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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】真空断熱体及びこの検査システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20221216BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20221216BHJP
   G08C 17/02 20060101ALI20221216BHJP
   G01L 21/14 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F16L59/065
G08C17/00 Z
G08C17/02
G01L21/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020033361
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134891
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊明
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
(72)【発明者】
【氏名】大河 政文
(72)【発明者】
【氏名】小島 真弥
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 優大
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069531(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090240(WO,A1)
【文献】特開2013-088036(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017903(WO,A1)
【文献】特開2012-051647(JP,A)
【文献】特開2012-171733(JP,A)
【文献】特開2012-051608(JP,A)
【文献】特開2018-128816(JP,A)
【文献】中国実用新案第206573897(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0052369(US,A1)
【文献】特開2010-261501(JP,A)
【文献】特開2015-169372(JP,A)
【文献】国際公開第2001/081818(WO,A1)
【文献】特開2015-096740(JP,A)
【文献】特開2006-118559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
G08C 17/00
G08C 17/02
G01L 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属材料によって形成される外被材と、
芯材と、
圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによる検出圧力を無線通信により送信する送信部とを備える真空断熱体であって、
前記真空断熱体は、下壁と4つの側壁で構成される箱形状であり、
前記送信部は前記下壁に設けられ、
前記真空断熱体は検査装置に載置され、
前記送信部は、前記検査装置の受信部に前記検出圧力を送信することを特徴とする真空断熱体。
【請求項2】
前記圧力センサと前記送信部に電力を供給する電力供給部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項3】
前記圧力センサと前記送信部を少なくとも有する無線真空計デバイスが、前記下壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項4】
前記無線真空計デバイスは、前記圧力センサと前記送信部に電力を供給する電力供給部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の真空断熱体。
【請求項5】
前記電力供給部は、外部の送電コイルから伝送された電力を受ける受電コイルを含み、
前記電力供給部は、前記送電コイルから受けた電力を前記圧力センサと前記送信部に供給することを特徴とする請求項2又は4に記載の真空断熱体。
【請求項6】
前記真空断熱体は、少なくとも外装部材に覆われた状態で前記検査装置に載置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱体。
【請求項7】
前記送信部は、NFC(Near Field Communication)により前記検出圧力を送信することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空断熱体。
【請求項8】
前記送信部は、BLE(Bluetooth low energy)通信により前記検出圧力を送信することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の真空断熱体。
【請求項9】
真空断熱体と、当該真空断熱体が載置される検査装置とを有する検査システムであって、
前記真空断熱体は、
非金属材料によって形成される外被材と、
芯材と、
圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによる検出圧力を無線通信により送信する送信部と、
前記圧力センサと前記送信部に供給する電力を外部から受ける受電コイルとを備え、
前記真空断熱体は、下壁と4つの側壁で構成される箱形状であり、
前記圧力センサと、前記送信部と、前記受電コイルとは前記下壁に設けられ、
前記検査装置は、
前記送信部によって送信された前記検出圧力を受信する受信部と、
前記受電コイルに電力を伝送する送電コイルとを備え、
