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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】抗腫瘍剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20221216BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20221216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/09
A61K31/122
A61K31/216
A61K31/235
A61K31/36
A61P35/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018017207
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019131528
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年1月18日に、ウェブサイト https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.7b03763において、「Total Synthesis of Antiproliferative Parvifloron F」について電気通信回線を通じて発表した。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 享子
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮島 由衣
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328937(JP,A)
【文献】特開2017-178813(JP,A)
【文献】特開2002-193869(JP,A)
【文献】LING, T., et al.,(+)-Dehydroabietylamine derivatives target triple-negative breast cancer,European Journal of Medicinal Chemistry,2015年,vol.102,pp.9-13.
【文献】FRONZA, M., et al.,In vitro cytotoxic activity of abietane diterpenes from Peltodon longipes as well as Salvia miltiorrhiza and Salvia sahendica,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2011年,vol.19, no.16,pp.4876-4881.
【文献】BURMISTROVA, O., et al.,The abietane diterpenoid parvifloron D from Plectranthus ecklonii is a potent apoptotic inducer in human leukemia cells,Phytomedicine,2015年,vol.22, no.11,pp.1009-1016.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/05
A61K 31/09
A61K 31/122
A61K 31/216
A61K 31/235
A61K 31/36
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アビエタン骨格を有するアビエタンジテルペン類を含有する癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤であって、前記アビエタンジテルペン類が、下記化学式(A)
【化1】
で表わされる何れかの化合物、又はその化合物の薬学的に許容される塩であり、
肺癌細胞株A549と、癌細胞株KBと、P-糖タンパク過剰発現多剤耐性(MDR)KB亜系細胞株KB-VINと、トリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231と、乳癌細胞株MCF-7とのうち少なくとも前記トリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231がIC 50 をμMオーダーとする癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤。
【請求項2】
乳癌の治療薬であることを特徴とする請求項に記載の癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤。
【請求項3】
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びヒト上皮成長因子受容体2に陰性であるトリプルネガティブ乳癌の治療薬であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤。
【請求項4】
賦型剤、分散剤、充填剤、担体、及び/又は溶剤を含有することを特徴とする1~の何れかに記載の癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の癌や肉腫の治療、とりわけ乳癌の治療に用いられる抗腫瘍剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々な癌や肉腫の中でも、悪性腫瘍の一つである乳癌は、死亡率・罹患率ともに年々増え続けており、原発巣部位別にみると女性の罹患率第一位になっている。
【0003】
乳癌は生物学的特徴の違いから数種のサブタイプに分類することができる。サブタイプ分類基準の一つとして、乳癌細胞の増殖に関わる受容体の発現様式が挙げられる。乳癌に大きく関与するエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2 enrich)の発現に基づいて、乳癌は大きくLuminal A、Luminal B、HER2 enrich、Base-likeの4つに分類される。
【0004】
Luminal AタイプではERとPRとが発現し、HER2が発現しない。
Luminal BタイプではER又はPRが比較的弱く発現し、HER2が発現しないものとHER2が発現するものとがある。
HER2タイプではERやPRが発現せず、HER2が発現する。
Base-likeはERとPRとHER2とが発現しない。
【0005】
Luminal A及びBタイプは、最も多い病型である。Luminalとは、乳管を形成する管上皮細胞(luminal cells)に発現する遺伝子が発現している乳癌であり、乳癌全体の60%を占め,ER陽性乳癌の大部分が該当する。
【0006】
このサブタイプに基いて治療方針を行う個別化医療が試みられている。ERやPRが発現しているタイプにはホルモン療法が、またHER2が過剰発現しているタイプには抗HER2療法(分子標的薬)が、通常の化学療法に加えて適用できる。
【0007】
しかし、全乳癌の10~20%を占めるBase-likeのように、ER、PR、HER2のすべてが陰性であるトリプルネガティブ乳癌(TNBC:Triple negative breast cancer)は、ER、PR、HER2の何れの受容体も発現していないため、細胞傷害性抗癌剤を使用する化学療法しか選択肢がない。しかも、予後が非常に悪い上に、約30%が遠隔転移や再発を起こすことから、効果的な治療薬の開発が望まれている。
【0008】
一般的に、乳癌の化学療法に広く用いられる抗癌剤には、タイヘイヨウイチイTaxus brevifoliaから単離されたジテルペン誘導体であって、微小管の脱重合を阻害することにより抗腫瘍作用を示すタキサン系のパクリタキセル(Paclitaxel)や、放線菌ストレプトマイセス ペウセティウス ヴァル カエシウス(Streptomyces peucetius var. caesius)の培養ろ液から単離されたアントラサイクリン誘導体であってDNA・RNAポリメラーゼを阻害するアントラサイクリン系のドキソルビシン(Doxorubicin)などがある。これらを含め天然物由来の抗癌剤は、現在臨床で使用されている低分子製剤の約85%を占めている。
【0009】
【化1】
【0010】
これらの抗癌剤は、様々な癌治療に用いられているが、標的となっているタンパク質・酵素が癌細胞だけでなく生体内すべての細胞にも存在するため、正常細胞にも影響を与える。その結果、吐き気や骨髄抑制、脱毛などの副作用が大きく、患者の身体的負担が大きい。またこれらの低分子抗癌剤の長期投与により癌細胞は多剤耐性(Multidrug Resistance:MDR)を獲得する。MDRが発現した癌細胞はP糖タンパク質(P-gp)などの薬物排出トランスポーターを発現し、他の低分子抗癌剤まで細胞外に排出してしまうため治療効率が大きく低下するという問題がある。
【0011】
既に市販されている抗癌剤の他、トリプルネガティブ乳癌の増殖を抑制する薬剤として、特許文献1に、ノビレチンを有効成分とし、ERK1/2の活性を抑制する、乳癌細胞の細胞増殖抑制剤が開示されている。
【0012】
しかし既存の抗腫瘍剤では、副作用が強い上に、長期投与による多剤耐性の発現もあり、トリプルネガティブ乳癌の増殖を効率的に抑制する抗腫瘍剤が望まれていた。
【0013】
ところで、シソ科プレクトランツス属(Plectranthus)は約300種が知られている。この植物は、熱帯アフリカ、アジア、オーストラリアで消化系や皮膚・呼吸器系のための伝承薬として広く用いられている。
【0014】
パルビフロロン (PF:Parviflorone)類は、シソ科プレクトランツス属から単離されたジテルペンであり、現在までにPF-AからPF-Hの全8種が報告されている。
【0015】
本発明者らは、天然物であるパルビフロロン類が種々の癌細胞に対し強い細胞増殖抑制(抗腫瘍)効果を示すことを見出した。これらのパルビフロロン類は、何れも下記式で表されるアビエタン骨格を有している。
【0016】
【化2】
【0017】
この知見によれば、これら天然物のパルビフロロン類やその誘導体は、抗癌剤のシード化合物として、有望である。しかし天然物のパルビフロロン類やそれの合成誘導体についての全合成研究についての報告や、抗腫瘍効果や、その効果の詳細な構造活性相関研究・作用機序の解明についての報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2016-17042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、各種の癌や肉腫、とりわけエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に陰性であるトリプルネガティブ乳癌のようなヒト乳癌に対して強い増殖抑制作用を有し治療効果が高く、予後が良く、安全な治療薬として有用な抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するためになされた本発明の抗腫瘍剤は、アビエタン骨格を有するアビエタンジテルペン類を含有するというものである。
【0021】
この抗腫瘍剤は、前記アビエタンジテルペン類が、パルビフロロン A,B,C,D,E,F,G又はH、若しくはその誘導体であることを特徴とする。
【0022】
この抗腫瘍剤は、前記アビエタンジテルペン類が、下記化学式(I)
【化3】
(式(I)中、
-R及び-Rは夫々同一又は異なり、-CH、-COOH、-COO-R(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;-CH-OH;-CH-O-R(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、ハロゲノメチル基、又はハロゲン原子、
-R及び-R4は夫々、水素原子、-OH、-O-R(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;ハロゲン原子と水酸基との少なくとも何れかで置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、-NH、-NHR(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、-NRe’(但しR及びRe’は同一又は異なり、置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)、ハロゲノメチル基、又はハロゲン原子、
-Rは水素原子、-OH、-O-R(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;ハロゲン原子と水酸基との少なくとも何れかで置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、
-Rは-OH、-O-R(但しRは置換基で置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;ハロゲン原子と水酸基との少なくとも何れかで置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、又はオキソ基、
-Rはハロゲン原子と水酸基との少なくとも何れかで置換されていてもよい、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、
破線は各結合軸が互いに独立して単結合又は二重結合、
前記-R~-R中の置換基は、夫々単数又は複数であって、-OH、-O-R(但しRは炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、-NH、-NHR(但しRは炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基;炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基)、-NRj’(但しR及びRj’は同一又は異なり、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基、アラルキルアシル基又は芳香族アシル基、ハロゲノメチル基、又はハロゲン原子である。)
で表わされる化合物(但し、アビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、カルノシン酸、及びフェルギノールを除く)、又はその化合物の薬学的に許容される塩であり、
肺癌細胞株A549と、鼻咽頭上皮内類表皮癌細胞株KB、過剰発現P-糖プロテインMDR亜系細胞株KB-VINと、トリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231と、乳癌細胞株MCF-7との増殖を抑制するものであることを特徴とする。
【0023】
この抗腫瘍剤は、前記アビエタンジテルペン類が、下記化学式(II)
【化4】
(式(II)中、-R~-Rは前記と同じ)で表わされるものであると好ましい。
【0024】
特許請求の範囲に記載の本発明の癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤(以下、単に抗腫瘍剤ということもある)は、
アビエタン骨格を有するアビエタンジテルペン類を含有する癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤であって、前記アビエタンジテルペン類が、下記化学式(A)
【化4-1】
で表わされる何れかの化合物、又はその化合物の薬学的に許容される塩であり、
肺癌細胞株A549と、癌細胞株KBと、P-糖タンパク過剰発現(MDR)KB亜系細胞株KB-VINと、トリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231と、乳癌細胞株MCF-7との少なくとも何れかがIC 50 をμMオーダーとする増殖抑制用の抗腫瘍剤である。
この癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤は、例えば乳癌の治療薬である。
【0025】
また、この癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体及びヒト上皮成長因子受容体2に陰性であるトリプルネガティブ乳癌の治療薬であってもよい。
【0026】
この癌細胞増殖抑制用の抗腫瘍剤は、賦型剤、分散剤、充填剤、担体、及び/又は溶剤を含有していてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の抗腫瘍剤は、各種の癌や肉腫のような腫瘍、特に悪性腫瘍、とりわけER、PR、及びHER2の何れかに陽性である乳癌や、ER、PR及びHER2の何れにも陰性であるトリプルネガティブ乳癌のようなヒト乳癌に対して強い増殖抑制作用を有している。この抗腫瘍剤は、増殖抑制作用の指標となる癌細胞株の50%阻害濃度(IC50)が極めて低いので、ヒト乳癌患者に投与したときの治療効果が高く、予後が良い、抗腫瘍有効成分である。
