(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官
(51)【国際特許分類】
G04B 17/34 20060101AFI20221215BHJP
G04B 17/32 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
G04B17/34
G04B17/32
(21)【出願番号】P 2021532400
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084224
(87)【国際公開番号】W WO2020126616
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス,エム・イバン
(72)【発明者】
【氏名】キュザン,エム・ピエール
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-122384(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00698794(CH,B5)
【文献】欧州特許出願公開第01637940(EP,A2)
【文献】特表2013-524163(JP,A)
【文献】特表2014-528572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/34,17/32
G04B 13/02
G04B 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計構成部品(2)を支持要素(3)に留めるための弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記弾性固定器官(1a、1b、1c)は、前記時計構成部品(2)に接続可能な外周壁(4a)と、三角形の開口(5)を画定する内周壁(4b)とを備え、前記支持要素(3)は前記三角形の開口(5)に挿入可能であり、前記弾性固定器官(1a、1b、1c)は弾性アーム(6a、6b、6c)を備え、前記各弾性アーム(6a、6b、6c)は前記三角形の開口(5)の一辺を形成し、前記各弾性アーム(6a、6b、6c)によって、前記支持要素(3)は前記開口(5)に確実に保持され、
各アーム(6a、6b、6c)は、
-前記アーム(6a、6b、6c)の本体に沿って、完全にまたは部分的に確定される少なくとも1つの切り欠き(7a、7b、7c)と、
-
前記支持要素(3)を前記開口(5)内に確実に保持するために、前記支持要素(3)と協働可能である弾性接触領域(8a)と、
-前記接触領域(8a)と前記弾性アーム(6a、6b、6c)の端部との間に延在する弾性周辺領域(8b)と、
を備え、
前記接触領域(8a)は、
少なくとも2つのビーム(9)を備え、かつ、前記各周辺領域(8b)を形成する素材量よりも多い素材量を有
し、
前記ビーム(9)の中心軸(A1、A2)は、前記弾性アーム(6a、6b、6c)の長手方向軸(A3)と鋭角(α1、α2)を形成する、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記
少なくとも2つの
ビーム(9)
は、前記弾性アーム(6a、6b、6c)の前記本体に沿って、完全にまたは部分的に画定される、前記少なくとも1つの切り欠き(7a、7b、7c)の
うちの主要な切り欠き(7a)に配置されることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項3】
請求項2に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記少なくとも2つのビーム(9)は、前記外周壁と内周壁(4a、4b)を相互接続させることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記主要な切り欠き(7a)は基本的に半円形であることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記主要な切り欠き(7a)は、前記少なくとも2つのビーム(9)によって少なくとも3つの切除部分(10a、10b)に分割されることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項6】
請求項5に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記少なくとも3つの切除部分(10a、10b)のうち少なくとも2つの切除部分(10b)は、実質的に同様の体積を有することを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の弾性固定器官(1a、1c)であって、前記接触領域(8a)に完全に含まれる前記切除部分(10a)の体積は、前記主要な切り欠き(7a)の前記他の切除部分(10b)の体積より大幅に小さいことを特徴とする、弾性固定器官(1a、1c)。
【請求項8】
請求項5に記載の弾性固定器官(1b)であって、前記少なくとも3つの切除部分(10a、10b)は実質的に同様の体積を有することを特徴とする、弾性固定器官(1b)。
