(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/569 20210101AFI20221215BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/298
H01M50/204 401D
(21)【出願番号】P 2021543732
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032510
(87)【国際公開番号】W WO2021044952
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019161427
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 和則
(72)【発明者】
【氏名】青木 定之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 修
(72)【発明者】
【氏名】綿引 祥隆
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-4185(JP,A)
【文献】特開2018-18612(JP,A)
【文献】特開平11-162425(JP,A)
【文献】特表2018-530886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置される複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの端子側に配置され、前記複数の電池セルの状態を検出するための配線部材と、
を備え、
前記配線部材は、
絶縁性を有する絶縁層と、
前記絶縁層の一方面側に配置され、前記複数の電池セルの状態を検出するための複数の検出線を含む配線層と、
前記絶縁層の他方面側において、少なくとも前記配線層に対応する位置に配置され、グランド電位を有するグランド層と、
が積層されており、
前記グランド層は、導電層に複数の貫通孔が形成された前記グランド電位を有する導電パターンであり、
前記導電パターンは、少なくとも1つの前記検出線に対応して配置される第1パターン部と、少なくとも1つの他の前記検出線に対応して配置される第2パターン部とを少なくとも有し、
前記第2パターン部の面積率は、前記第1パターン部の面積率よりも大きいことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記複数の検出線は、互いに異なる配線長を有し、
前記第1パターン部に対応して配置される前記検出線の配線長は、前記第2パターン部に対応して配置される前記検出線の配線長よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の検出線は、第1検出線と、前記第1検出線に比べて、配線長が長く配線幅が広い第2検出線とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備えた電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV)や駆動の一部を電気モータで補助するハイブリッド自動車(HEV)が各自動車メーカーで開発され、その電源として高容量で高出力な二次電池が求められている。このような二次電池としては、積層配置された複数の電池セルを含む電池モジュールが知られており、電池モジュールの各電池セルの電圧を検出するための配線部材は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
上記特許文献1には、正極および負極の電極端子を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、電極端子に接続される複数の接続部材と、接続部材を保持する保持部を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタと、を備えた電池配線モジュールが開示されている。この電池配線モジュールでは、バスバーに接続され各単電池の電圧を検知する電圧検知用の導電路が形成されたFPC(Flexible printed circuits)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように、たとえば、電池セルの電圧など電池セルの状態を検出する際に、電池セルからの不要輻射の影響により、電池セルの状態が精度良く検出できないという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、電池セルからの不要輻射の影響により電池セルの状態が精度良く検出できなくなるのを抑制することが可能な電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池モジュールは、積層配置される複数の電池セルと、前記複数の電池セルの端子側に配置され、前記複数の電池セルの状態を検出するための配線部材と、を備え、前記配線部材は、絶縁性を有する絶縁層と、前記絶縁層の一方面側に配置され、前記複数の電池セルの状態を検出するための複数の検出線を含む配線層と、前記絶縁層の他方面側において、少なくとも前記配線層に対応する位置に配置され、グランド電位を有するグランド層と、が積層されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池セルからの不要輻射の影響により電池セルの状態が精度良く検出できなくなるのを抑制することが可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池モジュールの斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電池モジュールの分解斜視図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る電池モジュールの電池セルの構造を示す斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る電池モジュールの配線層およびグランド層周辺の構造を示す分解斜視図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電池モジュールの配線層およびグランド層周辺の構造を示す分解斜視図。
