(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】車両近接報知装置、車両および車両近接報知方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 660B
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 620A
(21)【出願番号】P 2019061218
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今野 文靖
(72)【発明者】
【氏名】大野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 伸之介
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-058237(JP,A)
【文献】特開2011-246121(JP,A)
【文献】特開2012-166662(JP,A)
【文献】特開2011-245907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室外に配置されたスピーカに警報音を出力させることで前記車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、
前記車両の走行速度を取得し、取得された前記走行速度に応じて前記スピーカにより出力される前記警報音の音圧を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記スピーカにより出力されている前記警報音の前記車室内における第一音の音圧である第一音圧と、前記車両の走行によるロードノイズの前記車室内における第二音の音圧である第二音圧と、を推定し、
推定された前記第一音圧および前記第二音圧を比較し、
比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より大きい値に変化した場合、前記第二音圧が前記第一音圧以下である場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を小さくする
車両近接報知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第二音の推定において、
予め計測することにより得られた、前記車両の走行速度と、前記車室内の音である車室音との関係を示す第二関係情報を取得し、
取得された前記第二関係情報において、現在取得された走行速度に対応付けられている車室音を特定し、
特定された前記車室音から推定された前記第一音を減算することにより得られた音を前記第二音として推定する
請求項1に記載の車両近接報知装置。
【請求項3】
前記第二関係情報は、前記走行速度が大きいほど、前記車室音の音圧が大きい関係を示す情報である
請求項2に記載の車両近接報知装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第二音の推定において、
前記車室内に配置されたマイクにより取得された音である車室音から、推定された前記第一音を減算することにより得られた音を前記第二音として推定する
請求項1に記載の車両近接報知装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一音の推定において、
前記スピーカから前記車室内への音の伝達特性を取得し、
取得された前記伝達特性と、前記スピーカに現在出力している前記警報音とを用いて、前記第一音を推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両近接報知装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一音の推定において、
前記車両が停止中に予め計測することにより得られた、前記スピーカから出力された前記警報音の音圧と、前記車室内の音である車室音との関係を示す第一関係情報を取得し、
取得された前記第一関係情報において、前記スピーカに現在出力している前記警報音の音圧に対応付けられている車室音を特定し、
特定された前記車室音を前記第一音として推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両近接報知装置。
【請求項7】
前記制御部は、
比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より所定の音圧だけ大きい第三音圧以下の値に変化した場合、前記第二音圧が前記第三音圧より大きい場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を大きくする
請求項1から6のいずれか1項に記載の車両近接報知装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両近接報知装置と、
前記スピーカと、を備える
車両。
【請求項9】
車両の車室外に配置されたスピーカに警報音を出力させることで前記車両の近接を報知する車両近接報知装置による車両近接報知方法であって、
前記車両の走行速度を取得し、取得された前記走行速度に応じて前記スピーカにより出力される前記警報音の音圧を制御し、
前記スピーカにより出力されている前記警報音の前記車室内における第一音の音圧である第一音圧と、前記車両の走行によるロードノイズの前記車室内における第二音の音圧である第二音圧と、を推定し、