前記真空断熱体は、少なくとも外装部材に覆われた状態で前記検査装置に載置されることを特徴とする検査システム。
【請求項10】
前記送信部は、NFC(Near Field Communication)により前記検出圧力を送信することを特徴とする請求項に記載の検査システム。
【請求項11】
前記送信部は、BLE(Bluetooth low energy)通信により前記検出圧力を送信することを特徴とする請求項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空断熱体及びこの検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空断熱体として、特許文献1の断熱容器が知られている。この断熱容器は、容器、及び、容器を収容する断熱性のバッグを備えている。バッグは二重壁を有しており、二重壁の間に真空断熱材が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-126188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、医薬品等の輸送には、外気温に係わらず所定時間、低温で維持する厳しい温度管理が求められる。これに対し、上記のような真空断熱材は、外力及び経年劣化等により真空度が低くなり、断熱性能が低下することがある。このため、真空断熱材の断熱性能を検査することが重要になっている。
【0005】
しかしながら、この断熱性能の検査に熱流束センサ及び温度センサ等の検査器を用いると、真空断熱材に検査器を接触させる必要があるため、真空断熱体を破損するおそれがある。また、検査器による熱量又は温度等の測定には時間がかかり、断熱性能の検査時間が長くなってしまう。
【0006】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、短時間で安全に断熱性能を検査することができる真空断熱体及びこの検査システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る真空断熱体は、芯材と、圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサによる検出圧力を無線通信により送信する送信部と、前記圧力センサ及び前記送信部に電力を供給する電力供給部と、前記芯材、前記圧力センサ、前記送信部及び前記電力供給部を収容した内部が減圧されたガスバリア性を有する外被材と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、圧力センサにより外被材内の圧力を検出し、この検出圧力を送信部により無線通信で送信している。この圧力は短時間で検出することができ、また、外被材に非接触で検出圧力を得ることができるため、検出圧力に基づいて真空断熱体の断熱性能を短時間で安全に検査することができる。
【0009】
本発明の第2態様に係る真空断熱体では、第1態様において、前記送信部は、NFC(Near Field Communication)により前記検出圧力を送信してもよい。この構成によれば、受信部は、ペアリングすることなく検出圧力を送信部から受信することができ、検出圧力に基づいて真空断熱体の断熱性能を短時間で検査することができる。
【0010】
本発明の第3態様に係る真空断熱体では、第1態様において、前記送信部は、BLE(Bluetooth(登録商標) low energy)通信により前記検出圧力を送信してもよい。この構成によれば、受信部は、離れて配置された送信部からの検出圧力を受信することができ、受信部の配置の自由度が増す。
【0011】
本発明の第4態様に係る真空断熱体では、第1~3態様のいずれかにおいて、前記電力供給部は、前記外被材外の送電コイルから無接触受電する受電コイルを含んでいてもよい。この構成によれば、電力供給部にバッテリを用いないことにより、電力不足による検査不能、及び、バッテリの液漏れによる真空度の低下を防止することができる。
【0012】
本発明の第5態様に係る真空断熱体では、第4態様において、前記受電コイルは、磁界共鳴方式により受電してもよい。この構成によれば、受電コイルは、離れて配置された送電コイルから受電することができ、厚みが大きい保護層等により真空断熱体が覆われた状態であっても、保護層を真空断熱体から取り外さずに、真空断熱体の断熱性能の検査することができる。
【0013】
本発明の第6態様に係る真空断熱体では、第4態様において、前記受電コイルは、電磁誘導方式により受電してもよい。この構成によれば、電力供給部を小型化できるため、真空断熱体の大型化を抑えながら、電力供給部に起因した断熱性能の低下を低減することができる。
【0014】
本発明の第7態様に係る真空断熱体では、第1~3態様のいずれかにおいて、前記電力供給部は、前記電力を蓄えているバッテリを含んでいてもよい。この構成によれば、電力供給部を小型化できるため、真空断熱体の大型化を抑えながら、電力供給部に起因した断熱性能の低下を低減することができる。
【0015】
本発明の第8態様に係る真空断熱体の検査システムは、第1~6態様のいずれかの真空断熱体と、前記電力供給部に前記電力を送電する送電部、及び、前記送信部により送信された前記検出圧力を受信する受信部を有する検査装置と、を備えていてもよい。この構成によれば、真空断熱体の断熱性能を短時間で安全に検査することができる。
【0016】
本発明の第9態様に係る真空断熱体の検査システムは、第7態様の真空断熱体と、前記送信部により送信された前記検出圧力を受信する受信部を有する検査装置と、を備えている。この構成によれば、真空断熱体の断熱性能を短時間で安全に検査することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示は、真空断熱体及びこの検査システムにおいて、短時間で安全に断熱性能を検査することができるという効果を奏する。
【0018】
本開示の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施形態1に係る真空断熱体を備えた保温箱を概略的に示す断面図である。
