(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】栽培設備及び方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20221216BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
(21)【出願番号】P 2020556480
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018041844
(87)【国際公開番号】W WO2020100193
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318017316
【氏名又は名称】伊藤 謙
(73)【特許権者】
【識別番号】714006462
【氏名又は名称】門脇 貴教
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【氏名又は名称】井戸 篤史
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】門脇 貴教
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-153720(JP,A)
【文献】特開2000-228923(JP,A)
【文献】特開2018-086024(JP,A)
【文献】特開2007-153699(JP,A)
【文献】特開2004-194614(JP,A)
【文献】特開平03-058722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡を用いて植物の栽培を行う栽培設備であって、
界面活性剤が混入された水又は養液である液体を貯留する貯留部と、
該貯留部に貯留されている前記液体中にエヤを供給して気泡を生成する気泡発生装置と、
栽培対象の植物を支持する支持部と
、
を備え、
前記気泡発生装置は、前記液体中に気泡を順次生成することにより、該気泡の集合体
である気泡層を前記液体の液面上に形成するように、前記液体から膨出させ、
前記支持部は、前記植物の根又は該植物の培地の少なくとも一部が、直接又は水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように、該植物を支持する構造を有
し、
前記支持部が、前記植物の根を保持する固定体であって、
前記固定体は、浮力を利用して前記気泡層に浮いている、栽培設備。
【請求項2】
前記支持部は、前記植物の根又は該植物の培地の少なくとも一部が、水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように、該植物を支持する構造を有する、請求項1に記載の栽培設備。
【請求項3】
前記固定体が、前記気泡層に浮かした状態で敷設させた一又は複数の枯れ木及び/又は落ち葉によって構成される、請求項1又は2に記載の栽培設備。
【請求項4】
前記固定体の上方から該固定体に養液を供給する養液供給手段を有する、請求項1~3いずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項5】
前記支持部は、
内部が空洞となる球状の支持容器であり、
前記支持容器には、前記植物が挿通されて保持される支持孔が穿設され、
前記支持容器の内
面側に前記集合体が導入さ
れ、
前記植物は、根側が前記支持容器の内部に位置し、葉側が前記支持容器の外部に位置するように前記支持孔に挿通されて保持される、請求項1~4いずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項6】
前記支持部は保持パネルを有し、
前記保持パネルには、前記植物が保持される保持部が一又は複数形成され
、
前記保持パネルの下面と、前記気泡層が生成されていない状態の前記液体の前記液面との間に前記気泡層を形成するスペースが形成された、
請求項
1~5いずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項7】
前記半透膜は、水を通し且つ界面活性剤を通さないように構成された
請求項1
~6いずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項8】
気泡を用いて植物の栽培を行う栽培方法であって、
界面活性剤が混入された水又は養液である液体中にエヤを供給して気泡を順次生成することにより、該気泡の集合体
である気泡層を、前記液体の液面上に形成するように前記液体から膨出させ、
