IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パロマの特許一覧

<>
  • 特許-コンロ 図1
  • 特許-コンロ 図2
  • 特許-コンロ 図3
  • 特許-コンロ 図4
  • 特許-コンロ 図5
  • 特許-コンロ 図6
  • 特許-コンロ 図7
  • 特許-コンロ 図8
  • 特許-コンロ 図9
  • 特許-コンロ 図10
  • 特許-コンロ 図11
  • 特許-コンロ 図12
  • 特許-コンロ 図13
  • 特許-コンロ 図14
  • 特許-コンロ 図15
  • 特許-コンロ 図16
  • 特許-コンロ 図17
  • 特許-コンロ 図18
  • 特許-コンロ 図19
  • 特許-コンロ 図20
  • 特許-コンロ 図21
  • 特許-コンロ 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】コンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20221216BHJP
   F24C 3/02 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F24C15/00 M
F24C3/02 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018225599
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020085421
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052840(JP,A)
【文献】特開平09-196387(JP,A)
【文献】特開2010-032197(JP,A)
【文献】実開昭57-11410(JP,U)
【文献】国際公開第00/52392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00-3/14
7/00、7/04-7/06
9/00-15/14
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナを収容する筐体と、
前記筐体の前部に固定されるフロント部材と、
前記フロント部材に対して変位可能に取り付けられ、前記フロント部材の前側に突出した前方位置と前記前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する操作パネルと、
細長の弾性部材と、前記弾性部材が巻かれるとともに前記弾性部材の一端側を保持するボビン部と、を有し、前記ボビン部において前記弾性部材が巻かれる部分の両側に軸部が設けられてなる付勢部と、
を備え、
前記付勢部は、前記弾性部材の少なくとも一部が延びて延出部位となる第1状態と、前記第1状態のときの前記延出部位が前記ボビン部に巻かれる第2状態と、に変化し、前記第1状態のときに前記弾性部材において前記第2状態に復帰しようとする力が生じる構成であり、
前記操作パネルは、上面側に操作部が設けられてなるパネル本体と、前記パネル本体と一体的に構成されるとともに、前記パネル本体から後方側に延びる延設部と、を有し、
前記延設部には、前記ボビン部を回転可能に保持する保持部が形成され、
前記フロント部材は、前記操作パネルの下方に配置されるとともに自身の一部によって前記操作パネルを下方側から支持する支持部と、前記弾性部材の他端側の被取付部を取り付ける取付部と、を有し、前記操作パネルが前記前方位置と前記退避位置との間で変位することに応じて、前記保持部と前記取付部との前後方向の距離が変化する構成であり、
前記保持部は、前記ボビン部の両側の軸部を掛ける一対の保持壁を備え、
前記一対の保持壁の各々には、壁上端から下方に延びる第1スリット部と、前記第1スリット部の下端側の所定部位から前側に延びる第2スリット部と、が形成されており、
前記操作パネルが前記退避位置にあるときに前記保持部と前記取付部とが離間して前記付勢部が前記第1状態となり、前記操作パネルが前記前方位置にあるときに前記保持部と前記取付部とが前記第1状態のときよりも接近して前記付勢部が前記第2状態となり、少なくとも前記付勢部が前記第1状態のときに、前記ボビン部の両側の軸部が各々の前記第2スリット部に入りこんだ状態で支持され
前記保持部は、
前記一対の保持壁における前記第1スリット部よりも前側の部位を連結する第1連結部と、
前記一対の保持壁における前記第1スリット部よりも後ろ側の部位を連結する第2連結部と、
を有し、
前記第1連結部と、前記第2連結部と、前記一対の保持壁と、によって枠部が構成されており、
前記枠部は、上端部に前記付勢部を挿入する挿入口が形成され、下端部に開口部が形成され、前記挿入口と前記開口部との間が貫通した構成をなしており、
前記操作パネルが前記前方位置よりも更に前方の所定位置に配置されたときに、前記開口部が前記取付部と向かい合って配置される
コンロ。
【請求項2】
前記ボビン部の両側の軸部が前記第2スリット部から前記第1スリット部側に移動することで、前記弾性部材における前記ボビン部の周囲に巻かれた部分の外周部と前記第1連結部との間に指を挿入する第2挿入口が形成される
請求項1に記載のコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンロ本体2と、このコンロ本体2の前面に設けられた装置ユニット20とを備えたコンロ(ビルトインコンロ1)が開示されている。このコンロの装置ユニット20は、前後方向に出退する操作パネル45を備えている。この操作パネル45には、操作パネル45を一定速度で前方に押し出すための付勢部(定荷重バネ装置100)が設けられている。この付勢部は、ボビン部(ドラム101)とこのボビン部に巻かれたシート状の弾性部材(バネ102)とを有している。弾性部材は、ボビン部から前方に引き延ばされた状態で、弾性部材の先端に設けられた孔部103が、操作パネル45の下方に配置される下カバー60の突出片68に引っ掛けられている。これにより、操作パネル45は、弾性部材の弾性復帰力によって、前方に押し出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-52840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のコンロでは、弾性部材がボビン部から引き出せるように、ボビン部を回転可能に保持する必要がある。そこで、従来、ワッシャ等を用いてボビン部が回転可能に保持されていたが、この場合、ワッシャ等を用いる分、部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネルに対して弾性力を付与する付勢部のボビン部を回転可能に保持するコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のコンロは、ガスバーナを収容する筐体と、前記筐体の前部に固定されるフロント部材と、
