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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】溶接ビード切削装置
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20221216BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20221216BHJP
   B23K 37/08 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B23C3/12 A
B23K31/00 A
B23K37/08 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018192444
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020059096
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518254953
【氏名又は名称】ダイコク工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大國 洋治
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-052411(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103551640(CN,A)
【文献】特開2012-210682(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1425824(KR,B1)
【文献】特開2003-211313(JP,A)
【文献】特開2008-093758(JP,A)
【文献】実開昭51-145360(JP,U)
【文献】実開昭57-112813(JP,U)
【文献】特開平03-019761(JP,A)
【文献】特開平10-193181(JP,A)
【文献】特開2013-043230(JP,A)
【文献】特開2013-158780(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1306916(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/12
B23K 31/00
B23K 37/08
B24B 3/00-3/60
B24B 5/36-5/50
B24B 9/00
B24B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管の突合せ溶接部の溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置であって、
前記角形鋼管上に載置する水平ガイドと、
前記水平ガイドに沿って移動可能な移動体と、
前記移動体と一体に移動する基台と、
前記基台に取り付けられ、回転駆動されて前記溶接ビードを切削する切削刃とを備えており
前記水平ガイドと前記切削刃との間に前記角形鋼管の一辺を挟み込み、前記切削刃が前記角形鋼管の内周面の端部に接し、かつ前記溶接ビードから離れた位置にある状態で、前記水平ガイドに沿って前記移動体及びこれと一体の基台を移動させながら、前記切削刃を前記溶接ビードを横切る方向に水平移動させて、前記切削刃で前記溶接ビードのうち前記角形鋼管の端部側を切削することができ、
前記角形鋼管の1辺のうち、中央部近傍に内側に湾曲した湾曲部が形成されているときに、前記湾曲部が形成された前記角形鋼管の1辺の両端部近傍に残された平面部に、前記水平ガイドの両端部を載置することにより、前記水平ガイドは水平状態が保たれて、前記水平移動による切削面は水平面となり、
前記切削刃で切削された後の前記角形鋼管の端部側の内周面は、全周に亘り平面状態が確保されることを特徴とする溶接ビード切削装置。
【請求項2】
前記切削刃が上下方向に位置調整可能な請求項1に記載の溶接ビード切削装置。
【請求項3】
