(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】故障検出装置、レーザ加工システムおよび故障検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20221216BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20221216BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20221216BHJP
【FI】
G01M11/00 R
B23K26/00 Q
B23K26/064 K
(21)【出願番号】P 2019543688
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034716
(87)【国際公開番号】W WO2019059249
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017181745
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長安 同慶
(72)【発明者】
【氏名】星野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】堂本 真也
(72)【発明者】
【氏名】江泉 清隆
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-263827(JP,A)
【文献】特開平11-344417(JP,A)
【文献】特開平10-193146(JP,A)
【文献】特開平05-277775(JP,A)
【文献】特開2007-240258(JP,A)
【文献】米国特許第06259517(US,B1)
【文献】米国特許第04812641(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
B23K 26/00
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工レーザ光を出射する加工レーザ光源と、
検出レーザ光を出射する検出レーザ光源と、
前記検出レーザ光を第1および第2の部分光に分割する分光器と、
前記検出レーザ光の前記第1の部分光の強度を測定する第1の受光器と、
入射端から出射端へ前記検出レーザ光の前記第2の部分光および前記加工レーザ光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバにより伝送され
て前記光ファイバの出射端で出射された前記第2の部分光を、部分的に
前記光ファイバ
の出射端に向けて反射させるとともに、部分的に透過させる反射透過部と、
前記反射透過部で透過した前記第2の部分光の透過光の強度を測定する第2の受光器と、
前記反射透過部で
前記光ファイバの出射端に向けて反射し、前記光ファイバにより伝送され
て前記光ファイバの入射端で出射された前記第2の部分光の反射光の強度を測定する第3の受光器と、
前記第1
の受光器で測定された前記第1の部分光と前記第2
の受光器で測定された
前記第2の部分光の前記透過光
との強度の相対比、および前記第1の受光器で測定された前記第1の部分光と前記第3の受光器で測定された前記第2の部分光の前記反射光
との強度の相対比に基づいて、前記光ファイバに不具合があるか否かを判定する判定部と、を備えた故障検出装置。
【請求項2】
前記検出レーザ光の前記第2の部分光は、前記加工レーザ光に比して、前記光ファイバにより伝送されている間に生じる光強度の損失がより小さい、
請求項1
に記載の故障検出装置。
【請求項3】
前記検出レーザ光は、前記加工レーザ光に比して、ピーク波長がより短く、半値幅がより小さく、かつ出力強度がより小さい、
請求項1
または2に記載の故障検出装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の前記故障検出装置と、
前記故障検出装置および前記加工レーザ光源を制御する制御部と、を備えたレーザ加工システム。
【請求項5】
検出レーザ光を出射する工程と、
加工レーザ光を出射する工程と、
前記検出レーザ光を第1および第2の部分光に分割する工程と、
前記検出レーザ光の前記第1の部分光の強度を測定する工程と、
