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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電線仮支持具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20221216BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018165353
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020039215
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】000164508
【氏名又は名称】九重電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正美
(72)【発明者】
【氏名】星野 剛
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 丙午郎
(72)【発明者】
【氏名】大田和 健
(72)【発明者】
【氏名】杉山 篤
(72)【発明者】
【氏名】安達 雄一
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を把持する第1電線把持部とシャフトと電線を把持する第2電線把持部とを有する電線仮支持具であって、
前記シャフトの一端には固定ブロックが設けられ、前記第1電線把持部は当該固定ブロックの一側面に回転自在に接続され、
また、前記シャフトの外周には位置決めブロックが摺動・固定自在に設けられ、前記第2電線把持部は当該位置決めブロックの一側面に回転自在に接続され、
前第1電線把持部及び第2電線把持部には工具接続部が夫々設けられ、
前記位置決めブロックは前記シャフトの一方向のみに摺動自在なラチェット機構を有し、前記ラチェット機構は、垂直に芯棒貫通孔が設けられ、下部側面にテーパーが設けられたコマ部材を前記シャフトの芯棒に複数通すことにより前記シャフトの外周に複数の段部が形成され、
前記位置決めブロックは前記複数の段部が形成されたシャフトを貫通可能なシャフト貫通孔を有し、
当該シャフト貫通孔の内周の一側に、前記位置決めブロックの下方移動にしたがい前記シャフト貫通孔の内側から離れるように末広がりになり、前記シャフト貫通孔の中心に向かって突出した爪を有する爪部材が設けられ、当該爪はいずれかの前記段部に嵌合して当該位置決めブロックの移動が阻止され、また、前記コマ部材の前記テーパー以外の側面に押されると弾性によって引っ込む構成であり、
前記位置決めブロックは、前記シャフトに沿って上方に移動可能であるが、下方に摺動不能であることを特徴とする、電線仮把持具。
【請求項2】
前記シャフトの他端には、前記位置決めブロックを止める止め具が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電線仮把持具。
【請求項3】
前記各コマ部材の一側にはスライド溝が設けられ、
前記各コマ部材を前記芯棒に複数通すことで、前記スライド溝も直線状に連結され、
前記位置決めブロックの前記シャフト貫通孔内に突出した前記爪が、直線状に連結された前記スライド溝に入ると、前記位置決めブロックは前記シャフトに沿って下方に摺動可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電線仮把持具。
【請求項4】
前記第1電線把持部は幹線を把持し、前記第2電線把持部は縁回し線を把持し、前記工具接続部には、ホットスティックの先端工具が接続される構成であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の電線仮把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧活線である縁回し線等の電線の切断・接続時において、電線を仮に支持する電線仮支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、高圧架空配電線の設備には幹線と、幹線から枝分けされた分岐線がある。
【0003】
従来は、分岐線を架線するために、分岐位置に新しく電柱を建てて、分岐させる工法が一般的だった。しかし、図2に示すように、近年では、電柱を建てることなく、電柱間の幹線から分岐線を直接架線する柱間分岐工法が主流となっている。なお、分岐線は、「縁回し線」と呼ばれる渡り線を用いて、幹線と電気的に接続されている。
【0004】
そして、分岐線に関して作業を行う際には、作業者の安全確保のため、縁回し線を切断することで、分岐線に係る工事区間の充電を停止させる。
【0005】