前記フロント部材に対して変位可能に取り付けられ、前記フロント部材の前側に突出した前方位置と前記前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する操作パネルと、
細長の弾性部材と、前記弾性部材が巻かれるとともに前記弾性部材の一端側を保持するボビン部と、を有し、前記ボビン部において前記弾性部材が巻かれる部分の両側に軸部が設けられてなる付勢部と、
を備え、
前記付勢部は、前記弾性部材の少なくとも一部が延びて延出部位となる第1状態と、前記第1状態のときの前記延出部位が前記ボビン部に巻かれる第2状態と、に変化し、前記第1状態のときに前記弾性部材において前記第2状態に復帰しようとする力が生じる構成であり、
前記操作パネルは、上面側に操作部が設けられてなるパネル本体と、前記パネル本体と一体的に構成されるとともに、前記パネル本体から後方側に延びる延設部と、を有し、
前記延設部には、前記ボビン部を回転可能に保持する保持部が形成され、
前記フロント部材は、前記操作パネルの下方に配置されるとともに自身の一部によって前記操作パネルを下方側から支持する支持部と、前記弾性部材の他端側の被取付部を取り付ける取付部と、を有し、前記操作パネルが前記前方位置と前記退避位置との間で変位することに応じて、前記保持部と前記取付部との前後方向の距離が変化する構成であり、
前記保持部は、前記ボビン部の両側の軸部を掛ける一対の保持壁を備え、
前記一対の保持壁の各々には、壁上端から下方に延びる第1スリット部と、前記第1スリット部の下端側の所定部位から前側に延びる第2スリット部と、が形成されており、
前記操作パネルが前記退避位置にあるときに前記保持部と前記取付部とが離間して前記付勢部が前記第1状態となり、前記操作パネルが前記前方位置にあるときに前記保持部と前記取付部とが前記第1状態のときよりも接近して前記付勢部が前記第2状態となり、少なくとも前記付勢部が前記第1状態のときに、前記ボビン部の両側の軸部が各々の前記第2スリット部に入りこんだ状態で支持される。
【発明の効果】
【0007】
上記一態様のコンロによれば、少なくとも付勢部が第1状態のときに、ボビン部の両側の軸部が各々の第2スリット部に入りこんだ状態で支持されるので、ボビン部は、少なくとも付勢部が第1状態のときに、上下方向への変位が規制されるとともに、取付部の配置される前側に引っ張られた状態となる。この第1状態から第2状態へ移行する際、ボビン部は上下方向への変位が規制される。即ち、ボビン部は、ワッシャ等を用いることなく、保持部によって回転可能に保持されることとなる。したがって、このコンロによれば、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネルに対して弾性力を付与する付勢部のボビン部を回転可能に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のガスコンロを概略的に示す正面図である。
図2図2は、実施例1のガスコンロを概略的に示す分解斜視図である。
図3図3は、フロント部材と操作パネルとが組み付けられたものを前方から見た斜視図である。
図4図4は、上部構成体を概略的に示す正面図である。
図5図5は、上部構成体を概略的に示す右側面図である。
図6図6は、下部構成体を後方から見た斜視図である。
図7図7は、下部構成体を後方から見た平面図である。
図8図8は、下部構成体を概略的に示す背面図である。
図9図9は、操作パネルを後方から見た斜視図である。
図10図10は、操作パネルを後方から見た平面図である。
図11図11は、操作パネルを後方から見た底面図である。
図12図12は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを後方から見た平面図である。
図13図13は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを概略的に示す背面図である。
図14図14は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを、図12のA-A位置で切断した左側部分の斜視図である。
図15図15は、操作パネルが下部構成体に係合された状態を示す平面図である。
図16図16は、操作パネルが下部構成体との係合が解除されて前方に移動している様子を示す平面図である。
図17】(A)は、操作パネルが退避位置にあるときの操作パネル及び下部構成体を示す平面図であり、(B)は、退避位置での保持が解除された直後の操作パネル及び下部構成体を示す平面図であり、(C)は、操作パネルが前方位置にあるときの操作パネル及び下部構成体を示す平面図である。
図18図18は、ボビン部の両側の軸部が第2スリットに入りこんだ様子を示す斜視図である。
図19図19(A)は、第1の工程後の状態を示す図であり、挿入口から取付部が視認可能な状態を示す平面図である。図19(B)は、第2の工程後の状態を示す図であり、第2の工程の後、ボビン部の両側の軸部を第1スリット側に移動させた状態を示す平面図である。
図20図20は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを前方且つ下方から見た斜視図である。
図21図21は、図15のB-B位置で切断した左側部分の断面図である。
図22図22は、操作パネルを前方且つ下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明の望ましい一例を示す。
保持部は、一対の保持壁における第1スリット部よりも前側の部位を連結する第1連結部と、一対の保持壁における第1スリット部よりも後ろ側の部位を連結する第2連結部と、を有するようにしてもよい。第1連結部と、第2連結部と、一対の保持壁と、によって枠部が構成されるようにしてもよい。枠部は、上端部に付勢部を挿入する挿入口が形成され、下端部に開口部が形成され、挿入口と開口部との間が貫通した構成をなしていてもよい。操作パネルが前方位置よりも更に前方の所定位置に配置されたときに、開口部が取付部と向かい合って配置されるようにしてもよい。この構成によれば、枠部が上下方向に貫通した構成をなすので、開口部が取付部と向かい合って配置されたときに、挿入口から取付部が視認可能となる。このため、作業者は挿入口から取付部の位置を確認しながら、弾性部材の被取付部を取付部に取り付けることができるので、取付作業が容易になる。
【0010】
ボビン部の両側の軸部が第2スリット部から第1スリット部側に移動することで、弾性部材におけるボビン部の周囲に巻かれた部分の外周部と第1連結部との間に指を挿入する第2挿入口が形成されるようにしてもよい。この構成によれば、第2スリット部に入りこんだボビン部を第1スリット部に移動させることで、ボビン部と第1連結部との間隔が広がり、指を挿入する第2挿入口が形成される。このため、この第2挿入口から指を挿入し、その指で弾性部材の被取付部を取付部に取り付けることが可能となり、被取付部を取付部に取り付ける作業がより一層容易になる。