図2図1の保温蓋を開けた保温箱を概略的に示す断面図である。
図3図1の無線真空計デバイスを概略的に示す断面図である。
図4図1の第1真空断熱体の内側部材、芯材及び外側部材を概略的に示す断面図である。
図5図1の第1真空断熱体を示す斜視図である。
図6図1の真空断熱体の検査システムを示す図である。
図7】本開示の実施形態1の変形例4に係る真空断熱体の検査システムを示す図である。
図8】本開示の実施形態2に係る真空断熱体の検査システムを示す図である。
図9図8の保温蓋及び蓄熱蓋を開けた保温箱及び蓄熱容器を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
(実施の形態1)
<保温箱の構成>
実施の形態1に係る真空断熱体10は、図1及び図2に示すように、例えば、医薬品、検体、食品等の物品を輸送したり保管したりするための保温箱20に用いられる。以下では、真空断熱体10を保温箱20に用いる場合について説明するが、真空断熱体10の用途はこれに限定されない。
【0022】
保温箱20は保温容器30及び保温蓋40を備えている。保温容器30は第1外装部材31、第1保護層32及び第1真空断熱体10aを有し、保温蓋40は第2外装部材41、被覆層45、第2保護層42及び第2真空断熱体10bを有している。なお、第1真空断熱体10a及び第2真空断熱体10bを単に真空断熱体10と称することがある。この真空断熱体10の詳細については後述する。
【0023】
第1外装部材31内に第1保護層32が配置され、第1保護層32内に第1真空断熱体10aが配置され、第1真空断熱体10aはその内側に内部空間を有し、この内部空間の開口を保温蓋40が覆って、保温箱20が閉じられる。この保温箱20において、第1外装部材31よりも第1真空断熱体10aの内部空間側を内側と称し、その反対側を外側と称する。また、保温蓋40が保温容器30の開口を塞いだ状態において保温蓋40よりも保温容器30側を下側と称し、その反対側を上側と称するが、保温箱20の配置はこれに限定されない。
【0024】
保温容器30の第1外装部材31は、上端が開口した箱形状を有しており、例えば、合成繊維の生地、プラスチック、段ボール等の材料で形成されている。第1外装部材31は、その内部に第1保護層32を収容し、第1保護層32の外表面を覆っている。なお、ユーザが保温箱20を持ち易いように、第1外装部材31には手提げベルト等が取り付けられていてもよい。
【0025】
第1保護層32は、例えば、上端が開口した箱形状を有しており、例えば、発泡スチロール等の緩衝材により形成されている。第1保護層32は、その内部に第1真空断熱体10aを収容し、第1真空断熱体10aの外表面を覆い、外部からの衝撃及び振動等から第1真空断熱体10a及び物品の破損を防いでいる。
【0026】
第1保護層32は、第1下壁33及び4つの第1側壁34を有しており、これらは矩形の平板形状である。第1下壁33は第1保護層32の下端に配置されている。4つの第1側壁34は第1下壁33の外周縁から上方に立ち上り、互いに隣接する第1側壁34どうしが接続されており、下端開口が第1側壁34により塞がれた角筒形状を有している。
【0027】
第1真空断熱体10aは、上端が開口した箱形状であって、第2下壁11及び4つの第2側壁12を有している。第2下壁11及び第2側壁12は矩形の平板形状であり、第2下壁11は第1真空断熱体10aの下端に配置されている。
例えば、4つの第2側壁12は第2下壁11の外周縁から上方に立ち上り、互いに隣接する第2側壁12どうしが接続されており、下端開口が第2下壁11により塞がれた角筒形状を有している。
【0028】
このように、保温容器30の外表面は第1外装部材31により形成されており、保温容器30の内表面は第1真空断熱体10aにより形成されており、保温容器30の上端開口は第1真空断熱体10aの上端開口に相当する。保温容器30の内部空間は第1真空断熱体10aの内部空間に相当し、この内部空間は、第2下壁11及び4つの第2側壁12により囲まれた直方体形状であって上端開口を介して外部に連通している。
【0029】
保温蓋40は、上側蓋部分43及び下側蓋部分44を有している。上側蓋部分43は、矩形の平板形状を有している。下側蓋部分44は、矩形の平板形状の平板部分、及び、この平板部分の下面から突出した突出部分を有している。下側蓋部分44の平板部分は、保温容器30の上端開口に対向する下面、及び、下面と反対側の上面を有している。この下側蓋部分44の上面は上側蓋部分43の下面に対向して接触することにより、保温蓋40が形成される。
【0030】
図1に示すように、保温蓋40が保温容器30の上端開口を塞いだ状態では、下側蓋部分44の下面が第1保護層32の上端及び第1真空断熱体10aの上端に当接する。また、下側蓋部分44の突出部分が第1真空断熱体10aの内側に嵌り、下側蓋部分44の外周面が第1真空断熱体10aの内面に当接又は隙間を空けて近接している。
【0031】
このような保温蓋40において、上側蓋部分43は第2外装部材41、被覆層45の上側部分45a及び第2保護層42の上側部分42aにより形成されており、下側蓋部分44は被覆層45の下側部分45b、第2保護層42の下側部分42b、及び、第2真空断熱体10bにより形成されている。
【0032】
第2外装部材41は、例えば、合成繊維の生地、プラスチック、段ボール等の材料で形成されている。第2保護層42は、発泡スチロール等の緩衝材によって形成されている。被覆層45は、第1保護層32及び第2保護層42と同様に発泡スチロール等の緩衝材によって形成されてもよいし、保温容器30の上端開口の密閉性を高めるために軟質発泡ウレタン等の緩衝材によって形成されてもよい。
【0033】
なお、被覆層45の上側部分45aと第2保護層42の上側部分42aとが、双方発泡スチロール等の同材質の場合は一体的に形成されていてもよい。また、同様に、被覆層45の下側部分45bと第2保護層42の下側部分42bとが、双方発泡スチロール等の同材質の場合は一体的に形成されていてもよい。
