(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】台車の牽引装置
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20221216BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20221216BHJP
B60D 1/36 20060101ALI20221216BHJP
B61G 1/32 20060101ALI20221216BHJP
B65G 35/06 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
B62B5/00 C
B61B13/00 A
B60D1/36
B61G1/32
B65G35/06 D
(21)【出願番号】P 2019085228
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福間 有史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 善文
(72)【発明者】
【氏名】木原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】丸子 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高岡 泰範
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149388(JP,A)
【文献】特開2016-182915(JP,A)
【文献】実開平03-047859(JP,U)
【文献】特開平09-024861(JP,A)
【文献】特開2009-040146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
B61B 13/00
B60D 1/36
B61G 1/32
B65G 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物が載置される荷台を有する台車を無人搬送機により牽引するための、台車の牽引装置であって、
前記台車の進行方向の前側に設けられ、前記無人搬送機から上側に突出したピンと係合する連結部材と、
前記台車の進行方向の後側に設けられ、前記荷台の下面から下側かつ前記進行方向の後側に傾斜して延びる傾斜部材とを備え、
前記連結部材は、
回動軸を介して前記荷台の下面に上下方向及び前後方向に回動可能に接続されるとともに、前記回動軸の径方向に延びて、先端側に前記ピンと係合する係合部を有する第1アーム部と、
前記第1アーム部における先端側から前記進行方向の前側に向かって延びる第2アーム部とを有し、
前記無人搬送機が前記連結部材を前記進行方向の前側に押圧したときに、該押圧力により、該連結部材が前記回動軸を中心に上側かつ前側に回動して、前記係合部と前記ピンとが係合することで、前記台車が前記無人搬送機により搬送される一方、前記台車が前記無人搬送機により搬送される状態で、前記連結部材の前記第2アーム部が、別の台車の前記傾斜部材に乗り上げたときには、前記連結部材が前記回動軸を中心に前側かつ上側に回動して、前記係合部と前記ピンとの係合状態が解除されることを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の台車の牽引装置において、
前記傾斜部材における前記進行方向の後端側には、前記連結部材の第2アーム部と係合するフック部が設けられており、
前記別の台車の前記傾斜部材により前記連結部材と前記ピンとの係合が解除されたときには、前記連結部材の前記第2アーム部と前記別の台車の前記フック部とが係合することを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項3】
請求項2に記載の台車の牽引装置において、
前記ピンは、前記連結部材の前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部とが係合した状態で、前記連結部材の前記係合部に前記進行方向の前側から当接したときに、前記連結部材を上側に回動させて、前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部との係合を解除する係合解除部を有することを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項4】
請求項2に記載の台車の牽引装置において、
前記第2アーム部は、前記別の台車における前記フック部と係合した状態で、前記無人搬送機が後退したときに、前記ピンが前記進行方向の前側から当接するガイド面を有し、
前記ガイド面は、前記ピンが前記進行方向の前側から当接した状態で、前記無人搬送機が後退したときに、前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部との係合を解除するように、前記連結部材を上側に回動させるための面であることを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の台車の牽引装置において、
前記回動軸は、前記進行方向の前側から見て、左右に一対設けられており、
前記第1アーム部は、前記一対の回動軸のそれぞれに接続され、前記各回動軸の径方向にそれぞれ延びる一対の第1フレームを有し、