【0028】
この抗腫瘍剤は、伝承薬から得られたパルビフロロン類又はそれの誘導体であり、標的細胞に選択的に攻撃できるもので、副作用が少なく安全な治療薬として有用である。
【0029】
この抗腫瘍剤は、天然由来又は全合成したパルビフロロン類を用いてもよく、それの誘導体として合成したものでもよい。
【0030】
この抗腫瘍剤は、初期から後期のほぼ全てのステージでの乳癌を標的とした新薬の画期的なリード化合物、有効成分となる化合物である。このアビエタンジテルペン類を含有する抗腫瘍剤は、悪性腫瘍、中でも乳癌、とりわけトリプルネガティブ乳癌に対して、耐性を生じることなく、予防、治療、再発・再燃防止に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの形態に限定されない。
【0032】
本発明の抗腫瘍剤は、アビエタン骨格を有するアビエタンジテルペン類を、抗腫瘍活性の有効成分として、含有するものである。
【0033】
抗腫瘍剤中のアビエタンジテルペン類の一例は、パルビフロロン類、例えば天然物であればパルビフロロン A (4),B (3),C (2),D (5),E (1),F(6),G (7),及びH (8)が挙げられる。これら天然物から単離されたことが知られているパルビフロロン類は、下記構造式で示される。
【0034】
【化5】
【0035】
パルビフロロン類は、ラブダン系列の3環性環状ジテルペンであるアビエタン骨格を基本骨格とし、キノンメチド型のC環上にイソプロピル基とヒドロキシ基を有している。A環の置換様式の違いにより、以下のように3つのグループ(I)~(III)に分類される。
(I) 4位にメチルアルコールを有しそれぞれ3-メチルクロトン酸または置換ベンゾイル基がエステル結合しているもの(パルビフロロン A (4),B (3),C (2),及びE (1))
(II) 2位に置換ベンゾイル基、4位にgem-ジメチル基を有するもの(パルビフロロン D (5), F(6),及びG (7))
(III) 2位にアルコールを有し、4位のメチルアルコールに3-メチルクロトン酸がエステル結合しているもの(パルビフロロン H (8))
【0036】
抗腫瘍剤中のアビエタンジテルペン類は、それら天然物のパルビフロロン類への全合成又は生合成途中で生成するアビエタン骨格を有する中間体・前駆体であってもよい。又はそれら天然物のパルビフロロン類中のアビエタン骨格のA環・C環の側鎖を修飾・改変したり、B環・C環の不飽和基の導入・還元して酸化程度を変えたり、C環のフェノール性水酸基を修飾・酸化して酸化程度を変えたりしたものである。
【0037】
具体的には、アビエタンジテルペン類が、下記化学式(I)
【化6】
で表わされるものである。
【0038】
式(I)中、-R及び-Rの立体配置は、R・Sの何れであっても良い。具体的には、-R及び-Rは夫々同一又は異なり、-CH、-COOH、-COO-R(但しRは置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);-CH-OH;-CH-O-R(但しRは置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基(アクリル基又はメタクリル基)、3,3-ジメチルアクリル基(3-メチルクロトニル基ともいう))、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))、ハロゲノメチル基(但しハロゲノは単数又は複数のフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)である。
【0039】
式(I)中、-R及び-R4は、同一であっても異なっていてもよく、例えば水素原子、-OH、-O-R(但しRは置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又アラルキル基(例えばベンジル基);置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))、-NH、-NHR(但しRは置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))、-NRe’(但しR及びRe’は同一又は異なり、置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばフェニルアセチル基))、ハロゲノメチル基(但しハロゲノは単数又は複数のフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)である。
【0040】
式(I)中、-Rは、具体的には、水素原子、-OH、-O-R(但しRは置換基で単数若しくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);置換基で単数もしくは複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))である。
【0041】
式(I)中、-Rは-OH、-O-R(但しRは置換基で単数又は複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);置換基で単数又は複数置換されていてもよく、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))であってもよく、オキソ基(ケト-エノール互変異性により形成されるものを含む)を成していてもよい。
【0042】
式(I)中、-Rは、置換基で単数若しくは複数置換されていてもよい、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)である。
【0043】
式(I)中、破線は、各結合軸が互いに独立して単結合又は二重結合である。例えば破線は、アビエタン骨格のように各結合軸全て単結合とするものであってもよく、アビエタン骨格の縮合環びC環及び/又はB環の一部が不飽和結合(二重結合)となるものであってもよい。具体的には、破線は、前記式(II)のように、アビエタン骨格の縮合環のC環が、飽和シクロヘキサン環、ヒドロキシ-シクロヘキサジエノン環、シクロヘキサジエノジオン環、ジヒドロキシベンゼン基等のベンゼン環を含むように形成されるものであり、若しくはアビエタン骨格の縮合環B環が飽和シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエノン環を含むように形成されるものである。その位置は、特に限定されない。ケト-エノール互変異性により、不飽和結合(二重結合)の表示位置が変わるものも含み得る。
【0044】
式(I)中の前記-R~-R内で置換されていてもよい置換基は、夫々単数又は複数であって、-OH、-OR(但しRは炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))、-NH、-NHR(但しRは炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基);炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基))、-NRj’(但しR及びRj’は同一又は異なり、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基)又はアラルキル基(例えばベンジル基)、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基)、ハロゲノメチル基、又はハロゲン原子)である。
【0045】
この抗腫瘍剤は、前記アビエタンジテルペン類のA環の-Rと-Rと-Rと-R4とである官能基と、B環・C環の不飽和度(不飽和炭素数)、C環でのキノンと、キノン メチドとの互変異性又はケト/水酸基の酸化程度(ジケトン含有骨格、ヒドロキシケトン含有骨格、ジヒドロキシ含有骨格)が、各種腫瘍細胞株の増殖抑制効果、とりわけトリプルネガティブ乳癌に特有の選択的抗増殖活性すなわち抗腫瘍効果やその構造活性相関に大きく影響している。
【0046】
この抗腫瘍剤中、前記アビエタンジテルペン類は、薬学的に許容されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩であってもよく、塩酸塩・硫酸塩・硝酸塩・酢酸塩・クエン酸塩・酒石酸塩・メタンスルホン酸塩・トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩、アミノ酸との塩であってもよい。
【0047】
本発明の抗腫瘍剤は、医薬製剤として、ER、PR、HER2の何れかが陽性である乳癌にも、ER、PR、HER2の何れも陰性であるトリプルネガティブ乳癌にも有効である。そのため、これら乳癌の患者に投与して、この抗腫瘍剤を乳癌原発巣又はセンチネルリンパ節若しくは微小転移部位又は転移臓器に到達させて、乳癌の治療用剤、再発防止用剤、再燃防止用剤として、用いられる。
【0048】
この抗腫瘍剤は、前記アビエタンジテルペン類を、成分として含有し、必要に応じ、非毒性で不活性の薬学的に許容しうる賦形剤、例えば固体状、半固体状もしくは液状の希釈剤、分散剤、充填剤及び担体と混合することにより、製剤化されている。さらに安定剤、保存剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料防腐剤、媒質、生理食塩水、別な薬効を有する薬剤が添加剤として含まれていてもよい。
【0049】
この抗腫瘍剤の剤形は、例えばエリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏、懸濁剤、液剤、腸溶剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、ハップ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、ローション剤が挙げられる。液状媒体に溶解させてもよく懸濁させてもよく、固体状媒体に分散させたものであってもよい。
【0050】
この抗腫瘍剤は、経口で投与してもよく、静脈注射・点滴で投与してもよく、皮膚に塗布乃至貼付して経皮吸収させてもよい。
【0051】
この抗腫瘍剤中、抗腫瘍活性の有効成分としてアビエタンジテルペン類を、0.001~99質量%含んでいる。この抗腫瘍剤中、アビエタンジテルペン類を患者の体重に対し、0.001~100mg/kg含んでいることが好ましい。
【0052】
この抗腫瘍剤の投与量、用量は、抗腫瘍活性の有効成分としてアビエタンジテルペン類の有効性、投与の形態・経路、前立腺癌の進行ステージ、患者の体型・体重・年齢、併用する他の疾患の治療薬の種類や量に応じ、適宜選択される。その投与は、1日1~5回毎日投与してもよく、1日~14日おきに又は2~6週間おきに間欠的に投与してもよい。
【0053】
この抗腫瘍剤の医薬製剤としての効能は、以下のように説明される。この抗腫瘍剤は、ER、PR、HER2に陽性の患者の腫瘍細胞の増殖、A549、KB、KB-VINの腫瘍細胞株の増殖を抑制する。また、トリプルネガティブ乳癌の腫瘍細胞株であるMDA-MB-231や、HER2ネガティブ乳癌の腫瘍細胞株であるMCF-7についても、腫瘍細胞株の増殖を抑制する。
【0054】
この抗腫瘍剤の有効成分のアビエタンジテルペン類は、天然物のパルビフロロン A~H((1)~(8))を用いてもよくそれらの合成物を用いてもよく、またそれらパルビフロロン類の誘導体を合成して用いてもよく、合成中間体を用いてもよい。アビエタンジテルペン類は、ラセミ体、ジアステレオマー体若しくはエピマー、エナンチオマー体、又はそれらの混合物を用いてもよい。
【0055】
アビエタンジテルペン類の一種としてパルビフロロン F (6)の全合成は、下記逆合成解析に基いて、行った。
【0056】
【化7】
【0057】
パルビフロロン F (6)は、A549:肺癌の細胞株、KB:単離した鼻咽頭の上皮内類表皮癌の細胞株、KB-VIN:KB過剰発現したP-糖プロテインのMDR亜系の細胞株、MDA-MB-231:トリプルネガティブ乳癌の細胞株、MCF-7:乳癌の細胞株の何れに対してもIC50が約5μMと極めて低濃度で増殖を抑制した。
【0058】
さらに、パルビフロロン F (6)は、ラジカル除去性(EC50 0.13 mM)のような活性酸素消去能(DPPH)、antibacterial activity against リステリア菌(Listeria monocytogenes)に対する抗菌性(MIC 31.2 μg/mL)やヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する抗菌性 (MIC 95 μg/mL)、ベロ細胞株(Vero cell line)に対する抗増殖性(IC50 1.6 μg/mL)、及びチロシナーゼ阻害活性等の多岐の生物学的活性を示す。
【0059】
本発明に用いられる他のアビエタンジテルペン類についても、同様にして合成できる。例えば、パルビフロロン E (1)のエピマーやその誘導体は、下記のようにして合成した。
【0060】
【化8】
【0061】
これら他のアビエタンジテルペン類についても、A549、KB、KB-VIN、MDA-MB-231、MCF-7何れに対して、パルビフロロン F (6)と同程度のIC50を示し、極めて低濃度で増殖を抑制した。
【実施例
【0062】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
先ず、各種アビエタンジテルペン類を以下のようにして合成した。
【0064】
(合成実施例1:パルビフロロン Fの全合成)
パルビフロロン Fの全合成は、以下の通りである。
【0065】
【化9】
【0066】
(合成実施例1-1:2-(2,3-ジメトキシフェニル)プロパン-2-オールの合成)
ベラトロール(1.0 g, 7.2 mmol)のTHF(5 mL)溶液に、1.6 M n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(4.8 mL, 7.7 mmol)を-78 ℃で加えた。0℃で3時間撹拌した後、この溶液に、アセトンを-78℃で加えた。室温で12時間撹拌した後、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液にクエンチした。その反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(20:1 及び4:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、2-(2,3-ジメトキシフェニル)プロパン-2-オール(337 mg, 1.7 mmol)が24%収率(77% brsm)で黄色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ7.01 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 6.86 (dd, J = 7.8, 1.2 Hz, 1H), 4.31 (brs, 1H), 3.99 (s, 3H), 3.87 (s, 3H), 1.60 (s, 6H)
【0067】
(合成実施例1-2:3-イソプロピルベラトロールの合成)
2-(2,3-ジメトキシフェニル)プロパン-2-オール(864 mg, 4.4 mmol)とリン酸(1.1 g, 11 mmol)と5%パラジウム担持カーボンとのエタノール(9 mL)溶液を、水素雰囲気下、60℃で水素添加した。3時間撹拌後、反応混合物をセライトでろ過した。合わせた有機層を飽和NaHCO3と飽和食塩水とで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(5:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、3-イソプロピルベラトロール(727 mg, 4.0 mmol)が92%の収率で無色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.01 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.85 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 6.76 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.36 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 1.22 (d, J = 6.8 Hz, 6H).
