(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2251 20180101AFI20221215BHJP
G01N 23/2252 20180101ALI20221215BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N23/2251
G01N23/2252
H01J37/22 502H
H01J37/22 501Z
(21)【出願番号】P 2021543868
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034838
(87)【国際公開番号】W WO2021044553
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 諒
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博文
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-22904(JP,A)
【文献】特開2001-156135(JP,A)
【文献】特開2004-191187(JP,A)
【文献】特開2018-137275(JP,A)
【文献】特開2018-506168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-G01N23/2276
H01J37/00-H01J37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置であって、
荷電粒子線を試料に対して照射する照射部と、
前記荷電粒子線の前記試料への照射に起因する信号を出力する検出部と、
複数の条件セットのうちから1つの条件セットを選択するための条件選択インタフェースを出力するインタフェース出力部と、
着目対象物に関する評価を実行する評価部と、
を備え、
前記条件セットは、
‐複数の学習済みモデルのうちから、1つの学習済みモデルを特定する情報と、
‐照射条件および検出条件の少なくとも一方を含む複数の探索条件のうちから、1つの探索条件を特定する情報と、
‐前記照射部および前記検出部の少なくとも一方の動作を規定する複数の解析条件のうちから、1つの解析条件を特定する情報と、
を含み、
前記荷電粒子線装置は、
‐前記条件選択インタフェースを介して前記条件セットの選択を受け付け、
‐特定された前記探索条件に基づき、前記試料の第1の領域に対して前記荷電粒子線を照射し、当該照射に起因する第1の信号を検出し、
‐特定された前記学習済みモデルに、前記第1の信号に基づく情報を受け渡し、
‐特定された前記学習済みモデルから、前記着目対象物の候補の位置を含む前記試料の第2の領域を表す情報を取得し、前記第2の領域は前記第1の領域の一部であって前記第1の領域より小さく、
‐特定された前記解析条件に基づき、前記第2の領域に対して前記荷電粒子線を照射し、当該照射に起因する第2の信号を検出し、
‐前記第2の信号に基づく情報を前記評価部に入力し、
前記荷電粒子線装置は、
‐第1の探索条件に基づいて前記第2の領域を表す情報を取得し、
‐前記第1の探索条件に係る前記第2の領域を表す情報が所定の条件を満たさない場合に、前記第1の探索条件の少なくとも一部を変更した第2の探索条件に基づいて前記第2の領域を表す情報を取得し、
‐前記第2の探索条件に係る前記第2の領域を表す情報が前記所定の条件を満たす場合に、前記第2の探索条件を前記条件セットの一部として記憶する、
荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記第1の信号は、前記試料に前記荷電粒子線が照射された際に生じる電子に基づく信号であり、
前記第2の信号は、前記試料に前記荷電粒子線が照射された際に生じるX線に基づく信号である、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記条件セットは、前記評価部の動作を規定する複数の評価条件のうちから、1つの評価条件を特定する情報をさらに含む、
請求項1に記載の荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料における着目対象物の検出および/または評価を行うために、荷電粒子線装置が用いられる。荷電粒子線装置は、試料に荷電粒子線を照射し、照射に起因する信号を利用して着目対象物の検出および/または評価を行う。このような荷電粒子線装置の例は、特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、荷電粒子線装置を用いた検査業務では、荷電粒子線装置の動作に係る各種条件の設定作業や、解析領域の設定作業を人手で行っており、時間と労力がかかるという課題があった。
【0005】
また、着目対象物は多様である一方で、荷電粒子線装置は高額なため、異なる特性を有する着目対象物に対して同一の荷電粒子線装置を流用せざるを得ない場合がある。このような場合においても、条件の設定作業や、解析領域の設定作業に時間と労力がかかっていた。
【0006】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、動作に係る各種条件の設定作業や、解析領域の設定作業を自動的に行う荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る荷電粒子線装置の一例は、
荷電粒子線を試料に対して照射する照射部と、
前記荷電粒子線の前記試料への照射に起因する信号を出力する検出部と、
複数の条件セットのうちから1つの条件セットを選択するための条件選択インタフェースを出力するインタフェース出力部と、
着目対象物に関する評価を実行する評価部と、
を備え、
前記条件セットは、
‐複数の学習済みモデルのうちから、1つの学習済みモデルを特定する情報と、
‐照射条件および検出条件の少なくとも一方を含む複数の探索条件のうちから、1つの探索条件を特定する情報と、
‐前記照射部および前記検出部の少なくとも一方の動作を規定する複数の解析条件のうちから、1つの解析条件を特定する情報と、
を含み、
前記荷電粒子線装置は、
‐前記条件選択インタフェースを介して前記条件セットの選択を受け付け、
‐特定された前記探索条件に基づき、前記試料の第1の領域に対して前記荷電粒子線を照射し、当該照射に起因する第1の信号を検出し、
‐特定された前記学習済みモデルに、前記第1の信号に基づく情報を受け渡し、
‐特定された前記学習済みモデルから、前記着目対象物の候補の位置を含む前記試料の第2の領域を表す情報を取得し、前記第2の領域は前記第1の領域の一部であって前記第1の領域より小さく、
‐特定された前記解析条件に基づき、前記第2の領域に対して前記荷電粒子線を照射し、当該照射に起因する第2の信号を検出し、
‐前記第2の信号に基づく情報を前記評価部に入力する。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る荷電粒子線装置によれば、各種条件の設定を個別に行う必要がなく、また解析領域の設定を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施形態1にかかる荷電粒子線装置を概略的に表した正面図。
【
図2】
図1の荷電粒子線装置の動作を表すフローチャート。
【
図3】
図2の処理において出力される条件選択インタフェースの一部を構成する画面の例。
【
図11】探索条件の自動調整に係る荷電粒子線装置の動作を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施形態1.
