(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
C08J5/04 CEW
(21)【出願番号】P 2021561309
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2020042425
(87)【国際公開番号】W WO2021106630
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019214532
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】村上 眞司
(72)【発明者】
【氏名】湯川 宏和
(72)【発明者】
【氏名】羽儀 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】金森 尚哲
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-181832(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191735(WO,A1)
【文献】特開2010-084372(JP,A)
【文献】特表2017-537824(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174545(WO,A1)
【文献】特開平02-058545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と溶融加工可能なフッ素樹脂とを含む複合材料の製造方法であって、
開繊された炭素繊維と、バックテンションを3.0N/cm
2以下とした溶融加工可能なフッ素樹脂のフィルムとを重ね合わせた状態で、前記フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱し加圧することによりプリプレグを得る工程(1)、及び、
前記プリプレグを厚み方向に
2枚以上重ね合わせた状態で、前記フッ素樹脂の融点以上に加熱し加圧することにより前記複合材料を得る工程(2)を含む製造方法。
【請求項2】
前記溶融加工可能なフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、及び、ポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶融加工可能なフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.1~100g/10分であり、融点が272~323℃である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶融加工可能なフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合成樹脂等のマトリックスに強化材として炭素繊維やガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維等を混入するか又は挟み混んだ繊維強化の複合材料が数多く開発され市販されている。これらの繊維強化複合材料は、マトリックスと強化材の選択に応じて、強度、耐熱性、耐食性、電気特性、軽量性等の諸点で目的に合致した優れた性能を得ることができることから、航空宇宙、陸上輸送、船舶、建築、土木、工業用部品、スポーツ用品等の広い分野に利用されており、大きな社会的需要を有している。
【0003】
強化繊維の使用形態としては、必要な幅に複数本のフィラメントを配列したもの、フィラメントを所定寸法にカットしたもの、織物等の布状にしたもの等がある。複合材料としては、これらの強化繊維をマトリックスによって直接的に複合化するもの、あるいはフィラメントを規則的に配列したシートや織物等に合成樹脂を含浸させプリプレグと呼ばれる半製品を製造し、このプリプレグを必要に応じて適当な枚数重ね合わせ、オートクレーブ等の装置で目的とする最終製品に完成させるもの等が挙げられる。
【0004】
これらの強化繊維は引き揃えられサイジング剤で結合されたマルチフィラメントの形態で提供されており、加工時の粘度が高い熱可塑性樹脂では強化繊維束の中まで樹脂を充分に含浸することが困難であるため、強化繊維を開繊し樹脂を含浸しやすくする技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献2及び3には、開繊された炭素繊維と、ナイロン、ポリプロピレン等の非フッ素系マトリックス樹脂とを用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第97/41285号
【文献】特開2003-165851号公報
【文献】特開2012-148568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、プリプレグ作製時にフッ素樹脂フィルムが幅方向に収縮しにくい、フッ素樹脂/炭素繊維複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、炭素繊維と溶融加工可能なフッ素樹脂とを含む複合材料の製造方法であって、
開繊された炭素繊維と、バックテンションを3.0N/cm2以下とした溶融加工可能なフッ素樹脂のフィルムとを重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱し加圧することによりプリプレグを得る工程(1)、及び、
上記プリプレグを厚み方向に1枚以上重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上に加熱し加圧することにより上記複合材料を得る工程(2)を含む製造方法に関する。
【0009】