【0011】
<実施例1>
以下、実施例1について、図面を参照して説明する。
図1図2のように、ガスコンロ1(コンロ)は、ガスバーナ4,5,6、ガスバーナ4,5,6を収容するコンロ本体部1Aなどを有しており、図示しないキャビネットに組み込まれるビルトインコンロとして構成されている。
【0012】
以下の説明では、ガスコンロ1において、板状に構成された天板3の板面方向のうち、短手方向を前後方向とし、前後方向と直交する方向である天板3の長手方向を左右方向とする。更に、前後方向及び左右方向と直交する方向である天板3の板厚方向を上下方向として説明する。図1では、左右方向がガスコンロ1の左右方向であり、上下方向がガスコンロ1の上下方向である。また、図2において、左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方、左斜め上方を、それぞれ、ガスコンロ1の前方、後方、右方、左方とする。
【0013】
図2のように、ガスコンロ1はコンロ本体部1Aによって外殻(ケース体)が構成されており、このコンロ本体部1Aの内部にガスバーナ4,5,6などの各種部品が収容された構成をなす。コンロ本体部1Aは、ガスバーナ4,5,6などの各種部品を収容する筐体2と、筐体2の上端部に固定される天板3と、筐体2の前部に固定されるフロント部材20と、フロント部材20の前側に装着される化粧パネル90と、操作パネル60と、操作パネル60の前側に装着される化粧パネル92と、付勢部50と、を備える。
【0014】
筐体2は、公知の金属材料を主体として上方側が開放した箱状に構成されている。左右に一対の側壁部(図2では、一方の側壁部2Cのみを図示)を備えるとともに、これら側壁部の後端部に連結される形で後壁部(図示略)が設けられる。また、筐体2の前面部(図示略)はフレーム状又は壁状に構成されており、これら前面部、側壁部、後壁部によって筐体2の内部空間の前後左右を囲む構成をなし、これら前面部、側壁部、後壁部の下部には底壁部(図示略)が連結されている。筐体2は、これらの壁部によって上部が開口した箱状形態をなしており、筐体2の上端部には、天板3が取り付けられている。
【0015】
図1図2のように、天板3は、板状に構成されると共にガスバーナ4,5,6を露出させるための開口部(貫通孔)が複数個形成された構成をなす。天板3は、カウンタトップ(図示略)の上側に配置される。図2のように、天板3において右手前(右端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(右バーナ)4、左手前(左端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(左バーナ)5、中央奥側にはガスバーナ(奥バーナ)6が夫々設けられている。
【0016】
筐体2の左右方向中央寄りには、グリル部8が配置されている。グリル部8は、箱状に構成されたグリル庫、グリル庫を開閉するグリル扉8B、ガスバーナとして構成されるとともにグリル庫内に配置されるグリルバーナ(図示略)、グリル扉8Bの後方側においてグリル扉8Bと一体的に設けられる受け皿、受け皿の上に載置される焼き網などを備える。受け皿はグリル庫の底面部に載置されており、グリル扉8Bを前方側に引き出すように操作することで、グリル扉8Bとともに受け皿及び焼き網が一体的に引き出されるようになっている。なお、グリル庫にレールユニットを設けて、グリル扉8Bや受け皿などをレールユニットによって前後方向に案内する構成となっていてもよい。なお、天板3において後端寄りの位置には、グリル庫と連通するグリル排気口9が設けられている。
【0017】
図1のように、筐体2の前面の右寄りには2つの点火ボタン11,14(点火操作部)が、左寄りにはもう2つの点火ボタン12,13が設けられている。点火ボタン11は、ガスバーナ4の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンであり、点火ボタン12は、ガスバーナ5の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンであり、点火ボタン13は、ガスバーナ6の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン14は、グリル部8のガスバーナの点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。各点火ボタン11,12,13,14は、フロント部材20の前面よりも前方へ突出して設けられ、筐体2の内部に設けられた図示しない制御回路と接続されており、使用者が押し込み操作すると、制御回路による制御により、その操作されたボタンに対応するガスバーナの点火又は消火が行われるようになっている。
【0018】
図1のように、筐体2の前面の右寄りには2つのレバー16A,16D(火力調整操作部)が、左寄りにはもう2つのレバー16B,16Cが設けられている。レバー16A,16B,16C,16Dはそれぞれ、対応するガスバーナ4,5,6又はグリル部8のグリルバーナにおける火力の調整操作を行うための火力調整レバーである。点火ボタン12,13の下側には、ガスコンロ1に電力を供給するための電池を収容する電池ボックス18が設けられている。
【0019】
フロント部材20は、例えば、金属材料又は樹脂材料を主体として構成されている。上述した筐体2には、前方に開口した収容凹部2Aが形成されている。フロント部材20は、グリル部8の左右方向一方側(本実施例では右側)において、この収容凹部2Aの内部を前方から覆うように配置され、筐体2の前部に固定される。具体的には、筐体2の前面部(前面を構成する部分)の一部を覆うように筐体2に対して直接又は他部材を介して間接的に固定される構成をなしている。
【0020】
図3には、フロント部材20に操作パネル60を組付けた組付状態の様子が示されている。フロント部材20は、上部構成体22と下部構成体24とを有する。上部構成体22及び下部構成体24の各々は、全体が一体成形されている。
【0021】
上部構成体22は、図3~5のように、正面視において略矩形状をなしており、収容凹部2Aの内部を前方から覆うように収容凹部2Aの開口部分に配置される。上部構成体22は、前面側に第1開口部32,33と、第2開口部34,35と、を有する。第1開口部32,33は、前後方向に貫通した開口形状をなしており、自身の内部に上述した点火ボタン11,14が嵌り込むように配置される。
【0022】
第2開口部34,35はそれぞれ、第1開口部32,33の上方に配置され、正面視において所定方向(本実施例では左右方向)に長い形態をなしている。上述したレバー16A,16Dは、収容凹部2Aの内部から前方に向かって突出した形態をなしている。第2開口部34,35は、これらのレバー16A,16Dが後方から挿し通されるとともに、自身の内部領域がレバー16A,16Dの移動経路として構成されている。即ち、レバー16A,16Dは、第2開口部34,35を介して前方に突出した状態で配置され、突出した部分が操作されることで第2開口部34,35を左右方向に移動し得るようになっている。レバー16A,16Dが左右方向に操作されることで、対応するガスバーナ4又はグリル部8のグリルバーナにおける火力が調整される。
