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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20221216BHJP
   F25B 1/04 20060101ALI20221216BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20221216BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F04C29/04 B
F25B1/04 E
F04C18/356 J
F04C29/00 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018085903
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190409
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】飯高 誠之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-137378(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103759477(CN,A)
【文献】特開2017-015058(JP,A)
【文献】特開昭59-000588(JP,A)
【文献】特開昭58-150093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/00-18/56
F25B 1/04- 1/10
F04C 29/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器が順に配置された冷凍サイクル装置で、
前記圧縮機は、圧縮室の内部で旋回するピストンにより冷媒を圧縮するロータリ圧縮機であり、
一端が前記圧縮機以外の冷凍サイクルに接続され、他端が前記圧縮機に接続され、前記圧縮機にインジェクション冷媒を供給するインジェクション配管を備え、
前記インジェクション配管は、前記圧縮機の内部に設けられたインジェクション流路を経て、前記圧縮室に連通するインジェクション孔に接続され、前記インジェクション孔は、前記ピストンの旋回により開閉する機構を有する冷凍サイクル装置において、
前記インジェクション孔の形状は長孔であり、長孔の長手方向は、シリンダの内周と同心円の円周における前記インジェクション孔の中心位置での接線方向と略平行の方向であり
前記インジェクション流路はピストン端面に対して水平方向に設置し、
前記インジェクション孔と前記インジェクション流路とを接続するインジェクション孔接続流路は、鉛直方向に対して傾斜しており、当該傾斜方向は、前記ピストンの旋回方向と逆向きである、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮室内部に連通するインジェクション孔を備え、ピストンの旋回運動によりインジェクション孔が開閉する機構を有するロータリ圧縮機を搭載する冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリンダの内部に連通するインジェクション孔を備え、ピストンの旋回運動によりインジェクション孔が開閉する機構を有するロータリ圧縮機が提案され、空調用途に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
図9に特許文献1に記載のロータリ圧縮機の圧縮機構部の横断面図を示す。ロータリ圧縮機においてシリンダ11の内部に連通するインジェクション孔12を備え、ピストン13の旋回運動によりピストン13の端面によってインジェクション孔12が開閉するように構成されている。
【0004】
これにより、インジェクション孔12がシリンダ11の内部と連通する間に、インジェクション孔12から中間圧のインジェクション冷媒を圧縮室14に供給することが可能となる。
【0005】
また、図10に特許文献1に記載の構成におけるインジェクション孔が閉じ切るときの横断面図を示す。閉接点16はインジェクション孔12が閉じ切るときにピストン13の外周面とインジェクション孔12の外周面とが内接する点である。図11に特許文献1に記載の構成におけるインジェクション孔が開き始めるときの横断面図を示す。開接点17はインジェクション孔12が開き始めるときにピストン13の外周面とインジェクション孔12の外周面とが内接する点である。インジェクション孔12の形状が円であるため、接点16と接点17との距離は近い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-170678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に記載の構成において、部分負荷条件などで圧縮機が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比が小さくなる運転状態では、ピストン13の回転角が小さい状態で圧縮室14の圧力がインジェクション圧力に到達するため、インジェクション孔12が閉じ切る前に圧縮室14の圧力がインジェクション圧力より高くなり、圧縮室14からインジェクション孔12へ冷媒の逆流が生じる。冷媒の逆流に伴って、ピストン13の外周部で押しのけられている潤滑油はインジェクション孔12に流入する。このとき、潤滑油は閉接点16の付近のインジェクション流路内に溜まる。
