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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】シクロペンテノン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/60 20060101AFI20221216BHJP
   C07C 49/707 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C07C45/60
C07C49/707
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020500473
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004796
(87)【国際公開番号】W WO2019159871
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2018022867
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社コンポン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(72)【発明者】
【氏名】小関 良卓
(72)【発明者】
【氏名】笠井 均
(72)【発明者】
【氏名】神島 尭明
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073987(JP,A)
【文献】ELLIOTT, J.D. et al.,Studies related to Cyclopentanoid Natural Products. Part 1. Preparation of (4RS)- and (4R)-4-Hydroxy-2-hydroxymethylcyclopent-2-en-1-one; a Versatile Synthetic Intermediate,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry,1981年,Vol.6,pp.1782-1789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/00
C07C 49/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)で表される化合物を出発原料とする、式(I)で表される化合物の製造方法。
【化1】
【請求項2】
式(II)で表される化合物の水溶液を蒸発させずに加圧状態で100~250℃で加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(III)で表される化合物を出発原料とする、式(I)で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
式(III)で表される化合物の水溶液を蒸発させずに加圧状態で100~250℃で加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(II)で表される化合物の濃度が0.1~1.0Mの範囲にある、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
式(II)で表される化合物の水溶液のpHが4~9の範囲にある、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
式(III)で表される化合物の濃度が0.1~1.0Mの範囲にある、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
式(III)で表される化合物の水溶液のpHが4~9の範囲にある、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)で表される4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンはプロスタグランジン、ペンテノマイシン(pentenomycin)、ベルチマイシン(vertimycin)等の医薬品原料となる有望な合成ブロックであるとされ、その製造方法についてはすでに文献に報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
【0004】
非特許文献1では、原料としてクロロアセトアルデヒドとアセト酢酸エチルを用いた式(I)の(4RS)体の製造方法と、原料としてキナ酸を用いた式(I)の(4R)体の製造方法が示されている。クロロアセトアルデヒドとアセト酢酸エチルを用いる製造方法では、クロロアセトアルデヒドとアセト酢酸エチルが反応し、フラン誘導体(2-メチル-3-フランカルボン酸エチル、収率:66%)が生成する。このフラン誘導体は水素化リチウムアルミニウムで還元されて3-ヒドロキシメチル-2-メチルフランとなり、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後(3-ヒドロキシメチル-2-メチルフランの収率:52%)に、メタノール-エーテル溶液(臭素を含む)中での反応とトリエチルアミンの添加によってジヒドロフラン誘導体(2,5-ジヒドロ-3-ヒドロキシメチル-2,5-ジメトキシ-2-メチルフラン、収率:80%)に変換される。このジヒドロフラン誘導体がリン酸緩衡液でpH調整されたジオキサン水溶液(ヒドロキノンを含む)でフラン環の開環反応と分子内アルドール反応を引き起こし、上記式(I)に示されるシクロペンテノン誘導体(溶媒抽出及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製後の収率:50%)を生成する。5段階の反応ステップを経たシクロペンテノン誘導体の全収率は約14%に留まる。