【0023】
これらの第1開口部32,33と第2開口部34,35とは一体成形されている。また、化粧パネル90は、第1開口部32,33及び第2開口部34,35を塞がないように、第1開口部32,33及び第2開口部34,35に対応する部分が前後方向に貫通した開口形状をなしている。
【0024】
上部構成体22は、収容凹部2Aの内部を前方から覆う前面部26と、前面部26の下側部分の左右両端部から後方に延びる一対の側面部28,28とを有する。各側面部28の下側部分には、少なくとも1つ(本実施例では4つ)の連結孔28Aが前後方向に等間隔で形成されている。
【0025】
下部構成体24は、図3のように、上部構成体22の下側に配置されるとともに上部構成体22と共に前方側に開口した孔部30を構成する部材である。下部構成体24は、図6~8のように、平面視において左右方向に長い略矩形状をなしており、底部36と、一対のガイド壁38,38と、ラック部40と、取付部42と、被係合部44と、を有する。また、下部構成体24は、操作パネル60の下方に配置されるとともに自身の一部によって操作パネル60を下方側から支持する支持部46を有しており、この支持部46は、底部36と、一対のガイド壁38,38と、を有する。支持部46は、操作パネル60がスライド可能に載置される部位であり、自身の外面によって操作パネル60の下面を下から支えるように支持する部位である。また、支持部46は、一対のガイド壁38,38によって左右方向の移動を規制しながら操作パネル60の前後方向の移動を案内する部位でもある。
【0026】
底部36は、平面視において左右方向に長い略矩形状をなしており、上下方向に厚みを有する。
【0027】
一対のガイド壁38,38の各々は、板状をなしており、底部36の左右両端部からそれぞれ立ち上がり前後方向に沿って延びている。一対のガイド壁38,38の各々の外側面には、上部構成体22に設けられた各連結孔28Aの位置に対応して連結孔28Aと同数(本実施例では4つ)の連結部38Aが形成されている。各連結部38Aは、左右方向外方に突出した形状をなしており、ガイド壁38,38が揺動することで各連結孔28Aに嵌まり込む。これにより、下部構成体24が上部構成体22に連結される。また、ガイド壁38,38の各々の内側面には、前後方向に沿って延びるガイド溝38B,38Bが形成されている。
【0028】
ラック部40は、後述のピニオン部84と噛み合う部分であり、底部36の上面から立ち上がり前後方向に沿って延びている。ラック部40は、左右方向において一対のガイド壁38,38の間に配置される。ラック部40は、一対のガイド壁38,38の一方側(本実施例では右側のガイド壁38側)寄りに配置される。ラック部40と一方のガイド壁38(本実施例ではラック部40と近い方のガイド壁38)との間の第1空間S1には、ピニオン部84が配置される。そして、ラック部40の第1空間S1側の面がピニオン部84と噛み合う。ラック部40は、下部構成体24の一部として、一対のガイド壁38,38と一体成形されている。
【0029】
上述した底部36には、底部36の上面に入り込んだ異物を下方に逃がす逃がし孔36Bが形成されている。逃がし孔36Bは、底部36のうち、第1空間S1の下面を構成する特定底部36Aに形成されており、特定底部36Aにおける左右方向のガイド壁38側において前後方向に沿って少なくとも1つ(本実施例では4つ)設けられている。特定底部36Aの上面(第1空間S1の下面)は、左右方向において、ラック部40側から逃がし孔36B側に向かって下るように傾斜している。
【0030】
取付部42は、後述する付勢部50の被取付部51Aが取り付けられる部分であり、底部36の上面から立ち上がり前方に突出した形状をなしている。取付部42は、下部構成体24の左右方向において、第1空間S1とは反対側に配置される。
【0031】
被係合部44は、後述する操作パネル60の係合部70と係合する部分である。被係合部44は、係合部70とともに、押圧操作が行われるごとに係合状態とこの係合状態が解除された係合解除状態とに交互に切り替わるプッシュラッチ機構を構成する。被係合部44は、底部36の左右方向中央部の後端部から上方に立ち上がって構成されている。
【0032】
操作パネル60は、ガスコンロ1による調理の加熱温度、加熱時間等を設定するために用いられるものである。操作パネル60は、フロント部材20に対して変位可能に取り付けられる。具体的には、操作パネル60は、フロント部材20に組み付けられた組付状態において孔部30内に配置され、フロント部材20の前側に突出した前方位置と前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する。操作パネル60の「前方位置」は、退避位置のときよりも操作パネル60の前方への突出量が大きくなる所定位置であり、具体的には、操作パネル60における操作部64A(外部操作可能に構成された操作ボタンや表示装置などが設けられた部分であり、パネル本体64の上面部の過半領域を構成する部分)が露出する位置であり、且つ、後述する延設部66,66が露出しない位置である。なお、図9では、操作部64Aの上面部を構成する装飾カバー(上面カバー)を省略して示しており、装飾カバーの下方に配置された表示装置64Bや操作ボタン64Cなどを露出させて例示している。操作パネル60の「退避位置」は、操作パネル60の大部分又は全部が化粧パネル90の前面よりも後方に配置される位置である。図1等で示す構成では、操作パネル60が「退避位置」のときにフロント部材20に取り付けられる化粧パネル90の前面と操作パネル60に取り付けられる化粧パネル92の前面とが前後方向において同位置又は略同位置に揃うようになっている。図9~11のように、操作パネル60は、前後方向に長く上下方向に厚みを有するベース部62と、一対の被ガイド部68,68と、係合部70とを有している。
【0033】
ベース部62は、パネル本体64と、延設部66と、を有する。パネル本体64は、ベース部62の前側部分を構成し、左右方向に長い平面視略矩形状をなしている。パネル本体64は、上面側に上記操作部64Aが設けられている。延設部66は、パネル本体64と一体的に構成されるとともに、パネル本体64から後方側に延びている。より具体的には、延設部66は、第1延設部66Aと、第2延設部66Bとを有する。第1延設部66Aは、パネル本体64と一体的に構成されるとともに、パネル本体64の左右方向一端側(本実施例では右側)においてパネル本体64から後方側に延びている。第2延設部66Bは、パネル本体64と一体的に構成されるとともに、パネル本体64の左右方向他端側(本実施例では左側)においてパネル本体64から後方側に延びている。第1延設部66Aと第2延設部66Bとは、左右方向に離間して配置されており、第1延設部66Aと第2延設部66Bとの間には、後方に開口した空間が形成されている。
