IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三和鋼業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図1
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図2
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図3
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図4
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図5
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図6
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図7
  • 特許-持ち運び式止水板装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】持ち運び式止水板装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20221216BHJP
   E02B 7/22 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E02B7/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018226936
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090801
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月19日 三和鋼業株式会社のホームページ(http://sanwa-door.jp、http://sanwa-door.jp/newitem02php)にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月20日 東京都中央区日本橋小網町10-2丸岡ビル4階において開催された一般社団法人販路同友会プレゼン会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社日本経済新聞社発行の日経産業新聞における掲載記事 日経産業新聞平成30年11月30日付朝刊第5面 平成30年11月30日掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】594107181
【氏名又は名称】三和鋼業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143362
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】板垣 眞輝恵
(72)【発明者】
【氏名】横尾 真次郎
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161130(JP,A)
【文献】特開2012-087465(JP,A)
【文献】特開2003-041557(JP,A)
【文献】特開2017-150296(JP,A)
【文献】特開2017-125382(JP,A)
【文献】特開2017-008644(JP,A)
【文献】国際公開第2015/048934(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1420405(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の出入口に持ち運ばれて、該出入口の外側に設置される止水板装置であって、
前記出入口にパッキンを介して該出入口の外側から当接可能な止水板と、
前記止水板の左右下側を前記出入口の左右外側の通路上に係止する係止部材と、
前記止水板の左右上側を前記出入口の左右外側の通路上の前記係止部材よりも離れた位置から突っ張る突っ張り部材と
前記係止部材を前記出入口側に向けるとともに、前記突っ張り部材の先端を前記出入口と反対側に向けた状態で、該係止部材と該突っ張り部材の先端とを一体として前記出入口の左右外側の通路上に固定する固定部材
を備えていることを特徴とする持ち運び式止水板装置。
【請求項2】
前記突っ張り部材の基部は、前記止水板に回転自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の持ち運び式止水板装置。
【請求項3】
前記突っ張り部材は、長さを調整する機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の持ち運び式止水板装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記通路下に埋設されたアンカーに固定可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の持ち運び式止水板装置。
【請求項5】
少なくとも前記止水板と、前記係止部材と、前記突っ張り部材と、固定部材とを規定の箱体内に収納した状態で持ち運び可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の持ち運び式止水板装置。
【請求項6】