<荷電粒子線装置100の構成について>
図1は実施形態1にかかる荷電粒子線装置100を概略的に表した正面図である。この荷電粒子線装置100は走査型電子顕微鏡である。ただし、荷電粒子線装置は透過型電子顕微鏡、イオンビーム装置等の他の荷電粒子線装置であってもよい。荷電粒子線装置100の構成は一例にすぎないことに留意されたい。換言すれば、荷電粒子線装置100の各部の具体的な構成は荷電粒子線装置100の種類や構造に応じて変わり得る。
【0011】
荷電粒子線装置100は、荷電粒子線を試料Sに対して照射する照射部110を有する。この例の照射部110は、電子源111と、鏡筒112を有する。電子源111は荷電粒子線(この例では電子線)の源となる電子を放出する。鏡筒112は集束レンズ、走査コイル、対物レンズ等を有し、荷電粒子線を試料Sに向かって導く。
【0012】
照射部110は試料室120に接続されている。典型的には、試料室120は図示しない真空ポンプなどによって真空引きされている。
【0013】
この例では、荷電粒子線の試料Sへの照射に起因する信号を出力する検出部130が試料室120に設けられている。検出部130が検出する対象は、二次電子、反射電子、X線、オージェ電子などであってよい。また、検出部130は複数設けられていてよい。この例では、荷電粒子線装置100は、二次電子を検出する第一の検出部130Aと、X線を検出する第二の検出部130Bを有する。検出部130は試料室120に設けられているとは限らない。一例として、一種の走査型電子顕微鏡では、検出部130が鏡筒112の内部に設けられている。他の例として、一種の透過型電子顕微鏡では、検出部130は試料Sを透過した電子線を検出するように試料Sより電子線の流れの下流に設けられている。
【0014】
荷電粒子線装置100はステージ140を備える。ステージ140は可動ステージであってよい。典型的には、ステージ140はX方向および/またはY方向(荷電粒子線の光軸と垂直な平面内における一方向:
図1の矢印方向)に可動であってよい。さらに、ステージ140はZ方向(荷電粒子線の光軸と垂直な方向)に可動であってよい。さらに、ステージ140は回転(Z軸方向を回転軸とした回転)可能であってよい。さらに、ステージ140は傾斜(X方向またはY方向を回転軸とした回転)可能であってよい。ステージ140は試料ホルダ141を支持するように構成されていてよい。この例では、試料Sは試料ホルダ141に載せられる。
【0015】
荷電粒子線装置100は制御部151と、入力部152と、記憶部153と、表示部154に接続されていてよい。制御部151、入力部152、記憶部153、表示部154は荷電粒子線装置100の一部であってもよく、荷電粒子線装置100と独立していてもよい。各部の間の接続は有線接続であっても無線接続であってもよい。したがって、
図1に図示される接続線は例示に過ぎない。追加または代替として、インターネットなどの通信回線を介した接続も採用可能である。たとえば、記憶部153は、イントラネット、インターネットまたはクラウドサービス上の記憶部153であってもよい。荷電粒子線装置100が複数階層の制御部151または記憶部153に接続されている場合、上位の階層にある制御部151または記憶部153を上位装置と呼ぶ場合がある。
【0016】
典型的な荷電粒子線装置100においては、検出部130からの信号を受け取った制御部151は画像もしくはスペクトルの生成が可能である。または、制御部151は、試料Sにおいて荷電粒子線が照射されている領域の評価が可能である。したがって、制御部151は「評価部」とも呼ばれ得る。
【0017】
なお、本明細書において「領域」とは、たとえば有限の広がりを持つ面をいうが、有限の大きさを持つ体積であってもよく、有限の長さと、ゼロまたは実質的に無視できる幅とを持つ線であってもよく、ゼロまたは実質的に無視できる大きさを持つ点であってもよい。また、本明細書において「評価」とは、たとえば領域またはその一部に基づき、その領域またはその一部に関する情報を生成することを言い、「分析」または「判定」と呼ばれる動作を含む。
【0018】
本実施形態では、制御部151は、第一の検出部130Aが出力した信号に基づいたSEM像(ここでは二次電子像)を生成することができる。同様に、制御部151は、第二の検出部130Bが出力した信号に基づいたX線分析画像またはスペクトルを生成することができる。制御部151は、これらの画像または信号に基づいて、たとえば試料Sの表面形状または表面元素の評価をすることができる。
【0019】
荷電粒子線装置100への情報の入力または荷電粒子線装置100からの情報の出力は、UI(ユーザインタフェース)を介して行われてよい。この例では、UIはGUI(グラフィックユーザインタフェース)であり、表示部154に表示される。
【0020】
制御部151による荷電粒子線装置100の制御、画像もしくはスペクトルの生成または試料Sの評価は、記憶部153に記憶された学習済みモデルに基づいて実行されてよい。
【0021】
制御部151は、荷電粒子線装置100全体の動作を制御してもよい。制御部151は、プログラムを実行することによりこの制御を実現してもよい。このプログラムは、記憶部153に格納されてもよく、記憶部153から独立した制御部151内の記憶手段に格納されてもよい。