【0034】
係合部70は、上述した被係合部44と係合する部分である。係合部70は、パネル本体64の後面から後方に突出した形状をなしており、第1延設部66Aと第2延設部66Bとの間に形成された空間に配置される。
【0035】
一対の被ガイド部68,68は、上述した一対のガイド壁38,38(フロント部材20)によってガイドされる部分である。一対の被ガイド部68,68は、操作パネル60の左右両側面の下端部から左右方向外方に突出して前後方向に延びる形状をなしている。
【0036】
操作パネル60の延設部66(第2延設部66B)には、上方に開口した第2空間S2が形成されており、この第2空間S2には、付勢部50が収容される。
【0037】
この付勢部50は、少なくとも退避位置にある操作パネル60に対して前方側への力を継続的に付与する部分である。付勢部50は、例えば定荷重ばねとして構成されており、細長の弾性部材51と、弾性部材51が巻かれるとともにこの弾性部材51の一端側を保持するボビン部52と、を有する。弾性部材51は、例えば金属製であり、細長のシート状に構成されている。ボビン部52は、後述する胴部52Aに弾性部材51の一端側の端部付近が接触する形で弾性部材51が巻かれており、自身に巻かれた弾性部材51の摩擦力によって、弾性部材51の一端側を保持する。具体的には、弾性部材51がある程度の長さ以上引き延ばされない限り、弾性部材51の一端側の端部付近が胴部52Aが巻かれた状態が維持されるようになっており、この状態が維持されていれば、弾性部材51と胴部52Aとが連結された状態が保たれる。なお、ボビン部52は、弾性部材51の一端側を保持可能な構成であればよく、例えば、弾性部材51の一端側をボビン部52に固定することで保持する構成としてもよい。ボビン部52において弾性部材51が巻かれる部分(ボビン部52)の両側には、軸部53が設けられている。
【0038】
付勢部50は、弾性部材51の少なくとも一部が延びて延出部位となる第1状態(図17(A))と、第1状態のときの延出部位がボビン部52に巻かれる第2状態(図17(C))と、に変化し、第1状態のときに弾性部材51において第2状態に復帰しようとする力が生じる構成となっている。弾性部材51の他端側には、孔状の被取付部51Aが形成されており、この被取付部51Aが上述した取付部42に引っ掛かることで取付部42に取り付けられる。付勢部50では、図17(A)のような第1状態のときに、弾性部材51におけるボビン部52から延びている部分においてボビン部52に巻かれようとする力が生じるため、第1状態のときには、弾性部材51の端部付近に形成された被取付部51Aにおいてボビン部52側に近づこうとする力が生じるようになっている。第1状態は、具体的には、図17(A)のように、操作パネル60が前方位置(それ以上前側に変位しないように規制された位置)にあるときの付勢部50の状態であり、このときに弾性部材51においてボビン部52から延びる部分が延出部位の一例に相当する。また、第2状態は、具体的には、図17(C)のように、操作パネル60が退避位置(それ以上後ろ側に変位しないように規制された位置)にあるときの付勢部50の状態であり、このときには、上記延出部位の一部(過半領域に相当する大部分)がボビン部52に巻かれる状態となる。図17(C)のような第2状態のときにも、被取付部51Aにおいてボビン部52側に近づこうとする力が生じるようになっている。
【0039】
図10図14のように、ボビン部52は、弾性部材51が巻かれる円柱状且つ軸状の胴部52Aと、胴部52Aの両端部付近において胴部52Aの半径方向にフランジ状に張り出すように設けられる円盤状の鍔部52B,52Bと、を有する。胴部52Aの長さ寸法は、弾性部材51の幅寸法よりも僅かに長い。鍔部52Bの径寸法は、胴部52Aの径寸法よりも大きく、且つ、第2状態における弾性部材51の径寸法よりも大きい。上述した軸部53,53は、鍔部52Bの外側面において胴部52Aの中心線(円柱の中心)の延長線上に設けられ、鍔部52B,52Bのそれぞれの外面(弾性部材51が巻かれる側とは反対側の板面)からの胴部52Aの中心線に沿った向きに突出している。
【0040】
操作パネル60の下面には、ダンパ装置82が固定される。ダンパ装置82は、ピニオン部84と、減衰部86とを有する。ピニオン部84は、下部構成体24(フロント部材20)のラック部40と噛み合うように配置される。減衰部86は、例えばロータリーダンパとして構成されており、ピニオン部84の回転エネルギーを減衰させる機能を有する。
【0041】
図12~14のように、操作パネル60は、自身の被ガイド部68,68が、下部構成体24(フロント部材20)におけるガイド壁38,38のガイド溝38B,38Bに挿通されることで、下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられる。その際、第2空間S2に収容された付勢部50の被取付部51Aが下部構成体24(フロント部材20)の取付部42に取り付けられる。また、操作パネル60に固定されたダンパ装置82のピニオン部84は、ラック部40に噛み合う。
【0042】
操作パネル60が下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられた状態(組付状態)では、ガイド壁38,38が、被ガイド部68,68に対向して配置される。更に、ラック部40は、ピニオン部84が配置される第1空間S1と、付勢部50が収容される第2空間S2とを仕切る構成で配置される。即ち、ラック部40は、ピニオン部84に対して付勢部50側に配置される。更に、操作パネル60の左右方向の一方側(本実施例では左側)に付勢部50が配置されるとともに、他方側(本実施例では右側)にピニオン部84が配置される。より具体的には、操作パネル60の左右方向の中央位置よりも一方側(左側)且つ操作パネル60の前後方向中央位置よりも一方側(後方側)に付勢部50が配置されている。付勢部50は、操作パネル60の左右方向中央位置よりも一方側(左側)且つ操作パネル60の前後方向中央位置よりも一方側(後方側)の所定部位(具体的には、付勢部50を保持する保持部110付近)を継続的に前側に押すように力を加え続ける。一方で、操作パネル60の左右方向の中央位置よりも他方側(右側)且つ操作パネル60の前後方向中央位置付近にピニオン部84が配置されている。更に、ピニオン部84は、操作パネル60が図15で示す退避位置にあるとき及び退避位置から前方位置に変位するまでの間は、左右方向他方側(右側)のガイド壁38の前端部38Cよりも後方側及びこのガイド壁38に形成されたガイド溝38Bの前端部よりも後方側に位置するようになっている。更に、底部36は、被ガイド部68,68の下方側において被ガイド部68,68と対向して配置される。
【0043】
下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられた操作パネル60(組付状態にある操作パネル60)は、下部構成体24(フロント部材20)のガイド壁38,38に沿って前後方向に移動する。即ち、ガイド壁38,38は、被ガイド部68,68の移動の際に被ガイド部68,68を案内する。
