(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】検査装置および検査用画像の撮像方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2021532627
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028160
(87)【国際公開番号】W WO2021009884
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴紘
(72)【発明者】
【氏名】稲浦 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 智也
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145797(JP,A)
【文献】特開2002-310628(JP,A)
【文献】特開2011-232825(JP,A)
【文献】特開平11-201911(JP,A)
【文献】特開2017-76900(JP,A)
【文献】特表2015-503084(JP,A)
【文献】特開2000-266691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品が配置された基板の検査用画像を用いて検査を行う検査装置であって、
固定焦点型のカメラと、
前記カメラを前記基板に対して相対的に昇降させる昇降機構と、
前記複数の部品の高さ情報を取得し、前記カメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面が前記カメラの被写界深度内に収まるように、所定の設定手法により前記基板の表面から前記各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を設定する設定部と、
前記基準位置に焦点が合うように前記カメラを相対的に昇降させてから前記検査用画像を撮像するように、前記昇降機構と前記カメラとを制御する制御部と、
を備え
、
前記設定部は、前記所定の設定手法として、複数の設定手法を用いることが可能であり、1の前記基板を縦横に区切ることにより複数の領域に分割し、該分割した領域毎に配置されている前記部品の高さ情報に基づいて、前記複数の設定手法のうち領域毎に異なる前記設定手法を用いて前記基準位置を設定可能である
検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記設定部は、前記所定の設定手法として、前記各部品の高さの平均値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの中央値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの中点値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの最頻値を前記距離として前記基準位置を設定する手法の
うち、いずれか
複数の設定手法を用いる
ことが可能である
検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
前記設定部は、前記所定の設定手法として、前記最頻値を用いて前記基準位置を設定する手法を用いる際、前記最頻値が複数存在する場合には該複数の最頻値をそれぞれ用いて複数の前記基準位置を設定し、
前記制御部は、複数の前記基準位置のそれぞれで前記検査用画像を撮像するように、前記昇降機構と前記カメラとを制御する
検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の検査装置であって、
前記設定部は、前記基板に配置される予定の前記複数の部品の高さ情報を取得して前記基準位置を予め設定した後に、前記基板に配置される予定の前記複数の部品のうち一部の部品が配置されなかった場合には、前記一部の部品を除いた他の部品の高さに応じて前記基準位置を設定し直す
検査装置。
【請求項5】
固定焦点型のカメラにより、複数の部品が配置された基板の検査用画像を撮像する検査用画像の撮像方法であって、
(a)前記複数の部品の高さ情報を取得し、前記カメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面が前記カメラの被写界深度内に収まるように、所定の設定手法により前記基板の表面から前記各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を設定するステップと、