【0022】
荷電粒子線装置100はさらに、ナビゲーション画像撮影機160を備えてよい。ナビゲーション画像撮影機160はナビゲーション画像305(後述)を撮影する。
図1の例ではナビゲーション画像撮影機160は試料室120に設けられている。
図1では、ステージ140が
図1の矢印の右端に位置する場合に、ナビゲーション画像撮影機160は試料ホルダ141が存在すると見込まれる部分の少なくとも一部を撮影することができる。
図1の例ではナビゲーション画像撮影機160は光学カメラであり、試料ホルダ141が存在すると見込まれる部分全てを撮影可能である。なお、ナビゲーション画像撮影機160のための光源が試料室120に設けられていてもよい。
【0023】
図1の例とは異なり、ナビゲーション画像撮影機160として光学カメラ以外の画像取得手段が用いられてもよい。また、
図1の例とは異なり、荷電粒子線装置100とは別個独立したナビゲーション画像撮影機160が用いられてもよい。たとえば、ナビゲーション画像撮影機160として、荷電粒子線装置100とは別個独立した光学顕微鏡であって、試料ホルダ141を一定の位置かつ一定の方向に固定することができる光学顕微鏡が用いられてもよい。また、ナビゲーション画像撮影機160も、制御部151と、入力部152と、記憶部153と、表示部154に接続されていてよい。
【0024】
<荷電粒子線装置100の動作について>
図2は、実施形態1に係る荷電粒子線装置100の動作を表すフローチャートである。
図2の処理において、まず荷電粒子線装置100はモデルを選択する(ステップ201)。このステップにおいて、荷電粒子線装置100は、複数の条件セットのうちから1つの条件セットを選択するためのインタフェース(条件選択インタフェース)を出力する。条件セットは、荷電粒子線装置100の動作を特定する条件の組み合わせを含む。
【0025】
図3は、ステップ201において出力される条件選択インタフェースの一部を構成する画面の例を示す。本実施形態では、条件選択インタフェースはGUIとして構成される。この画面300は、表示部154における画面表示として出力される。すなわち、本実施形態では、表示部154がこの条件選択インタフェースを出力するインタフェース出力部として機能する。
【0026】
図3の例では、条件選択インタフェースは名称欄301を含む。本実施形態において、複数の条件セットのうち1つを選択するためにこの名称欄301が用いられる。たとえば、条件セットのそれぞれに異なる名称が関連付けられており、特定の条件セットに対応する名称が入力されることに応じて、その条件セットが選択される。
【0027】
条件選択インタフェースは装置種類欄302を含む。装置種類欄302は、用いられる荷電粒子線装置の種類を特定する情報を入力または表示するために用いられる。
【0028】
条件選択インタフェースは新規ボタン303および編集ボタン304を含む。新規ボタン303は、新たな条件セットを作成する際に操作され、編集ボタン304は、既存の条件セットの内容を変更する際に操作される。
【0029】
条件選択インタフェースはナビゲーション画像305を含む。ナビゲーション画像305はユーザによって試料台307(たとえば
図1の試料ホルダ141に対応する)上に載置された試料Sにおける探索範囲を視覚的に指定するための画像であり、典型的にはナビゲーション画像撮影機160により撮影される。ただし、荷電粒子線装置100の観察倍率が十分低く設定できるのであれば、SEM像などの画像がナビゲーション画像305として用いられてもよい。ナビゲーション画像305は、試料に関する探索領域306を表示する。
図3では探索領域306をハッチングで示す。この例では、試料台307上に2本の導電テープ308が載置されており、探索領域306はこれらの導電テープ308の全体を含んでいる。
【0030】
図4は、ナビゲーション画像305の別の例を示す。この例では、複数の試料台307が配置されており、各試料台307においてそれぞれ異なる探索領域が指定されている。
【0031】
図5は、条件セットの設定(学習済みモデルの選択を含む)を行うための画面の例を示す。この画面500は、本実施形態では条件選択インタフェースの一部を構成するが、変形例として条件選択インタフェースとは別画面のGUIとして構成されてもよい。画面500は、たとえば
図3の新規ボタン303または編集ボタン304が操作されることに応じて出力される。
【0032】
図5によれば、条件選択インタフェースは、探索条件、学習済みAI(すなわち機械学習によって生成された学習済みモデル)、解析条件、および数値化項目に関する情報の入力を受け付け、または入力された情報を表示する。
【0033】
探索条件は、照射条件(主に照射部110の動作条件であるが、ステージ140の位置、傾斜(換言すれば、試料Sの位置、傾斜等)、試料室120の真空度等の条件等も含む)および検出条件(主に検出部130の動作条件であるが、検出部130の前段の構造(絞り等)の条件等も含む)の少なくとも一方を含む条件である。条件選択インタフェースは、探索条件に関して、倍率を特定するための倍率選択部501と、スキャンの種類を特定するためのスキャン種類選択部502と、画像サイズを特定するための画像サイズ選択部503と、検出器を特定するための検出器選択部504と、ワーキングディスタンスを特定するためのWD選択部505とを含む。
