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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】高速薬剤送達のための医療用噴霧器
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/02 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
A61M11/02 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020505879
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018043269
(87)【国際公開番号】W WO2019027708
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-04-01
(31)【優先権主張番号】62/540,225
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521552866
【氏名又は名称】メドライン インダストリーズ リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ドワイヤー ダニエル ピー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム エリン
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5584285(US,A)
【文献】米国特許第5875774(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0157663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0114090(US,A1)
【文献】特表2000-504603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0054099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって吸入される液状製剤を霧化するように構成された噴霧器であって、
前記液状製剤を保持するように構成されたリザーバを定めるとともに、圧縮ガスの流れを受け取るように構成された圧縮ガス通路を定めるジャーと、
前記ジャーに接続されて前記噴霧器内に内部チャンバを定めるキャップと、
を備え、
前記圧縮ガス通路は、前記ジャーによって定められる噴射口において終端し、該噴射口から前記液状製剤及び前記圧縮ガスが排出されて、前記圧縮ガスに同伴した前記液状製剤を有するエアロゾル流が形成され、
前記キャップは、
周囲室内空気流のための入口を提供するように構成された同伴ポートであって、この同伴ポートが前記同伴ポートを介して吸入するための吸入経路を提供し且つ前記同伴ポートを介して呼気するための呼気経路を提供する前記同伴ポートと、
前記同伴ポートと流体連通する第1の開口部、及び前記内部チャンバと流体連通する第2の開口部を有し、前記同伴ポートと共に前記周囲室内空気のための同伴経路を定める同伴煙突と、
前記同伴煙突の前記第2の開口部の下方に所定の距離だけ間隔を空けて位置し、前記噴霧器の噴霧速度を高めるために前記内部チャンバ内に前記周囲室内空気流を提供するように構成された少なくとも1つの同伴通気口を定めるデフレクタベースと、を含み、
前記少なくとも1つの同伴通気口は、前記エアロゾル流に前記周囲室内空気を同伴させて、前記ユーザによって吸入される周囲空気同伴エアロゾルスプレーを形成するように構成される、ことを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの同伴通気口は、0インチよりも大きく0.45インチ以下の高さを有する、請求項1に記載の噴霧器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの同伴通気口は、0.12インチの高さを有する、請求項1又は2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記デフレクタベースを前記同伴煙突に接続する複数の支持フィンをさらに備える、請求項1乃至3の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの同伴通気口の各々は、隣接する支持フィン間に設けられる、請求項4に記載の噴霧器。
【請求項6】