【0044】
図17(A)(B)(C)には、操作パネル60の変化を示しており、図17(A)は、操作パネル60が退避位置に配置された状態(図15と同様の状態)であり、図17(B)は、退避位置での保持が解除された直後の状態(図16と同様の状態)であり、図17(C)は、操作パネル60が前方位置に配置された状態(図12と同様の状態)である。
【0045】
操作パネル60は、図15図17(A)のように、係合部70が下部構成体24(フロント部材20)の被係合部44に係合した状態では、退避位置に配置される。付勢部50は、操作パネル60が退避位置に配置されているときに、付勢部50の少なくとも一部が直線状に延びた状態で配置される。このとき、付勢部50の被取付部51A(図11参照)はボビン部52(付勢部50の基端部)よりも前方側において下部構成体24の取付部42に取り付けられるので、付勢部50の被取付部51Aがボビン部52(付勢部50の基端部)を前方側に引っ張るように作用する。即ち、付勢部50は、少なくとも退避位置にある操作パネル60に対して前方側への移動力を継続的に付与する。
【0046】
操作パネル60が退避位置に配置された状態において、操作パネル60が後方に押圧されると、図16図17(B)のように係合部70と被係合部44との係合状態が解除される。そして、付勢部50が操作パネル60に付与する移動力によって、操作パネル60が前方側に移動する。このとき、操作パネル60に加わる移動力は、ラック部40及びピニオン部84を介して減衰部86に伝達され、減衰部86によって減衰される。
【0047】
本構成では、操作パネル60が図16図17(B)のような状態(退避位置での保持状態が開示された直後の状態)となり、付勢部50の付勢によって操作パネル60が前方側に移動しようとしたときに、操作パネル60の左右方向一方側(左右方向において付勢部50が配置される側)がより強く前側に引っ張られることになる。このような引っ張り動作が生じると、操作パネル60では、左右方向一方側が他方側よりも早く前側に移動しようとする回転力(即ち、左右方向他方側が左右方向一方側よりも遅れるような回転力)が継続的に生じやすくなり、この回転力により、ピニオン部84を左右方向一方側に向かわせようとする力が継続的に加わる。より具体的には、図16のように、下部構成体24に保持される操作パネル60において前端部38C付近を支点とするような回転力(図16において反時計回りの向きの回転力)が生じ、左側が右側より前側に位置するような傾きを生じさせようとする力が継続的に加わる。このような傾きを生じさせようとする力が継続的に生じると、第1延設部66A及びその前側部分において前端部38Cよりも後方側に位置する部位を左右方向一方側(付勢部50側)に寄せようとする力が継続的に生じることになる。このような作用が生じるため、図16のように付勢部50の付勢によって操作パネル60が前方側に移動しようとするときには、ピニオン部84がラック部40に継続的に押し付けられるように作用しながら移動しやすくなる。よって、ピニオン部84とラック部40との噛み合いが外れにくい状態で操作パネル60を前方側に移動させることができる。
【0048】
付勢部50から付与された移動力によって前方側に移動した操作パネル60は、図16図17(B)のような状態を経て、図17(C)のように前方位置に配置される。また、前方位置に配置された操作パネル60が孔部30内に押し込まれ、係合部70が被係合部44に係合すると、操作パネル60が退避位置に配置される。
【0049】
次に、主に図18~21を参照して、付勢部50を操作パネル60及び下部構成体24に取り付ける構成について説明する。
図19に示すように、第1延設部66A及び第2延設部66Bのうちの一方の延設部66(本実施例では第2延設部66B)には、付勢部50を保持する保持部110が形成されている。保持部110は、付勢部50のボビン部52を回転可能に保持する部分であり、具体的には、上述した胴部52Aの軸方向が左右方向に沿った方向又は左右方向に対して僅かに傾斜した方向となり、上述した軸部53,53の突出方向が左右方向に沿った方向又は左右方向に対して僅かに傾斜した方向となるようにボビン部52を回転可能に保持する。ボビン部52は、このように保持されることで、左右方向に沿った方向又は左右方向に対して僅かに傾斜した方向を回転軸の向きとするように回転可能とされている。保持部110は、取付部42の後方側に配置されており、図17(A)(C)のように、操作パネル60が前方位置にあるときでも退避位置にあるときでも、取付部42の後方側に位置するようになっている。そして、保持部110は、操作パネル60が前方位置と退避位置との間で変位することに応じて、取付部42との前後方向の距離が変化する構成となっている。
【0050】
保持部110は、図18に示すように、ボビン部52の両側の軸部53を掛ける一対の保持壁112,113を備える。一対の保持壁112,113の各々は、前後方向に沿って延び、各々の厚さ方向が左右方向に沿った方向となっている。一対の保持壁112,113の各々には、第1スリット部114と、第2スリット部116と、が形成されている。第1スリット部114及び第2スリット部116の各々の幅寸法は、軸部53の径寸法よりも僅かに大きい。
【0051】
第1スリット部114は、保持壁112の上端部から下方に延びており、下端部が保持壁112の上下方向の略中央まで達している。第2スリット部116は、第1スリット部114の下端側の所定部位(本実施例では、第1スリット部114の下端)から前側に延びている。即ち、第2スリット部116は、保持壁112の上下方向の略中央において前後方向に延びている。
【0052】
保持部110は、第1連結部118と、第2連結部120と、を有する。第1連結部118は、一対の保持壁112,113における第1スリット部114よりも前側の部位を連結する部分である。第2連結部120は、一対の保持壁112,113における第1スリット部114よりも後ろ側の部位を連結する部分である。第1連結部118及び第2連結部120は、各々左右方向に沿って延びている。
【0053】
一対の保持壁112,113、第1連結部118、及び第2連結部120の上端部の高さ位置は揃っている。一対の保持壁112,113、の下端部の高さ位置は揃っており、第1連結部118及び第2連結部120の下端部の高さ位置よりも低い。第1連結部118及び第2連結部120の下端部の高さ位置は揃っている。
【0054】
一対の保持壁112,113と、第1連結部118と、第2連結部120と、によって枠部122が構成されている。この枠部122は、上端部に付勢部50を挿入する挿入口124が形成され、下端部に開口部126が形成され、挿入口124と開口部126との間が貫通した構成をなしている。枠部122の左右方向の内側寸法は、ボビン部52の幅寸法よりも僅かに大きい。枠部122の前後方向の内側寸法は、ボビン部52の鍔部52Bの径寸法よりも大きい(鍔部52Bの径寸法の略2倍の長さ寸法)。一対の保持壁112,113の高さ寸法は、鍔部52Bの径寸法と略同じである。第1連結部118及び第2連結部120の高さ寸法は、鍔部52Bの径寸法よりも小さい。