前記検出レーザ光の前記第2の部分光および前記加工レーザ光を光ファイバにより
前記光ファイバの入射端から出射端へ伝送する工程と、
前記光ファイバにより伝送され
て前記光ファイバの出射端で出射された前記第2の部分光を、部分的に前記光ファイバ
の出射端に向けて反射させるとともに、部分的に透過させる工程と、
部分的に透過させた前記第2の部分光の透過光の強度を測定する工程と、
部分的に
前記光ファイバの出射端に向けて反射させ
、前記光ファイバにより伝送され
て前記光ファイバの入射端で出射された前記第2の部分光の反射光の強度を測定する工程と、
測定された前記第1の部分光
と前記第2の部分光の前記透過光
との強度の相対比、および測定された前記第1の部分光と前記第2の部分光の前記反射光
との強度の相対比に基づいて、前記光ファイバに不具合があるか否かを判定する工程と、を備えた故障検出方法。
【請求項6】
前記検出レーザ光の前記第2の部分光は、前記加工レーザ光に比して、前記光ファイバにより伝送されている間に生じる光強度の損失がより小さい、請求項
5に記載の故障検出方法。
【請求項7】
前記検出レーザ光は、前記加工レーザ光に比して、ピーク波長がより短く、半値幅がより小さく、かつ出力強度がより小さい、
請求項
5または6に記載の故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの故障検出装置、レーザ加工システムおよび故障検出方法に関し、とりわけ高出力の加工レーザ光を伝送する光ファイバの故障検出装置、レーザ加工システムおよび故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクト・ダイオード・レーザ(DDL)光源等からの高出力の加工レーザ光を、光ファイバを介して加工ヘッドまで伝送し、集光および照射することにより、被加工材(ワーク)を溶接、溶断穿孔などするレーザ加工システムが広く用いられている。こうした光ファイバは、加工レーザ光を伝送している間に光ファイバが断線すると、加工レーザ光の出力エネルギが大きいため、光ファイバの被膜樹脂等をはじめ周辺装置に損傷を与える虞がある。したがって、高出力の加工レーザ光を利用するレーザ加工システムには、一般に、レーザ光を伝送する光ファイバの断線を検出するための装置が設けられている。
【0003】
高出力のレーザ光を伝送する光ファイバの断線を検出するための装置は、これまでにも数多く提案されている。従来技術に係る断線検出装置として、例えば、レーザ光を伝送する光ファイバに沿って配置された被覆電線を用いて閉回路を構成し、光ファイバの断線時に生じる熱により閉回路が断線(オープン)または短絡(ショート)したことを電気的に検出することにより、光ファイバの断線を検出するものが提案されている。
【0004】
さらに別の断線検出装置は、被覆電線に代わって、ガスを循環させるチューブを光ファイバに沿って配置し、循環させるガスの流量をモニタし、循環ガスの流量が変化したとき、光ファイバの断線を判断するものも提案されている。
【0005】
別の断線検出装置は、被加工材を加工するためのレーザ光(加工レーザ光)を光ファイバにより伝送させるレーザ加工システムにおいて、光ファイバに入射および出射される加工レーザ光のそれぞれの光強度(出力強度)をモニタする一対の光検出器を備え、各光検出器で測定された加工レーザ光の光強度の差異または相対値の変化に基づいて、光ファイバの断線または光ファイバによるエネルギ損失を検出するものも利用されている。
【0006】
より具体的には、特許文献1の記載の光ファイバ破断検出装置は、被加工材を加工するための高エネルギの加工レーザ光を伝送する光ファイバと、光ファイバの入射端および出射端の近傍に一対の受光器と、これら受光器の出力を比較して光ファイバの破断を検出する検出部とを備える。
【0007】
また特許文献2の記載のレーザ伝送用光ファイバ装置は、同様に、被加工材を加工するためのパワーレーザ光を伝送する光ファイバと、光ファイバの出射端の近傍に配置された可視光選択反射手段と、光ファイバの入射端の近傍に配置され、パワーレーザ光および可視光選択反射手段で選択された可視光を受光する受光検出器とを備える。この可視光は、光ファイバの断線等に起因して光ファイバの被覆材が燃焼して生じるものである。そしてレーザ伝送用光ファイバ装置は、パワーレーザ光および可視光の光強度を比較することにより、光ファイバの断線等の異常を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-038751号公報