従来は、縁回し線の切断作業を行う作業者に加えて、切断された縁回し線が垂れ下がり、作業者等に接触しないように支持する補助作業者の2人体制で縁回し線の切断作業を実施していた。
【0006】
しかしながら、高所作業車の狭いバケット内に、作業者及び補助作業者の2人が搭乗して作業を行うと、作業スペースが狭く、作業者の動ける範囲が限定され、作業性を損なうことになっていたため、近年では、作業者が1人で作業することが求められている。
【0007】
ところで、従来から、主軸と主軸の両端に電線把持部を備えた電線仮支持具が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1では、主軸と、この主軸に保持される1対のジャンパ線保持具(電線把持具)を備えたジャンパ線ホルダー(電線仮支持具)が開示されている。
【0009】
また、例えば、特許文献2では、屈曲した状態で連結されている2本の主軸と、前記2本の主軸夫々に保持される一対のジャンパ線把持具(電線把持具)を備えたジャンパ線ホルダー(電線仮支持具)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平09-224312号公報
【文献】特開平09-298815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような特許文献1及び2等の従来の電線仮支持具を、電線に設置する場合には、作業者が高所作業車のバケットから電線にアプローチする。その際には、遠隔操作用のヤットコで電線仮支持具の主軸等を挟持した状態で、電線の位置まで持ち上げる必要がある。
【0012】
しかしながら、高圧の幹線に接続されている縁回し線は、3本の電線が水平に配置された構成となっており、その下方には、低圧の幹線が既設されているため、高所作業車のバケットが、切断する縁回し線の真下に入り込むことができないことが多い。そのため、作業者は少し離れた位置から無理な体勢で電線仮支持具を電線に設置する必要がある。
【0013】
また、電線仮支持具の電線把持部を、電線の予め狙いを定めた位置に設置するためには、バケット位置の微調整が必要であったり、バケット内で作業者が繰り返し移動を行う必要があった。
【0014】
このため、電線仮支持具を遠隔操作用のヤットコで挟持した状態で電線の位置まで持ち上げ、電線に設置することは、作業者にとって、負担が大きいだけでなく、体のバランスを崩して電線仮支持具を落下させてしまったり、体勢を崩して怪我をする恐れがあり、常に慎重な作業が要求されていた。
【0015】
また、現場の状況によっては、電線の予め狙いを定めた位置に電線仮支持具を設置することをあきらめ、切断箇所の変更を余儀なくされる場合もあった。
【0016】
また、1人の作業者がホットスティック(絶縁操作棒)等の先端で重量が5(kg)程度の油圧カッターを把持し、既設の電線に接触しないように、頭上で操作することは、過度の負担を強いる作業となっていた。
【0017】
なお、一般に、ホットスティックは、長尺の操作棒と、当該操作棒の先端部に取り付けた活線作業用の先端工具(以下、先端工具という)で構成されている。そして、ホットスティックは、架空電線を把持、又は切断する等、作業目的に対応して、先端工具を交換できるように構成されている。
【0018】
また、電線仮支持具で縁回し線を仮支持した後に、油圧カッターの切断位置を変更する場合があり、その場合には、縁回し線に設置した電線仮支持具を外して、再度位置を変えて設置する必要が生じ、効率の良い作業とは言い難いものであった。
【0019】
そこで本発明は、上記問題点に対処するため、高圧活線である縁回し線等の電線の切断・接続時において、体のバランスを保ちながら、作業者が1人の場合であっても、安全かつ効率良く電線の切断作業を実施可能な電線仮支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
電線を把持する第1電線把持部とシャフトと電線を把持する第2電線把持部とを有する電線仮支持具であって、
前記シャフトの一端には、固定ブロックが設けられ、前記第1電線把持部は、当該固定ブロックの一側面に回転自在に接続され、
また、前記シャフトの外周には位置決めブロックが摺動・固定自在に設けられ、前記第2電線把持部は当該位置決めブロックの一側面に回転自在に接続され、
前第1電線把持部及び第2電線把持部には工具接続部が夫々設けられ、
前記位置決めブロックは前記シャフトの一方向のみに摺動自在なラチェット機構を有し、前記ラチェット機構は、垂直に芯棒貫通孔が設けられ、下部側面にテーパーが設けられたコマ部材を前記シャフトの芯棒に複数通すことで、前記シャフトの外周に複数の段部が形成され、