【0005】
2-デオキシ-アルドヘキソースを出発原料とし、その水溶液を蒸発させずに加熱する工程(150℃~300℃の範囲内)における化学的変換反応により4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンを得ることができたことが報告されている(特許文献1)。しかしながら、原料である2-デオキシグルコースをはじめとする2-デオキシ-アルドヘキソースの価格は非常に高価であり、2-デオキシ-アルドヘキソースから4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンに変換する収率の向上、目的生成物である4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンの精製のし易さ等の課題が存在するため、高経済的な工業生産に改良する余地がある。
【0006】
2-デオキシ-アルドヘキソースに代わる、安価なアルドヘキソースもしくはその誘導体から式(I)に示すシクロペンテノン誘導体が直接的に製造されることが工業的に望まれるが、これまで提案された製造方法はほぼ皆無である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5776984
【非特許文献】
【0008】
【文献】J.D.Elliottら, J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 1782 (1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来技術における1以上の課題または問題を解決することができる、目的生成物である上記式(I)の化合物の工業的に好ましい製造方法が望まれていた。従って、本発明の目的は、工業的に好ましく、経済的であり、目的生成物の安価な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような状況に鑑み、本発明者が上記式(I)の化合物の製造方法について鋭意研究した。その結果、上記式(I)の化合物の以下の製造方法を提供することにより、前記課題が解決可能であることが見出された。本発明者はこの知見に基づき本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
式(II)で表される化合物を出発原料とする、式(I)で表される化合物の製造方法。
[2]
式(II)で表される化合物の水溶液を蒸発させずに加圧状態で100~250℃で加熱する工程を含むことを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3]
式(III)で表される化合物を出発原料とする、式(I)で表される化合物の製造方法。
[4]
式(III)で表される化合物の水溶液を蒸発させずに加圧状態で100~250℃で加熱する工程を含むことを特徴とする、[3]に記載の製造方法。
[5]
式(II)で表される化合物の濃度が0.1~1.0Mの範囲にある、[2]に記載の製造方法。
[6]
式(II)で表される化合物の水溶液のpHが4~9の範囲にある、[2]に記載の製造方法。
[7]
式(III)で表される化合物の濃度が0.1~1.0Mの範囲にある、[4]に記載の製造方法。
[8]
式(III)で表される化合物の水溶液のpHが4~9の範囲にある、[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、目的生成物である上記式(I)の化合物の新規で工業的に適用できる製造方法が提供される。本発明によれば、上記した従来技術における1以上の課題または問題を解決することができる、目的生成物である上記式(I)の化合物の、工業的に好ましい製造方法が提供される。本発明によれば、より安価かつバイオマス資源でもあるD-グルコース(数百円/kg程度)を用いて4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンを製造することはプロスタグランジン類のような生物活性化合物の安価な製造につながる。本発明は安価かつ安定に供給可能なD-グルコースを原料とした4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オンの簡便な製造技術に関するものである。この化合物はプロスタグランジン類の前駆体となる化合物であり、安価かつ迅速な供給を実現する。従って、本発明の方法は、工業的に好ましく、経済的であり、高い工業的な利用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
以下、本発明に係る式(I)で表されるシクロペンテノン誘導体の製造方法について説明する。
【0015】
(出発原料)
出発原料であるアルドヘキソースとして、例えば、D-グルコース、L-グルコース、D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-グロース、L-グロース、D-アロース及びL-アロース等が挙げられる。
【0016】
出発原料であるアルドヘキソースは、ピラノース環構造または、フラノース環構造の環状異性体構造をとってもよい。また、その時、それぞれα型、β型のどちらのアノマー異性体構造であってもよいし、それらの混合物であってもよい。
【0017】
出発原料である式(II)の化合物(トリ-O-アセチル-D-グルカール)は、それ自体市販品であり、また公知技術(例えば、Synthesis 48, 1069, 2016)に従って、グルコースから1工程で容易に得ることができる。
出発原料である式(III)の化合物(D-グルカール)は、それ自体市販品であり、公知技術(例えば、Organic Letters 13, 4394, 2011)に従って、容易に得ることができる。