【0034】
上側部分42aは、その上面及び側面が上側部分45aにより覆われており、上側部分45aが第2外装部材41により覆われている。このため、上側蓋部分43の上面及び側面は第2外装部材41により構成され、上側蓋部分43の下面は上側部分42aにより構成されている。また、下側部分42bは、上面以外の面が下側部分45bにより覆われている。このため、下側蓋部分44における平板部分の下面及び側面、並びに突出部分は下側部分45bにより構成され、下側蓋部分44の上面は下側部分42bにより構成されている。
【0035】
下側部分42bは、その上面から窪む窪みが設けられており、その窪みに第2真空断熱体10bが収容されている。第2真空断熱体10bの上面と下側部分42bの上面とは、面一になるように配置されている。第2真空断熱体10bの上面及び下側部分42bの上面が上側部分42aにより覆われると、上側蓋部分43及び下側蓋部分44が接続されて、保温蓋40が形成される。このため、上側部分45a及び下側部分45bにより形成された被覆層45内に、上側部分42a及び下側部分42bにより形成された第2保護層42が収容され、この第2保護層42内に第2真空断熱体10bが配置される。この保温蓋40において上面及び側面は第2外装部材41により構成されており、下面及び突出部分は被覆層45により構成される。この保温蓋40内に第2真空断熱体10bが配置され、第2保護層42により覆われる。なお、第2外装部材41は、保温蓋40が保温容器30の上端開口を開閉可能に第1外装部材31の上端に接続されていてもよい。
【0036】
<真空断熱体の構成>
真空断熱体10は、図1及び図3に示すように、芯材13、外被材14及び無線真空計デバイス50を備えている。無線真空計デバイス50は圧力センサ51、送信部52、電力供給部53及び筐体54を有している。
【0037】
芯材13は、多孔質体であって、熱伝導性が低い材料により形成されており、真空断熱材の骨格となり断熱空間を形成する。芯材13には、例えば、連続気泡ウレタンフォーム等の連続気泡体、発泡スチロール等の発泡樹脂材、繊維の集合体、及び、無機微粒子の集合体が用いられる。連続気泡ウレタンフォームは、複数の気泡が互いに連通した連続気泡を有するポリウレタンフォームである。
【0038】
外被材14は、樹脂等の非金属材料により形成されており、ガスバリア性を有し、真空断熱体10の内部の圧力を低く維持する。例えば、外被材14は、熱溶着可能な熱可塑性樹脂層、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)又はポリビニルアルコール重合体等の空気バリア層、及び、ポリプロピレン等の水蒸気バリア層の積層構造を有していてもよい。外被材14は、その内部に芯材13及び無線真空計デバイス50を収容し、これらを覆っている。なお、これに加えて、気体吸着材が外被材14内に収容されていてもよい。気体吸着材は、外被材14の内部に残存又は侵入する水蒸気及び空気等のガスを吸着する。これにより、外被材14の内部の圧力を低く維持することができる。
【0039】
圧力センサ51は、外被材14の内部の圧力(気圧)を検出するセンサであり、送信部52に電気的に接続されており、検出圧力を送信部52に出力する。圧力センサ51には、例えば、ヒータ及び熱電対を備え、ヒータを加熱したときに熱電対で検出される温度から、周囲の熱伝導特性を測定することで気圧(真空度)を測定するものが用いられる。しかしながら、圧力センサ51は、これに限定されず、例えば、ピエゾ式、静電容量式及び振動式等の微小電気機械システム(MEMS)が用いられる。
【0040】
送信部52は、圧力センサ51による検出圧力を無線通信により送信する素子であり、例えば、通信制御IC、メモリ及びアンテナを有している。送信部52は自己の識別情報(送信部ID)をメモリに記憶しており、通信制御ICは検出圧力と共に送信部IDをアンテナから送信する。例えば、送信部52は、13.56MHz帯の周波数を使った近距離無線通信であって、NFC(Near Field Communication)により検出圧力を送信する。これにより、送信部52は、所定の距離内(例えば、10cm以内)の受信部に近接することにより、検出圧力を受信することができる。
【0041】
電力供給部53は、圧力センサ51及び送信部52に電気的に接続されており、これらに電力を供給する。例えば、電力供給部53は、給電制御IC、及び、磁界共鳴方式のワイヤレス給電の受電部を有している。受電部は、外被材14外の1次側コイル(送電コイル)から無接触受電する2次側コイル(受電コイル55)を含んでいる。受電コイルは、中心軸の周囲を導線が巻き回されたコイルであって、例えば、ソレノイド型コイル又はスパイラル型コイルである。受電コイル55は送電コイルから伝送された電力を受け、給電制御ICはこの電力を圧力センサ51及び送信部52に供給する。このように、圧力センサ51及び送信部52への電力供給にバッテリを用いないことにより、減圧状態によるバッテリの液漏れがなく、液漏れによる真空断熱体10の真空度の低下及び電力供給ができない事態を抑制することができる。
【0042】
筐体54は、樹脂などの非金属により形成されており、その内部に圧力センサ51、送信部52及び電力供給部53を収容し、外被材14内に配置されている。筐体54は内部空間を有し、筐体54には複数の貫通孔56が設けられている。この貫通孔56を介して筐体54内の空気が排出されるため、外被材14内において筐体54内外の圧力は均等になっている。また、筐体54内の空間は、回路部品の保護ために樹脂によりポッティングされていてもよい。この場合も、圧力センサ51及び貫通孔56は樹脂で埋められずに、圧力センサ51により検出される筐体54内の圧力と筐体54外の圧力とは均等にされる。
【0043】