(b)前記基準位置に焦点が合うように前記基板に対して前記カメラを相対的に昇降させてから前記検査用画像を撮像するステップと、
を含
み、
前記ステップ(a)では、前記所定の設定手法として、複数の設定手法を用いることが可能であり、1の前記基板を縦横に区切ることにより複数の領域に分割し、該分割した領域毎に配置されている前記部品の高さ情報に基づいて、前記複数の設定手法のうち領域毎に異なる前記設定手法を用いて前記基準位置を設定可能である
検査用画像の撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、検査装置および検査用画像の撮像方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に実装された部品の実装状態を検査用画像を用いて検査する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この検査装置は、焦点距離が一定の距離に固定された固定焦点型のカメラを、垂直移動可能に構成する。また、検査装置は、基板に実装された部品のそれぞれの高さ(厚み)を抽出してカメラの目的の高さ位置を設定し、その高さ位置にカメラを垂直移動させることで焦点を合わせて検査用画像を撮像している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した検査装置では、基板に実装された部品の1つ1つの高さに応じて、カメラを垂直移動させて高さ位置を調整するため、高さ位置の調整回数が増えることになる。このため、検査用画像の撮像に時間を要し、迅速な検査を行うことが困難となる。
【0005】
本開示は、基板に実装された複数の部品の検査用画像を、固定焦点型のカメラで速やかに撮像することにより、迅速な検査を可能とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の検査装置は、
複数の部品が配置された基板の検査用画像を用いて検査を行う検査装置であって、
固定焦点型のカメラと、
前記カメラを前記基板に対して相対的に昇降させる昇降機構と、
前記複数の部品の高さ情報を取得し、前記カメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面が前記カメラの被写界深度内に収まるように、所定の設定手法により前記基板の表面から前記各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を設定する設定部と、
前記基準位置に焦点が合うように前記カメラを相対的に昇降させてから前記検査用画像を撮像するように、前記昇降機構と前記カメラとを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の検査装置は、カメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面がカメラの被写界深度内に収まるように、所定の設定手法により基板の表面から各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を設定する。そして、基準位置に焦点が合うように、基板に対してカメラを相対的に昇降させてから検査用画像を撮像する。これにより、1の検査用画像にカメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面を写し出すことができるから、各部品の撮像面にそれぞれ焦点が合うようにカメラを昇降させて各部品の検査用画像を撮像するものに比して、検査用画像を速やかに撮像することができる。したがって、基板に実装された複数の部品の検査用画像を、固定焦点型のカメラで速やかに撮像することにより、迅速な検査を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】検査装置40の基板カメラ53と移動機構54の構成の概略を示す説明図。
【
図4】基板Sを複数の領域に分割した一例を示す説明図。
【
図5】検査関連処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図6】基準位置設定処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】基板種の各領域毎の代表値と基準位置Fcとを示す説明図。
【