【0008】
その後、インジェクション孔12が全閉となった後、再び、インジェクション孔12は開接点17から開き始める。閉接点16の付近のインジェクション流路内に溜まった潤滑油は開接点17との距離が近いため、開接点17から開き始めたインジェクション孔12の開口部は潤滑油によって塞がれ、インジェクション冷媒を圧縮室14に供給できない。
【0009】
したがって、圧縮室14に流入するインジェクション冷媒の量が少なくなるという課題
があった。圧縮室14に流入するインジェクション冷媒の量が少なくなると、低圧回路を流れる冷媒流量が増加し、低圧回路内の圧力損失が大きくなることで冷凍サイクルの効率が低下したり、圧縮機から吐出する冷媒の温度を低減できず吐出冷媒の温度が過昇となることでモーター効率が低下したり圧縮機を構成する絶縁紙や冷凍機油等の有機材料の劣化が進行したりする。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、インジェクション孔12に流入した潤滑油がインジェクション流路内で潤滑油溜りを形成しても、インジェクション孔12が開き始めるときに潤滑油溜りがインジェクション孔12の開口部を塞がなくなり、インジェクション冷媒が圧縮室14に十分供給されることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機と室外熱交換器と圧力調整装置と室内熱交換器が順に配置された冷凍サイクル装置で、圧縮機は、シリンダの内部で旋回運動するピストンにより冷媒を圧縮するロータリ圧縮機であり、一端が圧縮機以外の冷凍サイクルに接続され、他端が圧縮機に接続され、圧縮機にインジェクション冷媒を供給するインジェクション配管を備え、インジェクション配管は、圧縮機内に設けられたインジェクション流路を経て、圧縮室に連通するインジェクション孔に接続され、ピストンの旋回運動によりインジェクション孔が開閉する機構を有する冷凍サイクル装置において、インジェクション孔の形状は長孔であり、長孔の長手方向は、長孔の重心を通りシリンダ内周の同心円の円周に対してインジェクション孔の重心を通る接線方向と略水平方向に設置されている、ことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0012】
本構成において、インジェクション孔がピストンの旋回運動によって閉じ切るときにピストン外周面とインジェクション孔の外周面とが内接する点を閉接点とし、インジェクション孔が開き始めるときにピストン外周面とインジェクション孔の外周面とが内接する点を開接点とする。インジェクション孔の形状が長孔であるため、開接点と閉接点との距離は、インジェクション孔が円の場合の開接点と閉接点との距離と比較して長くなる。
【0013】
部分負荷条件などで、圧縮機が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比が小さくなる運転状態では、ピストンの回転角が小さい状態で圧縮室内の圧力がインジェクション圧力に到達するため、インジェクション孔が閉じ切る前に圧縮室内の圧力がインジェクション圧力より高くなり、圧縮室からインジェクション孔へ逆流が生じる。冷媒の逆流に伴って、ピストン外周面で押しのけられている潤滑油はインジェクション孔に流入する。このとき、潤滑油は閉接点付近のインジェクション孔接続流路内に溜まる。その後、インジェクション孔が全閉となり、再び、インジェクション孔は開接点から開き始める。このとき、開接点は閉接点から離れた位置となる。
【0014】
したがって、閉接点付近のインジェクション孔接続流路内に溜まった潤滑油は開接点と距離が離れているため、開接点から開き始めたインジェクション孔の開口部を塞がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷凍サイクル装置では、インジェクション孔接続流路の内部に形成される潤滑油溜りは、インジェクション孔が開き始めるときにインジェクション孔の開口部を塞がないため、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路を流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。
【0016】