前記係合部は、前記一対の第1フレームの先端部を左右方向に連結する第1連結棒により構成され、
前記一対の第1フレームは、前記係合部に近づくにつれて、互いに左右方向に接近するように構成されていることを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1つに記載の台車の牽引装置において、
前記回動軸は、前記進行方向の前側から見て、左右に一対設けられており、
前記第1アーム部は、前記一対の回動軸のそれぞれに接続され、前記各回動軸の径方向にそれぞれ延びる一対の第1フレームを有し、
前記係合部は、前記一対の第1フレームの先端部を左右方向に連結する第1連結棒により構成され、
前記第2アーム部は、前記一対の第1フレームの先端部から前記進行方向の前側に向かってそれぞれ延びる一対の第2フレームを有し、
前記第2フレームの先端部は第2連結棒により連結されており、
前記第2連結棒と前記フック部とが係合することで、前記第2フレームが前記フック部に係合することを特徴とする台車の牽引装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の台車の牽引装置において、
前記傾斜部材は、後端が前記荷台の後端よりも前記進行方向の前側に位置することを特徴とする台車の牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、台車の牽引装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被搬送物が載置される荷台を有する台車を無人搬送機により牽引するための、台車の牽引装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、進行方向前部に設けられた連結プレートと、進行方向後部に設けられた連結解除部材とを有し、前記連結プレートは、後端に回動軸を有して前端側が上下に回動可能で、前記無人搬送車から上方に突出するピンと係合し、前記連結解除部材は、後下方に延びる斜面を備え、前記連結プレートが前記斜面に乗り上げて回動することにより前記ピンとの係合が解除される牽引装置を備えた被牽引台車が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の被牽引台車では、連結プレートの先端にリリース部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の牽引装置では、連結プレートは、水平に延びた状態で回動軸に支持されるとともに、該連結プレートの先端に比較的大きなリリース部が設けられている。このため、連結プレートを安定して支持するために比較的大きな取り付け部材が必要となる。また、連結プレートを水平に延ばした状態で無人搬送機のピンを受け入れるために、連結プレート自体の部品点数が多く複雑な構成となっている。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、台車と無人搬送機との接続/解除を単純な構成で自動的に行うことができ、利便性の高い牽引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、被搬送物が載置される荷台を有する台車を無人搬送機により牽引するための、台車の牽引装置を対象として、前記台車の進行方向の前側に設けられ、前記無人搬送機から上側に突出したピンと係合する連結部材と、前記台車の進行方向の後側に設けられ、前記荷台の下面から下側かつ前記進行方向の後側に傾斜して延びる傾斜部材とを備え、前記連結部材は、回動軸を介して前記荷台の下面に上下方向及び前後方向に回動可能に接続されるとともに、前記回動軸の径方向に延びて、先端側に前記ピンと係合する係合部を有する第1アーム部と、前記第1アーム部における先端側から前記進行方向の前側に向かって延びる第2アーム部とを有し、前記無人搬送機が前記連結部材を前記進行方向の前側に押圧したときに、該押圧力により、該連結部材が前記回動軸を中心に上側かつ前側に回動して、前記係合部と前記ピンとが係合することで、前記台車が前記無人搬送機により搬送される一方、前記台車が前記無人搬送機により搬送される状態で、前記連結部材の前記第2アーム部が、別の台車の前記傾斜部材に乗り上げたときには、前記連結部材が前記回動軸を中心に前側かつ上側に回動して、前記係合部と前記ピンとの係合状態が解除されることを特徴とする。
【0009】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記傾斜部材における前記進行方向の後端側には、前記連結部材の第2アーム部と係合するフック部が設けられており、前記別の台車の前記傾斜部材により前記連結部材と前記ピンとの係合が解除されたときには、前記連結部材の前記第2アーム部と前記別の台車の前記フック部とが係合することを特徴とする。
【0010】
ここに開示された技術の第3の態様は、第2の態様において、前記ピンは、前記連結部材の前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部とが係合した状態で、前記連結部材の前記係合部に前記進行方向の前側から当接したときに、前記連結部材を上側に回動させて、前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部との係合を解除する係合解除部を有することを特徴とする。
【0011】