前記キャップは、前記エアロゾル流内の粒子をさらに霧化して、前記ユーザからの呼気が前記同伴経路を通じて前記同伴ポートから前記噴霧器外に液状製剤を運ぶのを防ぐように構成された、前記デフレクタベースから延びる衝突部材をさらに含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項7】
前記衝突部材は、半球面を含む、請求項6に記載の噴霧器。
【請求項8】
前記衝突部材の中心は、前記噴射口の軸と整列する、請求項6又は7に記載の噴霧器。
【請求項9】
前記同伴ポートの流動軸は、前記同伴煙突の流動軸に対して垂直である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項10】
前記キャップは、前記ユーザに前記エアロゾル流を出力するための、ユーザインターフェイスに接続するように構成されたエアロゾル流出口をさらに含む、請求項1乃至9の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項11】
前記エアロゾル流出口は、前記ユーザインターフェイスに着脱可能に接続するように構成される、請求項10に記載の噴霧器。
【請求項12】
前記ユーザインターフェイスは、マウスピース又呼吸マスクである、請求項10又は11に記載の噴霧器。
【請求項13】
前記エアロゾル流出口は、吸気及び呼気中に前記ユーザの口からの唾液を捕捉するように構成された唾液捕獲部をさらに含む、請求項10乃至12の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項14】
前記キャップは、前記ジャーに着脱可能に接続される、請求項1乃至13の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項15】
前記デフレクタベースは、ディスクを含む、請求項1乃至14の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項16】
前記同伴ポートは、PEEP弁又はフィルタに接続するように構成される、請求項1乃至15の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項17】
前記同伴煙突は、前記噴射口の長手方向軸と整列する長手方向軸を含む、請求項1乃至16の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項18】
前記同伴煙突は、概ね管状である、請求項1乃至17の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項19】
前記エアロゾル流内の粒子は、標的とする下気道の堆積物のために1~5ミクロンの空気動力学的直径を有する、請求項1乃至18の何れか1項に記載の噴霧器。
【請求項20】
前記噴霧器は、前記ユーザの吸気及び呼気中に前記液状製剤を連続噴霧するように構成される、請求項1乃至19の何れか1項に記載の噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2017年8月2日に出願された米国仮特許出願第62/540,225号に対する優先権を主張するものであり、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、一般にエアロゾル送達装置に関し、具体的には、患者が吸入するエアロゾルスプレー中に液状製剤を素早く噴霧するように構成された医療用噴霧器に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用噴霧器は、ユーザによって吸入される液状製剤をエアロゾル化するために使用される。エアロゾルは、気体の流体ストリーム中に液状製剤の微細液滴を分散させることによる噴霧プロセスを介して生成される。その後、この霧状の薬剤をユーザの肺の気道内に送達することができ、このことは肺の高透過性に起因して医療に非常に有用となり得る。従って、肺に吸入された薬剤は容易にユーザの血流に入り込んで、ユーザの残りの身体全体に分散することができる。
【0004】
医療用噴霧器から生じる薬用エアロゾル粒子は、ユーザに対して安全かつ効果的な治療を行うために十分にサイズ設定しなければならない。通常、ユーザは、1~5マイクロメートルの空気動力学的直径を有するエアロゾル粒子を吸入できると考えられる。多くの従来の医療用噴霧器は、2マイクロメートル未満の空気動力学的直径を有するエアロゾル粒子を生成し、これではユーザの肺の肺胞内に粒子が堆積してしまう。他の従来の医療用噴霧器は、5マイクロメートルを超える空気動力学的直径を有するエアロゾル粒子を生成し、これでは粒子が肺に到達する代わりに上気道の表面上に堆積してしまう。吸入時に薬用エアロゾル粒子がユーザの下気道内に堆積するのを保証するには、エアロゾル粒子の理想的な呼吸可能粒子サイズ範囲は1マイクロメートル~5マイクロメートルである。
【0005】