したがって、圧縮室に十分な量のインジェクション冷媒が供給される。そのため、低圧回路を流れる冷媒流量の増加によって生じる低圧回路における圧力損失の増大を抑制するので、冷凍サイクルの効率が向上する。また、圧縮機から吐出する冷媒の温度を低減でき
ず吐出冷媒の温度が過昇となることで生じるモーター効率の低下や圧縮機を構成する絶縁紙や冷凍機油等の有機材料の劣化の進行を抑制するので、冷凍サイクルの効率が向上したり、圧縮機の信頼性を向上したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1における冷凍サイクル構成図
図2】本発明の実施の形態1におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の横断面図
図3】本発明の実施の形態1の構成におけるインジェクション孔が閉じ切るときの横断面図
図4】本発明の実施の形態1の構成におけるインジェクション孔が開き始めるときの横断面図
図5】本発明の実施の形態1におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の縦断面図(図2のA-A’面)
図6】本発明の実施の形態2におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の縦断面図(図2のA-A’面)
図7】本発明の実施の形態2におけるインジェクション孔が閉になる過程のインジェクション孔の縦断面図
図8】本発明の実施の形態2におけるインジェクション孔が開になる過程のインジェクション孔の縦断面図
図9】特許文献1に記載のロータリ圧縮機の圧縮機構部の横断面図
図10】特許文献1に記載の構成におけるインジェクション孔が閉じ切るときのインジェクション孔部の横断面図
図11】特許文献1に記載の構成におけるインジェクション孔が開き始めるときのインジェクション孔部の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、圧縮機と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器が順に配置された冷凍サイクル装置で、圧縮機は、シリンダの内部で旋回運動するピストンにより冷媒を圧縮するロータリ圧縮機であり、一端が圧縮機以外の冷凍サイクルに接続され、他端が圧縮機に接続され、圧縮機にインジェクション冷媒を供給するインジェクション配管を備え、インジェクション配管は、圧縮機内に設けられたインジェクション流路を経て、圧縮室に連通するインジェクション孔に接続され、ピストンの旋回運動によりインジェクション孔が開閉する機構を有する冷凍サイクル装置において、インジェクション孔の形状は長孔であり、長孔の長手方向は、長孔の重心を通りシリンダ内周の同心円の円周に対してインジェクション孔の重心を通る接線方向と略水平方向に設置されている、ことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0019】
本構成において、インジェクション孔がピストンの旋回運動によって閉じ切るときにピストン外周面とインジェクション孔の外周面とが内接する点を閉接点とし、インジェクション孔が開き始めるときにピストン外周面とインジェクション孔の外周面とが内接する点を開接点とする。インジェクション孔の形状が長孔であるため、開接点と閉接点との距離は、インジェクション孔が円の場合の開接点と閉接点との距離と比較して長くなる。
【0020】
部分負荷条件などで、圧縮機が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比が小さくなる運転状態では、ピストンの回転角が小さい状態で圧縮室内の圧力がインジェクション圧力に到達するため、インジェクション孔が閉じ切る前に圧縮室内の圧力がインジェクション圧力より高くなり、圧縮室からインジェクション孔へ逆流が生じる。冷媒の逆流に伴って、ピストン外周面で押しのけられている潤滑油はインジェクション孔に流入する。このとき、潤滑油は閉接点付近のインジェクション孔接続流路内に溜まる。その後、インジェクション孔が全閉となり、再び、インジェクション孔は開接点から開き始める。このとき、開接点は閉接点から離れた位置となる。このとき、開接点は閉接点から離れた位置となる。
【0021】
したがって、閉接点付近のインジェクション孔接続流路内に溜まった潤滑油は開接点と距離が離れているため、開接点から開き始めたインジェクション孔の開口部を塞がない。
【0022】
よって、本発明の冷凍サイクル装置では、インジェクション孔接続流路の内部に形成される潤滑油溜りは、インジェクション孔が開き始めるときにインジェクション孔の開口部を塞がないため、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路を流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。したがって、インジェクション冷媒が圧縮室に供給されなくなるのを防止し、低圧回路を流れる冷媒流量が増加し圧力損失が大きくなるのを抑制するので、冷凍サイクルの効率が向上する。