【0018】
式(II)の化合物又は式(III)の化合物を式(I)で表されるシクロペンテノン誘導体へ変換する方法について説明する。
【0019】
(反応溶媒)
反応溶媒として使用する水としては、水道水、イオン交換水等の純水、超純水等が挙げられるが、生成物の収率を向上させるためには、不純物の少ないイオン交換水等の純水、超純水を使用することが好ましく、空気中に含まれる酸素による酸化反応を防止するためにイオン交換水、超純水を脱気した状態で使用することがより好ましい。水のpHは4~8の弱酸性~中性付近の範囲であることが好ましい。強酸性条件あるいはアルカリ性条件下では、副反応がより進行し、目的とする式(I)の化合物の収率が低下する場合がある。水道水を高温で使用する場合は水道水に含まれる微量の化合物(炭酸カルシウムやシリカゲル等)が反応装置内にスケール等を発生させることがあるので、装置の点検が必要となる。
【0020】
(溶媒の使用量)
本発明の反応に使用される溶媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。収率及び経済効率等の観点から、式(II)、式(III)の化合物それぞれ1モルに対して、10~100L(リットル)、好ましくは20~50Lの範囲を例示することができるが、溶媒の使用量は当業者により適切に調整されることができる。
【0021】
本明細書において加圧状態とは、具体的に水の温度に対する飽和蒸気圧以上の圧力の範囲であることをいう。密閉された回分式反応装置に反応溶液を仕込み加熱温度に設定するだけで達成されるので、反応器の耐圧性、安全性から飽和蒸気圧に近い加圧状態が好ましい。
【0022】
(反応温度)
反応が進行する限りは、本発明の反応温度は特に制限されない。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、100℃~250℃、好ましくは120℃~160℃、より好ましくは130℃~150℃の範囲を例示することができる。しかしながら、本発明の反応温度は当業者により適切に調整することができる。
【0023】
(反応時間)
本発明の反応時間は、特に制限されない。本発明の反応時間は当業者により、反応温度それぞれに対して最適な反応時間を設定することで、式(I)で表されるシクロペンテノン誘導体を高収率で得ることができる。
【0024】
本発明では、反応温度等の反応条件を適切に選択すれば、高収率、高選択率で式(I)の化合物を得ることができるため、反応生成物を含む水溶液をそのままクルード(Crude)状の水溶液として使用でき、さらに水分を蒸発させたクルード状のもの(ペースト)として使用してもよい。また、純度をさらに高めるために、必要に応じて公知の方法により精製してもよい。精製方法としては、クロマトグラフィー、溶媒抽出、再沈殿及び蒸留等が挙げられる。
【0025】
合成化学の手法を駆使する従来の製造方法においては、酸・アルカリ及び有機溶媒、金属やハロゲン化物を反応物や触媒に使用するので、これらの化合物が混合された反応後の溶液から生成物を積極的に分離精製しなければならず、中和工程、洗浄工程が一般に必須となる。一方、本発明の反応工程では酸・アルカリを使用しないため中和工程は不要であり、有機溶媒を使用しないため有機溶媒を取り除く洗浄工程も不要となる。分離工程においても、生成物の収率が高いため分離に要する有機溶媒等の使用の抑制が期待される。
【0026】
式(I)で表されるシクロペンテノン誘導体を出発物質として、プロスタグランジンE1、ペンテノマイシン(4R-4β,5β-ジヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-シクロペンテン-1-オン)、デヒドロペンテノマイシン、キサントマイシン、ベルテマイシン(2-2-(ヒドロキシエトキシ)-5-(ヒドロキシメチル)-1-シクロペンタノン)等をより少ない工程で合成することも可能であり、医薬品原料・反応中間体としての利用も大いに期待される。
【0027】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
トリ―O―アセチルグルカール(II)(2.72g、10 mmоl)に水を加え、50 mL(0.2M)となるように定容した。その後、水溶液を蒸発させずに加圧状態で加熱(反応)を開始した。反応温度は、反応に使用したオートクレーブ装置(トミー精工、LSX-300)が示す130℃とし、18時間反応させた。反応液をろ過し、固形成分を除いた。得られた黄色の溶液を合成樹脂SP207(12.8 g)充填したカラム管に注いだ後、反応液が透明になるまで繰り返し通流させた。水150 mLを用いて溶出させ、減圧蒸留により溶媒を除去した後、2-プロパノールに溶解させた。次いでヘキサンを2-プロパノールの2倍量加え、セライトを用いて濾過し、不溶成分を除去した。減圧蒸留により溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=20/1)で精製し、式(I)を淡黄色の油状物質として得た。
1H NMR (400 MHz, acetone-d6): δ 2.18 (dd, J = 2.0, 18.4 Hz, 1H), 2.72 (dd, J = 6.0, 18.4 Hz, 1H), 4.21 (s, 2H), 4.91-4.92 (m, 1H), 7.36-7.37 (m, 1H); 13C NMR (100 Mz, acetone-d6): δ 45.9, 56.8, 68.6, 147.6, 157.7, 205.4 ppm; IR(neat): 1701, 3276 cm-1; HR-MS (ESI-TOF) : m/z calcd. for C6H9O3 ([M + H]+), 129.0546; found, 129.0552.