前記止水板は、該止水板を設置したときに、前記出入口の外側の通路上で30~60cmの高さとなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の持ち運び式止水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物、店舗、地下鉄、地下街等の建造物の出入口に持ち運んで、洪水時における建造物内への浸水を防止する持ち運び式止水板装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集中豪雨や高潮などによる洪水の発生時に、建造物の出入口からの浸水を防止する防水装置として、例えば特許文献1では、出入口の床部に形成された収納室と、該収納室に引き起こし自在に収納された防水扉と、該防水扉を収納室から引き起こして出入口を閉鎖する開閉駆動装置とを具備したゲート開閉装置において、前記防水扉が収納室から引き起された後に、前記開閉駆動装置により収納室の上面を閉鎖する開閉蓋を設けたことを特徴とする防水扉装置が開示されている。ここでは、出入口に左右一対の支柱体を立設し、前記左右の支柱体と、左右の支柱体の底部間を連通する収納室に、索体を介して防水扉及び開閉蓋をそれぞれ自動的に開閉するようになっている。
【0003】
また、特許文献2では、本体(止水板)の下部両端に旋回中心を、上部両端に固定装置(錠等)を設けて、まず本体が垂直(0度)になるまで本体上部を押して旋回させ、固定装置で設定でき、建築物の開口部に着脱できることを特徴とした防水板が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、左右の支柱体の底部間を連通する収納室を形成しているので、建物の通常の使用や、店舗等の営業を続けながら工事することが困難であった。
【0005】
また、防水扉及び開閉蓋をそれぞれ自動的に開閉するので、動作が複雑で、非常時に故障して役に立たなくなるおそれがあった。また、メンテナンスが面倒で、設置コストのみならず、維持コストも高くなりがちであった。
【0006】
さらに、出入口の両側に左右一対の支柱体を立設しており、この支柱体が通常時の人間の出入の邪魔になるから、できれば支柱体をなくして出入口をすっきりさせたいとの要請もあった。
【0007】
特許文献2では、止水板を、入り口の左右両側の柱の下部の旋回中心で係止するとともに、上部のクレセント錠で固定しているだけで、止水板を柱に押圧する力を調整することはできない。このため、止水板の押圧力が不足して、漏水するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みたものであり、その目的とするところは、建物の通常の使用や、店舗等の営業を続けながら工事することができて、信頼性と経済性とに優れるとともに、支柱体をなくして、出入口をすっきりさせることのできる持ち運び式止水板装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建造物の出入口に持ち運ばれて、該出入口の外側に設置される止水板装置であって、前記出入口にパッキンを介して該出入口の外側から当接可能な止水板と、前記止水板の左右下側を前記出入口の左右外側の通路上に係止する係止部材と、前記止水板の左右上側を前記出入口の左右外側の通路上の前記係止部材よりも離れた位置から突っ張る突っ張り部材と、前記係止部材を前記出入口側に向けるとともに、前記突っ張り部材の先端を前記出入口と反対側に向けた状態で、該係止部材と該突っ張り部材の先端とを一体として前記出入口の左右外側の通路上に固定する固定部材とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、前記出入口にパッキンを介して該出入口の外側から当接可能な止水板と、前記止水板の左右下側を前記出入口の左右外側の通路上に係止する係止部材と、前記止水板の左右上側を前記出入口の左右外側の通路上の前記係止部材よりも離れた位置から突っ張る突っ張り部材と、前記係止部材を前記出入口側に向けるとともに、前記突っ張り部材の先端を前記出入口と反対側に向けた状態で、該係止部材と該突っ張り部材の先端とを一体として前記出入口の左右外側の通路上に固定する固定部材とを備えているので、出入口の正面通路下に止水板の収納室を形成する必要がない。したがって、出入口の正面の通路を塞ぐことがなくなり、建物の通常の使用や、店舗等の営業を続けながら工事することができる。
【0011】
また、通路側に段差がないので、非常時の避難などで段差に足をとられてけがをすることを防ぐことができ、バリアフリーを実現できる。
【0012】
また、止水板を通路から突っ張ることにより、前記出入口に押圧する突っ張り部材を備えているので、特許文献1のような支柱体をなくして、出入口をすっきりさせることができる。
【0013】
さらに、すべて手動とすることにより、特許文献1のような索体を介して防水扉及び開閉蓋とをそれぞれ自動的に開閉する方式に比べて、各段と動作がシンプルとなるので、故障が少なく、いざとなる非常時にも素早く対応でき、メンテナンスも随分簡略化できる。その結果、信頼性と経済性とに優れるとともに、支柱体をなくして、建造物の出入口をすっきりさせることができる。
【0014】
請求項2記載の発明のように、前記突っ張り部材の基部は、前記止水板に回転自在に取り付けられていることが好ましい。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、前記突っ張り部材の基部は、前記止水板に回転自在に取り付けられているので、不使用時には折りたたむことができて便利である。
【0016】
請求項3記載の発明のように、前記突っ張り部材は、長さを調整する機構を備えていることが好ましい。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、前記突っ張り部材は、長さを調整する機構を備えているので、使用時には、長さを調整して、止水板にかかる押圧力を調整することができる。
【0020】
請求項記載の発明のように、前記固定部材は、前記通路下に埋設されたアンカーに固定可能であることが好ましい。
【0021】
請求項記載の発明によれば、前記固定部材は、前記通路下に埋設されたアンカーに固定可能であるので、止水板を通路に確実に固定することができる。
