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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20221216BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20221216BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221216BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221216BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221216BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20221216BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221216BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221216BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/658
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/617
H01M50/204 401H
H01M50/209
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019567001
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2019000821
(87)【国際公開番号】W WO2019146438
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018010433
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
(72)【発明者】
【氏名】本川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】村山 智文
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-055908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0159340(US,A1)
【文献】特開2009-176464(JP,A)
【文献】特開2002-110122(JP,A)
【文献】特開2013-161559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0157089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パックケース内で、第1方向に隣り合って配置された第1電池モジュール及び第2電池モジュールを備え、
前記第1電池モジュール及び前記第2電池モジュールのそれぞれは、前記第1方向と直交する第2方向に複数の電池セルが並んで配置された電池パックであって、
前記第1電池モジュールの前記第2方向に隣り合う前記電池セルの間には、前記第2方向に分かれて第1伝熱部及び第1断熱部材が配置され、
前記第2電池モジュールの前記第2方向に隣り合う前記電池セルの間には、前記第2方向に分かれて第2伝熱部及び第2断熱部材が配置され、
前記第1伝熱部は、前記第1電池モジュールと前記第2電池モジュールとに掛け渡して接続された伝熱部材の一部に形成され、前記第1電池モジュールの前記電池セルに伝熱可能に接続され、
前記第2伝熱部は、前記伝熱部材の他の部分に形成され、前記第2電池モジュールの前記電池セルに伝熱可能に接続され、
前記第1電池モジュールにおいて前記第1伝熱部が伝熱可能に接続される前記電池セルと、前記第2電池モジュールにおいて前記第2伝熱部が伝熱可能に接続される前記電池セルとは、前記第2方向において異なる位置に配置される、
電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記伝熱部材は、前記第1断熱部材及び前記第2断熱部材のそれぞれより熱伝導率が高い、
電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電池モジュールを含む電池パックが知られている。このとき、複数の電池モジュールは、互いに独立してそれぞれで一体化されている。例えば、特許文献1には、複数の角形電池である単電池(電池セル)を、スペーサを介して並んで配置し、複数の単電池の幅方向両側に長尺なブリッジバーを配置した構成が記載されている。この構成では、電池モジュールにおいて、複数の単電池の配列方向両端に配置した2つのエンドプレートにブリッジバーの両端部を固定している。また、電池モジュールにおいて高さ方向両端に配置した接続プレートの両端部をエンドプレートに固定している。複数の電池モジュールは、高さ方向に並んで配置し、電池モジュール間に配置した中間ブラケットの両端部を、それぞれの電池モジュールのエンドプレートに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5960289号公報