【0034】
スキャンの種類としては、スキャン速度(速度が0となる場合を含む)、スキャンの経路(ラスタスキャン、スネークスキャン、等)、同一領域に対するスキャンの積算数、スキャンの積算方式(ライン毎、画像毎、等)、またはこれらの組み合わせが選択可能である。
【0035】
検出器としては、二次電子検出器、反射電子検出器、X線検出器、オージェ電子検出器、透過電子検出器(たとえばカメラ)、結晶方位を特定する検出器、等が選択可能である。
【0036】
また、条件選択インタフェースは、学習済みモデル欄506と、探索条件調整ボタン507とを含む。学習済みモデル欄506は、複数の学習済みモデルのうちから1つの学習済みモデルを特定するために用いられる。探索条件調整ボタン507については後述する。
【0037】
解析条件は、照射部110および検出部130の少なくとも一方の動作を規定する条件である。解析条件は、上記の探索条件と重複する項目を含んでもよいし、そうでなくともよい。条件選択インタフェースは、解析条件に関して、形状解析を実行するか否かを特定するための形状解析チェックボックス508と、組成解析を実行するか否かを特定するための組成解析チェックボックス509とを含む。
【0038】
条件選択インタフェースは、形状解析に関して、倍率を特定するための倍率選択部510と、スキャンの種類を特定するためのスキャン種類選択部511と、画像サイズを特定するための画像サイズ選択部512と、検出器を特定するための検出器選択部513と、ワーキングディスタンスを特定するためのWD選択部514とを含む。
【0039】
条件選択インタフェースは、組成解析に関して、検出器を特定するための検出器選択部515と、ワーキングディスタンスを特定するためのWD選択部516とを含む。
【0040】
ここで、荷電粒子線装置100の使用者は、探索条件および解析条件についてそれぞれ異なる条件を適切に指定することにより、処理を効率化することができる。たとえば、試料Sの全体をカバーするのに60個の視野が必要となり、1視野当たり40秒のスキャン速度によるスキャンが必要となる場合を考える。単一の条件(解析条件)のみを用いて試料Sを解析する場合の一例として、40[秒]×60[視野]=2400[秒]=40[分]の時間が必要となる。
【0041】
これに対し、解析の事前処理として、厳密な解析が必要となる領域を特定するための探索処理を行うことができる。この探索では、解析ほど厳密なスキャンは要求されないので、より高速に処理可能な条件を用いることができる。たとえば、スキャン速度を1視野当たり1秒とし、倍率を解析条件の1/5とすれば(たとえば解析条件における倍率が1500倍であれば、探索条件における倍率を300倍とする)、探索にかかる時間は1[秒]×60[視野]/5=12[秒]となる。この探索の結果、3個の領域に対して解析が必要となった場合には、解析にかかる時間は40[秒]×3[視野]=120[秒]となり、合計で132[秒]すなわち2分12秒で探索および解析を完了することができる。
【0042】
なお、この探索条件および解析条件の決定方法は一例である。荷電粒子線装置100の用途によっては、探索を解析より高速に完了させる必要はなく、または処理を効率化する必要はない。
【0043】
図5に戻り、数値化項目は、評価部としての制御部151の動作を規定する条件であり、すなわち評価条件とも言えるものである。条件選択インタフェースは、形状解析に係る数値化項目に関して、着目対象物の直径を出力するか否かを特定するための直径チェックボックス517と、着目対象物の面積を出力するか否かを特定するための面積チェックボックス518と、評価に関連して用いられるプログラムを特定するためのスクリプト欄519(複数であってもよい)とを含む。
【0044】
なお、「着目対象物」の意味は当業者が適宜解釈可能であるが、たとえば粒子または異物をいう。また、着目対象物は、試料から分離された物体に限らず、試料Sにおいて他と区別可能な形状、構造または組成を有する部分であってもよい。
【0045】
条件選択インタフェースは、組成解析に係る数値化項目に関して、着目対象物における特定成分の含有量を出力するか否かを特定するための含有量チェックボックス520と、着目対象物の結晶方位IDを出力するか否かを特定するための結晶方位IDチェックボックス521とを含む。
【0046】
条件選択インタフェースは、保存ボタン522を含む。荷電粒子線装置100は、保存ボタン522が操作されることに応じて、その時点で条件選択インタフェース上で特定されている各条件を互いに関連付けて条件セットとし、記憶部153に記憶する。この際に、その条件セットを特定する情報(たとえば
図3の名称欄301に表示される名称)の入力を受け付けてもよく、この情報を条件セットに関連付けて記憶部153に記憶してもよい。
【0047】
条件セットは終了条件を含んでもよい。