【0022】
請求項記載の発明のように、少なくとも前記止水板と、前記係止部材と、前記突っ張り部材と、前記固定部材とを規定の箱体内に収納した状態で持ち運び可能であることが好ましい。
【0023】
請求項記載の発明によれば、少なくとも前記止水板と、前記係止部材と、前記突っ張り部材と、前記固定部材とを規定の箱体内に収納した状態で持ち運び可能であるので、便利である。
【0024】
請求項記載の発明のように、前記止水板は、該止水板を設置したときに、前記出入口の外側の通路上で30~60cmの高さとなることが好ましい。
【0025】
請求項記載の発明によれば、前記止水板は、該止水板を設置したときに、前記出入口の外側の通路上で30~60cmの高さとなるので、止水板を跨いで、建造物内に避難等することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前記出入口にパッキンを介して該出入口の外側から当接可能な止水板と、前記止水板の左右下側を前記出入口の左右外側の通路上に係止する係止部材と、前記止水板の左右上側を前記出入口の左右外側の通路上の前記係止部材よりも離れた位置から突っ張る突っ張り部材と、前記係止部材を前記出入口側に向けるとともに、前記突っ張り部材の先端を前記出入口と反対側に向けた状態で、該係止部材と該突っ張り部材の先端とを一体として前記出入口の左右外側の通路上に固定する固定部材とを備えているので、出入口の正面通路下に止水板の収納室を形成する必要がない。したがって、出入口の正面の通路を塞ぐことがなくなり、建物の通常の使用や、店舗等の営業を続けながら工事することができる。
【0027】
また、通路側に段差がないので、非常時の避難などで段差に足をとられてけがをすることを防ぐことができ、バリアフリーを実現できる。
【0028】
また、止水板を通路から突っ張ることにより、前記出入口に押圧する突っ張り部材を備えたので、特許文献1のような支柱体をなくして、出入口をすっきりさせることができる。
【0029】
さらに、すべて手動とすることにより、特許文献1のような索体を介して防水扉及び開閉蓋とをそれぞれ自動的に開閉する方式に比べて、各段と動作がシンプルとなるので、故障が少なく、いざとなる非常時にも素早く対応でき、メンテナンスも随分簡略化できる。その結果、信頼性と経済性とに優れるとともに、支柱体をなくして、建造物の出入口をすっきりさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る持ち運び式止水板装置の使用時における側断面拡大図である。
図2】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の使用時における全体構成図であって、(a)は平面図、(b)は立面図、(c)は側断面図である。
図3】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の収納時における全体構成図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中のX-X断面図、(c)は(a)中のY-Y断面図である。
図4】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(1)を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中のX-X断面図、(c)は(a)中のY-Y断面図である。
図5】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(2)を示す説明図である。
図6】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(3)を示す説明図である。
図7】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(4)を示す説明図である。
図8】本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(5)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係る持ち運び式止水板装置1の使用時における側断面拡大図、図2は本実施形態に係る持ち運び式止水板装置1の使用時における全体構成図であって、(a)は平面図、(b)は立面図、(c)は側断面図である。また、図3は本実施形態に係る持ち運び式止水板装置1の収納時における全体構成図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中のX-X断面図、(c)は(a)中のY-Y断面図である。なお、説明の便宜上、構成要素の表示を一部省略していることがある。
【0032】
図1図2(a)(b)(c),図3(a)(b)(c)に示すように、本持ち運び式止水板装置1は、例えば建物、店舗、地下鉄、地下街等の建造物の出入口10に、持ち運ばれて設置されるものであって、主に鋼板、アルミニウム板などの耐候性に優れた材料からなっている。
【0033】
そして、出入口10のサッシ枠にパッキン7を介して当接可能な止水板2と、出入口10の左右外側の通路9に固定する固定部材としてのストッパ3と、止水板2の左右下側(図中では下端)を通路9に固定されたストッパ3の出入口10側に係止する係止部材としてのブラケット4と、止水板2の左右上側(図中では中間部)をストッパ3のブラケット4よりも離れた位置から突っ張る突っ張り部材としてのステー5とを備えている。なお、ストッパ3、ブラケット4、ステー5は、出入口10の左右に一対設けられているだけであるから、出入口10の底部から通路にかけては通行を邪魔するものはない。
【0034】