少なくとも一部の生長期間中、栽培対象の植物の根又は該植物の培地の少なくとも一部が、直接又は水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように、該植物を支持
し、
前記植物の根が、前記気泡層に浮いている固定体に支持されることを特徴とする栽培方法。
【請求項9】
前記植物が、水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように支持される、請求項8に記載の栽培方法。
【請求項10】
前記界面活性剤はサポニンである請求項8又は9の何れかに記載の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気泡を用いて植物の栽培を行う栽培設備及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の養液栽培等において、気泡を用いることが有用であることが知られている。例えば、特許文献1に示す栽培設備は、液体(同文献では、「養液3」)を貯留する貯留部(同文献では、「貯液槽1」)と、上下方向に向けられた筒状体であって且つ下側部分が前記液体内に浸漬された支持部(同文献では、「中空管2」)と、支持部と同一軸又は略同一軸心となるように該支持筒の内部に位置決め挿入され且つ両端側が開放された内筒(同文献では、「送液管9」)と、内筒の外周面と、支持部の内周面との間に充填された不織布(同文献では、「培地8」)と、気泡を発生させる気泡発生装置(同文献では、「空気ポンプ10」及び「送気チューブ11」)とを備え、前記支持部の筒状体の周壁に、内外を貫通する支持孔(同文献では、「植え込み孔5」)が穿設され、前記内筒の下端側には、下方に向かって径が拡大する漏斗状の導入部が一体成形されている。
【0003】
この栽培設備を用いた植物の栽培にあたっては、植物を、その根が不織布に接触するようにして支持孔に挿通して支持し、気泡発生装置によって発生させた気泡を導入部から内筒の内部に導入する。内筒の内部に導入された気泡は、液体と共に上昇し、該内筒の上端から噴出する。噴出した液体は、不織布に吸収されながら流下していく。不織布に含有された液体は植物に吸収される。
【0004】
このような栽培設備及び方法によれば、気泡に触れて多くの酸素を含んだ液体を、植物の根に吸収させることが可能になるため、該植物の生長が促進される。
【0005】
しかし、この栽培設備及び方法では、構造が複雑になってコストが高くなる他、気泡が細長い内筒を介してのみしか植物側に供給されないので、気泡の効果を効率的に利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、気泡を用いて植物の栽培を行う栽培設備及び方法であって、構造の簡略化が容易であって且つ気泡の効果を効率的に利用可能な植物の栽培設備及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の栽培設備は、気泡を用いて植物の栽培を行う栽培設備であって、界面活性剤が混入された水又は養液である液体を貯留する貯留部と、該貯留部に貯留されている前記液体中にエヤを供給して気泡を生成する気泡発生装置と、栽培対象の植物を支持する支持部とを備え、前記気泡発生装置は、前記液体中に気泡を順次生成することにより、該気泡の集合体を、前記液体から膨出させるように構成され、前記支持部は、前記植物の根又は該植物の培地の少なくとも一部が、直接又は水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように、該植物を支持する構造を有することを特徴とする。
【0009】
前記貯留部は、上方が開放された容器であり、前記気泡発生装置は、前記容器内の前記液体中に前記気泡を発生させることにより、前記集合体である気泡層を前記液体の液面上に形成するように構成され、前記支持部は、前記根が前記液面に向く姿勢で該液面の上方に前記植物を支持する構造を有するものとしてもよい。
【0010】
前記支持部は保持パネルを有し、前記保持パネルには、前記植物が保持される保持部が一又は複数形成されたものとしてもよい。
【0011】
前記保持パネルの下面と、前記気泡層が生成されていない状態の前記液体の前記液面との間に前記気泡層を形成するスペースが形成されたものとしてもよい。
【0012】
前記支持部は、内部と外部とを隔てて前記液体又は前記気泡の行き来を規制することが可能な支持容器であり、前記支持容器には、前記植物が挿通されて保持される支持孔が穿設され、前記支持容器の内面又は外面側に前記集合体を位置させるものとしてもよい。
【0013】
前記半透膜は、水を通し且つ界面活性剤を通さないように構成されたものとしてもよい。
