(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】タウ認識抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221216BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20221216BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221216BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221216BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221216BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221216BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221216BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221216BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221216BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221216BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61K39/395 N
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2018557809
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2017052545
(87)【国際公開番号】W WO2017191561
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-09
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513250798
【氏名又は名称】プロセナ バイオサイエンシーズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】77 Sir John Rogerson’s Quay, Block C Grand Canal Docklands, Dublin 2, DO2 VK60, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バーバー,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ドラン,フィリップ ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユエ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0050383(US,A1)
【文献】特表平10-509797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトタウへ結合する、単離モノクローナル抗体であって、配列番号8もしくは配列番号49のCDR-H1、配列番号9、配列番号50、もしくは配列番号51のCDR-H2、および配列番号10のCDR-H3である3つの重鎖カバット/コチアの組み合わせCDR、並びに配列番号12のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2、および配列番号14のCDR-L3である3つの軽鎖カバット/コチアの組み合わせCDRを含む、抗体。
【請求項2】
配列番号8のCDR-H1、配列番号9のCDR-H2、および配列番号10のCDR-H3である3つの重鎖カバット/コチアの組み合わせCDR、並びに配列番号12のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2、および配列番号14のCDR-L3である3つの軽鎖カバット/コチアの組み合わせCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号10のCDR-H3である3つの重鎖カバット/コチアの組み合わせCDR、並びに配列番号12のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2、および配列番号14のCDR-L3である3つの軽鎖カバット/コチアの組み合わせCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号49のCDR-H1、配列番号51のCDR-H2、および配列番号10のCDR-H3である3つの重鎖カバット/コチアの組み合わせCDR、並びに配列番号12のCDR-L1、配列番号13のCDR-L2、および配列番号14のCDR-L3である3つの軽鎖カバット/コチアの組み合わせCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
キメラ、ベニア、もしくはヒト化型抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むヒト化成熟重鎖可変領域、および配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むヒト化成熟軽鎖可変領域を含み、特定された前記配列番号の配列からのいずれかの変異はCDRの外側にある、請求項5に記載のヒト化抗体。
【請求項7】
前記VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83が、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められることが前提であるか、
前記VH領域の位置H7、H71、およびH73が、それぞれ、P、V、およびIにより占められることが前提であるか、
前記VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83が、それぞれ、E、V、R、I、K、A、L、V、IおよびTにより占められることが前提であるか、
前記VH領域の位置H1、H7、H71、およびH73が、それぞれ、E、P、V、およびIにより占められることが前提であるか、
前記VL領域の位置L4、L9、L15、L22、およびL43が、それぞれ、L、S、V、S、およびSにより占められることが前提である、
請求項6に記載のヒト化抗体。
【請求項8】
配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む成熟重鎖可変領域および配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む成熟軽鎖可変領域を含み、特定された前記配列番号の配列からのいずれかの変異はCDRの外側にある、請求項6に記載のヒト化抗体。
【請求項9】
配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む成熟重鎖可変領域および配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む成熟軽鎖可変領域を含み、特定された前記配列番号の配列からのいずれかの変異はCDRの外側にある、請求項8に記載のヒト化抗体。
【請求項10】
前記成熟重鎖可変領域が配列番号15~27のいずれかのアミノ酸配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が配列番号28~30いずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項9に記載のヒト化抗体。
【請求項11】
前記成熟重鎖可変領域が配列番号17のアミノ酸配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が配列番号29のアミノ酸配列を有するか、
前記成熟重鎖可変領域が配列番号19のアミノ酸配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が配列番号29のアミノ酸配列を有するか、または、
前記成熟重鎖可変領域が配列番号27のアミノ酸配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が配列番号29のアミノ酸配列を有する、請求項10に記載のヒト化抗体。
【請求項12】
完全な抗体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
結合フラグメントである、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
前記アイソタイプがヒトIgG1である、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
前記成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合され、前記成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合されている、請求項1~12のいずれか1項に記載
の抗体。
【請求項16】
前記定常領域内に少なくとも1つの変異を有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記アイソタイプが、ヒトIgG2またはIgG4アイソタイプである、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
前記抗体が、治療薬、細胞傷害剤、細胞分裂停止剤、神経栄養剤、または神経保護剤にコンジュゲートされている、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項で定められる抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体の前記重鎖およ
び軽鎖をコードする
単数または複数の核酸、前記核酸を含む組換え体発現ベクター、または前記組換え体発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項21】
インビトロにて行うマウス抗体のヒト化方法であって、
(a)1種または複数の受容体抗体配列を選択すること;
(b)保持されるべき前記マウス抗体のアミノ酸残基を特定すること;
(c)前記マウス抗体重鎖のCDRを含むヒト化重鎖をコードする核酸および前記マウス抗体軽鎖のCDRを含むヒト化軽鎖をコードする核酸を合成すること、ならびに
(d)宿主細胞中で前記核酸を発現させてヒト化抗体を産生すること
を含み、
前記マウス抗体が、配列番号7の成熟重鎖可変領域および配列番号11の成熟軽鎖可変領域を特徴とする、方法。
【請求項22】
タウ関連疾患を処置または予防するための、請求項1~
18のいずれか1項で定められる抗体を含む、医薬組成物。
【請求項23】
前記タウ関連疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記タウ関連疾患が、アルツハイマー病である、請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法35USC119条(e)により、2016年5月2日に出願された米国特許仮出願第62/330,800号の利益を主張する。この仮出願特許は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
配列表への参照
ファイル497448SEQLIST.TXTに記載の配列表は59キロバイトで、2017年5月2日に作成された。この配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
タウは、リン酸化型で存在し得るよく知られたヒトタンパク質である(例えば、Goedert,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4051-4055(1988);Goedert,EMBO J.8:393-399(1989);Lee,Neuron 2:1615-1624(1989);Goedert,Neuron 3:519-526(1989);Andreadis,Biochemistry 31:10626-10633(1992)を参照されたい)。タウは、特に中枢神経系における微小管の安定化に関与すると報告されている。総タウ(t-タウ、すなわちリン酸化型、および非リン酸化型)ならびにリン酸化タウ(phospho-tau)(p-タウ、すなわち、リン酸化されたタウ)は、神経損傷および神経変性に応答して脳によって放出され、一般集団と比べて、アルツハイマー病患者のCSFにおいてレベルが増加していることが報告されている(Jack et al.,Lancet Neurol 9:119-28(2010))。
【0004】
タウは、神経原線維濃縮体の主要な構成成分であり、プラークと共にアルツハイマー病の顕著な特徴である。濃縮体は、80nmの規則的な周期で螺旋状に巻かれたペアで生じる直径10nmの異常な原線維で構成されている。神経原線維濃縮体内のタウは、分子上の特定の部位に結合したリン酸基で異常にリン酸化(高リン酸化)されている。アルツハイマー病における神経原線維濃縮体の深刻な関与は、嗅内皮質層IIニューロン、海馬のCA1領域および海馬台領域、扁桃体、ならびに新皮質のより深い層(層III、V、および表面のVI)に見られる。高リン酸化タウはまた、微小管アセンブリーを妨害することが報告されており、これは神経回路網の破壊を促進し得る。
【0005】
タウ封入体は、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺およびピック病を含むいくつかの神経変性疾患の神経病理を特徴付ける要素である。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、タウに結合する単離モノクローナル抗体を提供する。このような抗体は、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75または61~70(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、または119~128に相当する)内のエピトープに結合する。
【0007】
いくつかのこのような抗体は、抗体16G7とヒトタウへの結合に関し競合する。いくつかのこのような抗体は、16G7と同じヒトタウ上のエピトープに結合する。
【0008】
いくつかの抗体は、モノクローナル抗体16G7の3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含み、この16G7は、配列番号7を含むアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号11を含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を特徴とするマウス抗体である。いくつかの抗体では、3つの重鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義される通り(配列番号8、9、および10)であり、3つの軽鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義される通り(配列番号12、13、および14)である。
【0009】
例えば、抗体は、16G7、またはキメラ、ベニア、もしくはそれらのヒト化型とすることができる。いくつかのこのような抗体では、重鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのこのような抗体では、軽鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのこのような抗体では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のそれぞれは、ヒト生殖系列配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのこのような抗体では、成熟重鎖可変領域は、カバット/コチアの組み合わせにより定義される3つの重鎖CDR(配列番号8、9、および10)およびカバット/コチアの組み合わせにより定義される3つの軽鎖CDR(配列番号12、13、および14)を含む。但し、位置H31がSまたはGにより占められ、位置H60がNまたはAにより占められ、位置64がKまたはQにより占められるという条件の場合である。いくつかのこのような抗体では、CDR-H1は、配列番号49を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのこのような抗体では、CDR-H2は、配列番号50を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのこのような抗体では、CDR-H2は、配列番号51を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのこのような抗体では、抗体はヒト化抗体である。
【0010】
いくつかのこのような抗体では、CDR-H1は配列番号49を含むアミノ酸配列を有し、CDR-H2は配列番号50を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのこのような抗体では、CDR-H1は配列番号49を含むアミノ酸配列を有し、CDR-H2は配列番号51を含むアミノ酸配列を有する。
【0011】
いくつかの抗体は、ヒトタウに特異的に結合するヒト化またはキメラ16G7抗体であり、16G7は、配列番号7の成熟重鎖可変領域および配列番号11の成熟軽鎖可変領域を特徴とするマウス抗体である。いくつかのこのような抗体は、16G7の3つの重鎖CDRを含むヒト化成熟重鎖可変領域および16G7の3つの軽鎖CDRを含むヒト化成熟軽鎖可変領域を含むヒト化抗体である。いくつかのこのような抗体では、CDRは、カバット、コチア、カバット/コチアの組み合わせ、AbMおよびContactからなる群から選択される定義による。
【0012】
いくつかのこのような抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、16G7の3つのカバット/コチアの組み合わせ重鎖CDR(配列番号8~10)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、16G7の3つのカバット/コチアの組み合わせ軽鎖CDR(配列番号12~14)を含む。
【0013】
いくつかのこのような抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、16G7の3つのカバット重鎖CDR(配列番号39、配列番号9、および配列番号10)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、16G7の3つのカバット軽鎖CDR(配列番号12~14)を含む。
【0014】
いくつかのこのような抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、16G7の3つのコチア重鎖CDR(配列番号40、配列番号41、および配列番号10)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、16G7の3つのコチア軽鎖CDR(配列番号12~14)を含む。
【0015】
いくつかのこのような抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、16G7の3つのAbM重鎖CDR(配列番号8、配列番号42、および配列番号10)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、16G7の3つのAbM軽鎖CDR(配列番号12~14)を含む。
【0016】
いくつかのこのような抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、16G7の3つのContact重鎖CDR(配列番号46~48)を含み、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、16G7の3つのContact軽鎖CDR(配列番号43~45)を含む。
【0017】
いくつかの抗体では、ヒト化成熟重鎖可変領域は、配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し、ヒト化成熟軽鎖可変領域は、配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する。
【0018】
いくつかのこのような抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H7はPにより占められ、H9はSにより占められ、H10はVにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H13はRにより占められ、H20はLにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H66はKにより占められ、H67はAにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められ、H75はSにより占められ、H80はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかのこのような抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0019】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H7はPにより占められ、H9はSにより占められ、H10はVにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H13はRにより占められ、H20はLにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H48、H69、H71、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、I、L、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0020】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H20はLにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域のH1、H5、H11、H12、H20、H48、H69、H71、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、L、V、L、I、L、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0021】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H31はGにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H60はAにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、およびH83はTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、G、R、I、A、L、IおよびTにより占められる。
【0022】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、H83はTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。
【0023】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H66はKにより占められ、H67はAにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められ、およびH83はTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H12、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。
【0024】
いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、H83はTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H7はPにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H7、H71、およびH73は、それぞれ、P、V、およびIにより占められる。いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H31はGにより占められ、H60はAにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H31およびH60は、それぞれ、GおよびAにより占められる。いくつかの抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はQまたはEにより占められ、H5はVまたはQにより占められ、H7はSまたはPにより占められ、H9はAまたはSにより占められ、H10はEまたはVにより占められ、H11はVまたはLにより占められ、H12はKまたはVにより占められ、H13はKまたはRにより占められ、H20はVまたはLにより占められ、H31はGまたはSにより占められ、H37はVまたはAにより占められ、H38はRまたはKにより占められ、H40はAまたはRにより占められ、H48はMまたはIにより占められ、H60はAまたはNにより占められ、H64はQまたはKにより占められ、H66はRまたはKにより占められ、H67はVまたはAにより占められ、H69はMまたはLにより占められ、H71はRまたはVにより占められ、H73はTまたはIにより占められ、H75はI、S、またはAにより占められ、H80はMまたはVにより占められ、H82aはSまたはTにより占められ、H82bはRまたはSにより占められ、H83はRまたはTにより占められ、およびH85はDまたはEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H37、H38、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、A、K、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H11、H12、H20、H48、H69、H71、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、L、V、I、L、V、A、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、G、R、I、A、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、Q、V、G、R、I、A、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H7およびH73は、それぞれ、Q、P、V、およびIにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H64、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、G、R、I、A、Q、L、IおよびTにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H48、H69、H71、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、I、L、V、A、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H11、H12、H20、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、E、Q、L、V、L、I、K、A、L、V、I、S、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H38、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73I、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、K、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、Q、P、S、V、L、V、R、L、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H7、H71、およびH73は、それぞれ、P、V、およびIにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H71はVにより占められる。いくつかの抗体では、VH領域の位置H1、H7、H71、およびH73は、E、P、V、およびIにより占められる。
【0025】
いくつかの抗体では、次に示すVL領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はLにより占められ、L9はSにより占められ、L15はVにより占められ、L22はSにより占められ、L43はSにより占められる。いくつかの抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、S、およびSにより占められる。
【0026】
いくつかの抗体では、次に示すVL領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はLにより占められ、L9はSにより占められ、L15はVにより占められ、L18はKにより占められ、L19はVにより占められ、L21はMにより占められ、L22はSにより占められ、およびL43はSにより占められる。いくつかの抗体では、VL領域のL4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。
【0027】
いくつかの抗体では、次に示すVL領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はMまたはLにより占められ、L9はDまたはSにより占められ、L15はLまたはVにより占められ、L18はRまたはKにより占められ、L19はAまたはVにより占められ、L21はIまたはMにより占められ、L22はNまたはSにより占められ、L43はPまたはSにより占められ、およびL48はIまたはMにより占められる。いくつかの抗体では、VL領域のL4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。
【0028】
いくつかの抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、S、およびSにより占められる。いくつかの抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。
【0029】
いくつかの抗体は、配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域および配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域を含む。いくつかの抗体は、配列番号15~27のいずれか1つに少なくとも98%同一のアミノ酸配列を有する成熟重鎖可変領域および配列番号28~30のいずれか1つに少なくとも98%同一のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖可変領域を含む。