ここに開示された技術の第4の態様は、第2の態様において、前記第2アーム部は、前記別の台車における前記フック部と係合した状態で、前記無人搬送機が後退したときに、前記ピンが前記進行方向の前側から当接するガイド面を有し、前記ガイド面は、前記ピンが前記進行方向の前側から当接した状態で、前記無人搬送機が後退したときに、前記第2アーム部と前記別の台車における前記フック部との係合を解除するように、前記連結部材を上側に回動させるための面であることを特徴とする。
【0012】
ここに開示された技術の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記回動軸は、前記進行方向の前側から見て、左右に一対設けられており、前記第1アーム部は、前記一対の回動軸のそれぞれに接続され、前記各回動軸の径方向にそれぞれ延びる一対の第1フレームを有し、前記係合部は、前記一対の第1フレームの先端部を左右方向に連結する第1連結棒により構成され、前記一対の第1フレームは、前記係合部に近づくにつれて、互いに左右方向に接近するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
ここに開示された技術の第6の態様は、第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記回動軸は、前記進行方向の前側から見て、左右に一対設けられており、前記第1アーム部は、前記一対の回動軸のそれぞれに接続され、前記各回動軸の径方向にそれぞれ延びる一対の第1フレームを有し、前記係合部は、前記一対の第1フレームの先端部を左右方向に連結する第1連結棒により構成され、前記第2アーム部は、前記一対の第1フレームの先端部から前記進行方向の前側に向かってそれぞれ延びる一対の第2フレームを有し、前記第2フレームの先端部は第2連結棒により連結されており、前記第2連結棒と前記フック部とが係合することで、前記第2フレームが前記フック部に係合することを特徴とする。
【0014】
ここに開示された技術の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記傾斜部材は、後端が前記荷台の後端よりも前記進行方向の前側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
ここに開示された技術の第1の態様によると、連結部材は、回動軸を中心に上側かつ前側に回動可能であるため、連結部材を水平に延びる状態で維持する機構が必要ない。また、無人搬送機が連結部材を前側に押圧することで、該連結部材が回動軸を中心に上側かつ前側に回動して、係合部がピンと係合可能になるため、台車の搬送を自動的に行うことができる。一方で、連結部材の第2アーム部が、別の台車の傾斜部材に乗り上げたときには、連結部材が回動軸を中心に前側かつ上側に回動して、係合部とピンとの係合状態が解除されるため、連結部材とピンとの係合を自動的に解除することができる。したがって、台車と無人搬送機との接続/解除を単純な構成で自動的に行うことができるとともに、利便性を向上させることができる。
【0016】
ここに開示された技術の第2の態様によると、連結部材の第2アーム部と別の台車における傾斜部材のフック部とが係合するため、該別の台車を牽引するときに、2つの台車を一緒に牽引して搬送することができる。これにより、利便性をより向上させることができる。
【0017】
ここに開示された技術の第3及び第4の態様によると、連結部材の第2アーム部と別の台車における傾斜部材のフック部との係合を解除することができる。このため、一の台車が目的の場所に到着したときには、該一の台車と別の台車とを切り離して、別の台車のみを無人搬送機で牽引することができる。これにより、利便性を一層向上させることができる。
【0018】
ここに開示された技術の第5の態様によると、第1フレームがピンを係合部に案内するガイドの役割を果たすため、ピンと連結部材との係合が容易になる。この結果、利便性をより一層向上させることができる。
【0019】
ここに開示された技術の第6の態様によると、第1アーム部の係合部と、第2フレームと、第2連結棒とで環状枠が形成される。これにより、第2アーム部とフック部との係合が不意に解除される可能性が低くなる。この結果、利便性を更に向上させることができる。
【0020】
ここに開示された技術の第7の態様によると、台車を収納するときに、台車の占有スペースが大きくなることを出来る限り抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る牽引装置により牽引される台車を牽引するための無人搬送機の二面図である。
【
図4】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、無人搬送車と連結部材とが当接する前の状態を示す。
【
図5】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、無人搬送車と連結部材とが当接した状態を示す。
【
図6】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、連結部材とピントが係合して、台車が牽引される状態を示す。
【
図7】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、連結部材と別の台車の係合解除部材とが当接した状態を示す。
【