【0014】
また、本発明を適用した栽培方法は、気泡を用いて植物の栽培を行う栽培方法であって、界面活性剤が混入された水又は養液である液体中にエヤを供給して気泡を順次生成することにより、該気泡の集合体を、前記液体から膨出させ、少なくとも一部の生長期間中、栽培対象の植物の根又は該植物の培地の少なくとも一部が、直接又は水を通す半透膜を介して、前記集合体に触れるように、該植物を支持することを特徴とする。
【0015】
前記植物の前記根を、前記気泡層に浸漬するものとしてもよい。
【0016】
前記界面活性剤はサポニンであるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
界面活性剤を利用して発生させた気泡の集合体は、多量の気泡を含むとともに、培地の代わりに用いることもできるため、構造の簡略化が容易であって且つ気泡の効果を効率的に利用することができる。この他、少量の液体によって、気泡の集合体を発生させることが可能であるため、植物の栽培に必要な液体の量を減少させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用した栽培設備の構造を示す正断面図である。
【
図4】本発明を適用した栽培方法の処理工程を示すフロー図である。
【
図5】本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。
【
図6】本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。
【
図7】本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。
【
図8】本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す断面図である。
【
図9】本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す断面図である。
【
図10】処理区A~Dの2018年6月12日時点での生長状態を示す写真である。
【
図11】(A)は処理区A,Bの2018年6月17日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区C,Dの2018年6月17日時点での生長状態を示す写真である。
【
図12】(A)は処理区A,Bの2018年6月19日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区C,Dの2018年6月19日時点での生長状態を示す写真である。
【
図13】(A)は処理区A,Bの2018年6月20日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区Cの2018年6月20日時点での生長状態を示す写真である。
【
図14】(A)は処理区A,Bの2018年6月25日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区Cの2018年6月25日時点での生長状態を示す写真である。
【
図15】処理A,Bで2018年7月1日まで栽培して採取されたカイワレ大根の生長状態を示す写真である。
【
図16】処理Cで2018年7月1日まで栽培して採取された胡瓜の生長状態を示す写真である。
【
図17】(A)は蔓植物の生長状態を示す写真であり、(B)は(A)の栽培設備の気泡層の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明を適用した栽培設備の構造を示す正断面図であり、
図2は保持パネルの平面図である。植物Pの栽培を行う栽培設備は、有底筒状に成形された容器(貯留部)1と、容器1の上方開口部分を塞ぐように該容器ケース1の環状の開口縁に位置決め載置された保持パネル(支持部)2と、容器1に貯留され且つ界面活性剤が混入された水又は養液である液体L中にエヤを供給して気泡Bを発生させる気泡発生装置3とを備えている。
【0020】
上記容器1は、平断面視で方形状に成形され且つ上方が開放されている。容器1の内部が目視可能なように、該容器はガラスや樹脂等の透明な材料から構成されている。この容器1の内部には、前記液体Lが貯留される。
【0021】
上記養液としては、例えば、大塚A処方の標準養液又は大塚B処方の標準養液であるが、特にこれに限定されるものではない。ちなみに、これらの標準養液の成分は、
図3に示す通りである。
【0022】
この液体L中には、泡立ちの促進を目的として、前記界面活性剤が混入されている。この界面活性材としては、植物Pの生育を妨げない天然のものが用いられる。さらに具体的には、植物由来のサポニンを界面活性剤として用いる。
