第3281383号明細書、米国特許第3639517号明細書、英国特許第1020720号明細書、米国特許第3333024号明細書、米国特許第4501857号明細書等に記載された方法が挙げられる。
【0050】
上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体は、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体と、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体(エステル化合物や酸無水物化合物、例えば無水マレイン酸等)とを、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80~350℃の温度下で反応させる方法等によって得られる変性(例えば、α,β-不飽和カルボン酸若しくはその誘導体のグラフト量又は付加量が、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体100質量%に対して、0.01~10質量%である)ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体であってもよく、さらに未変性ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体と上記変性ブロック共重合体の任意の割合の混合物であってもよい。
【0051】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物における上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の含有量は、流動性、耐熱性及び耐衝撃性の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物100質量%に対して、1~40質量%であることが好ましく、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは3~20質量%である。
【0052】
--ポリプロピレン系樹脂--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のモノマーとの共重合体、これらの変性物等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、結晶性であることが好ましく、結晶性プロピレンホモポリマー又は結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体であることがより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体との混合物であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロピレンと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、ブテン-1、ヘキセン-1等のα-オレフィン等が挙げられる。その重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体等であってもよい。
【0053】
上記結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体の製造方法としては、例えば、重合の第一工程で結晶性プロピレンホモポリマー部分を合成し、重合の第二工程以降でプロピレン、エチレン、及び必要に応じて併用される他のα-オレフィンを、結晶性プロピレンホモポリマー部分と共重合させて得る方法等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、触媒存在下でプロピレンやその他のモノマーを重合させる方法等の公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、上記触媒とアルキルアルミニウム化合物との存在下、重合温度0~100℃、重合圧力3~100気圧の範囲で、プロピレンやその他のモノマーを重合させる方法が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の製造に用いる上記触媒としては、三塩化チタン触媒、塩化マグネシウム等の担体に担持したハロゲン化チタン触媒等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂の製造において、重合体の分子量を調整するために、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。
ポリプロピレン系樹脂の製造における重合の方式としては、バッチ式、連続式いずれの方式も選択できる。重合方法は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合、無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合等の方法等から選択できる。
ポリプロピレン系樹脂の製造において、上記触媒の他に、ポリプロピレンのアイソタクティシティや重合活性を高めるため、第三成分として、電子供与性化合物を内部ドナー成分又は外部ドナー成分として用いることができる。上記電子供与性化合物としては、公知のものが使用でき、例えば、ε-カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル、芳香族モノカルボン酸エステル、アルコキシエステル等のエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体;芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン等のアルコキシシラン;各種エーテル類;各種アルコール類;各種フェノール類;等が挙げられる。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kgf)は、0.01~300g/10分であることが好ましく、0.1~100g/10分であることがより好ましく、0.1~30g/10分であることがさらに好ましい。MFRを上記範囲とすることによって、成形流動性、衝撃強度、ウェルド強度のバランスを取ることができる。
また、MFRがこれらの範囲のポリプロピレン系樹脂であれば、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶性を改善する観点から、混和剤を含むことが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混和剤としては、公知の混和剤を用いることができるが、例えば上記したブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を好適に用いることができる。