図8】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、連結部材とピンとの係合状態が解除された状態を示す。
【
図9】無人搬送機により台車を牽引する動作を示す動作図であって、連結部材と別の台車のフック部とが係合した状態を示す。
【
図10】実施形態2に係る牽引装置により牽引される台車を牽引するための無人搬送機を示す二面図である。
【
図11】実施形態2に係る無人搬送機により一の台車の連結部材と他の台車のフック部との係合状態を解除する動作を示す動作図であって、該連結部材とピンとが当接した状態を示す。
【
図12】実施形態2に係る無人搬送機により一の台車の連結部材と他の台車のフック部との係合状態を解除する動作を示す動作図であって、該連結部材と該フック部との係合が解除された状態を示す。
【
図13】実施形態2に係る無人搬送機により一の台車の連結部材と他の台車のフック部との係合状態を解除する動作を示す動作図であって、
図12の状態から無人搬送機がさらに後退した状態を示す。
【
図14】実施形態3に係る牽引装置により牽引される台車の連結部材を示す斜視図である。
【
図15】実施形態3に係る牽引装置において、無人搬送機により一の台車の連結部材と他の台車のフック部との係合状態が解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係る牽引装置により牽引される台車100を牽引するための無人搬送機200を示す。無人搬送機200は、車体201と、前後左右合わせて4つの車輪202とを有する。車体201の上面からは上側に向かってピン203が突出している。このピン203は、後述する連結部材20の係合部23と係合するピンである。無人搬送機200は、工場の床面に配置された磁気ライン上を移動する。詳しくは、車体201には、磁気ラインを検出するセンサが設けられており、該センサにより磁気ラインを検出して追従することで、所望のルートを移動する。
【0024】
図2は、本実施形態1に係る牽引装置により牽引される台車100を示す。この台車100は、金属加工を行う工場などで、材料となる金属板等を搬送するための台車である。尚、以下の説明では、台車100の進行方向を前後方向として、前進側を単に前側といい、該進行方向の後退側を単に後側という。また、台車100を前側から見たときに上下方向と直交する方向を左右方向として、台車100を前側から見たときの左側を単に左側といい、右側を単に右側という。
【0025】
台車100は、被搬送物が載置される矩形状の荷台101を有する。荷台101は、該荷台101の周縁部から上側に向かって立設された側壁部101aを有する。荷台101の四隅からは、下側に向かって脚部102がそれぞれ延びており、各脚部102の下端部にキャスタ103がそれぞれ設けられている。
【0026】
図2及び
図3に示すように台車100の前側における荷台101の下面には、2本の支持フレーム101bが前後方向に延びている。2本の支持フレーム101bは、荷台101を前側から見たときに、該荷台101の左右方向の中央に対して左右対称になるように、左右方向に離間して配置されている。
【0027】
〈連結部材の構成〉
台車100の前部には、連結部材20が台車100に対して前後方向及び上下方向に回動可能に設けられている。連結部材20は、左右の支持フレーム101bのそれぞれに設けられた一対の回動軸21を介して支持されている。つまり、回動軸21は、前側から見て左右に一対設けられている。連結部材20は、
図3に示すように、台車100の側方から見てJ字状になっている。
【0028】
連結部材20は、回動軸21を介して荷台101の下面に上下方向及び前後方向に回動可能に接続されるとともに、回動軸21の径方向に延びて、先端側にピン203と係合する係合部23を有する第1アーム部22を有する。連結部材20は、第1アーム部22における先端側から前側に向かって延びる第2アーム部24を有する。
【0029】
第1アーム部22は、
図3に示すように、一対の回動軸21のそれぞれに接続され、各回動軸21の径方向にそれぞれ延びる一対の第1フレーム40を有する。各第1フレーム40の先端は、第1連結棒41により左右方向に連結されている。この第1連結棒41は、係合部23を構成する。一対の第1フレーム40は、係合部23(つまり、第1連結棒41)に近づくにつれて、互いに左右方向に接近するように構成されている。より詳しくは、各第1フレーム40は、各回動軸21から水平方向に対して傾斜してそれぞれ延びるフレーム上部40aと、各フレーム上部40aの先端から、該フレーム上部40aとは異なる角度で傾斜して係合部23までそれぞれ延びるフレーム下部40bとを有する。フレーム上部40aの水平方向に対する傾斜角度は、フレーム下部40bの水平方向に対する傾斜角度よりも小さい。各フレーム上部40a同士及び各フレーム下部40b同士は、それぞれ、前後方向から見て、左右対称になるように構成されている。各フレーム下部40bにおけるフレーム上部40aに近い側の半部は、補強プレート42により左右方向に連結されている。
【0030】
第2アーム部24は、
図3に示すように、一対の第1フレーム40の先端から前側に向かってそれぞれ延びる一対の第2フレーム50を有する。より詳しくは、各第2フレーム50は、