【0023】
上記保持パネル2は、下方に窪んだ一又は複数の凹部(保持部)4が形成されている。各凹部4の底部の中央側には挿通孔4aが穿設されている。凹部4の内部には、フレキシブルに変更可能であって且つ液体Lを含有させることも可能な固定体6が充填される。この固定体6は培地として機能する。固体体6は、セルロースを含む材料から構成してもよい。さらには、スポンジを所定サイズに切断して固定体6として用いてもよい他、切断した不織布等を塊にして固定体6とし用いてもよい。
【0024】
固定体6は、植物Pの茎P1や根P2を保持する。具体的には、茎P1を固体体6に挿通させるか、或いは生長過程で固定体6内に根P2を張り巡らせることにより、該植物Pが固定体6に保持される。植物Pの茎P1の上部及び葉P3が固定体6から上方の伸び、茎P1の下部や根P2が固定体6から下方に伸びていく。この根P2は、挿通孔4aを介して、保持パネル2の外側下方に突出し、液体Lの液面L1側に臨む。
【0025】
すなわち、保持パネル2は、植物Pを、その根P2が容器1内に貯留された液体Lの液面L1に向く姿勢で、該液面L1の上方に支持するように構成されている。
【0026】
上記気泡発生装置3は、容器1に貯留された液体Lに浸漬されるエヤストーン8と、容器1の外側に設置されるエヤポンプ(図示しない)と、エヤポンプとエヤストーン8とを接続するエヤチューブ9とを備えている。
【0027】
保持パネル2に支持された植物Pの葉P3に光を照射して光合成を促すため、この栽培設備を太陽の下に設置し、自然光によって栽培を行ってもよいが、人工的な光によって植物Pを栽培してもよい。この場合には、植物Pの葉P3の直上にLED等からなる光源11を設置する。この光源11の照射方向は下方に向けられている。
【0028】
次に、この栽培設備を用いた栽培方法について説明する。
【0029】
まず、容器1内に液体Lを注入する。容器1に注入される液体Lの量は、液面L1が保持パネル2の下端まで達しない高さになるように調整される。言換えると、泡立っていない状態の液体Lの液面L1と、保持パネル2との間には、スペースSが形成される。
【0030】
続いて、エヤストーン8を、容器1内の液体L中に浸漬する。その後、一又は複数の植物Pが支持された保持パネル2を、容器1の環状の開口縁に位置決め載置する。通常の養液栽培では、保持パネル2に支持された植物Pの根P2の少なくとも一部が、容器1内の液体Lに浸漬されている必要があるが、本例では、この条件は必須ではない。すなわち、保持パネル2に支持された植物Pの根P2が、容器1に注入され且つ泡立っていない状態の液体Lの液面L1に達していなくてもよい。
【0031】
続いて、エヤポンプはエヤチューブ9によってエヤを圧送する。エヤストーン8に達した圧送されたエヤは、該エヤストーン8から液体L中に噴出し、無数の気泡Bを生成する。随時生成される気泡Bは、該液体L中を上昇して液面L1から上方に膨出し、該液面L1上に気泡Bの集合体Gである気泡層を形成する。
【0032】
この気泡層Gは、上述の構成から、前記スペースSに形成される。言換えると、このスペースSは気泡層Gを形成する空間として利用される。そして、植物Pの少なくともの根P2の一部を前記気泡層Gに接触させる。植物Pは、根P2の少なくとも部分が気泡層Gに接触していれば、生長可能であり、液体Lに浸漬される必要はない。
【0033】
図示する例では、気泡層Gが保持パネル2の下面よりも上方の位置まで膨出しており、前記支持部に支持された植物Pは、根P2の固定体6から下方に伸びた部分の全体が気泡層Gに浸漬された状態になっている。言換えると、前記保持パネル2は、根P2の部分が前記集合体Gに接触するように、植物Pを支持するように構成されている。植物Pは、気泡層Gを介して、液体L中の養分を効率的に吸収し、生長していく。
【0034】
図4は本発明を適用した栽培方法の処理工程を示すフロー図である。同図に示す通り、この植物Pの栽培方法は、上述の内容によれば、貯留部である容器1の内部に水又は前記養液を貯留するとともに、該水又は該養液中に前記界面活性剤を混入する準備工程と、準備工程の後に前記栽培設備を組立てる組立工程と、組立工程の後に容器1の内部に貯留された液体Lの中に気泡Bを発生させる発生工程と、液体Lの中で発生した気泡Bによって液面L1上に気泡Bの集合体Gである気泡層を順次生成する生成工程と、気泡Bを集合体Gの状態で植物Pの根P2に接触させる接触工程と、集合体Gを構成する気泡Bが弾けて消滅する消滅工程とを含む。
【0035】
準備工程は、新たに植物Pを栽培する際や、容器1に貯留された液体Lの交換の度に実施される。この準備工程における容器1の内部への注入作業と、界面活性剤の混入作業とは、どちらが先でもよい。