前記基台が前後方向に位置調整可能な請求項1又は2に記載の溶接ビード切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管の突合せ溶接部の溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、主要な構造体として鋼製の部材を用いる鉄骨構造が知られている。鉄骨構造には角形鋼管同士を接合した柱が用いられる。図15は角形鋼管50同士の接合前の状態を示す斜視図である。下側の角形鋼管50に裏当金54を嵌め込んで、下側の角形鋼管50に裏当金54を溶接し、裏当金54の延出部に上側の角形鋼管50を差し込んで上下の角形鋼管50同士を連結する。図16は上下の角形鋼管50同士を連結した状態の断面図を示している。本図の状態にでは、角形鋼管50の面取り部53で形成された溝部に板状のダイヤフラム55が取り付けられている。この溝部を溶接することにより、角形鋼管50同士を接合した柱にダイヤフラム55が接合される。
【0003】
一方、角形鋼管50は鋼材をプレス成形し、突合せ部を溶接により接合したものである。このため、図15に示したように、角形鋼管50の突合せ部には凸状の溶接ビード51が形成される。溶接ビード51が残った状態であると、裏当金54を角形鋼管50の内周面に沿って嵌め込むことができないため、溶接ビード51の一部を除去する必要があった。この作業を手作業で行うと多大な労力を要することから、特許文献1には、溶接ビード51の除去を自動的に行う切削装置が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-93758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の切削装置は、溶接ビードを切削するカッターに加え、ワーク(角形鋼管)を支持する載置台、ワークをクランプ固定する固定手段、ワークにおける長手方向の端部位置を規制する位置決め手段、カッターを三方向に移動操作する移動手段、溶接ビード部に近接するワークの一辺内周面を検出する内面検出手段及び内面検出手段の検出信号によって前記移動手段を駆動制御する駆動制御手段を備えたものであり、装置が複雑かつ大規模なものであり、手作業により溶接ビードの除去作業は省けても取り扱いは容易なものではなかった。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、構造が簡単でかつ小型化を図りつつ、角形鋼管の溶接ビードの除去の作業負担を軽減できる溶接ビード切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の溶接ビード切削装置は、角形鋼管の突合せ溶接部の溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置であって、前記角形鋼管上に載置する水平ガイドと、前記水平ガイドに沿って移動可能な移動体と、前記移動体と一体に移動する基台と、前記基台に取り付けられ、回転駆動されて前記溶接ビードを切削する切削刃と、前記水平ガイドと前記切削刃との間に前記角形鋼管の一辺を挟み込んだ状態で、前記水平ガイドに沿って前記移動体及びこれと一体の基台を移動させながら、前記切削刃で前記溶接ビードを切削することを特徴とする。
【0008】
本発明の溶接ビード切削装置は、水平ガイドと切削刃等の付属部品が取り付けられた基台で主要部が構成されるので、構造が簡単でかつ小型化及び軽量化を図ることができる。このため、持ち運びが容易になり、角形鋼管への脱着作業も容易になり、さらに作業時の取り扱いも容易になるため、作業負担が軽減されることになる。
【0009】
また、角形鋼管が変形していても、水平状態が保たれた水平ガイドに沿って移動体及びこれと一体の基台が水平移動するので、基台と一体に切削刃も水平移動し、切削面は水平面となる。このため、角形鋼管の内周面が切削刃により過不足なく切削され、削り過ぎや削り残しを防止することができる。さらに、角形鋼管は納品時には、ビードが上側にあるのが通常であり、本発明に係る溶接ビード切削装置は、ビードが上側にある状態で作業が可能であるので、角形鋼管の反転作業を省くことができる。
【0010】
前記本発明の溶接ビード切削装置においては、前記切削刃が上下方向に位置調整可能であることが好ましく、前記基台が前後方向に位置調整可能であることが好ましい。これらの構成によれば、切削刃の設定位置の自由度が高まり、より精度の高い切削が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は前記のとおりであり、要約すれば、構造が簡単でかつ小型化及び軽量化を図ることができ、持ち運びが容易になり、角形鋼管への脱着作業も容易になり、さらに作業時の取り扱いも容易になるため、作業負担が軽減され、かつ角形鋼管が変形していても、切削面は水平面となり角形鋼管の内周面が切削刃により過不足なく切削され、削り過ぎや削り残しを防止することができ、あわせて、角形鋼管の反転作業を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る溶接ビード切削装置を角形鋼管に装着した状態の斜視図。