前記位置決めブロックは前記複数の段部が形成されたシャフトを貫通可能なシャフト貫通孔を有し、当該シャフト貫通孔の内周の一側に、前記位置決めブロックの下方移動にしたがい、前記シャフト貫通孔の内側から離れるように末広がりになり、前記シャフト貫通孔の中心に向かって突出した爪を有する爪部材が設けられ、当該爪はいずれかの前記段部に嵌合して当該位置決めブロックの移動が阻止され、また、前記コマ部材の前記テーパー以外の側面に押されると弾性によって引っ込む構成であり、
前記位置決めブロックは、前記シャフトに沿って上方に移動可能であるが、下方に摺動不能である、電線仮把持具とした。
【0021】
また、請求項2に係る発明は、
前記シャフトの他端には、前記位置決めブロックを止める止め具が設けられている、請求項1に記載の電線仮把持具とした。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、
前記各コマ部材の一側にはスライド溝が設けられ、
前記各コマ部材を前記芯棒に複数通すことで、前記スライド溝も直線状に連結され、
前記位置決めブロックの前記シャフト貫通孔内に突出した前記爪が、直線状に連結された前記スライド溝に入ると、前記位置決めブロックは前記シャフトに沿って下方に摺動可能である、請求項1又は2に記載の電線仮把持具とした。
【0023】
また、請求項4に係る発明は、
前記第1電線把持部は幹線を把持し、前記第2電線把持部は縁回し線を把持し、前記各工具接続部にはホットスティックの先端工具が接続される構成である、請求項1~3のいずれかに記載の電線仮把持具とした。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、第1電線把持部や第2電線把持部を、ホットスティックの先端工具に装着し、ホットスティックと一体化させることによって、縁回し線8等の電線の切断・接続の際の電線へのアプローチを容易にする。
【0027】
また、本発明は、既設低圧線が輻輳して、高圧線の真下に高所作業車のバケットが入り込めず、作業者が無理な体勢を強いられる場合でも、ホットスティックの先端工具に装着した本発明の第1電線把持部や第2電線把持部を、予め狙いを定めた電線上の位置に確実に取り付けることができる。
【0028】
また、本発明は、電線の角度や曲がり具合やクセ等に合わせて、電線仮支持具の第1電線把持部と第2電線把持部との間隔や、第1電線把持部及び第2電線把持部の角度を予め調整しておく必要がなく、第1電線把持部を幹線に装着した後に、縁回し線に対する第2電線把持部の角度や位置の調整を状況に合わせて行うことができる。
【0029】
また、本発明は、第1及び第2電線把持部を電線に固定した後でも、縁回し線の切断予定位置に合わせて、第1電線把持部と第2電線把持部との間隔をフレキシブルに微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】高圧架空配電線の設備を示す説明図である。
図2】高圧架空配電線の設備に対して行う柱間分岐工法を説明する説明図である。
図3】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具の全体的な構成を例示的に示す図である。
図4】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具のシャフトの構成を例示的に示す斜視図である。
図5】(a)と(b)はいずれも、本発明の実施の形態例1の電線仮支持具のシャフトの中央部外周と位置決めブロックの状態を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具を用いて、切断・接続する高圧架空配電線の設備の状況を例示的に示す図である。
図7】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具の第1電線把持部及び第2電線把持部と、ホットスティックの先端工具との接続状況を示す説明図である。
図8】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具を用いた縁回し線等の電線の切断・接続方法を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具を用いた縁回し線等の電線の切断・接続方法を示す説明図である。
図10】本発明の実施の形態例1の電線仮支持具を用いた縁回し線等の電線の切断・接続方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態例1)
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態例1を詳細に説明する。ただし、本実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