筐体54は、例えば、平板形状を有しており、互いに対向する一対の壁及びこれらを接続する4つの壁を有している。一対の壁の一方の壁(固定壁57)は、平らであって、圧力センサ51、送信部52及び電力供給部53が並んで取り付けられている。このため、並ぶ方向に直交する方向において、一対の壁間の寸法(筐体54の厚み)を小さくすることができる。これにより、真空断熱体10の厚みを大きくすることなく、無線真空計デバイス50の筐体54に重なる芯材13の厚みを大きく採ることができ、無線真空計デバイス50による断熱性能の低下を抑制することができる。なお、無線真空計デバイス50は、筐体54の一部又は全部を有していなくてもよい。例えば、無線真空計デバイス50において、保護が必要な回路部品を樹脂でポッティングすることによって、回路基板が樹脂により覆われる。これにより、無線真空計デバイス50は、筐体54を用いない、又は、圧力センサ51、送信部52及び電力供給部53の少なくとも一部を収容するような筐体54を用いることができるため、無線真空計デバイス50の厚みを更に薄くすることが可能である。
【0044】
第1真空断熱体10aにおいて、芯材13の下面から窪む窪みが設けられており、この窪みに無線真空計デバイス50(第1無線真空計デバイス50a)が配置されている。第1無線真空計デバイス50aの固定壁57と芯材13の下面とが、互いに面一になるように配置され、外被材14により覆われて、第1無線真空計デバイス50aが第1真空断熱体10a内に配置されている。この際、固定壁57に直交する方向に電力供給部53の受電コイル55の中心軸が延びるように受電コイル55が固定壁57に平行に対向して取り付けられているため、受電コイル55は第1真空断熱体10aの下面に平行に配置される。
【0045】
第2真空断熱体10bにおいて、芯材13の上面から窪む窪みが設けられており、この窪みに無線真空計デバイス50(第2無線真空計デバイス50b)が配置されている。第2無線真空計デバイス50bの固定壁57と芯材13の上面とが、互いに面一になるように配置され、外被材14により覆われて、第2無線真空計デバイス50bが第2真空断熱体10b内に配置されている。この際、固定壁57に直交する方向に電力供給部53の受電コイル55の中心軸が延びるように受電コイル55が固定壁57に平行に対向して取り付けられているため、受電コイル55は第2真空断熱体10bの上面に平行に配置される。
【0046】
<第1真空断熱体の製造方法>
図4に示すように、第1真空断熱体10aの外被材14は内側部材15及び外側部材16を有している。内側部材15及び外側部材16のそれぞれは、上端が開口した箱形状であって、上端開口の周囲を取り囲む鍔部分15a、16aを有している。内側部材15及び外側部材16のそれぞれは、真空成形、圧空成形又はブロー成形などにより所定の形状に形成されている。芯材13は、金型にウレタン液を注入し、ウレタン液が発泡して形成された連続気泡ウレタンフォームを離型することにより成形される。この際、芯材13の下面から窪む窪みを形成しておく。
【0047】
このように形成された芯材13の窪みから第1無線真空計デバイス50aの固定壁57が現れるように、第1無線真空計デバイス50aを窪みに嵌める。そして、これらを外側部材16内に収容し、芯材13内に内側部材15を収容する。これにより、外側部材16と内側部材15との間の断熱空間に芯材13及び第1無線真空計デバイス50aが収容され、外側部材16の鍔部分16a上に内側部材15の鍔部分15aが重なる。
【0048】
この鍔部分16aと鍔部分15aとを溶着し、内側部材15及び外側部材16のいずれかの部材に設けられた開口から断熱空間を真空引きする。これにより、断熱空間が減圧されて、内側部材15及び外側部材16が芯材13に密着し、外側部材16が第1無線真空計デバイス50aの固定壁57に密着する。そして、開口を封止材により封止することにより、外被材14が密封される。これにより、図5に示す第1真空断熱体10aが製造される。
【0049】
<真空断熱体の検査システム>
真空断熱体10の検査システム60は、図6に示すように、真空断熱体10、検査装置70及び台座61を有している。検査装置70は、受信部71及び送電部72を有しており、真空断熱体10の外被材14の外側に配置され、コンピュータ64に接続されている。真空断熱体10が台座61に載置された状態において、検査装置70は、真空断熱体10の無線真空計デバイス50の固定壁57に直交する方向において無線真空計デバイス50の少なくとも一部と重なるように無線真空計デバイス50に対向して配置されている。
【0050】
検査装置70a、70bは受信部71及び送電部72を有している。送電部72は送電コイル73を有しており、送電コイル73は、中心軸の周囲を導線が巻き回されたコイルであって、例えば、ソレノイド型コイル又はスパイラル型コイルである。この検査装置70の受信部71と無線真空計デバイス50の送信部52とは、無線通信ユニットを構成する。検査装置70の送電部72と無線真空計デバイス50の電力供給部53とは、ワイヤレス給電ユニットを構成する。
【0051】
検査装置70は、第1真空断熱体10aの真空度を検査する第1検査装置70a、及び、第2真空断熱体10bの真空度を検査する第2検査装置70bを有している。また、台座61は、例えば、保温容器30が載置される第1載置面62、及び、保温蓋40が載置される第2載置面63を有している。
【0052】
例えば、第1載置面62は、水平に配置されており、その上に載置された保温容器30の下面に対向する。第2載置面63は、第1載置面62に載置された保温容器30の上端開口を開けた状態の保温蓋40の上面に対向するように、第1載置面62に対して傾斜して配置されている。保温容器30が第1載置面62上に載置された状態において、第1無線真空計デバイス50aが第1検査装置70aに対向するように、第1検査装置70aが第1載置面62に配置されている。また、保温蓋40が第2載置面63上に載置された状態において、第2無線真空計デバイス50bが第2検査装置70bに対向するように、第2検査装置70bが第2載置面63に配置されている。これにより、保温箱20の配置を変更することなく、第1検査装置70a及び第2検査装置70bにより第1真空断熱体10a及び第2真空断熱体10bの真空度を容易に検査することができる。
【0053】