【0068】
(合成実施例1-3:3’-イソプロピル-4’,5’-ジメトキシアセトフェノンの合成)
AlCl3 (645 mg, 4.8 mmol)の塩化メチレン(12 mL)懸濁液に、3-イソプロピルベラトロール(727 mg, 4.0 mmol)の塩化メチレン(4 mL)溶液、及びアセチルクロリド(348 mg, 4.4 mmol)の塩化メチレン(4 mL)溶液を-10℃で加えた。2時間撹拌後、反応混合物を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(10:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、3’-イソプロピル-4’,5’-ジメトキシアセトフェノン(857 mg, 3.9 mmol)が96%の収率で無色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.48 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.88 (s, 3H), 3.38 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 2.59 (s, 3H), 1.25 (d, J = 6.8 Hz, 6H).
【0069】
(合成実施例1-4:3-イソプロピル-4,5-ジメトキシ安息香酸の合成)
臭素(1.9 g, 23 mmol)をKOH (2.3 g, 35 mmol)の水(9mL)溶液に加え、その溶液に3’-イソプロピル-4’,5’-ジメトキシアセトフェノン(857 mg, 3.9 mmol)のジオキサン(20 mL)溶液を0℃で加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を110℃で30分間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、反応混合物に4% KOH (5 mL)水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出した。水層にNaHSO3 (100 mg)を加え、それを濃塩酸(2 mL)で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去したところ、3-イソプロピル-4,5-ジメトキシ安息香酸(843 mg, 3.8 mmol)を無色固形物として得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.67 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 3.37 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 1.24 (d, J = 6.8 Hz, 1H).
【0070】
(合成実施例1-5:(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)メタノール(15)の合成)
3-イソプロピル-4,5-ジメトキシ安息香酸(2.9 g, 13 mmol)のTHF (21 mL)溶液に、2.0 M BH3・SMe2のTHF溶液(10.5 mL, 21 mmol)を0℃で加え、反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を0℃下、水でクエンチしてから、ジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(3:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)メタノール(15) (2.4 g, 11 mmol)を87%の収率で無色油状物として得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 6.82 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 4.64 (s, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 3.35 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 1.67 (brs, 1H), 1.22 (d, J = 7.2 Hz, 6H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.7, 145.7, 142.5, 136.6, 116.8, 108.5, 65.6, 60.9, 55.7, 26.8, 23.5.
【0071】
(合成実施例1-6:3-イソプロピル-4,5-ジメトキシベンズアルデヒド(16)の合成)
(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)メタノール(15) (100 mg, 0.48 mmol)のDMSO (1.5 mL)溶液に、o-ヨードキシ安息香酸(160 mg, 0.57 mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した後、水でクエンチした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO3と飽和食塩水で乾燥した後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(5:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、3-イソプロピル-4,5-ジメトキシベンズアルデヒド(16) (97 mg, 0.47 mmol)を98%の収率で無色油状物として得た。
得られた化合物の分光学的データはその構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 9.90 (s, 1H), 7.39 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 3.39 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 1.25 (d, J = 7.2 Hz, 1H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 191.6, 153.2, 151.9, 142.9, 132.4, 123.0, 108.4, 61.0, 55.8, 26.9, 23.2;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C12H17O3 209.1178, found 209.1192.
【0072】
(合成実施例1-7:2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン(17)の合成)
3-イソプロピル-4,5-ジメトキシベンズアルデヒド(16) (97 mg, 0.47 mmol)の塩化メチレン(2.0 mL)溶液に、1,3プロパンジチオール(56 mg, 0.51 mmol)とBF3・OEt2 (20 mg, 0.14 mmol)とを加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、飽和NaHCO3水溶液でクエンチした。反応混合物を塩化メチレンで抽出した後、合わせた有機層を、飽和食塩水で洗浄後、無水芒硝で乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(5:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン(17) (140 mg, 0.47 mmol)が98%の収率で無色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 6.91 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 5.13 (s, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.32 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.07 (td, 2H, J = 12.4, 2.4 Hz), 2.92 (dt, 2H, J = 14.4, 4.4 Hz), 2.21-2.14 (m, 1H), 1.99-1.88 (m, 1H), 1.21 (d, 6H, J = 6.8 Hz);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.7, 146.2, 142.5, 134.6, 117.7, 109.0, 60.8, 55.7, 51.8, 32.2, 26.9, 25.1, 23.4;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C15H23O2S2 299.1139, found 299.1134; colorless prisms (hexane-EtOAc):
mp 83-84 ℃.
【0073】
(合成実施例1-8:(S,E)-3-{5-[2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン-2-イル]-3-メチルペンタ-3-エン-1-イル}-2,2-ジメトキシオキシラン(19)の合成)
Corey, E. J.ら、Tetrahedron. Lett. 1993, 34, 5995に記載の方法により、(3S)-2,3オキシドゲラニオール(18)を調製し精製することなく使用した([α]D 26.9 -13.6 (C=0.15, CH3OH); 1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 5.64 (m, 1H), 4.17 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 2.72 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.22 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 1.71 (s, 3H), 1.67 (m, 1H), 1.31 (s, 3H), 1.27 (s, 3H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 138.7, 123.9, 64.0, 59.3, 58.4, 36.2, 27.1, 24.8, 18.7, 16.3.)。
2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン(17) (2.4 g, 8.0 mmol)のTHF (25 mL)を-40℃に冷却し、そこへ1.6 M t-BuLiのペンタン溶液(6.3 mL, 8.8 mmol)を加え、反応混合物を1.5時間撹拌した。その反応混合物に(3S)-2,3オキシドゲラニオール(18) (2.0 g, 8.8 mmol)のTHF (8.0 mL)溶液を加え、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(10:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(S,E)-3-{5-[2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン-2-イル]-3-メチルペンタ-3-エン-1-イル}-2,2-ジメトキシオキシラン(19) (2.7 g, 6.1 mmol)が、76%の収率で無色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
[α]D 27.7 -0.59 (c 0.695, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 7.40 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 5.11 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 3.36 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 2.77-2.63 (complex, 7H), 2.11 (m, 1H), 2.03 (m, 1H), 1.98-1.86 (complex, 2H), 1.56 (m, 2H), 1.44 (s, 3H), 1.28 (s, 3H), 1.23 (s, 3H), 1.20 (d, 6H, J = 7.2 Hz);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.3, 144.9, 141.7, 138.0, 136.8, 119.3, 118.2, 110.4, 64.0, 60.8, 60.0, 58.3, 55.8, 43.3, 36.4, 27.6, 27.3, 26.8, 25.1, 24.9, 23.6, 18.7, 16.3;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C25H39O3S2 451.2341, found 451.2353.
【0074】
(合成実施例1-9:(S,E)-3-[6-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-メチルヘキサ-3-エン-1-イル]-2,2-ジメトキシオキシラン(4)の合成)
(S,E)-3-{5-[2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-ジチアン-2-イル]-3-メチルペンタ-3-エン-1-イル}-2,2-ジメトキシオキシラン(19) (105 mg, 0.23 mmol)のトルエン(2.0 mL)に、AIBN (3.8 mg, 0.023 mmol)とBu3SnH (205 mg, 0.70 mmol)とを加え、反応混合物を90℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をヘキサン-酢酸エチル(10:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(S,E)-3-[6-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-メチルヘキサ-3-エン-1-イル]-2,2-ジメトキシオキシラン (14) (70 mg, 0.20 mmol)が86%の収率で無色油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
[α]D 26.1 -3.78 (c 1.185, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.65 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 5.24 (m, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.32 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.70 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.59 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.31 (dt, J = 7.8, 7.8 Hz, 2H), 2.16 (m, 1H), 2.09 (m, 1H), 1.63 (m, 2H), 1.59 (s, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.20 (d, J = 6.6 Hz, 6H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.2, 144.2, 142.0, 138.0, 134.8, 124.3, 118.0, 109.9, 64.2, 60.9, 58.3, 55.6, 36.3, 36.1, 30.0, 27.5, 26.7, 24.9, 23.6, 18.7, 16.0;
HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ calcd for C22H34NaO3 369.2406, found 369.2409.
【0075】
【化10】
【0076】
(合成実施例1-10:(2S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-2-オール (20)及び(1R,4S)-2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェネチル)-1,3,3-トリメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ペンタン(22)の合成)
(S,E)-3-[6-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-メチルヘキサ-3-エン-1-イル]-2,2-ジメトキシオキシラン (14) (104 mg, 0.30 mmol)の塩化メチレン(3 mL)溶液に、1.0 M SnCl4の塩化メチレン溶液(0.36 mL, 0.36 mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、塩化メチレンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水芒硝で乾燥してから、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(10:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(2S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-2-オール (20) (60 mg, 0.17 mmol)を58%の収率で無色固形物として、また(1R,4S)-2-(3-イソプロピル-4,5-ジメトキシフェネチル)-1,3,3-トリメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ペンタン(22)を5%の収率で無色油状物として得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
20: [α]D 26.4 +68.5 (c 1.000, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.64 (s, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.30 (m, 1H), 3.23 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 3.07 (dt, J = 13.2, 3.6 Hz, 1H), 2.84 (ddd, J = 16.8, 6.0, 1.8 Hz, 1H), 2.80 (ddd, J = 16.8, 12.0, 6.0 Hz, 1H), 1.82 (m, 1H), 1.78-1.73 (complex, 2H), 1.60 (ddd, J = 18.6, 12.0, 6.0 Hz, 1H), 1.44 (m, 1H), 1.29 (s, 3H), 1.26 (dd, J = 12.0, 1.0 Hz, 1H), 1.21 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.17 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.07 (s, 3H), 0.89 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.2, 149.0, 140.0, 139.4, 132.1, 121.4, 78.6, 60.1, 59.8, 52.1, 39.4, 39.4, 35.4, 32.6, 28.6, 28.3, 26.5, 23.7, 23.3, 21.5, 19.0, 15.8;
HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ calcd for C22H34NaO3 369.2406, found 369.2409;
colorless prisms (hexane-EtOAc):
mp 148-149 ℃.