上記溶融加工可能なフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、及び、ポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記溶融加工可能なフッ素樹脂は、メルトフローレートが0.1~100g/10分であり、融点が272~323℃であることが好ましい。
【0011】
上記溶融加工可能なフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、プリプレグ作製時にフッ素樹脂フィルムが幅方向に収縮しにくい、フッ素樹脂/炭素繊維複合材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、摺動性、低誘電率等の多くの優れた特性を持ち、自動車、航空機、半導体、電気、電子、化学等の多くの分野に利用されているが他の樹脂に比べ強度が低い、線膨張係数が大きい等の課題もある。その解決策の1つとして、炭素繊維等の強化繊維との複合化が挙げられるが、ナイロン等の非フッ素系マトリックス樹脂を使用する場合と同じ条件でプリプレグを作製すると、フッ素樹脂フィルムが幅方向に収縮するという問題が発生する。鋭意検討の結果、本発明者らは、フッ素樹脂は弾性率が低く、非フッ素系樹脂と同じバックテンションでフッ素樹脂フィルムを繰り出すと、バックテンションと熱により、フッ素樹脂フィルムが幅方向に収縮することを見出した。そして、バックテンションを特定の範囲内に制御することで、上記収縮の問題が解決することを見出した。
以下、本開示を具体的に説明する。
【0014】
本開示は、炭素繊維と溶融加工可能なフッ素樹脂とを含む複合材料の製造方法であって、
開繊された炭素繊維と、バックテンションを3.0N/cm2以下とした溶融加工可能なフッ素樹脂のフィルムとを重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上に加熱し加圧することによりプリプレグを得る工程(1)、及び、上記プリプレグを厚み方向に1枚以上重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱し加圧することにより上記複合材料を得る工程(2)を含む製造方法に関する。
本開示の製造方法では、プリプレグを作製する工程(1)において、上記溶融加工可能なフッ素樹脂のフィルムが幅方向に収縮しにくい。その結果、上記複合材料を連続生産する際の品質の安定性を向上させることができる。
【0015】
工程(1)で使用する炭素繊維は、開繊されている。これにより、上記炭素繊維に上記フッ素樹脂が充分に含浸する。
開繊の方法は特に限定されず、凹凸ロールを交互に通過させる方法、太鼓型ロールを使用する方法、軸方向振動に張力変動を加える方法、垂直に往復運動する2個の摩擦体による炭素繊維束の張力を変動させる方法、炭素繊維束にエアを吹き付ける方法等を採用してよい。また、特許第3064019号公報及び特許第3146200号公報に記載される開繊方法を採用することもできる。
【0016】
上記炭素繊維は、目付が100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることがより好ましく、50g/m2以下であることが更に好ましく、また、10g/m2以上であることが好ましい。目付が低いほどフッ素樹脂の炭素繊維への含浸が容易になる。また、上記目付は30g/m2以上であってもよい。
【0017】
上記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系、セルロース系、リグニン系、フェノール系、気相成長系等が挙げられる。なかでも、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系又はレーヨン系の炭素繊維が好ましく、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維がより好ましい。
【0018】
上記炭素繊維は、表面処理されていてもよく、処理剤が使用されていてもよく、サイジング剤が使用されていてもよい。
【0019】
工程(1)で使用するフッ素樹脂は、溶融加工可能である。本明細書において、溶融加工可能であるとは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
上記溶融加工可能なフッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~50g/10分であることがより好ましい。
本明細書において、MFRは、ASTM D1238に準拠し、メルトインデクサーを用いて、フッ素樹脂の種類によって定められた測定温度(例えば、PFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は5kg)において内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0020】
上記フッ素樹脂は、融点が150~323℃であることが好ましく、200~323℃であることがより好ましく、250~323℃であることが更に好ましく、272℃~323℃であることが更により好ましく、280~320℃であることが特に好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0021】
上記フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、及び、ポリフッ化ビニリデン[PVDF]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PFA、FEP及びETFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFAが更に好ましい。
【0022】