第1載置面62には窪みが設けられており、窪みに第1検査装置70aが収容されている。また、第2載置面63には窪みが設けられており、窪みに第2検査装置70bが収容されている。第1載置面62上に保温容器30が載置されると、第1検査装置70aの固定壁57は第1載置面62に平行に配置される。第2載置面63上に保温蓋40が載置されると、第2検査装置70bの固定壁57は第2載置面63に平行に配置される。検査装置70a、70bでは、固定壁57に直交する方向において、受信部71が送信部52の少なくとも一部と重なるように送信部52に対向し、送電部72の送電コイル73は電力供給部53の受電コイル55の少なくとも一部と重なるように受電コイル55に対向して配置されている。
【0054】
受信部71は、通信制御IC、メモリ及びアンテナを有している。受信部71は自己の識別情報(受信部ID)をメモリに記憶しており、通信制御ICは、受信した情報と共に受信部IDをコンピュータ64に出力する。コンピュータ64は、CPU等の演算処理部、RAM及びROM等の記憶部、及び、スクリーン等の表示部を有している。コンピュータ64はその情報を表示部に表示したり、記憶部に記憶したりする。また、コンピュータ64は、送電部72の駆動を制御する。
【0055】
このような検査システム60において、真空断熱体10を検査する場合、保温箱20を第1載置面62に配置し、保温蓋40を開ける。これにより、受信部71が送信部52に対向し、電力供給部53の受電コイル55が送電部72の送電コイル73に対向する。ここで、コンピュータ64は、送電コイル73に交流電流を通電する。これにより、磁場が発生し、受電コイル55はこの磁場の振動と同じ周波数で共振し、送電コイル73から電力が伝送される。
【0056】
この際、受電コイル55と送電コイル73とは非金属の外被材14、第2下壁11及び第1下壁33等を介して対向しており、これらの間に金属が介在しないため、渦電流による電力損失及び異常発熱等を抑制しながら、受電コイル55は効率良く安全に受電することができる。
【0057】
また、受電に磁界共鳴方式を用いることにより、受電コイル55は数cm離れた送電コイル73から受電することができるため、真空断熱体10が保護層32、42及び外装部材31、41により覆われた状態で受電コイル55は送電コイル73から受電することができる。よって、保護層32、42及び外装部材31、41を真空断熱体10から取り外さずに、容易に真空断熱体10の真空度を検査することができる。
【0058】
更に、送電コイル73は、載置面62、63の窪みから現れる検査装置70a、70bの面に対しその中心軸が直交するように面に平行に取り付けられている。また、受電コイル55は筐体54の固定壁57に平行に取り付けられている。これにより、送電コイル73及び受電コイル55を互いに平行でかつ近づけて対向させることができ、受電コイル55は、傾きによる給電効率の低下を低減し、効率良く受電することができる。
【0059】
そして、電力供給部53は、受電コイル55にて受電した電力を圧力センサ51及び送信部52に供給する。このように、検査の度に電力供給部53は受電するため、バッテリのような電力不足にならずに、長期間に亘って真空断熱体10の検査を行うことができる。
【0060】
それから、圧力センサ51は真空断熱体10の圧力を検出して送信部52に出力し、送信部52は検出圧力及び自己の送信部IDを送信する。受信部71は、検出圧力及び送信部IDを受信して、これらと共に自己の受信部IDをコンピュータ64に出力する。
【0061】
この際、受信部71は非金属の外被材14等を介して送信部52と通信するため、外被材14による通信効率の低下を低減でき、短時間で送信部52からの検出圧力を受信することができる。また、受信部71と送信部52との通信にNFCを用いているため、送信部52と受信部71とのペアリングする必要がなく、受信部71は迅速に検出圧力を受信することができる。
【0062】
続いて、コンピュータ64は、検出圧力、送信部ID及び受信部IDを対応付けて記憶部に記憶し、これらを表示部に表示する。送信部52は真空断熱体10と一対一で対応しているため、送信部IDにより真空断熱体10を識別することができる。また、検出圧力から真空断熱体10の真空度を判定することができる。更に、受信部71は検査装置70と一対一で対応しているため、受信部IDにより検査装置70を識別することができる。よって、検出圧力、送信部ID及び受信部IDから、真空断熱体10の真空度及びその検査場所を管理することができる。
【0063】
このように、真空断熱体10は無線真空計デバイス50を備えることにより、真空断熱体10の真空度(断熱性能)を非接触で測定することができる。これにより、熱流束センサ及び温度センサ等の検査器を真空断熱体10に接触することにより真空断熱体10が破損することを低減することができる。また、圧力センサ51を用いることにより、熱流束センサ等の検査器による検査時間(例えば、数分~数十分)に比べて、例えば、1秒等の短時間で真空断熱体10の真空度を測定することができる。
【0064】
<変形例1>
上記実施の形態では、送信部52はNFCにより検出圧力を送信したが、送信方法はこれに限定されず、他の近距離無線通信を用いることができる。例えば、送信部52は、BLE(Bluetooth low energy)通信により検出圧力を送信してもよい。これは、例えば、2.4GHzの周波数帯の電波が用いられる。このように送信部52及び受信部71との間の通信にBLE通信を用いることにより、受信部71は離れた位置にある送信部52から検出圧力を受信することができる。よって、受信部71は、送信部52に対応する位置に限らず、その配置位置の自由度が増すことができる。
【0065】
なお、第1真空断熱体10aの送信部52及び第2真空断熱体10bの送信部52は、互いに同じ通信方式を用いてもよいし、互いに異なる通信方式を用いてもよい。例えば、第1真空断熱体10aの送信部52及び第2真空断熱体10bの送信部52のいずれか一方の送信部52がNFC方式を用い、他方の送信部52がBLE通信方式を用いてもよい。
【0066】
<変形例2>