【0056】
--ポリアミド系樹脂--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂を含んでいてもよい。上記ポリアミド系樹脂としては、ポリマー主鎖の繰り返し単位中にアミド結合{-NH-C(=O)-}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
上記ポリアミド系樹脂は、例えば、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする重合体又は共重合体である。
【0057】
ポリアミド系樹脂の原料の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等のラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
本実施形態においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマー又はコポリマーを2種以上配合してもよい。
【0058】
ポリアミド系樹脂の具体的な例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド106、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4T、ポリアミド5T、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10I、ポリアミド10T、MXD6、MXD10、PXD6、PXD10ならびにこれらのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0059】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物がポリアミド系樹脂を含有する場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリアミド系樹脂との相溶性を改善する観点から、相溶化剤を含むことが好ましい。
本実施形態で使用することのできる相溶化剤の例としては、特開平8-48869号公報及び特開平9-124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、クエン酸、マレイン酸、イタコン酸及びそれらの無水物から選ばれる1種以上が挙げられる。なかでも、無水マレイン酸及びクエン酸がより好ましい。
【0060】
--ポリフェニレンスルフィド--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィドを含んでいてもよい。上記ポリフェニレンスルフィドは、その製造方法によりリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「リニアPPS」と略記する場合がある。)及び架橋型ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「架橋PPS」と略記する場合がある。)に二分される。
【0061】
前者のリニアPPSは、下記式(3)で示されるアリーレンスルフィドの繰返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上を含む重合体である。
[-Ar-S-] ・・・(3)
(ここで、Arはアリーレン基を示し、アリーレン基として、例えばp-フェニレン基、m-フェニレン基、置換フェニレン基(置換基としては炭素数1~10のアルキル基、フェニル基が好ましい。)、p,p´-ジフェニレンスルホン基、p,p´-ビフェニレン基、p,p´-ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基等が挙げられる。)
【0062】
リニアPPSは構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよく、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して用いて得られるコポリマーであってもよい。中でも、主構成要素としてp-フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂が、加工性、耐熱性に優れ、かつ、工業的に入手が容易なことから好ましい。
【0063】
後者の架橋型(半架橋型も含む)ポリフェニレンスルフィド樹脂は、上記したリニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂を重合した後に、更に酸素の存在下でポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下の温度で加熱処理し、酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めたものである。
【0064】
更にこれらのPPS(リニアPPS、架橋PPS)は酸変性されたPPSでも構わない。ここで酸変性したPPSとは、上記PPSを酸化合物で変性する事によって得られるものであり、該酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物や、飽和型の脂肪族カルボン酸や芳香族置換カルボン酸等を挙げることができる。更に、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸等の無機化合物系の酸化合物も該酸化合物として挙げることができる。
【0065】
-その他の成分-
上記その他の成分としては、高級脂肪酸ビスアミド;難燃剤;無機又は有機の充填材や強化材;熱安定剤;酸化防止剤;金属不活性化剤;結晶核剤;可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等);耐候(光)性改良剤;スリップ剤;各種着色剤;離型剤;相溶化剤;混和剤;等が挙げられる。
【0066】
--高級脂肪酸ビスアミド--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、金型汚染性及び離型性の観点から、高級脂肪酸ビスアミドを含んでいてもよい。
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物においては、高級脂肪酸ビスアミドを使用することにより、他の樹脂添加剤(例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸とマグネシウム、亜鉛、カルシウム等との金属塩;高級脂肪酸とモノアミンとの化合物;高級脂肪酸とアルコール類とによるエステル化合物;等)を用いた樹脂組成物と比較して、耐衝撃性、流動性、金型汚染性及び離型性のバランスの点でより優れる。