図5の例では、条件選択インタフェースは、終了条件を特定するための終了条件選択部523を備える。終了条件は、探索条件の一部を構成してもよい。終了条件は、探索領域をすべて探索する前に探索処理を打ち切るための条件を表してもよい。たとえば、探索処理中に特定の着目対象物が所定数以上検出された場合に探索処理を打ち切るように構成してもよい。このような終了条件を用いると、アスベスト検査のモニタリングマニュアルに従い、所定数以上検出された特定の着目対象物に対して、組成解析を行うといったように、荷電粒子線装置100の動作を様々な基準に準拠させることが可能となる。また、探索処理が打ち切られた場合には、
図2のステップ205以降の処理(後述)は実行を省略してもよい。
【0048】
このような条件セットの作成および変更は、
図2の処理が開始される前に行われてもよいし、上述のように
図2のステップ201において行われてもよい。いずれにしても、ステップ201において表示部154は条件選択インタフェースを出力し、荷電粒子線装置100はこの条件選択インタフェースを介して条件セットの選択を受け付ける。
【0049】
上述のように、本実施形態では、条件セットは次の情報を含む。
‐複数の学習済みモデルのうちから、1つの学習済みモデルを特定する情報。
‐照射部110および検出部130の少なくとも一方の動作を規定する複数の探索条件のうちから、1つの探索条件を特定する情報。この情報により、各学習済みモデルに適した探索条件を用いることができる。
‐照射部110および検出部130の少なくとも一方の動作を規定する複数の解析条件のうちから、1つの解析条件を特定する情報。この情報により、各学習済みモデルに適した解析条件を用いることができる。
【0050】
また、本実施形態では、条件セットは次の情報を含む。
‐評価部(制御部151)の動作を規定する複数の評価条件のうちから、1つの評価条件を特定する情報。この情報により、各学習済みモデルに適した評価条件を用いることができる。
【0051】
このため、荷電粒子線装置100の使用者は、条件セットを1つ選択するだけで、学習済みモデル、探索条件および解析条件をすべて決定することができる。このため、これらを個別に決定するのに必要な時間および労力が節約される。
【0052】
このようにしてステップ201が実行された後、荷電粒子線装置100は、探索範囲として探索領域306を指定する(ステップ202)。荷電粒子線装置100は、探索領域306を自動的に決定してもよいし、使用者からの入力に応じて決定してもよい。
【0053】
自動的な決定は、たとえば画像処理によって行うことができる。たとえば、ナビゲーション画像305において円板状の領域を検出することによって試料台307を検出してもよい。また、
図1の例ではナビゲーション画像撮影機160(光学カメラ)がナビゲーション画像305を撮影する。そこで試料台307上において、周辺の色(すなわち試料台307そのものの色と考えられる色)と異なる色を含む部分を、探索領域306として決定してもよい。2つの色が異なるか否かの判定は、たとえば色空間における識別線に対して異なる側にあるか否かに基づいて行ってもよい。なお、色ではなく、画像中の特定領域の明暗などの他の信号に基づいて探索領域306が決定されてもよい。色に関する情報を用いないことは、ナビゲーション画像305がモノクローム画像である場合(ナビゲーション画像撮影機160がモノクロームカメラ等である場合またはSEM像などの画像がナビゲーション画像305として用いられる場合)に好適である。さらに、荷電粒子線装置100は、条件選択インタフェースに対する操作(たとえばマウスポインタを利用した操作)に応じ、探索領域306を決定または変更してもよい。
【0054】
次に、荷電粒子線装置100は、注目構造を探索する(ステップ203)。すなわち、ステップ201において特定された探索条件に基づき、照射部110を介して試料Sの探索領域306(第1の領域)に対して荷電粒子線を照射し、検出部130を介して当該照射に起因する信号(第1の信号)を検出する。この探索では、たとえば低倍率かつ高速のスキャンによる撮影を利用することができる。このステップ203は、たとえば
図3のスタートボタン309が操作されることに応じて開始されてもよい。
【0055】
「注目構造」とは、たとえば着目対象物の候補を意味する。第1の信号は、たとえば、試料Sに荷電粒子線が照射された際に生じる電子に基づく信号であってもよいし、試料Sに荷電粒子線が照射された際に生じるX線に基づく信号であってもよい。
【0056】
次に、荷電粒子線装置100は、学習済みモデルを用いて注目構造を検知する(ステップ204)。たとえば、まず、ステップ201において特定された学習済みモデルに、ステップ203において検出された信号(第1の信号)に基づく情報を受け渡す。この情報は第1の信号そのものであってもよいし、適切な変換または補正等を行ったものであってもよい。そして、その学習済みモデルから、着目対象物の候補の位置を含む試料Sの領域(第2の領域)を表す情報を取得する。第2の領域は探索領域306の一部であり、探索領域306より小さい領域である。
【0057】
たとえば、学習済みモデルが、画素ごとに着目対象物の存在確率を表すヒートマップを出力する場合には、第2の領域はこのヒートマップに基づいて決定することができる。ヒートマップから第2の領域を決定するための具体的な処理はとくに説明しないが、当業者であれば周知技術に基づいて適宜設計することができる。たとえば適切な閾値を用いた2値化処理を含んでもよい。
