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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-15
(45)【発行日】2022-12-23
(54)【発明の名称】石膏含有板、及び石膏含有板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
B28B1/30 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019550880
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035784
(87)【国際公開番号】W WO2019087625
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2017212225
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 大地
(72)【発明者】
【氏名】新見 克己
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-290094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0150190(US,A1)
【文献】特開2004-076538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏コアを含む石膏含有板であって、
前記石膏コアは磁性材料と、石膏とを含み、
前記石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域とした場合に、
前記第1の端部領域の前記磁性材料の含有量が、前記中央領域の前記磁性材料の含有量よりも多く、前記第1の端部領域のみに前記磁性材料が偏在しており、
前記磁性材料が粉末形状を有する石膏含有板。
【請求項2】
前記磁性材料が鉄粉である請求項1に記載の石膏含有板。
【請求項3】
前記鉄粉の平均粒子径が100nm以上200μm以下である請求項2に記載の石膏含有板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の石膏含有板を製造する石膏含有板の製造方法であって、
少なくとも焼石膏、及び水を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程と、
前記石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程と、
前記成形工程で得られた前記成形体を硬化させる硬化工程と、を有し、
前記成形工程において、前記成形体の表面側に前記磁性材料を配置する石膏含有板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の石膏含有板を製造する石膏含有板の製造方法であって、
少なくとも焼石膏、水、及び前記磁性材料を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程と、
前記石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程と、
前記成形工程で得られた前記成形体を硬化させる硬化工程と、を有し、
前記混練工程において、前記石膏スラリーの粘度を5cps以上100cps以下とし、
前記成形体の凝結時間を30秒以上180秒以下とする石膏含有板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の石膏含有板を製造する石膏含有板の製造方法であって、
少なくとも焼石膏、水、及び前記磁性材料を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程と、
前記石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程と、
前記石膏スラリーを、前記成形体とした場合の少なくとも一方の表面と対向するように磁石が配置された搬送経路上を搬送する磁性材料偏在化工程と、
前記磁性材料偏在化工程を終えた前記成形体を硬化させる硬化工程と、を有する石膏含有板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏含有板、及び石膏含有板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば学校の校舎や、商業施設等において、壁等にマグネット等の磁性体により印刷物等を固定するニーズがあった。このため、壁等を形成する際に用いる建材として、マグネットが吸着可能な建材が求められていた。
【0003】
そこで、例えば壁の下地材の表面に鉄板を貼り付けたり、鉄粉を配合した塗料を塗布したりする方法が従来は用いられていた。
【0004】
例えば特許文献1には、壁紙と下地材との間に薄い鉄板を介在させ、磁石の吸引力を利用して物品を保持できるようにした掲示用壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国実開平6-78983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下地材に鉄板を貼り付けたり、鉄粉を配合した塗料を塗布したりする方法によれば、素地仕上げには向かない。また、鉄板等の表面に対して壁紙等による仕上げを行うに際しても、鉄板や塗料と、仕上げ材との相性を考慮した下処理が必要になる場合があった。
【0007】
また、現場で下地材の表面に鉄板を貼り付ける等の施工を行うことは工数が増える点でも問題であった。
【0008】
このため、表面に鉄板を貼り付ける等の処理を行うことなくマグネットを吸着できる下地材が求められていた。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の一側面では、マグネットを吸着することができる石膏含有板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の一形態によれば、石膏コアを含む石膏含有板であって、
前記石膏コアは磁性材料と、石膏とを含み、
前記石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域とした場合に、
前記第1の端部領域の前記磁性材料の含有量が、前記中央領域の前記磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態によれば、マグネットを吸着することができる石膏含有板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る石膏含有板の石膏コアの斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る石膏含有板のマグネット吸着試験の説明図。
図3】本発明の実施形態に係る石膏含有板の製造方法の説明図。
図4】実験例4-1~実験例4-7で用いたマグネットの対1mm鉄板への吸着力の評価方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[石膏含有板]
本実施形態の石膏含有板の一構成例について説明する。
【0014】
本実施形態の石膏含有板は石膏コアを含む石膏含有板であって、石膏コアは磁性材料と、石膏とを含むことができる。
そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域とした場合に、第1の端部領域の磁性材料の含有量を、中央領域の磁性材料の含有量よりも多くすることができる。
【0015】
図1を用いて、本実施形態の石膏含有板について説明する。
【0016】
図1は本実施形態の石膏含有板の石膏コア10の斜視図を示している。本実施形態の石膏コア10は図1に示すように板状形状を有しており、一方の表面11と、他方の表面12とを有している。そして、一方の表面11と他方の表面12との間には側面13が配置されている。
【0017】
なお、石膏コア10として直方体の形状を示したが、該石膏コア10を含む石膏含有板は建材等に用いることができ、係る形態に限定されず、用途に応じて適切な形状とすることができる。
【0018】
また、本実施形態の石膏含有板の具体的な形態は特に限定されるものではなく、例えばJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量又は重量な石膏ボード(以下、その重さが上記JIS規格を満たしているか否かによらず、上述の石膏ボードをまとめて石膏ボードともいう)、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏含有板、スラグ石膏含有板等が挙げられる。本実施形態の石膏含有板は、特に建造物の壁を構成する材料として好ましく用いることができる。そして、壁材等に広く用いられることから、石膏含有板は石膏ボードであることが好ましい。ここでいう石膏ボードは既述のようにJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、またはJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量又は重量な石膏ボードを意味する。なお、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量な石膏ボードは、例えば比重が0.3以上0.65未満の石膏ボードであることが好ましく、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも重量な石膏ボードは、例えば比重が1.45より大きく5.0以下の石膏ボードであることが好ましい。
【0019】
このため、本実施形態の石膏含有板は、各種形態に応じて、例えば石膏コア10の一方の表面11や他方の表面12上に、表面材としてさらにボード用原紙や、ガラスマット等を配置することもできる。また、一方の表面11や他方の表面12にガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)等を埋没させることもできる。その他に石膏コア10の一方の表面11や、他方の表面12に表面材を配置せず、石膏コア10のみからなる石膏含有板とすることもできる。
【0020】
そして、本実施形態の石膏含有板の石膏コア10を厚さ方向に沿って、厚さの等しい3つの領域である、第1の端部領域141と、中央領域142と、第2の端部領域143とした場合に、第1の端部領域141の磁性材料の含有量が、中央領域142の磁性材料の含有量よりも多いことが好ましい。
【0021】
なお、石膏コア10の厚さ方向とは、一方の表面11、及び他方の表面12と垂直な方向である、図1中のZ軸方向を意味している。そして、図1に示すように石膏コア10の厚さをtとした場合、第1の端部領域141、中央領域142、第2の端部領域143はそれぞれ厚さがt/3となる。
【0022】
これは、磁性材料を石膏コア10内に均一に分散させる場合、該石膏コア10を含む石膏含有板の表面で磁石を吸着できるようにするためには多量の磁性材料を石膏コア10内に分散させる必要が生じ、該石膏含有板の重量が重くなり取り扱い性が低下する。また、磁性材料の含有量が増加すると、石膏含有板のコストが上昇するという問題もある。
【0023】
そこで、本実施形態の石膏含有板では、該石膏含有板が含む石膏コアにおいて、磁性材料を表面側に偏在させることで、磁性材料の含有量を抑制しつつも、マグネットを吸着可能な石膏含有板とすることができる。より具体的には、石膏コア10の少なくとも一方の表面11側の表面においてマグネットを吸着可能な石膏含有板とすることができる。
【0024】