22: 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 6.63 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.57 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 3.75 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 3.33 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 2.59 (ddd, J = 14.0, 10.0, 6.4 Hz, 1H), 2.48 (ddd, J = 14.0, 10.0, 6.4 Hz, 1H), 1.92 (ddd, J = 12.8, 8.8, 4.8 Hz, 1H), 1.74-1.58 (complex, 3H), 1.53-1.42 (complex, 2H), 1.36 (s, 3H), 1.27 (dd, J = 8.0, 6.0 Hz, 1H), 1.21 (d, J = 7.2 Hz, 6H), 1.09 (s, 6H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 152.3, 144.2, 142.0, 138.4, 117.8, 109.6, 86.7, 86.1, 60.9, 55.7, 55.4, 45.3, 39.0, 36.2, 29.8, 26.7, 26.2, 25.7, 23.6, 23.4;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C22H35O3 347.2586, found 347.2580.
【0077】
(合成実施例1-11:(4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナントレン(23)の合成)
(2S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-2-オール (20) (250 mg, 0.72mmol) のピリジン(3.3 mL)に、POCl3 (0.33 mL, 3.6 mmol)を加え、反応混合物を30分間還流した。反応混合物を室温にまで冷却した後、氷冷した1 N HClに注ぎ込んでから、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-トルエン (15:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナントレン(23) (223 mg, 0.68 mmol)を94%の収率で無色固形物として得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
[α]D 27.7 +174.2 (c 1.035, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.65 (s, 1H), 5.56 (ddd, J = 10.2, 6.0, 1.8 Hz, 1H), 5.46 (dd, J = 10.2, 1.8 Hz, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.24 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 18.0, 6.0 Hz, 1H), 2.85-2.76 (m, 2H), 2.04 (d, J = 18.0 Hz, 1H), 1.79 (m, 1H), 1.57 (m, 1H), 1.30 (s, 3H), 1.22 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.03 (s, 3H), 0.99 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.6, 149.0, 140.1, 138.0, 137.2, 132.5, 122.7, 121.3, 60.0, 59.8, 49.9, 38.1, 35.2, 32.3, 32.3, 26.5, 23.7, 23.4, 22.6, 21.0, 20.1;
HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ calcd for C22H32NaO2 351.2300, found 351.2284;
colorless needles (hexane-EtOAc):
mp 96-97 ℃.
【0078】
(合成実施例1-12:(3S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-3-オール(24)及び(2R,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-2-オール(25)の合成)
(4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナントレン(23) (163 mg, 0.50 mmol)に0.5 M 9-BBNのTHF溶液(13.9 mL, 7.0 mmol)を加えた後、反応混合物を4時間還流した。反応混合物を氷浴で冷却後、エタノール(13.9 mL)、7 M NaOH 水溶液 (13.9 mL) 及び30% H2O2 (13.9 mL)を加えた後、反応混合物を50℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温にまで冷却してから、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(10:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(3S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-3-オール(24) (91 mg, 0.26 mmol)を53%の収率で無色固形物として、また(2R,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-2-オール(25) (49 mg, 0.14 mmol)を29%の収率で無色固形物として、得た。
得られた化合物の分光学的データは、それらの構造を支持する。
24: [α]D 25.8 +66.4 (c 0.985, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.64 (s, 1H), 4.03 (m, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.43 (ddd, J = 12.0, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 3.23 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.85-2.81 (m, 2H), 1.86 (ddd, J = 12.0, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.82 (m, 1H), 1.59-1.52 (m, 1H), 1.32 (s, 3H, CH3), 1.30-1.24 (complex, 2H), 1.21 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.02 (s, 3H), 0.97 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 152.1, 148.9, 140.1, 139.1, 131.9, 121.4, 65.6, 60.1, 59.8, 52.0, 50.5, 46.6, 41.0, 34.7, 34.0, 32.3, 26.5, 23.6, 23.3, 22.8, 22.4, 18.9;
HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ calcd for C22H34NaO3 369.2406, found 369.2409;
colorless prisms (hexane-EtOAc):
mp 143-144 ℃.
25: 1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.63 (s, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.49 (m, 1H), 3.22 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.84-2.80 (complex, 3H), 2.09 (m, 1H), 1.77 (dt, J = 13.8, 4.2 Hz, 1H), 1.74-1.66 (complex, 3H), 1.62-1.55 (m, 1H), 1.43 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 1.31 (s, 3H), 1.21 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.17 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.03 (s, 3H), 0.96 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 152.1, 148.9, 139.9, 139.8, 132.1, 121.4, 75.4, 60.1, 59.8, 45.7, 39.3, 38.0, 32.3, 30.4, 28.4, 26.5, 26.3, 23.7, 23.3, 22.5, 21.7, 18.9;
HRMS (FAB) m/z: [M+Na]+ calcd for C22H34NaO3 369.2406,
found 369.2422;
colorless needles (hexane-EtOAc):
mp 119-120 ℃.
【0079】
(合成実施例1-13:(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (13)の合成)
氷冷したNaH (580 mg, 14.5 mmol)のDMF (8.0 mL)懸濁液に、EtSH (2.3 mL, 30.3 mmol)と(3S,4aS)-7-イソプロピル-5,6-ジメトキシ-1,1,4a-トリメチル-1,2,3,4,4a,9,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-3-オール(24) (420 mg, 1.2 mmol)のDMF (8.0 mL)の溶液とを加え、5時間還流した。反応混合物を室温にまで冷却し後、反応混合物にジエチルエーテルエーテル(20ml)、飽和食塩水、1 N HCl.を加えた。有機層を飽和食塩水(20 mL)で5回洗浄し、無水芒硝で乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(3:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (13) (382 mg, 1.2 mmol)が99%の収率で無色固形物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
[α]D 26.3 +56.0 (c 0.92, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.43 (s, 1H), 6.05 (brs, 1H), 5.25 (brs, 1H), 4.06 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.60 (ddd, J = 12.0, 3.6, 1.8 Hz, 1H), 3.23 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.81-2.79 (m, 2H), 1.84 (ddd, J = 12.0, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.80 (m, 1H), 1.68 (brs, 1H), 1.54 (m, 1H), 1.34 (s, 3H), 1.28 (dd, J = 12.0, 1.8 Hz, 1H), 1.23 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.21 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.16 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.00 (s, 3H), 0.95 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 143.5, 138.0, 132.5, 132.1, 129.5, 117.1, 65.9, 52.4, 50.4, 45.4, 40.5, 34.7, 33.9, 32.3, 27.1, 22.8, 22.6, 20.9, 18.9;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H31O3 319.2273, found 319.2280.
【0080】
【化11】
【0081】
(合成実施例1-14:(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(26)の合成)
(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (13) (90 mg, 0.28 mmol)の塩化メチレン(7 mL)溶液に、Ag2O (118 mg, 0.51 mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌してから、セライトでろ過し、塩化メチレン及び酢酸エチルで洗浄した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。得られた残渣をヘキサン-酢酸エチル(5:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(26) (76 mg, 0.24 mmol)が85%の収率で黄色固形物として得られた。
(得られた化合物の分光学的データはその構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.40 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 4.01 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.13 (ddd, J = 12.0, 3.6, 2.4 Hz, 1H), 2.90 (double sept, J = 6.6, 1.2 Hz, 1H), 2.52 (dd, J = 20.4, 5.4 Hz, 1H), 2.44 (ddd, J = 20.4, 10.8, 7.2 Hz, 1H), 1.89-1.84 (complex, 2H), 1.54 (m, 1H), 1.44 (brs, 1H), 1.26 (s, 3H), 1.18-1.13 (complex, 2H), 1.10 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.09 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.01 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.00 (s, 3H), 0.93 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 180.9, 179.9, 148.0, 147.0, 143.7, 137.5, 64.9, 50.7, 50.0, 45.1, 39.2, 34.3, 33.7, 33.6, 26.9, 22.5, 21.4, 21.3, 20.9, 17.7;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H29O3 317.2117, found 317.2119;
dark brown prisms (hexane-EtOAc):
mp 153-154 ℃.
【0082】
(合成実施例1-15:(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (27)の合成)
(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(26) (209 mg, 0.66 mmol)のトルエン(25 mL)溶液を24時間還流した。室温まで冷却した後、反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣をヘキサン-酢酸エチル(3:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (27) (197 mg, 0.62 mmol)が95%の収率で黄色固形物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 7.47 (s, 1H), 6.81 (dd, J = 6.6, 3.0 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 4.00 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.37 (ddd, J = 13.2, 3.6, 2.4 Hz, 1H), 3.07 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 2.60 (ddd, J = 20.4, 6.6, 3.6 Hz, 1H), 2.39 (ddd, J = 20.4, 12.0, 3.0 Hz, 1H), 1.86 (ddd, J = 12.0, 3.6, 2.4 Hz, 1H,), 1.58 (dd, J = 12.0, 3.6 Hz, 1H), 1.54 (brs, 1H), 1.53 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.24 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.22 (s, 3H), 1.15 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.14 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.02 (s, 3H), 1.00 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 181.3, 148.3, 143.8, 140.7, 136.0, 131.4, 126.2, 64.9, 50.3, 49.8, 46.0, 40.0, 34.6, 33.3, 26.6, 25.6, 23.0, 21.8, 21.4, 19.4;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H29O3 317.2117, found 317.2119.
【0083】
(合成実施例1-16:(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (28)の合成)
(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (27) (52 mg, 0.16 mmol)を115℃で4時間加熱した。室温まで冷却した後、残渣をヘキサン-酢酸エチル(2:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (28) (30 mg, 0.094 mmol)が58%の収率で無色油状物として得られた。この化合物は不安定だったので直ちに次の反応に用いた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.50 (s, 1H), 6.45 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.84 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.78 (brs, 1H), 5.20 (brs, 1H), 4.08 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.31 (m, 1H), 3.02 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.20 (brs, 1H), 1.88 (ddd, J = 12.0, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.79 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.62 (s, 3H), 1.27 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.23 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.07 (s, 3H), 1.03 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 141.6, 141.1, 132.2, 130.3, 128.8, 127.5, 126.4, 116.7, 66.0, 51.0, 49.5, 45.7, 42.0, 33.8, 32.9, 27.0, 23.3, 22.8, 22.4, 19.4;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H29O3 317.2117, found 317.2119.