【文献】特開平07-266067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、被覆電線またはガス循環用チューブを用いた断線検出装置においては、光ファイバが断線していなくても、光ファイバとは別体の被覆電線の閉回路が断線もしくは短絡し、または循環ガスの流量が変化したとき、光ファイバが断線したものと誤検出する場合がある。例えば、被覆電線を用いた断線検出装置において、閉回路を構成する一対の被覆電線が光ファイバとの摩擦により剥離すると、被膜電線の一対の芯線が接触(短絡)し、断線検出機能が動作することがある。
【0010】
また特許文献1および特許文献2に記載の技術は、いずれも被加工材を加工するための高出力レーザを断線検出に利用する。具体的には、光ファイバに入射および出射される加工レーザ光(特許文献1)、または光ファイバに入射されるパワーレーザ光および光ファイバから出射される可視光(特許文献2)を比較して、光ファイバの断線を検出する。しかし、被加工材を加工するためのレーザ光(加工レーザ光)の出力強度は、レーザ光源装置の動作状態または使用時間等に起因して変動して、光ファイバの透過率が実質的に変化しやすい。そのため、加工レーザ光を伝送する光ファイバそのものを用いて、その光ファイバの伝送損失等を検出することは困難となり、誤検出等を招く虞がある。
【0011】
また加工レーザ光(特許文献1)および被覆材が燃焼して生じる可視光(特許文献2)は、一般に、波長帯域が広く、これらの波長および光ファイバの組成(光ファイバを構成するガラス分子の密度)に依存して光ファイバ内で生じるレイリー散乱光(光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱現象により発生する散乱光)と干渉しやすく、加工レーザ光または可視光が安定せず、同様に誤検出等を招くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示に係る第1の態様は、光ファイバの故障検出装置に関し、この故障検出装置は、加工レーザ光を出射する加工レーザ光源と、検出レーザ光を出射する検出レーザ光源と、検出レーザ光を第1および第2の部分光に分割する分光器と、検出レーザ光の第1の部分光の強度を測定する第1の受光器と、入射端から出射端へ検出レーザ光の第2の部分光および加工レーザ光を伝送する光ファイバと、光ファイバにより伝送されて光ファイバの出射端で出射された第2の部分光を、部分的に光ファイバの出射端に向けて反射させるとともに、部分的に透過させる反射透過部と、反射透過部で透過した第2の部分光の透過光の強度を測定する第2の受光器と、反射透過部で光ファイバの出射端に向けて反射し、光ファイバにより伝送されて光ファイバの入射端で出射された第2の部分光の反射光の強度を測定する第3の受光器と、第1の受光器で測定された第1の部分光と第2の受光器で測定された第2の部分光の透過光との強度の相対比、および第1の受光器で測定された第1の部分光と第3の受光器で測定された前記第2の部分光の反射光との強度の相対比に基づいて、光ファイバに不具合があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る故障検出装置は、加工レーザ光ではなく、光ファイバにより伝送される安定的な検出レーザ光を用いて、光ファイバの断線をより高い信頼性で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る故障検出装置の概略的構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態2に係る故障検出装置の概略的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態3に係る故障検出装置の概略的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本開示の概略的構成を説明する。本開示の各態様に係る故障検出装置は、加工レーザ光を出射する加工レーザ光源と、検出レーザ光を出射する検出レーザ光源と、検出レーザ光を第1および第2の部分光に分割する分光器と、検出レーザ光の第1の部分光の強度を測定する第1の受光器と、検出レーザ光の第2の部分光および加工レーザ光を伝送する光ファイバとを備える。