【発明の概要】
【0004】
複数の単電池である電池セルが電気的に接続された電池モジュールを含む電池パックにおいて、電池パック内の一部の電池セルが万が一の異常により異常発熱した場合に、周辺の電池セルに熱的影響が伝播するおそれがある。このために、各電池モジュールにおいて、隣り合う電池セルの間に熱伝導率の低い断熱部材をセパレータとして設置することで、異常発熱した電池セルの熱を他の電池セルに伝達しにくくする対策が考えられる。しかしながら、この対策では、異常発熱した電池セルの熱を同じ電池モジュールの隣り合う電池セル以外に伝える熱経路が存在しないので、隣り合う電池セルに熱的影響が伝達されないようにするためには、かなりの量の断熱材が必要になる。これにより、電池モジュール及び電池パックのそれぞれにおいて、全体の体積を一定とした場合にエネルギ密度が低下する原因となる。
【0005】
また、各電池セルの表面の大部分が断熱材に覆われる可能性があるので、通常の使用時の充放電による電池セル自身の発熱を外部に放出しにくい。これにより、電池セルの温度が高温になり、電池セルの電気特性を損なうおそれがある。さらに、複数の電池セルの間が断熱されているので、電池セル間での温度ばらつきが大きくなり、電池特性に差異を発生させる原因となる。
【0006】
本開示の一態様である電池パックは、パックケース内で、第1方向に隣り合って配置された第1電池モジュール及び第2電池モジュールを備え、第1電池モジュール及び第2電池モジュールのそれぞれは、第1方向と直交する第2方向に複数の電池セルが並んで配置された電池パックであって、第1電池モジュールの第2方向に隣り合う電池セルの間には第2方向に分かれて第1伝熱部及び第1断熱部材が配置され、第2電池モジュールの第2方向に隣り合う電池セルの間には、第2方向に分かれて第2伝熱部及び第2断熱部材が配置され、第1伝熱部は、第1電池モジュールと第2電池モジュールとに掛け渡して接続された伝熱部材の一部に形成され、第1電池モジュールの電池セルに伝熱可能に接続され、第2伝熱部は、伝熱部材の他の部分に形成され、第2電池モジュールの電池セルに伝熱可能に接続される、電池パックである。
【0007】
本開示に係る電池パックによれば、一部の電池セルが異常発熱した場合にその熱影響の伝播を抑制でき、かつ、エネルギ密度を向上でき、かつ、通常使用時の電池セル間の温度ばらつきを抑制できる。これとともに、通常使用時に電池セルが過度に高温になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の1例の電池パックにおいて、一部を取り除いて示す分解斜視図である。
図2図1のA-A断面を拡大して示す斜視図である。
図3図2から一部を取り除いて、図2の矢印B方向に見た模式図である。
図4】比較例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。
図5】実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。
図6】実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。
図7】実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の1例である電池パックについて詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において「略~」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「端部」の用語は対象物の端及びその近傍を意味するものとする。また、以下で説明する形状、材料、個数などは説明のための例示であって、電池パックの仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0010】
図1は、電池パック10において、一部を取り除いて示す分解斜視図である。図2は、図1のA-A断面を拡大して示す斜視図である。図3は、図2から一部を取り除いて、図2の矢印B方向に見た模式図である。電池パック10には、複数の電池モジュールである2組の第1電池モジュール12a、第2電池モジュール12b及び第3電池モジュール12cが、2組が縦方向Yに分かれて配置される。また、各組の電池モジュール12a、12b、12cは、第1方向である横方向Xに、第1電池モジュール12a、第2電池モジュール12b及び第3電池モジュール12cに並んで配置される。第1電池モジュール12a及び第2電池モジュール12bは、横方向Xに隣り合って配置され、第2電池モジュール12b及び第3電池モジュール12cも、横方向Xに隣り合って配置される。縦方向Yは、横方向Xに直交する第2方向である。