【0030】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号15~27のいずれかのアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28~30いずれか1つのアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0031】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号16のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号16のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号16のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0032】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号17のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号17のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号17のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0033】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号18のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号18のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号18のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0034】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号19のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号19のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号19のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0035】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号20のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号20のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号20のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0036】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号21のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号21のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号21のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0037】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0038】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号23のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号23のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号23のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0039】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号24のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号24のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号24のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0040】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号25のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号25のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号25のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0041】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号26のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号26のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号26のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0042】
いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号27のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号28のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号27のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号29のアミノ酸配列を有する。いくつかの抗体では、成熟重鎖可変領域は配列番号27のアミノ酸配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0043】
例えば、抗体は、キメラ抗体とすることができる。例えば、抗体は、ベニア抗体とすることができる。抗体は、完全マウス抗体、キメラ抗体、ベニア抗体もしくはヒト化抗体または結合フラグメント、単鎖抗体単鎖抗体Fabフラグメント、Fab’2フラグメント、または単鎖Fvとすることができる。いくつかの抗体は、ヒトIgG1アイソタイプを有し、一方、他の抗体は、ヒトIgG2またはIgG4アイソタイプを有してもよい。いくつかの抗体は、軽鎖定常領域に融合された成熟軽鎖可変領域および重鎖定常領域に融合された成熟重鎖可変領域を有する。いくつかの抗体の重鎖定常領域は、天然のヒト定常領域と比較して、Fcγ受容体への結合が低減した天然のヒト定常領域の変異型である。
【0044】
いくつかの抗体は、定常領域に少なくとも1つの変異、例えば、補体結合または定常領域による活性化を低減させる変異、例えば、EUナンバリングで、位置241、264、265、270、296、297、318、320、322、329および331の1つまたは複数の位置での変異を有し得る。いくつかの抗体は、位置318、320および322にアラニンを有する。いくつかの抗体は、少なくとも95%w/wの純度であり得る。抗体は、治療薬、細胞傷害剤、細胞分裂停止剤、神経栄養剤、または神経保護剤にコンジュゲートすることができる。
【0045】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示のいずれかの抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む医薬組成物を提供する。
【0046】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示のいずれかの重鎖および/または軽鎖をコードする核酸、該核酸を含む組換え体発現ベクター、および該組換え体発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載のいずれかの非ヒト抗体、例えば、マウス抗体16G7をヒト化する方法を提供する。この16G7は、配列番号7の成熟重鎖可変領域および配列番号11の成熟軽鎖可変領域を特徴とする。このような方法は、1種または複数の受容体抗体を選択すること、マウス重鎖のCDRを含むヒト化重鎖をコードする核酸およびマウス抗体軽鎖のCDRを含むヒト化軽鎖をコードする核酸を合成すること、ならびに、宿主細胞中で該核酸を発現してヒト化抗体を産生することを含み得る。
【0048】
ヒト化、キメラまたはベニア抗体、例えば、16G7のヒト化、キメラまたはベニア型などの抗体の産生方法も提供される。このような方法では、抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸で形質転換された細胞は、抗体を分泌するように培養される。その後、抗体は、細胞培養培地から精製される。
【0049】
本明細書で開示のいずれかの抗体を産生する細胞株は、抗体の重鎖および軽鎖ならびに選択マーカーをコードするベクターおよび選択可能マーカーを細胞中に導入し、コピー数が増加したベクターを有する細胞を選択する条件下で細胞を増殖させ、選択細胞から単細胞を単離し、抗体の収量に基づいて選択した単細胞からクローニングした細胞を保存することにより、産生することができる。
【0050】
いくつかの細胞は、選択条件下で増殖させて、自然に発現し、少なくとも100mg/L/106細胞/24時間を分泌する細胞株をスクリーニングできる。単細胞は、選択細胞から単離できる。単細胞からクローニングした細胞は、その後、保存できる。単細胞は、抗体の収率などの望ましい特性に基づいて選択できる。代表的細胞株は、16G7を発現する細胞株である。
【0051】
本発明はまた、タウ媒介アミロイド症の対象を発症するリスクのある対象におけるタウの凝集を抑制するまたは減らす方法も提供し、該方法は、対象に本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与し、それにより、対象におけるタウの凝集を抑制するかまたは減らすことを含む。代表的抗体には、16G7のヒト化型が含まれる。
【0052】
また、対象のタウ関連疾患を処置するまたは予防する方法も提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与し、それにより、疾患の処置または予防をすることを含む。このような疾患の例は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)である。いくつかの方法では、タウ関連疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの方法では、患者はApoE4保因者である。
【0053】
また、タウの異常伝播を減らす方法も提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与し、それにより、タウの伝播を減らすことを含む。
【0054】
また、タウの食作用を誘導する方法も提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与し、それにより、タウの食作用を誘導することを含む。
【0055】
また、タウの凝集または沈着を抑制する方法も提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与し、それにより、タウの凝集または沈着を抑制することを含む。
【0056】
また、タウの濃縮体の形成を抑制する方法も提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体の有効な投与計画を投与することを含む。
【0057】
本発明はまた、タウ凝集または沈着に関連のある疾患の対象またはその疾患のリスクのある対象におけるタウタンパク質沈着物の検出方法が提供され、該方法は、本明細書で開示の抗体を対象に投与し、対象のタウに結合した抗体を検出することを含む。このような疾患の例は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)である。いくつかの実施形態では、抗体は、静脈内注射により対象の身体に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、頭蓋内注射により、または対象の頭蓋骨を通る孔をあけることにより、対象の脳に直接投与される。いくつかの実施形態では、抗体は標識される。いくつかの実施形態では、抗体は、蛍光標識、常磁性標識、または放射性標識により標識される。いくつかの実施形態では、放射性標識は、陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を用いて検出される。
【0058】
本発明はまた、タウ凝集または沈着に関連する疾患を処置される対象の処置の効力を測定する方法も提供し、該方法は、本明細書で開示の抗体を対象に投与することによる処置の前に対象のタウタンパク質沈着物の第1のレベルを測定すること、ならびに対象のタウに結合した抗体の第1の量を測定すること、対象に処置を投与すること、対象に抗体を投与することによる処置後に対象のタウタンパク質沈着物の第2のレベルを測定すること、および対象のタウに結合した抗体を検出することを含み、タウタンパク質沈着物のレベルの減少が処置に対する陽性の反応を示す。
【0059】
本発明はまた、タウ凝集または沈着に関連する疾患を処置される対象の処置の効力を測定する方法も提供し、該方法は、本明細書で開示の抗体を対象に投与することによる処置の前に対象のタウタンパク質沈着物の第1のレベルを測定すること、ならびに対象のタウに結合した抗体の第1の量を測定すること、対象に処置を投与すること、対象に抗体を投与することによる処置後に対象のタウタンパク質沈着物の第2のレベルを測定すること、および対象のタウに結合した抗体の第2の量を検出することを含み、タウタンパク質沈着物のレベルの無変化またはタウタンパク質沈着物の小さい増加が処置に対する陽性の反応を示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】マウス16G7モノクローナル抗体により結合されたエピトープ(1種または複数)をマッピングするように設計した実験の結果を示す。
【
図2】マウス16G7抗体および16G7抗体のヒト化型の重鎖可変領域の配列比較を示す。カバット/コチアの組み合わせにより定義されるCDRは太字で示している。マウス16G7抗体および16G7抗体のヒト化型の重鎖可変領域の位置の「Majority」配列と異なるアミノ酸残基は、四角で囲って示している。
【
図3】マウス16G7抗体および16G7抗体のヒト化型の軽鎖可変領域の配列比較を示す。カバットにより定義されるCDRは太字で示している。マウス16G7抗体および16G7抗体のヒト化型の軽鎖可変領域の位置の「Majority」配列と異なるアミノ酸残基は、四角で囲って示している。
【
図4A】16G7がヒトアルツハイマー病組織由来のタウを免疫捕獲することを示す実験の結果を示す。
【
図4B】16G7がヒトアルツハイマー病組織由来のタウを免疫捕獲することを示す実験の結果を示す。
【
図5】選択マウスモノクローナル抗タウ抗体に対する脱凝集アッセイの結果を示す。
【
図6】タウに対するマウス16G7抗体の親和性を示す。
【
図7】キメラ16G7抗体およびヒト化16G7抗体VHV2a、VHV2b、およびVHV6a H7L2のタウに対する結合動力学を示す。
【
図8】マウス16G7 Fabフラグメントおよびマウス16G7完全抗体の凝集タウに対する多価結合親和性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-8)のアミノ酸配列を示す。
【0062】
配列番号2は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-7)のアミノ酸配列を示す。
【0063】
配列番号3は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-6)、(4R0Nヒトタウ)のアミノ酸配列を示す。
【0064】
配列番号4は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-5)のアミノ酸配列を示す。
【0065】
配列番号5は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-4)のアミノ酸配列を示す。
【0066】
配列番号6は、ヒトタウのアイソフォーム(スイスプロットP10636-2)のアミノ酸配列を示す。
【0067】
配列番号7は、マウス16G7抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0068】
配列番号8は、マウス16G7抗体のカバット/コチアの組み合わせCDR-H1のアミノ酸配列を示す。
【0069】
配列番号9は、マウス16G7抗体のカバットCDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0070】
配列番号10は、マウス16G7抗体のカバットCDR-H3のアミノ酸配列を示す。
【0071】
配列番号11は、マウス16G7抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0072】
配列番号12は、マウス16G7抗体のカバットCDR-L1のアミノ酸配列を示す。
【0073】
配列番号13は、マウス16G7抗体のカバットCDR-L2のアミノ酸配列を示す。
【0074】
配列番号14は、マウス16G7抗体のカバットCDR-L3のアミノ酸配列を示す。
【0075】
配列番号15は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv1の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0076】
配列番号16は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv2の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0077】
配列番号17は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv2aの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0078】
配列番号18は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv2aB7の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0079】
配列番号19は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv2bの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0080】
配列番号20は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv2bH7の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0081】
配列番号21は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv3の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0082】
配列番号22は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv4の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0083】
配列番号23は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv5Vの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0084】
配列番号24は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv5VRの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0085】
配列番号25は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv6aの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0086】
配列番号26は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv6bの重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0087】
配列番号27は、ヒト化16G7抗体hu16G7VHv7の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0088】
配列番号28は、ヒト化16G7抗体hu16G7VLv1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0089】
配列番号29は、ヒト化16G7抗体hu16G7VLv2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0090】
配列番号30は、ヒト化16G7抗体hu16G7VLv3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【0091】
配列番号31は、重鎖可変受容体受入番号AAA18265.1のアミノ酸配列を示す。
【0092】
配列番号32は、重鎖可変受容体受入番号ADW08092.1のアミノ酸配列を示す。
【0093】
配列番号33は、重鎖可変受容体IMGT受入番号IGHV1-2*02のアミノ酸配列を示す。
【0094】
配列番号34は、軽鎖可変受容体受入番号AAB24404.1のアミノ酸配列を示す。
【0095】
配列番号35は、軽鎖可変受容体受入番号AEK69364.1のアミノ酸配列を示す。
【0096】
配列番号36は、軽鎖可変受容体IMGT受入番号IGKV4-1*01のアミノ酸配列を示す。
【0097】
配列番号37は、マウス16G7抗体の重鎖可変領域をコードする核酸配列を示す。
【0098】
配列番号38は、マウス16G7抗体の軽鎖可変領域をコードする核酸配列を示す。
【0099】
配列番号39は、マウス16G7抗体のカバットCDR-H1のアミノ酸配列を示す。
【0100】
配列番号40は、マウス16G7抗体のコチアCDR-H1のアミノ酸配列を示す。
【0101】
配列番号41は、マウス16G7抗体のコチアCDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0102】
配列番号42は、マウス16G7抗体のAbM CDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0103】
配列番号43は、マウス16G7抗体のContact CDR-L1のアミノ酸配列を示す。
【0104】
配列番号44は、マウス16G7抗体のContact CDR-L2のアミノ酸配列を示す。
【0105】
配列番号45は、マウス16G7抗体のContact CDR-L3のアミノ酸配列を示す。
【0106】
配列番号46は、マウス16G7抗体のContact CDR-H1のアミノ酸配列を示す。
【0107】
配列番号47は、マウス16G7抗体のContact CDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0108】
配列番号48は、マウス16G7抗体のContact CDR-H3のアミノ酸配列を示す。
【0109】
配列番号49は、ヒト化16G7抗体の別のカバット-コチアの組み合わせCDR-H1のアミノ酸配列を示す。
【0110】
配列番号50は、ヒト化16G7抗体の別のカバットCDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0111】
配列番号51は、ヒト化16G7抗体の別のカバットCDR-H2のアミノ酸配列を示す。
【0112】
配列番号52は、マウス16G7およびヒト化16G7抗体(
図2で「Majority」と標識)の重鎖可変領域中のコンセンサスアミノ酸配列を示す。
【0113】
配列番号53は、マウス16G7とヒト化16G7抗体(
図3で「Majority」と標識)との軽鎖可変領域間のコンセンサスアミノ酸配列を示す。
【0114】
配列番号54は、キメラ16G7抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【0115】
配列番号55は、キメラ16G7抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【0116】
定義
モノクローナル抗体またはその他の生物学的実体は通常、単離型で提供される。これは、抗体またはその他の生物学的実体が通常、干渉タンパク質およびその製造または精製から生じる他の混入物に対して少なくとも50%w/wの純度であることを意味するが、そのモノクローナル抗体が、過剰の薬学的に許容されるキャリア(単一または複数)または使用を容易にすることが意図される他のビークルと組み合わされる可能性を排除しない。時には、モノクローナル抗体は、干渉タンパク質および製造または精製から生じる他の混入物に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%w/wの純度である。単離モノクローナル抗体またはその他の生物学的実体は、多くの場合、その精製後に残る主要な巨大分子種である。
【0117】
抗体のその標的抗原に対する特異的結合は、少なくとも106、107、108、109、1010、1011、または1012M-1の単価結合親和性および/または多価結合親和性を意味する。特異的結合は、それが大きさにおいて検出可能なほど高く、さらに少なくとも1つの無関係な標的に生じる非特異的結合と区別可能である結合である。特異的結合は、特定の官能基または特定の空間的嵌合(例えば、ロックおよびキータイプ)間の結合の形成の結果であり得るが、非特異的結合は、通常、ファンデルワールス力の結果である。しかし、特異的結合は、必ずしも抗体が唯一の標的に結合することを意味するものではない。
【0118】
基本的な抗体構造単位は、サブユニットの四量体である。四量体はそれぞれ、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含み、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110個またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。切断可能なシグナルペプチドに連結されたこの可変領域が、最初に発現される。シグナルペプチドを含まない可変領域は、しばしば成熟可変領域と呼ばれる。したがって、例えば、軽鎖の成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドを含まない軽鎖可変領域を意味する。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。
【0119】
軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(概論としては、Fundamental Immunology,Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.,1989,Ch.7(本出願において、参照によりその全体が組み込まれる))。
【0120】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域(本明細書においては、それぞれ、「軽鎖可変ドメイン」(VLドメイン)または「重鎖可変ドメイン」(「VHドメイン」)としても参照される)は、3つの「相補性決定領域」または「CDR」により分断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープに特異的に結合するためにCDRを整列させる役割をする。CDRは、主に抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を含む。アミノ末端からカルボキシル末端まで、VLおよびVHの両ドメインは、次のフレームワーク(FR)およびCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。VLドメインのCDR1、2、および3はまた、本明細書では、それぞれ、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3;VHドメインのCDR1、2、および3はまた、本明細書では、それぞれ、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3とも呼ばれる。
【0121】
アミノ酸のそれぞれVLおよびVHドメインへの帰属は、CDRのいずれかの従来の定義と一致する。従来の定義には、カバットによる定義(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)、コチアによる定義(Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917,1987;Chothia et al.,Nature 342:878-883,1989);Chothia Kabat CDRの組合せ、この場合、CDR-H1は、ChothiaとKabat CDRの組み合わせである;Oxford Molecular’s antibody modelling softwareにより使用されるAbMの定義;および、Martinら(bioinfo.org.uk/abs)によるcontactの定義が含まれる(表1参照)。カバットは、異なる重鎖間または異なる軽鎖間の対応する残基に同じ番号が割り当てられる、広く使用されているナンバリング規則(カバットナンバリング)を提供する。抗体が特定のCDR定義(例えば、カバット)によるCDRを含むと言われる場合、その定義は、抗体中に存在する最小数のCDR残基(すなわち、カバットCDR)を規定する。別の従来のCDR定義内に入るが、その指定定義外であるその他の残基も同様に存在することを排除しない。例えば、カバットにより定義されるCDRを含む抗体は、他の可能性の内で、CDRがカバットCDR残基を含み、他のCDR残基を含まない抗体、およびCDR H1がコチア-カバットの組み合わせCDR H1であり、その他のCDRがカバットCDR残基を含み、他の定義に基づく追加のCDR残基を含まない抗体を含む。
【表1】
【0122】
「抗体」という用語は、完全な抗体およびその結合フラグメントを含む。通常、単離された重鎖、軽鎖Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、Dab、ナノボディ、およびFvを含む、フラグメントは、由来元の完全な抗体と標的への特異的結合を競合する。フラグメントは、組換えDNA技術によって、または完全な免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により産生できる。用語の「抗体」はまた、二重特異性抗体および/またはヒト化抗体も含む。二重特異性または二価抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である(例えば、Songsivilai and Lachmann,Clin.Exp.Immunol.,79:315-321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.,148:1547-53(1992)を参照されたい)。いくつかの二重特異性抗体では、2つの異なる重鎖/軽鎖対は、ヒト化16G7重鎖/軽鎖対および16G7により結合されるものよりタウ上の異なるエピトープに特異的な重鎖/軽鎖対を含む。
【0123】
いくつかの二重特異性抗体では、1つの重鎖/軽鎖対は、以下でさらに開示されるヒト化16G7抗体であり、もう一方の重鎖/軽鎖対は、血液脳関門上に発現した受容体、例えば、インスリン受容体、インスリン様増殖因子(IGF)受容体、レプチン受容体、またはリポタンパク質受容体、またはトランスフェリン受容体に結合する抗体由来である(Friden et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4771-4775,1991;Friden et al.,Science 259:373-377,1993)。このような二重特異性抗体は、受容体媒介トランスサイトーシスにより、血液脳関門を横切って移送できる。二重特異性抗体の脳による取込は、特異的抗体を血液脳関門受容体に対する親和性を減らすように設計することにより、さらに高めることができる。受容体に対する低下した親和性により、脳内でのより広汎な分布が得られる(例えば、Atwal et al.,Sci.Trans.Med.3,84ra43,2011;Yu et al.,Sci.Trans.Med.3,84ra44,2011を参照)。
【0124】