【0018】
第1の態様に係る故障検出装置は、光ファイバにより伝送された第2の部分光の強度を測定する第2の受光器と、第1および第2の受光器で測定された第1および第2の部分光の強度の相対比に基づいて、光ファイバに不具合があるか否かを判定する判定部と、を備える。検出レーザ光は、加工レーザ光に比して、ピーク波長がより短く、半値幅(ピーク波長のピーク値の半分となる波長の幅であり、波長方向への広がり程度を示す値)がより小さく(波長帯域がより狭く)、出力強度がより小さい。また、検出レーザ光(ひいては、第2の部分光)は、加工レーザ光に比して、光ファイバにより伝送されている間に生じる光強度の損失がより小さく、より安定している。光ファイバの伝送損失の波長依存性は、主に光ファイバの材質により異なる。また、検出レーザ光のピーク波長は、主に検出レーザ光の光源により異なる。検出レーザ光の光源を適切に選択することにより、加工レーザ光に比べて光ファイバ中での光強度の損失が小さな検出レーザ光を得ることができる。第1の態様に係る判定部は、安定した検出レーザ光を利用するので、光ファイバの断線等の不具合を高い信頼性で検出するように構成されている。
【0019】
第2の態様に係る故障検出装置は、光ファイバにより伝送された第2の部分光を光ファイバに向けて反射させる反射部と、反射部で反射し、光ファイバにより伝送された第2の部分光の反射光の強度を測定する第3の受光器と、第1および第3の受光器で測定された第1の部分光および第2の部分光の反射光の強度の相対比に基づいて、光ファイバに不具合があるか否かを判定する判定部と、を備える。第2の態様に係る判定部は、安定した検出レーザ光を利用するので、光ファイバの断線等の不具合を高い信頼性で検出するように構成されている。また第3の光検出器から不具合判定部まで、光強度の差異を示す信号を送信するための電気的な配線距離を短くすることができ、故障検出装置の構成をより簡便にすることができる。
【0020】
第3の態様に係る故障検出装置は、光ファイバにより伝送された第2の部分光を、部分的に光ファイバに向けて反射させるとともに、部分的に透過させる反射透過部と、反射透過部で透過した第2の部分光の透過光の強度を測定する第2の受光器と、反射透過部で反射し、光ファイバにより伝送された第2の部分光の反射光の強度を測定する第3の受光器と、第1、第2および第3の受光器で測定された第1の部分光、および第2の部分光の透過光ならびに反射光の強度の相対比に基づいて、光ファイバに不具合があるか否かを判定する判定部と、を備える。第3の態様に係る判定部は、第1および第2の態様のものを組み合わせたものであり、安定した検出レーザ光を利用するので、光ファイバの断線等の不具合を高い信頼性で検出するように構成されている。
【0021】
次に、添付図面を参照して本開示に係る光ファイバの故障検出装置の実施形態を以下説明する。各実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(たとえば「左側」および「右側」等)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本開示を限定するものでない。なお、各図面において、光ファイバの故障検出装置の各構成部品の電気的な接続を実線で示し、各構成部品(光源等)からの各レーザ光の進行方向を直線矢印で示す。また、各図面の直線矢印は、各レーザ光を明確にするために、これらの光軸をずらして図示するが、実際には各レーザ光は、光ファイバ内において同一の光軸上に伝送されるものである。
【0022】
[実施の形態1]
図1を参照しながら、本開示に係る故障検出装置1の実施の形態1を説明する。
図1は、本開示に係る故障検出装置1の概略的構成を示すブロック図である。実施の形態1に係る故障検出装置1は、