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1c)であって、
少なくとも1つの切り欠き(7a、7b、7c)のうち、1つの主要な切り欠き(7a)
のみを備えることを特徴とする、弾性固定器官(1c)。
【請求項10】
請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b)であって、主要な前記切り欠き(7a)と、前記主要な切り欠き(7a)の前記端部に画定される追加の切り欠き(7b、7c)とを備えることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b)。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記外周壁および内周壁(4a、4b)は異なる形状を有することを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項12】
請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記外周壁および内周壁(4a、4b)はそれぞれ基本的に円形および三角形の形状を有することを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項13】
請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、前記時計構成部品(2)との連結点(11)を備えることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項14】
請求項1から請求項
13のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、
前記時計構成部品(2)を
前記支持要素(3)に留めるためのヒゲ玉であることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項15】
請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)であって、シリコン系の素材からなることを特徴とする、弾性固定器官(1a、1b、1c)。
【請求項16】
計時器(100)の時計ムーブメント(110)のための弾性固定器官-時計構成部品ユニット(120)であって、請求項1から請求項
15のいずれか一項に記載の弾性固定器官(1a、1b、1c)を備えることを特徴とする、ユニット(120)。
【請求項17】
一体型であることを特徴とする、請求項1から請求項
16のいずれか一項に記載のユニット(120)。
【請求項18】
計時器(100)の時計ムーブメント(110)のためのアセンブリ(130)であって、請求項
16または請求項
17に記載の弾性固定器官-時計構成部品ユニット(120)を備え、前記ユニット(120)は支持要素(3)に留められる、アセンブリ(130)。
【請求項19】
請求項1から請求項
18のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアセンブリを備える、時計ムーブメント(110)。
【請求項20】
請求項1から請求項
19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの時計ムーブメント(110)を備える、計時器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官に関する。
【0002】
本発明はまた、弾性固定器官-時計構成部品ユニットおよび同ユニットと支持要素とのアセンブリに関する。
【0003】
本発明はさらに、少なくとも上記アセンブリを備える時計ムーブメントに関する。
【0004】
本発明はまた、上記ムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術では、時計のヒゲ玉など、弾性保持によって弾性固定する器官が既知である。ヒゲ玉は、時計ムーブメントにおいて天真上のヒゲゼンマイアセンブリの一部である。
【0006】
ただし、このような弾性固定器官は、上記アセンブリを製造する際に、複雑で時間がかかり、費用もかかる取り付け作業が必要となるという大きな欠点を有する。これは、これらの器官が天真上で有する保持トルクが低く、制限されているためである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、高い保持トルクを有する弾性固定器官を提供することによって、完全にまたは部分的に前述の欠点を解決することである。具体的には、弾性固定器官-時計構成部品ユニットのアセンブリを支持要素に取り付ける作業を促進/簡略化するために、高い保持トルクを有する弾性固定器官を提供する。
【0008】
そのために、本発明は、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官に関する。弾性固定器官は、時計構成部品に接続可能な外周壁と、支持要素を挿入可能な三角形の開口を画定する内周壁とを備える。弾性固定器官は、三角形の開口の一辺をそれぞれ形成する弾性アームを備える。各弾性アームによって、支持要素は開口に確実に保持される。各アームは、