【実施例2】
【0029】
トリ-O-アセチル-D-グルカール(2.72g,10 mmоl)、ナトリウムメトキシド(27 mg、0.5 mmоl)を入れメタノール40 mLに溶解させた。1時間撹拌後、1.25M HClメタノール溶液を400μL加え、10分間撹拌して中和した。中和後の反応液を中性シリカゲル5.44 gを用いてろ過し、次いでメタノール150 mLで溶出させ、減圧蒸留により溶媒を除去することでD-グルカール(III)を得た。得られた式(III)の化合物は精製を行わずに次の反応へ進んだ。D-グルカール(III)に水を加え、(III)の水溶液とした。さらに水、塩酸および水酸化ナトリウム水溶液を用いて任意のpHとなるように調整を行い、50 mL(0.2M)となるように定容した。その後、水溶液を蒸発させずに加圧状態で加熱(反応)を開始した。反応温度は、反応に使用したオートクレーブ装置(トミー精工、LSX-300)が示す130℃とした。所定の反応時間経過後に、容器を取り出し、冷却して反応を停止させた。反応液をろ過し、固形成分を除いた。得られた黄色の溶液を合成樹脂SP207(12.8 g)充填したカラム管に注いだ後、反応液が透明になるまで繰り返し通流させた。水150 mLを用いて溶出させ、減圧蒸留により溶媒を除去した後、2-プロパノールに溶解させた。次いでヘキサンを2-プロパノールの2倍量加え、セライトを用いて濾過し、不溶成分を除去した。減圧蒸留により溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=20/1)で精製し、式(I)を淡黄色の油状物質として得た。同様の加圧状態での加熱(反応)を0.8Mの濃度においても実施した。得られた式(I)の化合物の分析値は実施例1と一致した。
【0030】
表1にpHによる検討の結果を示す。
【0031】
「表1」
トリ-O-アセチル-D-グルカール(II)(2.72g)
濃度:0.2 M、反応時間:18時間、反応温度130 ℃
【0032】
表2に反応時間による検討の結果を示す。
【0033】
「表2」
トリ-O-アセチル-D-グルカール(II)(2.72g)
濃度:0.2 M、pH:5、反応温度130 ℃
【0034】
表3に濃度による検討の結果を示す。
【0035】
「表3」
トリ-O-アセチル-D-グルカール(II)(0.2M:2.72g、0.8M:10.88g)
pH:5、反応時間:12時間、反応温度130 ℃
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るシクロペンテノン誘導体の製造方法では、容易に入手できる式(II)の化合物(トリ-O-アセチル-D-グルカール)を水中で加熱反応させることにより、医薬、農薬あるいは医薬、農薬等の原料や中間体として有用である4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オン(式(I)の化合物)をわずか1つの反応工程で簡単に得ることができる。また、本発明に係るシクロペンテノン誘導体の製造方法では、安価なグルコースを出発原料として、わずか二つの反応工程で医薬、農薬あるいは医薬、農薬等の原料や中間体として有用である4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテン-1-オン(式(I)の化合物を簡単に得ることができる。
本反応において使用する材料は、トリ-O-アセチル-D-グルカールと安価な溶媒のみで行うことができるため単離が容易となる。特に水だけ行った際には、精製工程を省略することもできる。したがって、式(I)で表されるシクロペンテノン誘導体を低コストで工業的に生産することも可能である。また、反応に使用する溶媒は水であり、有機溶媒を用いる必要がないため、環境に対する負荷の少ないグリーンプロセスとして期待できる。さらに出発原料であるトリ-O-アセチル-D-グルカールは、市販品であり、また天然に大量に存在する安価なグルコースから容易に製造できる。