図1に示すように、概略、加工レーザ光源10と、検出レーザ光源20と、ハーフミラー22(分光器)と、光ファイバ30(プロセスファイバまたは伝送ファイバともいう。)と、第1および第2の光検出器24,26(受光器)と、不具合判定部50(単に、判定部ともいう。)とを備える。なお、本開示に係るレーザ加工システムは、故障検出装置1の加工レーザ光源10および不具合判定部50に電気的に接続されたシステム制御部60を備える。レーザ加工システムは、第1の収容室16と、第1の収容室16から離れた第2の収容室18とを有する。第1の収容室16は、加工レーザ光源10、検出レーザ光源20、ハーフミラー12,22、第1の光検出器24、集光レンズ36、および、不具合判定部50を収容する。第2の収容室18は、第2の光検出器26、コリメーションレンズ38、および、ビームスプリッタ40を収容する。光ファイバ30は、第1の収容室16と第2の収容室18とを物理的および光学的に接続する。第1の収容室16は、例えば、装置の筐体または建物の部屋により規定される空間である。第2の収容室18も同様である。
【0023】
加工レーザ光源10は、被加工材(ワーク、図示せず)を加工するための任意の高出力の加工レーザ光LPを出射する。加工は、例えば、溶接、溶断および穿孔である。加工レーザ光源10は、例えばピーク波長が長く、波長帯域が広く(975nm±20nm)、出力強度が数kWオーダ(~104W)の加工レーザ光LPを出射するダイレクト・ダイオード・レーザ(DDL)光源であってもよい。加工レーザ光LPは、図示のように、加工レーザ光LPの光軸に対して45度の向きに配置されたハーフミラー12で反射し、光ファイバ30に配向(案内)される。ハーフミラー12は、加工レーザ光LPの上記波長帯域の光を実質的に全反射させ、後述の検出レーザ光LD等のより波長の短い光を実質的に全透過させるものであることが好ましい。
【0024】
検出レーザ光源20は、光ファイバ30の断線等の不具合を検出するための検出レーザ光LDを出射する。検出レーザ光源20は、例えば加工レーザ光LPに比してピーク波長が短く、波長帯域が狭く(600nm±5nm)、出力強度が数百ミリW(~1W)の検出レーザ光を出射するヘリウムネオン(He-Ne)レーザ光源または半導体レーザ光源であってもよい。検出レーザ光LDは、図示のように、その光軸に対して45度の向きに配置された別のハーフミラー22(分光器)の図中左下向きの面S1で、その一部が反射し、その残りが透過する。すなわち検出レーザ光LDは、ハーフミラー22の面S1により第1の部分光LD1および第2の部分光LD2に分割される。透過した第2の部分光LD2は、加工レーザ光LPと同軸上に光ファイバ30に入射し、反射した第1の部分光LD1は、第1の光検出器24に入射する。
【0025】
第1の光検出器24は、検出レーザ光LDの第1の部分光LD1を受光し、第1の部分光LD1の光強度を測定するものである。また第1の光検出器24は、測定された第1の部分光LD1の光強度を示す信号P1を不具合判定部50に供給する。
【0026】
ハーフミラー12と光ファイバ30との間には、集光レンズ36が配置される。集光レンズ36は、検出レーザ光LDの第2の部分光LD2および加工レーザ光LPを光ファイバ30の入射端32に集光させるものである。光ファイバ30の出射端34から出射した検出レーザ光LDの第2の部分光LD2および加工レーザ光LPは、コリメーションレンズ38で平行光に変換された後、光ファイバ30の光軸に対して45度の向きに配置されたビームスプリッタ40に入射される。
【0027】
ビームスプリッタ40は、検出レーザ光LDの第2の部分光LD2と同等の波長帯域の光を第2の光検出器26に向けて実質的に全反射させ、加工レーザ光LPと同等の波長帯域の光を実質的に全透過させるものである。すなわち検出レーザ光LDの第2の部分光LD2は、第2の光検出器26に入射し、加工レーザ光LPは被加工材に照射される。図示されていないが、ビームスプリッタ40と第2の光検出器26との間に、第2の部分光LD2を集光するための別の集光レンズを配置してもよい。
【0028】
第2の光検出器26は、検出レーザ光LDの第2の部分光LD2を受光し、第2の部分光LD2の光強度を測定するとともに、その光強度を示す信号P2を不具合判定部50に供給するものである。不具合判定部50は、第1および第2の光検出器24,26から供給された光強度を示す信号P1,P2を比較して、光ファイバ30に断線等の不具合があったか否かを判定する。不具合判定部50は、例えば信号P1,P2の強度比(r1=P2/P1)が閾値Th1より小さいとき(r1<Th1)、光ファイバ30に不具合があったと判断してもよい。光ファイバ30が断線したとき、典型的には、加工レーザ光LPおよび検出レーザ光LDの第2の部分光LD2が光ファイバ30の出射端34から出射されることはなく、信号P2の強度は、ほぼゼロであり、強度比r1もゼロである。