<電線仮支持具Aの構成>
図3は、本実施の形態例1に係る電線仮支持具Aの全体的な構成を示した図である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態例1の電線仮支持具Aは、主として、シャフト1と、幹線等の電線を把持する第1電線把持部3と、縁回し線等の電線を把持する第2電線把持部4とから構成されている。
【0034】
<シャフト1の構成>
シャフト1は、例えば、ポリカーボネート樹脂からなる、棒状の部材である。シャフト1の一端には、シャフト1の水平方向に貫通孔11を有するシャフトトップ12が設けられている。そして、このシャフトトップ12には、略直方体形状の固定ブロック13が一体成型されている。
【0035】
シャフト1の他端には、シャフト1の水平方向に貫通孔11を有するシャフトエンド14が設けられている。そして、シャフト1の中心方向に近いシャフトエンド14の上端は、シャフト1の中央部外周17(後述)に比して外周が大きく成形されている。このように成形されていることによって、シャフトエンド14は、位置決めブロック16(後述)を止める止め具としての役割を果たす。
【0036】
シャフト1の中央部外周17(=固定ブロック13からシャフト1の中心方向に一定長離間した位置を始めとして、シャフトエンド14から中心方向に一定長離間した位置まで)には、一定の間隔で複数の段部18が形成されている。
【0037】
次に、この複数の段部18の構成について、図4を用いて説明する。シャフト1の中央部外周17は、シャフト1の芯棒19に、垂直に貫通孔20が設けられた、略円柱形状で、長さが1.6~3(cm)のコマ部材21を複数個通して、複数のコマ部材21を連結させて、構成されている。各コマ部材21の下部側面は、幅が先細りになるテーパー22が設けられている。そのため、複数のコマ部材21を連結すると、テーパー22によって、複数の段部18が形成される。
【0038】
また、各コマ部材21の一側には、垂直にスライド溝24が設けられている。そのため、複数のコマ部材21を連結すると、スライド溝24も連結され、直線状のスライド溝24が形成される。
【0039】
<第1電線把持部3の構成>
第1電線把持部3は、固定ブロック13の一側面に、回転自在に接続されている。そして、第1電線把持部3は、主として、略断面コの字形で、内空部の上面及び内空部の側面で電線を把持する上爪部31と、上爪部31の内空部の下面の中央部に垂直に穿たれた貫通孔32に、螺着自在に設けられていることによって、上爪部31と協働して、電線を把持する下爪部33とから構成されている。
【0040】
上爪部31は、電線を把持する側ではない、上爪部31の裏側の側面で、固定ブロック13の一側面に回転自在に接続されている。また、上爪部31の内腔部の上面は、電線を把持し易くするため、中央部が内側に窪んで形成されている。
【0041】
下爪部33は、上端の下爪部材331と、中央の円柱部材332と、下端の工具接続部材334とから構成されている。
【0042】
下爪部材331の上面は、電線を把持し易くするため、中央部が内側に窪んで形成されている。円柱部材332の外周には、全体に螺子が切られており、上爪部31の下部に垂直に穿たれた貫通孔32に螺着自在に設けることができる。なお、下爪部材331と円柱部材332とは、回動自在に接続されている。
【0043】
工具接続部材334は、略円柱形状であって、底面の中央には、ホットスティック5の先端を内挿することができる内径を有するように円筒状に構成された円筒孔3341と、ホットスティック5の内挿に伴ってホットスティック5の係止ピンを挿通案内した後、係止固定するための略T字状に切欠き形成された切欠3342を有している。
【0044】
そのため、作業者等のユーザは、工具接続部材334の円筒孔3341にホットスティック5の先端を内挿し、ホットスティック5をねじって、係止ピンを切欠3342に引っ掛け(=ツイストロック)、第1電線把持部3に、ホットスティック5の先端を装着する。そして、ホットスティック5を回転させて、円柱部材332を回転させ、下爪部材331を押し上げることによって、上爪部31と協働して、幹線等の電線を把持することができる。
【0045】
<位置決めブロック16の構成>
シャフト1の中央部外周17には、略直方体形状の位置決めブロック16が摺動自在に設けられている。図5(a)及び(b)に示すように、位置決めブロック16には、略中央部の垂直方向に、シャフト1の中央部外周17を貫通させることのできる内径を有する貫通孔171が設けられている。そして、貫通孔171の内周一側には、爪部材172が上下2段にも設けられている。爪部材172の爪1721は、位置決めブロック16の下方にしたがい、貫通孔171の内周から離れるように末広がりになり、貫通孔171の中心に向かって突出して構成されている。