図3に示すように、側方から見て、第1フレーム40のフレーム下部40bに略直交してそれぞれ延びる基端側フレーム50aと、基端側フレーム50aに対して、第1アーム部22側に傾斜してそれぞれ延びる先端側フレーム50bとを有する。各先端側フレーム50bの前端は、第2連結棒51により連結されている。これにより、第1連結棒41、一対の第2フレーム50、及び第2連結棒51は、1つの環状枠を形成する。
【0031】
先端側フレーム50bの基端側フレーム50aに対する傾斜角度は、
図6及び
図7に示すように、連結部材20が前側及び上側に回動して、先端側フレーム50bの高さが後述する傾斜部材30のフック部32と同じ高さになったときに、該先端側フレーム50bが鉛直に延びる姿勢になる角度に設定されている。
【0032】
〈傾斜部材の構成〉
台車100の後部には、荷台101の下面から下側かつ後側に傾斜して延びる傾斜部材30が設けられている。傾斜部材30は荷台101の下面に固定されている。
【0033】
傾斜部材30は、
図3に示すように、荷台101の下面から下側かつ後側に傾斜した傾斜部31と、連結部材20の第2アーム部24(厳密には、第2アーム部24の第2連結棒51)と係合するフック部32を有する。
【0034】
傾斜部31は、本実施形態1では、下側かつ後側に傾斜するとともに、アーチ状に湾曲している。尚、傾斜部31は、下側かつ後側に直線的に傾斜していてもよい。
【0035】
フック部32は、傾斜部31の後端から後側に向かって略水平に延びる水平部32aと、水平部32aの後端から該水平部32aに直交するように上側に向かって延びるストッパ部32bとを有する。傾斜部材30の後側の部分は、傾斜部31、水平部32a、及びストッパ部32bにより、U字状をなしている。詳しくは後述するが、第2連結棒51とストッパ部32bとが係合することで、第2フレーム50がフック部32に係合して、連結部材20と傾斜部材30とが連結される。
図3に示すように、傾斜部材30は、後端が荷台101の後端よりも前側に位置する。
【0036】
〈台車の牽引〉
次に、本実施形態1に係る牽引装置により台車100が牽引される際の動作について、
図4~
図9を参照しながら説明する。尚、
図4~
図9では、図面の簡素化のために、台車100の支持フレーム101bやキャスタ103等は記載を省略している。また、以下の説明では、2台の台車100の一方を第1台車100又は単に台車100といい、他方を第2台車300又は単に台車300ということがある。第2台車300に設けられた各部材については、例えば、連結部材320のように記載する。
【0037】
まず、
図4に示すように、無人搬送機200と第1台車100の連結部材20との当接前の状態では、連結部材20は、自重により第1アーム部22が略鉛直に延びるように回動軸21に支持されている。このとき、第1アーム部22の先端部、すなわち、係合部23は無人搬送機200の上面よりも下側に位置する。
【0038】
図4の状態から無人搬送機200が前進すると、
図5に示すように、無人搬送機200と連結部材20とが当接して、無人搬送機200が連結部材20を押圧する。連結部材20は、この無人搬送機200からの押圧力により回動軸21を中心に上側かつ前側に回動する。
【0039】
図5の状態から無人搬送機200が更に前進すると、
図6に示すように、連結部材20と無人搬送機200のピン203とが係合する。連結部材20とピン203とが係合した状態から無人搬送機200が前進すると、該前進力によって、無人搬送機200により第1台車100が牽引される。このとき、第2アーム部24の先端側フレーム50bの高さは、第2台車300の傾斜部材330のフック部332と同じ高さになる。また、先端側フレーム50bは、鉛直に延びるような姿勢になる。
【0040】
次に、
図7に示すように、第1台車100が、第2台車300が待機する位置まで牽引されたとする。このとき、第1台車100の連結部材20における第2アーム部24の枠内に、傾斜部材30が入り込む。そして、第1台車100の第2アーム部24における第2連結棒51が、第2台車300の傾斜部材330に乗り上げる。
【0041】
図7に示す状態から、第1台車100が更に前進すると、第2連結棒51が、第2台車300の傾斜部材330の傾斜部331に沿って上側かつ前側に移動する。これにより、
図8に示すように、第1台車100の連結部材20が回動軸21を中心に前側かつ上側に回動して、係合部23とピン203との係合状態が解除される。
【0042】
係合部23とピン203との係合が解除された後、無人搬送機200がさらに前進すると、第1台車100の連結部材20が自重によって、回動軸21を中心に下側かつ後側に回動する。これにより、第1台車100の第2連結棒51が、第2台車300のフック部332に引っ掛かる。その後、無人搬送機200が第2台車300の連結部材320と係合して第2台車300を牽引すると、第1台車100の第2アーム部24(厳密には第2連結棒51)と第2台車300のストッパ部332bとが係合して、第1台車100は、第2台車300と一緒に、無人搬送機200に牽引される。これにより、2台の台車100,300を1台の無人搬送機200でまとめて搬送することができる。
【0043】