【
図6】本発明の第2実施形態の変形例の電池モジュールの配線層およびグランド層周辺の構造を示す分解斜視図。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る電池モジュールの配線層およびグランド層周辺の構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による電池モジュールについて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池モジュール30の斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る電池モジュール30の分解斜視図である。
【0012】
本発明の第1実施形態の電池モジュール30は、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)などの車両に搭載される。電池モジュール30は、一対の入出力端子(図示せず)を介して供給された電力を電池セル20に蓄え、電池セル20に蓄えた電力を入出力端子(図示せず)を介して車両のモータ等の電気機器に供給する。
【0013】
電池モジュール30は
図1および
図2に示すように、電池積層体31と、複数のバスバー32と、バスバーホルダ33と、配線部材50と、一対の端ホルダ35と、複数の中間ホルダ36と、一対のエンドプレート41と、一対のサイドプレート42とを備えている。
【0014】
ここで、
図1~
図3には、互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向を示している。X方向は、電池セル20の端子8A、8B同士を結ぶ方向であり、この方向を、電池セル20の長手方向と定義する。Y方向は、複数の電池セル20を積層した積層方向である。Z方向は、X方向とY方向に直交する方向であり、電池モジュール30(または電池セル20)の高さ方向である。また、配線部材50と電池積層体31との相対関係において、配線部材50側を上側、電池積層体31側を下側とする。
【0015】
電池積層体31は、二次電池からなる複数の電池セル20が積層されることにより構成されている。複数のバスバー32は、複数の隣接する電池セル20同士を電気的に接続する。バスバーホルダ33は、複数のバスバー32を保持する。配線部材50は、電池セル20の状態(ここでは電圧)を検出するために設けられており、バスバーホルダ33内に収納されている。配線部材50の詳細構造については後述する。一対の端ホルダ35は、絶縁性を有する樹脂からなり、電池積層体31の積層方向(Y方向)の一端および他端に配置される。中間ホルダ36は、絶縁性を有する樹脂からなり、隣接配置される電池セル20同士を区画するとともに、電池セル20の長手方向(X方向)の両端面を覆うように形成されている。一対のエンドプレート41は、電池積層体31の積層方向(Y方向)の一端および他端に端ホルダ35を介して配置される。一対のサイドプレート42は、電池積層体31の短手方向(X方向)の一端および他端に配置される。
【0016】
以下、電池モジュール30について詳細に説明する。
【0017】
電池積層体31を構成する電池セル20は
図3に示すように、電池ケース1と蓋6とを備えている。電池ケース1の内部には、発電体である電極群(図示せず)が収納され、電池ケース1の上部開口は蓋6によって封止されている。蓋6は、レーザ溶接によって電池ケース1に溶接されており、電池ケース1と蓋6によって電池容器が構成されている。
【0018】
蓋6の長手方向(X方向)の両端部には、正極外部端子(端子)8Aと負極外部端子(端子)8Bが設けられている。正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bは、蓋6の上面から上方に向けて突出する略直方体形状に形成されている。この正極外部端子8Aと負極外部端子8Bを介して電極群(図示せず)が充電されると共に、外部負荷に電力が供給される。また、蓋6の長手方向(X方向)の中央部には、ガス排出弁10が一体的に設けられている。ガス排出弁10は、蓋6の一部を薄肉化してスリット状の溝を形成することによって形成されている。電池セル20内の圧力が上昇して所定圧力を超えると、ガス排出弁10が開裂して電池セル20の内部からガスが排出される。また、蓋6には、注液栓11が溶接されていて、電池ケース1内に電解液を注入するための注液口9が封止されている。
【0019】
隣接する2つの電池セル20のうちの一方の電池セル20の正極外部端子8Aと他方の電池セル20の負極外部端子8Bとが積層方向に隣り合うように、複数の電池セル20を交互に反転させて積層配置することによって、電池積層体31(
図2参照)が構成されている。
【0020】