【0046】
そのため、図5(a)に示すように、位置決めブロック16を上方に向かって摺動させる場合には、コマ部材21のテーパー22によって形成される段部18に嵌った爪1721が、コマ部材21の下部側面のテーパー22以外の側面23に押され、貫通孔171の内周側に弾性によって引っ込み、段部18から外れるため、位置決めブロック16を上方に向かって摺動させることができる。そして、位置決めブロック16を止めると、位置決めブロック16の爪1721が、当接する段部18に嵌り、位置決めブロック16は、シャフト1の中央部外周17に固定される。従って、爪1721が段部18に嵌る位置でしか、位置決めブロック16を固定できない。そのため、位置決めブロック16を固定可能な位置の間隔は、各コマ部材21の長さに依存する。例えば、各コマ部材21の全体の長さが1.6(cm)の場合には、側面23の長さである1(cm)の間隔で位置決めブロック16を固定可能である。
【0047】
逆に、位置決めブロック16を下方に向かって摺動させた場合には、コマ部材21のテーパー22によって形成される段部18に嵌った爪1721が、更に広がることになり、段部18から外れることはない。そのため、位置決めブロック16は動かない。
【0048】
そこで、位置決めブロック16を下方に向かって動かしたい場合には、図5(b)に示すように、シャフト1を回転、あるいは位置決めブロック16を回転させ、爪1721とスライド溝24の位置を合わせることで、段部18から爪1721が外れ、位置決めブロック16を下方に向かって動かすことができる。
【0049】
即ち、位置決めブロック16は、シャフト1の外周を上方に向かって摺動自在に設けられているが、下方には、爪1721をスライド溝24に合わせないと、摺動させることができない、いわゆるラチェット機構の構成となっている。下方に向かって摺動自在な構成になっていると、重力の影響で位置決めブロック16が動いてしまい、不都合が生じる。一方、上方に向かって摺動自在な構成になっていても、重力の影響を受けないので、不都合が生じない。
【0050】
<第2電線把持部4の構成>
第2電線把持部4は、位置決めブロック16の一側面に、回転自在に接続されている。そして、第2電線把持部4は、主として、略断面コの字形で、内空部の上面及び内空部の側面で電線を把持する上爪部41と、上爪部41の内腔部の下面の中央部に垂直に穿たれた貫通孔42に、螺着自在に設けられていることによって、上爪部41と協働して、電線を把持する下爪部43とから構成されている。
【0051】
上爪部41は、電線を把持する側ではない、上爪部41の裏側の側面で、位置決めブロック16の一側面に回転自在に接続されている。また、上爪部41の内空部の上面は、電線を把持し易くするため、中央部が内側に窪んで形成されている。
【0052】
下爪部43は、上端の下爪部材431と、中央の円柱部材432と、下端の工具接続部材434とから構成されている。
【0053】
下爪部材431の上面は、電線を把持し易くするため、中央部が内側に窪んで形成されている。円柱部材432の外周には、全体に螺子が切られており、上爪部41の下部に垂直に穿たれた貫通孔42に螺着自在に設けることができる。なお、下爪部材431と円柱部材432とは、回動自在に接続されている。
【0054】
工具接続部材434は、貫通孔4341を有するアイリング状で形成されている。
【0055】
そのため、作業者等のユーザは、工具接続部材434の貫通孔4341にホットスティック5の、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛けて、シャフト1や第2電線把持部4の角度等を変えることができる。
【0056】
また、工具接続部材434に、ホットスティック5の先端に装着したピンロック用の先端工具を嵌合し、貫通孔4341にピンを通して、第2電線把持部4に、ホットスティック5の先端を装着することができる。そのため、ホットスティック5を回転させることで、円柱部材432を回転させて持ち上げ、下爪部材431を押し上げることによって、上爪部41と協働して、縁回し線等の電線を把持することができる。
【0057】
<電線仮支持具Aを用いた縁回し線等の電線の切断・接続方法>
まず、図6は、電線仮支持具Aを用いて、切断・接続する高圧架空配電線の設備の状況を例示的に示す図である。例えば、高圧架空配電線は、図6に示すように、幹線6と分岐線7とは、縁回し線8を介して電気的に接続されている。幹線6と縁回し線8とは、分岐スリーブ61を用いて結線されている。また、幹線6の下方には、分岐線7を支持する役割を果たす鋼より線9が張られている。そして、分岐線7と鋼より線9とは、引留具91、引留がいし92、引留クランプ93を用いて接続されている。
【0058】