ユーザの全体的な治療時間を短縮して臨床医のワークフローを最大化するには、しばしば高速噴霧速度が望ましい。しかしながら、従来の素早くエアロゾルを生成する噴霧器は、エアロゾル化された薬剤の有益な粒度分布を維持することができない。この理由は、このような従来の噴霧器の噴霧速度を高めると、ユーザが安全かつ効果的に吸入するにはしばしばエアロゾル粒子が大きくなり過ぎるからである。従来の噴霧器の噴霧速度、並びに従来の噴霧器によって生成される対応する呼吸可能なエアロゾル粒子のサイズには大きな不一致がある。
【0006】
さらに、従来の噴霧器の中には噴霧プロセス中に室内空気を同伴するものもあるが、このような同伴には、ユーザが噴霧器を通じて室内空気を吸い込もうと努力することが必要になる。噴霧器内への空気の流れを高めようとするユーザの努力は、ユーザの肺活量及びスタミナを含むユーザの健康状態に依存するので、このようなユーザの努力に依拠すると有効性レベルが異なってしまう恐れがある。従って、健康状態の悪いユーザは、このような従来の噴霧器内に十分な量の室内空気を効果的に同伴できないことが多い。また、このような噴霧プロセス中に室内空気を同伴する従来の噴霧器に依拠するユーザは、噴霧器のジャー内の液体消費率が低下したり、液状製剤が同伴流路を通じて漏れることによってユーザの手及び顔に吹き出してしまったりすることなどの悪影響を受けることも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ユーザの治療時間を短縮するために高速噴霧送達率を有し、従ってユーザコンプライアンスに役立つとともに臨床医のワークフロー効率も高める改善された噴霧器が必要とされている。標的とする下気道堆積のために1~5マイクロメートルの有益なエアロゾル粒度分布を維持したままで噴霧器から素早くエアロゾルを噴霧することがさらに望ましい。さらに、ジャー内の液体消費率の低下、及び同伴経路を通じた噴霧器外への液状製剤の噴霧などの悪影響を引き起こさない医療用噴霧器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のニーズは、ユーザによって吸入される液状製剤を霧化するように構成された噴霧器を有する本開示によって大幅に満たされる。噴霧器は、液状製剤を保持するように構成されたリザーバを定めるとともに、圧縮ガスの流れを受け取るように構成された圧縮ガス通路を定めるジャーを含むことができる。圧縮ガス通路は、ジャー及びジェットによって定められた噴射口において終端し、噴射口からは、液状製剤及び圧縮ガスが排出されて、圧縮ガスに同伴した液状製剤を有するエアロゾル流が形成される。ジャーには、噴霧器内に内部チャンバを定めるキャップが接続される。キャップは、周囲室内空気流のための入口を提供するように構成された同伴ポートと、同伴ポートと流体連通する第1の開口部、及び内部チャンバと流体連通する第2の開口部を有し、同伴ポートと共に周囲室内空気のための同伴経路を定める同伴煙突と、同伴煙突の第2の開口部の下方に所定の距離だけ間隔を空けて位置し、噴霧器の噴霧速度を高めるために内部チャンバ内に周囲室内空気流を提供するように構成された少なくとも1つの同伴通気口を定めるデフレクタベースとを含むことができ、少なくとも1つの同伴通気口は、エアロゾル流に周囲室内空気を素早く同伴させて、ユーザによって吸入される周囲空気同伴エアロゾルスプレーを形成するように構成される。
【0009】
本開示の別の態様によれば、キャップは、エアロゾル流内の粒子をさらに霧化して、ユーザからの呼気が同伴経路を通じて同伴ポートから噴霧器外に液状製剤を運ぶのを防ぐように構成された、デフレクタベースから延びる衝突部材をさらに含むことができる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの同伴通気口は、0インチよりも大きく約0.45インチ以下の高さを有する。
【0011】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの同伴通気口は、約0.12インチの高さを有する。
【0012】
本開示の別の態様によれば、複数の支持フィンが、デフレクタベースを同伴煙突に接続する。
【0013】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの同伴通気口の各々は、隣接する支持フィン間に設けられる。
【0014】
本開示の別の態様によれば、衝突部材は半球面を含む。
【0015】
本開示の別の態様によれば、衝突部材の中心は、噴射口の軸と整列する。
【0016】
本開示の別の態様によれば、同伴ポートの流動軸は、同伴煙突の流動軸に対して実質的に垂直である。
【0017】
本開示の別の態様によれば、同伴ポートは、吸入経路を提供するようにさらに構成される。
【0018】
本開示の別の態様によれば、同伴ポートは、呼気経路を提供するようにさらに構成される。
【0019】
