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特許7194826ガスタービンエンジンの中間フレーム部と、関連してロータの半径方向隙間を調整する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの中間フレーム部と、関連してロータの半径方向隙間を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/28 20060101AFI20221215BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F01D25/28 D
F01D25/24 D
F01D25/24 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530069
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018063285
(87)【国際公開番号】W WO2020112136
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ブラジュザック,グジェゴシュ
(72)【発明者】
【氏名】パスプラティ,アミット ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボス,スディープ
(72)【発明者】
【氏名】サランキー,アニル エル.
(72)【発明者】
【氏名】アッキ,カシナート
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0241876(US,A1)
【文献】国際公開第2011/045128(WO,A1)
【文献】特開2007-046540(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017220333(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F01D 13/00-15/12
F01D 23/00-25/36
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)に配置され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、キー(410)と、一対のシム(420)と、を備える平行キー調整アセンブリ(400)を備え、かつ
前記外側ケーシング(122)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)と当接する領域に切り欠き(128)を備え、前記キー(410)は、前記切り欠き(128)内で組み付けられて、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)に固定される、
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項2】
各シム(420)は、L字をなすように、シム・プレート(422)と、前記シム・プレート(422)の一端に配置されたシム・タブ(424)とを備え、前記シム・プレート(422)は、前記切り欠き(128)内で前記キー(410)の2つの周囲の側部に組み付けられ、前記シム・タブ(424)は、前記外側ケーシング(122)に固定される、請求項に記載のガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項3】
前記ロータ(140)に対する前記半径方向隙間を調整するため、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)を前記ロータ(140)に関する方向にシフトさせるように、前記シム・プレート(422)の厚さが調整されるように構成されている、請求項に記載のガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項4】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、ピン本体(520)と、前記ピン本体(520)の端面(522)に配置されたピン・ブロック(530)とを備えるトルク・ピン調整アセンブリ(500)を備え、かつ
前記外側ケーシング(122)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)と当接する領域に切り欠き(128)を備え、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)は、溝(242)を備え、前記ピン本体(520)は、前記切り欠き(128)内に挿通され、前記ピン・ブロック(530)は、前記溝(242)と嵌合することを特徴とする、
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項5】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、ピン本体(520)と、前記ピン本体(520)の端面(522)に配置されたピン・ブロック(530)とを備えるトルク・ピン調整アセンブリ(500)を備え、かつ
前記ロータ(140)に対する前記半径方向隙間を調整するため、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)を前記ロータ(140)に関する方向にシフトさせるように、前記ピン本体(520)の端面(522)での前記ピン・ブロック(530)の位置が調整されるように構成されている、ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項6】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、ピン本体(520)と、前記ピン本体(520)の端面(522)に配置されたピン・ブロック(530)とを備えるトルク・ピン調整アセンブリ(500)を備え、かつ