石膏コア10において、例えば第1の端部領域141、及び第2の端部領域143の両方に磁性材料が偏在していても良い。すなわち、石膏コア10において、一方の表面11側、及び他方の表面12側に磁性材料が偏在していても良い。この場合、第2の端部領域143の磁性材料の含有量についても、中央領域142の磁性材料の含有量よりも多くすることができる。そして、この場合、石膏コア10の一方の表面11、及び他方の表面12側の表面においてマグネットを吸着可能な石膏含有板とすることができる。
【0025】
このように、第1の端部領域141、及び第2の端部領域143の両方に磁性材料を偏在させることにより、該石膏コアを含む石膏含有板について、磁性材料が偏在した面を確認することなく用いることができ、施工の際の取り扱い性が高くなるため好ましい。
【0026】
また、石膏コア10において、第1の端部領域141の磁性材料の含有量を、第2の端部領域143の磁性材料の含有量よりも多くすることもできる。すなわち、石膏コア10において、一方の表面11側にのみ磁性材料が偏在する様に構成することもできる。この場合、第1の端部領域141の磁性材料の含有量は、中央領域142、及び第2の端部領域143の磁性材料の含有量よりも多くすることができる。
【0027】
このように第1の端部領域141にのみ磁性材料を偏在させることで、特に石膏コア10に含まれる磁性材料量を抑制することができ、該石膏コアを含む石膏含有板の重量や、コストを抑制することができ、好ましい。なお、一方の表面11側にのみ磁性材料を偏在させた場合には、石膏含有板にした場合に一方の表面11側が識別できるように、石膏含有板の表面のいずれかの表面にマーク等を付しておくことが好ましい。
【0028】
第1の端部領域141に存在する磁性材料の割合は特に限定されるものではないが、例えば、石膏コア10に含まれる磁性材料の35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、既述の様に第1の端部領域141にのみ磁性材料を偏在させることもできることから、第1の端部領域141に存在する磁性材料は、石膏コアに含まれる磁性材料の100質量%以下とすることができる。
【0029】
また、第1の端部領域141、及び第2の端部領域143の両方に磁性材料を偏在させる場合には、第2の端部領域143に存在する磁性材料も、石膏コア10に含まれる磁性材料の35質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上とすることがより好ましい。ただし、この場合、第1の端部領域141、及び第2の端部領域143のそれぞれに存在する磁性材料の割合は、50質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
既述のように本実施形態の石膏含有板はその形態にあわせて石膏コアの表面上、または表面近傍にボード用原紙や、ガラスマット、ガラス繊維不織布等を配置することができる。このため、石膏コア内の磁性材料の分布を分析する場合、ボード用原紙等を除去してから石膏コアを厚さ方向に沿って3分割して、分割した領域毎に分析に供することができる。
【0031】
具体的には石膏含有板の厚さ等にもよるが、例えば石膏含有板について表面から厚さ1mm分を除去することで、表面に配置したボード用原紙等を除去できる。そして、該石膏含有板の表面を除去して得られた石膏コアを厚さ方向に沿って、同じ厚さの3つの領域に分割し、一方の表面側から順に第1の端部領域、中央領域、第2の端部領域として分析に供することができる。各領域内に存在する磁性材料の含有割合の分析方法は特に限定されず、例えば各領域について、化学分析や、磁性の評価を行う方法、磁性材料を分離しその質量を評価する方法等により分析することができる。具体的には、例えば以下の手順により各領域内に含まれる磁性材料を分離してその質量を測定し、含有割合を算出する方法が挙げられる。
【0032】
まず、用いた磁性材料の大きさ、例えば粒径より目の細かい、すなわち目開きの小さい篩を用意し、該篩の上で、分割した各領域の石膏コアを水洗することで石膏を溶解し、篩上に各領域に含まれていた磁性材料を取り出す。次いで、篩上の残渣の質量を測定することで、各領域に含まれていた磁性材料の質量を評価できる。そして、上記手順により評価した各領域に含まれていた磁性材料の質量から、各領域内に存在する磁性材料の含有割合を算出できる。
【0033】
磁性材料としては特に限定されるものではなく、マグネットを吸着することができる各種磁性材料を用いることができる。
【0034】
磁性材料としては例えば、酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等の鉄粉、磁性材料粉末が練り込まれた樹脂シート、金属板を含む複合シート、スチール箔や、鉄板、鋼板等の金属板等から選択された1種以上を用いることが好ましい。
【0035】
なお、磁性材料粉末が練り込まれた樹脂シートや、金属板を含む複合シート、金属板等のシート形状の磁性材料は、メッシュ状や、パンチングシート等のように、複数の開口部が形成されていても良い。このように開口部が形成されていることで、石膏コアや、該石膏コアを含む石膏含有板を製造する際に、石膏スラリーと磁性材料とがなじみやすく、また通気性が良いため、乾燥する際に水分が抜けやすく好ましい。
【0036】
また、金属板を含む複合シートとしては、スチール箔と紙との複合材料であるスチールペーパー等が挙げられる。
【0037】
金属板として鋼板を用いる場合、鋼板としては、亜鉛めっき鋼板(亜鉛鋼板)等の単一金属でめっき加工された鋼板、すなわち単一金属めっき鋼板や、ガルバリウム鋼板(登録商標)と呼ばれる溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板等の合金でめっき加工された鋼板、すなわち合金めっき鋼板等から選択された1種以上を用いることができる。また、金属板はこれを含む石膏含有板を軽量にし、また加工性を高める観点から薄いことが好ましく、例えばスチール箔等の金属箔(磁性材料箔)であることがより好ましい。
【0038】
特に磁性材料は取り扱い性の観点から粉末形状を有することが好ましい。磁性材料としては、コストや、取り扱い性の観点から酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等から選択された1種類以上の鉄粉を用いることがより好ましい。磁性材料として鉄粉を用いる場合、その平均粒子径は特に限定されないが、例えば100nm以上であることが好ましい。これは100nm以上とすることで取り扱い性を高めることができるからである。鉄粉の平均粒子径の上限についても特に限定されないが、例えば鉄粉の平均粒子径は200μm以下であることが好ましい。これは、鉄粉の平均粒子径を200μm以下とすることで、石膏含有板を製造する際に、該石膏含有板を所望のサイズに切断するために用いるカッター等の切断装置へのダメージを抑制できるからである。
【0039】
なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(メジアン径)を意味する。以下、本明細書においては特に断らない限り、平均粒子径は同様の意味を有するものとする。
【0040】
また、例えば石膏含有板について、不燃性を高めることが要求される場合には、鉄粉として、酸化鉄粉を用いることがさらに好ましい。酸化鉄粉に含まれる酸化鉄の種類は特に限定されないが、四酸化三鉄(Fe)を特に好ましく用いることができる。
【0041】
磁性材料として、金属板を含む複合シートや、金属板を用いる場合には、該磁性材料を含む石膏コアや、石膏含有板をカッター等で容易に切断できるようにその厚さを選択することが好ましい。特に金属板については、容易に切断できるように、金属箔を用いることが好ましい。金属板を含む複合シートや、金属板を用いる場合、その厚さは特に限定されず、材料に応じて選択することができるが、例えば1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。厚さの下限値は、マグネットを吸着できるように選択することができるが、例えば0.1mm以上とすることができる。
【0042】
磁性材料に、鉄粉や、磁性材料粉末が練り込まれた樹脂シート、金属板を含む複合シート、金属板等のカッターで容易に切断できる磁性材料を用いることで、石膏含有板の加工性を損なわずに磁石がつく石膏含有板とすることができる。
【0043】
本実施形態の石膏含有板の磁性材料の含有量は、磁性材料の種類や、磁気特性等に応じて任意に選択することができるため、特に限定されるものではない。本実施形態の石膏含有板の磁性材料の含有量は、例えば一方の表面の単位面積当たり0.3kg/m以上であることが好ましく、0.8kg/m以上であることがより好ましい。
【0044】
これは、一方の表面の単位面積当たりの含有量を0.3kg/m以上とすることで、石膏含有板の表面に、マグネット等の磁性体を十分な吸着力で吸着させることができるためである。
【0045】
石膏含有板の磁性材料の単位面積当たりの含有量の上限値は特に限定されるものではなく、例えば石膏含有板に要求される吸着力やコスト等に応じて任意に選択することができる。石膏含有板の磁性材料の単位面積当たりの含有量は、例えば10kg/m以下であることが好ましい。
【0046】
本実施形態の石膏含有板の石膏コアは、石膏、及び磁性材料以外にも任意の成分を含有することができる。例えば石膏ボード等の石膏系建材に汎用的に用いられる、促進材や遅延材等の硬化調整材、ガラス繊維等の繊維材料、石膏含有板の製造方法で後述するように原料に添加する接着性向上剤等の各種任意の添加剤等を含有することもできる。また、例えば増粘剤や、消泡剤、磁性材料の色味を調整するための顔料、充填材(嵩増し材)等を含有することもできる。なお、後述する石膏含有板の製造方法において後述するように、石膏含有板を製造する際に用いる石膏スラリーには泡を添加することもでき、該泡に対応して本実施形態の石膏含有板の石膏コアは気泡(空隙)を含有することもできる。
【0047】
さらに、磁性材料として鉄系材料等の錆を生じる可能性を有する材料を用いる場合には、防錆剤を含有することもできる。なお、防錆処理を施した磁性材料を含有することもできる。
【0048】
石膏コアが防錆剤を含有する場合、防錆剤を、磁性材料に対して0.1質量%以上の割合で含有することが好ましく、0.3質量%以上の割合で含有することがより好ましい。
【0049】
石膏コアが防錆剤を含有する場合、その含有量の上限値は特に限定されるものではないが、過度に添加しても防錆の効果に大きな変化はなく、また石膏コアの強度が低下する恐れがある。このため、石膏コアは防錆剤を、例えば鉄粉等の磁性材料に対して20質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0050】
防錆剤の種類は特に限定されるものではないが、防錆剤は、例えば水溶性またはエマルションの有機酸系防錆剤、キレート系防錆剤、有機酸アミン系防錆剤、脂肪酸系防錆剤、及び亜硝酸塩系防錆剤から選択された1種以上を含むことが好ましい。
【0051】
ここまで、本実施形態の石膏含有板が含む部材について説明したが、以下に本実施形態の石膏含有板の特性等について説明する。
【0052】
本実施形態の石膏含有板は、表面が平滑であることが好ましい。
【0053】
ここで、本実施形態の石膏含有板の表面(主表面)が平滑であるとは、石膏含有板の厚さを複数箇所で測定した場合に、厚さのばらつきが500μm以下であることを意味している。
【0054】
なお、石膏含有板の厚さについては、JIS A 6901(2014)の「7.3.1 寸法」の「a)厚さ」での規定と同様に測定することができる。具体的には、試料である石膏含有板の端面から25mm以内であって、両側面から80mm以上内側の領域において、等間隔で6か所の測定位置で厚さを測定することができる。このため、測定した該6か所での厚さのばらつきが、500μm以下の場合に表面が平滑であるといえる。
【0055】