本開示の別の態様によれば、キャップは、ユーザにエアロゾル流を出力するための、ユーザインターフェイスに接続するように構成されたエアロゾル流出口をさらに含むことができる。
【0020】
本開示の別の態様によれば、エアロゾル流出口は、ユーザインターフェイスに着脱可能に接続するように構成される。
【0021】
本開示の別の態様によれば、ユーザインターフェイスは、マウスピース又呼吸マスクである。
【0022】
本開示の別の態様によれば、エアロゾル流出口は、吸気及び呼気中にユーザの口からの唾液を捕捉するように構成された唾液捕獲部をさらに含む。
【0023】
本開示の別の態様によれば、キャップは、ジャーに着脱可能に接続される。
【0024】
本開示の別の態様によれば、デフレクタベースはディスクを含むことができる。
【0025】
本開示の別の態様によれば、同伴ポートは、PEEP弁又はフィルタに接続するように構成される。
【0026】
本開示の別の態様によれば、同伴煙突は、噴射口の長手方向軸と整列する長手方向軸を含む。
【0027】
本開示の別の態様によれば、同伴煙突は概ね管状である。
【0028】
本開示の別の態様によれば、エアロゾル流内の粒子は、標的とする下気道堆積のために1~5ミクロンの空気動力学的直径を有する。
【0029】
本開示の別の態様によれば、噴霧器は、ユーザの吸気及び呼気中に液状製剤を連続噴霧するように構成される。
【0030】
以上、本明細書における本開示のいくつかの実施形態の詳細な説明をより良く理解できるとともに、当技術分野に対する本発明の寄与をより良く理解できるように、本開示のいくつかの実施形態について概説した。以下では、本明細書に添付する特許請求の範囲の主題を形成する本開示のさらなる実施形態について説明する。
【0031】
この点に関し、本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、以下の説明又は図面に示す構造の詳細及び構成要素の配置に用途が限定されるものではないと理解されたい。本開示は、説明する以外の実施形態が可能であるとともに、様々な形での実施及び実行が可能である。また、本明細書で使用する表現及び用語、並びに要約は説明を目的とするものであり、限定とみなすべきではないと理解されたい。
【0032】
従って、当業者であれば、本開示の基礎となる概念は、本開示の複数の目的を達成するための他の構造、方法及びシステムの設計基盤として容易に利用することもできると理解するであろう。従って、特許請求の範囲は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱しない限りこのような同等の構造も含むと見なすことが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示の1又は2以上の実施形態による装置を示す斜視図である。
図2図1の装置を示す側面図である。
図3】本開示の1又は2以上のさらなる実施形態における図2の装置を示す断面図である。
図3a図3に示す装置の拡大断面図である。
図4】線4-4に沿った図2の装置を示す断面図である。
図5】線5-5に沿った図2の装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、全体を通じて同じ部品を同じ参照番号で示す図面の図を参照しながら本開示を説明する。本開示による1又は2以上の実施形態は、図1図5を通じて示すような高速薬剤送達のための呼吸強化型医療用噴霧器10を提供する。噴霧器10は、患者などのユーザによる安全かつ効果的な吸入のために、エアロゾルスプレー又はミスト内に液状製剤をエアロゾル化するように構成される。噴霧器10は、液状製剤を保持するように構成されたジャー20と、ジャー20と協働するように構成されたジェット30と、ジャー20に着脱可能に接続するように構成されたキャップ40とを含む。
【0035】
ジャー20は、外囲壁21を含み、液状製剤などの液体24を保持するように構成されたリザーバ22を定める。ジャーは、圧縮ガスの流れを受け取るように構成された圧縮ガス通路26をさらに定める。具体的に言えば、ジャー20は、囲壁21の外側に延びる第1の部分と、リザーバ22内に延びる第2の部分とを有する圧縮ガスノズル23を含む。圧縮ガスノズル23は、ガス入口27とガス出口28とを有する圧縮ガス通路26を含む。ジェット30は、ジャー20に着脱可能に接続され、リザーバ22内に延びる圧縮ガスノズル23の第2の部分に締まり嵌めによって着脱可能に接続するようにさらに構成することができる。また、圧縮ガスノズル23及びジェット30は、いずれも概ね管状形状とすることができる。
【0036】