次に、このような高圧架空配電線の設備の状況において、電線仮支持具Aを用いて、縁回し線8を切断・接続する方法を図7図10を用いて説明する。
【0059】
図7に示すように、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端に、両側から係止ピン51が突出している、ツイストロック用の先端工具52を装着する。そして、作業者等のユーザは、工具接続部材334の円筒孔3341にホットスティック5の先端を内挿し、ホットスティック5をねじって、係止ピン51を切欠3342に引っ掛け(=ツイストロック)、第1電線把持部3に、ホットスティック5の先端を装着する。
【0060】
また、作業者等のユーザは、爪1721と、シャフト1上のスライド溝24の角度が「180°」になっているか否か確認し、なっていなければ、位置決めブロック16を回転させて、「180°」にする。位置決めブロック16が少しずれてしまった場合でも、爪1721とシャフト1上のスライド溝24の位置が合わないように、このような措置をとっておくことが望ましい。
【0061】
そして、第1電線把持部3に、ホットスティック5の先端が装着された状態で、図8に示すように、作業者等のユーザは、ホットスティック5を操作して、第1電線把持部3の上爪部31を幹線6に引っ掛ける。なお、この際、作業者等のユーザは、電線仮支持具A全体を安定させるため、ホットスティック5を握っていない方の手で、シャフトエンド14を握っても良い。但し、その場合には、絶縁高圧手袋の着用が必要である。
【0062】
なお、図8では、ホットスティック5は省略されている。また、第1電線把持部3の上爪部31を引っ掛ける幹線6上の位置は、分岐スリーブ61から、20~30(cm)離した位置にする場合が多い。あまり離しすぎると、切断された縁回し線8の先端部の落差が大きくなるからである。また、本実施の形態例1では、図8に示すように、分岐スリーブ61の右側の幹線6上に、第1電線把持部3の上爪部31を引っ掛けて把持する方法を示したが、この方法に限定されるわけではない。分岐スリーブ61の左側の幹線6上に、第1電線把持部3の上爪部31を引っ掛けて把持し、分岐スリーブ61を跨いで、分岐スリーブ61の右側の縁回し線8上に、第2電線把持部4の上爪部41を引っ掛けて把持する方法としても良い。分岐スリーブ61の右側に他の接続や、補修カバー等が在る場合には、このような方法を用いる場合もある。
【0063】
そして、ホットスティック5を右回りに回転させて、工具接続部材334を回転させる。すると、円柱部材332も回転して持ち上がり、下爪部材331を押し上げる。そして、上爪部31と下爪部33は協働して、幹線6を把持する。そして、幹線6を第1電線把持部3で把持させることが完了すると、ホットスティック5をねじって、工具接続部材334から外す。その後、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端から、ツイストロック用の先端工具52を外す。
【0064】
次に、図7に示すように、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端に、かぎ状部材53が突出している先端工具54を装着する。そして、工具接続部材434の貫通孔4341にホットスティック5の、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛けて引っ張り、シャフト1の体勢を垂直にする(図8を参照)。シャフト1の体勢が垂直になったら、ホットスティック5を操作して、貫通孔4341から外す。その後、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端から、先端工具54を外す。なお、このシャフト1の体勢を垂直にする作業は、初めから垂直になっている等、不要な場合には行わない。
【0065】
次に、縁回し線8に第2電線把持部4の上爪部41を引っ掛ける前に、縁回し線8上の把持予定箇所と、第2電線把持部4の位置関係から、位置決めブロック16を摺動させて、第2電線把持部4を動かす必要があると作業者等のユーザが感じた場合には、シャフト1上で位置決めブロック16を、上方に向かって、あるいは下方に向かって摺動させて調整する。
【0066】
高所作業車のバケット内で、第1電線把持部3と第2電線把持部4の間隔調整を行ってから、ホットスティック5の先端工具52等に装着して作業を開始するが、実際に作業者等のユーザの頭上の電線に実際に引っ掛けて合わせてみないと第1電線把持部3と第2電線把持部4の適切な間隔が分からないケースもある。特に例えば、電線に特有のクセやねじれがある場合には、バケット内からの目測では分からない。このような場合に、第2電線把持部4を摺動させる必要が生じる。
【0067】