【0058】
図6は、第2の領域の例を示す。
図6(a)に、横3列×縦2行の視野601が表示されている。各視野601は、その周辺において、隣接する視野601と重なる領域すなわちオーバーラップ領域602を有する。導電テープ308上に、注目構造(文字「A」で表す)と、その他の構造(文字「B」で表す)とが存在している。
【0059】
学習済みモデルは、
図6(a)に示す情報(たとえば画像の形式で表すことができる)に基づき、
図6(c)に示す情報(たとえば座標の組の形式で表すことができる)を出力する。学習済みモデルは、
図6(b)に示すように様々な注目構造の形状等(様々なフォントの文字「A」で示す)を学習しており、注目構造を検出することができる。なお、このような機能を有する学習済みモデルの具体例はとくに示さないが、当業者であれば公知の学習用モデルおよび適切な教師データを用いて生成することが可能である。
【0060】
図6(c)の例では、第2の領域は、注目構造の位置(「+」記号で表す)によって表される。第2の領域は、たとえば注目構造の位置(点)であってもよく、注目構造の位置を中心として所定の2次元寸法を有する矩形領域であってもよい。ただしこの第2の領域は、探索領域306(第1の領域)の一部であり、探索領域306からはみ出さない範囲で定義される。
【0061】
荷電粒子線装置100は、ステップ204の後に、高分解能化のための軸調整を行ってもよい。また、荷電粒子線装置100が走査透過電子顕微鏡である場合には、ステップ204の後に方位合わせを行ってもよい。
【0062】
次に、荷電粒子線装置100は、解析条件に基づき、形状解析(ステップ205)または組成解析(ステップ206)あるいはこれらの双方を実行する。すなわち、ステップ201で特定された解析条件に基づき、照射部110を介して第2の領域に対して荷電粒子線を照射し、検出部130を介して当該照射に起因する第2の信号を検出する。第2の信号は、たとえば、試料Sに荷電粒子線が照射された際に生じる電子に基づく信号であってもよいし、試料Sに荷電粒子線が照射された際に生じるX線に基づく信号であってもよい。とくに、第1の信号(探索に用いる信号)を電子に基づく信号とし、第2の信号(解析に用いる信号)をX線に基づく信号とすると、探索を効率的に実行し、解析を高精度で実行することができる。
【0063】
図7は、ステップ205の形状解析に係る処理を模式的に示す。解析領域701(第2の領域)をハッチングで示す。この例では、3個の注目構造をそれぞれ含む3個の解析領域701が、高分解能かつ高信号対雑音比(高S/N比)で撮影される。形状解析には、たとえば高倍率かつ低速のスキャンによる撮影を利用することができる。
【0064】
図8は、ステップ206の組成解析に係る処理を模式的に示す。解析領域801(第2の領域)は注目構造の位置に対応する点である。この例では、解析領域801のそれぞれにおいて特性X線によるスペクトル解析が行われる。組成解析には、たとえばエネルギー分散型X線分光(EDS)または電子線後方散乱回折(EBSD)を利用した高倍率の撮影を利用することができる。また、撮影には、高加速または大電流の荷電粒子線を用いてもよい。
【0065】
次に、荷電粒子線装置100は、解析結果を数値化する(ステップ207)。すなわち、ステップ205またはステップ206において検出された信号(第2の信号)に基づく情報を評価部(制御部151)に入力し、評価部から出力される評価結果を取得する。ここで、第2の信号に基づく情報は、第2の信号そのものであってもよいし、適切な変換または補正等を行ったものであってもよい。
【0066】
なお、ステップ207において、評価部は着目対象物に関する評価を実行するが、その具体的な処理内容の説明は省略する。具体的な処理内容は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計することができる。たとえば、ステップ205において形状解析の結果として画像が取得された場合には、公知の画像処理および信号処理等によって、着目対象物の候補の直径または面積等を評価することができる。
【0067】
図9は、評価結果の例を示す。
図9(a)はステップ205の形状解析に対応する。解析された注目構造について、その高さおよび幅が評価結果として示されている。
図9(b)はステップ206の組成解析に対応する。解析された注目構造について、その組成が評価結果として示されている。なお
図9(b)では、組成を各元素の割合を表す円グラフとして模式的に示している。
【0068】
次に、荷電粒子線装置100は、評価結果を表示する。表示は、表形式で行われてもよいし(ステップ208)、荷電粒子線装置100によって撮像された画像に重畳する形式で行われてもよいし(ステップ209)、これらの組み合わせとして行われてもよい。
【0069】
次に、荷電粒子線装置100は、評価結果を表すデータを出力する(ステップ210)。たとえば、このデータは、他のアプリケーションプログラムが処理できる形式であってもよい。このデータは、再撮像するための位置情報、画像処理の精度を上げる情報、統計データを算出できる情報、等を含んでもよい。
【0070】