図2図1に示した溶接ビード切削装置の拡大正面図。
図3図1の状態を背面側から見た斜視図。
図4図1の状態を側面側から見た斜視図。
図5図2のAA線における断面図。
図6】本発明の一実施形態において、溶接ビード切削装置による作業前後を示す正面図。
図7】本発明の一実施形態において、溶接ビードの除去前の状態の角形鋼管の断面図。
図8】本発明の一実施形態において、溶接ビードの除去後の状態の角形鋼管の断面図。
図9】本発明の一実施形態において、溶接ビードの除去後の状態の角形鋼管の斜視図。
図10】本発明の一実施形態に係る溶接ビード切削装置の正面図。
図11】本発明の別の実施形態に係る溶接ビード切削装置の側面図。
図12図11に示した溶接ビード切削装置の平面図。
図13図12のDD線における断面図。
図14図11のC矢視図。
図15】角形鋼管同士の接合前の状態を示す斜視図。
図16】上下の角形鋼管同士を連結した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る溶接ビード切削装置1を角形鋼管50に装着した状態の斜視図を示している。角形鋼管50は手前側を破断して図示しており、奥側(端部)に溶接ビード切削装置1を装着している。角形鋼管50は鉄骨構造に用いるものであり、鋼材をプレス成形し、突合せ部を溶接により接合したものであり、突合せ部に凸状の溶接ビード51が形成されている。溶接ビード切削装置1は、この溶接ビード51を端部から一定範囲の部分を切削して除去する装置である。
【0014】
図2は、図1に示した溶接ビード切削装置1の拡大正面図であり、図3図1の状態を背面側から見た斜視図であり、図4図1の状態を側面側から見た斜視図であり、図5は図のAA線における断面図である。以下、図2~5を参照しながら、溶接ビード切削装置1の構造について説明する。
【0015】
図2に示したように、基台10には、ローラ2、3が取り付けられている。具体的には、基台10と一体の立設部4、5に軸6、7を介してローラ2、3が支持されている。図4に示したように、基台10にはローラ18、19が取り付けられており、角形鋼管50の端部の面取り部53と基台10との間にはローラ18、19が介在している。
【0016】
図3に示したように、基台10には切削刃20の駆動源であるモータ30が、モータベース33を介して取り付けられている。符号32は電源コードである。図2において、符号31は図3に示したモータ30の回転軸である。この回転軸31に切削刃20が装着されて、基台10にはモータ30を介して切削刃20が取り付けられている。
【0017】
図2において、切削刃20は略円形の回転体21に放射状に切削チップ22が固定されたものであり、回転体21と一体に切削チップ22が回転し、切削チップ22の先端が角形鋼管50の面を平面状に切削加工する。詳細は後に説明するとおり、図2の状態から切削刃20を回転させた状態で、溶接ビード切削装置1を水平移動させると(X方向)、これと一体に切削刃20も水平移動し、切削チップ22で溶接ビード51が切削される。
【0018】
図2に示した溶接ビード切削装置1の角形鋼管50への装着状態においては、角形鋼管50上に水平ガイド44が載置されている。図3及び図4に示したように、水平ガイド44は、角形鋼管50の1辺のほぼ全幅に延在している。図2に示したように、ローラ2、3と支持体11と一体のローラ12(移動体)との間に、水平ガイド44を介して、角形鋼管50の1辺が挟み込まれている。
【0019】
図2では図示の便宜のため、ローラ12近傍における水平ガイド44を断面状態で図示している。水平ガイド44は溝45が形成されており、溝45内にローラ12の一部が入り込んでいる。図5図2のAA線における断面図を示している。ローラ12は、回転軸47を介してブラケット48に支持されている。ローラ12は、水平ガイド44の溝45の底面に当接している。ローラ12の側面と溝45との間には若干の隙間があり、ローラ12は溝45の底面上を回転しながら、水平ガイド44の長手方向(図2のX方向)に移動可能である。
【0020】
図2において、ブラケット48は、調節体49に固定されている。調節体49には支持体11を挿通するボルト13が螺合している。図示の便宜のため、図2では支持体11の上端部は断面状態で図示している。ボルト13を回転させることにより、支持体11からのボルト13の延出長さが変化するので、支持体11の上端の角形鋼管50からの高さhも変化する。このことにより、支持体11と一体の基台10の上下方向(高さ方向)の位置を調整でき、同時に基台10と一体の切削刃20の上下方向の位置も調整されることになる。
【0021】