【0011】
図1では、1例として、横方向Xに3つの電池モジュールが隣り合い、縦方向Yに2つの電池モジュールが隣り合う場合を示している。図1図3及び後述する図4図6では、横方向をXで示し、縦方向をYで示し、X及びYに直交する高さ方向をZで示している。
【0012】
電池パック10は、パックケース20と、2組の第1、第2及び第3電池モジュール12a、12b、12cと、複数のサイドバインドバー40とを含んで構成される。パックケース20は、ケース本体21と、蓋部24とを有する。ケース本体21は、矩形状の底板部22の周縁部から全周にわたって外周壁部23が立設される。ケース本体21は上端が開口する。なお、以下では、ケース本体21の開口側を上、ケース本体21の底板部22側を下として説明する。上、下は、説明の便宜上用いる用語である。
【0013】
蓋部24は、矩形の平板状である。蓋部24がケース本体21の上端に、上端開口を塞ぐようにボルト等により結合されることにより、パックケース20が構成される。
【0014】
ケース本体21の底板部22の上面において、縦方向Y中央部には、横方向Xに伸びる仕切り板21aが固定される。
【0015】
図1に示すように、2組の第1電池モジュール12a、第2電池モジュール12b、及び第3電池モジュール12cは、ケース本体21内で、仕切り板21aにより仕切られた2つの空間に2組に分かれて配置される。以下、ケース本体21の仕切り板21aで仕切られた一方(図1の右斜め下側)の空間に配置された第1電池モジュール12a、第2電池モジュール12b、及び第3電池モジュール12cについて説明する。
【0016】
図2に示すように、各電池モジュール12a、12b、12cは、複数の単電池である電池セル13が、後述の伝熱部材と断熱部材とを介して縦方向Yに並んで配置されて構成される。また、図3に示すように、隣り合う電池モジュール12a、12b、12cに伝熱部材30が掛け渡されて接続される。具体的には、第1電池モジュール12aの縦方向Yに隣り合う電池セル13の間には、縦方向Yに分かれて伝熱部材30の第1伝熱部30aと第1断熱部材35とが配置される。第1伝熱部30aは、電池セル13間の縦方向Yの一方側(図3の上側)に配置され、第1断熱部材35は、電池セル13間の縦方向Yの他方側(図3の下側)に配置される。図3では、第1断熱部材35及び後述の第2、第3断熱部材36,37を砂地部分で示している。
【0017】
伝熱部材30は、鉄またはアルミウム合金等の、金属材料等の熱伝導率が高い材料により形成された長尺な板状部材である。伝熱部材30は、隣り合う電池モジュール12a、12b、12c間で縦方向Yに対し傾斜するように曲がっている。伝熱部材30の熱伝導率は、例えば45W/K・m(25℃)以上である。第1伝熱部30aは、伝熱部材30の長手方向一端部(図3の左端部)により形成される平板状部分である。これにより、第1伝熱部30aは、伝熱部材30の一部に形成され、第1電池モジュール12aの電池セル13の縦方向Y側面に接触する等により伝熱可能に接続される。
【0018】
第1断熱部材35は、ゴム、樹脂またはマイカ等の熱伝導率が低い材料により形成された平板状の部材である。第1断熱部材35の熱伝導率は、伝熱部材30の熱伝導率より低く、かつ、パックケース20の熱伝導率より低い。例えば、第1断熱部材35の熱伝導率は、0.8W/K・m(25℃)未満である。
【0019】
第2電池モジュール12bの縦方向Yに隣り合う電池セル13の間には、縦方向Yに分かれて伝熱部材30の第2伝熱部30bと第2断熱部材36とが配置される。第2伝熱部30bは、電池セル13間の縦方向Yの他方側(図3の下側)に配置され、第2断熱部材36は、電池セル13間の縦方向Yの一方側(図3の上側)に配置される。
【0020】
第2伝熱部30bは、伝熱部材30の長手方向中間部により形成される平板状部分である。これにより、第2伝熱部30bは、伝熱部材30の第1伝熱部30aとは異なる他の部分に形成され、第2電池モジュール12bの電池セル13の縦方向Y側面に接触する等により伝熱可能に接続される。第2断熱部材36は、ゴム、樹脂またはマイカ等の熱伝導率が低い材料により形成された平板状の部材である。第2断熱部材36の熱伝導率は、伝熱部材30の熱伝導率より低く、かつ、パックケース20の熱伝導率より低い。例えば、第2断熱部材36の熱伝導率は、0.8W/K・m(25℃)未満である。
【0021】
第3電池モジュール12cの縦方向Yに隣り合う電池セル13の間には、縦方向Yに分かれて伝熱部材30の第3伝熱部30cと第3断熱部材37とが配置される。第3伝熱部30cは、電池セル13間の縦方向Yの一方側(図3の上側)に配置され、第3断熱部材37は、電池セル13間の縦方向Yの他方側(図3の下側)に配置される。
【0022】
第3伝熱部30cは、伝熱部材30の長手方向他端部(図3の右端部)により形成される平板状部分である。これにより、第3伝熱部30cは、伝熱部材30の第1伝熱部30a及び第2伝熱部30bとは異なる他の部分に形成され、第3電池モジュール12cの電池セル13の縦方向Y側面に接触する等により伝熱可能に接続される。