ジェット30は、ジャー20と協働することによって、ジェット30と圧縮ガスノズル23の第2の部分との間に流体流路34を定める間隙が配置されるように構成される。ジェット30は、リザーバ22内に延びる圧縮ガスノズル23の第2の部分を受け取るように構成された内部空洞を形成するジェット壁を含む。流体流路34は、鉛直流部分及び水平流部分を含む。圧縮ガス入口27を有する圧縮ガスノズル23の第1の部分は、加圧ガス源又はガス供給管体に接続するように構成される。圧縮ガス通路26は、圧縮ガスの出力が分散されるように、流体流路34に対して実質的に垂直に配置された出口平面を有するガス出口28において終端する。
【0037】
ジェット30は、ジェットの内部空洞の端部に位置して圧縮ガス通路26及び流体流路34の両方と流体連通する噴射口32をさらに含む。具体的に言えば、圧縮ガス通路26のガス出口28は噴射口32において終端し、この噴射口32を通じて液状製剤及び圧縮ガスが排出されて、圧縮ガスに同伴する液状製剤を有する初期エアロゾル流を形成する。
【0038】
圧縮ガス出口28及び噴射口32は、ガス出口28及び噴射口32を流れる圧縮ガスの圧力低下を引き起こすベンチュリ効果を生み出すことによって噴霧器10の圧力-流量関係を制御するように構成される。従って、噴霧器10の動作中には、圧縮ガスがガス出口28から出て噴射口32に入り込み、流路34内に発生した負圧によって液体24を流体リザーバ22から流体流路34内に引き込む局所的真空を形成する。ガス出口28の直径は、約0.010~0.025インチとすることができる。噴射口32は、流体流路34内に引き込まれた液状製剤24が噴射口32を通じてさらに引き込まれ、ガス出口28から受け取られた圧縮ガスと完全に混合されるように、十分な真空が維持されることを確実にするように構成される。このプロセスは、液状製剤を霧化して、噴射口32からエアロゾル流が排出されるようにする。その後、エアロゾル流は、周囲室内空気流に同伴して、以下でさらに説明するような、ユーザが吸入する周囲室内空気同伴エアロゾルスプレーをもたらす。いくつかの実装では、やはり以下でさらに説明するように、周囲室内空気流の同伴前又はこれと同時に、衝突部材によってエアロゾル流内の液体粒子をさらに霧化することもできる。
【0039】
キャップ40は、ジャー20に接続されて噴霧器内に内部チャンバ42を定める。キャップ40及びジャー20は、互いに着脱可能に接続するように構成することができる。いくつかの実装では、キャップ40が、ジャー20のジャー締結具29に確実に係合するように構成されたキャップ締結具41を含む。キャップ締結具41はキャップねじ山を含むことができ、ジャー締結具29は、キャップねじ山に係合してキャップ40をジャー20にねじ係合させるジャーねじ山を含むことができる。例えば、ジャー20の囲壁21の近位端は、キャップ40の遠位端から延びる環状接続カラー43上に設けられた対応するキャップねじ山にねじ係合するジャーねじ山を含むことができる。他の実装では、キャップ40をジャー20にスナップ嵌め固定するために、キャップ締結具41がフランジを含んでジャー締結具29が突出部を含み、或いはキャップ締結具41が突出部を含んでジャー締結具29がフランジを含むことによって、フランジ及び突出部が互いに嵌合係合(matingly engage)するように構成することができる。
【0040】
キャップは、内部チャンバ42内に延びて周囲室内空気流の入口として機能するように構成された同伴ポート44と、内部チャンバ42内に位置して周囲室内空気流がエアロゾル流に同伴するための同伴経路を提供するように構成された同伴煙突46と、ユーザに周囲室内空気同伴エアロゾルスプレーを送達するための、マウスピース又はマスクなどのユーザインターフェイスに取り外し可能に付着するように構成されたエアロゾルポート56とを含む。煙突は、同伴ポート44と流体連通する第1の開口部46Aと、内部チャンバ42と流体連通する第2の開口部46Bとを含む。同伴ポート44、同伴煙突46及びエアロゾルポート56の各々は、概ね管状とすることができる。
【0041】
同伴ポート44は、内部チャンバ42内に向かう周囲室内空気流のための入口ポート、及びユーザの呼気流を排出するための出口ポートとしての役割を果たすように構成される。いくつかの実装では、同伴流路とは別の二次流路を含めることにより、呼気流に対する低い抵抗又は二次流路と連通する弁要素によってユーザによる呼気が二次流路を流れるようにすることができる。さらに、同伴ポート44は、PEEP弁及びフィルタなどの様々な呼吸回路アクセサリに着脱可能に接続するように構成される。具体的には、このような呼吸回路アクセサリを受け入れるために、同伴ポート44の外径を約15mmとすることができる。
【0042】