【0036】
発生工程、生成工程、接触工程及び消滅工程は、容器1の内部に貯留された液体Lが交換されるまでの間、随時、この順番で繰り返される。
【0037】
なお、栽培設備を、容器1の内部に水、養液又は液体Lを注入可能な状態で、予め組立てておけば、組立工程を省略することも可能である。
【0038】
以上のように構成される栽培設備及び方法によれば、気泡層Gが液面Lから上方に膨出するため、液面Lが植物Pの根P2が浸かる高さになる量まで液体Lを容器1に注入する必要がなく、少ない量の液体Lで植物1を栽培することが可能になる。例えば、前記集合体Gを、液体Lの容積の数倍から数十倍に膨張させることが可能である。
【0039】
また、栽培の使用した後の液体Lは、そのまま海や川に破棄した場合、汚染の原因になるが、使用する液体Lの量が少なければ、その量も少量になるため、環境保護の側面からもメリットが大きい。
【0040】
また、気泡層Gは無数の気泡Bで構成されているため、気泡Bの有効な作用をフルに活用して、植物Pを栽培することが可能になる。例えば、界面活性剤は、気泡Bの発生時には、殺菌作用が奏するものが多く、該殺菌作用によって液体Lの腐敗を防止できる。これに加えて、気泡Bは、表面でマイナス帯電するケースも多く、植物Pが養分となる陽イオンを吸収し易くなり、吸収効率も向上する。
【0041】
また、この栽培設備及び方法は、水や養液を噴霧して栽培する場合と比べて、養分供給の持続性として点が優れている。
【0042】
しかも、この栽培設備は、界面活性剤を利用すれば、液体Lからの気泡Bの集合体Gを膨出させることが可能になるため、特別な装置は不要であり、栽培設備の構造をシンプルにすることも容易である。
【0043】
なお、液体Lとして界面活性剤を混入した水を用いる場合、生長に必要な養分を別途、植物Pに供給する必要がある。例えば、固定体6の上方から該固定体6に養液を供給し、この固定体6に養液を含ませることにより、植物Pに養分を供給してもよい。
【0044】
次に、
図5に基づき、本発明の適用した栽培設備の別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0045】
図5は、本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。上述の形態では、界面活性剤も植物Pに吸収されることになるため、植物Pの生長の妨げにならない界面活性剤を水又は養液に混ぜる必要があるが、植物Pの妨げになる種類のものを界面活性剤として用いることも可能である。
【0046】
この場合は、根Pを液体L、気泡B又は集合体Gの何れにも接触させないようにすることが必要になる。このため、固定体6の液体L、気泡B又は集合体Gとの接触する面(図示する例では下面)に、半透膜10を設ける。この半透膜10は、液体L中の水を通過させ且つ液体L中の水以外の成分を通さない構造を有している。このため、液体L中の水分のみが、固定体6又は植物Pに吸収され、植物Pの生長に使用され、液体L中の水以外の成分は、固定体6及び植物Pに吸収されることはなく、容器1の内部に残留する。
【0047】
ちなみに、この実施形態では、界面活性剤を混入した水を液体Lとして用いる場合と同様の手段によって、植物Pに養分を供給する。
【0048】
次に、
図6に基づき、本発明の適用した栽培設備の別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0049】
図6は、本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。この実施形態では、保持パネル2が所定の厚みを有しており、この保持パネル2には固定体6を挿入する保持孔(保持部)2aが穿設されている。保持孔2aの内周は、下方に向かって次第に小さくなるテーパ状に形成されている。
【0050】
そして、植物Pが定着されている固定体6を、この保持孔2aに嵌合して挿入することより、該植物P及びその固定体6が保持パネル2に保持して支持される。この保持孔2aのテーパ形状によって、保持孔2aに嵌合されて固定された固定体6が該保持孔2aから抜け落ちることが防止される。
【0051】
ちなみに、本実施形態でも、気泡層Gは、気泡発生装置3によって、保持パネル2の下面に達する位置まで膨出させる。
【0052】
次に、
図7に基づき、本発明の適用した栽培設備の別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0053】