石膏含有板の表面が平滑であることで、例えば壁材等として用いた場合に、平坦な壁を形成することができ、好ましい。また、石膏含有板の表面が平滑であることで、石膏含有板の表面について、壁紙を貼ることによる壁紙貼り(壁紙仕上げ)や、塗料を塗布することによる塗装仕上げ、ラミネート加工等の化粧仕上げ、化粧マグネットを配置することによる化粧マグネット仕上げ等を容易に行うことが可能になる。なお、化粧マグネット仕上げとは、一方の表面にマグネットを配置した壁紙や、化粧板、化粧紙を該マグネットにより石膏含有板に吸着させ、壁の表面を仕上げることをいう。
【0056】
また、本実施形態の石膏含有板は、厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしていることが好ましい。
【0057】
JIS A 6901(2014)の規格を満たしているとは、石膏含有板の厚さが9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、16.0mm以上16.5mm以下、18.0mm以上18.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、25.0mm以上25.5mm以下のいずれかの範囲に属していることを意味する。
【0058】
これは、石膏含有板の厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしている場合、石膏含有板の厚さが、通常用いられている石膏系建材の厚さと同様の規格を満たしていることになる。このため、例えば本実施形態の石膏含有板と、通常の石膏系建材とを同時に用いて壁等を形成した場合でも、厚さの調整等を行うことなく、用いた石膏系建材の種類による凹凸のない面一な壁、すなわち平坦な壁を容易に形成することができ、好ましいからである。
【0059】
石膏含有板の厚さtは、より一般的に用いられている石膏系建材と同様に、9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、のいずれかの範囲に属していることがより好ましい。
【0060】
石膏含有板の厚さは、JIS A 6901(2014)に規定された方法により評価を行うことができる。
【0061】
本実施形態の石膏含有板は、準不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、本実施形態の石膏含有板は、準不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、準不燃とは、建築基準法施工令第1条第5号で規定されている。準不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。
【0062】
また、本実施形態の石膏含有板は、不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、不燃とは、建築基準法第2条第9号、及び建築基準法施工令108条の2で規定されている。不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。建築基準法の内装制限によって、建物の用途や規模により使用できる建築材料が準不燃材料か不燃材料と決められている。本実施形態の石膏含有板は、使用する建物が要求される内装制限に適応することができる、すなわち準不燃材料にもなるし、不燃材料にもなるので、いかなる用途や規模の建物においても使用できる。
【0063】
本実施形態の石膏含有板が、準不燃、または不燃の性能を満たすための具体的な方法は特に限定されるものではない。例えば磁性材料等の石膏含有板の材料について燃えにくい材料を選択することにより、準不燃、不燃の性能を満たす石膏含有板とすることができる。
【0064】
既述の様に、本実施形態の石膏含有板は、磁性材料を含有することにより、マグネット等の磁性体を吸着することが可能である。マグネットの吸着力については特に限定されるものではないが、例えば、以下のマグネット吸着試験の特性を満たすことが好ましい。
【0065】
まず図2に示す様に、本実施形態の石膏含有板21を、主表面である一方の表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、一方の表面21aにA4用紙23を1枚貼り付けた場合に、A4用紙が落下しない吸着力を有することが好ましい。
【0066】
また、石膏含有板の主表面に壁紙を配置した場合にも同様の特性を有することがより好ましい。すなわち、一方の表面21aに壁紙が施工された石膏含有板21を、一方の表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、一方の表面21aにA4用紙23を1枚貼り付けた場合に、A4用紙23が落下しない吸着力を有することが好ましい。
【0067】
第2の端部領域にも磁性材料を偏在させた場合には、第2の端部領域側の主表面である他方の表面についても同様にマグネット吸着試験を実施した際に、上述の一方の表面と同様の吸着力を示すことが好ましい。
【0068】
なお、石膏含有板の主表面に壁紙を配置し、マグネット吸着試験を実施する場合、壁紙としては、例えば汎用的に使用される厚さ0.3mmの壁紙を用いることができる。壁紙としては例えばビニールクロス等を用いることができる。
【0069】
また、上述のいずれのマグネット吸着試験においても、A4用紙としては、厚さ0.09mm、質量64g/mのA4用紙を好ましく用いることができる。また、本マグネット吸着試験に限らず、本明細書において、A4用紙としては上記厚さ、質量を有するA4用紙を好ましく用いることができる。
【0070】
また、マグネット22と、A4用紙23との位置は特に限定されないが、マグネット22の中心と、A4用紙23の上端との間の距離Lは3cmであることが好ましく、マグネット22の中心は、A4用紙23の幅方向の中央に配置されていることが好ましい。
【0071】
以上に本実施形態の石膏含有板について説明してきたが、本実施形態の石膏含有板は、磁性材料を含有しているため、マグネットを吸着することができる。そして、本実施形態の石膏含有板は、石膏コアを厚さ方向に沿って、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域とした場合に、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多くなっている。すなわち、本実施形態の石膏含有板では、該石膏含有板が含む石膏コアにおいて、磁性材料を表面側に偏在させることで、磁性材料の含有量を抑制しつつも、マグネットを吸着可能な石膏含有板とすることができる。
【0072】
さらに、本実施形態の石膏含有板によれば、石膏コアに磁性材料を偏在させているのみであるため、容易に切断等を行い、自由な形状に加工することができる。
【0073】
また、従来用いられていた鉄板を表面に配置、固定した石膏系建材では、該鉄板のために、ビスや釘を打つことが困難になるため、石膏含有板の留め付けが困難になるという問題があった。さらには、壁紙、塗装による仕上げを行う際に、壁紙や塗料との接着性が低下する等の問題があった。
【0074】
一方、本実施形態の石膏含有板によれば、該石膏含有板の石膏コア内に磁性材料を配置しているため、釘やビス等も容易に打つことができる。さらに、壁紙や、塗料との接着性も十分に高いものとすることができる。
[石膏含有板の製造方法]
次に、本実施形態の石膏含有板の製造方法の一構成例について説明する。本実施形態の石膏含有板の製造方法により、既述の石膏含有板を製造することができる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
(第1の構成例)
本実施形態の石膏含有板の製造方法の第1の構成例は、以下の工程を有することができる。
少なくとも焼石膏、及び水を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程。
石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程。
成形工程で得られた成形体を硬化させる硬化工程。
【0075】
そして、成形工程において、成形体の表面側に磁性材料を配置することができる。
【0076】
以下、各工程について説明する。
【0077】
まず、混練工程について説明する。
【0078】
混練工程では、焼石膏、及び水を含有する原料を混練することができる。
【0079】
ここで、原料に含まれる焼石膏は硫酸カルシウム・1/2水和物ともいい、水硬性を有する無機組成物である。本実施形態の石膏含有板の製造方法で用いる焼石膏としては、天然石膏、副産石膏及び排煙脱硫石膏等の単独若しくは混合した石膏を大気中又は水中(蒸気中を含む)で焼成して得られるα型、β型焼石膏のいずれか単独、若しくは両者の混合品を使用できる。また、本実施形態の石膏含有板の製造方法で用いる焼石膏は、焼石膏を得る際に微量に生成するIII型無水石膏を含んでいても問題ない。
【0080】
なお、α型焼石膏は天然石膏等の二水石膏をオートクレーブを用い、水中又は水蒸気中で加圧焼成する必要がある。また、β型焼石膏は天然石膏等の二水石膏を大気中で常圧焼成することにより製造できる。
【0081】
次に、石膏スラリーを調製する際に添加する水について説明する。
【0082】
焼石膏等を混練して石膏スラリーとするため、水を添加することができる。石膏スラリーを形成する際の水の添加量は特に限定されるものではなく、要求される流動性等に応じて任意の添加量とすることができる。
【0083】
石膏スラリーの原料は、ここまで説明した焼石膏、水以外にも任意の成分を含有することができる。
【0084】
例えば、石膏スラリーを形成する際には泡を添加することができる。泡の添加量を調整することにより得られる石膏含有板の比重を所望の範囲とすることができる。
【0085】
石膏スラリーを形成する際に泡を添加する方法は特に限定されず、任意の方法により添加することができる。例えば予め発泡剤(起泡剤)を水(泡形成用の水)に添加し、空気を取り込みながら撹拌することで泡を形成し、形成した泡を、焼石膏や水(石膏スラリーの練水)と一緒に混合することにより、泡を添加した石膏スラリーを形成できる。または、焼石膏と水等とを予め混合して形成した石膏スラリーに、形成した泡を添加することにより、泡を添加した石膏スラリーとすることもできる。
【0086】
泡を形成する際に使用する発泡剤としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキル硫酸ソーダ、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などが挙げられる。
【0087】
泡の添加量は特に限定されるものではなく、作製する石膏含有板に要求される比重に応じて任意に選択することができる。
【0088】
また、原料はその他に、石膏含有板で説明した各種任意の成分や、澱粉やポリビニルアルコール等の、被覆材と石膏コアとの接着性を向上させる接着性向上剤や、ガラス繊維等の無機繊維及び軽量骨材、バーミキュライト等の耐火材、凝結調整剤、減水剤、スルホコハク酸塩型界面活性剤等の泡径調整剤、シリコーンやパラフィン等の撥水剤等の従来から石膏硬化体の原料に添加される各種添加剤を含有することもできる。
【0089】
原料を混練し、石膏スラリーを調製する際、原料を構成する全ての成分を同時に混練してもよいが、混練を複数回に分けて実施することもできる。例えば、原料のうち固体成分を混合、混練して石膏組成物を形成した後、得られた石膏組成物に原料のうちの水等の液体成分を添加しさらに混練を行い、石膏スラリーとすることもできる。
【0090】
なお、原料を混練する手段は特に限定されるものではなく、例えばミキサー等を用いることができる。
【0091】
得られた石膏スラリーは成形工程で、所望の形状に成形することができる。具体的には、石膏含有板とするため、例えば板状形状となるように成形することができる。
【0092】