【0023】
第2の発明は、第1の発明の冷凍サイクル装置において、インジェクション流路はピストン端面に対して水平方向に設置し、インジェクション孔とインジェクション流路とを接続するインジェクション孔接続流路をピストンの端面の鉛直方向に対して傾斜させ、かつ、インジェクション孔接続流路はインジェクション孔の中心とシリンダの内周の中心とを結ぶ線に対し略垂直方向、かつ、インジェクション孔接続流路はピストンの旋回方向と逆向きに設置している、ことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0024】
これにより、閉接点付近のインジェクション孔接続流路面積は小さくなる。したがって、冷媒の逆流によって潤滑油が圧縮室からインジェクション孔に流入する際に、インジェクション孔接続流路面積が小さいため流路抵抗が大きくなり、潤滑油がインジェクション孔接続流路内に流入しにくくなる。
【0025】
よって、本発明の冷凍サイクル装置では、冷房最小負荷条件などで、圧縮機が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比がさらに小さくなり、圧縮室からインジェクション孔への冷媒の逆流が大きくなり、それに伴って潤滑油がインジェクション孔に流入しやすい場合においても、インジェクション孔接続流路内に潤滑油溜りが形成されにくくなる。そのため、インジェクション孔が開き始めるときに潤滑油が開口部を塞がないため、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路を流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。したがって、圧縮室に十分なインジェクション冷媒が供給されるため、低圧回路を流れる冷媒流量が増加し圧力損失が大きくなるのを抑制するので、冷凍サイクルの効率が向上する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1における冷凍サイクル構成図を示す。図1の冷凍サイクル構成図は、室外空調ユニット1台に対し、室内空調ユニットが1台接続した構成となっている。なお、冷凍サイクル構成に関しては、図1に示したものに限定されない。例えば、室外空調ユニットは2台以上、室内空調ユニットも2台以上、並列に接続可能である。
【0028】
室外空調ユニット101において、ロータリ圧縮機111は冷媒を圧縮する圧縮機である。四方弁112は冷房運転時と暖房運転時の冷媒流れ方向を切り替える弁である。暖房運転時は四方弁112の実線に沿って冷媒が流れ、冷房運転時は四方弁112の破線に沿って冷媒が流れる。第1圧力調整弁114は冷凍サイクルの圧力を調整する圧力調整弁である。室外熱交換器115は周囲の空気と空調用冷媒とが熱交換する熱交換器であり、一般的には、フィン&チューブ型やマイクロチューブ型の熱交換器が利用される。インジェクション配管116は冷凍サイクルから冷媒の一部をロータリ圧縮機111にインジェクションする冷媒配管である。
【0029】
室内空調ユニット102において、室内熱交換器113は周囲の空気と冷凍サイクルを流れる冷媒とが熱交換する熱交換器であり、一般的には、フィン&チューブ型やマイクロチューブ型の熱交換器が利用される。第2圧力調整弁117は冷凍サイクルの圧力を調整する圧力調整弁である。
【0030】
図2に本発明の実施の形態1におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の横断面図を示す。
【0031】
シャフト122は偏芯部122aを備え、シャフト122が旋回運動することでシャフト122の偏芯部122aによってピストン123がシリンダ121の内壁面121aに沿って旋回運動する。また、ベーン124はピストン123の旋回運動に伴ってピストン123のピストン外周面123aに接するようにシリンダ121の溝121bで往復運動する。また、吸入ポート125は冷媒をシリンダ12の内部に供給する孔、吐出ポート126は冷媒をシリンダ12の外部に吐き出す孔である。
【0032】
また、インジェクション孔127はシリンダ12の内部と連通する孔であり、インジェクション流路128はインジェクション配管116からインジェクション孔127に連通する冷媒流路である。シェル130はロータリ圧縮機111の圧縮機構部を収納している。
【0033】
図3に本発明の実施の形態1の構成におけるインジェクション孔が閉じ切るときの横断面図を示す。閉接点127bはインジェクション孔127が閉じ切るときにピストン外周面123aとインジェクション孔127の外周面とが内接する点である。
【0034】
図4に本発明の実施の形態1の構成におけるインジェクション孔が開き始めるときの横断面図を示す。開接点127cはインジェクション孔127が開き始めるときにピストン外周面123aとインジェクション孔127の外周面とが内接する点である。インジェクション孔127の形状が長孔であるため、開接点127cと閉接点127bとの距離は、インジェクション孔127が円の場合と比較して長くなる。