推定された前記第一音圧および前記第二音圧を比較し、
比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より大きい値に変化した場合、前記第二音圧が前記第一音圧以下である場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を小さくする
車両近接報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載され、車両の接近を外部に報知する警報音を出力する車両近接報知装置および車両近接報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及びハイブリッド自動車は低騒音であるため、自車ロードノイズが小さい低速走行時には歩行者等が車両の接近に気づき難いという問題がある。このため、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車には、走行時に車両の走行状態を想起させる連続音である警報音を発生させることで車両の接近を歩行者等に警告する車両近接報知装置が備えられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-208636号公報
【文献】特開平11-285093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような車両近接報知装置には、車両の搭乗者に違和感を与えるという課題があった。
【0005】
そこで、本開示は、搭乗者へ与える違和感を低減した警報音を出力することができる車両近接報知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置は、車両の車室外に配置されたスピーカに警報音を出力させることで前記車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、前記車両の走行速度を取得し、取得された前記走行速度に応じて前記スピーカにより出力される前記警報音の音圧を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記スピーカにより出力されている前記警報音の前記車室内における第一音の音圧である第一音圧と、前記車両の走行によるロードノイズの前記車室内における第二音の音圧である第二音圧と、を推定し、推定された前記第一音圧および前記第二音圧を比較し、比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より大きい値に変化した場合、前記第二音圧が前記第一音圧以下である場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を小さくする。
【0007】
本開示の他の一態様に係る車両は、上記の車両近接報知装置と、前記スピーカと、を備える。
【0008】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両近接報知装置は、搭乗者へ与える違和感を低減した警報音を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る車両近接報知装置を備える車両の模式図である。
【
図2】
図2は、車両近接報知装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、車両近接報知装置の基本動作のフローチャートである。
【
図4】
図4は、判定部による判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第3の音の周波数特性の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の音の第1周波数特性の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、調整部による調整処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の音の第2周波数特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
従来の車両近接報知装置は、警報音を発生するスピーカと、警報音に対応する信号を出力する音源と、音源から出力された信号を増幅してスピーカに出力するアンプとを備えている。
【0012】
特許文献1に記載されている車両用警報音源は、車外スピーカ及び車内スピーカと、車内の減音したい位置に設けたマイクと、適応型コントローラを備えている。車両用警報音源は、基準信号により増幅器を介して車外スピーカから警報音を発生する。このとき、適応型コントローラは、基準信号及びマイクの入力により車内空間伝達系の伝達特性に対する逆伝達特性を同定し、マイクの入力が最小になるように、増幅器を介して車内スピーカの出力音を制御している。
【0013】
また、特許文献2に記載されている車載用警報音装置は、警報音の指向特性を制御するための制御音を生成し、信号処理によって警報音の指向特性を所望の特性に変更している。
【0014】
ところで、所定の速度より速い走行速度では、所定の音圧以上のロードノイズが発生するため、警報音を発生させなくても車両が接近していることを歩行者等が知ることができる。このため、上記のような車両近接報知装置では、走行速度が所定の速度より速くなると、警報音をフェードアウトさせていた。