図8】検査用画像撮像処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】変形例の検査関連処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図12】基準位置再設定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
図1は部品実装システム10の一例を示す説明図であり、
図2は検査装置40の基板カメラ53と移動機構54の構成の概略を示す説明図である。
【0011】
部品実装システム10は、
図1に示すように、リールやトレイなどから部品Pを採取して基板S上に実装する実装装置20と、複数の部品Pが実装された基板Sを検査する検査装置40と、実装装置20や検査装置40に関する情報を管理する管理装置80とを備える。実装装置20と検査装置40と管理装置80とは、ネットワークとしてのLAN12に接続されており、互いに情報をやり取り可能である。なお、
図1では、実装装置20と検査装置40とを1台ずつ図示するが、実装装置20や検査装置40を複数台備えてもよい。本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)および上下方向(Z軸)は、
図1に示す通りとする。また、「実装」とは、部品Pを基板S上に配置、装着、挿入、接合、接着することなどを含む。
【0012】
検査装置40は、各種制御を実行する検査制御ユニット41と、部品Pが実装された基板SのX方向への搬送と固定とを実行する基板処理ユニット50と、基板Sの検査時に検査用画像の撮像処理などを実行する検査処理ユニット52とを備える。また、検査装置40は、各種情報の表示と作業者による各種入力操作とが可能な操作パネル56と、通信を行うための入出力インタフェース(I/F)59とを備える。
【0013】
検査処理ユニット52は、基板S上の基板IDや基板S上に配置された複数の部品Pを含む検査用画像を撮像する基板カメラ53と、基板カメラ53をY方向およびZ方向に移動させる移動機構54とを備える。基板カメラ53は、光学系の焦点距離が固定された固定焦点型のカメラとして構成され、図示は省略するが、基板Sに光を照射する照明部と、受光により発生した電荷を出力する撮像素子と、出力された電荷に基づいて画像データを生成する画像処理部とを備える。
図2に示すように、検査装置40の基台40aには、基板処理ユニット50により搬送される基板Sを跨ぐように配置された門型のフレーム55が固定されている。移動機構54は、フレーム55の梁部55aにY方向に移動可能に取り付けられたY方向スライダ54aと、Y方向スライダ54aにZ方向に移動可能に取り付けられたZ方向スライダ54bとを備える。基板カメラ53は、Z方向スライダ54bに固定されており、Y方向スライダ54aの移動やZ方向スライダ54bの移動に伴って基板カメラ53がY方向に移動したりZ方向に移動(昇降)したりする。各スライダは、それぞれ駆動モータにより駆動される。なお、基板Sは、基板処理ユニット50によりX方向に移動して、X方向における所定範囲が基板カメラ53の下方に位置するように固定される。検査処理ユニット52は、基板Sが固定された状態で、移動機構54により基板カメラ53をY方向へ移動させて撮像範囲を合わせると共に固定の焦点距離に応じたZ方向の高さ位置へ基板カメラ53を移動させて焦点を合わせてから、基板カメラ53により検査用画像を撮像する。なお、基板カメラ53は、厳密に焦点が合う焦点距離に上面(撮像面)が位置する部品Pだけでなく、焦点が合っているように見える被写界深度内に上面が位置する部品Pであれば、ボケのない状態で検査用画像に写すことができる。
【0014】
操作パネル56は、各種情報を表示する表示画面57と、作業者の入力操作を受け付ける操作ボタン58とを備える。表示画面57は、液晶ディスプレイとして構成されており、検査装置40の検査情報や設定情報、画像などを表示する。操作ボタン58は、表示画面57中の選択カーソルを上下左右に移動させるカーソルボタン、選択内容を決定する決定ボタン、入力をキャンセルするキャンセルボタンなどを備える。
【0015】
検査制御ユニット41は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM43、作業領域として用いられるRAM44、各種データを記憶するHDD45などを備え、これらはバスを介して接続されている。検査制御ユニット41は、入出力インタフェース59を介して、基板処理ユニット50や検査処理ユニット52の移動機構54へ制御信号を出力したり、検査処理ユニット52の基板カメラ53に撮像信号を出力したり、操作パネル56に表示信号を出力したり、管理装置80へ情報を送信したりする。また、検査制御ユニット41は、入出力インタフェース59を介して、基板処理ユニット50からの信号を入力したり、基板カメラ53が撮像した検査用画像を取得したり、操作パネル56から操作信号を入力したり、管理装置80から情報を受信したりする。