代表的二重特異性抗体は、次記とすることもできる:(1)二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)、この場合、各軽鎖および重鎖は、短ペプチド結合を介して直列の2つの可変ドメインを含む(Wu et al.,Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin(DVD-IgTM)Molecule,In:Antibody Engineering,Springer Berlin Heidelberg(2010));(2)Tandab、これは、2つの単鎖ディアボディの融合体で、それぞれの標的抗原に対し2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体を生じる。(3)フレキシボディ(flexibody)、これは、scFvとダイアボディの組み合わせで、多価分子を生ずる;(4)いわゆる「dock and lock」分子、プロテインキナーゼAにおける「二量体化およびドッキングドメイン」に基づいたもので、これをFabに適用すると、異なるFabフラグメントに結合した2つの同じFabフラグメントからなる三価の二重特異性結合タンパク質を得ることができる;または(5)いわゆるスコーピオン分子、これは、例えば、ヒトFc領域の両方の終端に融合した2つのscFvを含む。二重特異性抗体を調製するのに有用なプラットホームの例には、BiTE(Micromet)、DART(MacroGenics)、FcabおよびMab2(F-star)、Fc改変IgG1(Xencor)またはDuoBody(Fabアーム交換に基づく、Genmab)が含まれる。
【0125】
用語「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位を意味する。エピトープは、連続アミノ酸または1つもしくは複数のタンパク質の3次折り畳み構造によって並置された非連続アミノ酸から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープ(線形エピトープとしても知られる)は通常、変性溶媒に曝露されても保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープ(立体構造エピトープとしても知られる)は通常、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、独特の空間高次構造において少なくとも3個以上、通常は少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造を決定する方法には、例えば、x線結晶学および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。
【0126】
同じまたは重複するエピトープを認識する抗体は、標的抗原に対して他方の抗体の結合と競合する一方の抗体の能力を示す簡単な免疫アッセイで特定できる。抗体のエピトープはまた、その抗原に結合した抗体のX線結晶解析により接触残基を特定して、決定することもできる。あるいは、一方の抗体の結合を低減または解消する抗原内の全てのアミノ酸変異が、他方の結合を低減または解消する場合は、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減または解消するいくつかのアミノ酸変異が、他方抗体の結合を低減または解消する場合は、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0127】
抗体間の競合は、試験抗体が共通抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイによって決定される(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.50:1495,1990)。競合結合アッセイで測定した時、過剰(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍または100倍)の試験抗体が参照抗体の結合を少なくとも50%阻害する場合、試験抗体は参照抗体と競合する。いくつかの試験抗体は、参照抗体の結合を、少なくとも75%、90%または99%阻害する。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および立体障害が起こるために、参照抗体が結合するエピトープに十分近位にある隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。
【0128】
用語の「薬学的に許容可能な」は、キャリア、希釈剤または賦形剤、または補助材料が、他の製剤成分と適合し、レシピエントに実質的に有害ではないことを意味する。
【0129】
「患者」という用語は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
【0130】
対象が、少なくとも1つの既知のリスク因子(例えば、遺伝的、生化学的、家族歴、状況暴露)を有し、そのリスク因子を有する個体で、そのリスク因子がない個体よりも疾患を発症するリスクが統計的に有意に高くなる場合、個体は疾患のリスクが高い。
【0131】
用語の「生物試料」は、生物源、例えば、ヒトまたは哺乳動物対象内のまたはそれから得ることができる生体物質の試料を意味する。このような試料は、臓器、オルガネラ、組織、組織の切片、体液、末梢血、血漿、血清、細胞、タンパク質およびペプチドなどの分子、およびこれら由来の任意の部分またはその組み合わせとすることができる。用語の「生物試料」はまた、試料の処理により得られる任意の材料を包含し得る。由来材料には、細胞またはそれらの子孫を含み得る。生物試料の処理には、濾過、蒸留、抽出、濃縮、固定、干渉成分の不活化、などの内の1種または複数を含み得る。
【0132】
用語の「コントロール試料」は、タウ関連疾患罹患領域を含むことが知られていないもしくはそのように疑われていないか、または少なくとも所定のタイプの疾患領域を含むと知られていないもしくはそれを含むと疑われていない生物試料を意味する。コントロール試料は、タウ関連疾患に罹患していない個体から得ることができる。あるいは、コントロール試料は、タウ関連疾患に罹患していない患者から得ることができる。このような試料は、生物試料がタウ関連疾患を含むと考えられるのと同時にまたは別の時期に得ることができる。生物試料およびコントロール試料は両方とも、同じ組織から得ることができる。好ましくは、コントロール試料は、基本的にまたは完全に、健常な領域からなり、タウ関連疾患罹患領域を含むと思われる生物試料と比較して使用できる。好ましくは、コントロール試料の組織は、生物試料中の組織と同じタイプである。好ましくは、生物試料中にあると思われるタウ関連疾患罹患細胞は、コントロール試料中の細胞型と同じ細胞型(例えば、ニューロンまたはグリア)から生ずるのが好ましい。
【0133】
用語の「疾患」は、生理学的機能を損なう何らかの異常な状態を意味する。この用語は、病因の性質に関係なく、生理学的機能が障害される、任意の障害、疾病、異常性、病理、病的状態、状態、または症候群を包含する広い意味で使用される。
【0134】
用語の「症状」は、対象が気付くような歩調の変化などの疾患の主観的証拠を意味する。「徴候」は、医師が認めるような疾患の客観的証拠を意味する。
【0135】
用語の「処置に対する陽性反応」は、処置を受けていないコントロール集団での平均的反応に比較して、患者集団中の個々の患者におけるより好ましい反応または平均的反応を意味する。
【0136】
アミノ酸置換を保存的または非保存的アミノ酸置換として分類する目的のために、アミノ酸は次のようにグループ化される:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖の配向に影響を与える残基):gly、pro;およびグループVI族(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸間の置換を含む。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することである。
【0137】
パーセント配列同一性は、カバットナンバリング規則により最大限整列させた抗体配列を用いて決定される。整列後、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の全体の成熟可変領域)を参照抗体の同じ領域と比較する場合、対象抗体領域と参照抗体領域の間のパーセント配列同一性は、対象抗体領域と参照抗体領域の両方において同じアミノ酸が占有する位置の数を、整列させた2つの領域の位置の総数(ギャップはカウントしない)で割り、100を乗じてパーセンテージに変換したものである。
【0138】
1つまたは複数の記述要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、特に記述していない他の要素を含んでよい。例えば、抗体を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物は、抗体単独、または他の成分と組み合わせた抗体を含んでもよい。
【0139】
値の範囲の表記は、その範囲内またはその範囲を規定する全ての整数、およびその範囲内の整数により規定される全ての部分範囲を含む。
【0140】
文脈から別義が明らかでない限り、用語の「約」は、ごくわずかな変動、例えば、示した値の測定の標準的許容誤差(例えば、SEM)を包含する。
【0141】
統計的有意性とは、p<0.05を意味する。
【0142】
冠詞の単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈により明確に別義が示されない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含することができる。
【0143】
詳細な説明
I.概要
本発明は、タウに結合する抗体を提供する。いくつかの抗体は、配列番号3の残基55~78(配列番号1の残基113~136に相当する)内のエピトープ、例えば、残基60~75(配列番号1の残基118~133に相当する)内のエピトープまたは残基61~70(配列番号1の残基119~128に相当する)内のエピトープに特異的に結合する。いくつかのこのような抗体は、2つのペプチド、例えば、配列番号3の残基55~69(配列番号1の残基113~127に相当する)を含む第1のペプチド、ならびに残基64~78(配列番号1の残基122~136に相当する)を含む第2のペプチドに特異的に結合できる。いくつかの抗体はリン酸化状態に関係なくタウに結合する。本発明のいくつかの抗体は、タウに関連する病態および関連する病状悪化を抑制するかまたは遅らせるのに役立つ。機序を理解することは本発明の実施に必要ではないが、多くの機序の中でも、非毒性高次構造を安定化することにより、病原性タウ形態の細胞間もしくは細胞内伝播を抑制することにより、タウのリン酸化の阻害により、タウの細胞への結合を妨害することにより、またはタウのタンパク質切断を誘導することにより、抗体による、タウの食作用の誘導により、タウの分子間もしくは分子内凝集の抑制または他の分子に対する結合の抑制がもたらされる結果として、毒性の低下が生じ得る。このような抗体を誘導する本発明の抗体または薬剤は、アルツハイマー病およびタウと関連する他の疾患の処置法または予防法に使用できる。
【0144】
II.標的分子
文脈から別義が明らかな場合を除き、タウへの言及は、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、糖化、またはアセチル化)が存在するか否かにかかわらず、全てのアイソフォームを含む天然のヒト型タウを意味する。ヒトの脳にはタウの6つの主要なアイソフォーム(スプライスバリアント)が生じる。これらの変異型の最長のものは、最初のメチオニン残基が切断された441個のアミノ酸を有する。残基は、441アイソフォームに従って番号が付けられている。したがって、例えば、位置404でのリン酸化への言及は、441アイソフォームの位置404、または441アイソフォームと最大限整列させた場合には任意の他のアイソフォームの対応する位置を意味する。アイソフォームのアミノ酸配列およびスイスプロット番号を以下に示す。
P10636-8(配列番号1)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKESPLQT PTEDGSEEPG
70 80 90
SETSDAKSTP TAEDVTAPLV DEGAPGKQAA
100 110 120
AQPHTEIPEG TTAEEAGIGD TPSLEDEAAG
130 140 150
HVTQARMVSK SKDGTGSDDK KAKGADGKTK
160 170 180
IATPRGAAPP GQKGQANATR IPAKTPPAPK
190 200 210
TPPSSGEPPK SGDRSGYSSP GSPGTPGSRS
220 230 240
RTPSLPTPPT REPKKVAVVR TPPKSPSSAK
250 260 270
SRLQTAPVPM PDLKNVKSKI GSTENLKHQP
280 290 300
GGGKVQIINK KLDLSNVQSK CGSKDNIKHV
310 320 330
PGGGSVQIVY KPVDLSKVTS KCGSLGNIHH
340 350 360
KPGGGQVEVK SEKLDFKDRV QSKIGSLDNI
370 380 390
THVPGGGNKK IETHKLTFRE NAKAKTDHGA
400 410 420
EIVYKSPVVS GDTSPRHLSN VSSTGSIDMV
430 440
DSPQLATLAD EVSASLAKQG L
P10636-7(配列番号2)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKESPLQT PTEDGSEEPG
70 80 90
SETSDAKSTP TAEAEEAGIG DTPSLEDEAA
100 110 120
GHVTQARMVS KSKDGTGSDD KKAKGADGKT
130 140 150
KIATPRGAAP PGQKGQANAT RIPAKTPPAP
160 170 180
KTPPSSGEPP KSGDRSGYSS PGSPGTPGSR
190 200 210
SRTPSLPTPP TREPKKVAVV RTPPKSPSSA
220 230 240
KSRLQTAPVP MPDLKNVKSK IGSTENLKHQ
250 260 270
PGGGKVQIIN KKLDLSNVQS KCGSKDNIKH
280 290 300
VPGGGSVQIV YKPVDLSKVT SKCGSLGNIH
310 320 330
HKPGGGQVEV KSEKLDFKDR VQSKIGSLDN
340 350 360
ITHVPGGGNK KIETHKLTFR ENAKAKTDHG
370 380 390
AEIVYKSPVV SGDTSPRHLS NVSSTGSIDM
400 410
VDSPQLATLA DEVSASLAKQ GL
P10636-6(4R0Nヒトタウ)(配列番号3)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKAEEAGI GDTPSLEDEA
70 80 90
AGHVTQARMV SKSKDGTGSD DKKAKGADGK
100 110 120
TKIATPRGAA PPGQKGQANA TRIPAKTPPA
130 140 150
PKTPPSSGEP PKSGDRSGYS SPGSPGTPGS
160 170 180
RSRTPSLPTP PTREPKKVAV VRTPPKSPSS
190 200 210
AKSRLQTAPV PMPDLKNVKS KIGSTENLKH
220 230 240
QPGGGKVQII NKKLDLSNVQ SKCGSKDNIK
250 260 270
HVPGGGSVQI VYKPVDLSKV TSKCGSLGNI
280 290 300
HHKPGGGQVE VKSEKLDFKD RVQSKIGSLD
310 320 330
NITHVPGGGN KKIETHKLTF RENAKAKTDH
340 350 360
GAEIVYKSPV VSGDTSPRHL SNVSSTGSID
370 380
MVDSPQLATL ADEVSASLAK QGL
P10636-5(配列番号4)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKESPLQT PTEDGSEEPG
70 80 90
SETSDAKSTP TAEDVTAPLV DEGAPGKQAA
100 110 120
AQPHTEIPEG TTAEEAGIGD TPSLEDEAAG
130 140 150
HVTQARMVSK SKDGTGSDDK KAKGADGKTK
160 170 180
IATPRGAAPP GQKGQANATR IPAKTPPAPK
190 200 210
TPPSSGEPPK SGDRSGYSSP GSPGTPGSRS
220 230 240
RTPSLPTPPT REPKKVAVVR TPPKSPSSAK
250 260 270
SRLQTAPVPM PDLKNVKSKI GSTENLKHQP
280 290 300
GGGKVQIVYK PVDLSKVTSK CGSLGNIHHK
310 320 330
PGGGQVEVKS EKLDFKDRVQ SKIGSLDNIT
340 350 360
HVPGGGNKKI ETHKLTFREN AKAKTDHGAE
370 380 390
IVYKSPVVSG DTSPRHLSNV SSTGSIDMVD
400 410
SPQLATLADE VSASLAKQGL
P10636-4(配列番号5)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKESPLQT PTEDGSEEPG
70 80 90
SETSDAKSTP TAEAEEAGIG DTPSLEDEAA
100 110 120
GHVTQARMVS KSKDGTGSDD KKAKGADGKT
130 140 150
KIATPRGAAP PGQKGQANAT RIPAKTPPAP
160 170 180
KTPPSSGEPP KSGDRSGYSS PGSPGTPGSR
190 200 210
SRTPSLPTPP TREPKKVAVV RTPPKSPSSA
220 230 240
KSRLQTAPVP MPDLKNVKSK IGSTENLKHQ
250 260 270
PGGGKVQIVY KPVDLSKVTS KCGSLGNIHH
280 290 300
KPGGGQVEVK SEKLDFKDRV QSKIGSLDNI
310 320 330
THVPGGGNKK IETHKLTFRE NAKAKTDHGA
340 350 360
EIVYKSPVVS GDTSPRHLSN VSSTGSIDMV
370 380
DSPQLATLAD EVSASLAKQG L
P10636-2(配列番号6)
10 20 30
MAEPRQEFEV MEDHAGTYGL GDRKDQGGYT
40 50 60
MHQDQEGDTD AGLKAEEAGI GDTPSLEDEA
70 80 90
AGHVTQARMV SKSKDGTGSD DKKAKGADGK
100 110 120
TKIATPRGAA PPGQKGQANA TRIPAKTPPA
130 140 150
PKTPPSSGEP PKSGDRSGYS SPGSPGTPGS
160 170 180
RSRTPSLPTP PTREPKKVAV VRTPPKSPSS
190 200 210
AKSRLQTAPV PMPDLKNVKS KIGSTENLKH
220 230 240
QPGGGKVQIV YKPVDLSKVT SKCGSLGNIH
250 260 270
HKPGGGQVEV KSEKLDFKDR VQSKIGSLDN
280 290 300
ITHVPGGGNK KIETHKLTFR ENAKAKTDHG
310 320 330
AEIVYKSPVV SGDTSPRHLS NVSSTGSIDM
340 350
VDSPQLATLA DEVSASLAKQ GL
【0145】
タウへの言及は、スイスプロットデータベースおよびその順列に列挙されている約30個の既知の天然の多様性、ならびに認知症、ピック病、核上性麻痺などのタウ病理と関連する変異を含む(例えば、スイスプロットデータベースおよびPoorkaj,et al.Ann Neurol.43:815-825(1998)を参照されたい)。441アイソフォームにより番号付けされたタウ変異のいくつかの例としては、アミノ酸残基257におけるリシンからスレオニンへの変異(K257T)、アミノ酸位置260におけるイソロイシンからバリンへの変異(I260V)、アミノ酸位置272におけるグリシンからバリンへの変異(G272V)、アミノ酸位置279におけるアスパラギンからリシンへの変異(N279K)、アミノ酸位置296におけるアスパラギンからヒスチジンへの変異(N296H)、アミノ酸位置301におけるプロリンからセリンへの変異(P301S)、アミノ酸301におけるプロリンからロイシンへの変異(P301L)、アミノ酸位置303におけるグリシンからバリンへの変異(G303V)、位置305におけるセリンからアスパラギンへの変異(S305N)、アミノ酸位置335におけるグリシンからセリンへの変異(G335S)、位置337におけるバリンからメチオニンへの変異(V337M)、位置342におけるグルタミン酸からバリンへの変異(E342V)、アミノ酸位置369におけるリシンからイソロイシンへの変異(K369I)、アミノ酸位置389におけるグリシンからアルギニンへの変異(G389R)、位置406におけるアルギニンからトリプトファンへの変異(R406W)が挙げられる。
【0146】
タウは、アミノ酸位置18、29、97、310、および394におけるチロシン、アミノ酸位置184、185、198、199、202、208、214、235、237、238、262、293、324、356、396、400、404、409、412、413、および422におけるセリン、ならびにアミノ酸位置175、181、205、212、217、231、および403におけるスレオニンを含む1つまたは複数のアミノ酸残基がリン酸化され得る。文脈から別義が明らかでない限り、タウまたはそれらのフラグメントへの言及は、そのアイソフォーム、変異体、およびアレルバリアントを含む天然のヒトアミノ酸配列を含む。
【0147】
IV.抗体
A.結合特異性および機能特性
本発明は、タウに結合する抗体を提供する。いくつかの抗体は、配列番号3の残基55~78(配列番号1の残基113~136に相当する)内のエピトープ、例えば、配列番号3の残基60~75(配列番号1の残基118~133に相当する)内のエピトープまたは配列番号3の残基61~70(配列番号1の残基119~128に相当する)内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの抗体はリン酸化状態に関係なくタウに結合する。これらの抗体は、天然源から精製するかまたは組換え発現させたタウポリペプチドで免疫することにより取得できる。抗体は、非リン酸化型のタウ、およびリン酸化を受けやすい1つもしくは複数の残基がリン酸化された形態のタウへの結合に関してスクリーニングできる。このような抗体は、好ましくは、非リン酸化タウと比較して、区別できない親和性で結合するか、またはリン酸化タウに少なくとも1.5倍、2倍または3倍の係数の範囲内で結合する(すなわち、「汎特異的である」)。16G7は、汎特異的モノクローナル抗体の一例である。本発明はまた、例えば、16G7のエピトープなどの上記の抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗体を提供する。また、例えば、16G7と競合するものなどの上記の抗体のいずれかとタウへの結合に関して競合する抗体も含まれる。
【0148】
上記の抗体は、配列番号3の残基55~78、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1の残基113~136または113~127、または122~136に相当)を含むペプチドで免疫するか、または、このような残基を含む完全長タウポリペプチドまたはそのフラグメントで免疫し、このような残基を含むペプチドへの特異的結合に関してスクリーニングすることによって新たに生成できる。このようなペプチドは、好ましくは、ペプチドに対する抗体応答の誘発を促進する異種コンジュゲート分子に結合される。結合は、直接的に、またはスペーサーペプチドもしくはスペーサーアミノ酸を介して行うことができる。システインは、その遊離SH基がキャリア分子の結合を促進するため、スペーサーアミノ酸として使用される。グリシンとペプチドとの間のシステイン残基の有無に関わらず、ポリグリシンリンカー(例えば、2~6グリシン)も使用できる。キャリア分子は、ペプチドに対する抗体応答の誘発を促進するT細胞エピトープを提供する役割をする。いくつかのキャリアは、特に、よく使用されるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、卵白アルブミンおよびウシ血清アルブミン(BSA)である。ペプチドスペーサーは、固相ペプチド合成の一部として、ペプチド免疫原に付加できる。キャリアは通常、化学的架橋によって付加される。使用できる化学架橋剤のいくつかの例としては、クロス-N-マレイミド-6-アミノカプロイルエステルまたはm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)が挙げられる(例えば、Harlow,E.et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1988;Sinigaglia et al.,Nature,336:778-780(1988);Chicz et al.,J.Exp.Med.,178:27-47(1993);Hammer et al.,Cell 74:197-203(1993);Falk K.et al.,Immunogenetics,39:230-242(1994);国際公開第98/23635号;および、Southwood et al.J.Immunology,160:3363-3373(1998)を参照されたい)。キャリアおよびスペーサーが存在する場合は、免疫原の両端に結合させることができる。
【0149】
任意のスペーサーおよびキャリアを有するペプチドを用いて、以下により詳細に記載するように、実験動物またはB細胞を免疫することができる。ハイブリドーマ上清を、配列番号3の残基55~78、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1の残基113~136、113~127または122~136に相当)を含む1つまたは複数のペプチドおよび/または、例えば、リン酸化型で位置404を有するタウの完全長アイソフォームなどのタウのリン酸化型および非リン酸化型に結合する能力に関して試験し得る。ペプチドは、スクリーニングアッセイを容易にするために、キャリアまたは他のタグに結合させることができる。この場合には、タウペプチドよりもむしろスペーサーまたはキャリアに特異的な抗体を除去するために、キャリアまたはタグは、免疫化のために使用されるスペーサーおよびキャリア分子の組み合わせより高い優先性を持たせるように差異を付けている。任意のタウのアイソフォームを使用できる。
【0150】
本発明は、タウ内のエピトープに結合するモノクローナル抗体を提供する。16G7と呼称される抗体は、1つのこのような代表的マウス抗体である。文脈から別義が明らかでない限り、16G7への言及は、この抗体の、マウス、キメラ、およびヒト化型のいずれかに言及していると理解されるべきである。この抗体は、[受託番号]として寄託されている。この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基55~78、55~69または64~78(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、113~127、または122~136に相当する)内に特異的に結合する。この抗体は、リン酸化および非リン酸化タウの両方、非病理学的および病理学的形態ならびに高次構造のタウの両方、および誤って折り畳まれた/凝集した形態のタウに結合する能力をさらに特徴とする。
【0151】
本発明のいくつかの抗体は、16G7と呼称される抗体と、同じまたは重なり合うエピトープに結合する。この抗体の重鎖および軽鎖成熟可変領域の配列は、それぞれ、配列番号7および配列番号11に示されている。このような結合特異性を有する他の抗体は、目的のエピトープを含むタウまたはその一部分でマウスを免役し、得られた抗体をタウに対する結合に関し、場合に応じ、マウス16G7の可変領域を有する抗体(IgG1カッパ)と競合させて、スクリーニングすることにより生成することができる。目的のエピトープを含むタウのフラグメントは、そのフラグメントに対する抗体応答の誘発を推進するキャリアに結合でき、および/またはこのような応答の誘発を推進するアジュバントと組み合わせることができる。このような抗体は、指定残基の変異体と比較して、タウまたはそのフラグメントに対する結合の差異に関しスクリーニングできる。このような変異体に対するスクリーニングは、結合が特定の残基の変異誘発により阻害される抗体の特定を可能とする結合特異性をさらに正確に決定し、これにより、他の例示された抗体の機能特性を共有する可能性がある。変異は、アラニン(またはアラニンが既に存在している場合には、セリン)での、一度に1つ、またはもっと広い間隔で、エピトープが存在することが既知の標的全体またはその一部の全体を通した、系統的置換とすることができる。同じセットの変異が2つの抗体の結合を著しく低下させる場合は、2つの抗体は、同じエピトープに結合する。
【0152】
選択されたマウス抗体(例えば、16G7)の結合特異性を有する抗体はまた、ファージディスプレイ法の変形法を用いて産生できる。Winterの国際公開第92/20791号を参照されたい。この方法は、ヒト抗体を産生するのに特に適している。この方法では、選択されたマウス抗体の重鎖または軽鎖可変領域のいずれかが出発材料として使用される。例えば、軽鎖可変領域を出発物質として選択した場合、ファージライブラリーは、メンバーが同じ軽鎖可変領域(すなわち、マウス出発物質)および異なる重鎖可変領域を提示するように構成されている。重鎖可変領域は、例えば、再配列ヒト重鎖可変領域のライブラリーから得ることができる。タウまたはそのフラグメントに強い特異的結合を示すファージ(例えば、少なくとも108および好ましくは少なくとも109M-1)が選択される。その後、このファージ由来の重鎖可変領域は、さらなるファージライブラリーを構築するための出発物質として役立つ。このライブラリーでは、各ファージは、同じ重鎖可変領域(すなわち、第一のディスプレイライブラリーから特定された領域)および異なる軽鎖可変領域を提示する。軽鎖可変領域は、例えば、再配列ヒト軽鎖可変領域のライブラリーから取得できる。ここでも、タウに対して強力な特異的結合を示すファージが選択される。得られた抗体は、通常、マウス出発物質と同一または類似のエピトープ特異性を有する。
【0153】
16G7の重鎖のカバット/コチアの組み合わせCDRは、配列番号8、9、および10にそれぞれ示されており、また、16G7の軽鎖のカバットCDRは、それぞれ、配列番号12、13、および14に示されている。
【表2】
【0154】
他の抗体は、16G7などの代表的な抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの変異誘発によって取得できる。成熟重鎖および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列において16G7と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり、その機能特性を保持するモノクローナル抗体、および/または少数の機能的に重要でないアミノ酸置換(例えば、保存的置換)、欠失、もしくは挿入によってそれぞれの抗体とは異なるモノクローナル抗体も本発明に含まれる。カバットによって定義されるような、16G7の対応するCDRと90%、95%、99%または100%同一であるいずれか従来の定義、好ましくはカバットの定義による少なくとも1つ、または全6つのCDRを有するモノクローナル抗体も含まれる。
【0155】
本発明はまた、完全にまたは実質的に16G7に由来するいくつかのまたは全ての(例えば、3、4、5、および6つの)CDRを有する抗体も提供する。このような抗体には、完全にまたは実質的に16G7の重鎖可変領域に由来する、少なくとも2つの、および通常3つ全てのCDRを有する重鎖可変領域および/または完全にまたは実質的に16G7の軽鎖可変領域に由来する、少なくとも2つの、および通常3つ全てのCDRを有する軽鎖可変領域を含めることができる。抗体は、重鎖および軽鎖の両方を含むことができる。CDRは、4、3、2、または1以下の置換、挿入、または欠失を含む場合、CDR-H2(カバットにより定義される場合)が6、5、4、3、2、または1以下の置換、挿入、または欠失を有することができることを除いて、実質的に、対応する16G7 CDR由来である。このような抗体は、成熟重鎖および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列で16G7と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有し、その機能特性を保持し得、および/または少数の機能的に重要でないアミノ酸置換(例えば、保存的置換)、欠失、もしくは挿入によって16G7の抗体とは異なり得る。
【0156】
このようなアッセイにより特定されたいくつかの抗体は、モノマー、誤って折り畳まれた、凝集した、リン酸化された、または非リン酸化形態のタウ等に結合できる。同様に、いくつかの抗体は、タウの非病理学的および病理学的形態および高次構造に対し免疫反応性である。
【0157】
B.非ヒト抗体