図2に示すように、バスバー32は、導電性を有する金属製の板状の部材である。バスバー32は、隣接配置された電池セル20の正極外部端子8Aと負極外部端子8Bとを電気的に接続する。これにより、複数の電池セル20が直列接続されている。バスバー32の正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bに対する接続方法は、特に限定されるものではないが、例えばレーザ溶接、超音波溶接または半田付けによって接続することができる。
【0021】
バスバーホルダ33は、複数の電池セル20の蓋6を覆うように配置されている。バスバーホルダ33は、例えばPP(ポリプロピレン)等の絶縁性を有する樹脂製の部材である。バスバーホルダ33は、電池セル20の蓋6に対向配置され複数のバスバー32が取り付けられる底面部33aと、底面部33aの周縁から立設する複数の側壁33bとを含んでいる。底面部33aには、バスバー32の下方に位置する部分に、電池セル20の正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bが挿通される開口部33cが形成されている。また、バスバーホルダ33のX方向の一方側においてY方向の両端部には、複数のバスバー32のうちのY方向の一端および他端に配置されるバスバー32に電気的に接続された端子片39が設けられている。この端子片39は、上述した入出力端子(図示せず)に電気的に接続されている。入出力端子(図示せず)は、車両のモータ等の電気機器に接続されている。
【0022】
エンドプレート41は、金属製の板状の部材である。エンドプレート41は、端ホルダ35を介して電池積層体31を積層方向の両側から挟み込むように配置されている。エンドプレート41のX方向の両端面には、サイドプレート42を固定するための穴が形成されている。
【0023】
サイドプレート42は、金属製の板状の部材である。サイドプレート42は、電池積層体31の長手方向(Y方向)の一端から他端まで延在し、中間ホルダ36のX方向の側面部を介して電池積層体31を短手方向(X方向)の両側から挟み込むように配置されている。サイドプレート42のY方向の両端部には、挿入穴が形成されており、サイドプレート42は、ネジやリベット等の固定部材43を用いてエンドプレート41に固定されている。
【0024】
次に、配線部材50の詳細構造について説明する。
【0025】
配線部材50は、バスバーホルダ33の底面部33a上に配置されているとともに、電池積層体31の積層方向の一端から他端まで延びるように形成されている。本実施形態では、配線部材50は、配線基板51と、配線基板51の長手方向(Y方向)の一端部に取り付けられたコネクタ59とによって構成されている。
【0026】
配線基板51は
図4に示すように、絶縁性を有する基材52と、基材52の一方面52a側(上側)に配置される配線層53と、配線層53および基材52の所定領域を覆うように配置され絶縁性を有する第1カバー層54と、基材52の他方面52b側(下側)において、少なくとも配線層53に対応する位置に配置されるグランド層55と、グランド層55および基材52の所定領域を覆うように配置され絶縁性を有する第2カバー層56とによって構成されている。
【0027】
配線基板51は、特に限定されるものではなく、可撓性を有する所謂フレキシブル基板であってもよいし、可撓性を有さない基板であってもよいが、薄型化・軽量化・屈曲性の観点からフレキシブル基板であることが好ましい。
【0028】
基材52の材質は、特に限定されるものではなく、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ガラスエポキシ樹脂等を用いることができるが、可撓性および耐熱性等の観点からポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
配線層53の材質は、導電性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば銅箔が用いられる。配線層53の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば基材52の一方面52aに設けられた銅箔(導電層)を所定形状にエッチングすることによって配線層53が形成される。
【0030】
第1カバー層54は、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド層および接着層からなるカバーフィルム、またはソルダーレジスト等により形成されている。
【0031】
グランド層55の材質は、導電性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば銅箔が用いられる。グランド層55の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば基材52の他方面52bに設けられた銅層(導電層)を所定形状にエッチングすることによってグランド層55が形成される。
【0032】
第2カバー層56は、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド層および接着層からなるカバーフィルム、またはソルダーレジスト等により形成されている。
【0033】
ここで、配線層53は、複数の電池セル20の状態を検出するための複数の検出線53aを含んでいる。電池セル20の状態としては、例えば電池セル20の電圧、温度、および電池セル20に流れる電流等を挙げることができるが、ここでは電池セル20の電圧を検出する場合について説明している。検出線53aの厚みおよび配線幅は、特に限定されるものではないが、例えば数μm~数十μmの厚みで、数十μm~数百μmの配線幅に形成されている。このように検出線53aの断面積が小さい場合、後述する不要輻射の影響が大きくなる。なお、本実施形態では、全ての検出線53aは、同じ厚みで同じ配線幅に形成されている。