【0016】
管理装置80は、制御装置81を備え、実装装置20や検査装置40を管理する。制御装置81は、CPU82を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM83、作業領域として用いられるRAM84、各種データを記憶するHDD85などを備え、これらはバスを介して接続されている。また、管理装置80は、作業者が各種指示を入力するキーボードおよびマウス等の入力装置87と、各種情報を表示するディスプレイ88と、通信を行うための入出力インタフェース(I/F)89とを備える。HDD85には、実装装置20での実装や検査装置40での検査に用いられる各種情報などが記憶されている。
図3は実装予定情報86の一例を示す説明図である。この実装予定情報86には、例えば、生産予定のジョブに関し、基板Sの基板種に対応付けて、基板Sを複数に分割した領域の番号と、部品Pの部品種別、部品PのX方向の幅とY方向の長さとZ方向の高さなどのサイズ、部品Pの配置位置などの情報が含まれている。なお、配置位置の情報は、例えば部品Pの中心のXY座標を示す情報である。また、基板S内の領域は、検査装置40の基板カメラ53の撮像範囲に基づいて基板Sを複数に分割した領域などとする。
図4は基板Sを複数の領域に分割した一例を示す説明図である。図示するように、基板S内を縦横に区切ることで複数の領域(
図4では領域1~6)に分割するものとした。なお、基板Sが複数の子基板を有する多面取り基板である場合、各子基板を1の領域などとしてもよいし、各子基板をさらに複数の領域に分けてもよい。
【0017】
以下は、検査装置40の動作、特に、複数の部品Pが実装された基板Sの検査に関する動作の説明である。
図5は検査関連処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、検査制御ユニット41のHDD45に記憶され、CPU42により実行される。このルーチンが実行されると、CPU42は、まず、実装予定情報を取得したか否かを判定する(S100)。実装予定情報は、例えば、ジョブの生産予定が作成された際などの所定タイミングで管理装置80から検査装置40に送信されるものとする。CPU42は、実装予定情報を取得したと判定すると、画像撮像時の基板カメラ53の高さの基準となる基準位置Fcを設定する基準位置設定処理を実行する(S110)。
【0018】
図6は基準位置設定処理の一例を示すフローチャートである。基準位置設定処理では、CPU42は、まず、実装予定情報から基板Sを分割した領域の情報と実装予定の部品Pの高さの情報とを取得し(S200)、処理対象の領域Nに値1をセットする(S205)。次に、CPU42は、S200で取得した情報から領域N内に配置される各部品Pの高さのヒストグラムなど分布の統計を取り(S210)、その結果に基づいて、各部品Pの高さの代表値を最頻値、中点値、中央値、平均値のいずれかに決定する(S215)。S215では、CPU42は、統計を取ったデータ数である部品Pの数に応じて代表値を決定したり、高さの分布で外れ値となる部品Pの数やその部品Pの検査の重要度や要求される検査精度に応じて代表値を決定したりする。例えば、CPU42は、データ数が所定数以上の場合に最頻値に決定し、所定数未満の場合に最頻値以外に決定するなど、データ数が比較的多い場合に最頻値に決定する。また、CPU42は、部品Pの検査の重要度などから、外れ値の影響を除きたい場合に中央値に決定し、外れ値の影響を高めたい場合に最大高さと最小高さの中間の中点値に決定する。また、CPU42は、外れ値となる部品Pの数から、外れ値の影響が小さかったり外れ値が含まれても問題ない場合には、平均値に決定する。
【0019】
こうして代表値を決定すると、CPU42は、代表値を最頻値に決定したか否かを判定し(S220)、最頻値に決定したと判定すると、領域N内の各部品Pの高さの最頻値を演算する(S225)。続いて、CPU42は、演算した最頻値が1つであるか否かを判定し(S230)、最頻値が1つであれば、その1の最頻値を基準位置Fcに設定し(S235)、最頻値が1つでなく複数であれば、複数の最頻値をそれぞれ基準位置Fcに設定する(S240)。高さの分布の傾向によっては最頻値が複数になるが、CPU42は、最頻値が所定個数(例えば2個や3個など)までは複数の最頻値に決定し、所定個数以上になると最頻値以外の中点値や中央値,平均値に決定するものなどとしてもよい。