ここで、石膏ボードを製造する際の混練工程、成形工程、硬化工程の構成例について図3を用いて説明する。図3は、石膏ボードを成形する装置の構成例を部分的且つ概略的に示す側面図である。
【0093】
図中右側から左側へと表面材である表面カバー原紙(ボード用原紙)31が、生産ラインに沿って搬送される。
【0094】
ミキサー32は、搬送ラインと関連する所定の位置、例えば、搬送ラインの上方または横に配置することができる。そして、単一のミキサー32において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる(混練工程)。
【0095】
なお、既述のように、焼石膏等の固体は予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー32に供給することもできる。
【0096】
また、泡を石膏スラリーの分取口321、322、325より添加し、泡の添加量を調整することにより任意の密度の石膏スラリーとすることができる。例えば泡の添加量を調整することで、密度の異なる第1の石膏スラリー33と、第2の石膏スラリー34とを調製することができる。
【0097】
そして、得られた第1の石膏スラリー33を、送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙(ボード用原紙)31及び裏面カバー原紙(ボード用原紙)36上に供給する。
【0098】
ここで、ロールコーター35は、塗布ロール371、受けロール372及び粕取りロール373を有することができる。表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上に形成される。また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。なお、図3ではロールコーター35を用いて第1の石膏スラリー33を表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36に塗布する例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。例えば、ロールコーター35を用いて第1の石膏スラリー33を表面カバー原紙31、または裏面カバー原紙36のいずれか一方のみに塗布してもよい。また、表面カバー原紙31には搬送方向と平行な複数の刻線をその幅方向の端部近傍に設けておくことができ、表面カバー原紙31を上記刻線に沿って折り曲げて、後述する第2の石膏スラリー34の側面、および上面の一部を覆うように構成することもできる。この場合、係る第2の石膏スラリー34の側面、および上面の一部にのみ第1の石膏スラリー33の薄層を配置するように、第1の石膏スラリー33を表面カバー原紙31の側端部のみに配置することもできる。
【0099】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、ミキサー32から管路326を通じて第2の石膏スラリー34が供給される。
【0100】
そして、石膏スラリーを成形機39で成形し、成形体を形成することができる(成形工程)。次いで、成形体を搬送する過程で、後述する石膏スラリーを水和硬化させる硬化工程を実施できる。
【0101】
図3では1台のミキサー32により第1の石膏スラリー33と、第2の石膏スラリー34と、を製造した例を示したが、ミキサーを2台設け、各ミキサーで第1の石膏スラリー33と、第2の石膏スラリー34と、を製造してもよい。
【0102】
また、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーと、を用いる形態に限定されるものではなく、例えば一種類の密度の石膏スラリーを製造し、これをボード用原紙上に供給する形態であっても良い。
【0103】
具体的には例えば、連続して搬送される表面カバー原紙(ボード用原紙)上に所定の密度とした石膏スラリーを供給、堆積する。そして、当該石膏スラリーを巻き込むように下紙をその両端縁部にそれぞれつけられた刻線に沿って折り込む。この際、石膏スラリーの層の上に同速で搬送される裏面カバー原紙(ボード用原紙)を重ねる。次いで、石膏ボードの厚みと幅とを決定する成形機を通過させて成形する。以上の手順により石膏ボードを成形することもできる。
【0104】
そして、成形工程では、成形体の表面側に磁性材料を配置することができる。なお、ここでいう成形体の表面側とは、図1に示した石膏コアとした場合の一方の表面11と、他方の表面12とのいずれか一方、または両方を意味する。
【0105】
成形体の表面側に磁性材料を配置する具体的な方法は特に限定されない。例えば表面カバー原紙31の石膏スラリーと接する側の面31A、裏面カバー原紙36の石膏スラリーと接する側の面36Aのいずれか一方、もしくは両方に磁性材料を予め配置しておく方法が挙げられる。カバー原紙の石膏スラリーと接する側の面に磁性材料を予め配置しておき、上述の様にカバー原紙間に石膏スラリーを配置、成形することで、成形体の表面側に磁性材料を配置することができる。カバー原紙の石膏スラリーと接する面に磁性材料を配置する方法は特に限定されないが、磁性材料が粉末形状を有する場合には、磁性材料を溶媒や、石膏スラリー等に分散させて塗布する方法を用いることができる。また、磁性材料がシート形状を有する場合には、カバー原紙の石膏スラリーと接する面に、該磁性材料を貼り付ける方法を用いることができる。
【0106】
また、成形体の表面側に磁性材料を配置する方法としては、例えば既述の第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加する方法が挙げられる。第1の石膏スラリー33は、既述の様に表面カバー原紙31、裏面カバー原紙36上に供給し、ロールコーター35により塗布することができる。このため、第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加しておくことで、成形体の表面側に磁性材料が配置されることになる。第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加する場合において、例えば表面カバー原紙31、及び裏面カバー原紙36のいずれか一方に供給する第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加することもできる。なお、複数の手段を併用することもでき、例えばカバー原紙の石膏スラリーと接する面に磁性材料を配置し、かつ第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加しておくこともできる。
【0107】
第1の石膏スラリー33に磁性材料を添加する具体的な方法は特に限定されないが、例えば分取口321、322のいずれか一方、もしくは両方において、ミキサー32で製造した石膏スラリーに磁性材料を添加する方法が挙げられる。また、ミキサー32とは別にミキサーを設け、焼石膏と、磁性材料と、水とを含む原料を混練する、もしくはミキサー32で製造した石膏スラリーに磁性材料を添加し、再混練することで、磁性材料を含む石膏スラリーを製造することもできる。なお、磁性材料を添加する際に、例えば泡等のその他の添加成分を併せて添加することもできる。そして、係る石膏スラリーを第1の石膏スラリー33として、カバー原紙上に供給することもできる。
【0108】
磁性材料としては、石膏含有板で既述の材料を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0109】
なお、ここでは、石膏ボードを例に説明したが、表面材であるボード用原紙をガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)や、ガラスマット等に変更し、これを表面に、若しくは表面近くに埋没させるように配置するなどして、各種石膏含有板を製造することもできる。
【0110】
次に、石膏スラリーを水和硬化させる硬化工程を実施できる。
【0111】
硬化工程は、石膏スラリー中の焼石膏(半水石膏)が、水和反応により二水石膏の針状結晶が生じて凝結、凝固することにより実施できる。このため、成形工程で形成した成形体内で、石膏スラリー中に含まれる焼石膏と水との間で反応し、焼石膏の水和反応が進行することにより硬化工程を実施することができる。
【0112】
また、本実施形態の石膏含有板の製造方法には、さらに必要に応じて、粗切断工程や、乾燥工程、裁断工程、積込工程等の任意の工程を設けることができる。
【0113】
例えば上記成形工程の後、硬化工程の進行中または硬化工程が終了した後に、成形工程で成形した成形体を粗切断カッターにより粗切断する粗切断工程を実施してもよい。粗切断工程では粗切断カッターにより、成形工程で形成された連続的な成形体を所定の長さに切断することができる。
【0114】
また、成形工程で成形した成形体、または粗切断工程で粗切断された成形体について余剰な水分を乾燥させる乾燥工程を実施できる。なお、乾燥工程には、硬化工程が終了した成形体を供給することができる。乾燥工程では乾燥機を用いて成形体を強制乾燥することにより実施できる。
【0115】
乾燥機により成形体を強制乾燥する方法は特に限定されるものではないが、例えば成形体の搬送経路上に乾燥機を設け、成形体が乾燥機内を通過することにより連続的に成形体を乾燥することができる。また、乾燥機内に成形体を搬入しバッチごとに成形体を乾燥することもできる。
【0116】
またさらに、例えば成形体を乾燥した後に、所定の長さの製品に裁断する裁断工程や、得られた石膏含有板をリフター等により積み重ね、倉庫内に保管したり、出荷したりするためにトラック等へ積み込む積込工程等を実施することができる。
【0117】
以上に説明した本実施形態の石膏含有板の製造方法によれば、成形工程において、成形体の表面側に磁性材料を配置することで、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。
(第2の構成例)
本実施形態の石膏含有板の製造方法の第2の構成例は、以下の工程を有することができる。
少なくとも焼石膏、水、及び磁性材料を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程。
石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程。
成形工程で得られた成形体を硬化させる硬化工程。
そして、混練工程において、石膏スラリーの粘度を5cps以上100cps以下とし、石膏スラリーが流動性を概ね失うまでの時間である石膏スラリーの凝結時間を30秒以上180秒以下とすることができる。
【0118】
以下に各工程について説明する。なお、第1の構成例と同様にして実施できる点については説明を一部省略する。
【0119】
まず、混練工程について説明する。
【0120】
混練工程では、焼石膏、水、及び磁性材料を含有する原料を混練することができる。
【0121】
ここで、原料に含まれる焼石膏、磁性材料、水について第1の構成例で説明したものと同様のものを用いることができるため、ここでは説明を省略する。ただし、焼石膏や水と混練する磁性材料としては、粉末形状を有するものを好適に用いることができる。
【0122】
また、原料は上述の焼石膏等に加えてさらに各種添加剤を含有することもできる。各種添加剤の例については、第1の構成例で説明したため、ここでは説明を省略する。
【0123】
そして、本構成例では、混練工程において、石膏スラリーの粘度を5cps以上100cps以下となるように混練することができる。石膏スラリーの粘度が100cps以下となるように混練することで、成形工程で成形体を形成後、搬送している過程で石膏スラリー中の磁性材料が自重により下側、すなわち、図3に示した石膏含有板の製造装置であれば表面カバー原紙31側に移動することができる。このため、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。
【0124】