その他の非ヒト抗体、例えば、マウス、モルモット、霊長類、ウサギまたはラットのタウまたはそのフラグメント(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当する、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78)に対する抗体の産生は、例えば、動物をタウまたはそのフラグメントで免役することによって実現できる。Harlow & Lane、Antibodies,A Laboratory Manual(CSHP NY,1988)(本出願において、参照により組み込まれる)を参照されたい。このような免疫原は、ペプチド合成または組換え発現によって、天然源から取得できる。必要に応じて、融合法または別の方法でキャリアタンパク質と複合化された免疫原を投与することができる。必要に応じて、免疫原はアジュバントと共に投与できる。いくつかの種類のアジュバントを、以下に記載されるように使用できる。完全フロイントアジュバントと、それに続く不完全アジュバントは、実験動物の免疫化に好ましい。ウサギまたはモルモットが通常、ポリクローナル抗体を作製するために使用される。マウスは通常、モノクローナル抗体を作製するために使用される。抗体は、タウまたはタウ内のエピトープ(例えば、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、または61~70)(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133または119~128に相当する)への特異的結合により、スクリーニングされる。このようなスクリーニングは、タウバリアントのコレクション、例えば、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当)を含むタウバリアント、またはこれらの残基内の変異への抗体の結合を判定し、どのタウバリアントが抗体に結合するかを特定することによって達成できる。結合は、例えば、ウェスタンブロット、FACSまたはELISAにより評価できる。
【0158】
C.ヒト化抗体
ヒト化抗体は遺伝子改変された抗体であり、非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRがヒト「受容体」抗体配列にグラフト化されている(例えば、Queenの米国特許第5,530,101号および同第5,585,089号;Winterの米国特許第5,225,539号、Carterの米国特許第6,407,213号、Adairの米国特許第5,859,205号、およびFooteの米国特許第6,881,557号を参照されたい)。受容体抗体の配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、そのような配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、または生殖系列領域の配列であり得る。したがって、ヒト化抗体は、完全にもしくは実質的にドナー抗体由来の少なくとも3つ、4つ、5つまたは全てのCDR、ならびに可変領域フレームワーク配列および存在する場合には、完全にもしくは実質的にヒト抗体配列に由来する定常領域を有する抗体である。同様に、ヒト化重鎖は、完全にもしくは実質的にドナー抗体重鎖由来の少なくとも1つ、2つ、通常は全3つCDR、存在する場合には、実質的にヒト重鎖可変領域フレームワークおよび定常領域配列由来の重鎖可変領域フレームワーク配列および重鎖定常領域を有する。同様に、ヒト化軽鎖は、完全にもしくは実質的にドナー抗体軽鎖由来の少なくとも1つ、2つ、通常は全3つCDR、存在する場合には、実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワークおよび定常領域配列由来の軽鎖可変領域フレームワーク配列および軽鎖定常領域を有する。ナノボディおよびdAb以外に、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含む。ヒト化抗体中のCDRは、対応する残基(いずれかの従来の方式により定義されるが好ましくは、カバットにより定義される)の少なくとも85%、90%、95%、または100%がそれぞれのCDR間で同一である場合に、実質的に非ヒト抗体中の対応するCDRに由来する。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列または抗体鎖の定常領域は、カバットによって定義される対応する残基の少なくとも85%、90%、95%または100%が同一である場合に、それぞれ実質的にヒト可変領域フレームワーク配列またはヒト定常領域に由来する。2014年世界保健機関(WHO)ヒト化抗体の国際一般的名称(INN)定義に従いヒト化として分類されるためには、ヒト生殖系列抗体配列と(すなわち、体細胞超変異の前に)少なくとも85%の同一性がなければならない。混合抗体は、1つの抗体鎖(例えば、重鎖)が閾値を満たし、残りの鎖(例えば、軽鎖)が閾値を満たさない抗体である。いずれの鎖も閾値を満たさない場合には、たとえ、両方の鎖の可変フレームワーク領域がいくつかのマウスの逆突然変異により実質的にヒトであるとしても、抗体はキメラとして分類される。Jones et al.(2016)The INNs and outs of antibody nonproprietary names,mAbs 8:1,1-9,DOI:10.1080/19420862.2015.1114320を参照されたい。また、“WHO-INN:International nonproprietary names(INN)for biological and biotechnological substances(a review)”(Internet)2014.http://www.who.int/medicines/services/inn/BioRev2014.pdf)から入手可能。本文献は、参照により本明細書に組み込まれる。誤解を避けるために記すと、本明細書で使用される場合、用語の「ヒト化」は、2014 WHO INNヒト化抗体の定義に限定されることを意図していない。本明細書で提供されるいくつかのヒト化抗体は、ヒト生殖系列配列に少なくとも85%の配列同一性を有し、また、本明細書で提供されるいくつかのヒト化抗体は、ヒト生殖系列配列に対し85%未満の配列同一性を有する。本明細書で提供されるヒト化抗体のいくつかの重鎖は、ヒト生殖細胞系列配列に対し約60%~100%の配列同一性、例えば、約60%~69%、70%~79%、80%~84%、または85%~89%の範囲などの配列同一性を有する。いくつかの重鎖は2014 WHO INN定義を下回り、例えば、ヒト生殖細胞系列配列に対し、約64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、または82%、83%または84%の配列同一性を有し、一方、他の重鎖は2014 WHO INN定義に適合し、ヒト生殖細胞系列配列に対し、約85%、86%、87%、88%、89%またはそれを超える配列同一性を有する。本明細書で提供されるヒト化抗体のいくつかの軽鎖は、ヒト生殖細胞系列配列に対し約60%~100%の配列同一性、例えば、80%~84%、または85%~89%の範囲などの配列同一性を有する。いくつかの軽鎖は2014 WHO INN定義を下回り、例えば、ヒト生殖細胞系列配列に対し、約81%、82%、83%、または84%の配列同一性を有し、一方、他の軽鎖は2014 WHO INN定義を満たし、ヒト生殖細胞系列配列に対し、約85%、86%、87%、88%、89%またはそれを超える配列同一性を有する。本明細書で提供される、2014 WHO INN定義により「キメラ」であるいくつかのヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系列配列に対して85%未満の同一性を有する重鎖を、ヒト生殖細胞系列配列に対して85%未満の同一性を有する軽鎖と対をなして、有する。例えば、ヒト生殖細胞系列配列に対して少なくとも85%の同一性を有する重鎖を、ヒト生殖細胞系列配列に対して85%未満の同一性を有する軽鎖と対をなして有する本明細書で提供されるいくつかのヒト化抗体は、2014 WHO INN定義により「混合」であり、またはその逆も「混合」である。本明細書で提供されるいくつかのヒト化抗体は、2014 WHO INNの「ヒト化」の定義に適合し、ヒト生殖細胞系列配列に対して少なくとも85%の同一性を有する重鎖を、ヒト生殖細胞系列配列に対して少なくとも85%の同一性を有する軽鎖と対をなして有する。2014 WHO INNの「ヒト化」の定義に適合する代表的抗体には、配列番号20、配列番号25、配列番号26または配列番号27のアミノ酸配列を有する成熟重鎖配列と対をなして、配列番号29のアミノ酸配列を有する成熟軽鎖を有する抗体が含まれる。本発明の追加のヒト化抗体には、配列番号15~27のいずれかのアミノ酸配列を有する成熟重鎖を、配列番号28~30のいずれかのアミノ酸配列を有する成熟軽鎖と対をなして有する抗体が含まれる。
【0159】
ヒト化抗体は、マウス抗体由来の全6つのCDR(いずれかの従来方式により定義されるが、好ましくはカバットによって定義されるような)を包含する場合が多いが、マウス抗体由来の全てより少ないCDR(例えば、少なくとも3、4、または5個のCDR)でも作製できる(例えば、Pascalis et al.,J.Immunol.169:3076,2002;Vajdos et al.,J.of Mol.Biol.,320:415-428,2002;Iwahashi et al.,Mol.Immunol.36:1079-1091,1999;Tamura et al,J.Immunol.,164:1432-1441,2000)。
【0160】
いくつかの抗体では、CDRの一部のみ、すなわち、SDRと呼ばれる結合に必要なCDR残基のサブセットは、ヒト化抗体において結合を保持するために必要とされる。抗原に接触せず、SDR中に存在しないCDR残基は、以前の研究に基づいて(例えば、CDR H2中の残基H60~H65は必要とされない場合が多い)、コチア高頻度可変性ループ(Chothia,J.Mol.Biol.196:901,1987)の外側にあるカバットCDRの領域から分子モデリングおよび/もしくは経験的に、またはGonzales et al.,Mol.Immunol.41:863,2004に記載のとおりに特定することができる。このようなヒト化抗体では、1つまたは複数のドナーCDR残基が存在しないか、またはドナーCDR全体が除去されている位置において、その位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列中の対応する位置(カバットナンバリングによる)を占めるアミノ酸であり得る。CDR中に包含するドナーアミノ酸のための受容体のこのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映している。このような置換は、潜在的に、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として潜在的な免疫原性を減少させる点で、および/またはWHO INNの「ヒト化」の定義に適合させるために、都合がよい。しかし、置換はまた、親和性の変化を生ずることがあり、親和性の顕著な低下は避けるのが好ましい。CDR内の置換の位置および置換するアミノ酸も経験的に選択できる。
【0161】
ヒト受容体抗体配列は、ヒト受容体配列の可変領域フレームワークとドナー抗体鎖の対応する可変領域フレームワークとの間に高度な配列同一性(例えば、65~85%の同一性)を提供するために、必要に応じて、多くの既知のヒト抗体配列の中から選択できる。
【0162】
重鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードAAA18265.1(配列番号31)のヒト成熟重鎖可変領域である。重鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードADW08092.1(配列番号32)のヒト成熟重鎖可変領域である。重鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードIMGT番号IGHV1-2*02(配列番号33)のヒト成熟重鎖可変領域である。IMGT番号IGHV1-2*02は、マウス16G7重鎖と同じ正準型を有するCDR CDR-H1およびCDR-H2を含み、カバットヒト重鎖サブグループ1のメンバーである。軽鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードAAB24404.1(配列番号34)のヒト成熟軽鎖可変領域である。軽鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードAEK69364.1(配列番号35)のヒト成熟軽鎖可変領域である。軽鎖の受容体配列の例は、NCBIアクセッションコードOMGT番号IGKV4-1*01(配列番号36)のヒト成熟軽鎖可変領域である。IMGT番号IGKV4-1*01は、マウス16G7と同じCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の正準クラスを有し、ヒトカッパサブグループ1に属する。
【0163】
2つ以上のヒト受容体抗体配列が選択される場合、これらの受容体の複合体またはハイブリッドを使用でき、ヒト化軽鎖および重鎖可変領域の異なる位置で使用されるアミノ酸は、いずれかの使われるヒト受容体抗体配列から選択できる。
【0164】
ヒト可変領域フレームワーク残基由来の特定のアミノ酸は、CDR高次構造および/または抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づいて置換に関し選択できる。このような可能な影響の研究は、モデリング、特定の位置でのアミノ酸の特徴の検査、または特定のアミノ酸の置換もしくは変異誘発の効果の経験的観察によるものである。
【0165】
例えば、アミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択したヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なる場合、ヒトフレームワークアミノ酸は、マウス抗体由来の等価のフレームワークアミノ酸によって置換でき、その際、アミノ酸が、(1)直接抗原と非共有結合する、(2)CDR領域に隣接しているまたはカバットではなくコチアにより定義されたCDR内にある、(3)そうでなければ、CDR領域と相互作用する(例えば、CDR領域の約6Å内である)、(例えば、相同な既知免疫グロブリン鎖の解析された構造上で軽鎖または重鎖をモデリングすることにより識別される)、または(4)VL-VH界面に関与する残基である、ことを想定することは理にかなっている。
【0166】
本発明は、ヒト化型のマウス16G7抗体を提供し、これには、13個の代表的ヒト化成熟重鎖可変領域:hu16G7VHv1(配列番号15)、hu16G7VHv2)(配列番号16)、hu16G7VHv2a(配列番号17)、16G7VHv2aB7(配列番号18)、hu16G7VHv2b(配列番号19)、hu16G7VHv2bH7(配列番号20)、hu16G7VHv3(配列番号21)、hu16G7VHv4(配列番号22)、hu16G7VHv5V(配列番号23)、hu16G7VHv5VR(配列番号24)、hu16G7VHv6a(配列番号25)、hu16G7VHv6b(配列番号26 hu16G7VHv7(配列番号27)、mならびに3個の代表的ヒト成熟軽鎖可変領域:hu16G7VLv1(配列番号28)、hu16G7VLv2(配列番号29)、およびhu16G7VLv3(配列番号30)が含まれる。
【0167】
ある実施形態では、ヒト化配列は、QuikChange部位特異的変異誘発[Wang,W.and Malcolm,B.A.(1999)BioTechniques 26:680-682]を用いて複数の変異、欠失、および挿入を導入可能な2段PCRプロトコルを用いて生成される。
【0168】
Queenの米国特許第5,530,101号により定義されるとおり、クラス(1)~(3)のフレームワーク残基は、交互に正準およびバーニア(vernier)残基と呼ばれることもある。CDRループの高次構造の決定を支援するフレームワーク残基は、正準残基と呼ばれることもある(Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.196,901-917(1987),Thornton & Martin J.Mol.Biol.,263:800-815(1996))。抗原結合ループの高次構造を支持し、抗原に対する抗体の適合を微調整する役割を果たすフレームワーク残基は、バーニア残基と呼ばれることもある(Foote & Winter,J Mol.Biol 224:487-499(1992))。
【0169】
置換候補である他のフレームワーク残基は、潜在的なグリコシル化部位を作り出す。さらなる他の置換候補は、ヒト免疫グロブリンにとってその位置のものとしては通常とは異なる受容体ヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の等価位置のアミノ酸またはより典型的なヒト免疫グロブリンの等価位置由来のアミノ酸で置換できる。
【0170】
置換候補であるその他のフレームワーク残基は、ピログルタミン酸変換の可能性を最小化するためにグルタミン酸(E)を置換されてもよいN末端グルタミン残基(Q)である[Y.Diana Liu,et al.,2011,J.Biol.Chem.,286:11211-11217]。ピログルタミン酸(pE)へのグルタミン酸(E)の変換は、グルタミン(Q)からよりもゆっくり起こる。グルタミンのpEへの変換での一級アミンの減少のために、抗体はより酸性になる。不完全な変換は、抗体の不均一性をもたらし、これは、電荷に基づく分析方法により複数のピークとして観察できる。不均一性の差異は、プロセス制御が不十分であることを示し得る。N末端グルタミンのグルタミン酸への置換を有する代表的ヒト化抗体は、配列番号15(hu16G7VHv1)、配列番号16(hu16G7VHv2)、配列番号17(hu16G7VHv2a)、配列番号18(16G7VHv2aB7)、配列番号19(hu16G7VHv2b)、配列番号20(hu16G7VHv2bH7)、配列番号21(hu16G7VHv3)、配列番号22(hu16G7VHv4)、配列番号23(hu16G7VHv5V)、配列番号24(hu16G7VHv5VR)、および配列番号27(hu16G7VHv7)である。
【0171】
代表的ヒト化抗体は、Hu16G7と呼称されるマウス16G7のヒト化型である。
【0172】
マウス抗体16G7は、それぞれ、配列番号7および11を含むアミノ酸配列を有する成熟重鎖および軽鎖可変領域を含む。本発明は、次に記す13個の代表的ヒト化成熟重鎖可変領域を提供する:hu16G7VHv1、hu16G7VHv2)、hu16G7VHv2a、16G7VHv2aB7、hu16G7VHv2b、hu16G7VHv2bH7、hu16G7VHv3、hu16G7VHv4、hu16G7VHv5V、hu16G7VHv5VR、hu16G7VHv6a、hu16G7VHv6b、およびhu16G7VHv7。本発明はさらに、3個の代表的ヒト成熟軽鎖可変領域:hu16G7VLv1、hu16G7VLv2、およびhu16G7VLv3を提供する。
図2および3は、マウス16G7および種々のヒト化抗体の、それぞれ、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列比較を示す。
【0173】
CDR高次構造および/または抗原への結合、重鎖と軽鎖間の相互作用の媒介、定常領域との相互作用、望ましいまたは望ましくない翻訳後修飾のための部位であること、ヒト可変領域中のその位置にとって通常とは異なる残基であるために免疫原性の可能性があること、凝集潜在能力の取得、に対し影響を与える可能性などの理由のために、およびその他の理由のために、さらに例により明示されるように、次の33個の可変領域フレームワーク位置を、3個の代表的ヒト成熟軽鎖可変領域および13個の代表的ヒト成熟重鎖可変領域における置換候補として検討した:L4(M4L)、L9(D9S)、L15(L15V)、L18(R18K)、L19(A19V)、L21(I21M)、L22(N22S)、L43(P43S)、L48(I48M)、H1(Q1E)、H5(V5Q)、H7(S7P)、H9(A9S)、H10(E10V)、H11(V11L)、H12(K12V)、H13(K13R)、H20(V20L)、H37(V37A)、H38(R38K)、H40(A40R)、H48(M48I)、H66(R66K)、H67(V67K)、H69(M69L)、H71(R71V)、H73(T73I)、H75(I75SまたはI75A)、H80(M80V)、H82a(S82a-T)、H82b(R82b-S)、H83(R83T)、H85(D85E)。次の3個の可変領域CDR位置を、さらに例により明示されるように、13個の代表的ヒト成熟重鎖可変領域における置換候補として検討した:H31(S31G)、H60(N60A)、およびH64(K64Q)。
【0174】
ここでは、他のところと同様に、最初に言及される残基は、カバットCDRまたはCDR-H1の場合にはコチア-カバットの組み合わせCDRをヒト受容体フレームワークにグラフト化することにより形成されたヒト化抗体の残基であり、2番目に言及される残基は、このような残基を置換するために検討されている残基である。したがって、可変領域フレームワーク内で最初に言及される残基はヒトであり、CDR内で最初に言及される残基はマウスである。
【0175】
抗体の例には、例えば、次に例示した成熟重鎖および軽鎖可変領域の任意の順列または組み合わせが含まれる:VHv1/VLv1、VHv1/VLv2、VHv1/VLv3、VHv2/VLv1、VHv2/VLv2、VHv2/VLv3、VHv2a/VLv1、VHv2a/VLv2、VHv2a/VLv3、VHv2aB7/VLv1、VHv2aB7/VLv2、VHv2aB7/VLv3、VHv2b/VLv1、VHv2b/VLv2、VHv2b/VLv3、VHv2bH7/VLv1、VHv2bH7/VLv2、VHv2bH7/VLv3、VHv3/VLv1、VHv3/VLv2、VHv3/VLv3、VHv4/VLv1、VHv4/VLv2、VHv4/VLv3、VHv5/VLv1、VHv5/VLv2、VHv5/VLv3、VHv5VR/VLv1、VHv5VR/VLv2、VHv5VR/VLv3、VHv6a/VLv1、VHv6a/VLv2、VHv6a/VLv3、VHv6b/VLv1、VHv6b/VLv2、VHv6b/VLv3、VHv7/VLv1、VHv7/VLv2、およびVHv7/VLv3。
【0176】
本発明は、ヒト化成熟重鎖可変領域がhu16G7VHv1、hu16G7VHv2、hu16G7VHv2a、16G7VHv2aB7、hu16G7VHv2b、hu16G7VHv2bH7、hu16G7VHv3、hu16G7VHv4、hu16G7VHv5V、hu16G7VHv5VR、hu16G7VHv6a、hu16G7VHv6b、およびhu16G7VHv7(配列番号15~27)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示し、ヒト化成熟軽鎖可変領域がhu16G7VLv1、hu16G7VLv2、およびhu16G7VLv3(配列番号28~30)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を示す16G7ヒト化抗体のバリアントを提供する。いくつかのこのような抗体では、配列番号15~27、および配列番号28~30中で認められる、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35個、もしくは全36個の逆突然変異またはその他の変異が保持される。
【0177】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H7はPにより占められ、H9はSにより占められ、H10はVにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H13はRにより占められ、H20はLにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H66はKにより占められ、H67はAにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められ、H75はSにより占められ、H80はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0178】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H7はPにより占められ、H9はSにより占められ、H10はVにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H13はRにより占められ、H20はLにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H48、H69、H71、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、I、L、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0179】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H5はQにより占められ、H11はLにより占められ、H12はVにより占められ、H20はLにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H82aはTにより占められ、H82bはSにより占められ、H83はTにより占められ、およびH85はEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H11、H12、H20、H48、H69、H71、H82a、H82b、H83、およびH85は、それぞれ、E、Q、L、V、L、I、L、V、T、S、T、およびEにより占められる。
【0180】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H31はGにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H60はAにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、およびH83はTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、G、R、I、A、L、IおよびTにより占められる。
【0181】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、H83はTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。
【0182】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H66はKにより占められ、H67はAにより占められ、H69はLにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められ、およびH83はTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。
【0183】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はEにより占められ、H12はVにより占められ、H40はRにより占められ、H48はIにより占められ、H69はLにより占められ、H73はIにより占められ、H83はTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。
【0184】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H7はPにより占められ、H71はVにより占められ、H73はIにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H7、H71、およびH73は、それぞれ、P、V、およびIにより占められる。
【0185】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H31はGにより占められ、H60はAにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H31およびH60は、それぞれ、GおよびAにより占められる。
【0186】
いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、それぞれ、Q、V、G、R、I、A、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。
【0187】
いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H7、H71、およびH73は、それぞれ、Q、P、V、およびIにより占められる。
【0188】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:H1はQまたはEにより占められ、H5はVまたはQにより占められ、H7はSまたはPにより占められ、H9はAまたはSにより占められ、H10はEまたはVにより占められ、H11はVまたはLにより占められ、H12はKまたはVにより占められ、H13はKまたはRにより占められ、H20はVまたはLにより占められ、H31はGまたはSにより占められ、H37はVまたはAにより占められ、H38はRまたはKにより占められ、H40はAまたはRにより占められ、H48はMまたはIにより占められ、H60はAまたはNにより占められ、H64はQまたはKにより占められ、H66はRまたはKにより占められ、H67はVまたはAにより占められ、H69はMまたはLにより占められ、H71はRまたはVにより占められ、H73はTまたはIにより占められ、H75はI、S、またはAにより占められ、H80はMまたはVにより占められ、H82aはSまたはTにより占められ、H82bはRまたはSにより占められ、H83はRまたはTにより占められ、およびH85はDまたはEにより占められる。
【0189】
いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H37、H38、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv1におけるように、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、A、K、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H11、H12、H20、H48、H69、H71、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv2におけるように、それぞれ、E、Q、L、V、L、I、L、V、A、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、hu16G7VHv2aにおけるように、それぞれ、E、V、R、I、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H66、H67、H69、H71、H73、およびH83は、hu16G7VHv2aB7におけるように、それぞれ、E、V、G、R、I、A、K、A、L、V、IおよびTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H40、H48、H69、H73、およびH83は、hu16G7VHv2bにおけるように、それぞれ、E、V、R、I、L、IおよびTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H12、H31、H40、H48、H60、H64、H69、H73、およびH83は、hu16G7VHv2bH7におけるように、それぞれ、E、V、G、R、I、A、Q、L、IおよびTにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H48、H69、H71、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv3におけるように、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、I、L、V、A、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H11、H12、H20、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv4におけるように、それぞれ、E、Q、L、V、L、I、K、A、L、V、I、S、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H38、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73I、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv5Vにおけるように、それぞれ、E、Q、P、S、V、L、V、R、L、K、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H40、H48、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82a、H82b、H83、およびH85は、hu16G7VHv5VRにおけるように、それぞれ、Q、P、S、V、L、V、R、L、R、I、K、A、L、V、I、S、V、T、S、T、およびEにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H7、H71、およびH73は、hu16G7VHv6aにおけるように、それぞれ、P、V、およびIにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H71は、hu16G7VHv6bにおけるように、Vにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VH領域の位置H1、H7、H71、およびH73は、hu16G7VHv7におけるように、それぞれ、E、P、V、およびIにより占められる。