このとき、不具合判定部50は、光ファイバ30が断線したと判定することができる。なお、不具合判定部50は、信号P1,P2の強度比に代えて、信号P1,P2の強度差に基づいて不具合を判定してもよい。さらに、不具合判定部50は、信号P1,P2の強度比の変化または強度差の変化に基づいて不具合を判定してもよい。要するに、不具合判定部50は、第1および第2の部分光LD1,LD2の強度の相対比に基づいて、光ファイバ30に不具合または不具合の予兆があるか否かを判定し、または、第1および第2の部分光LD1,LD2の強度の相対比の変化または相対差の変化に基づいて、不具合または不具合の予兆を判定する。
【0029】
また、光ファイバ30の入射端32または出射端34に汚れ等が付着した場合、信号P1,P2の強度比r1はゼロとはならないが、不具合判定部50は、信号P1,P2の強度比r1と適当な閾値Th1を比較することにより、加工レーザ光LPが汚れ等に照射されて、光ファイバ30の入射端32または出射端34が過剰に発熱した状態を不具合状態として適切に判定することができる。本開示に係る故障検出装置1は、上記説明した背景技術とは異なり、光ファイバ30とは別体の被覆電線の断線を検出するのではなく、光ファイバ30そのものに伝送されるレーザ光を検出する。また、加工レーザは、波長帯域が広く、出力強度が加工レーザ光源の動作状態または使用時間等に起因して不安定になりやすい。故障検出装置1は、そのような加工レーザではなく、検出レーザ光LDを利用する。したがって、光ファイバ30の断線等の不具合をより高い信頼性で検出または判定することができる。
【0030】
また、光ファイバ30に入射される検出レーザ光LDの光強度を示す信号P1、および光ファイバから出射される安定した検出レーザ光LDの光強度を示す信号P2の光強度の比、差異、または相対値の変化、に基づいて光ファイバ30の断線等の不具合を高い信頼性で検出することができる。
【0031】
不具合判定部50が光ファイバ30に断線または不具合が生じたことを判定したとき、システム制御部60は、高出力の加工レーザ光LPの出射を速やかに停止するように加工レーザ光源10を制御することにより、光ファイバ30から漏れ出た加工レーザ光LPによる周辺装置等の損傷を未然に防止することができる。
【0032】
[実施の形態2]
図2を参照しながら、本開示に係る故障検出装置2の実施の形態2を説明する。
図2は、本開示に係る故障検出装置2の概略的構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る故障検出装置2は、概略、第2の光検出器26の代わりに、光ファイバ30を往復する第2の部分光L
D2を検出する第3の光検出器28を備えた点を除き、実施の形態1のものと同様の構成を有するので、重複する点に関する説明を省略する。第3の光検出器28は、第1の収容室16に収容される。
【0033】
実施の形態2に係る故障検出装置2は、実施の形態1と同様、概略、加工レーザ光源10と、検出レーザ光源20と、ハーフミラー22(分光器)と、光ファイバ30と、第1の光検出器24(受光器)と、不具合判定部50(判定部)とを備える。これらの構成および機能は、実施の形態1と同様である。
【0034】
実施の形態2に係る故障検出装置2は、
図2に示すコリメーションレンズ38の右側に図示した、光ファイバ30の光軸に対して垂直に配置された回折格子板42(グレーティングまたは反射部ともいう。)を備える。
図2の回折格子板42は、加工レーザ光L
Pと同等の波長帯域の光を実質的に全透過させ、検出レーザ光L
Dの第2の部分光L
D2と同等の波長帯域の光を光ファイバ30の出射端34に向けて実質的に全反射させるものである。また、
図2で示すものとは異なるが、回折格子板42は、検出レーザ光L
Dの第2の部分光L
D2のうち、一定比率の一部を透過させ、残りを光ファイバ30の出射端34に向けて反射させるものであってもよい。このとき、第2の部分光L
D2が回折格子板42を透過する透過光と、回折格子板42で反射する反射光との相対的な強度比は一定である。
【0035】
さらに、光ファイバ30の入射端32から出射した検出レーザ光L
Dの第2の部分光L
D2は、ハーフミラー22(分光器)の図中右上向きの面S
2で、その一部が反射し、その残りが透過する。ただし