【0023】
さらに、第1電池モジュール12aにおいて伝熱部材30の第1伝熱部30aが伝熱可能に接続される電池セル13と、第2電池モジュール12bにおいて第2伝熱部30bが伝熱可能に接続される電池セル13とは、縦方向Yにおいて異なる位置に配置される。また、第3電池モジュール12cにおいて第3伝熱部30cが伝熱可能に接続される電池セル13と、第2電池モジュール12bにおいて第2伝熱部30bが伝熱可能に接続される電池セル13とは、縦方向Yにおいて異なる位置に配置される。
【0024】
第3断熱部材37は、ゴム、樹脂またはマイカ等の熱伝導率が低い材料により形成された平板状の部材である。第3断熱部材37の熱伝導率は、伝熱部材30の熱伝導率より低く、かつ、パックケース20の熱伝導率より低い。例えば、第3断熱部材37の熱伝導率は、0.8W/K・m(25℃)未満である。なお、第1断熱部材35、第2断熱部材36及び第3断熱部材37は、互いに同じ材料により形成した同じ熱伝導率を有するものとしてもよい。
【0025】
本実施形態において、伝熱部材30の第1伝熱部30a、第2伝熱部30b及び第3伝熱部30cは、各伝熱部間を含めて長尺な一体の板状部材により形成される。一方、本開示の構成は、これに限定されず、第1伝熱部30a、第2伝熱部30b及び第3伝熱部30cをそれぞれ別体の板状部材により形成してもよい。このとき、第1伝熱部30a、第2伝熱部30b及び第3伝熱部30cを、各断熱部材35、36,37より熱伝導率の高い部材により構成される各伝熱部間とは別体の接続部材により接続して第1伝熱部30a、第2伝熱部30b及び第3伝熱部30cを一体的に構成してもよい。
【0026】
また、伝熱部材として、グラファイトシートを用いることもできる。グラファイトシートは、ポリイミド等の高分子フィルムを高温加熱することでグラファイト化処理して結晶化させたものである。このグラファイトシートは、厚みが小さく、柔軟性が高くなり、かつ、熱伝導率を非常に高くできる。さらに、各電池モジュールにおいて、伝熱部材と電池セルとの間には絶縁シート、絶縁フィルム等の絶縁部材が配置されてもよい。また、伝熱部材のうち、少なくとも電池セルと接触する面に絶縁フィルムを貼り付けてもよい。
【0027】
また、第1断熱部材35、第2断熱部材36及び第3断熱部材37は、不織布等からなる繊維シートの繊維間に、シリカキセロゲル等の多孔質材が担持された構造を有する断熱シートを用いても良い。この断熱シートの熱伝導率は、約0.018~0.024W/m・Kと一般的なゴムや樹脂の熱伝導率より低いため、異常発熱した電池セルから積層方向に隣接する電池セルへの熱伝播を抑制するのに好適である。
【0028】
電池セル13は、充放電可能な角形の二次電池である。二次電池として、例えばリチウムイオン電池が用いられる。二次電池は、これ以外に、ニッケル水素電池等が用いられてもよい。図2に示すように、電池セル13は、直方体形状のセルケース14と、セルケース14の内側に電解質とともに収容された電極体(図示せず)とを含む。セルケース14は、上端が開口する角形のセルケース本体15の開口を封口板16により塞いで構成される。電極体は、正極板と負極板とがセパレータを介して交互に積層される。封口板16の長手方向両端部には正極端子17と負極端子18とが突出する。正極端子17は正極板に接続され、負極端子18は負極板に接続される。
【0029】
電池モジュール12は、上記のように複数の電池セル13が伝熱部材30及び断熱部材を介して縦方向Yに並んで配置される。このとき、隣り合う電池セル13では、正極端子17と負極端子18との封口板16における長手方向の位置が逆になる。そして、隣り合う電池セル13において縦方向Yに隣り合う正極端子と負極端子とがバスバー(図示せず)で接続されることにより、複数の電池セル13が電気的に直列に接続される。
【0030】
なお、複数の電池セル13において、正極端子を封口板16における長手方向で同じ一方側に配置し、負極端子を封口板16における長手方向で同じ他方側に配置してもよい。このとき、縦方向Yに並んだ複数の正極端子及び複数の負極端子のそれぞれを異なるバスバーで接続することにより、複数の電池セルを電気的に並列に接続してもよい。また、複数の電池セルの一部を電気的に並列接続することにより電池セル群を形成し、複数の電池セル群を電気的に直列に接続してもよい。
【0031】
パックケース20の底板部22は、電池モジュール12a、12b、12cを冷却する冷却プレートの機能も備える。例えば、底板部22の複数位置に冷媒としての空気または水を流す冷媒通路22aが形成される。冷媒通路22aは、電池パック10の外部の冷媒流路(図示せず)に接続される。図1では、底板部22に設ける冷媒通路の図を省略している。なお、底板部の冷媒通路を省略して、底板部を放熱性がよい形状、材料等により形成してもよい。
【0032】