【0190】
いくつかのヒト化16G7抗体では、重鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、軽鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のそれぞれは、ヒト生殖系列配列に、≧85%の同一性を有する。
【0191】
いくつかのヒト化16G7抗体では、3つの重鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義され(配列番号8、9、および10)および3つの軽鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義される(配列番号12、13、および14)。但し、位置H31がSまたはGにより占められ、位置H60がNまたはAにより占められ、位置64がKまたはQにより占められるという条件の場合である。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H1は、配列番号49を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H2は、配列番号50を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H2は、配列番号51を含むアミノ酸配列を有する。
【0192】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はLにより占められ、L9はSにより占められ、L15はVにより占められ、L22はSにより占められ、L43はSにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、S、およびSにより占められる。
【0193】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVH領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はLにより占められ、L9はSにより占められ、L15はVにより占められ、L18はKにより占められ、L19はVにより占められ、L21はMにより占められ、L22はSにより占められ、およびL43はSにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。
【0194】
いくつかのヒト化16G7抗体では、次に示すVL領域の位置の少なくとも1つが指定したアミノ酸により占められる:L4はMまたはLにより占められ、L9はDまたはSにより占められ、L15はLまたはVにより占められ、L18はRまたはKにより占められ、L19はAまたはVにより占められ、L21はIまたはMにより占められ、L22はNまたはSにより占められ、L43はPまたはSにより占められ、およびL48はIまたはMにより占められる。
【0195】
いくつかのヒト化16G7抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、hu16G7VLv1におけるように、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L22、およびL43は、hu16G7VLv2におけるように、それぞれ、L、S、V、S、およびSにより占められる。いくつかのヒト化16G7抗体では、VL領域の位置L4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、およびL43は、hu16G7VLv3におけるように、それぞれ、L、S、V、K、V、M、S、およびSにより占められる。
【0196】
いくつかのヒト化16G7抗体では、重鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、軽鎖可変領域は、ヒト配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のそれぞれは、ヒト生殖系列配列に、≧85%の同一性を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、3つの重鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義され(配列番号8、9、および10)および3つの軽鎖CDRは、カバット/コチアの組み合わせにより定義される(配列番号12、13、および14)。但し、位置H31がSまたはGにより占められ、位置H60がNまたはAにより占められ、位置64がKまたはQにより占められるという条件の場合である。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H1は、配列番号49を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H2は、配列番号50を含むアミノ酸配列を有する。いくつかのヒト化16G7抗体では、CDR-H2は、配列番号51を含むアミノ酸配列を有する。
【0197】
このようなヒト化抗体のCDR領域は、16G7のCDR領域と同一または実質的に同一であり得る。CDR領域は、任意の従来の定義(例えば、コチア、またはコチアとカバットの組み合わせ)によって定義できるが、好ましくはカバットによって定義されるものである。
別に定める場合を除き、可変領域フレームワーク位置は、カバットナンバリングと一致する。その他のこのようなバリアントは通常、例示Hu16G7重鎖および軽鎖の配列とは、少数(例えば、通常、1、2、3、5、10、または15個)の置換、欠失または挿入だけ異なる。このような差異は通常、フレームワーク中にあるが、CDR中でも発生し得る。
【0198】
ヒト化16G7バリアントにおける追加の多様性の1つの可能性は、可変領域フレームワークでの追加の逆突然変異である。ヒト化mAb中のCDRと接触しないフレームワーク残基の多くは、ドナーマウスmAbまたは他のマウスもしくはヒトの抗体の対応する位置のアミノ酸の置換に順応でき、さらに多くの潜在的なCDR接触残基もまた置換を受けやすい。CDR内のアミノ酸でさえ、例えば、可変領域フレームワークを提供するために使用されるヒト受容体配列の対応する位置に見られる残基で変更され得る。さらに、例えば、重鎖および/または軽鎖に対し、別のヒト受容体配列が使用できる。異なる受容体配列が使用される場合、対応するドナーおよび受容体残基はすでに逆突然変異を含まないものであるため、上記で推奨する逆突然変異のうちの1つまたは複数は実行されなくてもよい。
【0199】
好ましくは、ヒト化16G7バリアント中の置換または逆突然変異は、(保存的であるなしにかかわらず)ヒト化mAbの結合親和性または効力、すなわち、タウに結合する能力に影響を与えない。
【0200】
ヒト化16G7抗体は、リン酸化および非リン酸化タウの両方、および誤って折り畳まれた/凝集した形態のタウに結合する能力をさらに特徴とする。
【0201】
D.キメラ抗体およびベニア抗体
本発明はさらに、非ヒト抗体、特に、例示16G7抗体のキメラおよびベニア型を提供する。
【0202】
キメラ抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス)の軽鎖および重鎖の成熟可変領域をヒト軽鎖および重鎖定常領域と組み合わせた抗体である。このような抗体は、実質的にまたは完全にマウス抗体の結合特異性を保持し、ヒト配列の約2/3である。ある実施形態では、キメラ16G7抗体は、配列番号54の重鎖アミノ酸配列および配列番号55の軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0203】
ベニア抗体は、CDRのいくつかおよび通常は全てならびに非ヒト抗体の非ヒト可変領域フレームワーク残基の一部を保持しているが、B-細胞エピトープまたはT-細胞エピトープ、例えば、露出した残基(Padlan,Mol.Immunol.28:489,1991)に寄与し得る他の可変領域フレームワーク残基がヒト抗体配列の対応する位置由来の残基と置換されているヒト化抗体の一種である。その結果、CDRが完全にまたは実質的に非ヒト抗体に由来し、非ヒト抗体の可変領域フレームワークが置換によってよりヒト様に作られた抗体が得られる。16G7抗体のベニア型は本発明に含まれる。
【0204】
E.ヒト抗体
タウまたはそのフラグメント対するヒト抗体(例えば、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78、これらはそれぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当する)は、以下に記載の様々な技術により得られる。いくつかのヒト抗体は、実施例に記載のマウスモノクローナル抗体の1種などの、特定のマウス抗体と同じエピトープ特異性を有するように、上記または別の、競合結合実験により、Winterのファージディスプレイ方法により、選択される。ヒト抗体はまた、標的抗原として、配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当する)のみを含むタウフラグメントなどのタウのフラグメントのみを用いることにより、および/または配列番号3のアミノ酸残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当する)内の種々の変異を含むタウバリアントなどのタウバリアントコレクションに対して抗体をスクリーニングすることにより、特定のエピトープ特異性もスクリーニングできる。
【0205】
ヒト抗体を産生するための方法には、Oestberg et al.,Hybridoma 2:361-367(1983);Oestbergの米国特許第4,634,664号、およびEnglemanらの米国特許第4,634,666号のトリオーマ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む遺伝子導入マウスの使用(例えば、Lonbergらの国際公開第93/12227号(1993);米国特許第5,877,397号、同第5,874,299号、同第5,814,318号、同第5,789,650号、同第5,770,429号、同第5,661,016号、同第5,633,425号、同第5,625,126号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、Neuberger,Nat.Biotechnol.14:826(1996)、およびKucherlapati、国際公開第91/10741号(1991)を参照されたい)ファージディスプレイ法(例えば、Dowerらの国際公開第91/17271号、McCaffertyらの国際公開第92/01047号、米国特許第5,877,218号、同第5,871,907号、同第5,858,657号、同第5,837,242号、同第5,733,743号および同第5,565,332号を参照されたい)、および国際公開第2008/081008号に記載の方法(例えば、EBVを用いたヒトから単離したメモリーB細胞の不死化、望ましい特性のスクリーニング、および組換え型のクローニングと発現)が挙げられる。
【0206】
F.定常領域の選択
キメラ抗体、ベニア抗体、なたはヒト化抗体の重鎖および軽鎖の可変領域は、ヒト定常領域の少なくとも一部に連結できる。定常領域の選択は、1つには、抗体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞食作用および/または補体依存細胞毒性が所望されるか否かに依存する。例えば、ヒトアイソタイプIgG1およびIgG3は、補体依存性細胞傷害を有し、ヒトアイソタイプIgG2およびIgG4は有さない。ヒトIgG1およびIgG3はまた、ヒトIgG2およびIgG4より強力な細胞媒介エフェクター機能を誘導する。軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパであり得る。定常領域のナンバリング規則には、EUナンバリング(Edelman,G.M.et al.,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85(1969))、カバットナンバリング(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)、IMGT独自ナンバリング(Lefranc M.-P.et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor constant domains and Ig superfamily C-like domains,Dev.Comp.Immunol.,29,185-203(2005))、およびIMGTエキソンナンバリング(Lefranc、前出)が挙げられる。
【0207】
重鎖のC末端リシンなどの軽鎖および/または重鎖のアミノ末端またはカルボキシ末端における1つまたはいくつかのアミノ酸は、分子の一部または全てを欠損していても、または誘導体化されていてもよい。置換は、補体媒介性細胞傷害もしくはADCCなどのエフェクター機能を低減または増加させるために(例えば、Winterらの米国特許第5,624,821号、Tsoらの米国特許第5,834,597号、およびLazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4005,2006を参照されたい)、またはヒトにおける半減期を延長するために定常領域で行われ得る(例えば、Hinton et al.,J.Biol.Chem.279:6213,2004を参照されたい)。抗体の半減期を増加させるための代表的な置換には、位置250におけるGlnおよび/または位置428におけるLeuが含まれる(定常領域のEUナンバリングがこの段落で使用される)。位置234、235、236および/もしくは237のいずれかまたは全ての置換は、Fcγ受容体、特に、FcγRI受容体の親和性を低下させる(例えば、米国特許第6,624,821号を参照されたい)。ヒトIgG1の位置234、235および237でのアラニン置換は、エフェクター機能を低下させるために使用できる。いくつかの抗体は、エフェクター機能を低下させるために、ヒトIgG1の位置234、235および237でのアラニン置換を有する。必要に応じて、ヒトIgG2中の234、236および/または237はアラニンと置換され、位置235はグルタミンと置換されている(例えば、米国特許第5,624,821号を参照されたい)。いくつかの抗体では、EUナンバリングで、ヒトIgG1の位置241、264、265、270、296、297、322、329および331の1つまたは複数の位置での変異が使用される。いくつかの抗体では、EUナンバリングで、ヒトIgG1の位置318、320、および322の1つまたは複数の位置での変異が使用される。いくつかの抗体では、位置234および/または235はアラニンで置換され、および/または位置329はグリシンで置換される。いくつかの抗体では、位置234および235はアラニンで置換される。いくつかの抗体では、アイソタイプは、ヒトIgG2またはIgG4である。
【0208】
抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む四量体として、別々の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvとして、または重鎖および軽鎖の成熟可変ドメインがスペーサーを介して連結されている単鎖抗体として発現させることができる。
【0209】
ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプ多様性およびイソアロタイプ多様性を示す。すなわち、定常領域は、1つまたは複数の多型位置で別々の個体において異なり得る。イソアロタイプは、イソアロタイプを認識する血清が1つまたは複数の他のアイソタイプの非多型領域に結合する点で、アロタイプとは異なる。したがって、例えば、別の重鎖定常領域は、C末端リシンを有するか有しないIgG1 G1m3である。ヒト定常領域への言及は、任意の天然のアロタイプまたは天然のアロタイプ中の位置を占める残基の任意の順列を有する定常領域を含む。
【0210】
G.組換え抗体の発現
抗体発現細胞株(例えば、ハイブリドーマ)を用いた、キメラおよびヒト化抗体の産生に関するいくつかの方法が知られている。例えば、抗体の免疫グロブリン可変領域は、よく知られた方法を用いて、クローン化および配列決定できる。一方法では、重鎖可変VH領域は、ハイブリドーマ細胞から調製したmRNAを用いてRT-PCRによりクローン化される。コンセンサスプライマーを、翻訳開始コドンを5’プライマーとして、g2b定常領域を特異的3’プライマーとして包含するVH領域リーダーペプチドに用いる。代表的プライマーは、Schenkらによる米国特許出願公開第2005/0009150号(以降では「Schenk」)に記載されている。複数の独立に誘導されたクローン由来の配列を比較して、増幅中に変化が導入されていないことを保証できる。VH領域の配列はまた、5’RACE RT-PCR法および3’ g2b特異的プライマーにより得たVHフラグメントをシーケンシングすることにより決定または確認できる。
【0211】
軽鎖可変VL領域は、類似の方法でクローン化できる。一手法では、コンセンサスプライマーセットが、翻訳開始コドンを包含するVL領域およびV-J結合領域の下流にあるCk領域に特異的な3’プライマーにハイブリッド形成するように設計された5’プライマーを用いてVL領域の増幅のために設計される。2つ目の手法では、5’RACE RT-PCR法を用いて、VLをコードするcDNAをクローン化する。代表的プライマーはSchenk(上記参照)に記載されている。クローン化配列はその後、ヒト(またはその他の非ヒト種)定常領域をコードする配列と結合される。
【0212】
一手法では、重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれのVDJまたはVJ接合部の下流にスプライスドナー配列をコードするように再改変され、重鎖用のpCMV-hγ1および軽鎖用のpCMV-Mclなどの哺乳動物発現ベクター中に挿入される。これらのベクターは、ヒトγ1およびCk定常領域を、挿入された可変領域カセットの下流にエキソンフラグメントとして、コードする。配列検証後に、重鎖および軽鎖発現ベクターを、CHO細胞中に同時軽質導入して、キメラ抗体を産生することができる。遺伝子導入の48時間後に培養上清を収集し、ウェスタンブロット分析により抗体産生を、またはELISAにより抗原結合を分析する。キメラ抗体は上述のようにヒト化される。
【0213】
キメラ、ベニア、ヒト化抗体およびヒト抗体は通常、組換え発現により産生される。組換えポリヌクレオチド構築物は通常、天然関連または異種発現制御配列、例えば、プロモーター、を含む抗体鎖コード配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む。発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換または遺伝子導入することができるベクター中のプロモーター系であり得る。ベクターが適切な宿主に組み込まれた後、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、ならびに交差反応抗体の収集および精製に好適する条件下で維持される。
【0214】
これらの発現ベクターは通常、宿主生物中で、エピソームとして、または宿主染色体DNAの一体化部分として、複製可能である。一般に、発現ベクターは、例えば、アンピシリン耐性またはヒグロマイシン耐性などの選択マーカーを含み、目的のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能とする。
【0215】
大腸菌は、抗体、特に、抗体フラグメントを発現させるのに有用な原核生物宿主の1種である。酵母などの微生物も発現に有用である。サッカロミセス属は、必要に応じて、発現制御配列、複製起点、および終止配列などを有する適切なベクターを有する酵母宿主である。代表的なプロモーターには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の糖分解酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、特に、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、およびマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素由来のプロモーターが含まれる。
【0216】
哺乳動物細胞は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチドセグメントを発現するために使用できる。Winnacker、From Genes to Clones(VCH Publishers,NY,1987)を参照されたい。完全な異種タンパク質を分泌することができるいくつかの適切な宿主細胞株が開発されており、これらには、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、ならびにSP2/0およびNS0を含む非抗体産生骨髄腫が含まれる。細胞は、非ヒトであり得る。これらの細胞用の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49(1986))、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列などの必要な情報処理部位を含むことができる。発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、およびウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターを含むことができる。Co et al.,J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0217】
あるいは、遺伝子導入動物のゲノムへの導入およびその後の遺伝子導入動物のミルク中での発現のために、抗体コード配列を導入遺伝子中に組み込むことができる(例えば、米国特許第5,741,957号、同第5,304,489号、および同第5,849,992号を参照されたい)。好適な導入遺伝子は、乳腺特異的遺伝子、例えば、カゼインまたはベータラクトグロブリン由来のプロモーターおよびエンハンサーと機能的に連結された軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0218】
目的のDNAセグメントを含むベクターは、宿主細胞型の種類に応じた方法を用いて、宿主細胞中に導入できる。例えば、塩化カルシウム遺伝子導入は通常、原核細胞に用いられ、一方、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクション、遺伝子銃、またはウイルス系遺伝子導入は、その他の細胞宿主に使用できる。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法には、ポリブレン、原形質融合、リポソーム、電気穿孔、および微量注入の使用が含まれる。遺伝子導入動物の産生のために、導入遺伝子は、受精卵母細胞中に微量注入でき、または胚性幹細胞のゲノム中に組み込みことができ、このような細胞の細胞核は、除核卵母細胞中に導入できる。
【0219】
細胞培養物中に抗体の重鎖および軽鎖をコードするベクター(単一または複数)を導入し、無血清培地中で増殖生産性および製品品質に関して細胞プールをスクリーニングできる。その後、最高産生細胞プールをFACSベースの単細胞クローニングに供し、モノクローナル株を生成できる。7.5g/L超の培養物の製品力価に相当する、1日あたり1細胞あたり50pgまたは100pgを上回る比生産性を使用できる。単細胞クローンが産生する抗体はまた、濁度、濾過特性、PAGE、IEF、UVスキャン、HP-SEC、炭水化物-オリゴ糖マッピング、質量分析、およびELISAまたはBiacoreなどの結合アッセイの試験をすることができる。その後、選択されたクローンは、複数のバイアルに入れ、後の使用のために凍結保存され得る。
【0220】
発現させると、抗体は、プロテインA捕捉、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法などを含む、当技術分野の標準的な手順に従って精製できる(概要については、Scopes,Protein PurificaTion(Springer-Verlag,NY,1982)を参照されたい)。
【0221】
コドン最適化、プロモーターの選択、転写エレメントの選択、ターミネーターの選択、無血清の単細胞クローニング、細胞保存、コピー数の増幅のための選択マーカーの使用、CHOターミネーター、またはタンパク質力価の改善を含む抗体の商業生産のための方法論を用いることができる(例えば、米国特許第5,786,464号、同第6,114,148号、同第6,063,598号、同第7,569,339号、国際公開第2004/050884号、同第2008/012142号、同第2008/012142号、同第2005/019442号、同第2008/107388号、および同第2009/027471号、ならびに米国特許第5,888,809号を参照されたい)。
【0222】
IV.能動免疫原
能動免疫に使用される薬剤は、上記の受動免疫に関連して説明した同じ種類の抗体を患者に誘導するのに役立つ。能動免疫に使用される薬剤は、実験動物中でモノクローナル抗体を生成するために使用される同じ種類の免疫原、例えば、配列番号3の残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1の残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当)に相当するタウの領域由来の3~15または3~12または5~12、または5~8の連続したアミノ酸のペプチド、例えば、配列番号3の残基55~78、60~75、61~70、55~69、または64~78(それぞれ、配列番号1の残基113~136、118~133、119~128、113~127、または122~136に相当)を含むペプチドなどであり得る。16G7と同じまたは重複するエピトープに結合する抗体を誘導するために、これらの抗体のエピトープ特異性を(例えば、タウ全体にわたる一連の重複ペプチドへの結合を試験することによって)マッピングできる。その後、エピトープからなるかまたはそれを含むもしくは重複するタウのフラグメントを免疫原として使用できる。このようなフラグメントは通常、非リン酸化形態で使用される。
【0223】
異種キャリアおよびアジュバントは、用いる場合、モノクローナル抗体を生成するために使用されるものと同じであってもよいが、ヒトにおける使用のためにより良い医薬適合性について選択されてもよい。適切なキャリアには、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、またはジフテリア(例えば、CRM197)、大腸菌、コレラ、もしくはH.ピロリなどの他の病原性細菌由来のトキソイド、または弱毒化毒素誘導体が含まれる。T細胞エピトープも好適なキャリア分子である。一部のコンジュゲートは、免疫刺激性ポリマー分子(例えば、トリパルミトイル-S-グリセリンシステイン(Pam3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)、またはグルカン(aβ1→2ポリマー))、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-1アルファおよびIL-1βペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)、およびケモカイン(例えば、MIP1-αおよびMIP1-β、ならびにRANTES)に本発明の薬剤を連結することにより形成できる。免疫原は、スペーサーアミノ酸(例えば、gly-gly)の有無に関わらずキャリアに連結してもよい。さらなるキャリアにはウイルス様粒子が含まれる。偽ビリオンまたはウイルス由来粒子とも呼ばれるウイルス様粒子(VLP)は、複数コピーのウイルスキャプシドおよび/または定義される球対称のVLP内でインビボで自己集合可能なエンベロープタンパク質で構成されるサブユニット構造を示す(Powilleit,et al.,(2007)PLoS ONE 2(5):e415.)。あるいは、ペプチド免疫原を、パンDRエピトープ(「PADRE」)などのMHCクラスII分子の大部分に結合可能な少なくとも1つの人工T細胞エピトープに連結できる。PADREは、米国特許第5,736,142号、国際公開第95/07707号、およびAlexander J et al,Immunity,1:751-761(1994)に記載されている。能動免疫原は、複数コピーの免疫原および/またはそのキャリアが単一共有結合分子として存在する多量体形態で存在できる。
【0224】
フラグメントは、薬学的に許容できるアジュバントと共に投与される場合が多い。アジュバントは、ペプチドが単独で使用された場合の状況に比べて、誘導された抗体の力価および/または誘導された抗体の結合親和性を増加させる。様々なアジュバントは、免疫応答を誘発するためにタウの免疫原性フラグメントと組み合わせて使用できる。好ましいアジュバントは、応答の質的な形態に影響を与える免疫原の立体構造変化を引き起こすことなく、免疫原に対する固有の応答を増大させる。好ましいアジュバントには、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、3De-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL(商標))(GB2220211(RIBI ImmunoChem Research Inc.,Hamilton,Montana(現在はCorixaの一部)を参照されたい)が含まれる。Stimulon(商標)QS-21は、南米で見つかったキラヤ・サポナリア・モリナの樹皮から単離されるトリテルペングリコシドすなわちサポニンである(Kensil et al.,Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(eds.Powell & Newman,Plenum Press,NY,1995);米国特許第5,057,540号を参照されたい)、(Aquila BioPharmaceuticals,Framingham,MA(現在は、Antigenics,Inc.,New York,NY)。他のアジュバントは、必要に応じ、モノホスホリル脂質A(Stoute et al.,N.Engl.J.Med.336,86-91(1997)を参照されたい)、プルロニックポリマー、および死滅させたマイコバクテリアなどの免疫刺激剤と組み合わせた(スクアレンまたはピーナッツ油などの)水中油型エマルジョンである。リビアジュバントは、水中油型エマルジョンである。リビは、Tween80を含む生理食塩水で乳化した代謝可能な油(スクアレン)を含む。リビはまた、免疫賦活剤として機能する精製されたマイコバクテリア生成物および細菌モノホスホリル脂質Aも含む。別のアジュバントはCpG(国際公開第98/40100号)である。アジュバントは、活性剤と共に治療組成物の成分として投与されるか、または別々に治療薬の投与前、それと同時、もしくはその後に投与できる。
【0225】
タウに対する抗体を誘導するタウの天然フラグメントの類似体も使用できる。例えば、1つもしくは複数または全てのL-アミノ酸は、そのようなペプチド中のD-アミノ酸で置換できる。また、アミノ酸の順序は逆にすることができる(レトロペプチド)。必要に応じて、ペプチドは、逆の順序で全てのD-アミノ酸を含む(レトロインベルソペプチド)。ペプチドおよび他の化合物は、タウペプチドと顕著なアミノ酸配列類似性を必ずしも有する必要はないが、それにもかかわらず、タウペプチドの模倣体として機能し、同様の免疫応答を誘発する。上記のようにタウのモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体も使用できる。このような抗Id抗体は、抗原を模倣し、それに対する免疫応答をもたらす(Essential Immunology,Roit ed.,Blackwell Scientific Publications,Palo Alto,CA 6th ed.,p.181、を参照されたい)。