上記PFAは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位(TFE単位)、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく重合単位(PAVE単位)を有する。
【0023】
上記PAVEとしては、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF2=CF-ORf1 (1)
(式中、Rf1は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるものが挙げられ、なかでもパーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
【0024】
上記PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位との合計に対するTFE単位の割合が70モル%以上99.5モル%未満である共重合体が好ましく、70モル%以上98.9モル%以下である共重合体がより好ましく、80モル%以上98.7モル%以下である共重合体が更に好ましい。上記PFAは、TFE単位及びPAVE単位のみからなる共重合体であってもよいし、全単量体単位に対しTFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ1Z2=CZ3(CF2)nZ4(式中、Z1、Z2及びZ3は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Z4は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF2=CF-OCH2-Rf11(式中、Rf11は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、PFAを構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0026】
上記溶融加工可能なフッ素樹脂のフィルムは、厚みが0.01~2mmであることが好ましく、0.01~1mmであることがより好ましい。
【0027】
工程(1)では、上記炭素繊維と上記フッ素樹脂のフィルムとを重ね合わせる際に、上記フィルムのバックテンションを3.0N/cm2以下とする。バックテンションを上記範囲内にすることで、プリプレグ作製時の上記フィルムの幅方向の収縮を抑制することができる。
上記バックテンションは、2.5N/cm2以下であることが好ましく、2.0N/cm2以下であることがより好ましく、1.0N/cm2以下であることが更に好ましく、0.8N/cm2以下であることが特に好ましく、また、0.05N/cm2以上であることが好ましく、0.1N/cm2以上であることがより好ましくい。
上記バックテンションは、上記フィルムの搬送方向とは逆向きに上記フィルムに対して付加される張力であり、制御機器の出力により調整することができる。制御機器としては、例えば、三菱電機製 ZKB-0.6AM/YK等が挙げられる。
【0028】
工程(1)では、上記炭素繊維及び上記フッ素樹脂のフィルムが連続的に搬送されることが好ましい。
【0029】
工程(1)では、上記炭素繊維と、バックテンションを上記範囲内とした上記フィルムとを重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上の温度に加熱し加圧することによりプリプレグを得る。加熱・加圧することで、上記フッ素樹脂が上記炭素繊維に含浸する。
上記加熱の温度は、上記フッ素樹脂の融点以上であればよいが、310℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、また、400℃以下であることが好ましい。
上記加圧の圧力は、0.01~5.0MPaであることが好ましく、0.1~1.0MPaであることがより好ましい。
上記加熱及び加圧は、上記フッ素樹脂の融点以上の温度まで加熱したロールで圧力を掛けることにより実施することが好ましい。
【0030】
上記プリプレグは、上記炭素繊維と上記フッ素樹脂とが熱融着したものであってよい。上記プリプレグにおいては、上記フッ素樹脂が上記炭素繊維に含浸していることが好ましい。
【0031】
上記プリプレグにおいては、上記炭素繊維が、上記炭素繊維と上記フッ素樹脂との合計量に対し、5~70体積%であることが好ましい。上記炭素繊維は、10体積%以上であることがより好ましく、15体積%以上であることが更に好ましく、また、60体積%以下であることがより好ましく、50体積%以下であることが更に好ましい。
【0032】
本開示の製造方法は、工程(1)で得られたプリプレグを切断することによりチョップ材を得る工程を更に含んでもよい。上記チョップ材を、工程(2)におけるプリプレグとして用いてもよい。
上記チョップ材は二次元方向にランダムに配向させて積層することができるので、炭素繊維を疑似等方に配向させることができ、得られる複合材料の、方向による強度差が少なくなる。また、複雑な形状にも容易に成形することができる。
【0033】
本開示の製造方法は、2枚以上の上記チョップ材を厚み方向に重ね合わせた状態で加熱することにより、チョップドシートを得る工程を更に含んでもよい。上記チョップドシートを、工程(2)におけるプリプレグとして用いてもよい。
【0034】
工程(2)では、上記プリプレグを厚み方向に1枚以上重ね合わせた状態で、上記フッ素樹脂の融点以上に加熱し加圧することにより、炭素繊維と溶融加工可能なフッ素樹脂とを含む複合材料を得る。
【0035】
工程(2)では、上記プリプレグを厚み方向に2枚以上重ね合わせることが好ましい。この場合、各プリプレグを構成する炭素繊維の配向は、同じであってもよく、異なってもよい。重ね合わせるプリプレグが上記チョップ材である場合は、二次元方向にランダムに配向させることが好ましい。
【0036】