ただし、石膏スラリーの粘度が低すぎると成形体を形成することが困難になる恐れがあることから、石膏スラリーの粘度は5cps以上であることが好ましい。
【0125】
なお、上記石膏スラリーの粘度は、例えばブルックフィールド粘度計(B型粘度計)により測定を行うことができる。該石膏スラリーの粘度は、例えば原料をミキサー等で混練した直後の、すなわち混練工程直後の石膏スラリーの粘度であることが好ましい。本明細書において、石膏スラリーの粘度は他の部分においても同様に上記粘度計により測定することができる。
【0126】
石膏スラリーの粘度を調整する方法は特に限定されないが、例えば水の添加量や、添加剤の添加等により調整することができる。
【0127】
なお、第1の構成例で図3を用いて説明した様に、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとを調製する場合には、少なくとも石膏含有板の中央部を構成することになる第2の石膏スラリーについては、粘度が上記範囲にあることが好ましい。第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとについて、共に粘度を上記範囲とすることもできる。
【0128】
第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとで磁性材料の含有量が異なるように構成することもできる。具体的には例えば第1の石膏スラリーの方が、第2の石膏スラリーよりも単位体積当たりの磁性材料の含有量が多くなるように石膏スラリーを調製することもできる。このように構成することで、より確実に、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。ただし、第1の端部領域の磁性材料の含有量を、第2の端部領域の磁性材料の含有量よりも多くする場合には、例えば表面カバー原紙31側に供給する第1の石膏スラリーについてのみ磁性材料の含有量が第2の石膏スラリーの磁性材料の含有量よりも多くなるように構成することができる。この場合、裏面カバー原紙36側に供給する第1の石膏スラリーには磁性材料を添加しないか、第2の石膏スラリーと同程度の磁性材料の含有量とすることもできる。
【0129】
なお、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーと、を用いる形態に限定されるものではなく、例えば一種類の石膏スラリーを製造し、これをボード用原紙上に供給する形態であっても良い。
【0130】
ここで、石膏ボードを製造する際の、混練工程、成形工程、硬化工程の構成例について図3を用いて説明する。なお、第1の構成例でも既に説明しているため、重複する説明は一部省略する。
【0131】
本構成例の石膏含有板の製造方法では、ミキサー32において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、水と、磁性材料と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる(混練工程)。この際、既述の様に石膏スラリーの粘度が既述の範囲となるように各成分の割合等を調整することが好ましい。
【0132】
そして、得られた第1の石膏スラリー33を、送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙(ボード用原紙)31及び裏面カバー原紙(ボード用原紙)36上に供給する。なお、第1の構成例の方法と併用することもできる。具体的には、表面カバー原紙31の石膏スラリーと接する側の面31A、裏面カバー原紙36の石膏スラリーと接する側の面36Aのいずれか一方、もしくは両方に磁性材料を予め配置しておくこともできる。また、既述の様に第1の石膏スラリーに第2の石膏スラリーよりも単位体積当たりの磁性材料の含有量が多くなるように添加しておくこともできる。
【0133】
表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上に形成される。また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。
【0134】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、ミキサー32から管路326を通じて第2の石膏スラリー34が供給される。
【0135】
そして、成形機39で成形し、成形体を形成することができる(成形工程)。次いで、成形体を搬送する過程で、石膏スラリーを水和硬化させる硬化工程を実施できる。
【0136】
硬化工程は、石膏スラリー中の焼石膏(半水石膏)が、水和反応により二水石膏の針状結晶が生じて凝結、凝固することにより実施できる。このため、成形工程で形成した成形体内で、石膏スラリー中に含まれる焼石膏と水との間で反応し、焼石膏の水和反応が進行することにより硬化工程を実施することができる。
【0137】
本構成例では、石膏スラリーの凝結時間を30秒以上180秒以下とすることが好ましい。混練工程において、既述の粘度を有する石膏スラリーを調製することで、成形体内で磁性材料が自重により、下側、すなわち図3に示した例の場合、表面カバー原紙31側に移動しやすくなっている。ただし、石膏スラリーの凝結時間が短時間になると、磁性材料の移動が十分になされていない段階で硬化体を形成する恐れがある。そこで、成形体内で磁性材料が移動する時間を十分に確保する観点から、石膏スラリーの凝結時間は30秒以上であることが好ましく、45秒以上であることがより好ましい。ただし、硬化工程での凝結時間が過度に長くなると、生産性が低下する恐れがあることから、硬化工程での凝結時間は180秒以下であることが好ましく、165秒以下であることがより好ましい。
【0138】
凝結時間は、例えば成形体を搬送している際の周囲の雰囲気や、石膏スラリーに添加剤を添加することで調整することができる。
【0139】
なお、凝結時間とは、JIS R 9112(2015)で規定する凝結時間における始発時間を意味し、スラリーが流動性を概ね失うまでの時間を意味する。
【0140】
凝結時間の測定は、上述のJIS規格の凝結時間の始発時間の項目で規定されているように、例えば以下の手順で行うことができる。
まず、ガラス板上に内径78±5mm、高さ40.0±0.5mmの円筒型を配置し、評価の対象となる石膏スラリーを流し込む。次いで、該石膏スラリーの中央に長さ45mm、直径2mmであり、その頭を平らに切断した金属針を、ガラス板と垂直に、かつ上記平らに切断した側が石膏スラリー内に位置するように配置する。そして、石膏スラリーを調製するために石膏と水とが接触してから、金属針が上記円筒型に入れた石膏スラリーの供試体の底面からおよそ1mmの高さに止まるようになるまでの時間を測定し、これを始発時間とする。なお、用いる金属針は、石膏スラリー内に平らに切断した側を配置した場合に下降する可動部の全質量が300±1gとなっている。
【0141】
本明細書において石膏スラリーの凝結時間は同様の意味を有する。
【0142】
ここでは、石膏ボードを例に説明したが、表面材であるボード用原紙をガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)や、ガラスマット等に変更し、これを表面に、若しくは表面近くに埋没させるように配置するなどして、各種石膏含有板を製造することもできる。
【0143】
硬化工程以降は第1の構成例で説明した各種任意の工程を実施することもできる。
【0144】
以上に説明した本実施形態の石膏含有板の製造方法によれば、所定の粘度を有する石膏スラリーを調製し、硬化工程における凝結時間を一定時間以上とすることで、成形体内で磁性材料が自重により移動することができ、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。
(第3の構成例)
本実施形態の石膏含有板の製造方法の第3の構成例は、以下の工程を有することができる。
少なくとも焼石膏、水、及び磁性材料を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程。
石膏スラリーを成形し、成形体を形成する成形工程。
石膏スラリーを、成形体とした場合の少なくとも一方の表面と対向するように磁石が配置された搬送経路上を搬送する磁性材料偏在化工程。
磁性材料偏在化工程を終えた成形体を硬化させる硬化工程。
【0145】
以下、各構成例について、図3を用いて説明する。
【0146】
以下に各工程について説明する。なお、第1の構成例と同様にして実施できる点については説明を一部省略する。
【0147】
まず、混練工程について説明する。
【0148】
混練工程では、焼石膏、水、及び磁性材料を含有する原料を混練することができる。
【0149】
ここで、原料に含まれる焼石膏、磁性材料、水について第1の構成例で説明したものと同様のものを用いることができるため、ここでは説明を省略する。ただし、焼石膏や水と混練する磁性材料としては、粉末形状を有するものを好適に用いることができる。
【0150】
また、原料は上述の焼石膏等に加えてさらに各種添加剤を含有することもできる。各種添加剤の例については、第1の構成例で説明したため、ここでは説明を省略する。
【0151】
本構成例で調製する石膏スラリーの粘度は特に限定されないが、例えば第2の構成例と同様に、石膏スラリーの粘度を5cps以上100cps以下となるように混練することもできる。また、第1の構成例で図3を用いて説明した様に、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとを調製する場合には、石膏含有板の中央部を構成することになる第2の石膏スラリーについては、粘度が上記範囲となるように調整することもできる。第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとについて、共に粘度を上記範囲とすることもできる。
【0152】
また、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーとで磁性材料の含有量が異なるように構成することもできる。具体的には例えば第1の石膏スラリーの方が、第2の石膏スラリーよりも磁性材料の含有量が多くなるように石膏スラリーを調製することもできる。このように構成することで、より確実に、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。ただし、第1の端部領域の磁性材料の含有量を、第2の端部領域の磁性材料の含有量よりも多くする場合には、例えば表面カバー原紙31側に供給する第1の石膏スラリーのみ磁性材料の含有量が第2の石膏スラリーの磁性材料の含有量よりも多くなるように構成することもできる。この場合、裏面カバー原紙36側に供給する第1の石膏スラリーには磁性材料を添加しないか、第2の石膏スラリーと同程度の磁性材料の含有量とすることもできる。
【0153】
なお、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーと、を用いる形態に限定されるものではなく、例えば一種類の石膏スラリーを製造し、これをボード用原紙上に供給する形態であっても良い。
【0154】
ここで、石膏ボードを製造する際の、混練工程、成形工程、磁性材料偏在化工程、硬化工程の構成例について図3を用いて説明する。なお、第1、第2の構成例でも既に説明しているため、重複する説明は一部省略する。
【0155】
本構成例の石膏含有板の製造方法では、ミキサー32において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、水と、磁性材料と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる(混練工程)。この際、既述の様に石膏スラリーの粘度が既述の範囲となるように各成分の割合等を調整することもできる。
【0156】