【0226】
ペプチド(および必要に応じてペプチドに融合されたキャリア)はまた、ペプチドをコードする核酸の形態で投与して、患者の体内でインサイツ発現させることができる。免疫原をコードする核酸セグメントは通常、患者の意図される標的細胞内でDNAセグメントの発現を可能にするプロモーターおよびエンハンサーなどの調節エレメントに連結されている。そのままでの免疫応答の誘導に望ましい、血液細胞中での発現には、軽鎖または重鎖免疫グロブリン遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーエレメントまたはCMV主要中初期プロモーターおよびエンハンサーが発現を誘導するのに適している。連結された調節エレメントおよびコード配列は、多くの場合、ベクターに挿入される。抗体はまた、抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする核酸の形態で投与できる。重鎖および軽鎖の両方が存在する場合、鎖は好ましくは、単鎖抗体として連結される。受動的投与のための抗体はまた、例えば、ペプチド免疫原で処置した患者の血清からアフィニティークロマトグラフィーにより調製できる。
【0227】
DNAは裸の形態で(すなわち、コロイド状またはカプセル化材料なしで)送達できる。別の選択肢としては、レトロウイルス系(例えば、Lawrie and Tumin,Cur.Opin.Genet.Develop.3,102-109(1993)参照);アデノウイルスベクター(例えば、Bett et al,J.Virol.67,5911(1993)参照);アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、Zhou et al.,J.Exp.Med.179,1867(1994)参照);ワクシニアウイルスおよびトリのポックスウイルスを含むポックスファミリーのウイルスベクター、シンドビスおよびセムリキ森林ウイルス由来のものなどのアルファウイルス属のウイルスベクター(例えば、Dubensky et al.,J.Virol.70,508-519(1996)参照)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(米国特許第5,643,576号参照)および水疱性口内炎ウイルスなどのラブドウイルス(国際公開第96/34625号参照)ならびにパピローマウイルス(Ohe et al.,Human Gene Therapy 6,325-333(1995);Woo et al,国際公開第94/12629号およびXiao & Brandsma,Nucleic Acids.Res.24,2630-2622(1996))を含むいくつかのウイルスベクター系が使用できる。
【0228】
免疫原をコードするDNA、またはそれを含有するベクターは、リポソームにパッケージすることができる。適切な脂質および関連類似体は、米国特許第5,208,036号、同第5,264,618号、同第5,279,833号および同第5,283,185号に記載されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAはまた、微粒子キャリアに吸着または結合させることもでき、その例として、ポリメチルメタクリレートポリマーおよびポリラクチドならびにポリ(ラクチド-co-グリコリド)が挙げられる(例えば、McGee et al.,J.Micro Encap.1996を参照されたい)。
【0229】
H.抗体スクリーニングアッセイ
上記のように、抗体は、最初に目的とする結合特異性に関しスクリーニングされ得る。能動免疫原は、同様に、このような結合特異性を有する抗体を誘導する能力に関しスクリーニングされ得る。この場合、能動免疫原を用いて実験動物を免疫し、得られた血清を適切な結合特異性に関し試験する。
【0230】
その後、目的とする結合特異性を有する抗体を、細胞および動物モデルで試験できる。このようなスクリーニングに使用される細胞としては神経細胞を優先すべきである。神経芽腫細胞に、必要に応じてタウ病理と関連する変異と共に、タウの4リピートドメインを遺伝子導入したタウ病態の細胞モデルが報告されている(例えば、デルタK280、Khlistunova,Current Alzheimer Research 4,544-546(2007)を参照されたい)。別のモデルでは、ドキシサイクリンを添加することにより、タウが神経芽細胞腫N2a細胞株中で誘導される。この細胞モデルは、可溶性または凝集状態で細胞に対するタウの毒性、タウ遺伝子発現のスイッチをオンにした後のタウ凝集体の外観、再び遺伝子発現のスイッチをオフにした後のタウ凝集体の溶解、ならびにタウ凝集体の形成抑制またはそれらを脱凝集における抗体の効率を研究するのを可能にする。
【0231】
抗体または能動免疫原はまた、タウと関連する疾患の遺伝子導入動物モデルでスクリーニングできる。このような遺伝子導入動物は、タウ導入遺伝子(例えば、ヒトアイソフォームのいずれか)および必要に応じて、とりわけタウ、ApoE、プレセニリンまたはアルファ-シヌクレインをリン酸化するキナーゼなどのヒトAPP導入遺伝子を含み得る。このような遺伝子導入動物は、タウと関連する疾患の少なくとも1つの徴候または症状を発症するように処理されている。
【0232】
代表的な遺伝子導入動物は、マウスのK3株である(Itner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105(41):15997-6002(2008))。これらのマウスは、K369I変異(この変異はピック病と関連している)およびThy1.2プロモーターを有するヒトタウ導入遺伝子を有する。このモデルは、神経変性、運動障害ならびに求心性繊維および小脳顆粒細胞の変性の急速な経過を示す。別の代表的な動物は、マウスのJNPL3株である。これらのマウスは、P301L変異(この変異は前頭側頭型認知症と関連している)およびThy1.2プロモーターを有するヒトタウ導入遺伝子を有する(Taconic,Germantown,N.Y.,Lewis,et al.,Nat Genet.25:402-405(2000))。これらのマウスは、神経変性のより緩やかな経過を有する。このマウスは、いくつかの脳領域および脊髄における神経原線維濃縮体を発症し、これは本明細書にその全体が参照により組み込まれる。これは、濃縮体の発症の結果を研究するため、およびこれらの凝集体の生成を抑制することができる治療法をスクリーニングするための優れたモデルである。これらの動物の別の利点は、病変の比較的早い段階での発症である。ホモ接合系統では、タウ病態と関連する行動異常は、少なくとも、早ければ3ヶ月目に観察できるが、これらの動物は少なくとも生後8ヶ月まで比較的健康を維持する。つまり、8ヶ月の時点で、これらの動物は歩き回り、それら自体で摂食し、処置効果の監視を可能にするのに十分なほど行動タスクを実行できる。6~13ヶ月間、これらのマウスをAI wI KLH-PHF-1で能動免疫することにより、約1,000の力価を生じさせ、未処置のコントロールマウスと比較して神経原線維濃縮体はより少なく、pSer422も、体重減少も低下した。
【0233】
抗体または活性剤の活性は、総タウまたはリン酸化タウの量の減少、Αβのアミロイド沈着物などの他の病理学的特徴の減少、および行動欠陥の抑制もしくは遅延を含む様々な基準によって評価できる。能動免疫原はまた、血清中の抗体の誘導に関し試験され得る。受動と能動の両方の免疫原は、遺伝子導入動物の血液脳関門から脳内への抗体の通過に関し試験され得る。抗体または抗体を誘発するフラグメントはまた、天然または誘導を介してタウを特徴とする疾患の症状を発症する非ヒト霊長類で試験され得る。抗体または活性剤の試験は通常、抗体または活性剤が存在しない(例えば、ビヒクルで置き換えられる)ことを除いて並列に行われるコントロール実験と同時に実行される。その後、試験中の抗体または活性剤に起因する疾患の徴候または症状の減少、遅延または抑制がコントロールと比較して評価され得る。
【0234】
VI.治療に適する患者
神経原線維濃縮体の存在は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、および進行性核上麻痺(PSP)を含むいくつかの疾患で認められている。本投与計画はまた、これらの疾患のいずれかの処置または予防にも使用できる。神経疾患および病状とタウの間の広範囲に及ぶ関係のために、本投与計画は、神経疾患のない個体の平均値と比較して、(例えば、CSF内の)タウもしくはリン酸化タウのレベルの上昇を示す任意の対象の処置または予防に使用できる。本投与計画は、神経疾患と関連するタウの変異を有する個体における神経疾患の処置または予防にも使用できる。本方法は、アルツハイマー病、および特に患者における処置または予防に特に適している。
【0235】
処置の対象となる患者は、疾患のリスクはあるが、症状を示さない個体および現在症状を示す患者を含む。疾患のリスクのある患者には、疾患の既知の遺伝的リスクを有する患者が含まれる。このような個体には、この疾患を経験している親族を有する個体、およびそのリスクが遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーの分析によって決定されている個体が含まれる。リスクの遺伝子マーカーには、上述したものなどのタウの変異、ならびに神経疾患と関連する他の遺伝子の変異が含まれる。例えば、ホモ接合型はもちろんだがヘテロ接合型のApoE4対立遺伝子も、アルツハイマー病のリスクと関連している。アルツハイマー病のリスクの他のマーカーには、APP遺伝子の変異、特に717位での変異およびハーディ変異およびスウェーデン変異と呼ばれる位置670および671での変異、プレセニリン遺伝子のPS1およびPS2の変異、AD、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症の家族歴が含まれる。現在アルツハイマー病に罹患している個体は、特徴的な認知症、および上述の危険因子の存在から、PETイメージングによって認識できる。さらに、いくつかの診断テストは、ADを有する個体を同定するために利用可能である。これらには、CSFタウまたはリン酸化タウおよびΑβ42レベルの測定が含まれる。タウまたはリン酸化タウのレベルの上昇およびΑβ42レベルの低下は、ADの存在を意味する。いくつかの変異はパーキンソン病と関連する。Ala30ProもしくはAla53、またはロイシンリッチリピートキナーゼのPARK8などの他の遺伝子の変異は、パーキンソン病と関連する。個体はまた、DSM IV TRの基準によって、上述の神経疾患のいずれかであると診断され得る。
【0236】
無症状の患者では、処置は全ての年齢(例えば、10、20、30)で開始できる。しかし、通常、患者が40、50、60または70歳に達するまでは処置を開始する必要はない。処置は通常、一定の期間にわたり複数投薬を必要とする。処置は、経時的に抗体レベルをアッセイすることにより監視できる。応答が低下した場合は、追加免疫投与が必要である。潜在的なダウン症候群患者の場合には、母親に治療薬を投与することによって処置を出生前に開始するか、または出生直後に開始できる。
【0237】
I.核酸
本発明は、上記重鎖および軽鎖のいずれか(例えば、配列番号7および配列番号11)をコードする核酸を提供する。必要に応じ、このような核酸は、シグナルペプチドをさらにコードし、定常領域に結合したシグナルペプチドを発現できる。核酸のコード配列は、調節配列に機能的に連結され、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナル、などのコード配列の発現を確実にできる。重鎖および軽鎖をコードする核酸は、単離型で生じ得、または1つまたは複数のベクター中に挿入できる。核酸は、例えば、固相合成またはオーバーラッピングオリゴヌクレオチドのPCRにより合成できる。重鎖および軽鎖をコードする核酸は、例えば、発現ベクター内の1つの連続した核酸として連結でき、または別々の、例えば、それぞれ自身の発現ベクター中に挿入できる。
【0238】
J.コンジュゲート抗体
タウなどの抗原に特異的に結合するコンジュゲート抗体は、タウの存在の検出;アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)と診断された患者を処置するのに使用される治療薬の効力の監視および評価;タウの凝集の抑制または低減;タウ原線維形成の抑制または低減;タウ沈着物の低減または除去;タウの非毒性高次構造の安定化;または患者のアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の処置もしくは予防、に有用である。
【0239】
例えば、このような抗体は、他の治療薬の部分、他のタンパク質、他の抗体、および/または検出可能な標識とコンジュゲート化できる。国際公開第03/057838号;米国特許第8,455,622号を参照されたい。このような治療薬の部分は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)などの患者の望ましくない状態または疾患を処置する、これらの患者の望ましくない状態または疾患と戦う、これらの患者の望ましくない状態または疾患を緩和する、防止する、または改善するのに使用できる任意の薬剤であり得る。
【0240】
コンジュゲート化した治療薬部分には、細胞傷害薬、細胞分裂阻害剤、神経分化誘導物質、神経保護薬、放射線治療薬、免疫調節物質、または抗体の活性を推進または強化するいずれかの生理活性物質を含み得る。細胞傷害薬は、細胞に対し毒性である任意の薬剤であり得る。細胞傷害薬は、細胞増殖を阻害する任意の薬剤であり得る。神経分化誘導物質は、ニューロン維持、増殖、または分化を促進する化学またはタンパク質物質を含む任意の薬剤であり得る。神経保護薬は、急性侵襲または変性過程からニューロンを保護する、化学またはタンパク質物質を含む、薬剤であり得る。免疫調節物質は、免疫応答の発生または維持を刺激または抑制する任意の薬剤であり得る。放射線治療薬は、放射線を放出する任意の分子または化合物であり得る。このような治療薬部分が、本明細書に記載の抗体などのタウ特異的抗体に結合される場合、結合された治療薬部分は、正常細胞に勝るタウ関連疾患罹患細胞に対する特異的親和性を有するであろう。したがって、コンジュゲート抗体の投与は、周囲の健常な組織に対しては最小限の損傷で、癌細胞を直接標的とする。これは、治療薬部分がそれら単独で投与されるには毒性が高すぎる場合には特に有用であり得る。さらに、より少ない量の治療薬部分を使用できる。
【0241】
いくつかのこのような抗体は、免疫毒素として作用するように修正できる。例えば、米国特許第5,194,594号を参照されたい。例えば、植物に由来する細胞毒素であるリシンを、抗体に対する二官能性試薬S-アセチルメルカプトコハク酸無水物およびリシンに対するスクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネートを用いて、抗体に結合させることができる。Pietersz et al.,Cancer Res.48(16):4469-4476(1998)を参照されたい。結合により、リシンのB鎖結合活性は低下するが、リシンA鎖の毒性潜在能力および抗体活性のいずれも損なわれない。同様に、リボソームアセンブリーの阻害剤であるサポリンも、化学的に挿入されたスルフヒドリル基間のジスルフィド結合を介して抗体に結合させることができる。Polito et al.,Leukemia 18:1215-1222(2004)を参照されたい。
【0242】
いくつかのこのような抗体は、放射性同位元素に連結できる。放射性同位元素の例には、としては、例えば、イットリウム90(90Y)インジウム111(111In)、131I、99mTc、放射性銀-111、放射性銀-199、およびビスマス213が挙げられる。放射性同位元素の抗体への連結は、従来の二官能キレートで実施し得る。放射性銀-111および放射性銀-199の連結に対しては、硫黄系リンカーを使用し得る。Hazra et al.,Cell Biophys.24-25:1-7(1994)を参照されたい。銀放射性同位元素の連結は、免疫グロブリンのアスコルビン酸による還元を必要とする場合がある。111Inおよび90Yなどの放射性同位元素に対しては、イブリツモマブチウキセタンを使用でき、このような同位体と反応して、それぞれ111In-イブリツモマブチウキセタンおよび90Y-イブリツモマブチウキセタンを形成する。Witzig,Cancer Chemother.Pharmacol.,48 Suppl 1:S91-S95(2001)を参照されたい。
【0243】
いくつかのこのような抗体は、その他の治療薬の部分に連結できる。このような治療薬部分は、例えば、細胞傷害性、細胞分裂停止性、神経栄養性、または神経保護性であり得る。例えば、抗体は、メイタンシン、ゲルダナマイシン、チューブリン結合剤(例えば、オーリスタチン)などのチューブリン阻害剤、またはカリチアマイシンなどの副溝結合剤などの毒性化学療法剤と結合できる。その他の代表的治療薬の部分には、患者のアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の処置、管理、もしくは改善に有用であることが知られている薬剤が含まれる。
【0244】
抗体はまた、その他のタンパク質と結合することもできる。例えば、抗体はフィノマーと結合できる。フィノマーは、ヒト癌遺伝子Fyn SH3ドメイン由来の小さい結合タンパク質(例えば、7kDa)である。それらは、安定で可溶性であり得、システイン残基およびジスルフィド結合を欠いている場合がある。フィノマーは、抗体と同じ親和性および特異性で標的分子に結合するように遺伝子改変できる。それらは、抗体をベースにした多重特異的融合タンパク質を生成するのに好適する。例えば、フィノマーを抗体のN末端および/またはC末端に融合して、異なる構造を有する二重または三重特異性FynomAbを生成できる。フィノマーは、フィノマーライブラリーに対し、最適特性を有するフィノマーの効率的な選択を可能とするFACS、Biacore、および細胞ベースのアッセイを用いたスクリーニング技術を通して、選択できる。フィノマーの例は、Grabulovski et al.,J.Biol.Chem.282:3196-3204(2007);Bertschinger et al.,Protein Eng.Des.Sel.20:57-68(2007);Schlatter et al.,MAbs.4:497-508(2011);Banner et al.,Acta.Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.69(Pt6):1124-1137(2013);およびBrack et al.,Mol.Cancer Ther.13:2030-2039(2014)に開示されている。
【0245】
本明細書で開示の抗体はまた、1種または複数の他の抗体に結合またはコンジュゲート化できる(例えば、抗体ヘテロコンジュゲートを形成するために)。このような他の抗体は、タウ内の異なるエピトープに結合でき、または異なる標的抗原に結合できる。
【0246】
抗体はまた、検出可能な標識とも結合できる。このような抗体は、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の診断、および/または処置の効力を評価するために使用できる。このような抗体は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)、の対象またはこれらの病気に罹患しやすい対象における、またはこのような対象から得た適切な生物試料におけるこのような判断を行うのに特に有用である。抗体に結合または連結し得る検出可能な代表的標識には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどの種々の酵素;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子団;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンなどの蛍光材料;ルミノールなどの発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどの生物発光材料;放射性銀-111、放射性銀-199、ビスマス213、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(5S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117スズなどの放射性の材料;種々のポジトロン放射型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属;非放射性常磁性金属イオン;および放射標識されたまたは特定の放射性同位元素にコンジュゲート化された分子、が挙げられる。
【0247】
放射性同位元素の抗体への連結は、従来の二官能キレートで実施し得る。放射性銀-111および放射性銀-199の連結に対しては、硫黄系リンカーを使用し得る。Hazra et al.,Cell Biophys.24-25:1-7(1994)を参照されたい。銀放射性同位元素の連結は、免疫グロブリンのアスコルビン酸による還元を必要とする場合がある。111Inおよび90Yなどの放射性同位元素に対しては、イブリツモマブチウキセタンを使用でき、このような同位体と反応して、それぞれ111In-イブリツモマブチウキセタンおよび90Y-イブリツモマブチウキセタンを形成する。Witzig,Cancer Chemother.Pharmacol.,48 Suppl 1:S91-S95(2001)を参照されたい。
【0248】
治療薬の部分、他のタンパク質、他の抗体、および/または検出可能な標識は、仲介物(例えば、リンカー)を介して本発明の抗体に直接的にまたは間接的に、結合またはコンジュゲート化され得る。例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985)中のArnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,”;Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987)中のHellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery,”;Monoclonal Antibodies 84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985)中のThorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985)中の“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,”;およびThorpe et al.,Immunol.Rev.,62:119-58(1982)を参照されたい。好適なリンカーとしては、例えば、切断可能および非切断可能リンカーが挙げられる。酸性または還元条件下で特定のプロテアーゼに曝露時に、またはその他の所定の条件下で、結合した治療薬部分、タンパク質、抗体、および/または検出可能標識を放出する異なるリンカーを用いることができる。
【0249】
VI.医薬組成物および使用方法
予防的適用では、抗体もしくは抗体を誘導するための薬剤またはその医薬組成物は、疾患(例えば、アルツハイマー病)に罹患しやすい患者、あるいは、疾患のリスクのある患者に、疾患のリスクを低減する、疾患の重症度を軽減する、または疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症状の発症を遅延させるのに有効な投与計画(投与の用量、頻度および経路)で投与される。特に、投与計画は、好ましくは脳内でタウもしくはリン酸化タウおよびそれから形成されるフィラメント対を抑制もしくは遅延させるか、および/またはその毒性作用を抑制もしくは遅延させるか、および/または行動欠陥の発症を抑制もしくは遅延させるのに有効である。治療用途では、抗体または抗体を誘発する薬剤は、疾患の少なくとも1つの徴候または症状の改善または少なくともさらなる悪化を抑制するのに効果的な投与計画(投与の用量、頻度および経路)で疾患(例えば、アルツハイマー病)の疑いのある患者、または既に疾患に罹患している患者に投与される。特に、この投与計画は、タウ、リン酸化タウ、もしくはそれから形成されるフィラメント対のレベルのさらなる上昇、関連する毒性および/または行動障害を低減または少なくとも抑制するのに効果的であるのが好ましい。
【0250】
個々の処置された患者が、本発明の方法によって処置されない同等の患者のコントロール集団における平均的な治療成績よりも良好な治療成績を達成した場合、または比較臨床試験(例えば、第II相、第II/III相または第III相試験)で、コントロール患者に対する処置患者のより良好な治療成績がp<0.05または0.01、あるいはさらには0.001のレベルで示される場合には、投与計画は治療的または予防的に効果的であると見なされる。
【0251】
多くの異なる要因、例えば、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がApoE保因者であるか否か、患者がヒトまたは動物であるか否か、他の薬剤が投与されるか、処置が予防的または治療的であるか否かに応じて、有効用量は変化する。
【0252】
抗体の代表的な用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.01~60mg/kg、または約0.1~3mg/kgまたは0.15~2mg/kgまたは0.15~1.5mg/kgである。抗体は、このような用量で毎日、一日置きに、毎週、隔週、毎月、四半期ごと、または実証的分析によって決定された任意の他のスケジュールに従って投与できる。代表的な処置は、長期間にわたって、例えば、少なくとも6ヶ月間、複数回投与での投与を必要とする。さらなる代表的な投与計画は、2週間に1回ごと、または月に1回、または3~6ヶ月に1回の投与を必要とする。
【0253】
能動投与のための薬剤の量は、患者あたり0.1~500μgで、より一般的にはヒトへの投与のための注射あたり1~100または1~10μgと変化する。注射のタイミングは、1日に1回から1年に1回、10年に1回と大きく変化し得る。典型的な投与計画は、免疫化に続いて6週間間隔または2ヶ月などの時間間隔でのブースター注射からなる。別の投与計画は、免疫化に続いて1、2および12ヶ月後のブースター注射からなる。別の投与計画は、生きている間、2ヶ月ごとの注射を伴う。あるいは、免疫応答の監視によって示されるように、ブースター注射は不定期になり得る。
【0254】
抗体または抗体を誘導するための薬剤は、好ましくは末梢経路(すなわち、投与または誘導される抗体が血液脳関門を通過し、脳内の意図された部位に到達する経路)を介して投与される。投与経路には、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内、眼内または筋肉内投与が含まれる。好ましい抗体の投与経路は、静脈内および皮下経路である。能動免疫に好ましい経路は、皮下および筋肉内経路である。この種の注射は、最も典型的には、腕または脚の筋肉に行われる。いくつかの方法では、薬剤は、沈着物が蓄積した特定の組織に直接注射、例えば、頭蓋内注射される。
【0255】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは無菌であり、実質的に等張で、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための投与量)で提供され得る。医薬組成物は、1つまたは複数の生理学的に許容されるキャリア、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いて処方できる。製剤は、選択された投与経路に依存する。注射のために、抗体は、水溶液で、好ましくは、(注射部位での不快感を軽減するために)ハンクス液、リンゲル液、もしくは生理食塩水または酢酸緩衝液などの生理的に適合性のある緩衝液で処方できる。溶液は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有できる。あるいは、抗体は、使用前に適切なビークル、例えば、無菌で発熱物質を含まない水で構成するために凍結乾燥形態であり得る。
【0256】
本投与計画は、処置される疾患の処置または予防に有効な別の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、アルツハイマー病の場合、本投与計画は、Aβ(国際公開第2000/072880号)、コリンエステラーゼ阻害剤もしくはメマンチンに対する免疫療法と組み合わせることができ、またはパーキンソン病の免疫療法の場合には、α-シヌクレイン(国際公開第2008/103472号)、レボドパ、ドーパミン作動薬、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、アマンタジン、もしくは抗コリン薬に対する免疫療法と組み合わせることができる。
【0257】
抗体は効果的投与計画で投与され、これは、発症を遅らせる、重症度を低減する、さらなる悪化を抑制する、および/または処置される障害の少なくとも1つの徴候または症状を改善する投与量、投与経路および投与頻度を含む投与計画を意味する。患者が既に障害に罹患している場合は、投与計画は治療的に効果的な投与計画と称される場合もある。患者が母集団に比べて障害の高いリスクを有するが、まだ症状がない場合、投与計画は、予防的に効果的な投与計画と称される場合もある。いくつかの事例では、治療的または予防的効力は、同じ患者のヒストリカルコントロールまたは過去の経験に対して個別の患者で観察され得る。他のケースでは、治療的または予防的効力は、非処置患者のコントロール集団に比べて、処置患者集団の臨床前または臨床試験中に実証できる。
【0258】
抗体の代表的投与量は、0.1~60mg/kg(例えば、0.5、3、10、30、または60mg/kg)、または0.5~5mg/kg体重(例えば、0.5、1、2、3、4または5mg/kg)または固定投与量として、10~4000mgまたは10~1500mgである。投与量は、特に、患者の状態および前の処置がある場合その応答に、処置が予防的であるかまたは治療的であるか、および障害が急性であるかまたは慢性であるかに依存する。
【0259】
投与は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内投与であり得る。いくつかの抗体は、静脈内または皮下投与により体循環中に投与できる。静脈内投与は、例えば、30~90分にわたる輸注であり得る。
【0260】
投与頻度は、特に、循環中の抗体の半減期、患者の状態および投与経路に依存する。頻度は、患者の状態または処置される障害の進行の変化に応じて、毎日、毎週、毎月、3ヶ月毎、または不規則な間隔とすることができる。静脈内投与の代表的頻度は、処置の原因によって毎週~3ヶ月毎であるが、さらに多いまたは少ない頻度の投与も可能である。皮下投与としては、代表的投与頻度は、毎日から毎月であるが、さらに多いまたは少ない頻度の投与も可能である。
【0261】
投薬の回数は、障害が急性であるか慢性であるかおよび処置に対する障害の応答に依存する。急性障害または慢性障害の急性悪化に対しては、多くの場合1~10回の服用量である。時には、急性障害または慢性障害の急性悪化に対しては、必要に応じ分割形態とした、単一急速投与量で十分である。急性障害または急性悪化の再発に対しては、処置を反復し得る。慢性障害に対しては、抗体は、規則的な間隔、例えば、毎週、隔週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎を少なくとも1、5または10年間、または患者の一生の間投与され得る。
【0262】
A.診断および監視方法
インビボイメージング、診断方法、および最適化免疫療法
本発明は、患者のタウタンパク質沈着物(例えば、神経原線維濃縮体およびタウ封入体)をインビボイメージングする方法を提供する。本方法は、タウに結合する抗体(例えば、マウス、ヒト化、キメラまたはベニア16G7抗体)などの薬剤を患者に投与し、その後、タウに結合した薬剤を検出することによって動作する。いくつかの方法では、抗体は、配列番号3のアミノ酸残基55~78(配列番号1のアミノ酸残基113~136に相当する)内のタウのエピトープに結合する。いくつかの方法では、抗体は、配列番号3のアミノ酸基60~75(配列番号1のアミノ酸残基118~133に相当する)内のエピトープ、または配列番号3のアミノ酸残基61~70(配列番号1のアミノ酸残基119~128に相当する)内のエピトープに結合する。投与した抗体の除去反応は、Fabなどの完全長の定常領域を欠く抗体フラグメントを使用することによって回避または低減することができる。いくつかの方法では、同一の抗体は、処置および診断試薬の両方として機能し得る。
【0263】