【0084】
(合成実施例1-17:(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン (29)の合成)
(4bS,6S)-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4,6-トリオール (28) (30 mg, 0.094 mmol)の塩化メチレン(5 mL)溶液に、Ag2O (39 mg, 0.17 mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した後、セライトでろ過し、塩化メチレンと酢酸エチルとで洗浄した。合わせた有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をヘキサン-酢酸エチル(2:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン (29) (28 mg, 0.090 mmol)が95%の収率で赤色硬油状物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.58 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.55 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1H), 6.27 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1H), 4.01 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.24 (ddd, J = 12.6, 3.6, 2.4 Hz, 1H), 3.02 (double sept, J = 7.2, 1.2 Hz, 1H), 2.14 (t, J = 3.0 Hz, 1H), 1.90 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.61 (brs, 1H), 1.27 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.20 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.12 (d, J = 7.2 Hz, 6H), 1.06 (s, 3H), 1.05 (s, 3H), 1.04 (s, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 181.6, 181.4, 148.2, 141.4, 141.2, 138.4, 136.0, 127.3, 64.8, 51.9, 49.1, 44.1, 39.6, 33.5, 32.6, 27.1, 23.8, 21.5, 21.4, 16.4;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H27O3 315.1960, found 315.1947.
【0085】
(合成実施例1-18:(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (12)の合成)
(4bS,6S)-6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン (29) (27 mg, 0.085 mmol)のトルエン(5 mL)溶液を5時間還流した。反応混合物を室温にまで冷却し、減圧濃縮した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(8:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (12) (18 mg, 0.085 mmol)が68%の収率で橙色固形物として得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 7.77 (brs, 1H), 6.93 (s, 1H), 6.72 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.37 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.30 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.68 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 3.16 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 1.97 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.58 (s, 3H), 1.47 (t, J = 12.6 Hz, 1H), 1.38 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.34 (s, 3H), 1.28 (s, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 3H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 178.4, 164.2, 146.3, 141.6, 138.1, 133.2, 127.5, 126.8, 118.5, 64.2, 49.1, 44.0, 42.7, 38.4, 33.1, 30.8, 26.9, 25.6, 21.9, 21.6;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C20H27O3 315.1960, found 315.1968.
【0086】
(合成実施例1-19:3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)安息香酸(30)の合成)
プロトカテク酸(1.0 g, 6.5 mmol)のピリジン(10 mL)の溶液に、ベンゾイルクロライド(2.0 g, 14.3 mmol)を加え、反応混合物を2時間還流した。反応混合物を室温にまで冷却した後、1 N HClでクエンチしてから、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(1:0~1:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、得られた無色固形物をアセトンから再結晶したところ、3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)安息香酸 (30)が20%の収率で得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.16-8.13 (complex, 2H), 8.07 (m, 4H), 7.59-7.54 (complex, 3H), 7.43-7.37 (complex, 4H);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6):δ 166.0, 163.5, 163.5, 145.7, 142.1, 134.5, 134.4, 129.7, 129.7, 129.0, 129.0, 128.1, 127.9, 127.7, 124.8, 124.1;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C21H15O6 363.0869, found 363.0862.
【0087】
(合成実施例1-20:4-({[(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル]オキシ}カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート(21)及び(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル ベンゾエート(22)の合成)
トリエチルアミン(0.015 mL, 0.11 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.4 mg, 0.003 mmol)、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(14 mg, 0.04 mmol) 及び3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)安息香酸 (30) (14 mg, 0.04 mmol)を塩化メチレン(0.2 mL)に溶解し、反応混合物を室温で20分間撹拌した。反応混合物に、(4bS,6S)-4,6-ジヒドロキシ-2-イソプロピル-4b,8,8-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン (12) (10 mg, 0.033 mmol)の塩化メチレン0.25mL×3回の溶液を加え、室温で6時間撹拌した後、飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(30:1、10:1及び3:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、4-({[(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル]オキシ}カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート(31) (5.0 mg, 0.008 mmol)を24%の収率で橙色硬油状物として、また (3S,4aS S)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル ベンゾエート(32) (4.1 mg, 0.010 mmol)を31%の収率で茶色硬油状物として得た。
得られた化合物の分光学的データは、それらの構造を支持する。
31:1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 8.07-8.04 (complex, 6H), 7.76 (brs, 1H), 7.57-7.54 (m, 2H), 7.49 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.40-7.36 (complex, 4H), 6.94 (s, 1H), 6.74 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.40 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.66 (dddd, J = 10.8, 10.8, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.80 (ddd, J = 13.2, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 3.16 (sept, J = 6.6 Hz, 1H), 2.16 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.78 (t, J = 12.6 Hz, 1H), 1.67 (s, 3H), 1.62 (t, J = 12.6 Hz, 1H), 1.45 (s, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.19 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 1.17 (d, J = 6.6 Hz, 1H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3):δ 178.4, 164.6, 164.1, 163.7, 163.4, 146.5, 146.4, 142.4, 141.7, 137.8, 133.9, 133.8, 133.2, 130.2, 129.2, 128.5, 128.4, 128.4, 128.3, 127.6, 126.3, 125.1, 123.6, 118.6, 68.8, 45.0, 43.7, 38.6, 38.3, 33.1, 30.8, 26.9, 25.6, 21.8, 21.6;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C41H39O8 659.2645, found 659.2621.
32:1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.04 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 2H), 7.76 (brs, 1H), 7.55 (tt, J = 7.6, 2.0 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 6.94 (s, 1H), 6.75 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.65 (dddd, J = 11.2, 11.2, 4.4, 4.4 Hz, 1H), 3.79 (ddd, J = 12.8, 4.4, 2.4 Hz, 1H), 3.16 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 2.16 (ddd, J = 12.4, 4.0, 2.0 Hz, 1H), 1.78 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.67 (s, 3H), 1.62 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.45 (s, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 1H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 178.4, 166.1, 163.6, 146.4, 141.7, 137.9, 133.2, 132.8, 130.5, 129.6, 128.3, 127.6, 126.4, 118.6, 68.2, 45.1, 43.7, 38.6, 38.3, 33.1, 30.7, 26.9, 25.6, 21.8, 21.6;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C27H31O4 419.2222, found 419.2227.
【0088】
(合成実施例1-21:パルビフロロン F:(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル 3,4-ジヒドロキシベンゾエート(6)の合成)
4-({[(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル]オキシ}カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート(31) (5.0 mg, 0.008 mmol)のベンゼン(0.1 mL)溶液に、n-ブチルアミン(0.008 mL, 0.076 mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した後、飽和NH4Clでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサン-酢酸エチル(3:1)の流出溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、パルビフロロン F:(3S,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,1,4a-トリメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-3-イル 3,4-ジヒドロキシベンゾエート(6) (2.3 mg, 0.005 mmol)が68%の収率で橙色硬油状物として得られた。更なる精製として、HPLC (カラム: InertSustain C18, 3 μm, 4.0 × 150 mm; 流速: 0.5 mL/min; 流出溶媒: メタノール;測定波長: 280 nm)を行った。
得られた化合物の分光学的データは、天然物のデータと比較し、パルビフロロン F (6)の構造であることを支持する。
全合成パルビフロロン F (6):1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 7.60 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.57 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 6.90 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 5.58 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.76 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 3.16 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 2.13 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.74 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.65 (s, 3H), 1.58 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.43 (s, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 1H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 178.4, 165.8, 164.1, 148.4, 146.4, 142.8, 141.7, 138.4, 133.4, 127.5, 126.7, 123.9, 123.2, 118.6, 116.6, 114.8, 68.0, 45.1, 43.8, 38.6, 38.3, 33.1, 30.7, 26.9, 25.6, 21.8, 21.7;
HRMS (FAB) m/z: [M+H]+ calcd for C27H31O6 451.2121, found 415.2125;
Purity (HPLC): 95%.
天然由来Parvifloron F (6): [α]D 19.7 -27.6 (c 0.015, CHCl3);
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 7.59 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.57 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H), 6.95 (s, 1H), 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 5.59 (dddd, J = 11.4, 11.4, 4.2, 4.2 Hz, 1H), 3.76 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 3.16 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 2.13 (ddd, J = 12.6, 4.2, 2.4 Hz, 1H), 1.74 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.65 (s, 3H), 1.58 (t, J = 12.0 Hz, 1H), 1.43 (s, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 1H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 178.3, 166.0, 164.4, 148.6, 146.4, 142.9, 141.7, 138.7, 133.9, 127.5, 126.9, 123.9, 123.0, 118.7, 116.6, 114.8, 68.1, 45.1, 43.8, 38.5, 38.3, 33.1, 30.7, 26.9, 25.5, 21.9, 21.7.
【0089】
(合成実施例2:パルビフロロン F以外のアビエタンジテルペン類の合成)
パルビフロロン F以外のアビエタンジテルペン類の合成は、以下の通りである。
【0090】
【化12】
【0091】
(合成実施例2-1:メチル アビエタジエン-18-オエート(45)の合成)
アビエチン酸(39)(8.11 g, 26.8 mmol)のアセトン(100mL)溶液にK2CO3 (11.1 g, 80.3 mmol) とmethyl iodide (5.0 ml, 80.3 mmol)を加え、窒素雰囲気下22時間還流した。反応液に10% NH4Cl (25.0 ml)水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:19)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル アビエタジエン-18-オエート(45)を(7.34 g, 23.2 mmol, 87%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.82 (s, 3H), 1.00 (d, J = 3.6 Hz, 3H), 1.02 (d, J = 4.0 Hz, 3H), 1.11-1.23 (m, 2H), 1.27 (s, 3H), 1.55-1.62 (m, 3H), 1.70-1.83 (m, 3H), 1.86-1.90 (m, 1H), 1.93-1.96 (m, 1H), 2.01-2.10 (m, 4H), 2.18-2.25 (m, 1H), 3.63 (s, 3H), 5.36-5.37 (m, 1H), 5.77 (s, 1H).
【0092】
(合成実施例2-2:メチル 13β,14β-ジヒドロヒドロキシアビエタ-7-エン-18-オエート(46)の合成)
メチル アビエタジエン-18-オエート(45)(568.2 mg, 1.80 mmol)のt-BuOH (5.0 ml)溶液に、トリメチルアミン N-オキサイド ジハイドレート (285.0 mg, 2.56 mmol), ピリジン(0.20 ml, 2.48 mmol), 水 (0.30 ml, 16.7 mmol),及び マイクロカプセル化酸化オスミウム(VIII)(Microencapsulated-Osmium(VIII) Oxide)(135.0 mg, 0.053 mmol) を加え、窒素雰囲気下66時間還流した。反応液を濾過後、残渣をメタノールで洗浄し、濾液を減圧留去した。残渣を20% NaHSO3 と酢酸エチルで分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:10)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 13β,14β-ジヒドロヒドロキシアビエタ-7-エン-18-オエート(46) 356.1mg, 1.02 mmol, 57%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ0.87 (s, 3H), 0.92 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.8Hz, 3H), 1.09-1.20 (m, 1H), 1.26 (s, 3H), 1.31-1.42 (m, 1H), 1.45 (s, 1H), 1.52-1.63 (m, 6H), 1.71-1.78 (m, 4H), 1.86-1.92 (m, 2H), 1.98-2.05 (m, 1H), 2.13-2.20 (m, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.96-3.97 (m, 1H), 5.88-5.90 (m, 1H).