前記トルク・ピン調整アセンブリ(500)は、軸方向で、前記コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)に配置されている、ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項7】
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記軸カバー・フランジ(152)と当接する領域で、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置されている、請求項に記載のガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項8】
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)は前記軸カバー・フランジ(152)と当接する領域に切り欠き(214)を備え、前記軸カバー・フランジ(152)は溝(154)を備え、前記ピン本体(520)は前記切り欠き(214)内に挿通されて、前記ピン・ブロック(530)は前記溝(154)と嵌合される、請求項に記載のガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項9】
前記ロータ(140)に対する前記半径方向隙間を調整するため、前記軸カバー(150)を前記ロータ(140)に関する方向にシフトするように、前記ピン本体(520)の端面(522)での前記ピン・ブロック(530)の位置が調整されるように構成されていることを特徴とする請求項5、7及び8のうちのいずれか1項に記載のガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項10】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)の前方端部側に配置される平行キー調整アセンブリ(400)と、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)の後方端部側に配置されるトルク・ピン調整アセンブリ(500)と、を含む、
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項11】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)であって、
外側ケーシング(122)と、
前記外側ケーシング(122)によって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザ(200)であって、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備える前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれる軸カバー(150)であって、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備える前記軸カバー(150)と、
前記軸カバー(150)によって囲まれるロータ(140)と、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に配置された半径方向隙間調整アセンブリ(300)と、を備え、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記中間フレーム部(120)内の前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整するように構成され、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)の前方端部側配置されるトルク・ピン調整アセンブリ(500)と、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)の後方端部側に配置されるトルク・ピン調整アセンブリ(500)と、を含む、
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)。
【請求項12】
ガスタービンエンジン(100)の中間フレーム部(120)内のロータ(140)に対する半径方向隙間を調整する方法であって、前記ガスタービンエンジン(100)の前記中間フレーム部(120)は、外側ケーシング(122)と、前記外側ケーシング(122)によって囲まれたコンプレッサ出口側ディフューザ(200)と、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)によって囲まれた軸カバー(150)と、前記軸カバー(150)によって囲まれたロータ(140)とを備え、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)は、前記外側ケーシング(122)と当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ(240)を備え、前記軸カバー(150)は、前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)と当接する軸カバー・フランジ(152)を備え、前記方法は、