ここで、止水板2は、平板2cを複数のリブ材2dで補強した構造の防水扉であって、持ち運び中は長手方向で2分割された上、箱体としての段ボール箱13内に向きを変えて重ねられた倒伏姿勢で収納可能な大きさの長方形状をなしている。他の収納物をも含む段ボール箱13は、宅配便で運送可能な大きさと重さである。止水板2の一辺(起立姿勢での上辺)には逆U字状の取手2aを適当な間隔で2個並設している。操作者は、取手2aを把持して、止水板2を段ボール箱13外に取り出し、図1中の出入口10の周囲において、組み立てることができるようになっている。
【0035】
起立姿勢の止水板2の高さは、それで止水できる最高水位に一致している。具体的には、建造物の出入口10の寸法に対応させて略1.8mの幅としたものであって、非常時に、操作者が、起立姿勢の止水板2を跨いで建造物の出入口10内に退避できるように、前記出入口10の通路9の面上略30~60cmの高さとしている。
【0036】
そして、非常時にも、出入口10の正面を塞がないので、災害時の避難などで段差に足をとられて受傷することを防ぐことができる。特に手動式の場合、操作者は通路9上を通って、起立姿勢の止水板2に到達し、それを跨いで建造物の出入口10内に避難する必要があるから、その避難ルートのバリアフリー化が要請される。
【0037】
ストッパ3は、長方形の厚板構造であって、長手方向の一側に断面く字状の止め板3cを立設し、中央に丸穴3dを穿設するとともに、他側に取付座3bを設けている。丸穴3dは、出入口10の左右外側の通路9下に埋設したアンカー6に対応するもので、アンカー6に螺合された保護プラグ6aに代えて、ネジ3aを挿通させることにより、ストッパ3をアンカー6に固定するようになっている。
【0038】
ブラケット4は、起立姿勢での止水板2の下側にスペーサ4cを介して取り付けられたL字鋼片であって、その先端部には丸穴4bが穿設されている。丸穴4bは、ストッパ3の取付座3bに対応するもので、その上方からローレットネジ4aを螺合させることにより、止水板2の下側をストッパ3に係合させるようになっている。
【0039】
ステー5は、起立姿勢での止水板2を出入口10側にパッキン7を介して突っ張るための棒状部材であって、倒伏状態の止水板2では、留め具5cで係合していた先端が、起立状態の止水板2における左右上側(中間部)の回転軸5bを中心としてA方向に回転させて、ストッパ3の止め板3cに係合するようになっている。
【0040】
これにより、起立した止水板2が誤って倒伏されるのを防止できるとともに、洪水時に止水板2にかかる水圧との協業により、その止水板2が建造物の出入口10にパッキン7を介して押し付けられることにより、確実に止水できるようになっている。このステー5の長さは、長さを調整する機構としての調整ナット5aを回転させることで調整できるようになっている。これにより、ステー5で止水板2を出入口10に押圧するようになっている。
【0041】
パッキン7は、起立姿勢の止水板2の左右両側と底部とに、凸状又は平板状に貼設されたゴム板からなっており、止水板2が段ボール箱13内に収納されているときには、段ボール箱13の壁面を介しての太陽光の直射等によるパッキン7の劣化を防止でき、塵埃や雨水の混入を防止できる。
【0042】
図4は本実施形態に係る持ち運び式止水板装置1の組み立て中の状態(1)を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は(a)中のX-X断面図、(c)は(a)中のY-Y断面図である。図5図8は本実施形態に係る持ち運び式止水板装置の組み立て中の状態(2)~(5)を示す説明図であって、いずれも側断面図である。以下、図4(a)(b)(c)及び図5図8を参照して、本持ち運び式止水板装置1の使用方法を説明する。
【0043】
組み立て中の状態(1):例えば一人の操作者が、持ち運んできた段ボール箱13を開いて、止水板2を1枚ずつ手で持ち上げて段ボール箱13外に取り出す。このとき上側の止水板2は、図4(a)(b)(c)に示すように、裏右にはブラケット4と、ステー5とが取り付けられており、表中央には工具箱14が組み込まれている。図示していない下側の止水板2には、ブラケット4と、ステー5とが取り付けられているが、工具箱14は組み込まれていない。
【0044】
工具箱14内には、2個の止水板締結用ネジ2bと、2枚のストッパ3と、2個のストッパ固定用ネジ3aと、2個のローレットネジ4aといった部品に加えて、マイナスドライバ14aと、コンビネーションレンチ14bといった組み立てに必要な工具一式が収納されている。
【0045】
組み立て中の状態(2):出入口10の左右外側の通路9には、内ネジを切ったアンカー6が埋設されており、その内ネジには保護プラグ6aが螺合されている。通路9の塵埃などによるアンカー6の内ネジの閉塞を回避するものである。まず、図5の符号Cで示すように、マイナスドライバ14aで保護プラグ6aを取り外す。
【0046】
ついで、符号Dに示すように、通路9上にストッパ3を置く。このとき、ブラケット4に対応する座3bは出入口10側に向けるとともに、ステー5の回転後の先端に対応する止め板3cは出入口10と反対側に向けておくものとする。符号Eに示すように、ストッパ3の中央付近に形成された丸穴3dの上部からネジ3aを挿通し、このネジ3aをアンカー6に螺合させることにより、ストッパ3を通路9上に固定する。
【0047】
段ボール箱13から取り出した2枚の止水板2を横並びにしてから両者をボルト2b,2bで螺合する。そして、操作者は、止水板2の一辺に設けられた取手2aをもって、図6に示すように、その止水板2を起立姿勢とする。そして、止水板2の下端のブラケット4をストッパ3の座3bに重ねる。このときの基本操作は、止水板2の軽量化と相俟って、労力が少なくて済む。
【0048】
ついで、符号Fに示すように、操作者は、ローレットネジ4aをブラケット4に形成された丸穴4bを挿通させて、ブラケット4とストッパ3の取付座3bとを螺合させることにより、止水板2の下端を通路9上に固定する。
【0049】