図10は、評価結果の表示例を示す。このような表示は、表示部154において表示される画面1000として実現することができる。画面1000は、条件選択インタフェースの一部を構成してもよい。画面1000は、表形式部1001と、重畳部1002とを含む。
【0071】
表形式部1001では、評価結果が表形式で表示される。
図10の例では、各注目構造について、その注目構造が含まれる解析領域に対応する画像番号(「Image」)、その解析領域に含まれる注目構造のうち当該注目構造を特定する番号(「No」)、その注目構造に関する評価結果(「Score」)、その注目構造の位置(「X」および「Y」)、その注目構造の面積(「Area」)が表示されている。
【0072】
重畳部1002では、評価結果が画像に重畳して表示される。この例では、重畳部1002には評価結果を表す結果画像1003が複数表示されており、各結果画像1003に重畳して、注目構造の位置が黒い丸で示されている。また、各結果画像1003について、その画像に含まれる注目構造に関する評価結果が数値として表示されている。なお結果画像1003の内容はとくに図示していないが、たとえば解析処理によって取得された画像が表示される。
【0073】
この例では黒い丸によって注目構造の位置のみを示しているが、注目構造が形状を有する場合には、その形状が結果画像1003に重畳して表示されてもよい。たとえば、注目構造を構成する画素の色を特定の色(たとえば赤または緑)に変更してもよい。
【0074】
画面1000は、マップ部1004を含んでもよい。マップ部1004には、各結果画像1003に対応するシンボル1005が表示される。シンボル1005は、それぞれ対応する結果画像1003に関連する情報に応じて表示態様が変化する。表示態様の変化は、形状、色、色調、濃淡、大きさ、位置、等の変化を含む。
【0075】
たとえば、シンボル1005の形状(この例では矩形)は、結果画像1003の形状に応じて決定されてもよく、たとえば結果画像1003の形状と同一であってもよい。また、シンボル1005の色または濃淡は、結果画像1003に含まれる注目構造に関する評価結果に応じて決定されてもよい。また、シンボル1005の大きさは、試料Sにおける結果画像1003の大きさに応じて決定されてもよく、たとえば各結果画像1003間の相対的な大きさに応じて各シンボル1005間の相対的な大きさが決定されてもよい。また、マップ部1004におけるシンボル1005の位置は、試料Sにおける結果画像1003の位置に対応してもよい。
【0076】
また、画面1000は、ナビゲーション画像305を含んでもよい。
【0077】
以上説明するように、本実施形態に係る荷電粒子線装置100によれば、荷電粒子線装置の動作に係る条件セットを選択するだけで、探索条件および解析条件が自動的に決定される。また、この際に探索に用いる学習済みモデルも決定されるので、このモデルを用いて解析領域が自動的に決定される。このように、人手で行う作業が省略され、時間と労力が節約される。
【0078】
次に、
図5の探索条件調整ボタン507について説明する。荷電粒子線装置100は、探索条件調整ボタン507が操作されることに応じて、探索条件を自動的に調整してもよい。このような探索条件の自動調整は、たとえば、特定の荷電粒子線装置および特定の着目対象物を想定して設定された探索条件を、別の荷電粒子線装置または別の着目対象物に対して最適化するために利用することができる。
【0079】
図11は、このような探索条件の自動調整に係る荷電粒子線装置100の動作を表すフローチャートである。
図11の処理において、まず荷電粒子線装置100は、検出したい着目対象物を撮像の視野に配置する(ステップ1101)。これは荷電粒子線装置100の使用者により手動で行われてもよい。
【0080】
次に、荷電粒子線装置100は、現在指定されている条件セットに含まれる探索条件(第1の探索条件)を用いて探索を行う(ステップ1102)。たとえば、第1の探索条件に基づいて、
図2のステップ203および204を実行し、解析領域(第2の領域)を表す情報を取得する。
【0081】
次に、荷電粒子線装置100は、着目対象物(または適切な注目構造)が適切に検出できるか否かを判定する(ステップ1103)。この判定の具体的な内容は、検出された解析領域を表す情報に関する条件として、当業者が適宜設計することができる。一例として、検出された解析領域の数が所定の閾値以上である場合には、着目対象物が適切に検出できたと判定され、検出された解析領域の数が所定の閾値未満である場合には、着目対象物が適切に検出できなかったと判定される。
【0082】
着目対象物が適切に検出できた場合(たとえば、解析領域を表す情報が所定の条件を満たす場合)には、荷電粒子線装置100は処理を終了する。この場合には、現在の条件セットは変更されない。
【0083】
一方、着目対象物が適切に検出できなかった場合(たとえば、解析領域を表す情報が所定の条件を満たさない場合)には、荷電粒子線装置100は探索条件を変更する(ステップ1104)。本実施形態のように探索条件が複数の条件の組み合わせからなる場合には、その少なくとも一部を変更する。ここで、探索条件の変更は、ランダムに行われてもよいし、荷電粒子線装置100の機種に応じて行われてもよいし、探索に用いられる画像(たとえばステップ203において取得されるもの)の画質に応じて行われてもよい。このようにして、新たな探索条件(第2の探索条件)が生成される。