前記コンプレッサ出口側ディフューザ(200)に半径方向隙間調整アセンブリ(300)を配置することであって、前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)は、請求項1から11のいずれか1項に記載のものであることと、
前記半径方向隙間調整アセンブリ(300)によって前記ロータ(140)に対する半径方向隙間を調整すること、とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、半径方向隙間を調整可能としたガスタービンエンジンの中間フレーム部と、ガスタービンエンジンの中間フレーム部内でのロータに対する半径方向隙間を調整する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、工業用ガスタービンエンジンは、コンプレッサ部と、タービン部と、それらの間に配置された中間フレーム部と、を含む。典型的には、中間フレーム部は、コンプレッサ出口側ディフューザと燃焼器アセンブリとを含む。コンプレッサ出口側ディフューザは、圧縮空気をコンプレッサ部からプレナム内に拡散させ、そこを通って圧縮空気を燃焼器アセンブリへと流しているが、そこでは、圧縮空気は燃料と混合されて、その混合物が点火されて、その点火された混合物はタービン部に送られて、機械的動力を取り出せるようにしている。また、ガスタービンエンジンは、コンプレッサ部、中間フレーム部、及びタービン部を連結するように、ロータを取り付けたロータ軸を含む。中間フレーム部は、コンプレッサ出口側ディフューザと、ロータ軸を囲む軸カバーとに配置された複数のシールを含む。ロータから、コンプレッサ出口側ディフューザと軸カバーへの間と、その上に配置されたシールへの間にある半径方向の隙間は非常に小さく、ガスタービンエンジンの適切な動作には重要である。
【0003】
典型的には、ロータから、コンプレッサ出口側ディフューザと軸カバーへの間の半径方向の隙間は、組付時及びサービス時に中間フレーム構成部品をシミングしたり、機械加工することによって、可能な限り最良のレベルに設定されている。ガスタービンエンジンの運転中、ロータから、コンプレッサ出口側ディフューザと軸カバーへの半径方向の隙間は、遠心負荷や熱負荷等の様々な原因に起因して、偏心してシフトすることがあるが、その結果、その上に配置されたシールの早期摩耗、不均一な空気流、及びガスタービンエンジンの効率低下がもたらされることが起こり得る。コンプレッサ出口側ディフューザ及び軸カバー並びにその上に配置されたシールに対してロータを同心状に保つように、中間フレーム部内のロータの半径方向の隙間を調整する能力をガスタービンエンジンに備えることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
簡潔に説明すると、本発明の態様は、ガスタービンエンジンの中間フレーム部に関するとともに、ガスタービンエンジンの中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、ガスタービンエンジンの中間フレーム部を提供する。ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、外側ケーシングを含む。また、ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、外側ケーシングによって囲まれるコンプレッサ出口側ディフューザを含む。コンプレッサ出口側ディフューザは、外側ケーシングと当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジを備える。ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、コンプレッサ出口側ディフューザによって囲まれる軸カバーを含む。軸カバーは、コンプレッサ出口側ディフューザと当接する軸カバー・フランジを備える。ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、軸カバーによって囲まれるロータを含む。ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、コンプレッサ出口側ディフューザに配置された半径方向隙間調整アセンブリを含む。半径方向隙間調整アセンブリは、中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整するように構成されている。
【0006】
一態様では、ガスタービンエンジンの中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整する方法を提供する。ガスタービンエンジンの中間フレーム部は、外側ケーシングと、外側ケーシングによって囲まれたコンプレッサ出口側ディフューザと、コンプレッサ出口側ディフューザによって囲まれた軸カバーと、軸カバーによって囲まれたロータとを備える。コンプレッサ出口側ディフューザは、外側ケーシングと当接するコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジを備える。軸カバーは、コンプレッサ出口側ディフューザと当接する軸カバー・フランジを備える。本方法は、コンプレッサ出口側ディフューザに半径方向隙間調整アセンブリを配置することを含む。さらに、本方法は、半径方向隙間調整アセンブリによってロータに対する半径方向隙間を調整することを含む。
【0007】
本明細書で、上述及び後述の様々な態様及び実施形態は、明示的に記載した組合せでの使用に限定されず、他の組合せでも使用することができる。当業者であれば、本詳細な説明を読解することで、変更等が可能になるだろう。