【0034】
各検出線53aの一端はバスバー32の何れかに電気的に接続されており、他端はコネクタ59に電気的に接続されている。コネクタ59には、ワイヤーハーネス(図示せず)が接続され、コネクタ59はワイヤーハーネス(図示せず)を介して電池制御装置(図示せず)に接続される。この電池制御装置は、各検出線53aに対応する電池セル20の電圧を検出し、検出結果を車両制御装置(図示せず)に送信する。
【0035】
検出線53aの一端をバスバー32に電気的に接続する方法は、特に限定されるものではないが、例えば半田付け、圧接、レーザ溶接または超音波溶接によって接続することができる。また、検出線53aを直接バスバー32に接続してもよいし、配線基板51にニッケルまたは銅などからなる薄板状のプレートを設け、このプレートを介して検出線53aとバスバー32とを電気的に接続してもよい。なお、複数のバスバー32は配線基板51の長手方向(Y方向)に沿って配列されており、各バスバー32とコネクタ59との間の距離が異なるため、複数の検出線53aの配線長は互いに異なっている。
【0036】
ここで、電池モジュール30が充放電すると、電池セル20内では大量の電荷が移動するため、電池セル20の電位が変動し、電池セル20から不要輻射が発生する。配線基板51は、電池セル20に近接配置されるため、不要輻射の影響を受けやすく、不要輻射がノイズとなって検出線53aの電位が変動する。このため、各電池セル20の電圧の検出精度が低下するおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、配線基板51の基材52の他方面52bに、グランド電位を有するグランド層55を設けている。グランド層55は、基材52の他方面52bの略全面に設けられている。グランド層55は、例えばサイドプレート42、エンドプレート41、またはコネクタ59のグランド端子に電気的に接続されることによって、グランド電位になっている。
【0038】
配線基板51の基材52の他方面52bにグランド層55を設けることによって、電池セル20から放射される電磁波がグランド層55により遮蔽され、不要輻射に起因する検出線53aの電位の変動が抑制される。これにより、各電池セル20の電圧の検出精度が低下するのを抑制することができる。
【0039】
グランド層55の形状は、特に限定されるものではなく、例えばベタ形状、導電層(銅箔)に複数の貫通孔が形成された形状等にすることができる。導電層に複数の貫通孔が形成された形状としては、例えば、等間隔で平行に配置される複数の線状導電領域が略直交するように形成された所謂メッシュ形状、等間隔で平行に配置される複数の線状導電領域を有する形状、導電層に複数の円形の貫通孔が形成された形状等が挙げられる。ここでは、グランド層55は、等間隔で平行に配置される複数の線状導電領域55aと複数の線状導電領域55bとが略直交するように形成され、複数の線状導電領域55aと複数の線状導電領域55bにより複数の貫通孔55cが形成されたメッシュ形状に形成された導電パターンである。なお、
図4に示したグランド層55をメッシュ形状に形成した場合であっても、ベタ形状に形成する場合と比べて、電磁波を遮蔽する性能はほとんど変わらない。
【0040】
本実施形態では、上記のように、配線部材50の配線基板51は、絶縁性を有する基材52と、基材52の一方面52a側に配置される配線層53と、基材52の他方面52b側において、少なくとも配線層53に対応する位置に配置されるグランド層55とが積層されている。これにより、電池セル20から放射される電磁波がグランド層55により遮蔽され、不要輻射に起因する検出線53aの電位の変動(ノイズ)が抑制される。このため、各検出線53aに対応する電池セル20の電圧の検出精度が低下するのを抑制することができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の電池モジュール30では
図5に示すように、検出線53aは、互いに異なる配線長を有する検出線53bおよび53cを有する。検出線53bの配線長は、検出線53cの配線長よりも長い。
【0042】
ここで、互いに異なる配線長を有する検出線53bおよび53cが設けられている場合、検出線53bおよび53cのインピーダンスは異なる。検出線53bおよび53cのインピーダンスが異なると、上述の電池制御装置(図示せず)により各電池セル20の電圧を検出する際の精度が低下するため、検出線53bおよび53cのインピーダンスを等しくすることが望ましい。
【0043】
そこで、本実施形態では、長さの異なる検出線53bおよび53cのインピーダンスを等しくする(又は近づける)ために、検出線53bに生じる寄生容量が少なくなるように構成している。具体的には、グランド層55のメッシュ形状の導電パターンは、少なくとも1つの検出線53a(ここでは検出線53b)に対応して配置される第1パターン部P1と、少なくとも1つの検出線53a(ここでは検出線53c)に対応して配置される第2パターン部P2とを少なくとも有している。第2パターン部P2の面積率(導電領域の面積/導電領域および貫通孔の面積)は、第1パターン部P1の面積率よりも大きい。
【0044】
すなわち、配線長の長い検出線53bに対応する第1パターン部P1の面積率を、配線長の短い検出線53cに対応する第2パターン部P2の面積率よりも小さくしている。これにより、検出線53bに対向するように第2パターン部P2を配置する場合に比べて、検出線53bに対向する導電領域の面積を少なくすることができるので、検出線53bに生じる寄生容量を少なくすることができる。このため、検出線53bおよび53cのインピーダンスを等しくする(又は近づける)ことができるので、上述の電池制御装置(図示せず)により電池セル20の電圧を精度良く検出することができる。