上記実施の形態では、電力供給部53の受電コイル55は、磁界共鳴方式により受電したが、これに限定されず、他のワイヤレス給電の方式を用いることができる。例えば、受電コイル55は、電磁誘導方式により受電してもよい。この場合、送電コイル73及び受電コイル55を互いに近づけ、送電コイル73に交流電流を流すことにより、磁束が発生し、この磁束変化によって受電コイル55に誘導起電力が生じる。このような電磁誘導方式の電力供給部53は小型化できるため、真空断熱体10の大型化を抑えながら、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0067】
なお、第1真空断熱体10aの電力供給部53及び第2真空断熱体10bの電力供給部53は、互いに同じワイヤレス給電の方式を用いてもよいし、互いに異なる方式を用いてもよい。例えば、第1真空断熱体10aの電力供給部53及び第2真空断熱体10bの電力供給部53のいずれか一方の電力供給部53が磁界共鳴方式を用い、他方の電力供給部53が電磁誘導方式を用いてもよい。
【0068】
<変形例3>
上記実施の形態では、電力供給部53にワイヤレス給電を用いたが、電力の供給方法はこれに限定されない。例えば、電力供給部53は、圧力センサ51及び送信部52に供給する電力を蓄えているバッテリを含んでいてもよい。このようなバッテリの電力供給部53は小型化できるため、真空断熱体10の大型化を抑えながら、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0069】
また、電力供給部53は、液体の電解質を用いない電池であって、例えば、全固体リチウムイオン電池等の全固体電池が用いられる。この場合、外被材14内を減圧にしても、バッテリの液漏れがなく、液漏れによる真空断熱体10の真空度の低下及び電力供給ができない事態の発生を抑制することができる。
【0070】
このバッテリを用いた真空断熱体10の検査装置70は、送信部52により送信された検出圧力を受信する受信部71を有するが、電力供給部53に電力を送電する送電部72を有さない。これにより、検査装置70及びこれを備える検査システム60の小型化及びコスト低減を図ることができる。
【0071】
<変形例4>
上記実施の形態では、真空断熱体10は外装部材31、41及び保護層32、42により覆われた状態で真空度が検査されたが、検査方法はこれに限定されない。真空断熱体10から外装部材31、41及び保護層32、42を取り外した状態で、真空断熱体10の真空度を検査してもよい。
【0072】
例えば、図7に示すように、第1真空断熱体10aを第1外装部材31及び第1保護層32を介さずに第1載置面62に載置する。これにより、第1真空断熱体10aの外被材14を介して、受信部71が送信部52に対向し、電力供給部53の受電コイル55が送電部72の送電コイル73に対向する。このため、受信部71と送信部52との間隔、及び、受電コイル55と送電コイル73との間隔を縮めることができる。よって、受信部71は送信部52からの検出圧力をより確実に受信することができ、受電コイル55は送電コイル73からの電力をより効率的に受電することができ、検査時間の短縮化を図ることができる。
【0073】
(実施の形態2)
<真空断熱体の検査システムの構成>
実施の形態2に係る真空断熱体10の検査システム60は、図8に示すように、真空断熱体10、検査装置70及び台座61に加えて、IDタグ80及びIDリーダ82を更に有している。これにより、検査システム60は、真空断熱体10の断熱性能の検査に加えて、保温箱20の収容品の検査を行うことができる。
【0074】
具体的には、保温箱20は保温容器30、保温蓋40及び蓄熱ユニット90を備えている。蓄熱ユニット90は、図9に示すように、蓄熱容器91、蓄熱蓋92及び支持部93を有している。蓄熱容器91は上端が開口した箱形状を有しており、蓄熱蓋92は蓄熱容器91の上端開口を開閉可能に蓄熱容器91の上端に取り付けられている。このため、蓄熱蓋92を蓄熱容器91に取り付け忘れた状態で蓄熱容器91を保温箱20に入れることを防止することができる。
【0075】
蓄熱容器91及び蓄熱蓋92は、その表面に沿って収容部が設けられており、収容部に蓄熱材94が脱着可能に収容されている。蓄熱材94は、冷却効果又は保温効果を有する部材である。蓄熱材94は、蓄熱容器91及び蓄熱蓋92により形成された内部空間の周囲を取り囲み、この内部空間を冷却又は保温することができる。また、蓄熱容器91の中に温度ロガーTを取り付けられている。
【0076】
支持部93は、例えば、発泡スチロール等の緩衝材により形成されており、第1真空断熱体10aの第2下壁11の上面に沿った形状を有している。図1に示すように、蓄熱ユニット90は、保温容器30及び保温蓋40により形成された保温箱20の内部空間に入れられる。支持部93は、第1真空断熱体10aの第2下壁11上に配置され、蓄熱容器91を第1真空断熱体10aに対して支持する。蓄熱ユニット90を収容した保温容器30を保温蓋40で塞いだ状態では、第1真空断熱体10aと蓄熱容器91との間に保温蓋40の下側蓋部分44の突出部分が嵌り、蓄熱容器91は保温容器30に対して支持される。
【0077】
IDタグ80は、蓄熱材94、支持部93、温度ロガーT及び物品M等、真空断熱体10の収容品に取り付けられている。IDタグ80は、例えば、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグ等のパッシブ型のICタグであって、メモリを有し、収容品の識別情報(収容品ID)をメモリに記憶している。IDリーダ82は、例えば、RFIDリーダであって、アンテナを有し、第1検査装置70aに並んで台座61に設けられており、コンピュータ64に接続されている。
【0078】
<検査システムの検査方法>
図8に示すように、検査システム60により、真空断熱体10の真空度を検査すると共に、真空断熱体10の収容品を検査する場合について説明する。以下では、第1検査装置70aは台座61に配置されており、第2検査装置70bは台座61とは別に携帯可能な端末65に備えられている場合について説明する。但し、第2検査装置70bの形態は、これに限定されず、例えば、図6のように、第1検査装置70aと共に台座61に設けられていてもよい。