【0020】
また、CPU42は、S220で代表値を最頻値に決定していないと判定すると、中点値に決定したか否か(S245)、中央値に決定したか否か(S250)、をそれぞれ判定する。CPU42は、中点値に決定したと判定すると、領域N内の各部品Pの最大高さと最小高さから中点値を演算して基準位置Fcに設定する(S255)。また、CPU42は、S250で中央値に決定したと判定すると、領域N内の各部品Pの高さの中央値を演算して基準位置Fcに設定する(S260)。また、CPU42は、S245,S250で中点値や中央値ではない、即ち平均値に決定したと判定すると、領域N内の各部品Pの高さの平均値を演算して基準位置Fcに設定する(S265)。
【0021】
こうして基準位置Fcを設定すると、CPU42は、基準位置Fcを未設定の領域があるか否かを判定する(S270)。CPU42は、未設定の領域があると判定すると、領域Nを値1インクリメントして(S275)、S210に戻り処理を行い、未設定の領域がないと判定すると、基準位置設定処理を終了する。基準位置設定処理の実行により、
図7に示すように、各基板種の基板S内の領域毎に、最頻値や中点値、中央値、平均値のいずれかを各部品Pの高さの代表値として基準位置Fcが設定されて、HDD45に記憶されることになる。なお、
図7では、領域5において、最頻値が複数(ここでは2つ)あったために、2つの基準位置Fcが設定されている。
【0022】
CPU42は、S110の基準位置設定処理を実行するか、S100で実装予定情報を取得してないと判定すると、実装装置20から搬送される検査対象の基板Sを受け入れたか否かを判定し(S120)、基板Sを受け入れてないと判定するとS100に戻る。一方、CPU42は、基板Sを受け入れたと判定すると、検査用画像撮像処理を実行し(S130)、検査用画像を用いた検査処理を実行して(S140)、S100に戻る。
【0023】
図8は検査用画像撮像処理の一例を示すフローチャートである。検査用画像撮像処理では、CPU42は、まず、領域Nに値1をセットして(S300)、受け入れた基板Sの基板種の基準位置Fcのうち、領域Nの基準位置FcをHDD45から読み出す(S310)。次に、CPU42は、領域N上に基板カメラ53が位置するように基板カメラ53と基板SとをXY方向に移動させる(S320)。S320では、CPU42は、領域Nを撮像領域として、その領域N上に基板カメラ53が移動するように移動機構54のY方向スライダ54aを駆動させる。また、CPU42は、必要であれば、基板SがX方向に移動して固定されるように基板処理ユニット50を制御する。次に、CPU42は、S310で読み出した基準位置Fcに焦点が合う高さHcに基板カメラ53がZ方向に移動(昇降)するように移動機構54を制御する(S330)。即ち、CPU42は、高さHcに基板カメラ53が昇降するように移動機構54のZ方向スライダ54bを駆動させる。
【0024】
次に、CPU42は、基板カメラ53により検査用画像を撮像し(S340)、今回の領域Nの基準位置Fcが複数あるか否かを判定する(S350)。例えば、
図7の領域5の場合など、CPU42は基準位置Fcが複数あると判定すると、未撮像の基準位置Fcがあるか否かを判定し(S360)、未撮像の基準位置Fcがあると判定すると、S330に戻り処理を行う。このため、各基準位置Fcに応じた高さHcでそれぞれ検査用画像が撮像されるから、1の領域で複数の検査用画像が撮像されることになる。CPU42は、S350で基準位置Fcが複数ないと判定したり、S360で未撮像の基準位置Fcがないと判定したりすると、未撮像の領域があるか否かを判定する(S370)。CPU42は、未撮像の領域があると判定すると、領域Nを値1インクリメントして(S380)、S310に戻り処理を行い、未撮像の領域がないと判定すると、検査用画像撮像処理を終了する。この検査用画像撮像処理の実行により、基板Sの領域毎に、それぞれ検査用画像が撮像され、複数の基準位置Fcが設定された領域では複数枚の検査用画像が撮像される。なお、1の領域に複数枚の検査用画像が撮像された場合、検査処理では各検査用画像を用いて部品Pの検査が行われる。その際、CPU42は、各部品Pの高さに応じて、いずれの高さHcで撮像された検査用画像であればボケのない状態で写っているかを把握できるから、部品P毎に適した検査用画像を用いて検査を精度よく行うことができる。
【0025】
ここで、
図9は比較例の基準位置Fcを示す説明図であり、