【0035】
図5に本発明の実施の形態1におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の縦断面図(図2A-A’面)を示す。上軸受131はシリンダ121の上部に設置されている軸受であり、上軸受131はシャフト122を支えるベアリングとして機能している。下軸受132はシリンダ121の下部に設置されている軸受であり、下軸受132はシャフト122を支えるベアリングとして機能している。吐出バルブ133は吐出ポート126から吐出する冷媒流路に設置されているバルブであり、圧縮室129の冷媒の圧力がシェル130の内部の圧力より高い圧力となったときに開く。また、ピストン端面123bはピストン123の端面である。インジェクション流路128はピストン端面123bと水平方向に設置され、インジェクション流路128とインジェクション孔127とはインジェクション孔接続流路127aで接続されている。ここでインジェクション孔接続流路127aはピストン端面123bの鉛直方向に対して傾斜して設置し、かつ、インジェクション孔接続流路127aはインジェクション孔127の中心とシリンダ121の内周の中心とを結ぶ線に対し略垂直方向でピストン123の旋回運動方向と逆向きに設置されている。
【0036】
ここで、インジェクション孔127の形状は、楕円、または、長円などであり、穴空け時の加工性に優れる。楕円や長円以外の長孔形状でも良い。
【0037】
次に、本実施の形態におけるロータリ圧縮機111の動作を説明する。
【0038】
まず、シリンダ121の内部において、シリンダ121、ピストン123、ベーン124、上軸受131、下軸受132とで囲まれ、吸入ポート125と接する空間に、吸入ポート125から低圧の吸入冷媒が供給される。次に、シリンダ121の内部において、129はシリンダ121、ピストン123、ベーン124、上軸受131、下軸受132とで囲まれ、吐出ポート126と接する圧縮室であり、圧縮室129の冷媒はピストン123が旋回運動することで圧縮され、圧縮室129の冷媒の圧力がシェル130の内部の圧力より高くなると、吐出バルブ133が開き高圧に圧縮された冷媒が吐出ポート126から吐出される。
【0039】
ピストン123が旋回運動する過程において、ピストン端面123bの移動によって、インジェクション孔127は開いたり閉じたりする。インジェクション孔127が開いているときは、インジェクション冷媒がインジェクション配管116およびインジェクション流路128を通ってインジェクション孔127から圧縮室129に供給されて圧縮室129の冷媒と合流する。一方、インジェクション孔127が閉じているときは、インジェクション孔127から圧縮室129にインジェクション冷媒が供給されない。
【0040】
ピストン123の旋回運動によりピストン端面123bがスライドすることによってインジェクション孔127が閉の状態になる過程では、ピストン外周面123aがインジェクション孔127の上を通り、閉接点127bでピストン外周面123aとインジェクション孔127の外周面とが内接することでインジェクション孔127は全閉状態となる。
【0041】
また、ピストン123の旋回運動によりピストン端面123bがスライドすることによってインジェクション孔127が開の状態になる過程では、開接点127cでピストン外周面123aとインジェクション孔127の外周面とが内接するところからインジェクション孔127は開き始め、ピストン外周面123aがインジェクション孔127の上を通り抜けることでインジェクション孔127は全開状態となる。
【0042】
次に、本実施の形態における冷凍サイクルの動作を説明する。
【0043】
図1において、暖房運転時は、四方弁112における冷媒の流れが実線に沿うように四方弁112の流路を設定する。したがって、ロータリ圧縮機111で圧縮されて高圧になった冷媒はロータリ圧縮機111から吐出され、四方弁112を経て室外空調ユニット101から出た後、室内空調ユニット102に入る。室内空調ユニット102に入った冷媒は室内熱交換器113で周囲の空気に熱を放出して凝縮し、高圧の過冷却液状態となって、第2圧力調整弁117に流入する。第2圧力調整弁117で中間圧力まで減圧された冷媒は、室内空調ユニット102から出た後、室外空調ユニット101に戻る。
【0044】
室外空調ユニット101に戻った冷媒の一部はインジェクション配管116に流入し、残りの冷媒は第1圧力調整弁114に流入する。第1圧力調整弁114に流れた冷媒は、第1圧力調整弁114で減圧され低圧の気液二相状態の冷媒となった後、室外熱交換器115で周囲の空気から熱を奪われて蒸発し、低圧の過熱ガス状態となって四方弁112を経てロータリ圧縮機111に吸入される。インジェクション配管116に流入した冷媒は、インジェクション流路128およびインジェクション孔接続流路127aを流れ、インジェクション孔127から圧縮室129に供給される。