【0067】
上記高級脂肪酸ビスアミドは、高級脂肪酸のビスアミドであり、高級脂肪酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が好ましい。高級脂肪酸ビスアミドとしては、高級脂肪酸と、炭素数2~6の直鎖脂肪族ジアミンとのビスアミド化合物が、耐衝撃性の観点から好ましい。
【0068】
上記脂肪族ジアミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
上記高級脂肪酸としては、耐衝撃性の観点から、炭素数が10~25の脂肪酸が好ましく、炭素数12~22の脂肪酸ものがより好ましく、炭素数14~22の脂肪酸がさらに好ましい。また、上記高級脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでもよいが、飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0069】
上記高級脂肪酸ビスアミドとしては、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と、メチレンビスアミン、エチレンビスアミン、ヘキサメチレンビスアミン等のジアミンとの反応によって得られるビスアミド化合物が挙げられる。
【0070】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物における上記高級脂肪酸ビスアミドの含有量は、耐衝撃性、流動性、金型汚染性及び離型性の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物100質量%に対して、0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%である。
【0071】
--難燃剤--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、難燃性を付与する観点から、難燃剤を含んでいてもよい。
上記難燃剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
上記難燃剤としては、例えば、リン含有難燃剤、シリコーン系難燃剤等が挙げられ、有機リン化合物、赤リン、及び無機系リン酸塩等の当業界で知られたリン含有難燃剤が好ましく、その中でもリン酸エステル化合物がより好ましい。
上記難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル化合物;これらを各種置換基で変性した変性リン酸エステル化合物;各種の縮合タイプの縮合リン酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの中でも、縮合リン酸エステル系化合物が好ましい。
【0073】
--無機又は有機の充填材や強化材--
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、機械強度向上の観点から、無機又は有機の充填材や強化材を含んでいてもよい。
【0074】
上記無機又は有機の充填材や強化材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン、炭素繊維、カーボンブラック、ポリアクリロニトリル繊維、及びアラミド繊維といった、繊維状、粒状、板状、及び針状の強化材が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ガラス繊維、タルク、及びウォラストナイトであり、より好ましくはガラス繊維である。
これらの無機又は有機の充填材や強化材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、無機又は有機の充填材や強化材は、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法により表面処理したものを使用してもよい。
【0075】
無機又は有機の充填材や強化材の含有量は、延在長さの大きい被覆部材を好適に製造する観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0076】
-ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法-
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂、さらに必要に応じて上記ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分、上記その他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0077】
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0078】
以下に、押出機を用いた製造方法を説明する。
【0079】
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
【0080】
押出機の構成については、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口より下流に第1真空ベント、該第1真空ベントの下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、第2原料供給口の下流に、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらに該第2原料供給口の下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口との間にニーディングセクションを設け、第2~第4原料供給口と第2真空ベントとの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0081】
上記第2~第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2~第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
【0082】
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2~第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
【0083】