また、図2に示すように、複数のサイドバインドバー40は、上記のように配置した隣り合う電池モジュール12a、12b、12cの間に上側から押し込んで固定する。サイドバインドバー40は、挿入部41と、2つのフランジ44とを含み、縦方向Yに長い長尺状に形成される。挿入部41は、互いに平行な2つの開口側壁部42と、2つの開口側壁部42の一端どうしを連結する開口側連結部43とを有する。各開口側壁部42及び開口側連結部43は、それぞれ平板状である。2つのフランジ44は、2つの開口側壁部42の他端である上端から幅方向外側に伸びている。サイドバインドバー40は、例えば金属または樹脂により形成される。例えばサイドバインドバー40を、鉄、鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属により構成する場合、各サイドバインドバー40は、例えば絶縁シートを介在したり、電池セルに相対する表面を絶縁被膜で覆ったサイドバインドバー40を使用して各サイドバインドバー40と電池モジュール12a、12b、12cとを電気的に絶縁して設置される。
【0033】
各サイドバインドバー40と、電池セル13との間には、絶縁性を有する板状またはフィルム状の部材が配置されてもよい。
【0034】
図1に戻って、ケース本体21内には、2組の第1、第2及び第3電池モジュール12a、12b、12c、及びサイドバインドバー40が収容される。そしてこの状態で、仕切り板21aで分けられた2つの空間の上側に対応する第1、第2及び第3電池モジュール12a、12b、12c、の上側には、柔軟性のある回路基板51が上側絶縁紙(図示せず)を介して配置される。回路基板51には、CPU、メモリ等が搭載される。回路基板51は、対応する各電池セル13の正極端子17(図2)に接続されることにより、各電池セル13の電圧を監視する。また、回路基板51に温度計測部を接続し、その温度計測部を、正極または負極の端子、またはこの端子に接続したバスバーに接触させることにより、電池セル13の温度を検出可能としてもよい。蓋部24は、回路基板51を上から覆うようにケース本体21に結合される。回路基板は、パックケース20の外側に配置されてもよい。
【0035】
上記の電池パック10によれば、各電池モジュール12a、12b、12cにおいて、縦方向Yに隣り合う電池セル13の間に断熱部材35,36,37が配置されるので、一部の電池セル13が異常発熱した場合にその熱影響の伝播を抑制できる。
【0036】
さらに、隣り合う電池モジュール12a、12b、12cで、2つの電池セル13に伝熱可能に接続した伝熱部材30により、電池セル13の異常発熱時の熱影響を複数の電池セル13で分担できる。これにより、一部の電池セル13が集中的に温度上昇することを抑制できる。さらに、異常発熱した電池セル13から隣り合う電池モジュールの他の電池セル13に移動した熱をさらに周辺の電池セル及び部材に拡散しやすくなるので、放熱できる範囲が大きくなるため、電池セルの熱的影響を抑制できる。また、断熱部材35,36,37の必要量を少なくできるので、電池パック10におけるエネルギ密度を向上できる。さらに、通常使用時においても隣り合う電池モジュールの電池セル13の間での熱移動及び電池モジュールの周辺の部材への放熱が生じやすくなる。これにより、電池セル13が過度に高温になることを防止でき、かつ、電池セル13間の温度ばらつき、特に横方向Xにおける温度ばらつきを抑制できる。
【0037】
さらに、第1電池モジュール12aにおいて第1伝熱部30aが伝熱可能に接続される電池セル13と、第2電池モジュール12bにおいて第2伝熱部30bが伝熱可能に接続される電池セル13とは、縦方向Yにおいて異なる位置に配置される。これにより、電池パック10において通常使用時の電池セル13間の横方向X及び縦方向Yの両方における温度ばらつきを抑制できる。
【0038】
図4は、比較例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。比較例の場合、第1、第2、及び第3電池モジュール12a、12b、12cのそれぞれで、隣り合う電池セル13の間には断熱部材38が配置されるが、その間には隣り合う電池モジュールに接続される伝熱部材は配置されない。これにより、第1、第2、及び第3電池モジュール12a、12b、12cの電池セル13が熱的に接続されない。このため、一部の電池セル13が異常発熱した場合にその熱影響の伝播を抑制するための断熱部材38の必要量が多くなる。したがって、電池パックのエネルギ密度が低下する。また、通常使用時の電池セル13間の温度ばらつきが大きくなる。図1図3の実施形態によれば、このような不都合を防止できる。
【0039】
図5は、実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。本例の電池パックでは、図1図3に示した構成に対して、パックケース20(図1参照)内の仕切り板21a(図1参照)で仕切られた2つの空間のそれぞれには、第1及び第2電池モジュール12a、12bが配置されるが、第3電池モジュールは配置されない。
【0040】