図7は、本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す正断面図である。この実施形態では、固定体6を支持部として機能させる。具体的には、浮力を利用して気泡層Gに固定体6を浮かせる。この固定体6には、植物Pの根P2や茎P1を保持させる。
【0054】
本形態の栽培設備によれば、保持パネルが不要になるため、構造がさらにシンプルになり、製造コストがさらに安価になる。
【0055】
なお、固定体6は気泡層Gの上面側の全体に浮かした状態で敷設させた一又は複数の枯れ木や落ち葉等の浮遊物によって構成してもよい。
【0056】
次に、
図8に基づき、本発明の適用した栽培設備の別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0057】
図8は、本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す断面図である。この実施形態の栽培設備は、内部と外部と隔てて前記液体の行き来を規制する支持容器12を、支持部として備えている。具体的には、支持容器12が、内部が空洞となる球状に成形されている。この支持容器12の球面には、内部と外部とを連通させる複数の支持孔12aが穿設されている。
【0058】
植物Pを、その根P2側が支持容器12の内部に位置し且つ葉P3側が支持容器12の外部位置する状態になるように、前記支持孔12aに挿通させることにより、該植物Pを支持容器12に支持している。ちなみに、前記挿通の際には、根P2や茎P1の部分を保持した固定体6、或いは植物Pの茎P1自体を、前記支持孔12aの内周縁側に嵌合させる。
【0059】
前記液体を貯留する貯留部13を支持容器12の内部に成形してもよいが、支持容器12の外部に貯留部(図示しない)を設けてもよい。光源は、支持容器12の外部に位置させる。ちなみに、光源は、太陽であってもよいし、LED等からなる人工照明であってもよい。
【0060】
支持容器12の内部に貯留部13を設ける場合、支持容器12の内部に形成された貯留部13に貯留された前記液体Lの中に、エヤストーン8に浸漬して設け、該支持容器12の内部が気泡Bの集合体Gで充填されるように、エヤストーン8から気泡Bを噴出させる。
【0061】
支持容器12の外部に貯留部を設ける場合、この貯留部に貯留された前記液体中にエヤストーン8を浸漬して設け、該貯留部に貯留された液体Lから気泡Bの集合体Gが膨出するように、エヤストーン8から気泡Bを噴出させ、この集合体Gを支持容器12の内部に供給して充填させる。
【0062】
光源は太陽光としてもよいが、支持容器12の外部に設置され且つLED等から構成された人工的な光源11を栽培用の光源として用いてもよい。
【0063】
このように構成される栽培設備によれば、宇宙空間等の無重力の環境下でも、効率的に植物の栽培を行うことが可能になる。また、支持容器12の球面全体に満遍なく支持孔12aを設けることが可能になるため、より多くの植物Pを、1つの支持容器12で栽培することができる。
【0064】
次に、
図9に基づき、本発明の適用した栽培設備の別実施形態について、上述の形態と異なる部分を説明する。
【0065】
図9は、本発明の適用した栽培設備の別実施形態の構成を示す断面図である。この実施形態の栽培設備では、植物Pを、その根P2側が支持容器12の外部に位置し且つ葉P3側が支持容器12の外部位置する状態になるように、前記支持孔12aに挿通させることにより、該植物Pを支持容器12に支持している。ちなみに、前記挿通の際には、根P2や茎P1の部分を保持した固定体6、或いは植物Pの茎P1自体を、前記支持孔12aの内周縁側に嵌合させる。
【0066】
LEDなどから構成される人口的な光源11を、支持容器12の内部の中心側に設けている。図示しない貯留部は支持容器12の外部に配置し、貯留部に貯留した前記液体Lの中にエヤストーン8を浸漬し、該液体Lから気泡Bの集合体Gが膨出するように、該エヤストーン8からエヤを噴出させる。液体Lから膨出した集合体Gは、支持容器12の球面状の外面側に供給される。
【0067】
なお、支持容器12の内部と外部との水密性が確保可能であれば、複数の植物Pを保持した支持容器12自体を、気泡Bの集合体Gの中に浸漬してもよい。
【0068】
次に、本発明を適用した栽培設備及び方法の実験結果について説明する。
【0069】
図1乃至4に示す形態の栽培設備と、大塚A処方の標準養液を養液として用い、植物Pであるカイワレ大根と胡瓜の栽培を、2018年6月9日から同年7月1日まで行った。ここで、本発明を適用してカイワレ大根を気泡層Gを用いて栽培する栽培設備を、処理区Aとする。また、処理区Aとの比較を目的としてカイワレ大根を気泡層Gを用いずに栽培する栽培設備を、処理区Bとする。一方、本発明を適用して胡瓜を気泡層Gを用いて栽培する栽培設備を、処理区Cとする。また、処理区Cとの比較を目的として胡瓜を気泡層Gを用いずに栽培する栽培設備を、処理区Dとする。ちなみに、処理区B,Dでは、界面活性剤を混入していない養液を液体とし、この液体に根P2を浸し、気泡層Gが形成されない程度に前記液体に気泡を発生させる。