【0015】
しかしながら、警報音をフェードアウトさせると、車両の搭乗者に違和感を与える場合があった。具体的には、走行速度が所定の速度を超えた直後から警報音をフェードアウトさせると、車室内に回りこんでいる警報音の音圧が小さくなるため、搭乗者には、車室内で聞こえていた音の音圧が急に小さくなったように聞こえる。このため、搭乗者は、違和感を覚えることとなる。
【0016】
以下の実施の形態では、必要な音圧を確保しつつ、簡便に、搭乗者へ与える違和感を低減した警報音を出力することができる車両近接報知装置について説明する。
【0017】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置は、車両の車室外に配置されたスピーカに警報音を出力させることで前記車両の近接を報知する車両近接報知装置であって、前記車両の走行速度を取得し、取得された前記走行速度に応じて前記スピーカにより出力される前記警報音の音圧を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記スピーカにより出力されている前記警報音の前記車室内における第一音の音圧である第一音圧と、前記車両の走行によるロードノイズの前記車室内における第二音の音圧である第二音圧と、を推定し、推定された前記第一音圧および前記第二音圧を比較し、比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より大きい値に変化した場合、前記第二音圧が前記第一音圧以下である場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を小さくする。
【0018】
ここれによれば、ロードノイズの車室内における音圧が警報音の車室内における第一音圧よりも大きいため、警報音の音圧を小さくしても車室内で搭乗者に聞こえる音の音圧の変化を小さくすることができる。よって、搭乗者へ与える違和感を低減することができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記第二音の推定において、予め計測することにより得られた、前記車両の走行速度と、前記車室内の音である車室音との関係を示す第二関係情報を取得し、取得された前記第二関係情報において、現在取得された走行速度に対応付けられている車室音を特定し、特定された前記車室音から推定された前記第一音を減算することにより得られた音を前記第二音として推定してもよい。
【0020】
このため、車両の走行速度に基づいて、第二音を容易に推定することができる。
【0021】
また、前記第二関係情報は、前記走行速度が大きいほど、前記車室音の音圧が大きい関係を示す情報であってもよい。
【0022】
このため、車両の走行速度に基づいて、第二音を容易に推定することができる。
【0023】
また、前記制御部は、前記第二音の推定において、前記車室内に配置されたマイクにより取得された音である車室音から、推定された前記第一音を減算することにより得られた音を前記第二音として推定してもよい。
【0024】
このため、マイクにより取得された車室音から、第二音を容易に推定することができる。
【0025】
また、前記制御部は、前記第一音の推定において、前記スピーカから前記車室内への音の伝達特性を取得し、取得された前記伝達特性と、前記スピーカに現在出力している前記警報音とを用いて、前記第一音を推定してもよい。
【0026】
このため、音の伝達特性に基づいて、第一音を容易に推定することができる。
【0027】
また、前記制御部は、前記第一音の推定において、前記車両が停止中に予め計測することにより得られた、前記スピーカから出力された前記警報音の音圧と、前記車室内の音である車室音との関係を示す第一関係情報を取得し、取得された前記第一関係情報において、前記スピーカに現在出力している前記警報音の音圧に対応付けられている車室音を特定し、特定された前記車室音を前記第一音として推定してもよい。
【0028】
このため、第一関係情報に基づいて、第一音を容易に推定することができる。
【0029】
また、前記制御部は、比較の結果、前記第二音圧が前記第一音圧より所定の音圧だけ大きい第三音圧以下の値に変化した場合、前記第二音圧が前記第三音圧より大きい場合よりも、前記スピーカに出力させる前記警報音の音圧を大きくしてもよい。
【0030】
このため、車両の減速時にも搭乗者へ与える違和感を低減することができる。
【0031】
本開示の他の一態様に係る車両は、上記の車両近接報知装置と、前記スピーカと、を備える。
【0032】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0033】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0034】
(実施の形態)
実施の形態では、車両に搭載される車両近接報知装置について説明する。
【0035】
図1は、実施の形態に係る車両近接報知装置を備える車両の模式図である。
【0036】
車両40は、移動体装置の一例であって、車両近接報知装置10と、スピーカ30とを備える。車両40は、具体的には、自動車であるが、特に限定されない。
【0037】