次に、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端に、ピンロック用の先端工具(図示省略)を装着する。そして、作業者等のユーザは、幹線6に把持された状態の電線仮支持具Aに係る工具接続部材434に、ピンロック用の先端工具を内挿し、ピンを貫通孔4341に貫通させて、第2電線把持部4に、ホットスティック5の先端を装着する。
【0068】
その状態で、作業者等のユーザは、ホットスティック5を操作して、第2電線把持部4の上爪部41を縁回し線8に引っ掛ける。そして、ホットスティック5を右回りに回転させて、工具接続部材434を回転させる。すると、円柱部材432も回転して持ち上がり、下爪部材431を押し上げる。そして、上爪部41と下爪部43は協働して、縁回し線8を把持する。そして、縁回し線8を第2電線把持部4で把持させることが完了すると、ピンロックを解除して、工具接続部材434からホットスティック5を外す(図9を参照)。その後、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端から、ピンロック用の先端工具を外す。
【0069】
次に、作業者等のユーザは、ホットスティック5の先端に油圧カッターを装着する(図示省略)。そして、電線仮支持具Aで、幹線6及び縁回し線8を把持した状態で、図10に示すように、ホットスティック5の先端に装置した油圧カッターで縁回し線8を切断する。そして、縁回し線の切断箇所には、他と接触しても問題ないように、絶縁カバー81を被せる。
【0070】
なお、縁回し線8の切断位置は、切断された縁回し線8を使用して、幹線6と接続できるように、縁回し線8ができるだけ長くなる位置(分岐スリーブ61に近い箇所)で切断する。
【0071】
また、作業者等のユーザが、油圧カッターで縁回し線8の切断を開始した後、油圧カッターの作業性を考慮すると、第1電線把持部3と第2電線把持部4の間隔を調整した方が良いと判断した場合等は、調整する。
【0072】
第1電線把持部3と第2電線把持部4の間隔の調整について、以下詳しく説明する。第1電線把持部3と第2電線把持部4の間隔を調整して狭くする場合には、作業者等のユーザは、工具接続部材434の貫通孔4341に、ホットスティック5の先端に装着された、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛けて、位置決めブロック16を上方に向かって摺動させる。あるいは、工具接続部材434に、ピンロック用の先端工具を内挿し、ピンを貫通孔4341に貫通させて、第2電線把持部4に、ホットスティック5の先端を装着した状態で、位置決めブロック16を上方に向かって摺動させる。
【0073】
一方、第1電線把持部3と第2電線把持部4の間隔を調整して広くする場合には、シャフトエンド14に係る貫通孔11に、ホットスティック5の先端に装着された、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛けて、シャフト1を180°回転させる等して、爪1721とシャフト1上のスライド溝24の位置を合わせる。その状態で、作業者等のユーザは、工具接続部材434の貫通孔4341に、ホットスティック5の先端に装着された先端工具54を引っ掛ける等して、位置決めブロック16を下方に向かって摺動させる。その後、作業者等のユーザは、シャフトエンド14に係る貫通孔11に、ホットスティック5の先端に装着された、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛けて、シャフト1を180°回転させる等して、爪1721と、シャフト1上のスライド溝24の角度が「180°」になるようにする。
【0074】
次に、分岐線7が接続されている側の、切断された縁回し線8は、工事終了後、再度、幹線6に接続する。詳しくは、既設の接続箇所(=分岐スリーブ61)の近辺に、新たに分岐スリーブ61を設置して、幹線6に接続する。
【0075】
なお、既設の分岐スリーブ61及び既設の分岐スリーブ61から飛び出している切断された縁回し線8は、補修カバー(図示省略)を巻いて養生した状態で残置する。
【0076】
このように、本実施の形態例1に係る電線仮支持具Aは、第1電線把持部3や第2電線把持部4を、ホットスティック5の先端工具52等に装着し、ホットスティック5と一体化させることによって、縁回し線8等の電線の切断・接続の際の電線へのアプローチを容易にする。
【0077】
また、本実施の形態例1に係る電線仮支持具Aは、既設低圧線が輻輳して、高圧線の真下に高所作業車のバケットが入り込めず、作業者が無理な体勢を強いられる場合でも、ホットスティック5の先端工具52等に装着した本実施の形態例1に係る第1電線把持部3や第2電線把持部4を、予め狙いを定めた電線上の位置に確実に取り付けることができる。