図10は本実施形態の基準位置Fcを示す説明図である。
図9の比較例では、基準位置Fcを基板Sの上面に設定するものを示し、
図10の本実施形態では、例えば部品Pの高さの平均値などの代表値を基準位置Fcに設定するものを示す。比較例では、基準位置Fcを基板Sの上面に設定するため、一部の部品Pの撮像面である上面が被写界深度から外れる場合がある。その場合、各部品Pの上面がボケた状態の検査用画像が撮像されて検査精度が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、基板Sの上面ではなく、各部品Pの高さに応じた基準位置Fcを設定し、その基準位置Fcに基づく高さHcに基板カメラ53を昇降させるから、
図10に示すように、複数の部品Pの上面を被写界深度内に収めた状態で検査用画像を撮像することができる。このため、各部品Pの上面をボケのない状態で検査用画像に写すことができるから、検査精度を向上させることができる。また、複数の部品Pの上面のそれぞれに焦点を合わせるために、複数の部品Pの高さのそれぞれに応じた高さHcで検査用画像を繰り返し撮像する必要もないから、検査用画像の撮像に多くの時間がかかって検査時間が長くなるのを防止することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の検査装置40が本開示の検査装置に相当し、基板カメラ53がカメラに相当し、移動機構54(Z方向スライダ54b)が昇降機構に相当し、検査関連処理ルーチンのS110の基準位置設定処理を行う検査制御ユニット41のCPU42が設定部に相当し、検査関連処理ルーチンのS130の検査用画像撮像処理を行う検査制御ユニット41のCPU42が制御部に相当する。なお、本実施形態では、検査装置40の動作を説明することにより本開示の検査用画像の撮像方法の一例も明らかにしている。
【0027】
以上説明した検査装置40では、固定焦点型の基板カメラ53の被写界深度内に各部品Pの上面が収まるように、各部品Pの高さの代表値に基づいて基準位置Fcを設定し、基準位置Fcに焦点が合う高さHcに基板カメラ53を昇降させてから検査用画像を撮像する。これにより、基板Sに実装された複数の部品Pの検査用画像を、基板カメラ53で速やかに撮像して迅速な検査を可能とすることができる。また、各部品Pの上面をできるだけボケのない状態で撮像することができるから、検査精度を向上させることができる。
【0028】
また、各部品Pの高さの代表値として最頻値、中点値、中央値、平均値のいずれかを用いる簡易な設定手法で、基準位置Fcを速やかに設定することができる。また、複数の最頻値をそれぞれ用いて複数の基準位置Fcを設定するから、それぞれの最頻値に応じた適切な基準位置Fcを設定し、各部品Pの上面をより適切に検査用画像に写して検査精度を向上させることができる。また、1の基板Sを複数の領域に分割し、領域毎に異なる設定手法で基準位置Fcを設定するから、領域毎に部品Pの高さの傾向が異なる場合でも適切な基準位置Fcを設定して検査精度を向上させることができる。
【0029】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、実装予定情報を取得した際に予め設定した基準位置Fcを用いて検査用画像を撮像したが、これに限られるものではない。
図11は、変形例の検査関連処理ルーチンを示すフローチャートである。変形例では、上述した実施形態と同じ処理には同じステップ番号を付して詳細な説明は省略する。変形例の検査関連処理ルーチンでは、CPU42は、S120で検査対象の基板Sを受け入れたと判定すると、その基板Sの実装実績情報を管理装置80から取得する(S122)。なお、実装装置20は、1の基板Sの実装処理が完了する度に、基板Sの基板ID(識別情報)と、その基板Sへの部品Pの実装状況とを管理装置80に送信する。また、実装装置20は、エラーなどにより基板Sに予定通りに実装できなかった部品P即ち未実装の部品Pがあれば、その部品Pの部品種や配置位置などの情報を管理装置80に送信する。管理装置80は、それらの情報を基板Sの基板IDに対応付けて実装実績情報としてHDD85に記憶しておく。CPU42は、S122でその実装実績情報を取得すると、受け入れた基板Sに未実装の部品Pがあるか否かを判定する(S124)。CPU42は、未実装の部品Pがあると判定すると
図12の基準位置再設定処理を実行してから(S126)、S130の処理に進み、未実装の部品Pがないと判定するとS126をスキップしてS130の処理に進む。
【0031】