以下、本出願の例示的実施態様について、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンエンジンの一部分の概略的な長手方向の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半径方向隙間調整アセンブリの概略的な組立図である。
図3図2に示した半径方向隙間調整アセンブリを概略的に分解して示す拡大斜視図である。
図4図2に示した半径方向隙間調整アセンブリを用いて、中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整するプロセスを例示するための概略図である。
図5図2に示した半径方向隙間調整アセンブリを用いて、中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整するプロセスを例示するための概略図である。
図6】本発明の別の実施形態に係る半径方向隙間調整アセンブリの概略的な組立図である。
図7図6に示した半径方向隙間調整アセンブリを概略的に分解して示す拡大斜視図である。
図8図6に示した半径方向隙間調整アセンブリを用いて、中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整するプロセスを例示するための概略図である。
図9図6に示した半径方向隙間調整アセンブリを用いて、中間フレーム部内のロータに対する半径方向隙間を調整するプロセスを例示するための概略図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るガスタービンエンジンの一部の概略的な長手方向の断面図である。
図11図10に示した半径方向隙間調整アセンブリを概略的に分解して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面では、理解を容易にするため、共通する同一の構成要素については、可能であれば同一の参照番号を用いて示している。
以下、添付図面を参照して、本発明の各態様に関連して、詳細な説明を行う。
【0010】
図1には、本発明の一実施形態に係るガスタービンエンジン100の一部について、概略的な長手方向(軸方向)の断面図が例示されている。図1に例示されているように、ガスタービンエンジン100には、コンプレッサ部110と、タービン部130と、それらの間に位置する中間フレーム部120と、が含まれている。ロータ140は、コンプレッサ部110、中間フレーム部120、及びタービン部130を長手方向に接続しており、これらによって、円周方向に囲まれている。ロータ140は、軸カバー150によって囲まれていてもよい。コンプレッサ部110には、複数段のコンプレッサ用ブレードとベーンが含まれている。図1には、最終段のコンプレッサ用ブレード112とベーン114だけが示されている。タービン部130には、複数段のタービン用ブレードとベーンが含まれている。図1には、第1段のタービン用ブレード132とベーン134だけが示されている。
【0011】
典型的に、中間フレーム部120には、燃焼器アセンブリ124とコンプレッサ出口側ディフューザ200とを囲む外側ケーシング122が含まれる。コンプレッサ出口側ディフューザ200は、最終段のコンプレッサ用ベーン114の下流に配置されている。コンプレッサ出口側ディフューザ200は、コンプレッサ部110から送られる圧縮空気を燃焼器アセンブリ124まで拡散させて、その中で拡散された圧縮空気を燃料と混合させて、点火させて、さらにタービン部130を通過させることで、機械的動力を供給できるようにしている。
【0012】
典型的には、コンプレッサ出口側ディフューザ200は、内部コンプレッサ出口側ディフューザ210と外部コンプレッサ出口側ディフューザ220とを含む。外部コンプレッサ出口側ディフューザ220に支柱230をボルト止めすることによって、内部コンプレッサ出口側ディフューザ210は外部コンプレッサ出口側ディフューザ220と接続されている。コンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部は、コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240を含んでいてもよい。コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240は、外部コンプレッサ出口側ディフューザ220に配置されて、外側ケーシング122と当接(接続)されていてもよい。コンプレッサ出口側ディフューザ200は、軸カバー150を囲んでいる。軸カバー150は、軸カバー・フランジ152を含むことができる。軸カバー・フランジ152は、内部コンプレッサ出口側ディフューザ210の後端で、コンプレッサ出口側ディフューザ200と当接(接続)されている。
【0013】
図1に示すように、中間フレーム部120は、少なくともシール160を有することができる。このシール160は、中間フレーム部120の構成要素上に配置することができ、例えば、コンプレッサ出口側ディフューザ200に配置してもよく、軸カバー150に配置してもよく、又は、コンプレッサ出口側ディフューザ200と軸カバー150の双方に配置してもよい。シール160には、当該技術分野で公知の任意の種類のシールを活用することができ、例えば、ラビリンス・シール、ハニカム・シール等でもよい。ロータ140からコンプレッサ出口側ディフューザ200と軸カバー150までと、その上に配置されたシール160までの間には、半径(ラジアル)方向の隙間(クリアランス)142が存在する。ロータ140に対する半径方向隙間142は、ガスタービンエンジン100を適切に作動させるために重要である。ロータ140に対する半径方向隙間142は、ガスタービンエンジン100を適切に動作させるために、同心円状に設定される必要がある。典型的には、ロータ140に対する半径方向隙間142は、非常に小さい。ガスタービンエンジン100の運転中、ロータ140に対する半径方向隙間142はシフトされることがあり、このため偏心することがある。ロータ140に対して偏心した半径方向隙間142は、ガスタービンエンジン100の性能を低下させることがあり、その結果、シール160の早期磨耗、不均一な空気流、冷却漏れの増加、構成要素の故障等をもたらすことが起こり得る。