【0045】
ここで、例えば室内空調ユニット102の運転台数が少ないなどで暖房負荷が小さい運転となるような場合、ロータリ圧縮機111が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比が小さくなる。このとき、ピストンの回転角が小さい状態で圧縮室129の内部の圧力がインジェクション圧力に到達するため、インジェクション孔127が閉じ切る
前に圧縮室129の内部の圧力がインジェクション圧力より高くなり、圧縮室129からインジェクション孔127へ冷媒の逆流が生じる。冷媒の逆流に伴って、ピストン外周面123aで押しのけられている潤滑油はインジェクション孔127に流入する。このとき、潤滑油は閉接点127b付近のインジェクション孔接続流路127aの内部に溜まる。その後、インジェクション孔127が全閉となり、再び、インジェクション孔127は開接点127cから開き始める。このとき、開接点127cは閉接点127bから離れた位置であるため、閉接点127b付近のインジェクション孔接続流路127aの内部に溜まった潤滑油は開接点127cから開き始めたインジェクション孔127の開口部を塞がない。
【0046】
一方、冷房運転時は四方弁112における冷媒の流れが破線に沿うように四方弁112の流路を設定する。したがって、ロータリ圧縮機111で圧縮されて高圧になった冷媒はロータリ圧縮機111から吐出され、四方弁112を経て室外熱交換器115で周囲の空気に熱を放出して凝縮し、高圧の過冷却液状態となって室外熱交換器115から出た後、第1圧力調整弁114で減圧されて中間圧力となる。第1圧力調整弁114から出た中間圧力の冷媒の一部はインジェクション配管116に流入し、残りの冷媒は室外空調ユニット101から出た後、室内空調ユニット102に入る。
【0047】
室内空調ユニット102に入った冷媒は第2圧力調整弁117に流入する。第2圧力調整弁117に流入した冷媒は低圧の気液二相状態の冷媒となった後、室内熱交換器113に流入する。室内熱交換器113に流入した冷媒は室内熱交換器113で周囲の空気から熱を奪って蒸発し、低圧の過熱ガス状態となって室内空調ユニット102から出た後、室外空調ユニット101に戻る。室外空調ユニット101に戻った冷媒は四方弁112を経てロータリ圧縮機111に吸入される。
【0048】
インジェクション配管116に流入した冷媒は、インジェクション流路128およびインジェクション孔接続流路127aを流れ、インジェクション孔127から圧縮室129に供給される。
【0049】
ここで、例えば室内空調ユニット102の運転台数が少ないなどで冷房負荷が小さい運転となるような場合、ロータリ圧縮機111が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比が小さくなる。このとき、ピストンの回転角が小さい状態で圧縮室129の内部の圧力がインジェクション圧力に到達するため、インジェクション孔127が閉じ切る前に圧縮室129の内部の圧力がインジェクション圧力より高くなり、圧縮室129からインジェクション孔127へ冷媒の逆流が生じる。冷媒の逆流に伴って、ピストン外周面123aで押しのけられている潤滑油はインジェクション孔127に流入する。このとき、潤滑油は閉接点127b付近のインジェクション孔接続流路127aの内部に溜まる。その後、インジェクション孔127が全閉となり、再び、インジェクション孔127は開接点127cから開き始める。このとき、開接点127cは閉接点127bから離れた位置であるため、閉接点127b付近のインジェクション孔接続流路127aの内部に溜まった潤滑油は開接点127cから開き始めたインジェクション孔127の開口部を塞がない。
【0050】
以上の記述から明らかなように、本発明の冷凍サイクル装置に搭載のロータリ圧縮機111は、インジェクション孔接続流路127aの内部に形成される潤滑油溜りは、インジェクション孔127が開き始めるときにインジェクション孔127の開口部を塞がないため、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路127aを流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。したがって、インジェクション冷媒が圧縮室129に供給されなくなるのを防止し、暖房運転時は室外熱交換器115を流れる冷媒流量が増加し室外熱交換器115および室外熱交換器115を出てロータリ圧縮機111に戻るまでに冷媒配管を冷媒が流れる際の圧力損失が大きくなるのを抑制するので、冷凍サイクルの効率を向上することができる。また、インジェクション冷媒が圧縮室129に供給されなくなるのを防止するので、冷房運転時においても室内熱交換器113を流れる冷媒流量が増加し室内熱交換器113および室内熱交換器113を出てロータリ圧縮機111に戻るまでに冷媒配管を冷媒が流れる際の圧力損失が大きくなるのを抑制するので、冷凍サイクルの効率を向上することができる。