図2において、第2の部分光L
D2のうち、ハーフミラー22を透過する透過光を示す直線矢印を省略した。すなわち、検出レーザ光L
Dの第2の部分光L
D2は、光ファイバ30を往復し、その一部の光(第3の部分光L
D3)がハーフミラー22の面S
2で反射して、第3の光検出器28に入射する。
【0036】
第3の光検出器28は、検出レーザ光LDの第3の部分光LD3を受光し、その光強度を測定するものである。また第3の光検出器28は、測定された第3の部分光LD3の光強度を示す信号P3を不具合判定部50に供給する。
【0037】
実施の形態2に係る不具合判定部50は、第1および第3の光検出器24,28から供給された光強度を示す信号P1,P3を比較して、光ファイバ30に断線等の不具合があったか否かを判定する。不具合判定部50は、例えば信号P1,P3の強度比(r2=P3/P1)が閾値Th2より小さいとき(r2<Th2)、光ファイバ30に不具合があったと判断してもよい。光ファイバ30が断線したとき、典型的には、検出レーザ光LDの第3の部分光LD3が光ファイバ30の入射端32から出射されることはなく、信号P3の強度は、ほぼゼロであり、強度比r2もゼロである。このとき、不具合判定部50は、光ファイバ30が断線したと判定することができる。
【0038】
また、光ファイバ30の入射端32または出射端34に汚れ等が付着した場合、信号P1,P3の強度比r2はゼロとはならないが、不具合判定部50は、信号P1,P3の強度比r2と適当な閾値Th2を比較することにより、加工レーザ光LPが汚れ等に照射されて、光ファイバ30の入射端32または出射端34が過剰に発熱した状態を不具合状態として適切に判定することができる。本開示に係る故障検出装置2は、上述のように、光ファイバ30そのものに伝送される安定した検出レーザ光である検出レーザ光LDを利用することにより、光ファイバ30の断線等の不具合をより高い信頼性で検出または判定することができる。
【0039】
また、光ファイバ30に入射される検出レーザ光LDの光強度を示す信号P1、および光ファイバの入射端と出射端との間を往復して伝送される検出レーザ光LDの光強度を示す信号P3のそれぞれの光強度の比、差異、または相対値の変化、に基づいて光ファイバ30の断線等の不具合を高い信頼性で検出することができる。
【0040】
なお、実施の形態2は、実施の形態1とは異なり、第1および第3の光検出器24,28の両方を不具合判定部50に隣接して配置することができる。具体的には、第1および第3の光検出器24,28は、いずれも第1の収容室16に収容されている。不具合判定部50も、第1の収容室16に収容されている。すなわち実施の形態2に係る第3の光検出器28は、実施の形態1の第2の光検出器26より不具合判定部50の近くに配置することができる。よって、第3の光検出器28から不具合判定部50まで信号P3を送信するための電気的な配線距離を短くすることができ、故障検出装置2の構成をより簡便にすることができる。
【0041】
このように不具合判定部50が光ファイバ30に断線または不具合が生じたことを判定したとき、システム制御部60は、高出力の加工レーザ光LPの出射を速やかに停止するように加工レーザ光源10を制御することにより、光ファイバ30から漏れ出た加工レーザ光LPによる周辺装置等の損傷を未然に防止することができる。
【0042】
[実施の形態3]
図3を参照しながら、本開示に係る故障検出装置3の実施の形態3を説明する。
図3は、本開示に係る故障検出装置3の概略的構成を示すブロック図である。実施の形態3に係る故障検出装置3は、概略、実施の形態1の第2の光検出器26に加えて、実施の形態2の第3の光検出器28を備えた点を除き、実施の形態1のものと同様の構成を有するので、重複する点に関する説明を省略する。
【0043】
実施の形態3に係る故障検出装置3は、実施の形態1と同様、概略、加工レーザ光源10と、検出レーザ光源20と、ハーフミラー22(分光器)と、光ファイバ30と、第1の光検出器24(受光器)と、不具合判定部50(判定部)とを備える。これらの構成および機能は、実施の形態1と同様である。
【0044】
実施の形態3に係る故障検出装置3は、
図3に示すコリメーションレンズ38の右側に図示した、光ファイバ30の光軸に対して垂直に配置された回折格子板42(グレーティングまたは透過反射部ともいう。)を備える。
図3の回折格子板42は、検出レーザ光L