そして、得られた第1の石膏スラリー33を、送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙(ボード用原紙)31及び裏面カバー原紙(ボード用原紙)36上に供給する。なお、第1の構成例の方法と併用することもできる。具体的には、表面カバー原紙31の石膏スラリーと接する側の面31A、裏面カバー原紙36の石膏スラリーと接する側の面36Aのいずれか一方、もしくは両方に磁性材料を予め配置しておくこともできる。また、既述の様に第1の石膏スラリーに第2の石膏スラリーよりも単位体積当たりの磁性材料の含有量が多くなるように添加しておくこともできる。
【0157】
表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上に形成される。また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。
【0158】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、ミキサー32から管路326を通じて第2の石膏スラリー34が供給される。
【0159】
そして、成形機39で成形し、成形体391を形成することができる(成形工程)。次いで、石膏スラリーの成形体である成形体391の少なくとも一方の表面と対向するように磁石392A、392Bが配置された搬送経路上を搬送する磁性材料偏在化工程を実施することができる。
【0160】
成形体に含まれる石膏スラリーには既述の様に磁性材料が添加されている。そして、成形体391の搬送経路上に、成形体の少なくとも一方の面と対向するように磁石392A、392Bを配置しておくことで、成形体391内の磁性材料が、磁石392A、392Bと対向する面側へと引き寄せられることになる。このため、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる
図3では、成形体391の一方の面391A、及び他方の面391Bに対向するように磁石392A、392Bを設けた例を示しているが、例えば第1の端部領域側にのみ磁性材料を偏在させる場合には、磁石392Aのみを設けることもできる。
【0161】
磁石392A、392Bの種類は特に限定されるものではなく、永久磁石、電磁石いずれを用いることもできるが、容易に磁化した状態と、磁化していない状態とを切り替えることができるため、電磁石を用いることが好ましい。
【0162】
なお、図3では、成形体391の搬送方向に沿って、例えば成形体の一方の面391A側には1つの磁石392Aを設けた例を示しているが、係る形態に限定されず、成形体391の搬送方向に沿って2つ以上の磁石を配置することもできる。
【0163】
また、磁性材料偏在化工程は、成形工程の前に実施することもできる。例えば図3に示したように、成形機39よりも石膏スラリーの搬送方向上流側に、第1の石膏スラリー33及び第2の石膏スラリー34を含む石膏スラリーを成形し、成形体391とした場合の少なくとも一方の面391Aと対向するように、また必要に応じて他方の面391Bと対向するように、磁石392A´や磁石392B´を配置することができる。磁石392A´、392B´が配置された搬送経路上を、係る石膏スラリーを搬送することで、石膏スラリーに含まれていた磁性材料が、磁石392A´、392B´と対向する面側へと引き寄せられることになる。そして、磁性材料が偏在した状態の石膏スラリーが成形機39へと導入されることになるので、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。
【0164】
図3では、磁石392A´、392B´を設けた例を示しているが、例えば第1の端部領域側にのみ磁性材料を偏在させる場合には、磁石392A´のみを設けることもできる。
【0165】
磁石392A´、392B´についてもその種類は特に限定されるものではなく、永久磁石、電磁石いずれを用いることもできるが、容易に磁化した状態と、磁化していない状態とを切り替えることができるため、電磁石を用いることが好ましい。
【0166】
図3では、石膏スラリーの搬送方向に沿って、石膏スラリーを成形した場合の成形体391の一方の面391A側に1つの磁石392A´を設けた例を示しているが、係る形態に限定されず、石膏スラリーの搬送方向に沿って石膏スラリーの同じ側に2つ以上の磁石を配置することもできる。
【0167】
なお、既述の磁石392A、392Bと共に、磁石392A´、392B´を設けることもできる。すなわち成形工程の前後で磁性材料偏在化工程を実施することもできる。
【0168】
磁性材料偏在化工程の後は、搬送する過程で、石膏スラリーを水和硬化させる硬化工程を実施できる。
【0169】
硬化工程は、石膏スラリー中の焼石膏(半水石膏)が、水和反応により二水石膏の針状結晶が生じて凝結、凝固することにより実施できる。このため、成形工程で形成した成形体内で、石膏スラリー中に含まれる焼石膏と水との間で反応し、焼石膏の水和反応が進行することにより硬化工程を実施することができる。
【0170】
石膏スラリーの凝結時間は特に限定されないが、例えば混練工程において、第2の構成例の場合と同様に石膏スラリーの粘度を調整した場合には、第2の構成例の場合と同様に、例えば石膏スラリー(硬化体)の凝結時間を30秒以上180秒以下とすることもできる。
【0171】
なお、磁性材料偏在化工程を実施している間にも徐々に硬化反応は進行し、両者を厳密に区別することは困難であることから、既述の磁性材料偏在化工程と、硬化工程とは、同時に実施することもできる。
【0172】
ここでは、石膏ボードを例に説明したが、表面材であるボード用原紙をガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)や、ガラスマット等に変更し、これを表面に、若しくは表面近くに埋没させるように配置するなどして、各種石膏含有板を製造することもできる。
【0173】
硬化工程以降は第1の構成例で説明した各種任意の工程を実施することもできる。
【0174】
以上に説明した本実施形態の石膏含有板の製造方法によれば、磁性材料偏在化工程を実施することで、成形体内で磁性材料が磁石からの磁力によりひきつけられ、移動することができ、石膏コアについて、第1の端部領域の磁性材料の含有量が、中央領域の磁性材料の含有量よりも多い石膏含有板とすることができる。
[磁性目地処理材]
次に、本実施形態の磁性目地処理材の一構成例について説明する。
【0175】
既述の石膏含有板を用いることで、マグネット等の磁性体を吸着できる壁等を形成することができるが、石膏含有板により壁等を形成した際に、石膏含有板間の境目にマグネットの吸着力が弱くなる部分が生じる場合がある。
【0176】
そこで、本実施形態の磁性目地処理材を用いて、石膏含有板間の目地処理を行うことで、石膏含有板間の境目にマグネットの吸着力が弱くなる部分が生じることを防ぐことができる。
【0177】
本実施形態の磁性目地処理材は、例えば鉄粉と、バインダーとを含有し、鉄粉の含有量を2.0g/cm以上とすることができる。
【0178】
これは、本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量が2.0g/cm以上の場合、十分な鉄粉を含有しているといえ、該目地処理材が固まった場合に十分なマグネットの吸着力を示し、好ましいからである。特にマグネットの吸着力を高める観点から、本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量は、2.5g/cm以上であることがより好ましい。
【0179】
本実施形態の磁性目地処理材の鉄粉の含有量の上限値は特に限定されるものではないが、目地処理材の性状を確保する観点から、例えば5.0g/cm以下であることが好ましい。
【0180】
本実施形態の磁性目地処理材に用いる鉄粉としては特に限定されないが、鉄粉が、酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉から選択された一種以上を含有することが好ましい。磁性目地処理材は通常流動性を有する状態で供給され、バインダーや、その他の添加剤との間で酸化等の反応が進行しやすいため、鉄粉の品質を安定させる観点から、鉄粉は酸化鉄粉であることがより好ましい。酸化鉄粉としては特に限定されないが、四酸化三鉄を好ましく用いることができる。
【0181】
また、本実施形態の磁性目地処理材は、その他に任意の成分を含有することもできる。本実施形態の磁性目地処理材は、例えば防錆剤を含有することができる。磁性目地処理材が防錆剤を含有することで、磁性目地処理材に含まれる鉄粉の酸化が進行し、変色したり、マグネットの吸着力に変化が生じたりすることを抑制することができる。
【0182】
磁性目地処理材が防錆剤をさらに含有する場合、磁性目地処理材は、防錆剤を鉄粉に対して0.1質量%以上の割合でさらに含有することが好ましく、0.3質量%以上の割合で含有することがより好ましい。
【0183】
本実施形態の磁性目地処理材が防錆剤を含有する場合、その含有量の上限値は特に限定されるものではないが、過度に添加しても防錆の効果に大きな変化はなく、また製造コストを勘案して、防錆剤は、例えば鉄粉に対して20質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0184】
防錆剤の種類は特に限定されるものではないが、防錆剤は、例えば水溶性またはエマルションの有機酸系防錆剤、キレート系防錆剤、有機酸アミン系防錆剤、脂肪酸系防錆剤、及び亜硝酸塩系防錆剤から選択された一種以上を含むことが好ましい。
【0185】
なお、磁性目地処理材は、その他にも任意の添加剤を含有することもでき、例えば磁性目地処理材の色味を調整するための顔料等を含有することもできる。
【0186】
本実施形態の磁性目地処理材によれば、鉄粉を含有するため、石膏含有板間の目地処理を行う際等に用いることで、壁等を構成する複数の石膏含有板間でマグネットの吸着力が低下することを抑制することができる。
【実施例
【0187】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
図3に示した装置を用いて石膏ボードを製造し、該石膏ボード中に含まれる磁性材料の含有量について評価を行った。実験例1は実施例となる。
【0188】
石膏ボードの作製手順について図3を用いて説明する。
【0189】
まず、石膏ボードの製造手順について説明する。
【0190】
図3中右側から左側へと表面カバー原紙(ボード用原紙)31を、生産ラインに沿って連続的に搬送する。なお、本実験例においてボード用原紙は、表面カバー原紙31、及び後述する裏面カバー原紙36ともに200g/mのものを用いた。
【0191】
単一のミキサー32において、焼石膏100質量部に対して凝結調整剤1質量部、減水剤0.3質量部、接着性向上剤0.5質量部、水80質量部の組成になるように混練して石膏スラリー(石膏泥漿)を調製した(混練工程)。
【0192】
そして、ミキサー32において得られた石膏スラリーについて、分取口321、322から送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上に供給した。
【0193】
この際、分取口322から取り出した石膏スラリーに対して、平均粒子径が70μmの水アトマイズ鉄粉を、石膏スラリーを調製する際に添加した焼石膏100質量部に対して80質量部の割合となるように添加、混合した。表面カバー原紙31上には、係る水アトマイズ鉄粉を添加した第1の石膏スラリー33を供給した。
【0194】
水アトマイズ鉄粉の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製 商品名:マイクロトラックHRA)を用いて評価した。
【0195】