【0055】
第1スリット部114は、第1連結部118と第2連結部120との間において、第2連結部120寄りに配置される。第2スリット部116は、第1連結部118と第2連結部120との間に納まるように配置される。より具体的には、第2スリット部116は、第1連結部118側の端部が第1連結部118と第2連結部120との略中央に配置され、第2連結部120側の端部が第1連結部118と第2連結部120との間において第2連結部120寄りに配置される。
【0056】
ここで、付勢部50の設置方法の一例を説明する。
付勢部50をコンロ1(操作パネル60及び下部構成体24)に設置する工程には、一対の保持壁112,113にボビン部52の両側の軸部53を掛ける第1の工程と、弾性部材51の被取付部51Aを取付部42に引っ掛ける第2の工程とが含まれる。ここでは、第1の工程を行ってから第2の工程を行う例について説明するが、第2の工程を行ってから第1の工程を行うようにしてもよいし、両工程を並行して行うようにしてもよい。この第1の工程及び第2の工程は、下部構成体24に上部構成体22が組み付けられていない状態で行ってもよく、下部構成体24に上部構成体22が組み付けられた状態で行ってもよい。以下では、下部構成体24に上部構成体22が組み付けられていない状態で第1の工程及び第2の工程を行う場合を説明する。
【0057】
第1の工程は、ボビン部52の鍔部52B,52B間の軸部に弾性部材51が円筒状に巻かれて形状が保持された状態(弾性部材51の先端部側が引っ張られていない状態)となっている円柱状の付勢部50を、枠部122内に収容する工程である。第1の工程では、例えば作業者が付勢部50を指等で把持しつつ移動させ、付勢部50におけるボビン部52の両側の各軸部53を、一対の保持壁112,113の各第1スリット部114にそれぞれ入り込ませて引っ掛かった状態とする。このような作業により、図18図19(A)のように、両鍔部52B,52B及び弾性部材51が巻かれた部分(ボビン部52における両鍔部52B,52B間の軸部に弾性部材51が巻かれてなる円柱状の部分)が一対の保持壁112,113の間に配置され、枠部122内に収容される。この収容状態のときには、各軸部53は、一対の保持壁112,113に形成された各第2スリット部116での移動が許容され、図18図19(A)のように第2スリット部116の前端部に当接した状態にもなり得るし、第2スリット116の後端部に当接した状態にもなり得る。
【0058】
第1の工程の後には、第2の工程を行う。第2の工程は、弾性部材51の被取付部51Aを取付部42に引っ掛ける工程である。本構成では、操作パネル60が下部構成体24に連結された状態において、操作パネル60が上述した前方位置(図17(C)参照)よりも更に前方の所定位置に配置されたときに、開口部126が取付部42と向かい合って配置され、開口部126の開口領域の真下に取付部42が位置する状態となる。従って、第2の工程では、例えば、作業者が操作パネル60に連結された下部構成体24を把持しつつ前後方向へ相対移動させ、取付部42の前後方向の位置がボビン部52と第1連結部118との間の位置になるように配置する。本構成では、作業者が挿入口124付近を上方から上下方向に見たときに挿入口124の開口領域及び開口部126の開口領域を介して枠部122の下方が視認可能となる。このため、作業者は、枠部122の上方から挿入口124及び開口部126を介して枠部122の下方を覗きながら下部構成体24を前後方向に動かすことで、取付部42を開口部126の開口領域の真下(前後方向においてボビン部52と第1連結部118との間の位置)に容易に配置することができる。
【0059】
ユーザは、取付部42を開口部126の開口領域の真下(前後方向においてボビン部52と第1連結部118との間の領域)に配置した後、その取付部42に対して弾性部材51の被取付部51Aを引っ掛ける。ユーザは、被取付部51Aを取付部42に引っ掛ける際、ボビン部52の両側の軸部53を第2スリット部116から第1スリット部114側に移動させることもできる。こうすることで、弾性部材51におけるボビン部52の周囲に巻かれた部分の外周部と第1連結部118との間に、指を挿入する第2挿入口128がより大きく形成される。この状態において、ユーザは、第2挿入口128に指を挿入し、弾性部材51の先端側の表面を押しながら位置調整しつつ被取付部51Aを取付部42に引っ掛ける。なお、被取付部51Aを取付部42に引っ掛けた後でも、ボビン部52は、前後方向に多少移動可能であり、例えば、図19(B)のように第1スリット部114の下端に移動させることもできるし、第2スリット部116の前端に移動させることもできる。このように被取付部51Aを取付部42に引っ掛けた後には、その引っ掛けた位置よりも操作パネル60が後方側に退避した状態(例えば、図15の状態)に変化させ、その状態で下部構成体24に対して上部構成体22を組み付ける。下部構成体24に上部構成体22が組み付けられた状態では、操作パネル60が図19(B)の位置まで移動せず、図17(C)で示す前方位置よりも前には移動しないように移動が規制される。このようにして、付勢部50の設置が完了する。
【0060】
図21に示すように、操作パネル60及び下部構成体24に付勢部50が設置された状態では、付勢部50(鍔部52B)の上端部が枠部122(保持部110)の上端部と略同じ高さ位置となり、付勢部50(鍔部52B)の下端部が枠部122(保持部110)の下端部よりも低い高さ位置に配置される。
【0061】
操作パネル60及び下部構成体24に設置された付勢部50は、以下のように動作する。付勢部50は、操作パネル60が退避位置にあるときには保持部110と取付部42とが離間して第1状態となり、操作パネル60が前方位置にあるときには保持部110と取付部42とが第1状態のときよりも接近して第2状態となり、少なくとも第1状態のときにボビン部52の両側の軸部53が各々の第2スリット部116に入りこんだ状態で支持される。即ち、付勢部50は、保持部110によって回転可能に保持される。
【0062】
次に、主に図11,22を参照して、操作パネル60の配線について説明する。
コンロ1は、図11に示すように、1以上の電線140を備えている。この電線140は、一端側がパネル本体64に接続されており、パネル本体64の後ろ側から後方へ延びている。
【0063】
図11及び図22に示すように、上述した第1延設部66A及び第2延設部66Bのうちの一方の延設部66、より具体的には、上述した第1延設部66A及び第2延設部66Bのうちのグリル部8に近い側の延設部66(本実施例では第2延設部66B)には、パネル本体64から延びる電線140の通路を構成する溝部142が形成されている。また、溝部142は、一方の延設部66の下側に形成されている。