【0093】
(合成実施例2-3:メチル 14β-アセトキシ-13β-ヒドロキシ-アビエタ-7-エン-18-オエート(47)の合成)
メチル 13β,14β-ジヒドロヒドロキシアビエタ-7-エン-18-オエート(46) (1.3479 g, 3.85 mmol)のピリジン (10.0 ml)溶液に無水酢酸 (3.70 ml, 39.1 mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で3時間反応した。0 ℃で反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:5)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチル 14β-アセトキシ-13β-ヒドロキシ-アビエタ-7-エン-18-オエート(47)(1.3911 g, 3.54 mmol, 92%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.86 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 0.89 (s, 3H), 0.95 (d, J = 6.8Hz, 3H), 1.09-1.17 (m, 1H), 1.25 (s, 3H), 1.31-1.43 (m, 1H), 1.52-1.63 (m, 6H), 1.74-2.04 (m, 6H), 2.18 (s, 3H), 3.64 (s, 3H), 5,34 (s, 1H), 5.38-5.40 (m, 1H)
【0094】
(合成実施例2-4:メチル 12β-ヒドロキシアビエテート(48)の合成)
メチル 14β-アセトキシ-13β-ヒドロキシ-アビエタ-7-エン-18-オエート(47) (106.0 mg, 0.27 mmol)の無水塩化メチレン(2.0 ml)溶液にトリエチルアミン (0.23 ml, 1.65 mmol)と塩化チオニル(0.06 ml, 0.83 mmol)を加え、窒素雰囲気下-78 ℃で20分撹拌した。反応液に5% NaHCO3 (4.0 ml)を加え、塩化メチレンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:20)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12β-ヒドロキシアビエテート(48) (50.2 mg, 0.15 mmol, 56%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.81 (s, 3H), 1.07 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.10 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.18-1.22 (m, 1H), 1.26 (s, 3H), 1.31-1.35 (m, 1H), 1.56-1.64 (m, 4H), 1.76-1.92 (m, 4H), 2.05-2.18 (m, 2H), 2.30-2.33 (m, 1H), 2.42 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H), 4.28 (s, 1H), 5.53 (t, J = 2.8 Hz, 1H), 5.84 (s, 1H)
【0095】
(合成実施例2-5:メチル 12-オキソアビエテート(40)の合成)
メチル 12β-ヒドロキシアビエテート(48) (143.8 mg, 0.43 mmol)の無水塩化メチレン(4.0 ml)溶液にピリジン (2.4 ml)、モレキュラーシーブ4Å(2.0 g)とニクロム酸ピリジニウム(327.6 mg, 0.87 mmol)を加え、室温で45分撹拌した。反応液にCH2Cl2を加え固形物をシリカゲルとセライトろ過後、ろ液の溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:10)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12-オキソアビエテート(40)(81.9 mg, 0.25 mmol, 58%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3):δ 0.88 (s, 3H, CH3), 1.02 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.05 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.25 (s, 1H), 1.28 (s, 3H), 1.58-1.60 (m, 1H), 1.64-1.67 (m, 1H), 1.73-1.79 (m, 2H), 1.90-1.93 (m, 1H), 2.05-2.08 (m, 1H), 2.14-2.26 (m, 2H), 2.44-2.52 (m, 2H), 2.90 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 6.00 (t, J = 2.5 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H)
【0096】
(合成実施例2-6:メチル 12-ヒドロキシデヒドロアビエテート(41)及びメチル 12-アセトキシデヒドロアビエテート(49)の合成)
メチル 12-オキソアビエテート(40)(300.0 mg, 0.15 mmol)に2% の濃塩酸/酢酸溶液(5.0 ml)を加え3時間還流した。反応液を酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:30)シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12-ヒドロキシデヒドロアビエテート(41) (125.6 mg, 0.38 mmol, 42%) と12-アセトキシデヒドロアビエテート(49) (131.5 mg, 0.35 mmol, 39%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
41 : 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.21 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.24 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.34-1.51 (m, 2H), 1.58-1.83 (m, 6H), 2.18-2.23 (m, 2H), 2.31 (s, 1H), 2.79-2.83 (m, 2H), 3.10 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 4.46 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 6.83 (s, 1H);
49 : 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.17 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.20 (s, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.38-1.42 (m, 1H), 1.47-1.54 (m, 1H), 1.62-1.88 (m, 5H), 2.17-2.25 (m, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.85-2.94 (m, 3H), 3.66 (s, 3H), 6.82 (s, 1H), 6.94 (s, 1H)
【0097】
(合成実施例2-7:メチル 12-アセトキシデヒドロアビエテート(49)からメチル 12-ヒドロキシデヒドロアビエテート(41)への加水分解)
メチル 12-アセトキシデヒドロアビエテート(49) (75.8 mg, 0.20 mmol)のメタノール-水(20 : 1、2.0 ml)溶液にNaHCO3 (177.6 mg, 2.11 mmol)を加え室温で12.5時間撹拌した。反応液に10% NH4Cl (10.0 ml)を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:10)シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12-ヒドロキシデヒドロアビエテート(41) (62.9 mg, 0.19 mmol, 95%)を得た。
【0098】
(合成実施例2-8:メチル 12-(3-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(51)の合成)
メチル 12-ヒドロキシデヒドロアビエテート(41) (122.4 mg, 0.37 mmol)の無水塩化メチレン(10.0ml)溶液にm-クロロ過酸化ベンゾイルCBPO (161.7 mg, 0.52 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で23時間撹拌した。反応液に20% Na2S2O3 (10.0 ml)水溶液を加え塩化メチレンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をヘキサン:塩化メチレン(1:2)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12-(3-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(51)(114.7 mg, 0.24 mmol, 64%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.23-1.26 (m, 1H), 1.29 (s, 3H), 1.31-1.33 (m, 1H), 1.38 (s, 3H), 1.40-1.47 (m, 2H), 1.59-1.64 (m, 1H), 1.71-1.80 (m, 3H), 2.24-2.31 (m, 1H), 2.78-2.98 (m, 4H), 3.12-3.17 (m, 1H), 3.69 (s, 3H), 5.09 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.50 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.64-7.67 (m, 1H), 8.12 (br d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.21 (t, J = 1.6 Hz, 1H);
13C NMR (600 MHz, CDCl3):δ 16.9, 18.6, 20.3, 22.1, 22.9, 23.1, 27.6, 32.2, 35.7, 36.5, 38.9, 46.8, 48.4, 51.9, 118.8, 128.5, 130.2, 130.4, 134.1, 134.2, 134.6, 135.1, 135.7, 137.6, 145.5, 163.9, 179.3;
HRMS (m/z): [M]+ calcd for C28H33ClO5, 484.2017; found, 484.2010
【0099】
(合成実施例2-9:11,12-ジヒドロキシデヒドロアビアチノール(42)の合成)
メチル 12-(3-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(51) (110.4 mg, 0.23 mmol)の無水テトラヒドロフラン(3.0 ml)溶液に1M リチウムアルミニウムヒドリドのテトラヒドロフラン溶液 (1.60 ml, 1.60 mmol)を0 ℃で加えアルゴン雰囲気下室温で4時間撹拌した。反応液に1N HCl (3.0 ml)を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣をヘキサン:アセトン(7:1)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し11,12-ジヒドロキシデヒドロアビアチノール(42) (65.8 mg, 0.21 mmol, 90%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.88 (s, 3H), 1.23 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.25 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.27-1.30 (m, 1H), 1.33-1.36 (m, 1H), 1.38 (s, 3H), 1.44-1.53 (m, 2H), 1.57-1.65 (m, 3H), 1.67-1.81 (m, 2H), 2.78-2.83 (m, 2H), 2.97 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 3.07-3.12 (m, 1H), 3.21 (dd, J = 11.2, 6.4 Hz, 1H), 3.50 (dd, J = 10.4, 6.0 Hz, 1H), 4.52 (s, 1H), 5.68 (s, 1H), 6.43 (s, 1H)
【0100】
(合成実施例2-10:(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(52)の合成)
11,12-ジヒドロキシデヒドロアビアチノール(42) (37.5 mg, 0.12 mmol)の無水塩化メチレン(3.0 ml)溶液に酸化銀(I)(50.1 mg, 0.22 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で40分撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をヘキサン:酢酸エチル(1:5)シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(52) (27.3 mg, 0.086 mmol, 72%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.83 (s, 3H), 1.08 (br s, 3H), 1.10 (br s 3H), 1.27 (s, 3H), 1.31-1.34 (m, 2H), 1.39-1.51 (m, 3H), 1.56-1.62 (m, 1H), 1.65-1.83 (m, 2H), 2.44-2.46 (m, 2H), 2.71-2.76 (m, 1H), 2.86-2.93 (m, 1H), 3.16 (dd, J = 10.4, 5.6 Hz, 1H), 3.47 (dd, J = 11.2, 6.4 Hz, 1H), 6.39 (s, 1H)
【0101】
(合成実施例2-11:(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン(53)の合成)
(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a,9,10-オクタヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(52)(25.9 mg, 0.082 mmol)の無水トルエン(2.0 ml)溶液を、アルゴン雰囲気下2時間還流した。反応液減圧下濃縮後、残渣を酢酸エチル-ヘキサン(1 : 10)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン(53)(25.0 mg, 0.079 mmol, 96%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.93 (s, 3H), 1.13 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.22 (s, 3H), 1.30-1.35 (m, 2H), 1.48-1.60 (m, 2H), 1.66-1.78 (m, 2H), 1.93 (dd, J = 4.0, 12.0 Hz, 1H), 2.36-2.45 (m, 1H), 2.51-2.59 (m, 1H), 3.00-3.10 (m, 2H), 3.19 (dd, J = 6.0, 10.8 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 6.0, 10.8 Hz, 1H), 6.78-6.80 (m, 2H), 7.48 (s, 1H)
【0102】
(合成実施例2-12:(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオール(43)及び (4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(54)の合成)
(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8,8a,9-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン(53) (27.9 mg, 0.088 mmol) をアルゴン雰囲気下115 ℃ で3時間加熱した後、室温に戻し、無水塩化メチレン(2.0ml)と酸化銀(I)(36.9 mg, 0.16 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で1時間撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチル-ヘキサン(1 : 7から1 : 0へ)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(54) (17.1 mg, 0.054 mmol, 62%, 2 steps from 23)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
53:1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.00 (s, 3H), 1.19 (s, 3H), 1.22 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.26 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.29-1.52 (m, 2H), 1.74-1.95 (m, 4H), 2.48 (m, 1H), 2.84 (br d, J = 12.4 Hz, 1H), 3.00-3.07 (m, 1H), 3.26 (dd, J = 6.8, 10.8 Hz, 1H), 3.51 (dd, J = 5.6, 11.2 Hz, 1H), 5.09 (s, 1H), 5.60 (s, 1H), 5.80 (dd, J = 2.8, 9.6 Hz, 1H), 6.44 (dd, J = 3.2, 9.6 Hz, 1H), 6.49 (s, 1H);
54: 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.49-1.54 (m, 2H), 1.58 (s, 3H), 1.67-1.76 (m, 2H), 1.92-2.04 (m, 1H), 3.16 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.28-3.34 (m, 1H), 3.44 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.40 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.93 (s, 1H), 7.74 (br s, 1H)
【0103】
(合成実施例2-13:(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)- オン(44)の合成)
(4bS,8R)-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-4b,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロフェナントレン-3,4-ジオン(54) (23.9 mg, 0.076 mmol) を無水トルエン(1.0 ml)に溶解後、アルゴン雰囲気下4時間還流した。溶媒を留去後、残渣を酢酸エチル-ヘキサン(1 : 7)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)- オン(44) (14.2 mg, 0.045 mmol, 59%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.26 (s, 3H), 1.49-1.54 (m, 2H), 1.58 (s, 3H), 1.67-1.76 (m, 2H), 1.92-2.04 (m, 1H), 3.16 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.28-3.34 (m, 1H), 3.44 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.40 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.93 (s, 1H), 7.74 (br s, 1H)
【0104】
(合成実施例2-14:((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メチル 2-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキシレート(63)の合成)