【0078】
また、本実施の形態例1に係る電線仮支持具Aは、電線の角度や曲がり具合やクセ等に合わせて、電線仮支持具の第1電線把持部3と第2電線把持部4との間隔や、第1電線把持部3及び第2電線把持部4の角度を予め調整しておく必要がなく、第1電線把持部3を幹線6に装着した後に、縁回し線8に対する第2電線把持部4の角度や位置の調整を状況に合わせて行うことができる。
【0079】
また、本実施の形態例1に係る電線仮支持具Aは、第1電線把持部3及び第2電線把持部4を電線に固定した後でも、縁回し線8の切断予定位置に合わせて、第1電線把持部3と第2電線把持部4との間隔をフレキシブルに微調整することができる。
【0080】
<変形例>
本実施の形態例1では、電線仮支持具Aを縁回し線8の切断・接続に用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではない。電線仮支持具Aは、例えば、電柱引留め箇所におけるジャンパ線の切断・接続にも使用可能である。また、電柱で腕金を出して、高圧線を分岐させる工事でも使用可能である。
【0081】
また、本実施の形態例1では、第1電線把持部3に、ホットスティック5の先端が装着された状態で、作業者等のユーザは、ホットスティック5を操作して、第1電線把持部3の上爪部31を幹線6に引っ掛ける方法を示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、作業者等のユーザは、片手で電線仮支持具Aのシャフトエンド14を持って、第1電線把持部3の上爪部31を幹線6に引っ掛ける。そして他方の手でホットスティック5を操作して、工具接続部材334の円筒孔3341にホットスティック5の先端を内挿し、ホットスティック5をねじって、係止ピンを切欠3342に引っ掛け(=ツイストロック)、第1電線把持部3に、ホットスティック5の先端を装着する。その後、ホットスティック5を回転させて、円柱部材332を回転させ、下爪部材331を押し上げることによって、上爪部31と協働して、幹線6等の電線を把持させる方法としても良い。
【0082】
また、本実施の形態例1では、第1電線把持部3の工具接続部材334は、ホットスティック5の先端工具52をツイストロックするため、円筒孔3341と、切欠3342を有し、また、第2電線把持部4の工具接続部材434は、かぎ状部材53が突出している先端工具54を引っ掛ける等のため、貫通孔4341を有するアイリング状で形成されている構成を示した。しかし、この構成に限定されるものではない。例えば、第1電線把持部3の工具接続部材334が、貫通孔4341を有するアイリング状で形成され、また、第2電線把持部4の工具接続部材434は、円筒孔3341と、切欠3342を有する構成としても良い。また、第1電線把持部3の工具接続部材334及び第2電線把持部4の工具接続部材434が、貫通孔4341を有するアイリング状で形成される構成としても良い。更に、第1電線把持部3の工具接続部材334及び第2電線把持部4の工具接続部材434が、円筒孔3341と、切欠3342を有する構成としても良い。
【0083】
本実施の形態例1では、位置決めブロック16を、シャフト1の外周に摺動・固定する構成として、上述したラチェット機構に係る構成を示したが、この構成に限定されるわけではない。例えば、位置決めブロック16の一側から水平にシャフト1まで貫通するボルト(図示省略)を設け、当該ボルトを緩めた状態で、位置決めブロック16を摺動させ、任意の位置でボルトを締め付け、位置決めブロック16をシャフト1の外周に固定する締付け固定機構に係る構成としても良い。
【符号の説明】
【0084】
A:電線仮支持具、
1:シャフト、11:貫通孔、12:シャフトトップ、13:固定ブロック、14:シャフトエンド、16:位置決めブロック、17:中央部外周、171:貫通孔、172:爪部材、1721:爪、
18:段部、19:芯棒、20:貫通孔、21:コマ部材、22:テーパー、23:側面、24:スライド溝、
3:第1電線把持部、31:上爪部、32:貫通孔、33:下爪部、331:下爪部材、332:円柱部材、334:工具接続部材、3341:円筒孔、3342:切欠、
4:第2電線把持部、41:上爪部、42:貫通孔、43:下爪部、431:下爪部材、432:円柱部材、434:工具接続部材、4341:貫通孔、
5:ホットスティック、51:係止ピン、52:先端工具、53:かぎ状部材、54:先端工具、
6:幹線、61:分岐スリーブ、
7:分岐線、
8:縁回し線、81:絶縁カバー、
9:鋼より線、91:引留具、92:引留がいし、93:引留クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10