【0014】
図1に示した例示的な実施形態では、ガスタービンエンジン100の中間フレーム部120は、半径方向隙間調整アセンブリ300を含んでいる。半径方向隙間調整アセンブリ300は、ロータ140に対する中間フレーム部120の同心度の調整を可能にする。半径方向隙間調整アセンブリ300は、ロータ140に対するコンプレッサ出口側ディフューザ200の同心度を調整することによって、又はロータ140に対する軸カバー150の同心度を調整することによって、又はロータ140に対するコンプレッサ出口側ディフューザ200の同心度及び軸カバー150の同心度を調整することによって、ロータ140に対する半径方向隙間142を調整することができる。半径方向隙間調整アセンブリ300は、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部側に配置されてもよく、コンプレッサ出口側ディフューザ200の後方端部側に配置されてもよく、またはコンプレッサ出口側ディフューザ200の前後両端部側に配置されてもよい。例示の目的上、図1に示した例示的な実施形態では、半径方向隙間調整アセンブリ300は、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部に配置された平行(パラレル)キー調整アセンブリ400と、コンプレッサ出口側ディフューザ200の後方端部に配置されたトルク・ピン調整アセンブリ500と、を含む。なお、半径方向隙間調整アセンブリ300は、当該技術分野で公知の任意の種類の調整ツールを含むことができ、例えば、偏心ピン、ウェッジ、シム・ブロック等を含み得ることを理解されたい。
【0015】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る半径方向隙間調整アセンブリ300の概略的な組立図が例示されている。図2に示した例示的な実施形態では、半径方向隙間調整アセンブリ300は、平行キー調整アセンブリ400を用いている。平行キー調整アセンブリ400は、図1に例示したように、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部に配置することができる。図3は、図2に例示した平行キー調整アセンブリ400を概略的に分解して示す拡大斜視図である。
【0016】
図2図3に例示するように、ロータ140は、外側ケーシング122とコンプレッサ出口側ディフューザ200とによって囲まれている。ロータ140とコンプレッサ出口側ディフューザ200との間には、半径方向隙間142が存在する。外側ケーシング122は、コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240と当接する領域に切り欠き(凹所)128を有する。平行キー調整アセンブリ400は、この切り欠き128内に組み付けられる。平行キー調整アセンブリ400は、キー410を含む。コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240と対向するキー410の前方側には、略L字状の切り欠き412を設けることができる。このL字状の切り欠き412は、コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240と嵌合する。L字状の切り欠き412をコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240に対して固定することによって、キー410が切り欠き128内に組み付けられる。コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240に対してキー410を固定することは、キー410のL字状の切り欠き412の孔(開口部)416と、コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240の孔246と、を通る締結具600を介して行われてもよい。この締結具600は、ボルトを含んでいてもよい。平行キー調整アセンブリ400は、一対のシム(すき間に入れる詰めもの)420を含むことができる。各シム420は、L字状のシム420を形成するように、シム・プレート422と、このシム・プレート422の一端に配置されたシム・タブ424と、を有することができる。シム・プレート422は、厚さ428を有する。切り欠き128内にL字状のシム420を組み付けることは、切り欠き128内に(2つの)シム・プレート422を挿入して、キー410の2つの周囲の側部にそれぞれ配置することで行われる。締結具600をシム・タブ424の孔426を通って外側ケーシング122の孔126内に挿通することで、外側ケーシング122に対してL字状シム420が固定される。組み付けられた平行キー調整アセンブリ400は、外側ケーシング122の切り欠き128内に嵌合される。
【0017】
複数の平行キー調整アセンブリ400を、外側ケーシング122の複数の位置で組み付けることができる。例えば、図2に例示した実施形態では、平行キー調整アセンブリ400は、外側ケーシング122に対して、(時計方向で)12時の位置と、3時の位置と、6時の位置と、9時の位置と、で組み付けられてもよい。なお、平行キー調整アセンブリ400は、外側ケーシング122に対して、他の位置で組み付けることができることを理解されたい。