表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上の全面に形成される。表面カバー原紙31には予め、搬送方向と平行な複数の刻線がその幅方向の端部近傍に設けられており、後述する成形機39近傍において、表面カバー原紙31の両側縁部分は係る刻線に沿って折り曲げられて、上側に延びてから内側に延びる。具体的には、表面カバー原紙31は上記刻線に沿って折り曲げられて、後述する第2の石膏スラリー34の側面、および上面の一部を覆うように構成される。
【0196】
また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。裏面カバー原紙36については表面カバー原紙31とは異なり折り曲げられない。
【0197】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。
【0198】
そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、及び裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、第2の石膏スラリー34が、管路326を通じて供給される。
【0199】
なお、分取口325では、石膏コアに泡を添加した。また、泡は発泡剤(主成分:アルキルエーテル硫酸塩)を発泡して作製した
そして、成形機39を通過することにより、表面カバー原紙31と、裏面カバー原紙36との間に、第1の石膏スラリー33、及び第2の石膏スラリー34により形成された層が配置された連続的な積層体が形成される。この際、石膏ボードの厚みが12.5mmとなるように成形した(成形工程)。
【0200】
得られた成形体は、搬送する過程で硬化させた(硬化工程)。そして、硬化すると共に図示しない粗切断カッターに至る。粗切断カッターは、連続的な積層体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、すなわち、石膏ボードの半製品が形成される。
【0201】
粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥されて余分な水分を除去した(乾燥工程)。その後、所定の長さの製品に裁断して石膏ボードを製造した。
【0202】
得られた石膏ボードの表面カバー原紙側の主表面である一方の表面が地面と垂直になるように立て、該一方の表面にマグネットを吸着させたところ、マグネットはずれず、得られた石膏ボードがマグネットを吸着していることを確認できた。
【0203】
なお、本実験例で得られた石膏ボードの、磁性材料である水アトマイズ鉄粉の単位面積当たりの含有量は1.0kg/mとなる。ここでは石膏ボードの表面カバー原紙31側の主表面である、一方の表面11(図1を参照)における単位面積当たりの磁性材料の含有量を意味する。
【0204】
得られた石膏ボードについて、石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0205】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を表1に示す。
【0206】
【表1】
表1に示した結果によると、第1の端部領域のみに磁性材料が含まれていることを確認できた。このため、磁性材料の使用量を抑制し、石膏ボード全体の重さやコストを抑制しつつも、マグネットを吸着することができる石膏ボードを得ることができた。
[実験例2]
図3に示した装置を用いて石膏ボードを製造し、該石膏ボード中に含まれる磁性材料の含有量について評価を行った。実験例2は実施例となる。
【0207】
石膏ボードの作製手順について図3を用いて説明する。
【0208】
まず、石膏ボードの製造手順について説明する。
【0209】
図3中右側から左側へと表面カバー原紙(ボード用原紙)31を、生産ラインに沿って連続的に搬送する。なお、本実験例においてボード用原紙は、表面カバー原紙31、及び後述する裏面カバー原紙36ともに200g/mのものを用いた。
【0210】
単一のミキサー32において、焼石膏100質量部に対して、実験例1と同じ水アトマイズ鉄粉が80質量部、凝結調整剤1質量部、減水剤0.3質量部、接着性向上剤0.5質量部、水80質量部の組成になるように混練して石膏スラリー(石膏泥漿)を調製した(混練工程)。なお、上述のように、石膏スラリーに減水剤を、焼石膏100質量部に対して0.3質量部となるように添加し、得られる石膏スラリーの粘度が50cpsになるように、凝結調整剤を焼石膏100質量部に対して1質量部となるように添加し、得られる石膏スラリーの凝結時間が60秒となるように調整した。
【0211】
なお、石膏スラリーの粘度はブルックフィールド粘度計(リオン社製、製品名VT04)で測定した。具体的には、図3中のミキサー32の管路326から排出された直後の石膏スラリーを容器で掬い、掬った直後の石膏スラリーの粘度が上記値になっていることを確認した。また、石膏スラリーの凝結時間は、JIS R 9112(2015)で規定する凝結時間における始発時間を意味しており、以下の手順により測定し、確認を行った。
まず、ガラス板上に内径78±5mm、高さ40.0±0.5mmの円筒型を配置し、調製した石膏スラリーを流し込んだ。次いで、該石膏スラリーの中央に長さ45mm、直径2mmであり、その頭を平らに切断した金属針を、ガラス板と垂直に、かつ上記平らに切断した側が石膏スラリー内に位置するように配置した。そして、石膏スラリーを調製するために石膏と水とが接触してから、金属針が上記円筒型に入れた石膏スラリーの供試体の底面からおよそ1mmの高さに止まるようになるまでの時間を測定し、これを凝結時間(始発時間)とした。なお、用いる金属針は、石膏スラリー内に平らに切断した側を配置した場合に下降する可動部の全質量が300±1gであった。
【0212】
そして、ミキサー32において得られた石膏スラリーについて、分取口321、322から送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上に供給した。
【0213】
表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上の全面に形成される。表面カバー原紙31には予め、搬送方向と平行な複数の刻線がその幅方向の端部近傍に設けられており、後述する成形機39近傍において、表面カバー原紙31の両側縁部分は係る刻線に沿って折り曲げられて、上側に延びてから内側に延びる。具体的には、表面カバー原紙31は上記刻線に沿って折り曲げられて、後述する第2の石膏スラリー34の側面、および上面の一部を覆うように構成される。
【0214】
また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。裏面カバー原紙36については表面カバー原紙31とは異なり折り曲げられない。
【0215】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。
【0216】
そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、及び裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、第2の石膏スラリー34が、管路326を通じて供給される。
【0217】
なお、分取口325では、石膏コアに泡を添加した。また、泡は発泡剤(主成分:アルキルエーテル硫酸塩)を発泡して作製した
そして、成形機39を通過することにより、表面カバー原紙31と、裏面カバー原紙36との間に、第1の石膏スラリー33、及び第2の石膏スラリー34により形成された層が配置された連続的な積層体が形成される。この際、石膏ボードの厚みが12.5mmとなるように成形した(成形工程)。
【0218】
得られた成形体は、搬送する過程で硬化させた(硬化工程)。そして、硬化すると共に図示しない粗切断カッターに至る。粗切断カッターは、連続的な積層体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、すなわち、石膏ボードの半製品が形成される。
【0219】
粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥されて余分な水分を除去した(乾燥工程)。その後、所定の長さの製品に裁断して石膏ボードを製造した。
【0220】
得られた石膏ボードの表面カバー原紙側の主表面である一方の表面が地面と垂直になるように立て、該一方の表面にマグネットを吸着させたところ、マグネットはずれず、得られた石膏ボードがマグネットを吸着していることを確認できた。
【0221】
なお、本実験例で得られた石膏ボードの、磁性材料である水アトマイズ鉄粉の単位面積当たりの含有量は1.0kg/mとなる。ここでは石膏ボードの表面カバー原紙31側の主表面である、一方の表面11(図1を参照)における単位面積当たりの磁性材料の含有量を意味する。
【0222】
得られた石膏ボードについて、石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0223】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を表1に示す。
【0224】
表1に示した結果によると、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例3]
図3に示した装置を用いて石膏ボードを製造し、該石膏ボード中に含まれる磁性材料の含有量について評価を行った。実験例3は実施例となる。
【0225】
石膏ボードの作製手順について図3を用いて説明する。
【0226】
まず、石膏ボードの製造手順について説明する。
【0227】
図3中右側から左側へと表面カバー原紙(ボード用原紙)31を、生産ラインに沿って連続的に搬送する。なお、本実験例においてボード用原紙は、表面カバー原紙31、及び後述する裏面カバー原紙36ともに200g/mのものを用いた。
【0228】
単一のミキサー32において、焼石膏100質量部に対して、実験例1と同じ水アトマイズ鉄粉が80質量部、凝結調整剤1質量部、減水剤0.3質量部、接着性向上剤0.5質量部、水80質量部の組成になるように混練して石膏スラリー(石膏泥漿)を調製した(混練工程)。
【0229】
そして、ミキサー32において得られた石膏スラリーについて、分取口321、322から送出管323、324を通じて、ロールコーター35の搬送方向における上流側で表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上に供給した。
【0230】
表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36上の第1の石膏スラリー33は、それぞれ、ロールコーター35の延展部に至り、延展部で延展される。第1の石膏スラリー33の薄層が、表面カバー原紙31上の全面に形成される。表面カバー原紙31には予め、搬送方向と平行な複数の刻線がその幅方向の端部近傍に設けられており、後述する成形機39近傍において、表面カバー原紙31の両側縁部分は係る刻線に沿って折り曲げられて、上側に延びてから内側に延びる。具体的には、表面カバー原紙31は上記刻線に沿って折り曲げられて、後述する第2の石膏スラリー34の側面、および上面の一部を覆うように構成される。
【0231】
また、同様に第1の石膏スラリー33の薄層が、裏面カバー原紙36上に形成される。裏面カバー原紙36については表面カバー原紙31とは異なり折り曲げられない。
【0232】
表面カバー原紙31は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙36は、転向ローラ38によって表面カバー原紙31の搬送ライン方向に転向される。
【0233】
そして、表面カバー原紙31及び裏面カバー原紙36の両方は、同方向に搬送されて成形機39に達する。ここで、表面カバー原紙31、及び裏面カバー原紙36の上に形成された薄層の間に、第2の石膏スラリー34が、管路326を通じて供給される。
【0234】