工程(2)における加熱の温度は、上記フッ素樹脂の融点以上であればよいが、310℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、また、400℃以下であることが好ましい。
【0037】
工程(2)における加圧の圧力は、0.05~10MPaであることが好ましく、2~5MPaであることがより好ましい。
【0038】
工程(2)では、成形を同時に行って、上記炭素繊維及び上記フッ素樹脂を含む複合成形品を得てもよい。この場合は、例えば、上記の加熱及び加圧を、圧縮成形機を用いて行えばよい。
【0039】
本開示の製造方法により得られる複合材料は、2枚以上の上記プリプレグから得られる場合、2枚以上の上記プリプレグが一体化されていることが好ましい。ここで、一体化とは、上記プリプレグ同士が熱融着し、1の材料を構成することを意味する。熱融着した上記プリプレグ同士の界面は、必ずしも明確でなくてよい。
【0040】
上記複合材料においては、上記炭素繊維が、上記炭素繊維と上記フッ素樹脂との合計量に対し、5~70体積%であることが好ましい。上記炭素繊維は、10体積%以上であることがより好ましく、15体積%以上であることが更に好ましく、また、60体積%以下であることがより好ましく、50体積%以下であることが更に好ましい。
【0041】
上記複合材料は、圧縮成形等の公知の成形方法により成形し、成形品とすることができる。また、上述のように、工程(2)において成形を行うこともできる。
【0042】
上記複合材料は、航空宇宙、陸上輸送、船舶、建築、土木、工業用部品、スポーツ用品等の広い分野に利用することができる。なかでも、半導体洗浄装置用の部材に好適に利用することができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
(1)MFR
ASTM D3307に準拠し、測定温度372℃、荷重5kgにおいてノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量を測定した。
【0045】
実施例1
<UDシート(プリプレグ)の作製>
以下の材料を用いて、UDシートを作製した。
炭素繊維束(東レ社製T700SC-12000-60E)
PFAフィルム(MFR14g/10分、融点306℃、厚み0.05mm)
公知の開繊方法を用い、上記炭素繊維束5本をそれぞれ幅42mmに開繊して幅方向に並べ、シート状にした幅210mmの開繊炭素繊維シート(目付38.1g/m2)を作製した。この開繊炭素繊維シートと上記PFAフィルムとを、上記PFAフィルムのバックテンションを制御機器(三菱電機製 ZKB-0.6AM/YK)の出力を5%以下とすることで、0.6N/cm2として積層し、360℃の加熱温度に設定された加熱加圧ロール間を走行させ(線速:10m/min)、UDシートを作製した。上記PFAフィルムが幅方向に収縮することなく、Vf(炭素繊維体積含有率)29.7%、厚み0.072mmのUDシートを得ることができた。
【0046】
実施例2
PFAフィルムの厚みを0.025mmにし、バックテンションを0.25N/cm2にした以外実施例1と同様にしてUDシートを作製した。上記PFAフィルムが幅方向に収縮することなく、Vf45.8%、厚み0.046mmのUDシートを得ることができた。
【0047】
実施例3
PFAフィルムの厚みを0.050mmにし、バックテンションを2.5N/cm2にした以外実施例1と同様にしてUDシートを作製した。上記PFAフィルムが幅方向に2~3mm程度収縮したが、Vf29.7%、厚み0.072mmのUDシートを得ることができた。
【0048】
実施例4
上記炭素繊維束3本をそれぞれ幅75mmに開繊して幅方向に並べ、シート状にした225mmの開繊炭素繊維シート(目付26.7g/m2)を作製した以外実施例1と同様にしてUDシートを作製した。上記PFAフィルムが幅方向に2~3mm程度収縮したが、Vf22.7%、厚み0.064mmのUDシートを得ることができた。
【0049】
<チョップ材の作製>
上記のUDシートを用いて、公知の供給機構及び切断機構により、繊維方向に沿って幅5mm、繊維方向に直交する方向に沿って長さ20mmに切断して、チョップ材を作製した。
【0050】
<チョップドシートの作製>
上記のUDシートを用いて、特開2016-27956号公報記載の方法によりチョップドシートを作製した。この方法では、UDシート切断機構、チョップ材搬送機構、シート一体化機構、シート巻取機構を用いた。
先ず、UDシート切断機構にてUDシートを繊維方向に沿って幅5mmに切断し、繊維方向に直交する方向に沿って長さ20mmに切断してチョップ材を作製した。
次に得られた幅5mm×長さ20mmのチョップ材を搬送ベルト上に自然落下させて分散させた。ベルト上に重ねられたチョップ材は厚さ方向に2枚以上重ねられたものである。
次に360℃の加熱温度に設定された加熱ローラでチョップ材を溶融一体化させ(線速:0.6m/min)、チョップドシートを作製した。得られたチョップドシートは、目付量500g/m2、厚み0.6mmであった。
【0051】
<複合材料の作製>
上記のUDシート、チョップ材、チョップドシートのそれぞれから、公知のプレス成形機を用いて複合材料を作製した。
UDシートからの作製は、幅298mm×長さ298mmとなるようにUDシートを組み合わせ、成形品厚みが40mmになるように、940枚積層し、金型を360℃の加熱温度に設定し、5MPaの圧力で5分間加熱加圧した。その後、金型を30℃の温度に設定し、7MPaの圧力で20分間加圧した。
【0052】
比較例1
上記開繊炭素繊維シートと上記PFAフィルムとを、上記PFAフィルムのバックテンションを5.0N/cm2として積層したこと以外は実施例2と同様にして、UDシートを作製しようとしたが、加熱加圧ロール間を走行させる際に上記PFAフィルムが長さ方向に伸び、幅方向に20mm以上収縮し、厚みも変化したため、設定した仕様でのUDシートを得ることができなかった。