【0018】
図2及び図3に例示するように、ロータ140に対する半径方向隙間142は、組付中にコンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心円状に設定される。平行キー調整アセンブリ400のシム420のシム・プレート422の厚さ428は、組付中に均等に設定されてもよい。図4に例示しているように、ガスタービンエンジン100の動作中、半径方向隙間142はロータ140に対してシフトされて、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対して偏心することが起こり得る。ロータ140に対して偏心した半径方向隙間142は、ガスタービンエンジン100の性能を低下させることがあり、例えば、コンプレッサ出口側ディフューザ200上に配置されたシール160の早期摩耗、不均一な空気流、冷却漏れの増加、構成要素の故障等をもたらすことが起こり得る。これに対して、図5を参照すると、図2及び図3に例示したように、平行キー調整アセンブリ400を用いて、ロータ140に対して偏心した半径方向隙間142を、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心状になるように調整するプロセスが概略的に示されている。
【0019】
図4及び図5を参照すると、平行キー調整アセンブリ400の修正例が示されている。この修正された平行キー調整アセンブリ400は、外側ケーシング122の切り欠き128とコンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240と、に組み付けられている。平行キー調整アセンブリ400のシム・プレート422の厚さ428は、外側ケーシング122の切り欠き128内に組み付けられた平行キー調整アセンブリ400のキー410を、ロータ140に関する方向にシフトさせるように調整されている。コンプレッサ出口側ディフューザ200は、その上にボルト止めされたキー410によって、ロータ140に対して同じ方向にシフトされている。例示の目的上、図4及び図5に示す例示的な実施形態では、ロータ140に対する半径方向隙間142は左側にシフトされており、即ち、ロータ140に対する半径方向隙間142は、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対して右側よりも左側の方が小さくなるようにされている。外側ケーシング122の12時の位置と6時の位置とで組み付けられた平行キー調整アセンブリ400の右側のシム・プレート422の厚さ428は、同じ位置で組み立てられた平行キー調整アセンブリ400の左側のシム・プレート422の厚さ428よりも厚く調整されており、その結果、同じ位置で組み付けられたキー410が左側に水平にシフトされている。外側ケーシング122の3時の位置と9時の位置とに組み付けられた平行キー調整アセンブリ400の上方のシム・プレート422の厚さ428は、同じ位置に組み付けられた平行キー調整アセンブリ400の下方のシム・プレート422の厚さ428よりも厚く調整されており、その結果、同じ位置に組み付けられた平行キー調整アセンブリ400のキー410は、垂直方向に下方にシフトされている。調整されるシム・プレート422の厚さ428の度合い(大きさ)は、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対してロータ140に関する半径方向隙間142のシフトの度合いに対応しており、その結果、調整後に、ロータ140がコンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心状になるようにしている。なお、ロータ140に対する半径方向隙間142は、他の方向にシフトされてもよく、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心状になるように、ロータ140に対する半径方向隙間142の対応する調整は、平行キー調整アセンブリ400のシム・プレート422の厚さ428の対応する調整によって行うことができることを理解されたい。
【0020】
図6は、本発明の別の実施形態に係る半径方向隙間調整アセンブリ300の概略的な組立図である。図6に例示した実施形態では、半径方向隙間調整アセンブリ300は、トルク・ピン調整アセンブリ500を用いている。トルク・ピン調整アセンブリ500は、図1に例示したように、コンプレッサ出口側ディフューザ200の後端側に配置することができる。例示の目的上、トルク・ピン調整アセンブリ500は、軸カバー・フランジ152と当接する領域内で、内部コンプレッサ出口側ディフューザ210に配置されている。図7は、図6に例示したトルク・ピン調整アセンブリ500を概略的に分解して示す拡大斜視図である。
【0021】