キャップ40は、同伴煙突46の第2の開口部46Bの下方に間隔をあけたディスク又はバッフルなどのデフレクタベース50も含む。デフレクタベース50は、少なくとも1つの支持フィンによって支持され、図4及び図5に示すような3つの支持フィン48A、48B、48Cなどの複数の支持フィンによって支持することができる。各支持フィン48A、48B、48Cは、同伴煙突46、キャップ40の囲壁、又はこれらの組み合わせから延びることができる。いくつかの実装では、複数の支持フィン48A、48B、48Cが、同伴煙突46の周辺部又はキャップ40の囲壁の周囲で半径方向に等間隔を空けることができる。
【0043】
キャップ40は、デフレクタベース50の中心から噴射口32に向かう方向に延びる衝突部材52をさらに含む。衝突部材52はドーム形とすることができ、第2の開口部46Bを部分的に遮断することによって、ユーザの呼気が同伴煙突46を通じて液状製剤を噴霧器外に運ぶのを防ぐように構成される。ドームは、約0.125インチの半径を有することができる。ドームの頂点は、デフレクタベース50から所定の距離Dだけ離れて間隔を空けることができ、Dは約0.18インチとすることができる。この配置は、液体が同伴流路を介して噴霧器外に噴霧されてユーザの手又は顔に降りかかるのを防ぐのに役立つ。また、同伴ポート44の長手方向軸は、同伴ポート44を通じてユーザの呼気をユーザから離して向け直すことによって、同伴流路を介して液体が噴霧器外に吹き出すことなどの悪影響からさらに保護するように、同伴煙突46の長手方向軸に対して実質的に垂直に配置される。
【0044】
上述したように、液状製剤24及び圧縮ガスは、噴霧器の動作中に噴射口32から分散するとエアロゾル流を形成する。噴射口32は、エアロゾル流内の液体粒子が衝突部材52の表面に衝突できるように衝突部材52の中心に隣接して整列することにより、エアロゾル流内の粒子をさらに霧化する。噴射口32、及び衝突部材52の中心は、噴射口32から排出されたエアロゾル流がドーム形衝突部材の湾曲面にぶつかることによって、標的とするユーザの肺の下気道に堆積する1~5マイクロメートルの空気動力学的直径を有する呼吸可能なエアロゾル粒子を含むエアロゾル流を形成するように、約0.010インチとすることができる所定の距離Gだけ間隔を空けることができる。
【0045】
デフレクタベース50と同伴煙突46の第2の開口部46Bとの間には、少なくとも1つの同伴通気口54が間隔を空けて配置される。複数の支持フィン48A、48B、48Cを有する実装では、これに対応してデフレクタベース50と同伴煙突46の第2の開口部46Bとの間に複数の同伴通気口54が設けられて、各同伴通気口54が隣接する支持フィン間に配置されるようになる。各同伴通気口54は、同伴煙突46を通じてエアロゾル流内に供給される周囲室内空気を素早く同伴して、ユーザが吸入する周囲空気同伴エアロゾルスプレーを形成するように構成される。
【0046】
使用中には、圧縮ガス入口27から噴霧器10内に高圧の圧縮ガスが入り込んで圧縮ガス通路26内に移動する。ガス通路26を流れる圧縮ガスは、ガス出口28を流れる際に高速ガスに変換される。この高速ガスは、流体流路34の一部を通過して噴射口32に入り込み、リザーバ22から流体流路34を通じて液状製剤24を噴射口32内に引き込む真空を形成し、ここで液状製剤が圧縮ガスと混合される。上述したように、この液状製剤24と圧縮ガスの複合流は、その後にエアロゾル流として噴射口32から排出される。液状製剤が高圧ガスによって噴射口32を通じてエアロゾル化されると、リザーバ22から流体流路34を通じて交換用の液状製剤22が連続的に引き上げられる。エアロゾル流が衝突部材52に接触すると、エアロゾル流内の粒子が内部チャンバ42内でさらに霧化される。
【0047】
また、ガス出口28及び噴射口32において生み出されたベンチュリ効果も、同伴ポート44及び同伴煙突46によって定められた同伴経路を介して外部の周囲室内空気を内部チャンバ42内に引き込む。この周囲室内空気は、噴霧速度、従って結果として得られる周囲空気同伴エアロゾルスプレーをユーザに送達する処理時間又は速度を高めるために、噴霧器の内部チャンバ42に引き込まれてエアロゾル流に同伴する。周囲室内空気は、ベンチュリ効果に起因して噴霧器の内部チャンバ42と外部周囲室内空気との間に生じる圧力差によって、同伴ポート44の同伴流路及び同伴煙突46を通じて自動的に内部チャンバ42に引き込まれる。従って、ユーザは、呼吸中に噴霧器10内への周囲室内空気流を高めるためにさらなる労力を費やす必要がない。
【0048】