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
【0084】
そして、押出機第2~第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
【0085】
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されないが、結晶性樹脂においてはその結晶性樹脂の融点温度以上、非結晶性樹脂においてはそのガラス転移温度以上で加熱溶融して無理なく加工できる温度を選ぶことができ、通常200~370℃の中から任意に選び、スクリュー回転数を100~1200rpmとする。
【0086】
二軸押出機を用いた、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の具体的な製法態様の一つとして、例えば、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体、及び上記高級脂肪酸ビスアミドを、二軸押出機の第1原料供給口に供給し、加熱溶融ゾーンをポリフェニレンエーテル系樹脂の溶融温度に設定し、スクリュー回転数100~1200rpm、好ましくは200~500rpmにて溶融混練し、溶融混練する方法が挙げられる。また、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂、上記ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体、及び上記高級脂肪酸ビスアミドを二軸押出機に供給する位置は、上記したように一括して押出機の第1原料供給口から供給しても良く、第2原料供給口、第3原料供給口及び第4原料供給口を設けてそれぞれの成分を分割して供給しても構わない。
【0087】
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0088】
上述した樹脂組成物の製造方法は、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂がパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)の成分を含む場合、二軸押出機を用いてポリフェニレンエーテル樹脂組成物を製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0089】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1~3のいずれかの方法を実施することが好ましい。
1.上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体、高級脂肪酸ビスアミドの全量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
2.上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂及び高級脂肪酸ビスアミドの全量を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた溶融状態の混練物に対し、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体の全量を供給し、続けて溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法。
3.本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体、高級脂肪酸ビスアミドの全量を溶融混練する方法。
【0090】
特に、ポリフェニレンエーテル、分子構造によってはブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体、高級脂肪酸ビスアミドは粉体状であり、押出機への噛み込み性が悪く、時間当たりの生産量を増やすことが難しい。さらに樹脂の押出機中の滞留時間が長くなることから熱劣化が起きやすい。以上から、上記1又は2の製造方法で得られる樹脂組成物は、3の製造方法で得られる樹脂組成物と比較して、各成分の混合性に優れ、熱劣化による分解、架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、且つ樹脂の時間当たりの生産量を上げることができ、生産性、品質が優れた樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
【0091】
-ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の特性-
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のビカット軟化点としては、被覆部材の熱収縮(例えば、130℃24時間の熱エージング後の二次収縮A)を一層低くすることができる観点から、140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150~200℃、さらに好ましくは160~200℃である。
なお、ビカット軟化点は、JIS K 7206 A50に準拠して測定される値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0092】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の表面硬度は、配線部品が変形しにくくなる観点から、60以上であることが好ましく、より好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上である。
なお、表面硬度は、ISO 10724-1に従い成形したテストピースを用いて、JIS K 7202-2に準拠し、Mスケールにて測定されるロックウェル硬さであり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0093】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の曲げ弾性率は、配線部品が変形しにくくなる観点から、1800MPa以上であることが好ましく、より好ましくは2000~3000MPa、さらに好ましくは2200~3000MPaである。
なお、曲げ弾性率とは、ISO 10724-1に従い成形したテストピースを用いて、ISO178に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0094】
-被覆部材の製造方法-