図6図7に例示するように、ロータ140は、軸カバー150とコンプレッサ出口側ディフューザ200とによって囲まれており、軸カバー150に対して半径方向隙間142を有している。コンプレッサ出口側ディフューザ200は、軸カバー・フランジ152と当接する領域に切り欠き214を含んでいる。トルク・ピン調整アセンブリ500は、ピン・キャップ(ピン頭部)510と、このピン・キャップ510に取り付けられたピン本体520と、このピン本体520の一端面522に配置されたピン・ブロック(突出部)530と、を含む。ピン本体520を切り欠き部214内に挿入することによって、トルク・ピン調整アセンブリ500は、切り欠き部214に組み付けられている。ピン本体520は、円筒形状を有していてもよい。切り欠き214は、孔であってもよい。トルク・ピン調整アセンブリ500は、コンプレッサ出口側ディフューザ200に固定されている。例示の目的上、図6図7に示した実施形態では、トルク・ピン調整アセンブリ500は、締結具600を用いてコンプレッサ出口側ディフューザ200に固定されており、この締結具600は、ピン・キャップ510の孔(開口部)516と、コンプレッサ出口側ディフューザ200の孔216と、を挿通している。なお、当該技術分野で公知の他の方法を用いて、トルク・ピン調整アセンブリ500をコンプレッサ出口側ディフューザ200に固定することは可能であり、例えば、トルク・ピン保持部(リテーナ)等を用いてもよいことを理解されたい。軸カバー・フランジ152は、溝154を有する。この溝154は、ピン・ブロック530と嵌合するように切り欠けられている。ピン・ブロック530は、四角形状でもよい。
【0022】
複数のトルク・ピン調整アセンブリ500を、コンプレッサ出口側ディフューザ200の複数の位置で組み付けることができる。例えば、図6に例示した実施形態では、トルク・ピン調整アセンブリ500は、コンプレッサ出口側ディフューザ200に対して、垂直方向では、12時の位置と6時の位置に配置されるとともに、水平方向では、3時の位置と9時の位置とから小さな度合いで下方の位置に配置されるように、組み付けられてもよい。なお、トルク・ピン調整アセンブリ500は、他の位置でコンプレッサ出口側ディフューザ200に組み付けることができることを理解されたい。
【0023】
図6図7を参照すると、組付中に、ロータ140に対する半径方向隙間142が軸カバー150に対して同心円状に設定されている。ピン・ブロック530は、ピン本体520の端面522の中心位置に設定されてもよい。図8に例示するように、ガスタービンエンジン100の動作中、ロータ140に対する半径方向隙間142は、シフトされて、軸カバー150に対して偏心することが起こり得る。ロータ140に対して偏心した半径方向隙間142は、ガスタービンエンジン100の性能を低下させることがあり、例えば、シール160の早期摩耗、不均一な空気流、冷却漏れの増加、部品の故障等の虞が起こり得る。図9を参照すると、ロータ140に対して偏心した半径方向隙間142を、軸カバー150に対して同心状になるように調整するプロセスが概略的に例示されており、この際、図6に例示したような、トルク・ピン調整アセンブリ500を用いている。
【0024】
図8図9を参照すると、トルク・ピン調整アセンブリ500の修正が例示されている。修正されたトルク・ピン調整アセンブリ500は、コンプレッサ出口側ディフューザ200の切り欠き214と、軸カバー・フランジ152上の溝154と、に組み付けられている。ピン本体520の端面522でのピン・ブロック530の位置は、ロータ140に関する方向で調整されている。軸カバー・フランジ152上の溝154内に嵌合されたピン・ブロック530によって、軸カバー150は、ロータ140に対して同じ方向にシフトされている。例示の目的上、図8図9の例示的な実施形態では、ロータ140に対する半径方向隙間142は左側面にシフトされており、その結果、ロータ140に対する半径方向隙間142は、軸カバー150に対して、右側よりも左側でより小さくなっている。コンプレッサ出口側ディフューザ200の12時の位置と6時の位置とで組み付けられたピン本体520の端面522におけるピン・ブロック530の位置は左側に調整されており、その結果、軸カバー150が左側に水平方向にシフトされている。コンプレッサ出口側ディフューザ200の3時の位置と9時の位置より下方で組み付けられたピン本体520の端面522におけるピン・ブロック530の位置は下方に調整されており、その結果、軸カバー150が下方にシフトされている。ピン本体520の端面522でのピン・ブロック530の位置の調整の度合い(大きさ)は、ロータ140に対する半径方向隙間142のシフトの度合いに相当し、その結果、調整後にロータ140が軸カバー150とコンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心状になっている。なお、ロータ140に対する半径方向隙間142を他の方向にシフトさせて、軸カバー150とコンプレッサ出口側ディフューザ200に対して同心状になるように、ロータ140に対する半径方向隙間142の対応する調整を行ってもよく、そのことをトルク・ピン調整アセンブリ500のピン本体520の端面522におけるピン・ブロック530の位置の対応する調整によって行ってもよいことを理解されたい。
【0025】
図10を参照すると、本発明の他の実施形態に係るガスタービンエンジン100の一部の概略的な長手方向の断面図が示されている。図10に例示するように、ガスタービンエンジン100の中間フレーム部120は、半径方向隙間調整アセンブリ300を含む。半径方向隙間調整アセンブリ300は、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前端側に配置されたトルク・ピン調整アセンブリ500を含んでいる。トルク・ピン調整アセンブリ500は、軸方向で、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前端側に配置されている。図11は、図10に例示した、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前端側に配置されたトルク・ピン調整アセンブリ500を概略的に分解して示す拡大斜視図である。他、図10に例示した実施形態は、図1に例示した実施形態に対応する。図10のうち、(図1と)対応する部分には、同様の参照番号が付けられており、図10を参照した詳細な説明は割愛する。