【0045】
なお、
図5では、グランド層55の導電パターンが2つの第1パターン部P1および第2パターン部P2を有する例について示したが、3つ以上のパターン部を有する場合も同様である。具体的には、
図6に示す第2実施形態の変形例のように、検出線53aは、検出線53bよりも短く検出線53cよりも長い検出線53dをさらに有する。グランド層55の導電パターンは、検出線53dに対向して配置される第3パターン部P3をさらに有する。第3パターン部P3の面積率は、第1パターン部P1の面積率よりも大きく、第2パターン部P2の面積率よりも小さい。このように、検出線53aの配線長に応じて、対向するパターン部の面積率を変更することによって、複数の検出線53aのインピーダンスを容易に等しくする(又は近づける)ことができる。
【0046】
また、
図5および
図6では、グランド層55の複数のパターン部の面積率を異ならせるために、線状導電領域55aおよび55bのピッチを変更しているが、例えば線状導電領域55aおよび55bの線幅を部分的に広くまたは狭くすることによって面積率を異ならせてもよい。
【0047】
第2実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の電池モジュール30では
図7に示すように、検出線53aは、互いに異なる配線長を有する検出線53e、53fおよび53gを有する。検出線53fの配線長は検出線53gの配線長よりも長く、検出線53eの配線長は検出線53fの配線長よりも長い。例えば、検出線53eは本発明の「第2検出線」の一例であり、検出線53gは本発明の「第1検出線」の一例である。なお、本実施形態では、グランド層55の導電パターンは、面積率が略均一になるように形成されている。
【0049】
ここで、本実施形態では、長さの異なる検出線53e~53gのインピーダンスを等しくする(又は近づける)ために、検出線53e~53gの配線幅を以下のように形成している。具体的には、検出線53fの配線幅は検出線53gの配線幅よりも広く形成されており、検出線53eの配線幅は検出線53fの配線幅よりも広く形成されている。すなわち、検出線53aの配線長が長くなるにしたがって、検出線53aの配線幅を広く形成し、単位長さ当たりの抵抗値を小さくしている。これにより、各検出線53aのインピーダンスを等しくする(又は近づける)ことができるので、上述の電池制御装置(図示せず)により電池セル20の電圧を精度良く検出することができる。
【0050】
第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、電池セル20の状態として、電池セル20の電圧を検出する例について示したが、本発明はこれに限らず、電池セル20の温度または電池セル20に流れる電流を検出してもよい。例えば、電池セル20の温度を検出する場合、複数の電池セル20のうちの数個(例えば3個)の電池セル20にサーミスタを取り付け、配線部材50の配線層53をサーミスタに電気的に接続すればよい。この場合にも、電池制御装置(図示せず)により、複数の電池セル20の温度を精度良く検出することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、配線層53と電池セル20との間にグランド層55を配置する例について示したが、本発明はこれに限らず、配線層53に対して電池セル20とは反対側にグランド層55を配置してもよい。すなわち、例えば、配線層53とグランド層55とを上下方向(厚み方向)に反転させた配置としてもよい。この場合にも、電池セル20からの不要輻射に起因する検出線53aの電位の変動を抑制することができるので、各電池セル20の電圧の検出精度が低下するのを抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、グランド層55をメッシュ形状に形成する例について示したが、本発明はこれに限らず、グランド層55をベタ形状に形成してもよい。この場合、例えば、基材52、配線層53および第1カバー層54からなる配線基板51に、アルミニウムフィルムや銀フィルム等(グランド層)の片面に接着層が設けられた導電性フィルムを貼り付けてもよい。この場合、配線基板51の下面(電池セル20側の面)、上面(電池セル20とは反対側の面)の何れかに貼り付ければよい。なお、基材52、配線層53および第1カバー層54からなる配線基板51の上面(電池セル20とは反対側の面)に導電性フィルムを貼り付ける構成の場合、導電性フィルムの接着層および第1カバー層54が本発明の「絶縁層」である。
【0055】
また、基材52、配線層53および第1カバー層54からなる配線基板51の下面または上面に、アルミニウムフィルムや銀フィルム等からなるグランド層を、貼り付けずに積層配置してもよい。
【0056】
また、上述した実施形態および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記第2実施形態のグランド層55の導電パターンと、上記第3実施形態の異なる配線幅の検出線53aとを組み合わせて適用してもよい。このように構成すれば、複数の検出線53aのインピーダンスを容易に等しくする(又はより近づける)ことができる。
【符号の説明】
【0057】
8A:正極外部端子(端子)、8B:負極外部端子(端子)、20:電池セル、30:電池モジュール、50:配線部材、52:基材(絶縁層)、52a:一方面、52b:他方面、53:配線層、53a~53d、53f:検出線、53e:第2検出線(検出線)、53g:第1検出線(検出線)、55:グランド層、55c:貫通孔、P1:第1パターン部、P2:第2パターン部