上記被覆部材は、例えば、上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を射出成形することにより製造することができる。例えば、必要に応じてペレットの形態で得られた上記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入し、射出成形して製造することができる。
【0095】
射出成形時の金型温度は、被覆部材の熱収縮(例えば、130℃24時間の熱エージング後の二次収縮A)を一層低くすることができる観点から、80~130℃であることが好ましく、より好ましくは90~130℃、さらに好ましくは100~130℃である。
【0096】
射出成形時の樹脂温度は、被覆部材の熱収縮(例えば、130℃24時間の熱エージング後の二次収縮A)を一層低くすることができる観点から、250~330℃であることが好ましく、より好ましくは260~330℃、さらに好ましくは270~330℃である。
【0097】
射出成形時の保圧(最大射出圧力に対する保圧)は、被覆部材の熱収縮(例えば、130℃24時間の熱エージング後の二次収縮A)を一層低くすることができる観点から、20~90%であることが好ましく、より好ましくは50~90%、さらに好ましくは70~90%である。
【0098】
射出成形時の射出時間は、被覆部材の熱収縮(例えば、130℃24時間の熱エージング後の二次収縮A)を一層低くすることができる観点から、15秒以上であることが好ましく、より好ましくは20秒以上である。
【0099】
本実施形態の配線部品の用途としては、特に限定されることなく、例えば、組電池、二次電池、分電盤等の電気設備;建造物内の電気配線;家電製品内部品;路上又は軌道上を複数輪で駆動する物体内の電気回路;等が挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0101】
実施例及び比較例に用いた原材料を以下に示す。
-(a)ポリフェニレンエーテル(PPE)-
2,6-キシレノールを酸化重合して得たポリフェニレンエーテル(濃度0.5g/dLのクロロホルム溶液で、30℃で測定した還元粘度:0.42dL/g)
-(b)ポリスチレン系樹脂-
ハイインパクトポリスチレン(商品名「ポリスチレンH9405」、PSジャパン社製)
-(c)ポリアミド系樹脂-
ポリアミド66(VN=120mL/g、RV=37、融点=265℃、降温結晶化温度のピーク温度=230℃)
-(d)ポリフェニレンスルフィド-
溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D=10/1で6分間保持した後測定した値。)が60Pa・s、320℃の溶融状態で捕集される揮発分160質量ppmの架橋型のPPS
-(e)ブロック共重合体-
SEBS(ポリスチレン-水素添加ポリブタジエン-ポリスチレンの各ブロックからなる共重合体、数平均分子量=170,000、ポリスチレンブロック1個あたりの数平均分子量=29,800、スチレン成分合計含有量=35質量%、1,2-ビニル結合量=38%、ポリブタジエン部の水素添加率=98%以上。但し、パラフィン系オイルを35質量%含有。)
-(f)相溶化剤-
(f-1):無水マレイン酸(三菱化学株式会社製)
(f-2):グリシジルメタクリレートを5質量%含有するスチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(重量平均分子量110,000)
-(g)無機充填材-
ガラスフレーク マイクログラスフレカREFG-301(日本板硝子製)
【0102】
-導電性部材-
導電性部材として、銅板として、JIS-H-3100銅、アルミニウム板として、JIS-H-4000アルミニウム合金を材質とし、
図4(A)の形状で、
板厚:2.0mm、幅:20mm、延在長さ:480mm、または
板厚:3.0mm、幅:30mm、延在長さ:620mmの
板材を準備した。なお、導電性部材は、単一の部品からなる部材を使用した。
【0103】
(実施例1~7、比較例1、2)
-ポリフェニレンエーテル樹脂組成物-
二軸押出機ZSK-40(コペリオン社製)を用いて、樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、第2原料供給口を設け、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、表1に示す組成で(a)成分のポリフェニレンエーテル、(b)成分のハイインパクトポリスチレンを第1原料供給口から添加し、押出温度270~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、HIPS含有ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(PPE/HIPS)のペレットを製造した。
【0104】
(実施例8)
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を、下記の通り製造したPA/PPE組成物とし、表1に記載した厚み、被覆率、クリアランスの平均、被覆部材の内部空間における導電性部材の占有率を有する形状の被覆部材を成形した以外は、実施例1と同様に配線部品を製造した。
(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂を質量30.5%と、(c)成分のポリアミド樹脂を質量63%と、(e)成分のブロック共重合体を質量6.4%、及び(f-1)成分の相溶化剤を0.1質量%の配合割合で二軸押出機ZSK-40(コペリオン社製)を用いて、樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、第2原料供給口を設け、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、(a)成分と(e)成分と(f-1)成分を第1原料供給口から添加し、その下流に設けた二軸押出機の第2原料供給口より(c)成分を供給し、押出機のバレル設定温度は、第1原料供給口から第1真空ベントまでを320℃、第2原料供給口よりも下流を280℃の設定とし、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、ポリアミド含有ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(PA/PPE)のペレットを製造した。
【0105】
(実施例9)
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を、下記の通り製造したPPS/PPE組成物とし、表1に記載した厚み、被覆率、クリアランスの平均、被覆部材の内部空間における導電性部材の占有率を有する形状の被覆部材を成形した以外は、実施例1と同様に配線部品を製造した。