トリエチルアミン (0.017 ml, 0.12 mmol), ジメチルアミノピリジン(0.5 mg, 0.0041 mmol), 2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(15.9 mg, 0.046 mmol) と2-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキシリック アシッド(62) (8.6 mg, 0.044 mmol) を無水塩化メチレン(0.5 ml)に溶解し、室温で20分撹拌した後、(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン(44) (11.7 mg, 0.037 mmol) の無水塩化メチレン溶液(0.3 ml)を加えた。室温で19.5時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(5.0 ml)を加え、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、芒硝で乾燥、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:7)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メチル 2-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキシレート(63) (7.0 mg, 0.014 mmol, 37%)を得ると共に14 (1.5 mg, 0.0048 mmol, 13%)を回収した。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.40 (s, 3H), 1.53-1.58 (m, 1H), 1.61 (s, 3H), 1.67-1.77 (m, 3H), 1.96-2.06 (m, 1H), 3.17 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.35 (br d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.42 (s, 3H), 4.21 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.39 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.71 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.91-6.93 (m, 3H), 7.51 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.68 (dd, J = 2.0, 8.0 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H)
【0105】
【化13】
【0106】
(合成実施例2-15:4-((((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メトキシ)カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート (65)及び ((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メチル ベンゾエート (69)の合成)
トリエチルアミン (0.012 ml, 0.086 mmol), ジメチルアミノピリジン(3.8 mg, 0.031 mmol), 2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(10.4 mg, 0.030 mmol) と3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)ベンゾイック アシッド(64) (11.5 mg, 0.032 mmol) を無水塩化メチレン(0.1 ml)に溶解し、室温で40分撹拌した後、(4bS,8R)-4-ヒドロキシ-8-(ヒドロキシメチル)-2-イソプロピル-4b,8-ジメチル-5,6,7,8-ヘキサヒドロフェナントレン-3(4bH)-オン(44) (8.1 mg, 0.026 mmol)の無水塩化メチレン溶液(0.6 ml)を加えた。室温で11時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(5.0 ml)を加え、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、芒硝で乾燥、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:19)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し4-((((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メトキシ)カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート (65)(2.0 mg, 0.0030 mmol, 12%)と((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メチル ベンゾエート (69) (1.9 mg, 0.0045 mmol, 17%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、それらの構造を支持する。
65: 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.17 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.42 (s, 3H), 1.57-1.60 (m, 1H), 1.61 (s, 3H), 1.70-1.77 (m, 3H), 1.95-2.08 (m, 1H), 3.15 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 3.35 (br d, J = 14.8 Hz, 1H), 4.27 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.45 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 6.36 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.93 (s, 1H), 7.39 (q, J = 8.0 Hz, 4H), 7.49-7.59 (m, 3H), 7.74 (s, 1H), 8.02-8.07 (m, 6H);
69: 1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.57-1.59 (m, 1H), 1.61 (s, 3H), 1.69-1.78 (m, 3H), 1.95-2.07 (m, 1H), 3.16 (sept, J = 6.8 Hz, 1H), 3.33-3.38 (m, 1H), 4.24 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 4.42 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 6.36 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.71 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.92 (s, 1H), 7.45 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.58 (dt, J = 1.2, 7.2 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H), 8.01-8.04 (m, 2H)
【0107】
(合成実施例2-16:4-エピ-パルビフロロン E (epi-1)の合成)
4-((((1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6-ヘキサヒドロフェナントレン-1-イル)メトキシ)カルボニル)-1,2-フェニレン ジベンゾエート (65) (1.7 mg, 0.0026 mmol)のベンゼン(0.1 ml)溶液にn-ブチルアミン (2.6 μl, 0.026 mmol)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応液はそのまま酢酸エチル:ヘキサン(1:3)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し4-エピ-パルビフロロン E (epi-1) (0.9 mg, 0.0020 mmol, 77%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.17 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.39 (s, 3H), 1.41-1.46 (m, 1H), 1.61 (s, 3H), 1.67-1.76 (m, 3H), 1.96-2.95 (m, 1H), 3.16 (sept, J = 7.2 Hz, 1H), 3.35 (br d, J = 13.2 Hz, 1H), 3.55 (br s, 1H), 4.18 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.37 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 5.65 (br s, 1H), 6.34 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.90-6.92 (m, 2H), 7.51-7.58 (m, 2H), 7.69-7.73 (m, 1H)
【0108】
(合成実施例2-17:3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)ベンゾイック アシッド(64)の合成)
ベンゾイルクロライド(0.18 ml, 1.56 mmol)をプロトカテク酸の無水ピリジン(1.0 ml)の溶液に加え、95 ℃で2時間撹拌した。反応混合物を1N HCl (1.0 ml)にて0℃でクエンチした。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、芒硝で乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:4)のフラッシュカラムでで精製し3,4-ビス(ベンゾイルオキシ)ベンゾイック アシッド(64) (106.5 mg, 0.29 mmol, 41%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.37-7.42 (m, 4H), 7.53-7.59 (m, 3H), 8.05-8.15 (m, 6H)
【0109】
(合成実施例2-18:メチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70)の合成)
メチル 12-(3-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(51) (175.8 mg, 0.36 mmol)の無水テトラヒドロフラン(3.0ml)溶液に1M リチウムアルミニウムヒドリドのテトラヒドロフラン溶液 (1.60 ml, 1.60 mmol)を-78 ℃で加えアルゴン雰囲気下室温で40分撹拌した。反応液に1N HCl (2.0 ml)を加え酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:20)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し70 (107.7 mg, 0.31 mmol, 86%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.23 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.25 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.28 (s, 3H), 1.29-1.31 (m, 1H), 1.36 (s, 3H), 1.39-1.46 (m, 1H), 1.61-1.80 (m, 5H), 2.22 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 2.73 (dd, J = 5.2, 16.0 Hz, 1H), 2.82-3.02 (m, 2H), 3.13 (br d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.49 (s, 1H), 5.71 (s, 1H), 6.42 (s, 1H)
【0110】
(合成実施例2-19:メチル (1R,4aS)-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-5,6-ジオキソ-1,2,3,4,4a,5,6,9,10,10a-デカルヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート(71)の合成)
メチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (24.7 mg, 0.071 mmol)の無水塩化メチレン(1.0ml)溶液に酸化銀(I)(30.8 mg, 0.13 mmol)を加えアルゴン雰囲気下室温で40分撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:20)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル (1R,4aS)-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-5,6-ジオキソ-1,2,3,4,4a,5,6,9,10,10a-デカルヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート(71) (24.2 mg, 0.070 mmol, 99%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.09 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.09 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.25 (s, 3H), 1.30-1.41 (m, 1H), 1.60-1.71 (m, 5H), 2.01 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 2.46-2.49 (m, 2H), 2.75-2.78 (m, 1H), 2.90 (sept, J = 6.4 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 6.38 (s, 3H)
【0111】
(合成実施例2-20:メチル (1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメトキシ-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート(72)の合成)
メチル (1R,4aS)-7-イソプロピル-1,4a-ジメチル-5,6-ジオキソ-1,2,3,4,4a,5,6,9,10,10a-デカルヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート(71) (88.4 mg, 0.26 mmol)を無水トルエン(2.0 ml)に溶解後、アルゴン雰囲気下8時間還流した。溶媒を留去後、残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:20)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル (1R,4aS)-5-ヒドロキシ-7-イソプロピル-1,4a-ジメトキシ-6-オキソ-1,2,3,4,4a,6,10,10a-オクタヒドロフェナントレン-1-カルボキシレート(72) (79.6 mg, 0.23 mmol, 89%)を得た。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) :δ 1.13 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.22 (s, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.63-1.81 (m, 5H), 2.13 (ddd, J = 2.4, 6.8, 19.2 Hz, 1H), 2.39-2.53 (m, 2H), 3.01-3.10 (m, 2H), 3.67 (s, 3H), 6.74 (dd, J = 3.2, 7.2 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H), 7.47 (s, 1H)
【0112】
(合成実施例2-21~2-31:化合物(73)~(83)の一般的合成法)として、メチル 12-(3-ビフェニルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(70)の合成法を例に示す。
【0113】
【化14】
【0114】
(合成実施例2-21:メチル 12-(3-ビフェニルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(70)の合成)
3-ビフェニルカルボン酸 (16.6 mg, 0.083 mmol), 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI, 0.015 ml, 0.083 mmol) 、ジメチルアミノピリジン (1.4 mg, 0.011 mmol) の無水塩化メチレン(0.3 ml)溶液を室温で20分撹拌後、メチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70)(24.0 mg, 0.069 mmol) の無水塩化メチレン (0.7 ml)に加えた。反応液を室温で30分撹拌後、10%塩化アンモニウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、芒硝で乾燥し、溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:20)のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しメチル 12-(3-ビフェニルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(80) (12.4 mg, 0.024 mmol, 34%)を得るとともに70 (10.2 mg, 0.029 mmol, 43%)を回収した。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.20 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.31-1.33 (m, 1H), 1.38 (s, 3H), 1.42-1.46 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.71-1.83 (m, 3H), 2.26 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.79-2.97 (m, 3H), 3.17 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 5.23 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.41 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.49 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.62 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.64-7.67 (m, 2H), 7.90-7.92 (m, 1H), 8.21-8.23 (m, 1H), 8.46 (t, J = 1.8 Hz, 1H);
13C NMR (600 MHz, CDCl3):δ 16.9, 18.6, 20.2, 22.1, 23.0, 23.1, 27.6, 32.2, 35.7, 36.5, 38.9, 118.7, 127.2, 128.0, 129.0, 129.1, 129.2, 129.3, 132.7, 135.5, 137.8, 142.1, 145.6, 165.0, 179.3;
HRMS (m/z): [M+H]+ calcd for C28H39O5, 527.2797; found, 527.2789
【0115】
(合成実施例2-22:メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-ナフトイルオキシ-8,11,13-トリエン-18-オエート(7)の合成)