【0084】
次に、荷電粒子線装置100は、第2の探索条件を用いて探索を行う(ステップ1105)。たとえば、第2の探索条件に基づいて、
図2のステップ203および204を実行し、解析領域(第2の領域)を表す情報を取得する。
【0085】
次に、荷電粒子線装置100は、ステップ1103と同様にして、着目対象物(または適切な注目構造)が適切に検出できるか否かを判定する(ステップ1106)。
【0086】
着目対象物が適切に検出できた場合(たとえば、解析領域を表す情報が所定の条件を満たす場合)には、荷電粒子線装置100は、第2の探索条件を条件セットの一部として記憶する(ステップ1107)。たとえば、それまで選択されていた条件セットの探索条件を、第2の探索条件と一致するように変更する。これによって生成された新たな条件セットは、変更前の条件セットに上書きして保存されてもよいし、変更前の条件セットとは別の条件セットとして保存されてもよい。
【0087】
一方、着目対象物が適切に検出できなかった場合には、荷電粒子線装置100は所定の条件に応じてステップ1104に処理を戻し、ステップ1104~1106を含むループを実行する。この所定の条件は、たとえばループの実行回数が所定の閾値以下であることとすることができる。この所定の条件が満たされない場合(たとえばループが多数回実行された結果、実行回数が閾値を超えた場合)には、荷電粒子線装置100は
図11の処理を終了する。この場合には、現在の条件セットは変更されない。
【0088】
このような探索条件の自動調整によれば、ある特定の荷電粒子線装置または特定の着目対象物に対して必ずしも最適化されていない探索条件を、よりよく最適化することができる。たとえば、荷電粒子線装置を変更することなく、ある着目対象物に対する探索条件に基づき、別の着目対象物に対する探索条件を生成することができる。このように、1つの荷電粒子線装置を活用しつつ、着目対象物毎に具体的な探索条件を設定する時間および労力を節約することができる。
【0089】
また、同一の荷電粒子線装置によって同一の着目対象物を検出する場合でも、荷電粒子線装置のメンテナンス等によって性能が変化し、探索条件と整合しなくなる場合がある。そのような場合でも、探索条件の自動調整を行うことにより、再び探索条件を最適化することができる。
【0090】
実施形態1において、以下のような変形を施すことができる。
実施形態1では、ステップ201~204の探索処理において単一の学習済みモデルを使用した。変形例として、複数の学習済みモデルを用いて探索処理を行ってもよい。たとえば複数の条件セットを選択し、条件セットごとに特定される学習済みモデルを用いて探索を行ってもよい。その場合には、解析処理の進め方は適宜設計可能である。たとえば、各学習済みモデルの探索結果に基づいてそれぞれ解析領域を決定し、それらすべての解析領域について、それぞれ対応する解析条件で解析処理を行ってもよい。または、複数の学習済みモデルによる複数の探索結果を組み合わせ、統合された解析領域について、単一の解析条件を用いて解析処理を行ってもよい。その場合の解析条件の決定方法は適宜設計可能である。
【0091】
図12は、このような変形例に係る評価結果の表示例である。この例の画面1200では、重畳部1202に表示される結果画像1203において、異なる学習済みモデルによって検出された注目構造の位置が異なる態様で表示されている。たとえば、第1の学習済みモデルによるものは黒い丸で示され、第2の学習済みモデルによるものはグレーの五角形で示される。
【0092】
注目構造の位置を表すための表示態様の相違は任意に設計可能であり、たとえば学習済みモデルに応じて異なる形状を用いてもよく、学習済みモデルに応じて異なる色または色調を用いてもよく、学習済みモデルに応じて異なる塗りつぶしパターン(縦縞、横縞、斜め縞、グラデーション、等)を用いてもよく、学習済みモデルに応じて点滅させるか否かを異ならせてもよく、これらのうち複数を組み合わせてもよい。
【0093】
実施形態1では、探索条件および解析条件はそれぞれ複数の項目を含むが、それぞれに含まれる項目の数および内容は任意に変更することができ、たとえば単一の項目からなってもよい。
【符号の説明】
【0094】
100…荷電粒子線装置
110…照射部
111…電子源
112…鏡筒
120…試料室
130…検出部(130A…第一の検出部、130B…第二の検出部)
140…ステージ
141…試料ホルダ
151…制御部(評価部)
152…入力部
153…記憶部
154…表示部(インタフェース出力部)
160…ナビゲーション画像撮影機
201,202,203,204,205,206,207,208,209,210…ステップ
300…画面(条件選択インタフェース)
500…画面(条件選択インタフェース)
601…視野
602…オーバーラップ領域
701,801…解析領域
1000…画面(条件選択インタフェース)
1101,1102,1103,1104,1105,1106,1107…ステップ
1200…画面(条件選択インタフェース)