【0070】
同年6月9日に、処理区A~Dの培地6に種をまいた。
【0071】
図10は処理区A~Dの2018年6月12日時点での生長状態を示す写真である。同図の左下の栽培設備が処理区Aであり、右下の栽培設備が処理区Bであり、左上の栽培設備が処理区Cであり、右上の栽培設備が処理区Dである。同図に示す通り、処理区A~Cでは発芽が確認される一方で、処理区Dでは発芽が確認されなかった。
【0072】
図11(A)は処理区A,Bの2018年6月17日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区C,Dの2018年6月17日時点での生長状態を示す写真である。同図(A)の左側の栽培設備が処理区Aであり、右側の栽培設備が処理区Bである。2つの処理区A,Bでは、順調な生長がそれぞれ観察された。同図(B)の左側の栽培設備が処理区Cであり、右側の栽培設備が処理区Dである。処理区Cでは順調な生長が観察された一方で、処理区Dでは発芽が確認されなかった。
【0073】
図12(A)は処理区A,Bの2018年6月19日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区C,Dの2018年6月19日時点での生長状態を示す写真である。同図(A)の左側の栽培設備が処理区Aであり、右側の栽培設備が処理区Bである。2つの処理区A,Bでは、順調な生長がそれぞれ観察された。同図(B)の左側の栽培設備が処理区Cであり、右側の栽培設備が処理区Dである。処理区Cでは順調な生長が観察された一方で、処理区Dでは発芽が確認されなかった。
【0074】
図13(A)は処理区A,Bの2018年6月20日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区Cの2018年6月20日時点での生長状態を示す写真である。同図(A)の左側の栽培設備が処理区Aであり、右側の栽培設備が処理区Bである。2つの処理区A,Bでは、順調な生長がそれぞれ観察された。同図(B)の栽培設備が処理区Cであり、処理区Cでは順調な生長が観察された一方で、処理区Dでは引続き発芽が確認されなかった。
【0075】
図14(A)は処理区A,Bの2018年6月25日時点での生長状態を示す写真であり、(B)は処理区Cの2018年6月25日時点での生長状態を示す写真である。同図(A)の左側の栽培設備が処理区Aであり、右側の栽培設備が処理区Bである。2つの処理区A,Bでは、順調な生長がそれぞれ観察された。同図(B)の栽培設備が処理区Cであり、処理区Cでは順調な生長が観察された一方で、処理区Dでは引続き発芽が確認されなかった。
【0076】
図15は、処理A,Bで2018年7月1日まで栽培して採取されたカイワレ大根の生長状態を示す写真である。同図の左側が処理区Aから採取されたカイワレ大根であり、右側が処理区Bから採取されたカイワレ大根である。両方の処理区A,Bとも順調な生長が確認された。
【0077】
図16は、処理Cで2018年7月1日まで栽培して採取された胡瓜の生長状態を示す写真である。処理区Cでの順調な生長が確認された。一方、処理区Dでは、最後まで発芽が確認されなかったが、その原因は不明である。
【0078】
次に、本発明を適用した栽培設備及び方法の別の実験結果について説明する。
【0079】
図1乃至4に示す形態の栽培設備と、大塚A処方の標準養液を養液として用い、植物Pである蔓植物の栽培を行った。
図17(A)は蔓植物の生長状態を示す写真であり、(B)は(A)の栽培設備の気泡層の状態を示す写真である。同図に示すように、蔓植物でも順調な生長が観察された。
【0080】
次に、本発明を適用した栽培設備及び方法の別の実験結果について説明する。
【0081】
図7に示す形態の栽培設備と、大塚A処方の標準養液を養液として用い、植物Pである高麗人参の栽培を行った。
図18は高麗人参の生長状態を示す写真である。同図に示すように、高麗人参でも順調な生長が観察された。
【符号の説明】
【0082】
1 容器(貯留部)
2 保持パネル(支持部)
2a 保持孔(保持部)
3 気泡発生装置
4 凹部(保持部)
11 支持容器(支持部)
11a 支持孔
12 支持容器(支持部)
13 貯留部
B 気泡
G 気泡層(集合体)
L 液体
L1 液面
P 植物
P2 根
S スペース