各同伴通気口54は、噴射口32の付近に配置されて、上述したベンチュリ効果がエアロゾル流に同伴する周囲室内空気流を自動的に引き込んで噴霧器の全体的速度を高めるような寸法にされる。同伴通気口54が大き過ぎる場合には、周囲室内空気がベンチュリ効果を介して噴霧器内に自動的に引き込まれなくなる。これとは逆に、同伴通気口54が小さ過ぎる場合には、ユーザによる呼気が困難になる可能性があり、有害な流体蓄積が発生することによって薬剤の損失をもたらす恐れがある。従って、デフレクタベース50は、噴霧速度を高める一方で1~5ミクロンの空気動力学的直径を有する室内空気同伴エアロゾル粒子ももたらすために、同伴煙突46の第2の開口部46Bから所定の距離Hだけ間隔を空ける。室内空気同伴エアロゾルスプレー中の粒子が1~5ミクロンの空気動力学的直径を有することを確実にするために、各同伴通気口の高さHは、0インチよりも大きく約0.45インチ以下である。いくつかの実装では、1~5ミクロンの空気動力学的直径を有するエアロゾルスプレーの粒子をもたらし続けながら、ジャーから生じたベンチュリによって周囲室内空気が素早く同伴することを確実にするために、各同伴通気口54が約0.12インチの高さHを有する。周囲室内空気がエアロゾル流に素早く同伴することをさらに確実にするために、同伴煙突46の第2の開口部46Bは、約0.59インチの直径及び約0.27平方インチの断面積を有することができ、同伴ポート44は、約0.52インチの直径及び約0.21平方インチの断面積を有することができる。
【0049】
各同伴通気口54は、衝突部材52に隣接して配置され、同伴煙突46の長手方向軸を横切る方向に開口する。これにより、衝突部材において発生したエアロゾル流に周囲室内空気が同伴するとともに、内部チャンバ42の外周において開口部56Aに向かい、同伴ポート56を通じて素早く送達されてユーザによって吸入されることが可能になる。噴霧器がユーザによる吸気中及び呼気中に連続して使用されるように構成されたいくつかの実装では、噴霧器のリザーバ22内に保持された液状製剤24の汚染を防ぐために、エアロゾルポート56が、その内部に位置して吸気中又は呼気中にユーザの口から生じるあらゆる唾液を収集するように構成された唾液捕獲部(saliva catch)58を含むことができる。
【0050】
噴霧器の内部チャンバ42内でエアロゾル流に周囲室内空気を同伴させると、エアロゾルポート56を通じてユーザに排出される、結果として得られる周囲室内空気同伴エアロゾルスプレーの送達速度が高まる。具体的には、衝突部材52において形成されるエアロゾル流に周囲室内空気が同伴すると、結果として得られる室内空気同伴エアロゾルスプレーが、ユーザによって吸入されるエアロゾルポート56に向かって加速し、従って呼吸可能な薬剤が素早くユーザに送達される。また、周囲室内空気は、ユーザの努力を必要とせずにエアロゾル流に同伴して、噴霧器内への空気流を増強する。
【0051】
上述したように、エアロゾルポート56を通じてユーザに排出される、結果として得られる室内空気同伴エアロゾル粒子の空気動力学的直径は、標的とする肺の下気道堆積にとって理想的な呼吸可能範囲である1~5ミクロンである。周囲室内空気がエアロゾル流に同伴すると、ユーザによって吸入されるエアロゾルポート56を通じた、結果として得られる室内空気同伴エアロゾルスプレーの送達速度が高まる一方で、同伴煙突46の第2の開口部46Bに対するデフレクタベース50の位置、及び噴射口32に対する衝突部材52の位置が、エアロゾルスプレーが同伴流路に入り込んで噴霧器の同伴ポート44から吹き出るのを防ぐ。液状製剤を素早く噴霧しながら有益な粒子サイズ分布を維持し続ける噴霧器10の能力は、ユーザの治療時間を短縮し、従って治療中に介護者がユーザと過ごす時間も短縮し、これによって臨床ワークフロー効率を改善するのに役立つことができる。治療時間が短くなると、使用中に噴霧器10を保持するために必要な時間も短くなるので、ユーザコンプライアンスがさらに良好になる。
【0052】
詳細な仕様からは、本開示の多くの特徴及び利点が明らかであり、従って添付の特許請求の範囲では、本開示の実際の趣旨及び範囲に含まれる本開示の全てのこのような特徴及び利点を対象とするように意図される。端点による数値範囲の記載は、その範囲内及びその境界上の全ての数字及び部分範囲を含む(例えば、1~4は、1、1.5、1.75、2、2.3、2.6、2.9など、及び1~1.5、1~2、1~3、2~3.5、2~4、3~4などを含む)。さらに、当業者には数多くの修正例及び変形例が容易に浮かぶと思われるので、図示し説明した正確な構造及び動作に本開示を限定することは望ましいことではなく、従って全ての好適な修正物及び同等物を本発明の範囲に含めることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 噴霧器
20 ジャー
21 外囲壁
22 リザーバ
23 圧縮ガスノズル
24 液体(液状製剤)
26 圧縮ガス通路
27 ガス入口
28 ガス出口
29 ジャー締結具
30 ジェット
32 噴射口
34 流体流路
40 キャップ
41 キャップ締結具
42 内部チャンバ
43 環状接続カラー
44 同伴ポート
46 同伴煙突
46A 第1の開口部
46B 第2の開口部
48A 支持フィン
48B 支持フィン
50 デフレクタベース
52 衝突部材
54 同伴通気口
56 同伴ポート
56A 開口部
58 唾液捕獲部
図1
図2
図3
図3A
図4
図5