-上記アームの本体に沿って、完全にまたは部分的に確定される少なくとも1つの切り欠きと、
-特に、開口内に上記支持要素を確実に保持するために、支持要素と協働可能であるアームの弾性接触領域または弾性接触部と、
-接触領域とこの弾性アームの端部との間に延在する、上記アームの弾性周辺領域または弾性周辺部とを備え、
接触領域は、その各周辺領域を形成する素材量よりも多い素材量を有する。
【0009】
このように、前述の特徴のおかげで、弾性固定器官は相当な弾性保持に耐えることができ、したがって高い保持トルクを復元するために抑圧されるとき、大量の弾性エネルギーを保存可能である。これは、具体的には、本弾性固定器官の高い剛性のためであり、この高い剛性は、内部構造および外部構造を備える中実のアームを形成する素材の相当な体積(または量)によって生じる。これらの素材の相当な体積は、より具体的には、支持要素を本固定器官に挿入する際に負荷がかけられる(または負担がかけられる)接触領域に含まれることに留意されたい。
【0010】
さらに、本弾性固定器官は、弾性エネルギーを保存することによって、固定器官を形成するシリコンなどの素材に関して許容可能な緊張が生じるように構成されることに留意されたい。
【0011】
別の実施形態では、
-接触領域は少なくとも2つの具体的に傾斜したビームを備える。ビームは、弾性アームの本体に沿って、完全にまたは部分的に画定される、上記少なくとも1つの切り欠きの主要な切り欠きに配置される。
-上記少なくとも2つのビームは、互いに内部構造および外部構造と接続する。
-主要な切り欠きは基本的に半円形である。
-主要な切り欠きは、少なくとも2つのビームによって少なくとも3つの切除部分に分割される。
-上記少なくとも3つの切除部分のうち少なくとも2つの切除部分は実質的に同様の体積を有する。
-接触領域に完全に含まれる切除部分の体積は、主要な切り欠きの他の切除部分より大幅に小さい。
-上記少なくとも3つの切除部分は実質的に同様の体積を有する。
-ビームの中心軸は、弾性アームの長手方向軸と鋭角を形成する。
-弾性固定器官は、主要な切り欠きである単一の切り欠きを備える。
-弾性固定器官は、主要な切り欠きと、主要な切り欠きの端部に画定される追加の切り欠きとを備える。
-外部構造と内部構造は異なる形状を有する。
-外部構造および内部構造はそれぞれ、基本的に円形および三角形の形状を有する。
-弾性固定器官は、時計部品との連結点を備える。
-弾性固定器官は、ヒゲゼンマイなどの時計構成部品を天真などの支持要素に留めるためのヒゲ玉である。
-弾性固定器官はシリコン系の素材からなる。
【0012】
本発明はまた、このような弾性固定器官を備える、計時器の時計ムーブメントのための弾性固定器官-時計構成部品ユニットに関する。
【0013】
有利には、本ユニットは一体型である。
【0014】
本発明はまた、このような弾性固定器官-時計構成部品ユニットを備える、計時器の時計ムーブメントのためのアセンブリに関する。上記ユニットは支持要素に留められる。
【0015】
本発明はまた、少なくともこのようなアセンブリを備える時計ムーブメントに関する。
【0016】
本発明はまた、このような時計ムーブメントを備える計時器に関する。
【0017】
さらなる特徴および有利点は、添付図を参照して、表示を目的とした、非制限的な以下の説明から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態による、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官の斜視図であり、支持要素は緊張状態にある。
【
図2】本発明の第1実施形態による、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官の斜視図であり、支持要素は静止状態にある。
【
図3】本発明の第2実施形態による、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官の斜視図である。
【
図4】本発明の第3実施形態による、時計構成部品を支持要素に留めるための弾性固定器官の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態による、時計ムーブメントを有する計時器の概略図であり、時計ムーブメントはアセンブリを備え、アセンブリは支持要素と、弾性固定器官-時計構成部品ユニットとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から5は、時計構成部品2を支持要素3に留めるための弾性固定器官1a、1b、1cの複数の実施形態を示す。一例として、弾性固定器官1a、1b、1cは、ヒゲゼンマイなどの時計構成部品2を天真などの支持要素3に留めるためのヒゲ玉であってもよい。
【0020】
これらの実施形態において、この弾性固定器官1a、1b、1cは、計時器100の時計ムーブメント110に設けられる弾性固定器官-時計構成部品ユニット120に含まれていてもよい。このようなユニット120は、たとえばシリコン系の、いわゆる「脆弱な」素材からなる一体型の部品であってもよい。別の代替的実施形態では、この素材は、水晶、コランダム、またはより一般的にはセラミック系であってもよい。