より具体的には、図2において、ローラ12が水平ガイド44の溝45の底面に乗った状態で、支持体11の高さhが高くなるようにボルト13を回転させると、基台10が上昇し、図2に示したように、ローラ2、3及び切削刃20が角形鋼管50の内周面に当接し、切削刃20が位置決めされる。さらに、ボルト13を回転させると、切削刃20が角形鋼管50の内周面を押圧し、切削刃20と角形鋼管50の内周面との圧接状態を調節することができる。
【0022】
溶接ビード切削装置1による作業時には、図2において、溶接ビード切削装置1を水平方向(X方向)に移動させることになる。本実施形態では、ローラ12が水平ガイド44の溝45の底面上を転がりながら、装置全体が移動するので、予め水平ガイド44を角形鋼管50上に水平に載置しておけば、基台10と一体に切削刃20も水平移動することになる。このことにより、詳細は後に説明するとおり、角形鋼管50が変形していても、溶接ビード51及びその近傍を過不足なく切削することができる。
【0023】
以下、図6図8を参照しながら、溶接ビード切削装置1による作業について説明する。図6(a)は、溶接ビード切削装置1の角形鋼管50への装着状態を示している。本図の状態は、溶接ビード切削装置1の装着状態では、切削刃20は溶接ビード51から離れた位置にある。
【0024】
この状態で操作者は、モータ30(図3参照)を起動させて切削刃20を回転させる。続いて、操作者は溶接ビード切削装置1を掴んだ状態で、溶接ビード切削装置1を水平方向に押しながら水平移動させる(X方向)。水平移動中、操作者は溶接ビード切削装置1の例えば支持体11や基台10の一部を掴んでいればよい。また、溶接ビード切削装置1に水平移動中に掴む専用の取っ手を設けてもよい。
【0025】
溶接ビード切削装置1の水平移動中、切削刃20は角形鋼管50の内周面に当接した状態で回転する。このため、角形鋼管50の内周面のうち、切削刃20の通過部分が切削されていく。図6(b)は、溶接ビード切削装置1による作業終了時の状態を示している。この状態では、図6(a)に示した角形鋼管50の溶接ビード51は切削刃20により切削されて除去されている。
【0026】
溶接ビード51の除去について、図7及び図8を参照しながら、より具体的に説明する。図7は溶接ビード51の除去前の状態を示している。本図の状態はは、図6(a)と同じ状態であり、溶接ビード切削装置1の角形鋼管50への装着状態を示している。前記のとおり、角形鋼管50は鋼材をプレス成形し、突合せ部を溶接により接合したものであり、角形鋼管50の突合せ部には凸状の溶接ビード51が形成されている。また、ビード51が形成されている角形鋼管50の1辺のうち、中央部近傍は内側に湾曲した湾曲部56が形成される場合があり、溶接ビード51の近傍には湾曲部56から膨らんだ膨らみ部分52が形成される。
【0027】
他方、湾曲部56が形成された角形鋼管50の1辺の両端部近傍には、平面部57が残されている。水平ガイド44の両端部は、平面部57上に載置されているので、水平ガイド44は水平状態が保たれ、水平ガイド44の底部と角形鋼管50との間には隙間58が形成されている。図示の便宜のため、湾曲部56の湾曲は誇張して図示しているため、隙間58も誇張して図示されている。
【0028】
切削刃20の切削チップ22は、先端の刃先部分が回転軸31方向に幅(例えば2cm程度)を有しているので、回転中の切削刃20を図7の状態から水平移動させると(X方向)、角形鋼管50の内周面は矩形状に切削される(図9のB部参照)。また、前記のとおり、水平ガイド44は水平状態が保たれており、かつローラ12が水平ガイド44の溝45の底面上を転がりながら、装置全体が移動するので、基台10と一体に切削刃20は水平移動し、切削面は水平面となる。
【0029】
図8は、切削刃20の水平移動が完了した状態を示している。この状態では、湾曲部56が水平面となるように、角形鋼管50が切削されているので、溶接ビード51及び膨らみ部分52も切削されて除去されている。
【0030】
図9は、溶接ビード切削装置1による作業を終えた状態の角形鋼管50の斜視図を示している。角形鋼管50内周面の端部が矩形状(B部)に切削されており、溶接ビード51のうち、角形鋼管50の端部側が除去され、この除去部分は前記のとおり水平面であるので、角形鋼管50の端部側の内周面は、全周に亘り平面状態が確保され、図15に示した裏当金54を角形鋼管50の内周面に沿って無理なく嵌め込むことが可能となる。
【0031】
本実施形態に係る溶接ビード切削装置1は、水平ガイド44と切削刃20等の付属部品が取り付けられた基台10で主要部が構成されるので、大規模な装置や複雑な装置は必要とせず、構造が簡単でかつ小型化及び軽量化を図ることができる。このため、持ち運びが容易になり、角形鋼管50への脱着作業も容易になり、さらに作業時の取り扱いも容易になるため、作業負担が軽減されることになる。