【0064】
溝部142は、保持部110の左右方向片側(本実施例ではグリル部8側)に配置されるとともに、保持部110の前側から保持部110の後ろ側へと続くように形成されている。より具体的には、溝部142は、底面部144と、底面部144から下方に突出して前後方向に延びる第1壁部146及び第2壁部148と、を備える。第1壁部146及び第2壁部148は互いに対向する。第1壁部146は、第2壁部148よりもグリル部8側に配置されている。
【0065】
第1壁部146及び第2壁部148の少なくともいずれか(本実施例では第2壁部148)において、保持部110よりも後方側には溝部142から右側又は左側(本実施例では右側)に開放した開放部149が形成されている。この開放部149は、第1壁部146及び第2壁部148のうち、グリル部8から遠い側の壁部(本実施例では第2壁部148)において、グリル部8から離れる側(本実施例では右側)に向かって開放している。
【0066】
溝部142には、溝部142内に配置された電線140をガイドする少なくとも1つ(本実施例では2つ)の電線ガイド部150が設けられている。電線ガイド部150の各々は、台座152と、台座152に固定される挿通部154と、を有する。台座152は、直方体状をなしており、底面部144上に配置される。挿通部154は、台座152に連結されており、電線140が挿通される貫通孔156が形成されている。
【0067】
2つの電線ガイド部150のうちの第1電線ガイド部150Aは、保持部110よりもグリル部8側の溝部142内に配置されている。第1電線ガイド部150Aの貫通孔156は、前後方向に貫通されているとともに、第1壁部146と第2壁部148との間における第1壁部146寄りの位置に配置されている。2つの電線ガイド部150のうち第2電線ガイド部150Bは、溝部142における後端部寄りに配置されている。第2電線ガイド部150Bの貫通孔156は、前方側の開口が前方斜め左側(グリル部8側)を向いており、後方側の開口が後方斜め右側(グリル部8とは反対側)を向いている。
【0068】
電線140は、溝部142内において保持部110の前側から後ろ側へと続くように取り付けられている。より具体的には、電線140は、第1電線ガイド部150Aの貫通孔156、及び第2電線ガイド部150Bの貫通孔156に挿通されている。更に、電線140は、開放部149を介して溝部142内外に跨るように取り付けられている。これにより、パネル本体64から延びる電線140は、保持部110の周りを、グリル部8側を通って半周し、開放部149から抜けるように配置される。
【0069】
次に、本構成の効果を例示する。
本構成のコンロ1では、少なくとも付勢部50が第1状態のときに、ボビン部52の両側の軸部53が各々の第2スリット部116に入りこんだ状態で支持されるので、ボビン部52は、少なくとも付勢部50が第1状態のときに、上下方向への変位が規制されるとともに、取付部42の配置される前側に引っ張られた状態となる。この第1状態から第2状態へ移行する際、ボビン部52は上下方向への変位が規制される。即ち、ボビン部52は、ワッシャ等を用いることなく、保持部110によって回転可能に保持されることとなる。したがって、このコンロ1によれば、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネル60に対して弾性力を付与する付勢部50のボビン部52を回転可能に保持することができる。
【0070】
更に、保持部110は、一対の保持壁112,113における第1スリット部114よりも前側の部位を連結する第1連結部118と、一対の保持壁112,113における第1スリット部114よりも後ろ側の部位を連結する第2連結部120と、を有している。コンロ1は、第1連結部118と、第2連結部120と、一対の保持壁112,113と、によって枠部122が構成されている。この枠部122は、上端部に付勢部50を挿入する挿入口124が形成され、下端部に開口部126が形成され、挿入口124と開口部126との間が貫通した構成をなしている。開口部126は、操作パネル60が前方位置よりも更に前方の所定位置に配置されたとき(具体的には、操作パネル60が前方位置よりも更に前方へ移動することを規制する上部構成体が組み付けられていない状態で前方位置よりも更に前方の所定位置に配置されたとき)に、取付部42と向かい合って配置される。この構成によれば、枠部122が上下方向に貫通した構成をなすので、開口部126が取付部42と向かい合って配置されたときに、挿入口124から取付部42が視認可能となる。このため、作業者は挿入口124から取付部42の位置を確認しながら、弾性部材51の被取付部51Aを取付部42に取り付けることができるので、取付作業が容易になる。
【0071】
更に、コンロ1は、ボビン部52の両側の軸部53が第2スリット部116から第1スリット部114側に移動することで、弾性部材51におけるボビン部52の周囲に巻かれた部分の外周部と第1連結部118との間に指を挿入する第2挿入口128が形成されるようになっている。
この構成によれば、第2スリット部116に入りこんだボビン部52を第1スリット部114に移動させることで、ボビン部52と第1連結部118との間隔が広がり、指を挿入する第2挿入口128が形成される。このため、この第2挿入口128から指を挿入し、その指で弾性部材51の被取付部51Aを取付部42に取り付けることが可能となり、被取付部51Aを取付部42に取り付ける作業がより一層容易になる。
【0072】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
上述した実施例1では、ガイド壁38を下部構成体24に設ける構成としたが、フロント部材20であれば下部構成体24以外(例えば上部構成体22)に設けるようにしてもよい。
【0074】
上述した実施例1では、操作パネル60の左右方向の左側に付勢部50が配置されるとともに、右側にピニオン部84が配置されるようにした。しかし、操作パネル60の左右方向の右側に付勢部50が配置されるとともに、左側にピニオン部84が配置されるようにしてもよい。また、付勢部50及びピニオン部84が、操作パネル60の左右方向の一方側に偏って配置されるようにしてもよいし、付勢部50及びピニオン部84のうち少なくともいずれか一方が操作パネル60の左右方向中央部に配置されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…ガスコンロ(コンロ)
2…筐体
4,5,6…ガスバーナ
20…フロント部材
46…支持部
50…付勢部
51…弾性部材
52…ボビン部
53…軸部
60…操作パネル
64…パネル本体
66…延設部
110…保持部
112,113…保持壁
114…第1スリット部
116…第2スリット部
118…第1連結部
120…第2連結部
122…枠部
124…挿入口
126…開口部
128…第2挿入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22