【0021】
本ユニットの代替的実施形態では、弾性固定器官のみが、これらのいわゆる「脆弱な」素材製であってもよく、時計構成部品は別の素材から製造されてもよいことに留意されたい。
【0022】
本ユニット120は、たとえば弾性保持によって支持要素3に留められることによって、時計ムーブメント110のためのアセンブリ130の一部であってもよい。本アセンブリ130は時計学分野での適用のために考案されたことに留意されたい。ただし、本発明は航空、宝石、または自動車分野などの他分野でも完全に実装可能である。
【0023】
このような弾性固定器官1a、1b、1cは、好ましくは平面な上面と、底面ならびに外周壁および内周壁4a、4bとを備える。これらの外周壁および内周壁4a、4bはまた、それぞれ外部構造および内部構造4a、4bとも称され、異なる形状を有する。より具体的には、外部構造4aまたは外周壁4aの事例では、好ましくは基本的に円形である。このような外部構造4aまたは外周壁4aは、時計構成部品2に接続することを意図され、この時計構成部品2に接続するために設けられる少なくとも1つの連結点11を備える。この連結点11は、好ましくはこの外周壁4aから突出する。内部構造4bまたは内周壁4bに関しては、基本的に三角形であり、具体的には正三角形である。本弾性固定器官1a、1b、1cのこの内部構造4bまたは内周壁4bによって、開口5が画定される。開口5は具体的には三角形であり、開口5に支持要素3が挿入されるように意図されている。
【0024】
弾性固定器官1a、1b、1cはまた、弾性アーム6a、6b、6cを含み、具体的には3つの弾性アーム6a、6b、6cを含む。これらのアーム6a、6b、6cは、非限定的および非包括的に、
-弾性固定器官1a、1b、1cの内周壁4bに含まれる内面であって、これらの内面は共に内周壁4bを画定/形成し、したがって本固定器官1a、1b、1cの開口5も画定/形成する内面と、
-弾性固定器官1a、1b、1cの外周壁4aに含まれる外面であって、本固定器官1a、1b、1cの外周壁4aを画定/形成する外面とを備える。
【0025】
したがって、本弾性固定器官1a、1b、1cにおいて、このような弾性アーム6a、6b、6cはそれぞれ、弾性器官1a、1b、1cの上面、底面、内面、外面の一部を含むことが理解される。各アーム6a、6b、6cは、細長い形状、または実質的に細長い形状の一部であり、開口5が形成する三角形の一辺に相当する。つまり、各アームは、開口5が形成する三角形の2つの頂点の間で、長手方向に、または実質的に長手方向に延在する。本弾性固定器官1a、1b、1cにおいて、これらの弾性アーム6a、6b、6cによって、基本的に支持要素3を開口5内に弾性保持することが可能となる。
【0026】
本構成において、各アーム6a、6b、6cは、上記アームの本体に、完全にまたは部分的に沿って配置される少なくとも1つの切り欠き7a、7b、7cを備える。さらに、各アーム6a、6b、6cは、弾性接触領域8aと、弾性周辺領域とを備える。弾性周辺領域は、この弾性接触領域8aと、この弾性アーム6a、6b、6cの端部との間に延在する。弾性接触領域8aは、支持要素3の周辺壁13と協働するように設けられる弾性アーム6a、6b、6cの一部である。したがって、この弾性接触領域8aはまた、弾性アーム6a、6b、6cの弾性接触部8aと称されてもよく、または実際に、弾性アーム6a、6b、6cの弾性接触部分8aと称されてもよいことが理解されよう。このような弾性接触部8aは、対応するアーム6a、6b、6cの一部の上面、底面、内面および外面を備える。アーム6a、6b、6cの一部は、上記アーム6a、6b、6cの端部部分の間に位置する。同様に、各弾性周辺領域はまた、弾性アーム6a、6b、6cの弾性周辺部と呼ばれてもよく、または実際にこのアーム6a、6b、6cの弾性周辺部分と呼ばれてもよい。この弾性周辺部は、対応するアーム6a、6b、6cの端部部分の上面、底面、内面および外面を備える。
【0027】
各アーム6a、6b、6cにおいて、このアーム6a、6b、6cの周辺領域8bまたは周辺部8bは、好ましくは、上記アーム6a、6b、6cの接触領域8a、または接触部8aに並列される。このような接触領域8aは、弾性アーム6a、6b、6cと支持要素3の周辺壁13との間に、「接触点」とも呼ばれる接触面12を備える。この観点から、弾性固定器官1a、1b、1cはここで、3つの接触領域8aを備える。3つの接触領域8aによって、時計構成部品2、たとえばヒゲゼンマイを時計ムーブメント110の中心に正確に配置できる。本弾性固定器官1a、1b、1cにおいて、各接触領域8aの素材量は、周辺領域8bの素材量より大幅に多い。弾性アーム6a、6b、6cのこのような構成によって、弾性固定器官1a、1b、1cは、従来技術の固定器官と比較して、同一の保持に対して大量の弾性エネルギーを保存可能となる。このように大量の弾性エネルギーを固定器官1a、1b、1cに保存することによって、弾性固定器官-時計構成部品ユニット120と支持要素3とのアセンブリ130において、より大きい保持トルクを支持要素に対して得ることが可能となる。つまり、このような過剰なエネルギーを固定器官1a、1b、1cに保存することによって、保持トルクが増加する。さらに、このような弾性固定器官1a、1b、1cの構成によって、従来技術の固定器官と比較して、弾性エネルギー比を6倍から8倍にすることが可能となることに留意されたい。