ついで、図7に示すように、操作者は、止水板2の左右において、留め具5cで係止されたステー5の先端を、留め具5cから解除する。これによりフリーとなったステー5の先端を、止水板2の中間に設けられた回転軸5bを中心にして、同図中のA方向に回転させることにより、ストッパ3に立設された止め板3cを一旦飛び越させて係止させる。
【0050】
しかる後に、操作者は、図8において、ステー5の中間に設けられた調整ナット5aを操作して、符号Bに示すように、ステー5の長さを調整することにより、止め板3cに係止する。これにより、起立姿勢となった止水板2を、出入口10に、パッキン7を介在させた状態で、ステー5にて押し付けて押圧することができる。これにより、図2(a)(b)(c)に示すような完成状態となる。
【0051】
非常時から収納時に戻る際には、概ね上記と逆の手順がとられることとなる。ここで、本発明者は、止水板装置1を試作して、その動作確認と防水性能試験とを実施し、これについても良好な結果を得ることができた。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る止水板装置1によれば、建造物の出入口10の左右外側及び底部外側にパッキン7を介して当接可能な止水板2と、止水板2の左右下側を出入口10の左右外側の通路9上に係止するブラケット4と、止水板2の左右上側を出入口10の左右外側の通路9上のブラケット4よりも離れた位置から突っ張るステー5とを備えているので、出入口10の正面通路9下に止水板2の収納室を形成する必要がない。したがって、出入口10の正面通路9を塞ぐことがなくなり、店舗等の営業を続けながら工事することができる。
【0053】
また、通路9側に段差がないので、非常時の避難などで段差に足をとられてけがをすることを防ぐことができ、バリアフリーを実現できる。
【0054】
また、止水板2を通路9から突っ張ることにより、出入口10に押圧するステー5を備えたので、特許文献1のような支柱体をなくして、出入口10をすっきりさせることができる。
【0055】
さらに、すべて手動とすることにより、特許文献1のような索体を介して防水扉及び開閉蓋とをそれぞれ自動的に開閉する方式に比べて、各段と動作がシンプルとなるので、故障が少なく、いざとなる非常時にも素早く対応でき、メンテナンスも随分簡略化できる。その結果、信頼性と経済性とに優れるとともに、支柱体をなくして、建造物の出入口10をすっきりさせることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、止水板2は長手方向に同一寸法で2分割しているが、必ずしも長手方向に分割する必要はなく、長手方向と直角方向に分割してもよい。また、同一寸法に分割する必要もない。さらに、人手で動かすことに支障がなければ、1個にまとめたものであってもよいし、その逆に3個以上の防止板2に分割してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、それぞれストッパ3を介装させているが、止水板2の下側のブラケット4を通路9に直接固定してもよく、また止水板2の下側よりも上方の部位を突っ張るステー5の他端を通路9に直接固定してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、止水板2を複数のリブ材2dで補強した平板2cなどの簡易な構造として軽量化しているが、止水板2を例えばアルミニウム製とすることによっても軽量化することができるし、強度上の問題がなければ両者の組み合わせでさらなる軽量化を図ることもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、操作者は一人としているが、それが仮に女性一人であっても操作できるものとしている。ただし、止水板2の寸法によっては、二人以上であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、段ボール箱13に入れて保管している止水板装置1を、建物の出入口10の通路付近に運んでくるとしているが、その保管場所は、建物ごとでなくてもよく、ある建物に保管しておいて、使用時に他の建物にトラックや宅配便を利用して配送してもよい。宅配便を利用する場合は、既定の段ボール箱13が利用される。さらに、段ボール箱13に代えて、木箱や金属製の箱などの箱体を使用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、止水板2の表面の色彩や表示については言及していないが、例えば止水板2の表面を黄色に着色し、外側から見て左側に「止水中」と大きく黒色で表示しておくことが好ましい。これにより、洪水時に避難してくる人の注意を喚起してそこに誘導することができる。
【0062】
また、同止水板2の外側から見て、右側に「取付手続」の内容を表示しておくことが好ましい。これにより、緊急に誰でも間違いなく止水板装置1を組み立てることができる。
【0063】
(符号の説明)
1 止水板装置
2 止水板
2a 止水板の取手
2b 止水板の連結用ネジ
2c 止水板の平板
2d 止水板のリブ材
3 ストッパ(固定部材に相当する。)
3a ストッパの固定用ネジ
3b 取付座
3c 止め板
3d 丸穴
4 ブラケット(係止部材に相当する。)
4a ローレットネジ
4b 丸穴
4c スペーサ
5 ステー(突っ張り部材に相当する。)
5a ステーの調整ナット(長さを調整する機構に相当する。)
5b ステーの回転軸
5c ステーの留め具
6 アンカー
6a 保護プラグ
7 パッキン
9 通路
10 建造物の出入口
13 段ボール箱(箱体に相当する。)
14 工具箱
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【文献】特開2005-97885号公報
【文献】特開2012-87465号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8