ナフトエ酸(14.4 mg, 0.084 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (24.3 mg, 0.070 mmol)とから、メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-ナフトイルオキシ-8,11,13-トリエン-18-オエート(73) (9.7 mg, 0.019 mmol, 28%)と回収された(70) (15.0 mg, 0.043 mmol, 62%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.18 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.21 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.31-1.34 (m, 1H), 1.39 (s, 3H), 1.42-1.48 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.72-1.81 (m, 3H), 2.28 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 2.80-2.84 (m, 1H), 2.89-2.98 (m, 2H) 3.18 (br d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 5.27 (s, 1H), 6.63 (s, 1H), 7.61 (br t, J = 6.6 Hz, 1H), 7.67 (br t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.22 (dd, J = 1.8, 8.4 Hz, 1H), 8.84 (s, 1H);
HRMS (m/z): [M+H]+ calcd for C32H37O5, 501.2641; found, 501.2632
【0116】
(合成実施例2-23:メチル 12-ベンゾイルオキシ-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(74)の合成)
安息香酸(6.9 mg, 0.056 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (15.7 mg, 0.045 mmol)とから、メチル 12-ベンゾイルオキシ-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(74) (3.8 mg, 0.0084 mmol, 19%)が得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.31-1.34 (m, 1H), 1.38 (s, 3H), 1.57-1.64 (m, 2H), 1.69-1.80 (m, 3H), 2.26 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 5.21 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.55 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.68 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 8.24 (d, J = 7.2 Hz, 2H)
【0117】
(合成実施例2-24:メチル 12-(3-フルオロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(75)の合成)
3-フルオロ安息香酸 (11.8 mg, 0.084 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (22.9 mg, 0.066 mmol)とから、メチル12-(3-フルオロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(75) (10.5 mg, 0.022 mmol, 34%)及び回収された(70) (10.1 mg, 0.029 mmol, 44%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.31-1.33 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.41-1.46 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.25 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.79-2.85 (m, 2H), 2.89-2.96 (m, 1H), 3.13-3.17 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 5.12 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.39 (m, 1H), 7.52-7.55 (m, 1H), 7.90-7.92 (m, 1H), 8.03-8.05 (m, 1H);
HRMS (m/z) : [M]+ calcd for C28H33FO5, 468.2312; found, 468.2294
【0118】
(合成実施例2-25:メチル 12-(3-ブロモベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(76)の合成)
3-ブロモ安息香酸(14.4 mg, 0.072 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (21.0 mg, 0.061 mmol)とから、メチル 12-(3-ブロモベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート(76) (7.0 mg, 0.013 mmol, 22%)と回収された(70) (7.4 mg, 0.021 mmol, 35%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.33 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.40-1.45 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 1H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.25 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.79-2.84 (m, 2H), 2.90-2.96 (m, 1H), 3.12-3.16 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 5.09 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.43 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.81 (ddd, J = 1.2, 1.8, 7.8 Hz, 1H), 8.17 (ddd, J = 1.8, 1.8, 7.8 Hz, 1H), 8.37 (t, J = 1.8 Hz, 1H);
HRMS (m/z) : [M]+ calcd for C28H33BrO5, 528.1511; found, 528.1485
【0119】
(合成実施例2-26:メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-ヨードベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(77)の合成)
3-ヨード安息香酸(22.1 mg, 0.089 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (26.0 mg, 0.075 mmol)とから、メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-ヨードベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(77) (9.6 mg, 0.017 mmol, 22%)と回収された(70) (16.2 mg, 0.047 mmol, 62%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.34 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.57-1.80 (m 5H), 2.25 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 2.77-2.98 (m, 3H), 3.10-3.15 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 5.07 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.29-7.33 (m, 1H), 8.01 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.56-8.57 (m, 1H)
【0120】
(合成実施例2-27:メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-メトキシベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(78)の合成)
3-メトキシ安息香酸(22.1 mg, 0.089 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (26.0 mg, 0.075 mmol)とから、メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-メトキシベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(78) (10.8 mg, 0.022 mmol, 22%)と回収された(70) (6.2 mg, 0.018 mmol, 25%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.34 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.41-1.45 (s, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.26 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.79-2.96 (m, 3H), 3.15-3.18 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 5.20 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.21-7.23 (m, 1H), 7.45 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.73-7.74 (m, 1H), 7.84-7.85 (m, 1H);
HRMS (m/z) : [M+H]+ calcd for C29H37O6, 481.2590; found, 481.2578
【0121】
(合成実施例2-28:メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-ニトロベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(79)の合成)
3-ニトロ安息香酸(22.1 mg, 0.089 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (20.4 mg, 0.059 mmol)とから、メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(3-ニトロベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート(79) (5.3 mg, 0.011 mmol, 18%)と回収された(40) (6.0 mg, 0.017 mmol, 29%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.17 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.20 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.34 (m, 1H), 1.38 (s, 3H), 1.42-1.47 (m, 1H), 1.59-1.64 (m, 1H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.26 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 2.79-2.85 (m, 2H), 2.91-2.97 (m, 1H), 3.12 (br d, J = 13.8 Hz, 1H), 3,69 (s, 3H), 5.03 (s, 1H), 6.63 (s, 1H), 7.78 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 8.53-8.57 (m, 2H), 9.07-9.08 (m, 1H);
13C NMR (600 MHz, CDCl3) :δ 16.9, 18.6, 20.3, 22.0, 22.9, 23.1, 27.7, 32.2, 35.8, 36.4, 38.9, 46.7, 48.3, 52.0, 119.0, 125.2, 128.5, 130.2, 130.4, 134.5, 134.6, 135.9, 137.6, 145.3, 148.5, 163.0, 179.2;
HRMS (m/z): [M]+ calcd for C28H33NO7, 495.2257; found, 495.2249
【0122】
(合成実施例2-29:メチル 12-(3,5-ジクロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート (81)の合成)
3,5-ジクロロ安息香酸(15.0 mg, 0.079 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (22.7 mg, 0.066 mmol)とから、メチル 12-(3,5-ジクロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート (81) (5.6 mg, 0.011 mmol, 19%)が得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.31-1.33 (m, 1H), 1.36 (s, 3H), 1.40-1.46 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.69-1.82 (m, 3H), 2.23 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 2.75-2.82 (m, 2H), 2.90-2.96 (m, 1H), 3.12 (br d, J = 13.8 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 4.99 (s, 1H), 6.61 (s, 1H), 7.66-7.67 (m, 1H), 8.09-8.11 (m, 2H);
HRMS (m/z): [M]+ calcd for C28H32Cl2O5, 518.1627; found, 518.1638
【0123】
(合成実施例2-30:メチル 12-(4-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート (82)の合成)
4-クロロ安息香酸(8.2 mg, 0.052 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (14.9 mg, 0.043 mmol)とから、メチル 12-(4-クロロベンゾイルオキシ)-11-ヒドロキシアビエタ-8,11,13-トリエン-18-オエート (82) (6.4 mg, 0.013 mmol, 31%)と回収された(70) (8.1 mg, 0.023 mmol, 54%)とが得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.15 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.18 (d. J = 7.2 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.32 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.40-1.45 (m, 1H), 1.59-1.63 (m, 2H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.25 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.78-2.84 (m, 2H), 2.99-2.96 (m, 1H), 3.13-3.17 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 5.14 (s, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.52 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.17 (d, J = 7.8 Hz, 2H);
HRMS (m/z): [M]+ calcd for C28H33ClO5, 484.2017; found, 484.2019
【0124】
(合成実施例2-31:メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(4-メトキシベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート (83)の合成)
4-メトキシ安息香酸(18.6 mg, 0.12 mmol)とメチル 11,12-ジヒドロキシデヒドロアビエテート(70) (35.7 mg, 0.043 mmol)とから、メチル 11-ヒドロキシアビエタ-12-(4-メトキシベンゾイルオキシ)-8,11,13-トリエン-18-オエート (83) (9.0 mg, 0.019 mmol, 19%)が得られた。
得られた化合物の分光学的データは、その構造を支持する。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 1.16 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.30-1.32 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.40-1.45 (m, 1H), 1.59-1.62 (m, 2H), 1.70-1.82 (m, 3H), 2.25 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 2.78-2.96 (m, 3H), 3.15-3.20 (m, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 5.29 (s, 1H), 6.59 (s, 1H), 7.00-7.03 (m,2H), 8.18-8.20 (m, 2H);
HRMS (m/z) :[M+H]+ calcd for C29H37O6, 481.2590; found, 481.2602
【0125】
(実施例1:医薬製剤の調製)
得られたアビエタンジテルペン類について、そのまま抗腫瘍剤として用いることもできるが、医薬製剤とするために、賦型剤、分散剤、充填剤、担体、及び/又は溶剤を含有させて抗腫瘍剤を調製した。
【0126】
(実施例2:増殖抑制試験)
得られたアビエタンジテルペン類の各化合物について、各種の癌細胞株に対する増殖抑制効果を検討した。癌細胞株は、A549:肺癌の細胞株、KB:単離した鼻咽頭の上皮内類表皮癌の細胞株、KB-VIN:KB過剰発現したP-糖プロテインのMDR亜系の細胞株、MDA-MB-231:トリプルネガティブ乳癌の細胞株、MCF-7:乳癌の細胞株である。
各種癌細胞は、25 mM HEPES, 0.25% 炭酸水素ナトリウム, 10% ウシ胎仔血清, 及び 100 μg/mL カナマイシンを懸濁させたRPMI-1640 培地で培養した。新たにトリプシン処理した細胞懸濁液を96穴マイクロタイタープレートに各穴当たり1500-7500個の細胞となるように播種し、DMSOに溶解した各化合物を加え、次いで、培地に希釈した。培養液(0.5% v/v)中でのDMSOは、最高濃度でも培養条件下で細胞増殖の影響を受けないようにして使用した。培養3日後、付いている細胞を、50%の冷トリクロロ酢酸で固定し、その後、0.4%のスルホロダミンBで着色した。結合色素の可溶化の後、マイクロプレートリーダーを用いて562 nmでの吸光度を測定した。IC50は、試験条件下で細胞増殖を50%抑制する化合物濃度であり、少なくとも3回同様な試験を繰り返した値の平均値である。
【0127】
その結果を、表1~3に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
表1~3から明らかな通り、本発明を適用するアビエタンジテルペン類を含有する抗腫瘍剤は、天然物又は合成実施例で合成したパルビフロロン類は、A549、KB、KB-VIN、MDA-MB-231、MCF-7の各種癌細胞株に対するIC50がμMオーダーであり、極めて強い増殖抑制活性を示した。これら各種癌細胞株に万遍なく増殖抑制作用を示す様々な癌に対する汎用的な抗腫瘍剤となり得るものと、MDA-MB-231の増殖抑制作用が際立って高くトリプルネガティブ乳癌に選択的・特異的な抗腫瘍剤となり得るものとがある。
【0132】
このようなアビエタンジテルペン類は、最近汎用されているパクリタキセル等の阻害様式とは異なり、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)細胞特有の標的に対して作用している可能性が期待される。
【0133】
なお、試験例では、医薬製剤を兼ねる抗腫瘍剤の例として記載したが、患者に投与する際には、錠剤等の固形の医薬製剤として調製して用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のアビエタン骨格を有するアビエタンジテルペン類を含有する抗腫瘍剤は、各種癌、特にトリプルネガティブ乳癌のように従来の抗腫瘍剤に効かない難治性の乳癌の治療、治療後の再発・再燃防止に有用である。