【0079】
まず、例えば、数℃に予め冷却しておいた蓄熱材94を蓄熱容器91の収容部及び蓄熱蓋92の収容部に収容し、蓄熱容器91の中に温度ロガーTを取り付け、蓄熱容器91に物品Mを収めて、蓄熱容器91の開口を蓄熱蓋92により閉じる。そして、この蓄熱ユニット90を保温容器30の中に収容して、保温容器30の開口を保温蓋40により閉じる。
【0080】
そして、第1無線真空計デバイス50aが第1検査装置70aに対向するように、保温箱20を第1載置面62に配置する。また、第2無線真空計デバイス50bが第2検査装置70bに対向するように、保温蓋40上に端末65を配置する。これにより、送信部52が受信部71に対向し、電力供給部53の受電コイル55が送電部72の送電コイル73に対向する。
【0081】
この状態で、コンピュータ64は送電部72に交流電流を通電すると、送電コイル73から受電コイル55に電力が伝送され、電力供給部53は受電コイル55にて受電した電力を圧力センサ51及び送信部52に供給する。圧力センサ51は真空断熱体10の圧力を検出して送信部52に出力し、送信部52は検出圧力及び自己の送信部IDを送信する。これにより、受信部71は、検出圧力及び送信部IDを受信し、これらと共に自己の受信部IDをコンピュータ64に出力する。
【0082】
また、コンピュータ64は、IDリーダ82を駆動し、IDリーダ82から電波を発信する。IDタグ80は、IDリーダ82からの電波を受けて、IDタグ80の収容品IDを発信する。IDリーダ82は、収容品IDを受信してコンピュータ64に出力する。
【0083】
コンピュータ64は、検出圧力、送信部ID及び受信部IDと共に、各収容品IDを対応付けて記憶部に記憶し、これらを表示部に表示する。これにより、検出圧力、送信部ID及び受信部IDから、真空断熱体10の真空度及びその検査場所を取得できると共に、送信部IDと収容品IDから、真空断熱体10及びそれに収容されている蓄熱材94、支持部93、温度ロガーT及び物品M等の収容品の有無を判定することができる。このため、真空断熱体10とその収容品とを対応付けたリストデータを予め作成しておき、このリストデータの全項目の収容品IDを取得できれば、真空断熱体10に収容し忘れたものがないとして、出荷判定を〇と判定することができる。このように、真空断熱体10及び収容品について物品管理を行うことができる。
【0084】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例において、外被材14は、非金属により形成されていたが、その一部がアルミニウム及びステンレス等の金属により形成されていてもよい。例えば、外被材14のうち、受電コイル55及び送信部52の少なくともいずれか一方に対向する領域が非金属で形成され、これ以外の領域の一部又は全部が金属箔などの金属で形成されていてもよい。これにより、受電コイル55は非金属の外被材14を介して送電コイル73から受電することができ、また、送信部52は非金属の外被材14を介して受信部71と通信することができると共に、これ以外の領域は金属箔により外被材14内部の真空度を高く維持することができる。
【0085】
また、外被材14は、非金属の膜と金属蒸着膜との積層構造を有していてもよい。これにより、受電コイル55と送電コイル73との間に金属蒸着膜が介在するため、幾分給電効率は低下するが、外被材14内部の真空度を高く維持することができる。なお、この場合も、外被材14のうち、受電コイル55及び送信部52の少なくともいずれか一方に対向する領域には金属蒸着膜が形成されず、これ以外の領域の一部又は全部に金属蒸着膜が形成されていてもよい。
【0086】
上記全ての実施の形態及び変形例において、真空断熱体10は外装部材31、41及び保護層32、42により覆われていた。但し、真空断熱体10は、外装部材31、41及び保護層32、42に覆われていなくてもよいし、外装部材31、41及び保護層32、42のいずれか一方により覆われていてもよい。
【0087】
上記全ての実施の形態及び変形例において、送電部72及び受信部71が並んで配置されていたが、これらの配置はこれに限定されない。例えば、送電部72の送電コイル73と電力供給部53の受電コイル55との間隔が狭いほど、電力の伝送効率が高いため、送電コイル73と受電コイル55とが互いに対応するように送電部72を配置することが好ましい。これに対し、送電部72及び受信部71の通信にBLEを用いる場合、受信部71は離れた位置にある送信部52と通信することができる。このため、送電コイル73が受電コイル55に対応するように送電部72を配置し、送信部52に対応する位置から離れた位置に受信部71を配置してもよい。
【0088】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。例えば、変形例1を実施の形態2及び変形例1~3のいずれかに適用し、変形例2を実施の形態2及び変形例4に適用し、変形例3を実施の形態2及び変形例4に適用し、変形例4を実施の形態2に適用してもよい。
【0089】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の真空断熱体及びこの検査システムは、短時間で安全に断熱性能を検査することができる真空断熱体及びこの検査システム等として有用である。
【符号の説明】
【0091】
10 :真空断熱体
10a :第1真空断熱体(真空断熱体)
10b :第2真空断熱体(真空断熱体)
13 :芯材
14 :外被材
51 :圧力センサ
52 :送信部
53 :電力供給部
55 :受電コイル
60 :検査システム
70 :検査装置
70a :第1検査装置(検査装置)
70b :第2検査装置(検査装置)
71 :受信部
72 :送電部
73 :送電コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9