したがって、本実施形態1では、台車100の前側に設けられ、無人搬送機200から上側に突出したピン203と係合する連結部材20と、台車100の後側に設けられ、台車100の下面から下側かつ後側に傾斜して延びる傾斜部材30とを備え、連結部材20は、回動軸21を介して荷台101の下面に上下方向及び前後方向に回動可能に接続されるとともに、回動軸21の径方向に延びて、先端側にピン203と係合する係合部23を有する第1アーム部22と、第1アーム部22における先端側から前側に向かって延びる第2アーム部24とを有し、無人搬送機200が連結部材20を前側に押圧したときに、該押圧力により、連結部材20が回動軸21を中心に上側かつ前側に回動して、係合部23とピン203とが係合することで、台車100が無人搬送機200により搬送される一方、台車(第1台車100)が無人搬送機200により搬送される状態で、連結部材20の第2アーム部24が、別の台車(第2台車300)の傾斜部材330に乗り上げたときには、連結部材20が回動軸21を中心に前側かつ上側に回動して、係合部23とピン203との係合状態が解除される。この構成では、連結部材20は、回動軸21を中心に上側かつ前側に回動可能であるため、従来のように連結部材20を水平に延びる状態で維持する機構が必要なく、簡単な構成にすることができる。このため、台車100と無人搬送機200との接続/解除を単純な構成で自動的に行うことができるとともに、利便性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態1では、連結部材20の第2アーム部24と別の台車(第2台車300)における傾斜部材330のフック部332とが係合するため、該別の台車を牽引するときに、2つの台車100,300を一緒に牽引して搬送することができる。これにより、利便性をより向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態1では、一対の第1フレーム40は、係合部23(つまり、第1連結棒41)に近づくにつれて、互いに左右方向に接近するように構成されている。これにより、第1フレーム40がピン203を係合部23に案内するガイドの役割を果たすため、ピン203と連結部材20との係合が容易になる。この結果、利便性を一層向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態1では、第2アーム部24は、一対の第1フレーム40の先端から前側に向かってそれぞれ延びる一対の第2フレーム50を有し、第2フレーム50の前端は、第2連結棒51により連結されている。これにより、第1連結棒41、一対の第2フレーム50、及び第2連結棒51は、1つの環状枠を形成する。この結果、第2アーム部24とフック部32との係合が不意に解除される可能性が低くなって、利便性を更に向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態1では、傾斜部材30は、後端が荷台101の後端よりも前側に位置する。これにより、台車100を収納するときに、台車100の占有スペースが大きくなることを出来る限り抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態1では、先端側フレーム50bの基端側フレーム50aに対する傾斜角度は、連結部材20が前側及び上側に回動して、先端側フレーム50bの高さが傾斜部材30のフック部32と同じ高さになったときに、該先端側フレーム50bが鉛直方向に延びる姿勢になる角度に設定されている。これにより、別の台車(第2台車300)の傾斜部材330が第2アーム部24及び係合部23により形成される空間に入り込みやすくなる。この結果、無人搬送機200のピン203と台車100の係合部23との係合状態を解除しやすくなるとともに、別の台車(第2台車300)の傾斜部材330のフック部332と台車100の第2アーム部24の第2連結棒51との係合も容易になる。したがって、利便性をより一層向上させることができる。
【0049】
(実施形態2)
以下、実施形態2について詳細に説明する。以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態2では、
図10に示すように、無人搬送機200のピン203における後側の部分に、下側かつ後側に向かって傾斜する係合解除部204が設けられている点で、前記実施形態1とは異なる。この係合解除部204は、第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合を解除する。
【0051】
また、本実施形態2では、台車100の荷台101の後端部に、第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合を解除するためのガイド部60(360)が設けられている点で、前記実施形態1とは異なる。このガイド部60は、後側に向かって上側に傾斜した傾斜面で構成されている。
【0052】
次に、本実施形態2に係る牽引装置により第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合を解除する際の動作について、
図11~
図13を参照しながら説明する。尚、
図11~
図13では、図面の簡素化のために、台車100の支持フレーム101bやキャスタ103等は記載を省略している。
【0053】
まず、第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合した状態で、無人搬送機200が後退して、
図11に示すように、係合解除部204が第1台車100の連結部材20の係合部23に前側から当接する。この
図11の状態から無人搬送機200がさらに後退すると、係合部23が係合解除部204に乗り上げて、連結部材20が回動軸21を中心に上側に回動する。