【0026】
図10図11に示すように、外側ケーシング122は、コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240と当接する領域に切り欠き128を有する。トルク・ピン調整アセンブリ500は、ピン・キャップ510と、このピン・キャップ510に取り付けられるピン本体520と、このピン本体520の一端面522に配置されたピン・ブロック530と、を含む。ピン本体520を切り欠け128内に挿通することで、トルク・ピン調整アセンブリ500は切り欠き部128に組み付けられている。トルク・ピン調整アセンブリ500は、締結具600を用いて外側ケーシング122に固定されており、この締結具600は、ピン・キャップ510の孔516と外側ケーシング122の孔126を挿通している。コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ240は、溝242を有する。この溝242は、トルク・ピン調整アセンブリ500のピン・ブロック530と嵌合するように切り欠けられている。コンプレッサ出口側ディフューザ200に関して、ロータ140に対する半径方向隙間142を調整するためのトルク・ピン調整アセンブリ500の方法は、図8図9に例示した方法と同様であるため、その詳細については割愛する。
【0027】
本提案の半径方向隙間調整アセンブリ300は、一態様では、ガスタービンエンジン100の中間フレーム部120に対して、半径方向隙間の調整を可能にする。本提案の半径方向隙間調整アセンブリ300は、ガスタービンエンジン100の中間フレーム部120の構成要素に関して、ロータ140に対する同心状の半径方向隙間142を提供するが、例えば、コンプレッサ出口側ディフューザ200と軸カバー150とに関して、ロータ140に対する同心状の半径方向隙間142を提供する。中間フレーム部120の構成要素に関して、ロータ140に対する同心状の半径方向隙間142によって、構成要素上に配置されたシール160の早期磨耗を防止し、その結果、構成要素の早期故障を防止し、ガスタービンエンジン100のサービス及び運転のコストを低減することができる。また、本提案の半径方向隙間調整アセンブリ300は、冷却漏れを低減し、ガスタービンエンジン100の効率を高めることができる。
【0028】
本提案の半径方向隙間調整アセンブリ300は、一態様では、複数の位置で、ガスタービンエンジン100の中間フレーム部120に対して半径方向隙間の調整を可能にするが、例えば、コンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部、コンプレッサ出口側ディフューザ200の後方端部、又はコンプレッサ出口側ディフューザ200の前方端部と後方端部の両方で調整を可能にする。本提案の半径方向隙間調整アセンブリ300は、シミング(shimming)または機械加工を行うことなく、ガスタービンエンジンの中間フレーム部120内のロータ140に対して、所望の半径方向隙間142を容易に組付けることを可能にする。
【0029】
以上、本発明の教示内容に関する様々な実施形態について詳細に説明した。当業者であれば、これら教示内容を含む多くの様々な実施形態を容易に想到できるであろう。本発明は、構成の具体例の詳細や、図面で説明した又は図示した構成要素の配置に限定されない。本発明は、他の実施形態でも実施可能であり、様々な方法で実行または実装されてもよい。また、本明細書で用いられた用語または語彙は、説明の目的上、用いられており、限定的ではないことを理解されたい。「含む」、「有する」またはその変形は、その後に記載される構成要素、同等物または追加の要素を含むことを意味し、特に指定または限定がない限り、「設ける」、「接続する」、「支持する」、「結合する」等の用語は、広く用いられ、直接的及び間接的な取り付け、接続、支持、および結合を含むものとし、さらに、「接続」、「結合」等は、物理的または機械的な接続、結合等に限定されないものとする。
【符号の説明】
【0030】
100 ガスタービンエンジン
110 コンプレッサ部
112 最終段コンプレッサ翼
114 最終段コンプレッサ用ベーン
120 中間フレーム部
122 外側ケーシング
124 燃焼器アセンブリ
126 外側ケーシングの孔(開口部)
128 外側ケーシングの切り欠き
130 タービン部
132 第1段タービン翼(ブレード)
134 第1段タービン翼
140 ロータ
142 ロータに対する半径方向隙間
150 軸カバー
152 軸カバー・フランジ
154 軸カバーのフランジの溝
160 シール
200 コンプレッサ出口側ディフューザ
210 内部コンプレッサ出口側ディフューザ
214 コンプレッサ出口側ディフューザの切り欠き
216 コンプレッサ出口側ディフューザの孔(開口部)
220 外部コンプレッサ出口側ディフューザ
230 支柱(ストラット)
240 コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジ
242 コンプレッサ出口側ディフューザ・フランジの溝
300 半径方向隙間調整アセンブリ
400 並行キー調整アセンブリ
410 キー
412 キーの略L字状切り欠き
416 キーの略L字状切り欠きの孔(開口部)
420 シム
422 シム・プレート(平板部)
424 シム・タブ(凸部)
426 シム・タブの孔(開口部)
428 シム・プレートの厚さ
500 トルク・ピン調整アセンブリ
510 ピン・キャップ
516 ピン・キャップの孔(開口部)
520 ピン本体
522 ピン本体の端面
530 ピン・ブロック
600 締結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11