図12(S126)の基準位置再設定処理では、CPU42は、まず、実装実績情報から、未実装の部品Pの部品種とその配置位置が含まれる領域の情報とを取得する(S200b)。基準位置再設定処理では、CPU42は、S200bで取得した領域の基準位置Fcを再設定することになる。このため、CPU42は、取得した領域を再設定が必要な領域Nに順に設定し(S205b)、その領域Nにおける未実装の部品P以外の他の部品P、即ち実装済みの各部品Pの高さの情報と、その領域Nにおける代表値が最頻値や中点値、中央値、平均値のいずれかであるかの情報とを取得する(S212)。そして、CPU42は、未実装の部品P以外の実装済みの各部品Pの高さを用いてS220~S265の処理を行って基準位置Fcを設定し直す。続いて、CPU42は、他の再設定領域があるか否かを判定し(S270b)、他の再設定領域があると判定すると、S205bに戻り処理を行い、他の再設定領域がないと判定すると、基準位置再設定処理を終了する。このように、変形例では、実装されなかった部品Pがある場合、その部品Pを除いた実装済みの部品Pの高さから、適切な基準位置Fcを設定し直すのである。このため、部品Pの実際の実装状況により適した検査用画像を撮像することができるから、検査精度を向上させることができる。なお、この変形例において、領域Nにおける未実装の部品Pを除いて、実装済みの各部品Pの高さの分布の統計を取り直し、その結果に基づいて、代表値を最頻値、中点値、中央値、平均値のいずれかに決定した上で、基準位置Fcを設定し直すものとしてもよい。こうすれば、未実装の部品Pを除いて、実装済みの各部品Pの高さの傾向により適した基準位置Fcを設定し直すことができる。
【0032】
上述した実施形態では、基板Sの各領域で異なる基準位置Fcを設定可能としたが、これに限られず、基板Sの各領域で共通の基準位置Fcを設定するなど、基板Sに対して1の基準位置Fcを設定してもよい。また、最頻値が複数ある場合に複数の基準位置Fcを設定したが、これに限られるものではない。例えば、最頻値に該当する複数種の部品Pの検査の重要度などに応じて、いずれか1の最頻値を基準位置Fcに設定してもよい。あるいは、複数の最頻値が比較的近い値であれば、いずれか1の最頻値を基準位置Fcに設定してもよいし、複数の最頻値の平均を基準位置Fcに設定してもよい。
【0033】
上述した実施形態では、各部品Pの高さの最頻値、中点値、中央値、平均値のうちいずれかを用いて基準位置Fcを設定したが、これに限られず、各部品Pの高さの代表値を用いて基準位置Fcを設定すればよい。例えば、最頻値、中点値、中央値、平均値の4つから代表値を決定するものに限られず、いずれか2つまたは3つから代表値を決定してもよいし、これら以外に、例えば検査の重要度などが比較的高い部品Pの高さに重み付けした重み付け平均値など別の手法で代表値を決定してもよい。あるいは、複数の手法のうちから代表値を決定するものに限られず、作業者が指示した手法で代表値を決定してもよいし、予め定められた手法で代表値を決定してもよい。また、基準位置Fcは、各部品Pの高さに応じた距離だけ基板Sの上面から離れた距離に設定されるものであれば、高さの代表値を用いるものに限られず、如何なる手法を用いて距離を決定してもよい。例えば被写界深度は、厳密に焦点が合う位置よりも前方(基板カメラ53側)の前方被写界深度と後方の後方被写界深度とが異なり、通常は後方被写界深度が前方被写界深度の2倍程度となる。このため、基板カメラ53の被写界深度と、前方被写界深度および後方被写界深度との比率とを考慮して、各部品Pの高さの代表値に所定値を加えた値を基準位置Fcに設定するものなどとしてもよい。こうすれば、各部品Pの上面を被写界深度内により収めやすい基準位置Fcを設定することができる。
【0034】
上述した実施形態では、基板Sの上面に配置された部品Pを検査したが、これに限られず、基板Sの下面に配置された部品Pを検査するものなどとしてもよい。即ち、各部品の撮像面が基板カメラ53の被写界深度内に収まるように、基板Sの表面(配置面)から各部品Pの高さに応じた距離だけ離れた基準位置Fcを設定するものであればよい。
【0035】
上述した実施形態では、検査装置40が基準位置Fcを設定したが、これに限られず、管理装置80が基準位置Fcを設定して検査装置40に送信してもよい。また、実装装置20が、固定焦点型のカメラと、少なくともZ方向にカメラを昇降させる昇降機構とを備え、カメラで撮像した画像を用いて検査を行う機能を備えるもの、即ち実装装置20が検査装置としても機能するものとしてもよい。そのようにする場合、実装装置20が、基準位置Fcを設定してもよい。