このような図5に示す構成では、図1図3の構成に比べて、異常発熱した電池セル13から放熱できる範囲は小さくなるが、第1及び第2電池モジュール12a、12bの電池セル13が伝熱部材30により伝熱可能に接続される。これにより、一部の電池セル13が異常発熱した場合にその熱影響の伝播を抑制でき、かつ、電池パックのエネルギ密度を向上でき、かつ、通常使用時の電池セル13間の温度ばらつきを抑制できる効果を得られる。その他の構成及び作用は、図1図3の構成と同様である。
【0041】
図6は、実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。本例の電池パックでは、図5に示した構成に対して、伝熱部材31が平板状であり、第1及び第2電池モジュール12a、12bの縦方向Yで同じ位置の電池セル13に伝熱可能に接続される。具体的には、伝熱部材31の一方側部分の第1伝熱部31a、及び他方側部分の第2伝熱部31bが、それぞれ第1電池モジュール12aの電池セル13の一方面(図6の下側面)及び第2電池モジュール12bの電池セル13の一方面に伝熱可能に接続される。
【0042】
このような図6に示す構成では、第1及び第2電池モジュール12a、12bの電池セル13が伝熱部材31により伝熱可能に接続される。一方、図6の構成では、図5の構成に比べて、通常使用時の電池セル13間の横方向X及び縦方向Yの両方における温度ばらつきを抑制できる効果は低くなる。その他の構成及び作用は、図1図3の構成、または図5の構成と同様である。
【0043】
図7は、実施形態の別例の電池パックにおいて、図3に対応する図である。本例の電池パックでは、図1図3に示した構成に対して、第1、第2、及び第3電池モジュール12a、12b、12cの横方向Xにおける両側にさらに第4及び第5電池モジュール(図示せず)を備えている。そして、各電池モジュール12a、12b、12cで隣り合う電池セル13の間には、2つの伝熱部材52と、2つの伝熱部材52で挟まれた第1断熱部材35、第2断熱部材36または第3断熱部材37とが配置される。
【0044】
伝熱部材52は、横方向Xに隣り合う2つの電池モジュール12a、12b、12cの電池セル13のみに伝熱可能に接続される。具体的には、伝熱部材52の一方側部分(図7の左側部分)の伝熱部が、隣り合う電池モジュールのうち、一方側(図7の左側)の電池モジュールの電池セル13の縦方向Y一方面(図7の下側面)に伝熱可能に接続される。さらに、伝熱部材52の他方側部分(図7の右側部分)の伝熱部が、隣り合う電池モジュールのうち、他方側(図7の右側)の電池モジュールの縦方向Y一方側に異なる位置の電池セル13の縦方向Y他方面(図7の上側面)に伝熱可能に接続される。例えば、第1及び第2電池モジュール12a、12bにおいて、伝熱部材52の一方側部分(図7の左側部分)の第1伝熱部52aが、第1電池モジュール12aの電池セル13の縦方向Y一方面(図7の下側面)に伝熱可能に接続される。さらに伝熱部材52の他方側部分(図7の右側部分)の第2伝熱部52bが、第2電池モジュール12bの縦方向Y一方側(図7の下側)に異なる位置の電池セル13の縦方向Y他方面(図7の上側面)に伝熱可能に接続される。
【0045】
また、第4及び第5電池モジュールのそれぞれでは、隣り合う電池セル(図示せず)の間に1つの伝熱部材52の一部と断熱部材(図示せず)とが配置され、断熱部材の一方側(図7の上側)または他方側(図7の下側)のみに伝熱部材52が配置される。
【0046】
上記の構成によれば、第1~第5電池モジュール12a、12b、12cの電池セル13が縦方向Yにおけるより広い範囲で熱的に接続される。これにより、電池パックにおいて通常使用時の電池セル13間の縦方向Yにおける温度ばらつきをさらに抑制できる。その他の構成及び作用は、図1図3の構成と同様である。
【0047】
なお、上記の各実施形態では、電池セルが角形電池である場合を説明したが、本開示の構成はこれに限定するものではなく、電池セルは、円筒形電池やパウチ型電池等の角形電池以外としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 電池パック
12a 第1電池モジュール
12b 第2電池モジュール
12c 第3電池モジュール
13 電池セル
14 セルケース
15 セルケース本体
16 封口板
17 正極端子
18 負極端子
20 パックケース
21 ケース本体
21a 仕切り板
22 底板部
22a 冷媒通路
23 外周壁部
24 蓋部
30 伝熱部材
30a 第1伝熱部
30b 第2伝熱部
30c 第3伝熱部
31 伝熱部材
31a 第1伝熱部
31b 第2伝熱部
35 第1断熱部材
36 第2断熱部材
37 第3断熱部材
38 断熱部材
40 サイドバインドバー
41 挿入部
42 開口側壁部
43 開口側連結部
44 フランジ
51 回路基板
52 伝熱部材
52a 第1伝熱部
52b 第2伝熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7