なお、分取口325では、石膏コアに泡を添加した。また、泡は発泡剤(主成分:アルキルエーテル硫酸塩)を発泡して作製した
そして、成形機39を通過することにより、表面カバー原紙31と、裏面カバー原紙36との間に、第1の石膏スラリー33、及び第2の石膏スラリー34により形成された層が配置された連続的な積層体が形成される。この際、石膏ボードの厚みが12.5mmとなるように成形した(成形工程)。
【0235】
得られた成形体の搬送経路上に、図3に示したように配置した磁石392Aに電力を供給し、磁化させた。これにより、石膏スラリーを成形した成形体を、成形体の一方の表面、すなわち表面カバー原紙31側の表面と対向するように、磁石392Aが配置された搬送経路上を搬送した(磁性材料偏在化工程)
得られた成形体は、搬送する過程で硬化させた(硬化工程)。そして、硬化すると共に図示しない粗切断カッターに至る。粗切断カッターは、連続的な積層体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、すなわち、石膏ボードの半製品が形成される。
【0236】
粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥されて余分な水分を除去した(乾燥工程)。その後、所定の長さの製品に裁断して石膏ボードを製造した。
【0237】
得られた石膏ボードの表面カバー原紙側の主表面である一方の表面が地面と垂直になるように立て、該一方の表面にマグネットを吸着させたところ、マグネットはずれず、得られた石膏ボードがマグネットを吸着していることを確認できた。
【0238】
なお、本実験例で得られた石膏ボードの、磁性材料である水アトマイズ鉄粉の単位面積当たりの含有量は1.0kg/mとなる。ここでは石膏ボードの表面カバー原紙31側の主表面である、一方の表面11(図1を参照)における単位面積当たりの磁性材料の含有量を意味する。
【0239】
得られた石膏ボードについて、石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0240】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を表1に示す。
【0241】
表1に示した結果によると、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例4-1~実験例4-6]
石膏スラリーを調製する際、水アトマイズ鉄粉に替えて平均粒子径が70μmの還元鉄粉を用い、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表2に示した値となるように、還元鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例3と同様にして石膏ボードを製造した。なお、磁性材料の単位面積当たりの含有量とは、石膏ボードの表面カバー原紙31側の主表面である、一方の表面11(図1を参照)における単位面積当たりの磁性材料の含有量を意味する。以下の他の実験例においても同様である。
【0242】
実験例4-1~実験例4-6はいずれも実施例となる。
【0243】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、以下のマグネット吸着試験に供した。
【0244】
マグネット吸着試験は図2に示すように、まず、各実験例で作製した石膏含有板21、すなわち石膏ボードを、表面カバー原紙側の主表面である一方の表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、一方の表面21aにA4用紙23を貼り付けた。そして、A4用紙23が落下するまで、A4用紙23の枚数を増やしていき、A4用紙23が落下した際の枚数-1枚を、該石膏ボードのマグネット吸着力として評価した。
【0245】
なお、マグネット吸着試験で用いたマグネットは、図4に示すように、該マグネット41を厚さ1mmの鉄板42に吸着させ、マグネット41に接続しておいたフック411を、図示しないオートグラフにより3mm/secの速度でブロック矢印Aに沿って引き上げ、最大強度を測定した。そして、該最大強度を、対1mm鉄板への吸着力とし、本実験例では同じマグネットを用いた。
【0246】
また、図2に示したマグネット吸着試験を実施する際、マグネット22の中心と、A4用紙23の上端との間の距離Lが3cmであり、マグネット22の中心が、A4用紙23の幅方向の中央に位置するようにマグネットを配置した。
【0247】
そして、A4用紙23としては、厚さ0.09mm、質量64g/mのA4用紙を用いた。
【0248】
評価結果を表2に示す。
【0249】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0250】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例5-1~実験例5-6]
石膏スラリーを調製する際、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表2に示した値となるように、水アトマイズ鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例3と同様にして石膏ボードを製造した。
【0251】
実験例5-1~実験例5-6はいずれも実施例となる。
【0252】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0253】
評価結果を表2に示す。
【0254】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0255】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例6-1~実験例6-6]
石膏スラリーを調製する際、水アトマイズ鉄粉に替えて平均粒子径が70μmの酸化鉄の鉄粉を用い、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表2に示した値となるように、水アトマイズ鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例2と同様にして石膏ボードを製造した。なお、酸化鉄としては四酸化三鉄を用いた。
【0256】
実験例6-1~実験例6-6はいずれも実施例となる。
【0257】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0258】
評価結果を表2に示す。
【0259】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0260】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例7-1~実験例7-6]
石膏スラリーを調製する際、水アトマイズ鉄粉に替えて平均粒子径が70μmの酸化鉄の鉄粉を用い、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表2に示した値となるように、水アトマイズ鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例3と同様にして石膏ボードを製造した。なお、酸化鉄としては四酸化三鉄を用いた。
【0261】
実験例7-1~実験例7-6はいずれも実施例となる。
【0262】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0263】
評価結果を表2に示す。
【0264】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0265】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
【0266】
【表2】
[実験例8-1~実験例8-6]
石膏スラリーを調製する際、水アトマイズ鉄粉に替えて平均粒子径が70μmの還元鉄粉を用い、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表3に示した値となるように、還元鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例1と同様にして石膏ボードを製造した。
【0267】
実験例8-1~実験例8-6はいずれも実施例となる。
【0268】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0269】
評価結果を表3に示す。
【0270】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0271】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例9-1~実験例9-6]
磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表3に示した値となるように、水アトマイズ鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例1と同様にして石膏ボードを製造した。
【0272】
実験例9-1~実験例9-6はいずれも実施例となる。
【0273】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0274】
評価結果を表3に示す。
【0275】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0276】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
[実験例10-1~実験例10-6]
石膏スラリーを調製する際、水アトマイズ鉄粉に替えて平均粒子径が70μmの酸化鉄の鉄粉を用い、磁性材料の単位面積当たりの含有量が、各実験例について表3に示した値となるように、水アトマイズ鉄粉の添加量を調整した点以外は、実験例1と同様にして石膏ボードを製造した。なお、酸化鉄としては四酸化三鉄を用いた。
【0277】
実験例10-1~実験例10-6はいずれも実施例となる。
【0278】
得られた石膏ボードの中央部から幅300mm×長さ400mmの試験サンプルを切り出し、実験例4-1~4-6の場合と同様にしてマグネット吸着試験を実施した。
【0279】
評価結果を表3に示す。
【0280】
また、得られた各実験例の石膏ボードについて、マグネット吸着試験終了後、実験例3と同様に石膏ボードの両表面の石膏ボード用原紙を剥ぎ取り、石膏コアのみとした。そして、石膏コアを厚さ方向に沿って、一方の表面側から他方の表面側に向かって、厚さの等しい第1の端部領域、中央領域、及び第2の端部領域の3つの領域に分割し、各領域部分について粉末化した。
【0281】
得られた各領域の粉末を、用いた磁性材料の粒径よりも目開きが小さい635メッシュの篩内に入れ、水洗することで石膏成分を洗い流し、各領域に含まれていた磁性材料を取り出した。各領域の磁性材料の質量から算出した、各領域の磁性材料の含有比率(百分率)を算出したところ、第1の端部領域の磁性材料の含有比率が他の領域よりも高くなることを確認できた。
【0282】
【表3】
以上に石膏含有板、石膏含有板の製造方法を、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0283】
本出願は、2017年11月1日に日本国特許庁に出願された特願2017-212225号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017-212225号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0284】
10 石膏コア
11、21a 一方の表面
12 他方の表面
141 第1の端部領域
142 中央領域
143 第2の端部領域
図1
図2
図3
図4