【0032】
また、前記のとおり、角形鋼管50が変形していても、水平状態が保たれた水平ガイド44の溝45の底面上をローラ12が転がりながら、装置全体が移動するので、基台10と一体に切削刃20は水平移動し、切削面は水平面となる。このため、角形鋼管50の内周面が切削刃20により過不足なく切削され、削り過ぎや削り残しを防止することができる。
【0033】
さらに、角形鋼管50は納品時には、図1のようにビード51が上側の辺にあるのが通常であり、グラインダ等の工具を用いた手作業でビード5を除去するには、ビード51が下側にくるように、角形鋼管50を反転させる必要があったが、溶接ビード切削装置1は、前記のとおり、ビード51が上側にある状態で作業が可能であるので、角形鋼管50の反転作業を省くことができる。
【0034】
以下、主に図10を参照しながら、溶接ビード切削装置1の調整機構について説明する。図10は溶接ビード切削装置1の正面図を示している。溶接ビード切削装置1は、基台10とモータ30との位置関係を調整することにより、ローラ2、3と切削刃20との位置関係を調整することが可能になる。
【0035】
図10に示したボルト26、27、28により、図3に示したモータベース33が基台10に固定され、図3に示したように、モータベース33と一体のモータ30は基台10の裏面側に取り付けられている。図10において、ボルト27は長穴16を挿通し、ボルト28は長穴17を挿通している。したがって、長穴16、17内のボルト27、28の締め付け位置を変えると、ボルト26を起点として、モータベース33の基台10に対する固定位置が変わり、同時にモータ30と一体の切削刃20の基台10に対する取り付け位置が変わることになる。
【0036】
切削刃20の基台10に対する取り付け位置が変わると、切削刃20とローラ2、3との位置関係も変わり、溶接ビード切削装置1を角形鋼管50へ装着した際の切削刃20の位置決め位置も変わり、切削刃20の位置決め位置を調整することが可能になる。この調整により、切削深さの調整が可能になる。具体的には、1回目の切削後、さらに深く切削したい場合には、切削刃20の上端がローラ2、3の上端よりも上側になるように調整すれば、2回目の切削では、1回目の切削部分をさらに深く切削することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、ローラ2、3間の間隔を調整することが可能になる。溶接ビード切削装置1による作業終了時の状態を示した図6(b)では、水平方向において、ローラ2を支持する立設部4と、角形鋼管50の左側の内壁面との間にある程度の距離が保たれている。一方、角形鋼管50の水平方向の幅が小さいと、切削刃20で溶接ビード51を切削する前に立設部4と角形鋼管50の左側の内壁面とが干渉し、作業が中断してしまう。
【0038】
本実施形態では、ローラ2の水平方向の配置位置を調整可能にして、幅の小さな角形鋼管50についても溶接ビード51の切削作業ができるようにしている。具体的には、図10において、ローラ2を支持する立設部4は延出部14、15を有しており、この部分を挿通したボルト23、24、25が基台10に締め付けられて、立設部4が基台10に取り付けられている。
【0039】
一方、基台10には水平方向に穴34、35、36、37等を設けており、ボルト23、24、25を締め付ける穴を変更できるようになっており、立設部4の水平方向の取り付け位置を調整して、ローラ2、3間の間隔を調整することが可能になっている。幅の小さな角形鋼管50に溶接ビード切削装置1を装着する場合には、立設部4をローラ3側に取り付けるようにすれば、切削刃20で溶接ビード51を切削する前に立設部4と角形鋼管50の左側の内壁面とが干渉することを防止することができる。また、ローラ2、3間の間隔が調整可能であることにより、切削長に合わせたローラ2、3間の間隔が設定可能になる。
【0040】
さらに、本実施形態では、支持体11の取り付け位置を調整できるようにして、溶接ビード切削装置1の角形鋼管50への安定した設置ができるようにしている。図3において、支持体11を挿通させたボルト40、41を基台10に締め付けることにより、支持体11が基台10に取り付けられている。基台10には水平方向に穴42、43等を設けており、ボルト40、41を挿通させる穴を変更できるようになっており、支持体11の水平方向の取り付け位置を調整することが可能になっている。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、これらは一例であり前記実施形態に限るものではなく、ガイド44の構造、ガイド44と移動体(図2ではローラ12)との係合構造、支持体11、ローラ2、3の構造及びその支持構造、モータ20の取り付け構造、切削刃20の構造、切削刃20の位置調整機構、ローラ2の位置調整機構、支持体11の位置調整機構等は、同様の効果や機能を実現するものであれば、他の構造であってもよい。