【0054】
連結部材20が回動軸21を中心に上側に回動すると、
図12に示すように、連結部材20の第2アーム部24が第2台車300のガイド部360に当接する。これにより、第2台車300に前向きの押圧力がかかる。この押圧力によって、第2台車300が前進するか、第1台車100が後退するか、又は、これらの両方により、第1台車100と第2台車300とが互いに離れる。これにより、第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合が解除される。
【0055】
その後、無人搬送機200が更に後退すると、第1台車100の連結部材20は、自重により後側かつ下側に向かって回動する。そして、
図13に示すように、第1アーム部22が略鉛直に延びる状態に戻る。以上によって、連結されていた2台の台車100,300が分離される。
【0056】
したがって、本実施形態2では、ピン203は、連結部材20の第2アーム部24と別の台車(第2台車300)におけるフック部332とが係合した状態で、連結部材20の係合部23に前側から当接したときに、連結部材20を上側に回動させて、第2アーム部24と別の台車(第2台車300)におけるフック部332との係合を解除する係合解除部204が設けられている。これにより、第1台車100が目的の場所に到着したときには、第1台車100と第2台車300とを切り離して、第2台車300のみを無人搬送機200で牽引することができる。これにより、利便性を一層向上させることができる。
【0057】
(実施形態3)
以下、実施形態3について詳細に説明する。以下の説明において実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態3では、一対の第2フレーム50における水平部32aに相当する部分に、ガイド面52が設けられている点で実施形態1及び2とは異なる。
図14に示すように、このガイド面52は、一対の第2フレーム50における水平部32aに相当する部分を連結するように設けられている。このガイド面52は、第1台車100の第2アーム部24と第2台車300のフック部332とが係合した状態で、無人搬送機200が前側から後退したときに、ピン203が前側から当接する面である。さらに、このガイド面52は、ピン203が前側から当接した状態で、無人搬送機200が後退したときに、第2アーム部24と第2台車300におけるフック部332との係合を解除するように、連結部材20を上側に回動させるための面である。
【0059】
図15は、ピン203とガイド面52とが当接した状態を示す。無人搬送機200が後退して、このガイド面52をピン203により押圧することで、該押圧力により、第1台車100の連結部材20が回動軸21を中心に上側に回動する。これにより、連結部材20がピン203に乗り上げる。
【0060】
この
図15に示す状態から無人搬送機200がさらに後退すると、前述の実施形態2と同様に、連結部材20の第2アーム部24が第2台車300のガイド部360に当接して、第2台車300が前進するか、第1台車100が後退するか、又は、これらの両方により、第1台車100と第2台車300とが互いに離れる。これにより、第1台車100の連結部材20と第2台車300のフック部332との係合が解除される。そして、無人搬送機200がさらに後退したときには、第1台車100の連結部材20は、自重により後側かつ下側に向かって回動して、第1アーム部22が略鉛直に延びる状態に戻る。
【0061】
したがって、この実施形態3の構成であっても、第1台車100が目的の場所に到着したときには、第1台車100と第2台車300とを切り離して、第2台車300のみを無人搬送機200で牽引することができる。これにより、利便性を一層向上させることができる。
【0062】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0063】
例えば、前述の実施形態1では、傾斜部材30にフック部32が設けられていたが、傾斜部31があれば、フック部32は設けなくてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態1~3では、第1アーム部22が一対の第1フレーム40により構成されていたが、下端部に係合部23が形成されれば、第1フレーム40は1つでもよい。また、第2アーム部24も一対の第2フレーム50により構成されていたが、先端に傾斜部材30に乗り上げる部分(第2連結棒51に相当する部分)が有りさえすれば、第2フレーム50は1つでもよい。
【0065】
また、本実施形態では第1台車100と第2台車300との2台を連結して牽引する場合を示しているが、これに限らず牽引する台車の数は3台以上であってもよい。
【0066】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ここに開示された技術は、被搬送物が載置される荷台を有する台車を無人搬送機により牽引するための台車の牽引装置として有用である。
【符号の説明】
【0068】
20,320 連結部材
21 回動軸
22 第1アーム部
23 係合部
24 第2アーム部
30,330 傾斜部材
32,332 フック部
40 第1フレーム
41 第1連結棒
50 第2フレーム
51 第2連結棒
52 ガイド面
100,300 台車
101 荷台
200 無人搬送機
203 ピン
204 係合解除部