【0036】
ここで、本開示の検査装置は、以下のように構成してもよい。本開示の検査装置において、前記設定部は、前記所定の設定手法として、前記各部品の高さの平均値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの中央値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの中点値を前記距離として前記基準位置を設定する手法、前記各部品の高さの最頻値を前記距離として前記基準位置を設定する手法のいずれかを用いるものとしてもよい。こうすれば、各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を、比較的簡易な設定手法で速やかに設定することができる。
【0037】
本開示の検査装置において、前記設定部は、前記所定の設定手法として、前記最頻値を用いて前記基準位置を設定する手法を用いる際、前記最頻値が複数存在する場合には該複数の最頻値をそれぞれ用いて複数の前記基準位置を設定し、前記制御部は、複数の前記基準位置のそれぞれで前記検査用画像を撮像するように、前記昇降機構と前記カメラとを制御するものとしてもよい。こうすれば、最頻値が複数算出された場合にそれぞれの最頻値に応じた適切な基準位置を設定することができるから、各部品の撮像面をより適切に検査用画像に写して検査精度を向上させることができる。
【0038】
本開示の検査装置において、前記設定部は、1の前記基板を複数の領域に分割し、該分割した領域毎に配置されている前記部品の高さ情報に基づいて領域毎に異なる前記設定手法により前記基準位置を設定可能であるものとしてもよい。こうすれば、基板の領域毎に部品の高さの傾向が異なる場合でも領域毎に適切な基準位置を設定することができるから、各部品の撮像面をより適切に検査用画像に写して検査精度を向上させることができる。
【0039】
本開示の検査装置において、前記設定部は、前記基板に配置される予定の前記複数の部品の高さ情報を取得して前記基準位置を予め設定した後に、前記基板に配置される予定の前記複数の部品のうち一部の部品が配置されなかった場合には、前記一部の部品を除いた他の部品の高さに応じて前記基準位置を設定し直すものとしてもよい。こうすれば、基準位置を予め設定しておくことで、検査用画像の撮像を速やかに開始することができる。また、一部の部品が配置されなかった場合には基準位置を設定し直すことで、他の部品の撮像面をより適切に検査用画像に写して検査精度を向上させることができる。
【0040】
本開示の検査用画像の撮像方法は、
固定焦点型のカメラにより、複数の部品が配置された基板の検査用画像を撮像する検査用画像の撮像方法であって、
(a)前記複数の部品の高さ情報を取得し、前記カメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面が前記カメラの被写界深度内に収まるように、所定の設定手法により前記基板の表面から前記各部品の高さに応じた距離だけ離れた基準位置を設定するステップと、
(b)前記基準位置に焦点が合うように前記基板に対して前記カメラを相対的に昇降させてから前記検査用画像を撮像するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0041】
本開示の検査用画像の撮像方法では、上述した検査装置と同様に、1の検査用画像にカメラの撮像範囲内にある各部品の撮像面を写し出すことができるから、検査用画像を速やかに撮像することができる。なお、検査用画像の撮像方法において、検査装置の種々の態様を採用してもよいし、検査装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、部品が配置された基板を検査する技術分野などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 部品実装システム、12 LAN、20 実装装置、40 検査装置、40a 基台、41 検査制御ユニット、42 CPU、43 ROM、44 RAM、45 HDD、50 基板処理ユニット、52 検査処理ユニット、53 基板カメラ、54 移動機構、54a Y方向スライダ、54b Z方向スライダ、55 フレーム、55a 梁部、56 操作パネル、57 表示画面、58 操作ボタン、59 入出力インタフェース、80 管理装置、81 制御装置、82 CPU、83 ROM、84 RAM、85 HDD、86 実装予定情報、87 入力装置、88 ディスプレイ、89 入出力インタフェース、P 部品、S 基板。