【0042】
例えば、ガイド44は、これに係合した移動体が水平移動可能な構造であればよく、図2のような溝45とローラ12とが係合するものに限るものではなく、レールに係合する溝を有するスライダとレールとが係合するものであってもよい(図11図14の実施形態参照)。また、ローラ2、3はローラ以外の摺動体であってもよい。さらに、前記実施形態では水平ガイド44は基台10とは別の独立した部品として説明したが、基台10と一体にしてもよい。
【0043】
以下、図11図14を参照しながら、本発明の別の実施形態について説明する。図11は溶接ビード切削装置59の側面図を示しており、図12は平面図を示している。各図において、溶接ビード切削装置59は、角形鋼管50に装着されている。本実施形態においても、角形鋼管50、モータ62、ローラ63及び切削刃64の構造は、前記実施形態のものと同様である。
【0044】
図11において、溶接ビード切削装置59は、基台60及び水平ガイド61を主要部としており、基台60には支持体76を介して、モータ62、ローラ63及び切削刃64が取り付けられている。図11の状態ではローラ63と、モータ62で駆動される切削刃64が角形鋼管50の内周面に当接している。
【0045】
図11に示したように、水平ガイド61は角形鋼管50上に載置されており、図12に示したように、水平ガイド61は、角形鋼管50の1辺の水平方向(X方向)に延在している。水平ガイド61が備えるボールねじ65は、支持体66(図13参照)と螺合している。詳細は後に説明するが、ハンドル67を回転させることにより、ボールねじ65が回転し、これに伴い基台60が水平方向(X方向)に移動する。
【0046】
図12のDD線における断面図である図13によれば、ガイド61が備えるベース70上に一対のレール71が配置されており、レール71と支持体66に設けたスライダ72(移動体)とが係合している。このことにより、基台60の水平移動中、基台60はレール71で案内され、基台60と一体に切削刃64(図11参照)は水平移動し、切削面は水平面となる。このため、溶接ビード切削装置60についても、図2等に示した溶接ビード切削装置1と同様に、角形鋼管50の内周面が切削刃64により過不足なく切削され、削り過ぎや削り残しを防止することができる。
【0047】
図11において、切削刃64は前後方向(Y方向)の位置調整と高さ方向(Z方向)の位置調整を可能にしている。ハンドル68の回転によりボールねじ(図示せず)が回転するので、基台60は前後方向(Y方向)に移動する。より具体的には、図13において、基台60にレール73が固定されており、レール73と支持体66に設けたスライダ74が係合している。このことにより、基台60の前後移動中、基台60はレール73がスライダ74で案内され、基台60と一体に切削刃64も前後移動する。
【0048】
また、図11に示したハンドル69の回転によりボールねじ75が回転し、これと一体に、支持体76が上下方向(Z方向)に移動する。より具体的には、図11のC矢視である図14によれば、支持体76にスライダ77が固定されており、スライダ77と基台60に設けたレール78が係合している。このことにより、支持体76の上下移動中、支持体76はレール78で案内され、支持体76と一体に切削刃64は上下移動する。これらの切削刃64の位置調整が可能な構成によれば、切削刃の設定位置の自由度が高まり、より精度の高い切削が可能になる。
【0049】
以上、本発明の別の実施形態について説明したが、これらは一例であり、同様の効果や機能を実現するものであれば、適宜変更した他の構造であってもよく、適宜簡略化したものであってもよい。例えば、図12において、水平ガイド61が備えるボールねじ65を省き、操作者が基台60の一部を掴んで、基台60を水平移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,59 溶接ビード切削装置
2,3,63 ローラ
10,60 基台
11,66,76 支持体
12 ローラ(移動体)
20,64 切削刃
22 切削チップ
30,62 モータ
44,61 水平ガイド
50 角形鋼管
51 溶接ビード
72 スライダ(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図16