Dの第2の部分光L
D2のうち、一定比率の一部(透過光L
D2T)を透過させ、残り(反射光L
D2R)を光ファイバ30の出射端34に向けて反射させるものである。
【0045】
図3の回折格子板42で透過した透過光L
D2Tは、実施の形態1と同様、ビームスプリッタ40を介して、第2の光検出器26に入射する。また、
図3の回折格子板42で反射した反射光L
D2Rは、再び光ファイバ30に伝送され、実施の形態2と同様、ハーフミラー22(分光器)の図中右上向きの面S
2で反射され、第3の光検出器28に入射する。
【0046】
光ファイバ30の出射端34側の検出レーザ光を受光する第2の光検出器26および光ファイバ30の入射端32の検出レーザ光を受光する第3の光検出器28は、実施の形態1および2と同様、検出レーザ光LDの第2の部分光LD2のうちの透過光LD2Tおよび反射光LD2Rを受光し、その光強度を測定し、その光強度を示す信号P2,P3を不具合判定部50に供給する。
【0047】
実施の形態3に係る不具合判定部50は、第1、第2および第3の光検出器24,26,28から供給された光強度を示す信号P1,P2,P3を比較して、光ファイバ30に断線等の不具合があったか否かを判定する。不具合判定部50は、例えば信号P1,P2,P3の強度比(r1=P2/P1,r2=P3/P1)がそれぞれ閾値Th1,Th2より小さいとき(r1<Th1,r2<Th2)、光ファイバ30に不具合があったと判断してもよい。光ファイバ30が断線したとき、典型的には、第2の部分光LD2のうちの透過光LD2Tおよび反射光LD2Rの光強度は、ほぼゼロであり、強度比r1,r2もゼロである。このとき、不具合判定部50は、光ファイバ30が断線したと判定することができる。
【0048】
また、光ファイバ30の入射端32または出射端34に汚れ等が付着した場合、信号P1,P2,P3の強度比r1,r2はゼロとはならないが、不具合判定部50は、信号P1,P2,P3の強度比r1,r2と適当な閾値Th1,Th2とを比較することにより、加工レーザ光LPが汚れ等に照射されて、光ファイバ30の入射端32または出射端34が過剰に発熱した状態を不具合状態として適切に判定することができる。本開示に係る故障検出装置3は、上述のように、光ファイバ30そのものに伝送される安定した検出レーザ光である検出レーザ光LDを利用することにより、光ファイバ30の断線等の不具合をより高い信頼性で検出または判定することができる。
【0049】
また、光ファイバ30に入射される検出レーザ光LDの光強度を示す信号P1、光ファイバから出射される安定した検出レーザ光LDの光強度を示す信号P2、および光ファイバの入射端と出射端との間を往復して伝送される検出レーザ光LDの光強度を示す信号P3のそれぞれの光強度の比、差異、または相対値の変化、に基づいて光ファイバ30の断線等の不具合を高い信頼性で検出することができる。
【0050】
また実施の形態3に係る故障検出装置3は、実施の形態1の第2の光検出器26に加えて、実施の形態2の第3の光検出器28を備えたものであるので、光ファイバ30が断線したか否かを、より確実に判定することができる。
【0051】
このように不具合判定部50が光ファイバ30の断線等を判定すると、システム制御部60は、加工レーザ光源10を制御して、高出力の加工レーザ光LPの出射を直ちに停止し、加工レーザ光LPによる周辺装置等の損傷を未然に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、高出力の加工レーザ光を伝送する光ファイバの故障検出装置および故障検出方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3 光ファイバの故障検出装置
10 加工レーザ光源
12 ハーフミラー
S1,S2 ハーフミラーの面
20 検出レーザ光源
22 ハーフミラー
24 第1の光検出器
26 第2の光検出器
28 第3の光検出器
30 光ファイバ
32 入射端
34 出射端
36 集光レンズ
38 コリメーションレンズ
40 ビームスプリッタ
42 回折格子板
50 不具合判定部(判定部)
60 システム制御部
LP 加工レーザ光
LD 検出レーザ光
LD1 第1の部分光
LD2 第2の部分光
LD3 第3の部分光
LD2R 第2の部分光の反射光
LD2T 第2の部分光の透過光