【0051】
(実施の形態2)
図6に本発明の実施の形態2におけるロータリ圧縮機の圧縮機構部の縦断面図(図2A-A’面)を示す。インジェクション孔接続流路127aはピストン端面123bの鉛直方向に対して傾斜して設置し、かつ、インジェクション孔接続流路127aはインジェクション孔127の中心とシリンダ121の内周の中心とを結ぶ線に対し略垂直方向でピストン123の旋回運動方向と逆向きに設置されている。
【0052】
図7に本発明の実施の形態2におけるインジェクション孔が閉になる過程のインジェクション孔の縦断面図を示す。閉接点127b付近のインジェクション孔接続流路127aはピストン下端面123bに挟まれるため流路面積が小さい。したがって、圧縮比が小さく圧縮室129からインジェクション孔127に冷媒が逆流するのに伴って、ピストン外周面123aで押しのけられる潤滑油が圧縮室129からインジェクション孔127に流入する際に、インジェクション孔接続流路127aの流路面積が小さいため流路抵抗が大きくなり、潤滑油がインジェクション孔接続流路127aの内部に流入しにくくなる。
【0053】
図8に本発明の実施の形態2におけるインジェクション孔が開になる過程のインジェクション孔の縦断面図を示す。開接点127c付近のインジェクション孔接続流路127aはピストン下端面123bに挟まれないため流路面積が小さくならない。したがって、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路127aからインジェクション孔127の開口部を通って圧縮室129に供給される際の流路抵抗は大きくならない。
【0054】
以上の記述から明らかなように、本発明の冷凍サイクル装置に搭載のロータリ圧縮機11は、冷房最小負荷条件などで、ロータリ圧縮機111が吸入する冷媒の圧力と吐出する冷媒の圧力との圧力比がさらに小さくなり、圧縮室129からインジェクション孔127への冷媒の逆流が大きくなり、それに伴って潤滑油がインジェクション孔127に流入しやすい場合においても、インジェクション孔接続流路127aの内部に潤滑油溜りが形成されにくくなる。そのため、インジェクション孔127が開き始めるときに潤滑油が開口部を塞がないため、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路127aを流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。したがって、圧縮室129に十分なインジェクション冷媒が供給されるため、低圧回路を流れる冷媒流量が増加し圧力損失が大きくなるのを抑制するので、冷凍サイクルの効率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、圧縮機としてロータリ圧縮機111を用い、ピストン123の旋回運動によってインジェクション孔127を開閉する機構において圧縮過程で冷媒をインジェクションする機構において、圧縮機の吸込圧力と吐出圧力との圧力比が小さくなり、圧縮室129からインジェクション孔127へ冷媒の逆流が生じる場合に、冷媒の逆流に伴って潤滑油がインジェクション孔127に流入し潤滑油溜りが形成され、再度、インジェクション孔127が開となる際、潤滑油溜りがインジェクション孔127の開口部を塞がないので、インジェクション冷媒がインジェクション孔接続流路127aを流れる際に生じる流路抵抗が過度に上昇しない。したがって、インジェクション冷媒が圧縮室129に供給できなくなるのを抑制するので、圧縮室129に供給されるインジェクション冷媒量の低下を防止し、低圧回路を流れる冷媒流量の増加によって生じる低圧回路における圧力損失の増大を抑制するので、冷凍サイクルの効率を向上することができるものとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
101 室外空調ユニット
102 室内空調ユニット
111 ロータリ圧縮機
112 四方弁
113 室内熱交換器
114 第1圧力調整
115 室外熱交換器
116 インジェクション配管
117 第2圧力調整
121 シリンダ
121a 内壁面
121b 溝
122 シャフト
122a 偏芯部
123 ピストン
123a ピストン外周面
123b ピストン下端面
124 ベーン
125 吸入ポート
126 吐出ポート
127 インジェクション孔
127a インジェクション孔接続流路
127b 閉接点
127c 開接点
128 インジェクション流路
129 圧縮室
130 シェル
131 上軸受
132 下軸受
133 吐出バルブ
図1
図2
図3
図4
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図6
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