スピーカ30は、車両近接報知装置10から出力された音声信号に応じて音を出力する。スピーカ30は、車両40の車室外、例えばエンジンルームなどに配置されている。よって、スピーカ30は、車両40の近接を報知する警報音を、車両40の外部に出力する。スピーカ30は、音声信号である電気信号を機械振動に変換する機能を有し、電気信号に基づいた音圧の警報音を出力する。
【0038】
なお、車両40が有する車室41は、車両40の乗員が入る空間である。つまり、車室41は、車両40の乗員が存在する空間である。
【0039】
[1.構成]
次に、車両近接報知装置10の構成について
図1に加えて
図2を参照しながら説明する。
図2は、車両近接報知装置10の機能ブロック図である。
【0040】
車両近接報知装置10は、スピーカ30に警報音を出力させることで車両40の近接を車両40の周囲の人に報知する装置である。
【0041】
車両近接報知装置10は、
図1および
図2に示すように、制御部11を備える。制御部11は、車両40の走行速度を取得し、取得された走行速度に応じてスピーカ30により出力される警報音の音圧を制御する。制御部11は、例えば、DSP等のプロセッサによって実現されるが、マイクロコンピュータまたは専用回路によって実現されてもよいし、プロセッサ、マイクロコンピュータ、及び専用回路のうちの2つ以上の組み合わせによって実現されてもよい。
【0042】
制御部11は、音源111と、第一推定部112と、取得部113と、第二推定部114と、比較部115と、警報音制御部116と、出力部117とを備える。以下、各構成要素について、引き続き
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0043】
音源111は、車両40の接近を外部に報知する1つの警報音に対応する信号(電気信号)を発生する音源である。警報音とは、例えば、エンジン音である。この場合、音源111は、疑似エンジン音または電子音を使用することが多く、例えば、300Hz~500Hzの低音部と1kHz~3kHzの周波数成分で構成されている。また、単純な正弦波信号音等であってもよい。音源111は、第一推定部112および警報音制御部116に接続されている。すなわち、音源111から出力された信号は、第一推定部112および警報音制御部116に出力される。音源111は、例えば、図示しないメモリ、ストレージなどの記憶装置によって実現される。
【0044】
第一推定部112は、スピーカ30により出力されている警報音の車室41内における第一音(
図3を参照)の音圧である第一音圧を推定する。第一推定部112は、具体的には、スピーカ30から車室41内への音の伝達特性を図示しないメモリから取得する。そして、第一推定部112は、取得された伝達特性と、スピーカ30に現在出力している警報音とを用いて、第一音を推定する。これにより、第一推定部112は、推定された第一音を用いて、第一音圧を推定する。このため、音の伝達特性に基づいて、第一音を容易に推定することができる。
【0045】
なお、第一音圧は、例えば、第一音の最大音圧であってもよいし、第一音の特定の周波数における音圧であってもよいし、第一音の周波数毎の音圧を平均した音圧であってもよい。
【0046】
なお、上記に限らずに、第一推定部112は、下記に示す方法で第一音を推定してもよい。具体的には、第一推定部112は、車両40が停止中に予め計測することにより得られた、スピーカ30から出力された警報音の音圧と、警報音による車室41内の音である車室音との関係を示す第一関係情報を図示しないメモリから取得する。第一関係情報は、警報音の音圧を0から大きく変化させたときに、変化された警報音の音圧毎に車室41内におけるマイクにより車室音を計測することで得られる、警報音の音圧と警報音による車室音とが対応付けられた情報である。第一推定部112は、取得された第一関係情報において、スピーカ30から現在出力している警報音の音圧に対応付けられている車室音を特定する。そして、第一推定部112は、特定された車室音を第一音として推定する。このため、第一関係情報に基づいて、第一音を容易に推定することができる。
【0047】
取得部113は、車両40の走行速度を取得する。取得部113は、例えば、車両40の走行速度を車両40の図示しないECU(Electronic Control Unit)から取得する。取得部113は、取得された走行速度を第二推定部114に出力する。
【0048】
第二推定部114は、車両40の走行により車両40から発生するロードノイズの車室41内における第二音の音圧である第二音圧を推定する。第二推定部114は、具体的には、予め計測することにより得られた、車両40の走行速度と、車室41内の音である車室音との関係を示す第二関係情報を図示しないメモリから取得する。第二関係情報は、車両40の走行速度を0から大きく変化させたときに、変化された走行速度毎に車室41内におけるマイクにより車室音を計測することで得られる、走行速度とロードノイズによる車室音とが対応付けられた情報である。第二関係情報は、走行速度が大きいほど、車室音の音圧が大きい関係を示す情報である。第二推定部114は、取得された第二関係情報において、現在取得部113において取得された走行速度に対応付けられている車室音を特定する。車室音は、
図3に示されるように、警報音の車室41内における第一音と、ロードノイズの車室41内における第二音とが合成された音である。そして、第二推定部114は、特定された車室音から、第一推定部112において推定された第一音を減算することにより得られた音を第二音として推定する。これにより、第二推定部114は、推定された第二音を用いて、第二音圧を推定する。このため、車両の走行速度に基づいて、第二音を容易に推定することができる。