診断試薬は、患者の体内への静脈内注射によって、または頭蓋内注射によるかもしくは、頭蓋骨に孔を穿孔することによって脳に直接投与できる。試薬の投与量は、処置方法の場合と同じ範囲内である必要がある。典型的には、試薬は標識されるが、いくつかの方法では、タウに対する親和性を有する一次試薬は標識されず、一次試薬に結合する二次標識剤が使用される。標識の選択は検出の手段に依存する。例えば、蛍光標識は光学的検出に適する。常磁性標識の使用は、外科的介入を用いない断層撮影検出に適する。放射性標識はまた、陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を用いて検出できる。
【0264】
タウタンパク質沈着物のインビボイメージングの方法は、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺およびピック病、またはそのような疾患に対する感受性などのタウオパチーを診断するのに、またはその診断を確定するのに有用である。例えば、本方法は、認知症の症状を示す患者に使用できる。患者に異常な神経原線維濃縮体がある場合、その患者は、アルツハイマー病を罹患している可能性がある。別の選択肢としては、患者に異常なタウ封入体がある場合には、封入体の位置に応じて、その患者は前頭側頭葉変性症に罹患している可能性がある。本方法はまた、無症状の患者にも使用できる。異常なタウタンパク質沈着物の存在は、将来、症候性疾患に罹りやすいことを示す。この方法はまた、以前にタウ関連疾患と診断された患者における疾患の進行および/または処置に対する応答を監視するのに有用である。
【0265】
診断は、標識された遺伝子座の数、サイズ、および/または強度を対応するベースライン値と比較することによって行われ得る。ベースライン値は、非疾患個体集団における平均レベルを表し得る。ベースライン値はまた、同じ患者で決定された以前のレベルを表し得る。例えば、患者のベースライン値は、タウ免疫療法処置を開始する前に測定することができ、その後、測定値をベースライン値と比較できる。ベースラインシグナルに対する値の減少は、処置に対する陽性反応を示す。
【0266】
一部の患者では、タウオパチーの診断は、PETスキャンを実行することによって支援され得る。PETスキャンは、例えば、従来のPET撮像装置および補助装置を用いて実施され得る。スキャンは通常、タウタンパク質沈着物と関連することが一般に知られている脳の1つまたは複数の領域、およびあったとしても少数の沈着物が通常、存在してコントロールとしての役割を果たす1つまたは複数の領域を含む。
【0267】
PETスキャンで検出したシグナルは、多次元画像として表すことができる。多次元画像は、二次元では脳の断面を表し、三次元では三次元脳を表すか、または四次元では三次元脳の経時的変化を表し得る。カラースケールは、異なる色を用いて行うことができ、異なる標識量および検出される推定タウタンパク質沈着物を示す。スキャンの結果はまた、検出される標識の量およびその結果としてのタウタンパク質沈着物の量と関連する数で数値的に提示できる。特定のタウオパチー(例えば、アルツハイマー病)の、沈着物と関連することが知られている脳の領域に存在する標識は、前者の領域内における沈着物の程度を表す比率を提供するために、沈着物と関連することが知られていない領域内に存在する標識と比較できる。同じ放射性標識リガンドに対するこのような比率は、タウタンパク質沈着物の比較可能な尺度および異なる患者間でのその変化を与える。
【0268】
いくつかの方法では、PETスキャンは、MRIまたはCATスキャンと同時に、またはMRIまたはCATスキャンと同じ患者の訪問で実施される。MRIまたはCATスキャンは、PETスキャンよりも脳のより解剖学的詳細を提供する。しかし、PETスキャンからの画像は、脳内の解剖学的構造に対するPETリガンドおよび推定タウ沈着物の位置をより正確に示すMRIまたはCATスキャン画像上に重ね合わせることができる。一部の装置は、スキャンの間に患者が位置を変えることなく患者のPETスキャンとMRIまたはCATスキャンの両方を実行し、画像の重ね合わせを容易にすることできる。
【0269】
好適なPETリガンドは、本発明の放射標識抗体(例えば、マウス、ヒト化、キメラまたはベニア16G7抗体)を含む。使用される放射性同位体は、例えば、C11、N13、O15、F18、またはI123であり得る。PETリガンドの投与と、スキャンを実行する間隔は、PETリガンド、特に脳への取り込み速度および除去速度、ならびにその放射性標識物の半減期に依存し得る。
【0270】
PETスキャンはまた、無症状の患者または軽度認知障害の症状を有するが、タウオパチーと診断されておらず、それでもタウオパチーを発症するリスクが高い患者で予防処置として実施することもできる。無症状の患者では、スキャンは、家族歴、遺伝的もしくは生化学的危険因子または熟年のためにタウオパチーのリスクが高いと考えられる個体に特に有用である。予防的スキャンは、例えば、45~75歳の年齢の患者で開始できる。一部の患者では、最初のスキャンは50歳で行われる。
【0271】
予防的スキャンは、例えば、6ヶ月~10年、好ましくは、1~5年の間隔で行われ得る。一部の患者では、予防的スキャンが毎年行われる。予防的措置として行われるPETスキャンが異常に高いレベルのタウタンパク質沈着物を示す場合、免疫療法が開始され、その後、PETスキャンが、タウオパチーと診断された患者と同様に開始できる。予防処置として行われるPETスキャンが正常レベル内にあるタウタンパク質沈着物のレベルを示す場合、さらにPETスキャンが、前述のように、6ヶ月~10年、好ましくは、1~5年の間隔で、またはタウオパチーもしくは軽度認知障害の徴候および症状の出現に応答して行われ得る。上記の正常レベルのタウタンパク質沈着物が検出される場合、予防的スキャンとタウ標的化免疫療法の投与を組み合わせることによって、タウタンパク質沈着物のレベルは正常レベルまで低下するかもしくはそれにより近いレベルになるか、または少なくともさらに増加するのを防ぐことができ、患者は、予防的スキャンおよびタウ標的化免疫療法を受けていない場合よりも長い期間(例えば、少なくとも5、10、15もしくは20年、または患者の残りの人生の間)、タウオパチーのない状態のままで持続し得る。
【0272】
正常レベルのタウタンパク質沈着物は、特定のタウオパチー(例えば、アルツハイマー病)と診断されておらず、このような疾患を発症するリスクが高いとみなされていない母集団の個体の代表的な試料(例えば、年齢が50歳未満の無病の個体の代表的な試料)の脳内における神経原線維濃縮体またはタウ封入体の量によって決定され得る。あるいは、タウタンパク質沈着物が生じることが知られている脳の領域における、本発明の方法によるPETシグナルが、このような沈着物が通常生じることが知られている脳の領域からのシグナルと(測定の精度内で)異なっていない場合には、正常なレベルが個々の患者で認識され得る。個体におけるレベルの上昇は、正常レベルとの比較(例えば、平均+標準偏差の分散の外側のレベル)によってまたは、単に、沈着物と関連することが知られていない領域と比較したタウタンパク質沈着物と関連する脳の領域における実験誤差を超えて上昇したシグナルから認識され得る。個体および集団におけるタウタンパク質沈着物のレベルを比較する目的の場合、タウタンパク質沈着物は、好ましくは、脳の同じ領域(複数可)において決定されるべきであり、これらの領域は、特定のタウオパチー(例えば、アルツハイマー病)と関連するタウタンパク質沈着物を形成することが知られている少なくとも1つの領域を含む。タウタンパク質沈着物のレベルが上昇した患者は、免疫療法を開始するための候補である。
【0273】
免疫療法を開始した後のタウタンパク質沈着物のレベルの低下は、最初に、処置が所望の効果を有していることを示すものとして見ることができる。観察された減少は、例えば、ベースライン値の1~100%、1~50%、または1~25%の範囲内であり得る。このような効果は、沈着物を形成することが知られている脳の1つまたは複数の領域で測定できるか、またはそのような領域の平均値から測定できる。処置の総合効果は、処置しない場合に、平均的な非処置患者で生じるタウタンパク質沈着物の増加にベースラインに対する減少率を加えることによって概算できる。
【0274】
タウタンパク質沈着物のほぼ一定のレベルでの維持またはタウタンパク質沈着物が少しでも増加することは、準最適な応答ではあるが、処置に対する応答の指標となり得る。このような応答は、免疫療法がタウタンパク質沈着物のさらなる増加を抑制する効果を有するか否かを決定するために、処置を受けていない特定のタウオパチー(例えば、アルツハイマー病)を有する患者におけるタウタンパク質沈着物のレベルの時間経過と比較できる。
【0275】
タウタンパク質沈着物の変化の監視により、その処置に応答した免疫療法または他の治療計画の調整が可能になる。PET監視は、処置に対する応答の性質および程度の指標を提供する。その後、処置の調整を行うべきか否かを判断することができ、必要であれば、処置はPET監視に応じて調整できる。したがって、他のバイオマーカー、MRIまたは認知の測定が検出可能なほど応答する前に、PET監視によって、タウ標的化免疫療法または他の処置の投与計画の調整が可能になる。著しい変化は、ベースに対する処置後のパラメータの値を比較することで、処置が有益な効果をもたらしたかまたはもたらしていないといういくつかの証拠が得られることを意味する。いくつかの事例では、患者自身におけるパラメータの値の変化から、処置が有益な効果をもたらしたかまたはもたらしていないという証拠が得られる。他の例では、患者における値の変化がある場合、免疫療法を受けていない患者の代表的なコントロール集団における値の変化がある場合にはその変化と比較される。特定の患者の応答とコントロール患者の正常な応答との差異(例えば、平均値プラス標準偏差の分散)はまた、免疫療法の投与計画が患者において有益な効果を達成しているかまたはしていないかという証拠を提供することができる。
【0276】
一部の患者では、監視によって、タウタンパク質沈着物の検出可能な低下が示されるが、タウタンパク質沈着物のレベルは正常を上回ったままである。このような患者では、許容できない副作用がない場合、そのままの投与頻度および/もしくは用量で、または最大推奨用量でない場合は、投与頻度および/もしくは用量を増加させて、治療計画を継続することができる。
【0277】
監視によって、患者におけるタウタンパク質沈着物のレベルが正常またはほぼ正常まで低下したことが示される場合は、免疫療法の投与計画は、誘導の投与計画(すなわち、タウタンパク質沈着物のレベルを低下させる計画)から維持の投与計画(すなわち、ほぼ一定のレベルでタウタンパク質沈着物を維持する計画)に調整できる。このような投与計画は、免疫療法の用量および/または投与頻度を減少させることによって行われ得る。
【0278】
他の患者では、監視は、免疫療法がいくつかの有益な効果を有しているが準最適な効果であることを示し得る。最適な効果は、治療の開始後の所定の時点で免疫療法を受けているタウオパチー患者の代表的な試料の(タウタンパク質沈着物が形成することが知られているその全体脳もしくは代表的な領域(単一または複数)にわたって測定または計算された)タウタンパク質沈着物の変化の上半分または四分位内のタウタンパク質沈着物のレベルの減少率として定義され得る。タウタンパク質沈着物が少し低下した患者、またはタウタンパク質沈着物が一定のままの患者、または増加するが、免疫療法の非存在下で(例えば、免疫療法を投与されていない患者のコントロール群から推測したときに)予想される値よりも低い程度までの増加である患者は、陽性ではあるが準最適な反応を経験する患者として分類され得る。このような患者には、必要に応じて、薬剤の用量および/または投与頻度を増加させる投与計画の調整が施され得る。
【0279】
一部の患者では、タウタンパク質沈着物は、免疫療法を受けていない患者におけるタウ沈着と同様にまたはそれを上回って増加し得る。このような増加が、18ヶ月または2年などの期間にわたって継続する場合は、薬剤の頻度または用量が増加した後であっても、必要に応じて、他の処置を優先して免疫療法が中断され得る。
【0280】
タウオパチーの診断、監視、および処置の調整に関する前述の説明は、主にPETスキャンの使用に焦点を置いてきた。しかし、本発明のタウ抗体(例えば、マウス、ヒト化、キメラもしくはベニア16G7抗体)の使用の影響を受けやすいタウタンパク質沈着物の視覚化および/または測定のための任意の他の技術が、このような方法を実行するためにPETスキャンの代わりに使用できる。
【0281】
タウ関連疾患に罹患しているまたは罹患しやすい患者のタウに対する免疫応答の検出方法も提供される。この方法を用いて、本明細書で提供される作用物質による治療および予防処置の過程を監視することができる、受動的免疫化後の抗体プロファイルは通常、直後の抗体濃度のピークとそれに続く指数関数的減衰を示す。さらに投与がなければ、減衰は、投与され多孔体の半減期に応じて、数日から数ヶ月の期間内に処置前のレベルに近付く。例えば、いくつかのヒト抗体の半減期は、20日の程度である。
【0282】
いくつかの方法では、対象のタウに対する抗体のベースライン測定は投与前に行われ、第2の測定は、その直ぐ後に、抗体のピークレベルを測定するために行われ、さらに1回または複数回のさらなる測定は、抗体のレベルの減衰を監視するために間隔を置いて行われる。抗体のレベルがベースラインまたはベースラインを差し引いたピークの所定のパーセンテージ(50%、25%または10%)まで低下すると、さらなる用量の抗体の投与が行われる。いくつかの方法では、ピークまたはバックグラウンドを差し引いたその後の測定レベルがあらかじめ決定した基準レベルと比較され、他の対象に対する有益な予防または治療処置投与計画が作成される。測定抗体レベルが基準レベルより大きく低い場合(例えば、処置から利益を受ける対象集団の基準値の平均マイナス1標準偏差、好ましくは2標準偏差未満の場合)には、追加の抗体投与量が必要である。
【0283】
例えば、対象由来の試料中のタウを測定することにより、または対象のタウのインビボイメージングにより、対象のタウを検出する方法も提供される。このような方法は、タウに関連する疾患、またはそれに対する罹りやすさの診断または診断の確定に有用である。この方法はまた、無症状の対象にも使用できる。タウの存在は、将来、症候性疾患に罹りやすいことを示す。この方法はまた、以前に、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)と診断されたことがある対象の疾患進行および/または処置に対する反応を監視するのに有用である。
【0284】
アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)を有する、有すると疑われる、または有するリスクのある対象から得た生物試料を、本明細書で開示の抗体に接触させて、タウの存在を評価することができる。例えば、このような対象のタウのレベルが、健康な対象に存在するタウのレベルと比較され得る。あるいは、疾患の処置を受けているこのような対象のタウのレベルが、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の処置を受けたことがない対象のタウのレベルと比較され得る。いくつかのこのような試験は、このような対象から得た組織の生検材料を必要とする。ELISAアッセイはまた、例えば、流体試料中のタウを評価するために有用な方法であり得る。
【0285】
IX.キット
本発明はさらにキット(例えば、容器)を提供し、該キットは、本明細書で開示の抗体および関連物、例えば、使用説明書(例えば、添付文書)を含む。使用説明書は、例えば、抗体および必要に応じ、1種または複数の追加の薬剤の投与のための説明書を含んでよい。抗体の容器は、単位用量、大量包装(例えば、複数回投与用包装)または分割単位用量であってよい。
【0286】
添付文書は、このような治療薬の適応症、使用法、投与量、投与、使用に関する禁忌および/または警告についての情報を含む治療薬の商業用パッケージに習慣的に含められる説明書を意味する。
【0287】
キットはまた、無菌注射用水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容可能な緩衝液を含む第2の容器を含む。キットはまた、商業上およびユーザーの点から見て望ましい他の材料を含めてもよく、これらには、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジが含まれる。
【0288】
X.その他の用途
臨床診断または処置または研究の場合、抗体は、タウまたはそのフラグメントの検出に使用できる。例えば、抗体を使用して、生物試料がタウ沈着物を含むという指標として生物試料中のタウの存在を検出することができる。抗体の生物試料への結合は、抗体のコントロール試料への結合と比較できる。コントロール試料および生物試料は、同じ組織起源の細胞を含み得る。コントロール試料および生物試料は、同じ個体または異なる個体から、同じ時期または異なる時期に得ることができる。必要に応じ、複数の生物試料および複数のコントロール試料が複数の時期に評価され、試料間の差異とは関係のないランダムな変動に対し保護される。その後、生物試料(単一または複数)とコントロール試料(単一または複数)との間の直接比較が行われ、生物試料(単一または複数)に対する抗体結合(すなわち、タウの存在)がコントロール試料(単一または複数)に対する抗体結合と比べて、増加、減少、または同じであるかどうかが判定される。抗体の、コントロール試料(単一または複数)に対する結合と比べて、生物試料(単一または複数)に対する結合の増加は、生物試料(単一または複数)中のタウの存在を示す。いくつかの事例では、抗体結合の増加は統計的に有意である。場合により、生物試料に対する抗体結合は、コントロール試料に対する抗体結合よりも、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍または100倍である。
【0289】
さらに、抗体を使用して、生物試料中のタウの存在を検出し、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)と診断された患者の処置に使用されている治療薬の効力を監視および評価することができる。アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)と診断された患者由来の生物試料を評価して、その治療薬による治療を開始する前に、その試料に対する抗体の結合のベースライン(すなわち、試料中のタウの存在に対するベースライン)が確定される。いくつかの事例では、患者由来の複数の生物試料が複数の時期に評価されて、処置には無関係のランダムな変動のベースラインおよび基準の両方が確定される。その後、治療薬が投与計画により投与される。投与計画は、一定の期間にわたり薬剤の複数の投与を含んでもよい。場合により、抗体の結合(すなわち、タウの存在)は、複数の時期に複数の生物試料で評価され、ランダムな変動の基準を確定し、免疫療法に応答する傾向を示す。生物試料に対する抗体結合の種々の比較評価がその後行われる。2つのみの評価を行う場合には、2つの評価間で直接評価がなされて、抗体結合(すなわち、タウの存在)が、2つの評価間で増加、減少、または同じで維持されるかどうかが決定される。3回以上の測定がなされる場合は、測定値は、治療薬による処置前に開始される経時変化としておよび治療過程を介して進行する経時変化として分析できる。患者において、生物試料に対する抗体結合(すなわち、タウの存在)が低減した場合、患者のアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の処置に治療薬が効果的であると結論できる。抗体結合の低減は統計的に有意であり得る。場合により、結合は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少する。抗対結合の評価は、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度認知障害、原発性年齢関連タウオパチー、脳炎後パーキンソニズム、外傷後認知症またはボクサー認知症、ピック病、C型ニーマン・ピック病、核上性麻痺、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、嗜銀性顆粒病、globular glial tauopathy、グァム筋萎縮性側索硬化症-パーキンソン病/認知症複合;大脳皮質基底核変性症(CBD)、レビー小体型痴呆、レビー小体型アルツハイマー病(LBVAD)、または進行性核上麻痺(PSP)の徴候および症状の評価と併せて行うことができる。
【0290】
抗体は、タウまたはそのフラグメント検出の実験研究のための研究試薬としても使用できる。このような用途では、抗体は、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、放射性同位元素で標識でき、検出アッセイの実施に必要な全ての試薬と共に、キットの形で提供できる。また、抗体を用いて、例えば、親和性クロマトグラフィーにより、タウ、またはタウの結合相手を精製することができる。
【0291】
上記または下記で引用した全ての特許申請、ウェブサイト、その他の刊行物、受入番号などは、あたかも個別の項目が具体的に、個別に参照により組み込まれることが示される場合と同じ程度に、参照によりその全体が、本出願において組み込まれる。配列の異なるバージョンが異なる時間の受入番号と関連する場合は、本出願の有効な出願日の受入番号に関連するバージョンを意味している。有効な出願日は、実際の出願日または該当する場合は、受入番号に関する優先権出願の出願日より早い日付を意味する同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが異なる時間に発表された場合には、別段の指示がない限り、出願の有効出願日で、最も近い時期に発表されたバージョンを意味する。本発明の任意の特徴、工程、要素、実施形態、または態様は、特に別義が示されない限り、任意の他のものと組み合わせて使用できる。本発明は、明確さおよび理解の目的のために例示および実施例によっていくらか詳細に説明してきたが、特定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【0292】
実施例
実施例1.タウモノクローナル抗体の特定
KohlerおよびMilsteinの方法(G.Kohler and C.Milstein(1975)Nature 256:495-497)に従ってモノクローナル抗体16G7を調製した。全4つの微小管結合反復を含み、N末端スプライスバリアント(4R0Nタウ、383アミノ酸)を欠くヒトタウを用いて、全ての注入およびスクリーニングアッセイを実施した。タウ含有バキュロウイルスコンストラクトに感染したSF9細胞からタウを精製した(J.Knops et al.(1991)J Cell Biol 115(5):725-33)。6週齢のA/Jマウスに100μgの精製タウを2週間隔で注射した。最初の免疫化の場合には完全フロインドアジュバントでタウを乳化し、その後の免疫化では、不完全フロインドアジュバントで乳化した。3回目の注射の3日後、これらの動物の力価を評価するために、血清試料を採取した。3回目の注射の2週後に、最高力価のマウスの静脈内に500μLのPBS中の100μgのタウを注射した。3日後、SP2/0を融合パートナーとして用いた骨髄腫融合体が出現した。ハイブリドーマ細胞含有ウエル由来の上清を、125I標識タウを沈殿させる能力に関しスクリーニングした。固定化グルコースオキシダーゼおよびラクトペルオキシダーゼを用いて、製造業者の説明書(Bio-Rad)に従って、タウを放射性ヨウ素標識した簡単に説明すると、10μgの精製組換えタウを1mCiのNa125Iで20μCi/μgタンパク質の比活性に放射標識した。16G7をタウ特異的高親和性モノクローナル抗体として特定し、限界希釈法によりクローン化した。16G7のアイソタイプをガンマ1カッパと特定した。
【0293】
実施例2.抗体16G7のエピトープマッピング
383aa 4R0Nヒトタウタンパク質全体にわたる一連の重複ビオチン化ペプチドをマウス16G7抗体のマッピングに使用した。別のペプチドを使用して、タンパク質のC末端およびN末端の潜在的翻訳後修飾のモデル化を行った。
【0294】
ビオチン化ペプチドを、ストレプトアビジンコートELISAプレートの別々のウエルに結合させた。プレートをブロッキングし、マウス16G7で処理し、続けて、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体と共にインキュベートした。完全に洗浄後、OPDをプレートに適用し、発色させた。450nmでプレートの吸光度を読み取った。一次抗体を含まないウエル由来の吸光度値のバックグラウンド除去を実施し、陽性結合の閾値を0.2吸光度単位に設定した。
【0295】
陽性結合を配列番号3のアミノ酸残基55~69のペプチドに対し検出し、また、配列番号3のアミノ酸残基64~78のペプチドに対する、より低い程度の結合を検出した(
図1)。完全長4R2Nヒトタウタンパク質(441アミノ酸)(配列番号1)ナンバリングを用いると、これらのペプチドは、それぞれ、配列番号1のアミノ酸残基113~127および122~136に対応する。
【0296】
実施例3.ヒト化16G7抗体の設計
ヒト化のための出発点またはドナー抗体は、マウス抗体16G7であった。成熟m16G7の重鎖可変アミノ酸配列は、配列番号7として提供されている。 成熟m16G7の軽鎖可変アミノ酸配列は、配列番号11として提供されている。重鎖カバット/コチアの組み合わせCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列は、配列番号8~10としてそれぞれ提供されている。軽鎖カバットCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列は、配列番号12~14としてそれぞれ提供されている。カバットナンバリングが全体を通して使用される。
【0297】
16G7抗体の可変カッパ(Vκ)は、ヒトカバットサブグループ4に対応するマウスカバットサブグループ1に属し、可変重質(Vh)は、ヒトカバットサブグループ1に対応するマウスカバットサブグループ2bに属する[Kabat E.A.,et al.,(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.NIH Publication No.91-3242]。17個の残基のコチアCDR-L1はVκの正準クラス3に属し、7個の残基のコチアCDR-L2はクラス1に属し、9個の残基のコチアCDR-L3はクラス1に属する[Martin A.C,and Thornton J.M.(1996)J.Mol.Biol.263:800-15]。10個の残基のコチアCDR-H1はクラス1に属し、17個の残基のコチアCDR-H2はクラス2に属する[Martin & Thornton,1996]。CDR-H3配列は正準クラスを有していないが、おそらく、Shiraiら[Shirai H,et al.,(1999)FEBS Lett.455:188-97.]の規則に従ってねじれベースを有している。16G7の抗体の大まかな構造モデルを与える構造を見つけるために、PDBデータベースのタンパク質配列に対し検索した[Deshpande N,et al.,(2005)Nucleic Acids Res.33:D233-7]。野兎病菌(Francisella tularenis)FABの2.1Aの解像度を有する抗O抗原の構造(pdbコード3UJT)[Rynkiewicz,M.J.,et al.,(2012)Biochemistry 51:5684-5694]を用いて16G7のFvモデルを構築した。これは、16G7のループと同じ正準構造を保持していた。VLv1、VLv2、およびVLv3に対しては、NCBIの非冗長性タンパク質配列データベース由来のヒトVL受容体AAB24404.1およびAEK69364.1を同様に適用した(前に記載のINNヒト化規則に従って)。VHv1、VHv2、VHv3、VHv4、VHv5VおよびVHv5VRに対しては、NCBIの非冗長性タンパク質配列データベース由来の受容体AAA18265.1およびADW08092.1を同様に適用した(前に記載のINNヒト化規則に従って)。
【0298】
2015年のINN抗体ヒト化規則[Jones,T.D.,et al,(2016),The INNs and outs of antibody nonproprietary names.mAbs(http://dx.doi.org/10.1080/19420862.2015.1114320)]後、IMGTデータベースの検索では、好適な、マウスCDRをグラフト化するヒト生殖系列フレームワークの選択が可能となった。Vkについては、IMGT番号IGKV4-1*01を有するヒトカッパ軽鎖を選択した。これは、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3で同じ正準クラスを有し、ヒトカッパサブグループ1に属する。Vhに対しては、IMGT番号IGHV1-2*02を有するヒト重鎖を選択し、これはヒト重鎖サブグループ1に属する。これは、正準型の16G7 CDR-H1およびH2を共有する。VHv2a、VHv2b、VHv2aB7、VHv2bH7、VHv6a、VHv6bおよびVHv7は、IMGT番号IGHV1-2*02を受容体として用いて設計した。
【0299】
抗体ヒト化プロセスから生じた重鎖および軽鎖バリアント配列を、IMGT Domain GapAlignツールを用いて、ヒト生殖細胞系列配列にさらに整列させて、WHO INN 委員会ガイドラインに概要が示されているように、重鎖および軽鎖のヒト化度を評価した。(WHO-INN:生物学的および生物工学的物質のための国際一般名称(INN)(概説)(インターネット)2014。http://www.who.int/medicines/services/inn/BioRev2014.pdfから入手可能)可能であれば、残基を、対応するヒト生殖細胞系列配列に整列するように変更し、ヒト化度を高めた。
【0300】
異なる置換順列を含む13個のヒト化重鎖可変領域バリアントおよび3個のヒト化軽鎖可変領域バリアント(hu16G7VHv1、hu16G7VHv2、hu16G7VHv2a、16G7VHv2aB7、hu16G7VHv2b、hu16G7VHv2bH7、hu16G7VHv3、hu16G7VHv4、hu16G7VHv5V、hu16G7VHv5VR、hu16G7VHv6a、hu16G7VHv6b、およびhu16G7VHv7、(それぞれ、配列番号15~27)ならびにhu16G7VLv1、hu16G7VLv2、およびhu16G7VLv3(それぞれ、配列番号28~30))を構築した(表4および3)。選択ヒトフレームワークに基づく逆突然変異およびその他の変異を有する、代表的ヒト化VκおよびVhの設計をそれぞれ、表3および4に示す。表3および4の灰色網掛け領域は、カバット/コチアの組み合わせにより定義されるCDRを示している。配列番号:15~27および配列番号28~30は、表5に示すように、逆突然変異およびその他の変異を含む。hu16G7VHv1、hu16G7VHv2)、hu16G7VHv2a、16G7VHv2aB7、hu16G7VHv2b、hu16G7VHv2bH7、hu16G7VHv3、hu16G7VHv4、hu16G7VHv5V、hu16G7VHv5VR、hu16G7VHv6a、hu16G7VHv6b、およびhu16G7VHv7中の位置H1、H5、H7、H9、H10、H11、H12、H13、H20、H31、H37、H38、H40、H48、H60、H64、H66、H67、H69、H71、H73、H75、H80、H82s、H82b、H83、およびH85のアミノ酸を表6に示す。hu16G7VLv1、hu16G7VLv2、およびhu16G7VLv3中の位置L4、L9、L15、L18、L19、L21、L22、L43、およびL48のアミノ酸を、表7に示す。ヒト化VH鎖のhu16G7VHv1、hu16G7VHv2、hu16G7VHv2a、16G7VHv2aB7、hu16G7VHv2b、hu16G7VHv2bH7、hu16G7VHv3、hu16G7VHv4、hu16G7VHv5V、hu16G7VHv5VR、hu16G7VHv6a、hu16G7VHv6b、およびhu16G7VHv7(それぞれ、配列番号15~27)ならびにヒト化VL鎖のhu16G7VLv1、hu16G7VLv2、およびhu16G7VLv3(それぞれ、配列番号28~30)のパーセンテージヒト化度を表8に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0301】
マウスとヒト受容体配列の間で、正準残基、バーニア残基、または界面残基が異なる位置は、置換の候補である。正準/CDR相互作用残基の例には、表4のカバット残基H24、H26、H27、H29、H34、H52a、H55、H70、H71,H74、H94、L2、L4、L25、L27b、L33、L48、L64、L71、L90、およびL95が挙げられる。界面/パッキング(VH~VL)残基の例には、表3のカバット残基H35、H37、H39、H45、H47、H91、H93、H95、H100a、H103、L34、L36、L38、L44、L46、L87、L89、L91、L96、L98が挙げられる。
【0302】
軽鎖可変領域中の表3に示す位置の置換候補としての選択の原理は、以下の通りである。
【0303】