【0028】
弾性固定器官1a、1b、1cの別の実施形態では、各アーム6a、6b、6cは、切り欠き7a、7b、7cに含まれる主要な切り欠き7aを備える。各アーム6aから6cは切り欠き7a、7b、7cを備えていてもよい。この主要な切り欠き7aは好ましくは、弾性アーム6a、6b、6cの本体に、完全にまたは部分的に沿って配分される。つまり、この主要な切り欠き7aは基本的に半円形の形状を有し、
-各弾性アーム6a、6b、6cに含まれる内周壁の一部に実質的に平行に延在する直径と、
-弾性アーム6a、6b、6cを形成する外周壁および内周壁4a、4bの内面と外面との最大差より大幅に小さい半径とを有する。
【0029】
具体的には、この主要な切り欠き7aは、各弾性アーム6a、6b、6cの接触領域8aならびに周辺領域8bに延在することに留意されたい。
【0030】
主要な切り欠き7aは、少なくとも2つのビーム9によって少なくとも3つの切除部分10a、10bに分割されてもよい。これらの実施形態において、主要な切り欠き7aは2つのビーム9によって3つの切除部分10a、10bに分割される。
【0031】
図1、2および4に例示する第1および第3の実施形態では、3つの10a、10bのうち2つの切除部分10bは、実質的に同様の体積を有する。第3の実施形態においては、各弾性アーム6a、6b、6cは、他の実施形態とは異なり、主要な切り欠き7aである単一の切り欠きを備えることに留意されたい。これに関連して、接触領域8aに完全に含まれる切除部分10aは、主要な切り欠き7aの他の切除部分10bの体積よりも大幅に小さい体積を有する。
【0032】
第2の実施形態では、
図3に例示するように、3つの切除部分10a、10bは実質的に同様の体積と形状を有し、具体的には基本的に三角形である。
【0033】
弾性固定器官1a、1b、1cのこれらの様々な実施形態では、接触領域8aに完全に含まれる切除部分10aは、基本的に三角形であることに留意されたい。
【0034】
主要な切り欠き7aを切除部分10a、10bに分割するビーム9は、好ましくは傾斜している。異なる実施形態では、これらの傾斜したビーム9の数は2つであり、各弾性アーム6a、6b、6cの接触領域8aに含まれる。これらのビーム9によって、外周壁と内周壁4a、4bは相互接続される。ビーム9の中心軸A1、A2は、弾性アーム6a、6b、6cの長手方向軸A3と鋭角α1、α2を形成する。この長手方向軸A3は、このアーム6a、6b、6cの最大径に沿って延在することに留意されたい。このような角度α1、α2は実質的に同様であってもよく、45度と70度との間であってもよく、好ましくは55度である。
【0035】
ビーム9の中心軸A1、A2はまた、互いに鋭角α3を形成する。このような鋭角α3は40度と90度との間であってもよく、好ましくは70度である。
【0036】
本弾性固定器官1a、1bは、弾性固定器官1a、1bのアーム6a、6b、6cの弾性を調整可能とするために、追加の切り欠き7b、7cを備えていてもよい。たとえば、第1の実施形態では、弾性固定器官1aは、各弾性アーム6a、6b、6cの各端部に配置される、基本的に円形の3つの追加の切り欠き7bを備える。別の実施例では、固定器官1bの第2の実施形態は、各弾性アーム6a、6b、6cに2つの追加の切り欠き7cを備える。2つの追加の切り欠き7cは、主要な切り欠き7aを制限し、この主要な切り欠き7aの端部に画定される。つまり、これらの2つの追加の切り欠き7cはそれぞれ、各弾性アーム6a、6b、6cの2つの周辺領域に含まれる。
【0037】
本発明はまた、弾性固定器官-時計構成部品ユニット120と支持要素3のアセンブリ130を実現するための方法に関する。本方法は、弾性固定器官-時計構成部品ユニット120を支持要素3に固定するステップを備える。このステップの間、支持要素3は、弾性固定器官1a、1b、1cの開口5に挿入される。この挿入の際、支持要素3の周辺壁13の一部は、弾性アーム6a、6b、6cの接触面12と接触する。このような挿入によって、弾性アーム6a、6b、6cは、周辺壁13の一部が接触面12に行使する緊張力を受けて、支持要素3の中心軸Cに対して半径方向Bに沿って変形を生じる。この挿入によって生じる効果は
図1から分かる。
図1は、緊張状態にある弾性固定器官1aの第1の実施形態に関する。弾性アーム6a、6b、6cのこの変形は、基本的にアーム6a、6b、6cの接触領域8aにおいて発生する。これらの接触領域8aでは、アーム6a、6b、6cの強化要素として機能する傾斜したビーム9によって、ヒゲ玉が弾性保持に関与する軸に取り付けられるとき、
図1に図示するヒゲ玉の外部20が緊張/引張下に置かれる。これに関連して、これらのビームは、具体的には
図1に示す矢印Dの方向に沿って、圧縮を受けることに留意されたい。したがってこのような緊張状態では、弾性固定器官1a、1b、1cは大量の弾性エネルギーを保存し、それによって、相当な保持トルクを提供し、具体的には弾性保持によって、最適のヒゲ玉による保持が可能となる。