【0049】
なお、第二音圧は、例えば、第二音の最大音圧であってもよいし、第二音の特定の周波数における音圧であってもよいし、第二音の周波数毎の音圧を平均した音圧であってもよい。
【0050】
なお、
図3は、第一音および車室音の周波数特性の一例を示す図である。
【0051】
比較部115は、第一推定部112において推定された第一音圧と、第二推定部114において推定された第二音圧とを比較し、比較の結果を警報音制御部116に出力する。
【0052】
警報音制御部116は、取得部113において取得された走行速度に応じて、走行速度が所定の速度未満の速度では、音源111から取得した音声信号を用いて所定の音圧の警報音を示す音声信号に調整し、調整された音声信号を出力部117に出力する。警報音制御部116の制御について
図4を用いて説明する。
【0053】
図4は、車両の走行速度に応じて変化する、第一音の第一音圧、および、第二音の第二音圧を示す図である。
【0054】
警報音制御部116は、
図4に示されるように、比較部115における比較の結果、第二音圧が第一音圧より大きい値に変化した場合、第二音圧が第一音圧以下である場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を小さくする音声信号を出力部117に出力する。これにより、警報音制御部116は、車両40が加速中において、第二音圧が第一音圧より大きい値に変化するほどロードノイズの音圧が大きくなった場合に、ロードノイズの音圧がそれほど大きくなかった場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を小さくする。この結果、警報音制御部116は、走行速度が所定の速度Vth以上の速度であっても、警報音をフェードアウトさせずに出力部117に出力させ続ける場合がある。
【0055】
また、警報音制御部116は、
図4に示されるように、比較部115における比較の結果、第二音圧が第一音圧より所定の音圧だけ大きい第三音圧以下の値に変化した場合、第二音圧が第三音圧より大きい場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を大きくする音声信号を出力部117に出力する。なお、所定の音圧は、例えば、警報音が出力されていない状態におけるロードノイズによる車室音の音圧である。これにより、警報音制御部116は、車両40が減速中において、第二音圧が第三音圧以下の値に変化するほどロードノイズの音圧が小さくなった場合に、ロードノイズの音圧が大きかった場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を大きくする。この結果、警報音制御部116は、走行速度が所定の速度Vth以上の速度であっても警報音を出力部117に出力させ始める、つまりフェードインさせる場合がある。
【0056】
出力部117は、警報音制御部116により出力された音声信号をスピーカ30に出力する。スピーカ30は、音声信号に基づく警報音を出力する。出力部117は、例えば、音声信号を所定の増幅度で増幅してスピーカ30に出力してもよい。出力部117は、例えば、増幅回路によって実現されていてもよい。
【0057】
[2.動作]
次に、車両近接報知装置10の基本動作について
図5を参照しながら説明する。
【0058】
図5は、車両近接報知装置の基本動作の一例を示すフローチャートである。
【0059】
車両近接報知装置10では、まず、取得部113が車両40の走行速度を取得する(S11)。
【0060】
次に、第一推定部112が、スピーカ30により出力されている警報音の車室41内における第一音の音圧である第一音圧を推定する(S12)。
【0061】
次に、第二推定部114が、車両40の走行により車両40から発生するロードノイズの車室41内における第二音の音圧である第二音圧を推定する(S13)。
【0062】
次に、比較部115は、第一推定部112において推定された第一音圧と、第二推定部114において推定された第二音圧とを比較する(S14)。
【0063】
次に、警報音制御部116は、比較部115における比較の結果を用いて、警報音を示す音声信号を調整し、調整後の音声信号を出力部117に出力する(S15)。なお、警報音を示す音声信号を調整する処理の詳細は
図6を用いて後述する。
【0064】
そして、出力部117は、警報音制御部116により出力された調整後の音声信号をスピーカ30に出力し(S16)、ステップS11に戻る。このように、車両近接報知装置10では、車両40が動作中において、ステップS11~S16の処理が繰り返し行われる。なお、車両40が動作中とは、例えば、イグニッションスイッチがオンである場合としてもよい。
【0065】
図6は、警報音制御部116における警報音を調整する調整処理の詳細の一例を示すフローチャートである。
【0066】
警報音制御部116は、車両40が加速中であるか否かを判定する(S21)。
【0067】
警報音制御部116は、車両40が加速中であると判定された場合(S21でYes)、比較部115における比較の結果を用いて第二音圧が第一音圧より大きいか否かを判定する(S22)。
【0068】