M4Lは、LCDR1およびLCDR3と接触する残基の変異である。P43Sは、VH中の(Y91およびW103)の2つの界面残基と接触する残基の変異である。I48Mは、界面残基の変異である。D9S、L15V、R18K、A19V、I21M、およびN22Sは、頻度ベース逆突然変異または頻度/生殖細胞系列整列変異である。
【0304】
重鎖可変領域中の表4に示す位置の置換候補としての選択の原理は、以下の通りである。
【0305】
Q1Eは、ピログルタミン酸形成能力を低下させる安定性強化変異である。(Liu、2011、前出)。
【0306】
S7Pは、折り畳みを改善するためのプロリンへの変異である。R71Vは、水素結合を介してHCDR2と接触し得る残基の変異である。T73Iは、LCDR1およびLCDR2と接触し得る残基の変異である。
【0307】
V5Q、E10V、V11L、K12V、K13R、V20L、S31G、V37A、R38K、A40R、M48I、N60A、K64Q、R66K、V67A、M69L、I75S、I75A、M80V、S82a-T、R83b-S、R83T、およびD85Eは、頻度ベース逆突然変異または生殖細胞系列整列変異である。
【0308】
ヒト化配列は、QuikChange部位特異的変異誘発を用いて複数の変異、欠失、および挿入を導入可能な2段PCRプロトコルを用いて生成される[Wang,W.and Malcolm,B.A.(1999)BioTechniques 26:680-682]。
【0309】
これらのヒトフレームワークに基づく設計を以下に示す:
【0310】
可変カッパ
hu16G7VLv1(配列番号28):
DIVLTQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLMYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0311】
hu16G7VLv2(配列番号29):DIVLTQSPSSLAVSVGERATISCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQ
KPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0312】
hu16G7VLv3(配列番号30):
DIVLTQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
可変重質
【0313】
hu16G7VHv1(配列番号15):
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWAKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0314】
hu16G7VHv2(配列番号16):
EVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTVDTSASTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0315】
hu16G7VHv2a(配列番号17);
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0316】
hu16G7VH2aB7(配列番号18):
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTGSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYAEKFKGKATLTVDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0317】
hu16G7VHv2b(配列番号19):
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTRDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0318】
hu16G7VH2bH7(配列番号20):
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTGSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYAEKFQGRVTLTRDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0319】
hu16G7VHv3(配列番号21):
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTVDTSASTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0320】
hu16G7VHv4(配列番号22):
EVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0321】
hu16G7VHv5V(配列番号23):
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0322】
hu16G7VHv5VR(配列番号24):
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0323】
hu16G7VHv6a(配列番号25):
QVQLVQPGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDISISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0324】
hu16G7VHv6b(配列番号26):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0325】
hu16G7VHv7(配列番号27):
EVQLVQPGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDISISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0326】
実施例4.16G7はヒトアルツハイマー病組織由来のタウを免疫捕獲する
方法:
図4A:アルツハイマー病脳由来の側頭皮質組織を用いて、種々溶解度のタンパク質画分を抽出した。凍結組織を5倍量の再構築緩衝液(RAB)(100mMのMES、1mMのEGTA、0.5mMのMgSO
4、750mMのNaCl、pH6.8)中でホモジナイズし、遠心分離して、RAB可溶性画分を生成した。その後、ペレットを5倍量の放射性免疫沈降法アッセイ緩衝液(RIPA緩衝液)(25mMのとリス、150mMのNaCl、1%のNP-40、1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、pH7.5)中でホモジナイズし、遠心分離してRIPA可溶性画分を生成した。このペレットを5倍量のサルコシル緩衝液(25mMのとリス、1mMのEGTA、1%のサルコシル、10%のショ糖、1mMのDTT、500mMのNaCl、pH7.5)中でホモジナイズし、遠心分離して、サルコシル可溶性画分を生成した。この最終サルコシル不溶性ペレットを2%のSDS中でホモジナイズした。試料を還元/変性試料緩衝液中で調製し、SDS-PAGEで分離させた。ウェスタンブロッティングをマウス16G7を用いて実施した。
【0327】
図4B:RAB可溶性タンパク質画分を1mg/mlに調製した。それぞれの免疫沈殿に対し、300μgの試料を使用した。10μgの示した抗体(アイソタイプコントロール、16G7、または抗タウ抗体16B5)をRAB試料調製物に加え、2時間インキュベートした。その後、プロテインG磁気ビーズを混合物に加え、さらに1時間インキュベートして、抗体/抗原複合体を捕捉した。試料を1xPBSで完全に洗浄し、ビーズを還元/変性試料緩衝液中で煮沸し、捕捉したタンパク質を放出させた。得られた試料をSDS-PAGEにより分離し、ポリクローナル抗タウ抗体(Dako、#A0024)を用いて、ウェスタンブロッティングを実施した。
【0328】
結果:
図4A:16G7はヒトアルツハイマー病組織由来の可溶性およびサルコシル不溶性のタウを認識する。種々溶解度のタンパク質画分をSDS-PAGEで分離し、16G7でブロットした。複数のタウアイソフォームが可溶性および不溶性画分で認められ、電気泳動移動度シフトを、不溶性画分で検出した。これは、病理学的形態のタウと一致した。サルコシル不溶性画分中に顕著なタウの蓄積があった。左:分子量重量マーカー。レーン表記:1-RAB可溶性、2-RIPA可溶性、3-サルコシル可溶性、4-サルコシル不溶性。
【0329】
図4B:16G7は、アルツハイマー疾患組織由来タウを免疫沈降させた。RAB可溶性画分は、示した抗体で免疫沈降し、16G7と抗タウ抗体16B5の結合部位から分離したタウ分子の領域に対するポリクローナル抗タウ抗体で検出した。16G7は、この画分からタウを確実に捕捉した。入力(RAB可溶性試料)を右側に示す。
【0330】
実施例5.ヒトアルツハイマー病組織に対する反応性(免疫組織化学)
前頭側頭皮質を、死後評価時に確証された、神経変性疾患のない患者またはアルツハイマー病の患者から得た。免疫組織化学的検査を、スライドにマウントし、軽くアセトン固定した10μmの凍結切片上で行った。Leica BOND Rx自動免疫染色装置とLeica消耗品を用いて全染色ステップを実施した。マウスまたはヒト型の16G7を組織切片とともにインキュベートし、続けて、HRPポリマーにコンジュゲートした、種に適切な二次抗体を加えた。ヒト化抗体をヒト組織に対して使用した場合の内在性免疫グロブリンの非特異的結合を防ぐために、組織のインキュベーションの前に、抗体を、ビオチンコンジュゲート抗ヒト一価Fabフラグメントで非共有結合によりインビトロ標識した。一次抗体-ビオチンFabフラグメント複合体で標識した組織を、アビジン-ビオチン増幅システム(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いてさらに増殖した。染色をDAB色素原を用いて可視化し、これにより褐色の沈着物が生成した。ネガティブコントロールは、IgGアイソタイプコントロール抗体を用いて、隣接切片上で全免疫組織化学的手順を実行することにより作成した。
【0331】
試験した抗体は、マウス16G7、キメラ16G7(これは、ヒト定常領域を有するマウス抗体由来のVHとVL、重鎖配列番号54および軽鎖配列番号55を含んでいた)、およびヒト化16G7バリアントhu16G7VHv7/hu16G7VLv2およびhu16G7VHv2bH7/hu16G7VLv2であった。
【0332】
マウス16G7、キメラ16G7、およびヒト化型16G7(hu16G7VHv7/hu16G7VLv2およびhu16G7VHv2bH7/hu16G7VLv2)に実施した染色を、染色強度および輝度、ならびに免疫反応性の局在化を定性的に比較し、評価した。染色輝度は、マウス型の抗体と比較して、16G7のキメラおよびヒト化型で類似であり、類似の局在化パターンを示した。神経原線維濃縮体、原線維、糸屑状構造物中、および変性した軸索中でタウを検出した。顕著な細胞体染色も検出された。
【0333】
実施例6.脱凝集活性
方法:
組換えタウの凝集-N末端6xHisタグを有する精製組換えタウを、1xPBS(pH7.4)中の等モル量の低分子量ヘパリンと混合し、旋回装置を用いて37℃で96時間インキュベートした。チオフラビンTに対する結合により、試料の凝集を確認した。
【0334】
抗体とインキュベーション-凝集した組換えタウと共に抗体を、回転または旋回を行わないで37℃で96時間インキュベートした。実験の終わりに、試料を25mMのチオフラビンTと共にインキュベートし、放出蛍光(450nm/482nm 励起/発光)を測定することにより、凝集を測定した。シグナルから、緩衝液試料までバックグラウンドを差し引いた。
【0335】
結果:
図5に示すように、16G7は、完全なタウ原線維を選択的に分解する。種々のモル比の16G7(三角形)、アイソタイプコントロール(円)および抗タウ抗体16B5(四角)をアミロイド含有タウ原線維と共に96時間インキュベートした。この期間の最後に、チオフラビンTに対する結合により凝集の程度が評価された。16G7は、アイソタイプコントロール抗体ならびに異なる領域のタウに結合する抗タウ抗体の16B5と比べて、試料中に存在するチオフラビンTシグナルを選択的に低減させる。
【0336】
実施例7.タウに対するマウス16G7抗体の親和性
Biacore T200を使って、SPR分析を実施し、16G7の組換えヒトタウに対する結合動力学を測定した。センサー表面を調製するために、抗マウス抗体(GE Life Sciences)をアミンカップリングを介してセンサーチップCM5上に固定し、50RUの最大結合を確保するレベルで16G7を捕捉した。10~0.14nMの範囲の種々の濃度の組換えタウを、180秒の結合および900秒の解離のために、ランニングバッファー(HBS+0.05%P-20、1mg/mL BSA)中で、50μL/分の流速で捕捉リガンド上を通過させた。データを、捕捉部分からのリガンドの解離を捕捉するために、抗体リガンド不含の無関係のセンサー、および0nMの分析物濃度の両方に対する二重基準とした。その後、データをグローバル1:1フィットを用いて分析した。結合動力学を
図6に示す。
【0337】
実施例8.キメラ16G7抗体およびヒト化バリアントのタウに対する親和性
Biacore T200を使って、SPR分析を実施し、16G7の組換えヒトタウに対する結合動力学を測定した。センサー表面を調製するために、抗ヒト抗体(GE Life Sciences)をアミンカップリングを介してセンサーチップCM5上に固定し、50RUの最大結合を確保するレベルでキメラまたはヒト化抗体を捕捉した。10~0.14nMの範囲の種々の濃度の組換えタウを、180秒の結合および900秒の解離のために、ランニング緩衝液(HBS+0.05%P-20、1mg/mL BSA)中で、50μL/分の流速で捕捉リガンド上を同時に通過させた。捕捉部分からのリガンドの解離を捕捉するために、データを、抗体リガンド不含の無関係のセンサー、および0nMの分析物濃度の両方に対する二重基準とした。その後、データをグローバル1:1フィットを用いて分析した。
【0338】
試験した抗体は、キメラ16G7(これは、ヒト定常領域を有するマウス抗体由来のVHとVL、重鎖配列番号54および軽鎖配列番号55を含んでいた)、およびヒトバリアント(hu16G7VHv2a/hu16G7VLv2およびhu16G7VHv2b/hu16G7VLv2、およびhu16G7VHv7/hu16G7VLv2)であった。
【0339】
図7:試験抗体の親和性をSPR分析により測定した。種々の濃度の組換えタウを固定化抗体上を流し、得られたセンサーグラムをグローバル1:1フィットを用いて解析した。動力学的親和性、結合、および解離速度を
図7に示す。
【0340】
実施例9.凝集タウに対する多価結合親和性
方法:
Fabフラグメントの生成-Fab Micro Preparation kitを用い、製造業者(Pierce)の使用説明書に従って、16G7のFabフラグメントを生成した。遊離したFcの除去および完全な最終製品の検証をSDS-PAGEによりモニターし、ビシンコニン酸アッセイ(Pierce)を使用して濃度を測定した。
【0341】
組換えタウの凝集-N末端6xHisタグを有する精製組換えタウを、1xPBS(pH7.4)中の等モル量の低分子量ヘパリンと混合し、旋回装置を用いて37℃で96時間インキュベートした。チオフラビンTに対する結合により、試料の凝集を確認した。
【0342】
Fabフラグメントおよび完全な抗体のSPR分析-Biacore T200を用いて、Fabフラグメントおよび完全な抗体の結合比較調査を実施した。センサー表面を調製するために、抗Hisタグ抗体(GE Life Science)をアミンカップリングを介してセンサーチップCM3上に固定し、凝集した組換えタウ(上記で調製)を試験チャネルを通過させて、アッセイリガンドとして機能させた。180秒の結合期および900秒の最終解離期のために、10~0.016nMの範囲の種々の濃度の捕捉した凝集タウ上を、ランニングバッファー(HBS+0.05%P-20、1mg/mL BSA)中、50μL/分の流速で、16G7(完全な抗体またはFabフラグメント)を単一サイクルモードで通過させた。捕捉部分からのリガンドの解離を把握するために、結合/解離結果を抗体リガンド不含の無関係のセンサー、および0nMの分析物濃度の両方まで差し引いた二重基準とした。
【0343】
結果:
多価結合親和性は、抗体-抗原相互作用の多重親和性の尺度であり、タウの凝集体または神経原線維濃縮体などの固定化抗原に対する抗体の機能的親和性をより厳密に表す。SPR測定では、単価結合親和性(単一相互作用)と多価結合親和性(複数相互作用)との間の差異は、単一結合ドメインを含むFabフラグメントと、2つの結合ドメインを有する完全な抗体の結合の動力学を比較することにより特定される。
【0344】
図8では、16G7 Fabフラグメントの結合測定値が完全な抗体と比較されている。結合期(中実水平線)および解離期(破線水平線)について図示されている。単一結合ぶりと、二重結合部位との間の差異は、1300秒から始まる解離終末期で最も明らかである。完全な抗体では、抗体/抗原複合体の明らかな解離は存在しないが、Fabフラグメントは凝集タウから明確に解離する。
【0345】
配列表
P10636-8(配列番号1)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKESPLQTPTEDGSEEPGSETSDAKSTPTAEDVTAPLVDEGAPGKQAAAQPHTEIPEGTTAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIINKKLDLSNVQSKCGSKDNIKHVPGGGSVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0346】
P10636-7(配列番号2)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKESPLQTPTEDGSEEPGSETSDAKSTPTAEAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIINKKLDLSNVQSKCGSKDNIKHVPGGGSVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0347】
P10636-6(4R0Nヒトタウ)(配列番号3)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIINKKLDLSNVQSKCGSKDNIKHVPGGGSVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0348】
P10636-5(配列番号4)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKESPLQTPTEDGSEEPGSETSDAKSTPTAEDVTAPLVDEGAPGKQAAAQPHTEIPEGTTAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0349】
P10636-4(配列番号5)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKESPLQTPTEDGSEEPGSETSDAKSTPTAEAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0350】
P10636-2(配列番号6)
MAEPRQEFEVMEDHAGTYGLGDRKDQGGYTMHQDQEGDTDAGLKAEEAGIGDTPSLEDEAAGHVTQARMVSKSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVKSEKLDFKDRVQSKIGSLDNITHVPGGGNKKIETHKLTFRENAKAKTDHGAEIVYKSPVVSGDTSPRHLSNVSSTGSIDMVDSPQLATLADEVSASLAKQGL
【0351】
配列番号7;VHタンパク質配列:
QVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWAKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVDLTSLTSEDSAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTLIVSS
【0352】
配列番号8;マウスHCDR1:
GYTFTSSWIH
【0353】
配列番号9;マウスHCDR2:
EIYPNSGNTNYNEKFKG
【0354】
配列番号10;マウスHCDR3:
LGWLIPLDY
【0355】
配列番号11;マウスVLタンパク質配列:
DIVLSQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLMYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSLKAEDLAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0356】
配列番号12;マウスLCDR1:
KSSQSLLDGNDQKNYLA
【0357】
配列番号13;マウスLCDR2:
WASTRES
【0358】
配列番号14;マウスLCDR3:
QQFYDYPWT
【0359】
配列番号15;>hu16G7VHv1
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWAKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0360】
配列番号16;>hu16G7VHv2
EVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTVDTSASTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0361】
配列番号17;>hu16G7VHv2a
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0362】
配列番号18;>hu16G7VHv2aB7
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTGSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYAEKFKGKATLTVDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0363】
配列番号19;>hu16G7VHv2b
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTRDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0364】
配列番号20;>hu16G7VHv2bH7
EVQLVQSGAEVVKPGASVKVSCKASGYTFTGSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYAEKFQGRVTLTRDISISTAYMELSRLTSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0365】
配列番号21;>hu16G7VHv3
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTLTVDTSASTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0366】
配列番号22;>hu16G7VHv4
EVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYMELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0367】
配列番号23;>hu16G7VHv5V
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0368】
配列番号24;>hu16G7VHv5VR
EVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVELTSLTSEDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0369】
配列番号25;>hu16G7VHv6a
QVQLVQPGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDISISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0370】
配列番号26;>hu16G7VHv6b
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0371】
配列番号27;>hu16G7VHv7
EVQLVQPGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWIHWVRQAPGQGLEWMGEIYPNSGNTNYNEKFKGRVTMTVDISISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0372】
配列番号28;>hu16G7VLv1
DIVLTQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLMYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0373】
配列番号29;>hu16G7VLv2
DIVLTQSPSSLAVSVGERATISCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0374】
配列番号30;>hu16G7VLv3
DIVLTQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0375】
配列番号31;VHヒト受容体AAA18265.1
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYYMHWVRQAPGRGLEWMGRINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSIRTAYVELSRLTSDDTAVYYCASLADDDPEDFWGQGTLVTVSS
【0376】
配列番号32;VHヒト受容体ADW08092.1
QVQLVESGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFSSYWMHWVRQAPGQRLEWMGEINPDNGHTNYNEKFKSRVTITVDKSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCAREADYSYGAFDIWGPGTTVTVSS
【0377】
配列番号33;VHヒト受容体IMGT#IGHV1-2*02
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYC
【0378】
配列番号34;VLヒト受容体AAB24404.1
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPPMFGQGTKVEIKR
【0379】
配列番号35;VLヒト受容体AEK69364.1
DIVLTQSPDSLAVSLGERATIKCKSSQSVLYGSDSKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLQAADVAVYYCQEYYSSLCTFGQGTKLEIKR
【0380】
配列番号36;VLヒト受容体IMGT#IGKV4-1*01
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTP
【0381】
配列番号37;マウスVHヌクレオチド配列:
CAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGTCTGTGCTGGTGAGGCCTGGAGCTTCAGTGAAGCTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACCAGCTCCTGGATACACTGGGCGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATTGGAGAGATTTATCCTAATAGTGGTAATACTAACTACAATGAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACACTGACTGTAGACATATCCTCCAGCACAGCCTACGTGGATCTCACCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTATTGTGCAAGATTGGGATGGTTAATACCCCTTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCATAGTCTCCTCA
【0382】
配列番号38;マウスVLヌクレオチド配列:
GACATTGTGCTGTCACAGTCTCCATCCTCCCTAGCTGTGTCAGTTGGAGAGAAGGTTACTATGAGCTGCAAGTCCAGTCAGAGCCTTTTAGATGGTAATGATCAAAAGAACTACTTGGCCTGGTACCAGCAGAAACCAGGGCAGTCTCCTAAACTGCTGATGTACTGGGCATCCACTAGGGAATCTGGGGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTTTGAAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGCAGTTTTATGACTATCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAACGT
【0383】
配列番号39;カバットCDR-H1
SSWIH
【0384】
配列番号40;コチアCDR-H1
GYTFTSS
【0385】
配列番号41;コチアCDR-H2
YPNSGN
【0386】
配列番号42;AbM CDR-H2
EIYPNSGNTN
【0387】
配列番号43;Contact CDR-L1
KNYLAWY
【0388】
配列番号44;Contact CDR-L2
LLMYWASTRE
【0389】
配列番号45;Contact CDR-L3
QQFYDYPW
【0390】
配列番号46;Contact CDR-H1
TSSWIH
【0391】
配列番号47;Contact CDR-H2
WIGEIYPNSGNTN
【0392】
配列番号48;Contact CDR-H3
ARLGWLIPLD
【0393】
配列番号49;別のCDR-H1
GYTFTGSWIH
【0394】
配列番号50;別のCDR-H2
EIYPNSGNTNYAEKFKG
【0395】
配列番号51;別のCDR-H2
EIYPNSGNTNYAEKFQG
【0396】
配列番号52;マウス16G7およびヒト化16G7抗体(
図2で「Majority」と標識)の重鎖可変領域中のコンセンサスアミノ酸配列。
EVQLXQXGAEXVKPGASVKXSCKASGYTFTSSWIHWVRQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGXXTLTVDISISTAYMELXXLTSXDTAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTVTVSS
【0397】
配列番号53;マウス16G7およびヒト化16G7抗体(
図3で「Majority」と標識)の軽鎖可変領域中のコンセンサスアミノ酸配列。
DIVLTQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLXYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKR
【0398】
配列番号54;キメラ16G7抗体の重鎖
QVQLQQPGSVLVRPGASVKLSCKASGYTFTSSWIHWAKQRPGQGLEWIGEIYPNSGNTNYNEKFKGKATLTVDISSSTAYVDLTSLTSEDSAVYYCARLGWLIPLDYWGQGTTLIVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0399】
配列番号55;キメラ16G7抗体の軽鎖
DIVLSQSPSSLAVSVGEKVTMSCKSSQSLLDGNDQKNYLAWYQQKPGQSPKLLMYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSLKAEDLAVYYCQQFYDYPWTFGGGTKLEIKRKTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【配列表】