(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂を質量24%及び(d)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂を質量54%と(f-2)成分の相溶化剤を2質量%及び(g)成分のガラスフレークを20質量%の配合割合で二軸押出機ZSK-40(コペリオン社製)を用いて、樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第1真空ベント、第2原料供給口を設け、さらにその下流に第2真空ベントを設けた。
上記のように設定した押出機を用い、(a)成分と(d)成分及び(f-2)成分を第1原料供給口から添加し、その下流に設けた二軸押出機の第2原料供給口より(g)成分を供給し、押出機のバレル設定温度は、第1原料供給口から第1真空ベントまでを310℃、第2原料供給口よりも下流を290℃の設定とし、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、ポリフェニレンスルフィド含有ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(PPS/PPE)のペレットを製造した。
【0106】
-被覆部材による導電性部材の被覆-
得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを、射出成形機(商品名:SE-180-HP、住友重機械製)に供給し、表1の樹脂温度、金型温度、最大射出圧力に対する保圧、射出時間、冷却時間の成形条件として、表1に記載した厚み、被覆率、クリアランスの平均、被覆部材の内部空間における導電性部材の占有率を有する形状の被覆部材を成形した。
導電性部材として表1に記載の部材を使用し、一体型の場合は、導電性部材をインサート成形することで被覆をし、嵌合型の場合は、射出成形にて得られた複数の成形品を導電性部材に取り付けて嵌合することで被覆を行った。
【0107】
[評価]
実施例及び比較例で得られた配線部品について、下記の測定を行った。
-クリアランスCの平均、占有率-
各実施例及び比較例の被覆部材により被覆された導電性部材を延在方向に4等分した際の断面方向の3か所で、X線CTによる測定(装置:inspeXio SMX-255CT(島津製作所製)、X線条件(X線ターゲット:W、X線管電圧/管電流:210))を行った。なお、上記4等分後の測定箇所が被覆部材の屈曲部である場合は、上記箇所から一番近い直線部分にて測定した。3か所のクリアランスCの平均値(mm)を、クリアランスCの平均(mm)とした。また下記式(2)のように、各測定箇所の、上述の被覆部材の内部空間の断面(面積S1とする)に対する、被覆部材の内部空間に存在する導電性部材の断面(面積S2とする)の割合(%)を求め、平均値を占有率(%)とした。
占有率(%)=S2/S1×100・・・(2)
【0108】
-厚み、二次収縮A-
各実施例及び比較例の被覆部材を7日間23℃50%RHの環境に静置した。静置後、延在方向に4等分し、かつ幅方向の中心部の3箇所を、延在方向と幅方向それぞれの辺が10mmの正方形となるように平板を切り出した。なお、前記4等分後の切り出し箇所が被覆部材の屈曲部である場合は、前記箇所から一番近い直線部分にて平板を切り出してよい。なお、幅方向の長さが10mm未満の場合は、切り出せる最大の幅にて平板を切り出してよい。
切り出した平板において、中央部の厚み(mm)をマイクロメータにて測定した。続いて、被覆部材の延在方向に該当する長さを予めマクロスコープ(3D形状測定機 VR-3000(キーエンス製))にて測定した(寸法Lとする)。続いて、平板をオーブンに入れ、130℃24時間の熱エージングを実施した。熱エージング完了後に平板を取り出し、23℃50%RHの環境に1日間静置した。静置後、熱エージング前と同様に被覆部材の延在方向に該当する長さをマクロスコープにて測定した(寸法L’とする)。各サンプルの熱収縮率を下記式(3)で求め、平均値を二次収縮A(%)とした。
熱収縮率(%)=(L-L’)/L×100・・・(3)
【0109】
-ビカット軟化点-
各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを、シリンダー270~320℃、金型60~120℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ISO 10724-1に従い試験片タイプAを成形した。このテストピースを用いて、JIS K 7206 A50に準拠し、ビカット軟化点(℃)を測定した。
【0110】
-表面硬度-
各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを、シリンダー270~320℃、金型60~120℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ISO 10724-1に従い試験片タイプAを成形した。このテストピースを用いて、JIS K 7202-2に準拠し、Mスケールにて測定されるロックウェル硬さを測定した。
【0111】
-曲げ弾性率-
各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを、シリンダー270~320℃、金型60~120℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、ISO 10724-1に従い試験片タイプAを成形した。このテストピースを用いて、ISO178に準拠し、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0112】
-ヒートサイクル試験-
各実施例及び比較例の配線部品を7日以上23℃50%RHの環境に静置した。静置後、冷熱衝撃試験機(結露サイクル試験機 DC2010S(楠本化成製))を用いて120℃にて30分加熱、-10℃に降温して30分冷却、さらに120℃に昇温する過程を1サイクルとする耐ヒートショック試験を500サイクル実施し、被覆部材の割れや位置ずれの有無を目視にて観察した。そして、割れおよび位置ずれの発生がない場合を○(良好)とし、割れ及び/または位置ずれが見られた場合を×(不良)として評価した。
【0113】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の配線部品は、例えば、組電池、二次電池、分電盤等の電気設備内の配線部品;建造物内の電気配線部品;家電製品内の配線部品;路上又は軌道上を複数輪で駆動する物体内の電気回路の配線部品;等に用いることができる。
【符号の説明】
【0115】
1 配線部品
2 導電性部材
3 被覆部材
4 嵌合部