警報音制御部116は、第二音圧が第一音圧より大きいと判定された場合(S22でYes)、フェードアウトを開始し(S23)、第二音圧が第一音圧以下の場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を小さくする音声信号を生成し、生成された音声信号を出力部117に出力する。そして、警報音制御部116は、調整処理を終了する。
【0069】
警報音制御部116は、第二音圧が第一音圧以下であると判定された場合(S22でNo)、走行速度に応じた警報音を示す音声信号を生成し(S24)、生成された音声信号を出力部117に出力する。そして、警報音制御部116は、調整処理を終了する。
【0070】
警報音制御部116は、車両40が加速中でないと判定された場合(S21でNo)、車両40が減速中であるか否かを判定する(S25)。
【0071】
警報音制御部116は、車両40が減速中であると判定された場合(S25でYes)、第二音圧が第三音圧以下であるか否かを判定する(S26)。
【0072】
警報音制御部116は、第二音圧が第三音圧以下であると判定された場合(S26でYes)、フェードインを開始し(S27)、第二音圧が第三音圧より大きい場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を大きくする音声信号を生成し、生成された音声信号を出力部117に出力する。そして、警報音制御部116は、調整処理を終了する。
【0073】
警報音制御部116は、減速中でないと判定された場合(S25でNo)、または、第二音圧が第三音圧より大きいと判定された場合(S26でNo)、走行速度に応じた警報音を示す音声信号を生成し(S28)、生成された音声信号を出力部117に出力する。そして、警報音制御部116は、調整処理を終了する。
【0074】
[3.効果など]
本実施の形態に係る車両近接報知装置10によれば、ロードノイズの車室41内における音圧が警報音の車室41内における第一音圧よりも大きいため、警報音の音圧を小さくしても車室41内で搭乗者に聞こえる音の音圧の変化を小さくすることができる。よって、搭乗者へ与える違和感を低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る車両近接報知装置10において、警報音制御部116は、比較の結果、第二音圧が第一音圧より所定の音圧だけ大きい第三音圧以下の値に変化した場合、第二音圧が第三音圧より大きい場合よりも、スピーカ30に出力させる警報音の音圧を大きくする。このため、車両40の減速時にも搭乗者へ与える違和感を低減することができる。
【0076】
[4.変形例]
変形例1に係る車両近接報知装置10Aについて
図7および
図8を用いて説明する。
【0077】
図7は、変形例1に係る車両近接報知装置を備える車両の模式図である。
図8は、変形例1に係る車両近接報知装置の機能ブロック図である。
【0078】
図7に示すように、変形例1に係る車両40Aは、実施の形態に係る車両40の構成にさらに車室41に配置されるマイク20を備える点が異なる。また、
図8に示すように、変形例1に係る車両近接報知装置10Aの制御部11Aの第二推定部114Aは、マイク20により取得された車室音を用いて、第二音を推定する点が実施の形態の第二推定部114と異なる。以下では、実施の形態とは異なる点について説明する。
【0079】
マイク20は、車両40の車室41内に配置され、車室41内の音である車室音を取得する。マイク20は、取得した音に応じた音声信号を出力する。
【0080】
第二推定部114Aは、マイク20により取得された車室音を示す音声信号を用いて、当該音声信号により示される車室音から、第一推定部112において推定された第一音を減算することにより得られた音を第二音として推定する。
【0081】
このため、路面の状態や車両40のタイヤの状態などに応じて車両40からロードノイズが変化した場合であっても、変化したロードノイズによる車室音をマイク20により取得することができる。よって、より精度よく第二音を推定することができる。
【0082】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0083】
また、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0084】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0085】
例えば、本開示は、車両近接報知装置(コンピュータまたはDSP)が実行する車両近接報知方法として実現されてもよいし、上記車両近接報知方法をコンピュータまたはDSPに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、上記実施の形態において説明された車両近接報知装置の動作における複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。
【0087】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車等に搭載される車両近接報知装置に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
10、10A 車両近接報知装置
11、11A 制御部
20 マイク
30 スピーカ
40、40A 車両
41 車室
111 音源
112 第一推定部
113 取得部
114、114A 第二推定部
115 比較部
116 警報音制御部
117 出力部